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核融合反応 - Wikipedia

かく融合ゆうごう反応はんのう

かる核種かくしゅ同士どうし融合ゆうごうしてよりおも核種かくしゅになるかく反応はんのう
かく融合ゆうごうから転送てんそう

かく融合ゆうごう反応はんのうかくゆうごうはんのうえい: nuclear fusion reaction)とは、かる核種かくしゅ同士どうし融合ゆうごうしてよりおも核種かくしゅになるかく反応はんのうう。たんかく融合ゆうごうばれることもおおい。核分裂かくぶんれつ反応はんのうおなじくふるくから研究けんきゅうされている。

原子核げんしかく物理ぶつりがく


放射ほうしゃせい崩壊ほうかい
核分裂かくぶんれつ反応はんのう
原子核げんしかく融合ゆうごう

かく融合ゆうごう反応はんのう連続れんぞくてき発生はっせいさせエネルギーげんとして利用りようするかく融合ゆうごうふるくから研究けんきゅうされており、フィクション作品さくひんにはよく登場とうじょうするが、現実げんじつには技術ぎじゅつてき困難こんなんともなうため2023ねん現在げんざい実用じつようはされていない[1][2]

解説かいせつ

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1920年代ねんだいおよび30年代ねんだいに、ジョン・コッククロフト代表だいひょうされる粒子りゅうし加速器かそくき研究けんきゅう従事じゅうじしていた物理ぶつり学者がくしゃたちは、陽子ようし水素すいそ原子核げんしかく)やかるかくたかいエネルギー(すうkeV)をあた入射にゅうしゃ粒子りゅうしとして加速かそくし、標的ひょうてきとなっているかるかくてると、かく電気でんきてき反発はんぱつりょくかくりょくによって入射にゅうしゃ粒子りゅうし破壊はかいともないながら、標的ひょうてき融合ゆうごうおおきなエネルギーが解放かいほうされること、すなわちかく融合ゆうごう反応はんのう(nuclear fusion)を発見はっけんしていた。このおおきなエネルギーは、アインシュタインによって主張しゅちょうされた関係かんけいしき E = mc2たすかたちで、融合ゆうごうしたかく質量しつりょう一部いちぶがエネルギーに変換へんかんされるため発生はっせいする。しかしながら、加速器かそくきによるかく融合ゆうごう反応はんのうでは、少数しょうすうかく融合ゆうごうぶつつくるために大量たいりょうのエネルギーが必要ひつようであり、もし実用じつようきょうするような連続れんぞくてきかく融合ゆうごう反応はんのうこすのであれば摂氏せっしすうおくもの高温こうおん必要ひつようとなることから、以後いご発見はっけんされた核分裂かくぶんれつ反応はんのうほどには当初とうしょ着目ちゃくもくされなかった。

上記じょうき摂氏せっしすうおく高温こうおんもちいるかく融合ゆうごうとくねつかく反応はんのう(thermonuclear reaction)とばれるが、ねつかく反応はんのう燃料ねんりょうとしては、原子核げんしかく荷電かでんちいさく原子核げんしかく同士どうし接近せっきんしやすいかる核種かくしゅ反応はんのう自体じたいはやいといった理由りゆうからさん重水素じゅうすいそ重水素じゅうすいそといった水素すいそおも同位どういたい理想りそうてきわれる[3]

融合ゆうごう種類しゅるいによっては融合ゆうごう結果けっか放出ほうしゅつされるエネルギーりょうおおいことから、水素すいそばくだんなどの大量たいりょう破壊はかい兵器へいきもちいられる[4]。ただし、水素すいそばくだん核分裂かくぶんれつ反応はんのう利用りようして起爆きばくする必要ひつようがある。

また平和へいわ利用りよう目的もくてきとしてかく融合ゆうごうによるエネルギー利用りよう研究けんきゅうされている。核分裂かくぶんれつ反応はんのうくらべて、反応はんのうこすために必要ひつよう技術ぎじゅつてきなハードルがたかく、世界せかい各国かっこくにおいて様々さまざま実験じっけん装置そうち建設けんせつされ、実用じつようけた研究けんきゅう開発かいはつすすめられている。近年きんねん、スタートアップをふく民間みんかんによるかく融合ゆうごう開発かいはつ活発かっぱつになっている[5][6]

