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温度 - Wikipedia

温度おんど

ゆたかひや度合どあいをあらわ指標しひょう

温度おんどおんどえい: temperature)とは、ゆたかひや度合どあいをあらわ指標しひょうである。

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カテゴリ 物理ぶつりがく
温度おんど
temperature

温度おんどけい外側そとがわ華氏かし内側うちがわ摂氏せっし
りょう記号きごう Ttθしーた
次元じげん Θしーた
種類しゅるい スカラー
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概要がいよう

編集へんしゅう

ふたつの物体ぶったい温度おんど高低こうてい温度おんどてき接触せっしょく[疑問ぎもんてん](thermal[1]contact)によりエネルギー移動いどうする方向ほうこうによって定義ていぎされる。すなわち温度おんどとはエネルギーが自然しぜん移動いどうしていく方向ほうこうしめ指標しひょうであるといえる。標準ひょうじゅんてきには、接触せっしょくによりエネルギーが流出りゅうしゅつするがわ温度おんどたかく、エネルギーが流入りゅうにゅうするがわ温度おんどひくいようにさだめられる。接触せっしょくさせてもエネルギーの移動いどうこらない場合ばあいふたつの物体ぶったい温度おんどひとしい。この状態じょうたい温度おんど平衡へいこうねつ平衡へいこう)とぶ。

マクスウエルは、気体きたい温度おんど分子ぶんし乱雑らんざつ並進へいしん運動うんどうエネルギ―の平均へいきんのみによってまる。ただし、液体えきたいまたは固体こたい状態じょうたいにある物体ぶったいたいする同様どうよう結果けっか現在げんざいのところ確立かくりつされるにいたっていないとべていた[2]最近さいきん五十嵐いがらし液体えきたい固体こたいたいしても温度おんど定義ていぎ提案ていあんしている。それによると、分子ぶんしあいだりょく位置いちのみの関数かんすうであれば、原子げんし分子ぶんし相互そうご作用さよう存在そんざいしても、分子ぶんし並進へいしん運動うんどうエネルギーの平均へいきん統計とうけい力学りきがくもちいて、厳密げんみつもとめることができて、その結果けっかはマクスウエルの速度そくど分布ぶんぷそく一致いっちし、絶対温度ぜったいおんど質量しつりょうのみの関数かんすうとなる[3][4]。この結果けっか簡潔かんけつべるとつぎのようになる。「温度おんどは、原子げんし分子ぶんし乱雑らんざつ並進へいしん運動うんどうエネルギーの平均へいきんしめしている。」とうことができる。気体きたい分子ぶんし並進へいしん運動うんどう速度そくど分布ぶんぷついてのマクスウエルの速度そくど分布ぶんぷそく気体きたいばかりでなく、液体えきたい固体こたいたいしても成立せいりつすることが、原島はらしま先生せんせいのテキスト[5]にもしるされているが、数学すうがくてき証明しょうめいされていない。温度おんど分子ぶんし乱雑らんざつ並進へいしん運動うんどう運動うんどうエネルギーの平均へいきんによってまりぶん分子ぶんしない回転かいてん振動しんどう運動うんどう温度おんど依存いぞんして励起れいきされるが、温度おんどには寄与きよしないことを五十嵐いがらし思考しこう実験じっけんもちいて証明しょうめいしている[6][7]

統計とうけい力学りきがくによれば、温度おんど物質ぶっしつ構成こうせいする分子ぶんし乱雑らんざつ並進へいしん運動うんどうエネルギー平均へいきんとして、五十嵐いがらし導出どうしゅつしたようもとめることができる。このようにしてもとめた温度おんどは、ねつ力学りきがく温度おんど一致いっちする。

ねつ力学りきがく温度おんどれいてん(0ケルビン)は絶対ぜったいれいばれ、分子ぶんし乱雑らんざつ並進へいしん運動うんどう停止ていしする状態じょうたい相当そうとうする。ただし絶対ぜったいれい極限きょくげんてき状態じょうたいであり、有限ゆうげん操作そうさ物質ぶっしつ絶対ぜったいれいとなることはない。また、量子力学りょうしりきがくてき確定かくていせいがあるため、絶対ぜったいれいになっても分子ぶんし運動うんどうまることはない。しかし、このときの分子ぶんし運動うんどう乱雑らんざつ並進へいしん運動うんどうではない。このときの分子ぶんし運動うんどうは、量子力学りょうしりきがくてきゼロてん振動しんどう(ゼロてん運動うんどう)とばれ、乱雑らんざつ運動うんどうではないので、エントロピーには寄与きよしないので、絶対ぜったいれいではエントロピーはゼロであり、分子ぶんし乱雑らんざつ並進へいしん運動うんどう停止ていししゼロとなる。温度おんど物質ぶっしつ構成こうせいする分子ぶんし乱雑らんざつ並進へいしん運動うんどうエネルギーの平均へいきんだからである。

