太陽 たいよう での核 かく 融合 ゆうごう
どうやって太陽 たいよう があれほどのエネルギーを産 さん 生 む し続 つづ けられるのか、人類 じんるい にとっては長 なが い間 あいだ 謎 なぞ であった。もしも化石 かせき 燃料 ねんりょう などを燃 も やしているのであれば、太陽 たいよう は燃 も え尽 つ きているはずだったからだ。しかし、20世紀 せいき の早期 そうき に、熱 ねつ 核 かく 融合 ゆうごう ならば膨大 ぼうだい なエネルギーが産 さん 生 む されることが判 わか り、そしてこれこそが太陽 たいよう のエネルギー源 げん であり、また太陽 たいよう が未 いま だ燃 も え尽 つ きていない理由 りゆう であることが理解 りかい された。ところで、核 かく 融合 ゆうごう というのは複数 ふくすう の原子核 げんしかく が合体 がったい してしまう核 かく 反応 はんのう であり、この反応 はんのう の結果 けっか として合体 がったい 前 まえ の元素 げんそ とは全 まった く別 べつ の元素 げんそ が生成 せいせい されることを意味 いみ する。現在 げんざい の太陽 たいよう の場合 ばあい 、その最 さい たるエネルギー源 げん は、軽 けい 水素 すいそ からヘリウム4 への核 かく 融合 ゆうごう (反応 はんのう 過程 かてい では重水素 じゅうすいそ やヘリウム3 を生 しょう ずるが、最終 さいしゅう 的 てき にヘリウム4となって反応 はんのう が終 お わる核 かく 融合 ゆうごう )である。ちなみに、水素 すいそ は最低 さいてい 300万 まん K の温度 おんど で核 かく 融合 ゆうごう を始 はじ める。また、かなりの高 こう 圧 あつ であることも要求 ようきゅう されるため、太陽 たいよう の表層 ひょうそう 近 ちか くでは核 かく 融合 ゆうごう を起 お こせない。この核 かく 反応 はんのう が起 お こっているのは太陽 たいよう の中心 ちゅうしん 部 ぶ である。ともあれ、核 かく 融合 ゆうごう によって現在 げんざい の太陽 たいよう は膨大 ぼうだい な熱 ねつ と光 ひかり を産 う み出 だ しているわけだが、同時 どうじ に、ヘリウムを合成 ごうせい するという、一種 いっしゅ の恒星 こうせい 内 ない 元素 げんそ 合成 ごうせい が行 おこな われていることも意味 いみ する。こうして、恒星 こうせい は元素 げんそ 合成 ごうせい に関与 かんよ しているということが理解 りかい され始 はじ めた。
1920年 ねん 、フランシス・アストン に従 したが って原子 げんし 量 りょう の正確 せいかく な測定 そくてい を行 おこな っていたアーサー・エディントン は、恒星 こうせい はそのエネルギーを水素 すいそ がヘリウムへ転換 てんかん される核 かく 融合 ゆうごう 反応 はんのう から手 て に入 い れていると最初 さいしょ に提案 ていあん した。1928年 ねん 、ジョージ・ガモフは、2つの原子核 げんしかく を充分 じゅうぶん に近 ちか くに持 も ってくる強 つよ い相互 そうご 作用 さよう がクーロン障壁 しょうへき に打 う ち勝 か つ確 かく 率 りつ を示 しめ す量子力学 りょうしりきがく 的 てき な公式 こうしき を推論 すいろん した。これは現在 げんざい 、ガモフ要素 ようそ と呼 よ ばれている。ガモフ要素 ようそ に関 かん する研究 けんきゅう は10年間 ねんかん R・アトキンソン とF・ハウターマン に後 こう を継 つ がれ、その後 ご にはガモフ自身 じしん とテラー によって、恒星 こうせい の内部 ないぶ に存在 そんざい すると考 かんが えられた高温 こうおん で生 しょう じる核 かく 反応 はんのう の割合 わりあい を得 え るために使 つか われた。