かく融合ゆうごう種類しゅるい

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ねつかく融合ゆうごう
ちょう高温こうおんによりこるかく融合ゆうごうほんこう詳説しょうせつする。
衝突しょうとつかく融合ゆうごう
原子核げんしかく直接ちょくせつ衝突しょうとつさせてこすかく融合ゆうごう原子核げんしかく研究けんきゅうにおいて使用しようされる。
スピンへんごくかく融合ゆうごう
陽子ようし中性子ちゅうせいしかく運動うんどうりょうのパラメータ(スピン)を制御せいぎょすることによりかく融合ゆうごう反応はんのう制御せいぎょする。
ピクノかく融合ゆうごう
非常ひじょう高密度こうみつどほし白色はくしょく矮星)の内部ないぶこっているとかんがえられているかく融合ゆうごう反応はんのう電子でんし原子核げんしかくクーロンりょくつよ遮断しゃだんして、低温ていおん状態じょうたいでもれいてん振動しんどうによる量子りょうしトンネル効果こうかによりかく融合ゆうごうこる。
ミューオン触媒しょくばいかく融合ゆうごう
ミュー粒子りゅうしミューオン)は電子でんし同様どうようにマイナスの電荷でんかをもつ粒子りゅうしだが、電子でんしやく200ばい質量しつりょうつので束縛そくばく軌道きどう半径はんけいやく200ぶんの1である。そのため、電子でんしミューオンにえると原子核げんしかく同士どうし接近せっきんしやすくなりかく融合ゆうごうこりやすくなる。ミューオンは消滅しょうめつまでになんもこの反応はんのう関与かんよできるのであたかも触媒しょくばいのように作用さようする。
常温じょうおんかく融合ゆうごう
室温しつおんから摂氏せっしすうひゃく程度ていどの、ねつかく融合ゆうごうくらべてひく温度おんどかく融合ゆうごうこる反応はんのう。1989ねん3がつべいユタ大学だいがく研究けんきゅうしゃがこの現象げんしょう発表はっぴょうした。当時とうじ再現さいげんせいにばらつきがあったため科学かがくてき議論ぎろんんだが、その、ナノ金属きんぞく加工かこう技術ぎじゅつ電子でんし顕微鏡けんびきょう発展はってんにより2010ねんごろから再現さいげんせいたかまり、さい評価ひょうかされている[7]

各種かくしゅかく融合ゆうごう反応はんのう

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D-Tはんおう

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D-Tはんおう説明せつめい
 

かく融合ゆうごう反応はんのうなかでもっとも反応はんのうさせやすいのが、重水素じゅうすいそ(デューテリウム、D)とさん重水素じゅうすいそ(トリチウム、T)をもちいたはんおうである。これは水素すいそばくだんにも利用りようされている。この反応はんのうによって放出ほうしゅつされるエネルギーはおな質量しつりょうのウランによる核分裂かくぶんれつ反応はんのうのおよそ4.5ばいどう質量しつりょう石油せきゆやしてられるエネルギーの800まんばいたっする[8]。また初期しょきかく融合ゆうごう使用しようされるかく融合ゆうごう反応はんのうとして、実用じつようのための研究けんきゅう世界せかい各国かっこくすすめられている。

恒星こうせいでの反応はんのう

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恒星こうせい様々さまざまなエネルギーは、その中心ちゅうしん付近ふきんにおけるちょう高温こうおんちょう高圧こうあつ状態じょうたいにおけるかく融合ゆうごう反応はんのうによるものがほとんどである。

D-Dはんおう

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収縮しゅうしゅくしつつある原始げんしぼし中心ちゅうしん温度おんどやく250まん Kえると、はじめてかく融合ゆうごうこる。最初さいしょこるのは、比較的ひかくてきこりやすい、2つの重水素じゅうすいそ(D) が反応はんのうする重水素じゅうすいそかく融合ゆうごう工学こうがくではD-Dはんおうぶこともおおい)である。重水素じゅうすいそかく融合ゆうごうこした天体てんたい褐色かっしょく矮星ぶ。

中心ちゅうしん温度おんどやく1000まんKをえると(ちなみに太陽たいよう中心ちゅうしんは1500まんK)、以下いかべるような水素すいそかく融合ゆうごうこし、恒星こうせいばれる。

陽子ようし-陽子ようし連鎖れんさ反応はんのう

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太陽たいようよりちいさいサイズのほしでは、陽子ようこ-陽子ようし連鎖れんさ反応はんのう支配しはいてきである