温度おんどは、化学かがく反応はんのうにおいてつよ影響えいきょうりょくつ。また、生物せいぶつにはそれぞれいたりてき温度おんどがあり、ごくせま範囲はんい温度おんど環境かんきょうでしか生存せいぞんできない。化学かがく生物せいぶつがくにおける観察かんさつ実験じっけんでは、基礎きそてき条件じょうけんとして温度おんど記録きろくする必要ひつようがあり、あるいは温度おんど調整ちょうせいすることが実験じっけん成立せいりつさせる重要じゅうよう条件じょうけんとなる。また、生物せいぶつがく医学いがくにおいて組織そしき検体けんたい冷蔵れいぞうするのは、温度おんどげることで化学かがく変化へんか速度そくどおさえる意味いみがある。

動力どうりょく学理がくりろんからのアプローチ

編集へんしゅう

動力どうりょく学理がくりろんでは、ケルビン温度けるびんおんどは、温度おんど(ねつ平衡へいこう状態じょうたいにおける、1 自由じゆうたりの運動うんどうエネルギーの平均へいきん関連かんれんづけられる。

エネルギーとう配分はいぶん法則ほうそく(equipartition theorem)によると、けい個々ここ自由じゆうあたりの運動うんどうエネルギーは kBT/2 となる。ここで、 T絶対温度ぜったいおんどkB はボルツマン定数ていすうである。3次元じげん空間くうかんで、粒子りゅうし並進へいしん自由じゆうは 3 なので、たん原子げんし気体きたい粒子りゅうしは、3kBT/2 なるエネルギーをつ。

たとえば気体きたい状態じょうたい酸素さんそ分子ぶんし (O2) は、並進へいしんくわえて回転かいてん(2自由じゆう)と振動しんどう(1自由じゆう)をつ。それぞれの1自由じゆうあたりの運動うんどうエネルギーは、 kBT/2 であるが、振動しんどうのモードは、常温じょうおんふくひく温度おんど領域りょういきでは量子力学りょうしりきがくてき凍結とうけつされるので、分子ぶんしいちたりのぜんエネルギーは 5kBT/2 となる。また、たか温度おんど領域りょういきでは調和ちょうわ振動しんどう近似きんじされる振動しんどうのモードとなり、運動うんどうエネルギーおよびそれとほぼひとしいポテンシャルエネルギーがくわわるので、分子ぶんしいちたりのぜんエネルギーは 7kBT/2 となる。並進へいしん回転かいてん振動しんどうなどのかくモードはこのような一定いってい制約せいやくのもとにとう配分はいぶんされ、その(地下水ちかすいのような)統一とういつ尺度しゃくど温度おんどえるが、ポテンシャルや周期しゅうきせい観点かんてんから、もっと制約せいやくすくないのが気体きたい並進へいしんエネルギーである。

固体こたい温度おんどエネルギーは、デバイ温度おんどよりたか温度おんど領域りょういきでは原子げんし1個いっこあたり、 6kBT/2近似きんじされる(デュロン=プティの法則ほうそく)が、これも、原子げんしの 1 が3自由じゆう調和ちょうわ振動しんどう構成こうせいするからである。

エネルギーとう配分はいぶん法則ほうそくは、混合こんごう気体きたいにおける異種いしゅ気体きたい粒子りゅうし相互そうごにおいてもつのみならず、こうしたことは結果けっかであって、じつは、この結果けっかちかづける均等きんとう作用さよう存在そんざいするとかんがえられる。この均等きんとう作用さよう物体ぶったいちゅう空間くうかんてき均一きんいつたいしてはたら結果けっかねつ伝導でんどうえるが、おな空間くうかんめていても、(たとえば透明とうめいな)物質ぶっしつ輻射ふくしゃじょうとが、ことなる温度おんど長時間ちょうじかん保持ほじするケースはかんがえられ、この場合ばあいは、それぞれの温度おんどけてかんがえるべきである(輻射ふくしゃ温度おんどは、そもそも常識じょうしきてき定義ていぎできない場合ばあいもある)。