1939年 ねん 、ハンス・ベーテ が「恒星 こうせい におけるエネルギー生成 せいせい 」という論文 ろんぶん で、水素 すいそ からヘリウムへの核 かく 融合 ゆうごう 以外 いがい に核 かく 反応 はんのう が起 お こり得 え るか、その可能 かのう 性 せい を分析 ぶんせき した。その結果 けっか として、彼 かれ は恒星 こうせい のエネルギー源 げん として2つのプロセスを提示 ていじ した。最初 さいしょ の1つが、陽 ひ -陽 ひ 連鎖 れんさ 反応 はんのう であり、これは太陽 たいよう 程度 ていど の質量 しつりょう を持 も った恒星 こうせい における、最 もっと も有力 ゆうりょく なエネルギー源 げん である。2つ目 め は1938年 ねん にC・F・V・ヴァイツゼッカー によって考察 こうさつ されていたCNOサイクル であり、こちらは太陽 たいよう よりも質量 しつりょう の多 おお い恒星 こうせい における、最 もっと も重要 じゅうよう なエネルギー源 げん であった。これらの核 かく 融合 ゆうごう 形態 けいたい は、恒星 こうせい を熱 あつ く保 たも つためのエネルギー発生 はっせい に関連 かんれん していた。しかしながら、彼 かれ らはそれより重 おも い元素 げんそ の合成 ごうせい については扱 あつか わなかった。これより重 おも い元素 げんそ の合成 ごうせい に関 かん する理論 りろん については、1946年 ねん にフレッド・ホイル によって研究 けんきゅう が始 はじ められ、彼 かれ は非常 ひじょう に高温 こうおん 高 だか 圧 あつ の環境 かんきょう があれば鉄 てつ までの元素 げんそ の合成 ごうせい が可能 かのう だろうと主張 しゅちょう した[ 1] 。
ホイルは続 つづ いて1954年 ねん に発表 はっぴょう した論文 ろんぶん で、恒星 こうせい 内部 ないぶ において炭素 たんそ から鉄 てつ にかけての元素 げんそ の合成 ごうせい がどのように進行 しんこう するかを概説 がいせつ した。この時 とき のホイルの理論 りろん に存在 そんざい していた遺漏 いろう は後 のち に訂正 ていせい されるが、それは1957年 ねん 、一般 いっぱん にはB²FH論文 ろんぶん として知 し られている[ 2] 名高 なだか いレビュー論文 ろんぶん がM・バービッジ 、J・バービッジ 、W・ファウラー 、F・ホイルによって公表 こうひょう されることで始 はじ まった。このレビュー論文 ろんぶん は初期 しょき の研究 けんきゅう を集 あつ めて洗練 せんれん し、観測 かんそく された元素 げんそ の相対 そうたい 的 てき な存在 そんざい 量 りょう を説明 せつめい できる根拠 こんきょ を与 あた える、非常 ひじょう に多 おお く引用 いんよう される描像にまとめ上 あ げた。
重要 じゅうよう な改善 かいぜん はA・G・W・キャメロン とD・D・クレイトン によって行 おこな われた。キャメロンはホイル案 あん を追 お ってたどり着 つ いた自 みずか らの独立 どくりつ した元素 げんそ 合成 ごうせい のアプローチを提供 ていきょう した。彼 かれ は核 かく 融合 ゆうごう 系 けい の経時 きょうじ 計算 けいさん を上手 うま くこなすためにコンピューターを取 と り入 い れた。クレイトンは最初 さいしょ のS過程 かてい 、R過程 かてい 、シリコンから鉄 てつ グループ元素 げんそ までの燃焼 ねんしょう の経時 きょうじ モデルを計算 けいさん し、放射 ほうしゃ 崩壊 ほうかい による元素 げんそ の年代 ねんだい の測定 そくてい の年表 ねんぴょう を発見 はっけん した。全体 ぜんたい の研究 けんきゅう 分野 ぶんや は1970年代 ねんだい に急速 きゅうそく に広 ひろ がった。
星 ほし 間 あいだ ガス に何 なん らかの外部 がいぶ 要因 よういん が加 くわ わって密度 みつど の高 たか い部分 ぶぶん ができると、この部分 ぶぶん は重力 じゅうりょく が強 つよ くなり、その重力 じゅうりょく によって周囲 しゅうい の物質 ぶっしつ を集積 しゅうせき してゆく。物質 ぶっしつ が集 あつ まって圧力 あつりょく が上 あ がったことによって温度 おんど が高 たか まり、中心 ちゅうしん の物質 ぶっしつ がクーロン障壁 しょうへき (原子核 げんしかく 中 ちゅう に含 ふく まれる陽子 ようし が持 も つ正 せい 電荷 でんか が反発 はんぱつ しあう力 ちから )を超 こ えて近接 きんせつ するようになると最初 さいしょ の核 かく 融合 ゆうごう が始 はじ まる。この時 とき は、重水素 じゅうすいそ による核 かく 融合 ゆうごう が発生 はっせい するが、重水素 じゅうすいそ は存在 そんざい 量 りょう が少 すく ないため、この反応 はんのう はまもなく停止 ていし する。