つぎの、けい水素すいそ陽子ようし、p)どうしが直接ちょくせつ反応はんのうする水素すいそかく融合ゆうごうを、陽子ようし-陽子ようし連鎖れんさ反応はんのう、p-pチェインなどとぶ。一般いっぱん宇宙うちゅう分野ぶんやでのかく融合ゆうごうとはこの反応はんのうすことがおおく、太陽たいよう中心ちゅうしんかくおもこっているかく融合ゆうごう反応はんのうである。4つの水素すいそ原子げんしから1つのヘリウム4生成せいせいされる反応はんのうでは以下いか過程かている。

  1.  
    2つの陽子ようし融合ゆうごうして、重水素じゅうすいそとなり陽電子ようでんしニュートリノ放出ほうしゅつされる。
  2.  
    重水素じゅうすいそ陽子ようし融合ゆうごうしてヘリウム3が生成せいせいされ、ガンマ線がんませんとしてエネルギーが放出ほうしゅつされる
  3.  
    ヘリウム3とヘリウム3が融合ゆうごうしてヘリウム4が生成せいせいされ、陽子ようし放出ほうしゅつされる。
 
太陽たいようよりおもほしでは、CNOサイクルが支配しはいてきである

つぎの、炭素たんそ(C)・窒素ちっそ(N)・酸素さんそ(O) を触媒しょくばいとした水素すいそかく融合ゆうごうを、CNOサイクルぶ。ほし中心ちゅうしん温度おんどやく1400まん-3000まんKで稼働かどうし、やく2000まんKをえると、p-pチェインよりCNOサイクルのほうが優勢ゆうせいになり、その反応はんのう活発かっぱつになる。

(a-1)  
(b-1)  
(b-2)  
(c-1)  
(c-2)  
(c-3)  

けい温度おんどたかいと  じゅん反応はんのう経路けいろ変化へんかし、反応はんのう速度そくどはやまるが、基本きほんてきには炭素たんそ1つと陽子ようし4つが炭素たんそ1つとアルファ粒子りゅうしになる反応はんのうである。

また b および c では13Nや14Oがそれぞれベータ崩壊ほうかいガンマ崩壊ほうかいするまえつぎ段階だんかいへとすすむ。

ヘリウム燃焼ねんしょう

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恒星こうせい中心ちゅうしんかく充分じゅうぶんりょうのヘリウムが蓄積ちくせきされた場合ばあいこる反応はんのうが、ヘリウム燃焼ねんしょうである。水素すいそ原子核げんしかくかく融合ゆうごうのちのこったヘリウム恒星こうせい中心ちゅうしん沈降ちんこうし、重力じゅうりょくにより収縮しゅうしゅくして中心ちゅうしんかく温度おんどがる。やく1おくK程度ていどになると3つのヘリウム原子核げんしかくトリプルアルファ反応はんのうこし、炭素たんそ生成せいせいされはじめる。

 

ヘリウム中心ちゅうしんかくからのねつによりかく周辺しゅうへんでは水素すいそかく融合ゆうごう継続けいぞくする。

炭素たんそよりおも元素げんそ燃焼ねんしょう

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ケイ素けいそ燃焼ねんしょうまで進行しんこうした恒星こうせい断面だんめん

中心ちゅうしん温度おんどが15おく Kをえると、炭素たんそかく融合ゆうごうはじめる(炭素たんそ燃焼ねんしょう過程かてい)。さらに恒星こうせい十分じゅうぶん質量しつりょうっていれば、ネオン燃焼ねんしょう過程かてい酸素さんそ燃焼ねんしょう過程かていケイ素けいそ燃焼ねんしょう過程かてい安定あんていしたてつ56(もっと安定あんてい核種かくしゅはニッケル62。詳細しょうさいてつ参照さんしょう)がつくられ、中心ちゅうしんでのかく融合ゆうごう反応はんのう終了しゅうりょうする。ほし内側うちがわから、てつ ( Fe ) のかくケイ素けいそ ( Si ) のたまから酸素さんそ ( O ) のたまから、ネオン ( Ne ) のたまから炭素たんそ ( C ) のたまから、ヘリウム ( He ) のたまから水素すいそ ( H ) の さい外層がいそうからなる、所謂いわゆるタマネギじょう構造こうぞうへと形成けいせいされ、中心ちゅうしん以外いがい各層かくそうかく融合ゆうごう進行しんこうする。