温度おんど統計とうけいてき実体じったいなので、空間くうかんてき時間じかんてきに、ややひろ計測けいそく範囲はんい必要ひつようであり、気体きたいであれば、その粒子りゅうしふくすうかい衝突しょうとつする時間じかん空間くうかん必要ひつようである。たとえば気体きたい並進へいしん回転かいてん振動しんどうといった運動うんどうのモードは、このような時空じくう範囲はんいでは十分じゅうぶんに(さきべた制約せいやくのもとに)均等きんとうするとかんがえられる。しかし、マクスウエルが指摘してきしているよう分子ぶんし回転かいてん振動しんどうといった運動うんどうのモードは温度おんど依存いぞんして励起れいきされるが、温度おんどには寄与きよしないことに留意りゅういする必要ひつようがある[2]。いわゆる「断熱だんねつ自由じゆう膨張ぼうちょう」などはあくまで例外れいがいてき過渡かと現象げんしょうである。

温度おんど定義ていぎ

編集へんしゅう

歴史れきしじょう様々さまざま温度おんど定義ていぎがあったが、現在げんざい国際こくさいりょう体系たいけいにおける基本きほんりょう位置付いちづけられるねつ力学りきがく温度おんど定義ていぎは、温度おんど(ねつ平衡へいこう状態じょうたいにおけるけい内部ないぶエネルギーUを、体積たいせき一定いっていたもってエントロピー Sへん微分びぶんしたものである。

(T=∂ U/∂ S)v現時点げんじてんで、平衡へいこう状態じょうたいでの温度おんどやエントロピーの定義ていぎは、本来ほんらい意味いみ定義ていぎできないこともあり、途上とじょう段階だんかいである。

温度おんど非常ひじょうはかりにくい物理ぶつりりょうひとつである。温度おんど統計とうけいであるから、てい密度みつど物体ぶったい非常ひじょうせま範囲はんい対象たいしょう計測けいそくするなど、分子ぶんしすうすくない場合ばあいには統計とうけいてき安定あんていせず意味いみくなること、非常ひじょう大量たいりょう分子ぶんし運動うんどう状態じょうたいいちいち観測かんそくすることは現在げんざい技術ぎじゅつでは不可能ふかのうでありわりに間接かんせつ計測けいそくおこなっていることに起因きいんしている。

温度おんど計測けいそくする方法ほうほうとしては、計測けいそく対象たいしょうとなる物体ぶったいから放射ほうしゃされる電磁波でんじは計測けいそくする方法ほうほうや、なが時間じかんをかけて計測けいそくプローブを計測けいそく対象たいしょうとなる物体ぶったい接触せっしょくさせ温度おんど(ねつ)平衡へいこう状態じょうたいにさせてからはか方法ほうほうがある。どちらの方法ほうほうも、なんらかの計測けいそくじょう問題もんだいかかえている。しかし、近年きんねん高速こうそく温度おんど測定そくてい装置そうちでは、対象たいしょうぶつおおきさすうじゅうマイクロメートル、測定そくてい時間じかんすうミリびょう程度ていど測定そくてい可能かのうとなっており、物理ぶつり現象げんしょうとらえるひとつの手段しゅだんとしての有効ゆうこうせい向上こうじょうしてきている。

温度おんど温度おんどけい理学りがく

編集へんしゅう

物体ぶったい寒暖かんだん度合どあいを定量ていりょうてきあらわそうというこころみをはじめてったのは異説いせつはあるがガリレオ・ガリレイであるとかんがえられている。ガリレイは空気くうきねつ膨張ぼうちょう性質せいしつ利用りようして物体ぶったい温度おんど計測けいそくできる装置そうち、すなわち温度おんどけい作成さくせいした。ガリレイのつくった温度おんどけい気圧きあつなどの影響えいきょうけてしまうために実際じっさい温度おんど定量ていりょうてきあらわすにはおよばなかったが、このように物質ぶっしつ温度おんどによる性質せいしつ変化へんか利用りようして、寒暖かんだん度合どあいを定量ていりょうてきあらわそうというこころみは以後いごつづけられた。はじめて目盛めもり温度おんどけいにより数値すうちによって温度おんど表現ひょうげんしようとしたのはオーレ・レーマーである。レーマーはみず沸点ふってんを60みず融点ゆうてんを7.5とする温度おんど目盛めもり作成さくせいした。温度おんど目盛めもり作成さくせいするにはこのように2てん定義ていぎ定点ていてん必要ひつようとなる。おおくの独自どくじ温度おんど目盛めもりが作成さくせいされたが、現在げんざいでは日常にちじょうてきにはアンデルス・セルシウスによって作成さくせいされた摂氏せっし温度おんど目盛めもりガブリエル・ファーレンハイトによって作成さくせいされた華氏かし温度おんど目盛めもりおも使用しようされている。