しかし、軽 けい 水素 すいそ をヘリウム に融合 ゆうごう する核 かく 融合 ゆうごう が可能 かのう なほどの高温 こうおん 高 だか 圧 あつ が実現 じつげん すると、軽 けい 水素 すいそ は恒星 こうせい の原料 げんりょう である星 ほし 間 あいだ ガスには一般 いっぱん に大量 たいりょう に含 ふく まれているため、核 かく 融合 ゆうごう は安定 あんてい する。この時期 じき が恒星 こうせい にとって一番 いちばん 長 なが く、この反応 はんのう が行 おこな われている恒星 こうせい は主 しゅ 系列 けいれつ 星 ぼし と呼 よ ばれる。この後 のち 、徐々 じょじょ に反応 はんのう が進 すす んでヘリウムが溜 た まってくると、ヘリウム同士 どうし の核 かく 融合 ゆうごう が始 はじ まる。この際 さい ヘリウム4 同士 どうし の合成 ごうせい でベリリウム8 までの元素 げんそ を合成 ごうせい するが、ベリリウム8は安定 あんてい 同位 どうい 体 たい でないためにヘリウム4二 に 個 こ に崩壊 ほうかい し、それ以上 いじょう の質量 しつりょう の元素 げんそ を合成 ごうせい することはできない。
核 かく 融合 ゆうごう によって水素 すいそ からヘリウムが生成 せいせい されると、重力 じゅうりょく によって重 おも いヘリウムは星 ほし の中心 ちゅうしん へと向 む かい恒星 こうせい の芯 しん になる。これに対 たい し水素 すいそ は外 そと 殻 から 部 ぶ で核 かく 融合 ゆうごう を続 つづ ける。必然 ひつぜん 的 てき に恒星 こうせい の芯 しん はヘリウムばかりになり、重力 じゅうりょく の提供 ていきょう 源 げん になるが、核 かく 融合 ゆうごう の主役 しゅやく である水素 すいそ は徐々 じょじょ に減 へ っていく。水素 すいそ の大 だい 部分 ぶぶん が使 つか い尽 つ くされた時点 じてん で、恒星 こうせい は核 かく 融合 ゆうごう の継続 けいぞく が難 むずか しくなる。この時 とき 、恒星 こうせい が十分 じゅうぶん な質量 しつりょう を持 も たない場合 ばあい は、圧力 あつりょく や温度 おんど が上 あ がらず、ここで核 かく 融合 ゆうごう を終 お え、元素 げんそ の合成 ごうせい も終 お わる。
これに対 たい し、恒星 こうせい が十分 じゅうぶん な質量 しつりょう を持 も っていると、さらに元素 げんそ 合成 ごうせい 反応 はんのう が進 すす む。ベリリウム8が崩壊 ほうかい する前 まえ にさらにヘリウム4が融合 ゆうごう されることによって炭素 たんそ 12 が合成 ごうせい される(詳 くわ しくは「トリプルアルファ反応 はんのう 」を参照 さんしょう のこと)。炭素 たんそ 12は安定 あんてい 同位 どうい 体 たい であるため、恒星 こうせい はヘリウムを炭素 たんそ 12に向 む けて合成 ごうせい する。この時 とき 恒星 こうせい に太陽 たいよう の8倍 ばい 以上 いじょう の十分 じゅうぶん な質量 しつりょう があると、さらに炭素 たんそ 12とヘリウム4の合成 ごうせい によって酸素 さんそ 16 が生成 せいせい される。さらに恒星 こうせい の質量 しつりょう が重 おも い場合 ばあい 酸素 さんそ 16同士 どうし の合成 ごうせい でケイ素 けいそ 28 とヘリウム4が発生 はっせい する。これ以降 いこう も恒星 こうせい は燃焼 ねんしょう を続 つづ け、発生 はっせい した元素 げんそ が恒星 こうせい の中心 ちゅうしん に沈殿 ちんでん し、恒星 こうせい の中心 ちゅうしん に沈 しず んで芯 しん になった元素 げんそ の重力 じゅうりょく による圧縮 あっしゅく とそれによる高温 こうおん 高 だか 圧 あつ での核 かく 融合 ゆうごう を続 つづ けながら恒星 こうせい は燃 も え続 つづ ける。しかしながら、もし核 かく 融合 ゆうごう に必要 ひつよう な高温 こうおん 高 だか 圧 あつ が供給 きょうきゅう できなくなると、その時点 じてん で核 かく 融合 ゆうごう は止 と まり、恒星 こうせい としての元素 げんそ 合成 ごうせい は終了 しゅうりょう する。