超新星ちょうしんせい爆発ばくはつ

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中心ちゅうしん温度おんどが100おく Kをえると、くろたい放射ほうしゃ光子こうしのエネルギーがかく結合けつごうエネルギーとどう程度ていどになるため、てつひかり分解ぶんかいこる。

 

この吸熱反応はんのうにより中心ちゅうしん温度おんどがり、それにより圧力あつりょくがる。圧力あつりょくがるとほし収縮しゅうしゅくするが、収縮しゅうしゅくにより温度おんどがってひかり分解ぶんかいすすむ。この過程かていかえされることにより恒星こうせい重力じゅうりょく崩壊ほうかいする。中心ちゅうしん物質ぶっしつ落下らっかし、原子核げんしかく電子でんしまれて陽子ようしがニュートリノを放出ほうしゅつして中性子ちゅうせいし変化へんかする(電子でんし捕獲ほかく)。中心ちゅうしん中性子ちゅうせいしかたまり出来でき自身じしん縮退しゅくたいあつささえられるようになると、外層がいそうから落下らっかしてきた物体ぶったい中性子ちゅうせいしかたまり表面ひょうめんがえされ、超新星ちょうしんせい爆発ばくはつこす。最近さいきん研究けんきゅうによるとてつよりおも元素げんそやく半数はんすうは、超新星ちょうしんせい爆発ばくはつのときのかく融合ゆうごうつくられ、のこ半数はんすうS過程かていつくられる。

なお、このときのこった中性子ちゅうせいしかたまり中性子星ちゅうせいしせいとなる。もし中性子ちゅうせいしかたまり自身じしん縮退しゅくたいあつささえられない状況じょうきょうになると、ブラックホールになる。超新星ちょうしんせい爆発ばくはつ中性子星ちゅうせいしせいのこらない場合ばあい状態じょうたいさぐ研究けんきゅうおこなわれている。

脚注きゃくちゅう

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出典しゅってん

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  1. ^ ジョナサン・エイモス (2022ねん2がつ10日とおか). “かく融合ゆうごう実験じっけん画期的かっきてき結果けっか、クリーンな発電はつでん期待きたいも=えい研究けんきゅう施設しせつ”. BBC. 2022ねん12月14にち閲覧えつらん
  2. ^ ““かく融合ゆうごう実験じっけん 効率こうりつよく十分じゅうぶんなエネルギー発生はっせい成功せいこう” アメリカ”. NHKニュース. (2022ねん12月14にち). オリジナルの2022ねん12月14にち時点じてんにおけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20221214015611/https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221214/amp/k10013922441000.html 2022ねん12月14にち閲覧えつらん 
  3. ^ 原水爆げんすいばく実験じっけん(1957) p.194
  4. ^ 原爆げんばく水爆すいばく”. Web東奥ひがしおく. 東奥ひがしおく日報にっぽう. 2022ねん8がつ3にち閲覧えつらん
  5. ^ 必見ひっけん天才てんさいたちがける「究極きゅうきょくのものづくり」”. NewsPics. 2023ねん10がつ6にち閲覧えつらん
  6. ^ 衝撃しょうげきかく融合ゆうごうビジネスが巨額きょがくマネーをあつめる理由りゆう”. NewsPics. 2023ねん10がつ6にち閲覧えつらん
  7. ^ べい特許とっきょ 再現さいげん成功せいこうで「常温じょうおんかく融合ゆうごう」、さい評価ひょうか加速かそく”. 日本経済新聞にほんけいざいしんぶん. 2021ねん11月4にち閲覧えつらん
  8. ^ 総合そうごう科学かがく技術ぎじゅつ会議かいぎだい13かい資料しりょう5-2「かく融合ゆうごうとはなにか」” (PDF). 内閣ないかく (2001ねん12月25にち). 2022ねん8がつ3にち閲覧えつらん

参考さんこう文献ぶんけん

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  • マリア・G・マイヤー ちょ谷川たにがわ 安孝やすたか, 中村なかむら まこと太郎たろう(へん監訳かんやく) へん原子核げんしかく世界せかい講談社こうだんしゃ現代げんだい物理ぶつり世界せかい〉、1973ねん 
  • 武谷たけや 三男みつお原水爆げんすいばく実験じっけん岩波書店いわなみしょてん岩波いわなみ新書しんしょ〉、1957ねん 
  • 長崎ながさき 正幸まさゆきかく問題もんだい入門にゅうもん』勁草書房しょぼう、1998ねん 

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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