かつては温度おんどねつ概念がいねん区別くべつ明確めいかくにされていなかった。温度おんどねつちがいにはじめていたのはジョゼフ・ブラックであるとかんがえられている。ブラックはこおり融解ゆうかいしている最中さいちゅうねつ吸収きゅうしゅうしても温度おんど変化へんかしないことを発見はっけんした(潜熱せんねつ)。また温度おんどちがどう質量しつりょう水銀すいぎんみずぜる実験じっけんおこない、それぞれみず水銀すいぎん温度おんど変化へんかにある定数ていすうけたりょうつねひとしくなることを発見はっけんした。これは熱容量ねつようりょう概念がいねんであり、温度おんど変化へんかじょうずる定数ていすう熱容量ねつようりょう相当そうとうし、つねひとしくなるりょう移動いどうする熱量ねつりょうである。これらの実験じっけんにより温度おんどねつことなる概念がいねんであることが確立かくりつされた。

その、19世紀せいきはいると効率こうりつねつ機関きかん開発かいはつ要請ようせいからねつ力学りきがく構築こうちくすすんでいった。ニコラ・レオナール・サディ・カルノーねつ機関きかん効率こうりつには熱源ねつげん冷媒れいばいあいだ温度おんどによってまる上限じょうげんがあることを発見はっけんした。このことからねつ力学りきがくだい法則ほうそくについての研究けんきゅうすすんでいった。ねつ力学りきがくだい法則ほうそくによれば外部がいぶから仕事しごとがなされないかぎり、ねつエネルギーは温度おんどたか物体ぶったいから温度おんどひく物体ぶったいにしか移動いどうしない。

ウィリアム・トムソンカルノーサイクル熱源ねつげん冷媒れいばい出入でいりするねつエネルギーから温度おんど目盛めもり構築こうちくできることをしめした。これをねつ力学りきがく温度おんど目盛めもりという。ねつ力学りきがく温度おんどにおいては1つの定義ていぎ定点ていてんはカルノーサイクルの効率こうりつが1となる温度おんどであり、これは摂氏せっし温度おんど目盛めもりあらわせば−273.15 °Cである。ねつ力学りきがくだい法則ほうそくによれば、この温度おんど到達とうたつするには無限むげん仕事しごと必要ひつようとなり、それよりひく温度おんど存在そんざいしない。そのため、この温度おんど絶対ぜったいれいともいう。ねつりょく温度おんど目盛めもりではこの絶対ぜったいれい原点げんてん(0 K)としている。温度おんど下限かげん存在そんざいはトムソン以前いぜんシャルルの法則ほうそくから、あらゆる気体きたい体積たいせきが0となる温度おんどとしてかんがえられていた。

原子げんし分子ぶんしレベルにおける温度おんど意味いみについては、ジェームズ・クラーク・マクスウェル気体きたい分子ぶんし運動うんどうろんによってはじめてあきらかとなった。気体きたい分子ぶんし並進へいしん運動うんどう速度そくど分布ぶんぷマクスウェル分布ぶんぷしたがい、この分布ぶんぷ関数かんすう形状けいじょう温度おんど依存いぞんしている。とく気体きたい分子ぶんし並進へいしん運動うんどうエネルギーの平均へいきんは3/2 kT(k:ボルツマン定数ていすう、T:ねつ力学りきがく温度おんど)となり、温度おんど比例ひれいする。すなわち温度おんど分子ぶんし並進へいしん運動うんどうはげしさをあらわ数値すうちでもある。このためプラズマなかのイオンや電子でんし平均へいきん運動うんどうエネルギーを温度おんど表現ひょうげんすることがある(プラズマなかのイオンや電子でんし並進へいしん運動うんどう自由じゆうしかたないからである)。このとき通常つうじょう平均へいきん運動うんどうエネルギー = kTとなる温度おんどTによって表現ひょうげんする。