ところで、珪素 けいそ と鉄 てつ は全 すべ ての元素 げんそ の中 なか でも原子核 げんしかく が非常 ひじょう に安定 あんてい していることで知 し られている。基本 きほん 的 てき に核 かく 融合 ゆうごう は、不安定 ふあんてい な原子核 げんしかく が融合 ゆうごう することによって、より安定 あんてい な原子核 げんしかく が作 つく られるために反応 はんのう が進 すす むのである。したがって、珪素 けいそ と鉄 てつ に変換 へんかん し終 お えると恒星 こうせい はそれ以上 いじょう 核 かく 融合 ゆうごう を続 つづ けることができなくなる。結局 けっきょく 、いくら大 だい 質量 しつりょう の恒星 こうせい であっても、ここで熱 ねつ 核 かく 融合 ゆうごう による元素 げんそ 合成 ごうせい は終了 しゅうりょう する。なお、恒星 こうせい が持 も ち得 え る質量 しつりょう にも限界 げんかい があると考 かんが えられているが、ここでは恒星 こうせい が持 も ち得 え る質量 しつりょう の限界 げんかい よりも、核 かく 融合 ゆうごう によってエネルギーが取 と り出 だ せるかどうかがネックとなって元素 げんそ 合成 ごうせい が終了 しゅうりょう する。
恒星 こうせい の元素 げんそ 合成 ごうせい が終了 しゅうりょう すると恒星 こうせい の芯 しん は重力 じゅうりょく 崩壊 ほうかい を起 お こす。太陽 たいよう の8倍 ばい 程度 ていど までの恒星 こうせい であれば外 そと 殻 から を失 うしな いつつ芯 しん だけが取 と り残 のこ され、芯 しん は圧縮 あっしゅく されて白色 はくしょく 矮星 になる。太陽 たいよう の8倍 ばい 以上 いじょう の質量 しつりょう がある場合 ばあい 、恒星 こうせい は圧縮 あっしゅく に耐 た えかねて爆 ばく 散 ち する。これが超新星 ちょうしんせい 爆発 ばくはつ であり、超新星 ちょうしんせい 爆発 ばくはつ の途中 とちゅう では中性子 ちゅうせいし 捕獲 ほかく などによってさらに元素 げんそ が合成 ごうせい される。これは超新星 ちょうしんせい 元素 げんそ 合成 ごうせい と呼 よ んで区別 くべつ する。ちなみに、太陽 たいよう より30倍 ばい 以上 いじょう の重 おも さになると重力 じゅうりょく 崩壊 ほうかい 中 ちゅう に特異 とくい 点 てん が発生 はっせい しブラックホール が形成 けいせい されると考 かんが えられている。
なお、赤色 あかいろ 矮星 のような軽 かる い恒星 こうせい の場合 ばあい 水素 すいそ 燃焼 ねんしょう だけでその恒星 こうせい の寿命 じゅみょう を終 お える。赤色 あかいろ 矮星の場合 ばあい は物質 ぶっしつ 収束 しゅうそく のための重力 じゅうりょく が小 ちい さいため、核 かく 融合 ゆうごう は非常 ひじょう に緩 ゆる やかに行 おこな われる。最終 さいしゅう 的 てき には水素 すいそ を燃焼 ねんしょう しつくすとそれ以上 いじょう の核 かく 融合 ゆうごう を行 おこな うことはなく、重 おも い元素 げんそ を合成 ごうせい することは無 な い。太陽 たいよう 程度 ていど の大 おお きさの星 ほし は赤色 あかいろ 巨星 きょせい になった後 のち に炭素 たんそ の合成 ごうせい 程度 ていど で核 かく 融合 ゆうごう を止 と めて白色 はくしょく 矮星になり、終了 しゅうりょう する。一方 いっぽう 、重 おも く大 おお きい星 ほし になれば元素 げんそ 合成 ごうせい は急速 きゅうそく に進 すす み、多 おお くの元素 げんそ を合成 ごうせい する。
赤色 あかいろ 巨星 きょせい の断面 だんめん 図 ず 、元素 げんそ 合成 ごうせい と原子 げんし の形成 けいせい があらわされている。
恒星 こうせい 原子核 げんしかく 合成 ごうせい において最 もっと も重要 じゅうよう な反応 はんのう
水素 すいそ 燃焼 ねんしょう 系 けい
ヘリウム燃焼 ねんしょう 系 けい
重 じゅう 元素 げんそ 燃焼 ねんしょう
鉄 てつ より重 おも い原子 げんし の生成 せいせい
中性子 ちゅうせいし 捕獲 ほかく
陽子 ようし 捕獲 ほかく
光 ひかり 分解 ぶんかい