ルートヴィッヒ・ボルツマンはこのマクスウェルのかんがかた発展はってんさせ統計とうけいねつ力学りきがく構築こうちくした。統計とうけいねつ力学りきがくでは、あらゆる形態けいたいのエネルギーにこのかんがかた拡張かくちょうされている。温度おんどたかいほどたかいエネルギーを原子げんし分子ぶんし割合わりあいおおきくなり、原子げんし分子ぶんし平均へいきんエネルギーのおおきさも増加ぞうかする。このように統計とうけいねつ力学りきがくにおいて温度おんど分子ぶんし並進へいしん運動うんどうエネルギー分布ぶんぷ仕方しかたあらわ指標しひょうである。

量子りょうしろん確立かくりつしてくると、古典こてんてき統計とうけいねつ力学りきがく量子りょうし統計とうけい近似きんじであることがあきらかとなった。古典こてんろんにおいては0 Kにおいてあらゆる粒子りゅうし運動うんどう停止ていしした最低さいていエネルギー状態じょうたいをとることになるが、量子りょうしろんにおいては粒子りゅうしは0 Kにおいてもれいてんエネルギーを静止せいし状態じょうたいとはならない。この物理ぶつり現象げんしょうれいてん振動しんどうばれている。また、ボース粒子りゅうしのエネルギー分布ぶんぷボース・アインシュタイン分布ぶんぷフェルミ粒子りゅうしのエネルギー分布ぶんぷフェルミ・ディラック分布ぶんぷとなる。フェルミ粒子りゅうしにおいてはパウリの排他はいた原理げんりにより、絶対ぜったいれいにおいても古典こてんろんではすうまん Kにも相当そうとうするようなおおきなエネルギーを粒子りゅうし存在そんざいするが、これは、エネルギーをうえしきのkTに代入だいにゅうして温度おんどなしたことによるもので、しん温度おんどしめしているのではないことに留意りゅういすることが大切たいせつである。したがって、温度おんど分子ぶんし並進へいしん運動うんどうエネルギー分布ぶんぷ仕方しかたあらわ指標しひょうであることは古典こてん統計とうけいわっていない。

温度おんど単位たんい種類しゅるい

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温度おんど単位たんい比較ひかく
ケルビン セルシウス ファーレンハイト ランキン ドリール ニュートン レオミュール レーマー
絶対ぜったいれい 0 −273.15 −459.67 0 559.725 −90.14 −218.52 −135.90
地球ちきゅう表面ひょうめん最低さいてい気温きおん(※1) 183.95 −89.2 −128.56 331.11 283.8 −29.436 −71.36 −39.33
ファーレンハイト寒剤かんざい 255.37 −17.78 0 459.67 176.67 −5.87 −14.22 −1.83
みず融点ゆうてん標準ひょうじゅん状態じょうたいした 273.15 0 32 491.67 150 0 0 7.5
地球ちきゅう表面ひょうめん平均へいきん気温きおん 288 15 59 518.67 127.5 4.95 12 15.375
人間にんげん平均へいきん体温たいおん 309.95 36.8 98.24 557.91 94.8 12.144 29.44 26.82
地球ちきゅう表面ひょうめん最高さいこう気温きおん(※2) 329.85 56.7 134.06 593.73 64.95 18.711 45.36 37.268
みず沸点ふってん標準ひょうじゅん状態じょうたい 373.15 100 212 671.67 0 33 80 60
チタン融点ゆうてん 1941 1668 3034 3494 −2352 550 1334 883
太陽たいよう表面ひょうめん温度おんど 5800 5526 9980 10440 −8140 1823 4421 2909

国際こくさい温度おんど目盛めもり(ITS-90)

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国際こくさい単位たんいけいにおいては温度おんどにはねつ力学りきがく温度おんど使用しようし、単位たんいとしてケルビンを使用しようすることになっている。しかしねつ力学りきがく温度おんど理想りそうされたけい性質せいしつから定義ていぎされる温度おんどであるから、実際じっさい計測けいそくすることは容易よういではない。そこでねつ力学りきがく温度おんど実用じつようじょう一致いっちし、測定そくていしやすい温度おんどとして国際こくさい温度おんど目盛めもり(こくさいおんどめもり、ITS、International Temperature Scale)がさだめられている。現在げんざい使用しようされている温度おんど目盛めもりは1990ねんさだめられたものでITS-90ばれている。国際こくさい温度おんど目盛めもりはある領域りょういき温度おんど定義ていぎする計測けいそくとそれを校正こうせいするための定義ていぎ定点ていてんからなる[8]

定義ていぎ方法ほうほう

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定義ていぎ定点ていてん

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  • ヘリウム蒸気じょうきあつてん: 3 K – 5 K での校正こうせい使用しよう
  • 平衡へいこう水素すいそオルト水素すいそとパラ水素すいそ平衡へいこうにある水素すいそ)の三重みえてん: 13.8033 K
  • 平衡へいこう水素すいそ蒸気じょうきあつてん: 17.025 K – 17.045 K と 20.26 K – 20.28 K の定義ていぎされている
  • ヘリウム気体きたい温度おんどけい示度しど: 16.9 K – 17.1 K と 20.2 K – 20.4 K の校正こうせい使用しよう
  • ネオン三重みえてん: 24.5561 K
  • 酸素さんそ三重みえてん: 54.3584 K
  • アルゴン三重みえてん: 83.8058 K
  • 水銀すいぎん三重みえてん: 234.3156 K
  • みず三重みえてん: 273.16 K (ねつ力学りきがく温度おんど目盛めもりのもうひとつの定義ていぎ定点ていてん
  • ガリウム標準ひょうじゅん気圧きあつ(101 325 Pa)の融解ゆうかいてん: 302.9146 K
  • インジウム標準ひょうじゅん気圧きあつ凝固ぎょうこてん: 429.7485 K
  • スズ標準ひょうじゅん気圧きあつ凝固ぎょうこてん: 505.078 Kᐸ
  • 亜鉛あえん標準ひょうじゅん気圧きあつ凝固ぎょうこてん: 692.677 K
  • アルミニウム標準ひょうじゅん気圧きあつ凝固ぎょうこてん: 933.473 K
  • ぎん標準ひょうじゅん気圧きあつ凝固ぎょうこてん: 1234.93 K
  • きむ標準ひょうじゅん気圧きあつ凝固ぎょうこてん: 1337.33 K
  • どう標準ひょうじゅん気圧きあつ凝固ぎょうこてん: 1357.77 K

温度おんど測定そくていほう

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測定そくてい方法ほうほうには物体ぶったい直接ちょくせつれてはか接触せっしょくしきと、さわらずにはか接触せっしょくしきがある。

接触せっしょくしきは、膨張ぼうちょうしき電気でんきしきけい数式すうしきとうがあり、膨張ぼうちょうしきは、気圧きあつ温度おんどけい蒸気じょうきあつ温度おんどけいなど温度おんど変化へんかによる気体きたい圧力あつりょく変化へんかはかるものや、水銀すいぎん温度おんどけいのような液体えきたいながさをはかるもの、固体こたい変形へんけいはかバイメタルしきがある。電気でんきしきは、温度おんどによって抵抗ていこうりつわる原理げんり利用りようした白金はっきん抵抗ていこう温度おんどけいねつでんたいなど金属きんぞくせんもちいるもの、サーミスタダイオードなど半導体はんどうたいもちいるものがある。温度おんど変化へんか共振きょうしん周波数しゅうはすう変化へんかとして計測けいそくできる水晶すいしょう温度おんどけいけい数式すうしき分類ぶんるいされ、このほかにもサーモペイント液晶えきしょう接触せっしょくして温度おんど変化へんか測定そくていできる。

接触せっしょくしきは、検出けんしゅつ波長はちょうによって2種類しゅるいかれる。ひとつは、やく2–5 μみゅーmの短波たんぱちょう赤外線せきがいせん検出けんしゅつ波長はちょうたいとする量子りょうしがた。もうひとつは、やく8–14 μみゅーmの長波ちょうはちょう赤外線せきがいせん検出けんしゅつ波長はちょうたいとする熱型ねっけい。それぞれの検出けんしゅつ波長はちょうたいは、大気たいきによる赤外線せきがいせん減衰げんすいちいさい波長はちょうたいにあたり、量子りょうしがた検出けんしゅつ素子そしにInSb(インジウムアンチモン)、InAs(インジウム)などを使つかい、熱型ねっけいマイクロボロメータ使つかっている。接触せっしょくしき温度おんどけいとしては代表だいひょうてきなものとして、赤外線せきがいせんサーモグラフィがある。

体感たいかん温度おんど

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ヒトかんじる温度おんどは、気温きおんだけではまらず、ふう湿度しつど周囲しゅうい物体ぶったいねつ放射ほうしゃにも影響えいきょうける。これらを勘案かんあん定量ていりょうてきあらわした温度おんど体感たいかん温度おんどという。

温度おんど

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温度おんど(おんどさ)は、文字通もじどおふたつの物質ぶっしつにおける温度おんどちがいのそのりょうであるが、1990ねんだいはじごろから[よう出典しゅってん]日本にっぽんではひとつの物事ものごと案件あんけんたいして複数ふくすう関係かんけいしゃあいだでの熱意ねついかんがかた思惑おもわくなどのちがい、価値かちかんちがいの比喩ひゆとして「温度おんど」と表現ひょうげんすることがある。[9] これはそれぞれの関係かんけいしゃかんがかた思惑おもわくなどを、あつおもいとめたおもいととらえ、そのちがいを物理ぶつりてき温度おんどちがいとしてたとえた言葉ことばである。

出典しゅってん

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  1. ^ Riedi, P.C. (1989-01-01). Thermal Physics: An introduction to thermodynamics, statistical mechanics, and kinetic theory (2nd Edition ed.). Oxford University Press. ISBN 978-0198519928 . p.9 の 2. First law of thermodynamics 2.1 Zeroth law and scale of temperature の冒頭ぼうとうに、つぎ記述きじゅつがある。"The most directly accessible thermal concept is not heat but rather temperature, the relative sensation of hot and cold."
  2. ^ a b 湯川ゆかわ秀樹ひでき井上いのうえけん へん「J.C. Maxwell『気体きたい分子ぶんしろんおもとした最近さいきん分子ぶんし科学かがく概説がいせつ』」『世界せかい名著めいちょ 65』中央公論社ちゅうおうこうろんしゃ現代げんだい科学かがく Ⅰ〉、1973ねん9がつ10日とおか、1231–1239ぺーじISBN 978-4124001457 ; The Scientific Papers of James Clerk Maxwell Vol.2 (1965)Dover,pp.445-484
  3. ^ 五十嵐いがらし, 靖則やすのり (2014-09). “⟨(1/2)mvtr2⟩ = (3/2)kT関係かんけいしき液体えきたい固体こたいについても成立せいりつするか? ― 温度おんど測定そくてい原理げんり考察こうさつから ―”. 日本にっぽん物理ぶつり学会がっかい講演こうえん概要がいようしゅう (日本にっぽん物理ぶつり学会がっかい) 69 (2): 240. 
  4. ^ 五十嵐いがらし, 靖則やすのり (2017-03). “相互そうご作用さようのある原子げんし分子ぶんし集団しゅうだんにおける速度そくど分布ぶんぷについて ― 温度おんど分子ぶんしろんてき意味いみ ―”. 日本にっぽん物理ぶつり学会がっかい講演こうえん概要がいようしゅう (日本にっぽん物理ぶつり学会がっかい 化学かがく物理ぶつり分科ぶんかかい) 72 (1). 
  5. ^ 原島はらしま, 鮮『基礎きそ物理ぶつりがく力学りきがく相対そうたいろんねつがく』(初版しょはん学術がくじゅつ図書としょ、1967ねん3がつ、309-310ぺーじ 
  6. ^ 五十嵐いがらし, 靖則やすのり (2011-03). “温度おんどとはなにか -温度おんど分子ぶんしろんてき意味いみ-”. 日本にっぽん物理ぶつり学会がっかい講演こうえん概要がいようしゅう (日本にっぽん物理ぶつり学会がっかい) 66 (1): 443. 
  7. ^ 五十嵐いがらし, 靖則やすのり (2013-03). “温度おんど概念がいねん分子ぶんしろんてき構造こうぞう検証けんしょう実験じっけん”. 日本にっぽん物理ぶつり学会がっかい講演こうえん概要がいようしゅう (日本にっぽん物理ぶつり学会がっかい) 68 (1(2分冊ぶんさつ)): 470. 
  8. ^ 計量けいりょう研究所けんきゅうじょ「1990ねん国際こくさい温度おんど目盛めもり (ITS-90)〔日本語にほんごやく〕」1991ねん10がつ (PDF)
  9. ^ 温度おんど三省堂さんせいどうデイリー 新語しんご辞典じてん

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