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窒素酸化物 - Wikipedia

窒素ちっそ酸化さんかぶつ(ちっそさんかぶつ、えい: nitrogen oxides) は窒素ちっそ酸化さんかぶつ総称そうしょう

一酸化いっさんか窒素ちっそ(NO)、二酸化にさんか窒素ちっそ(NO2)、さん酸化さんか窒素ちっそ中国語ちゅうごくごばん(NO3)、酸化さんか窒素ちっそ一酸化いっさんか窒素ちっそ)(N2O)、さん酸化さんか窒素ちっそ(N2O3)、よん酸化さんか窒素ちっそ(N2O4)、酸化さんか窒素ちっそ(N2O5)など。化学かがくしきNOx から「ノックス」ともいう。

生成せいせい

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自然しぜんかいにおいて窒素ちっそ酸化さんかぶつは、かみなりあるいは土壌どじょうなか微生物びせいぶつによって生成せいせいされる。たとえば微生物びせいぶつおお土壌どじょう豊富ほうふ化学かがく肥料ひりょうあたえると土壌どじょう微生物びせいぶつ分解ぶんかいして窒素ちっそ酸化さんかぶつ放出ほうしゅつするれいられている。

物質ぶっしつ燃焼ねんしょうするときにも一酸化いっさんか窒素ちっそ二酸化にさんか窒素ちっそなどが発生はっせいする。この場合ばあい高温こうおんこうあつ燃焼ねんしょうすることで本来ほんらい反応はんのうしにくい空気くうきなか窒素ちっそ酸素さんそ反応はんのうして窒素ちっそ酸化さんかぶつになる場合ばあい(サーマルNOx)と、燃料ねんりょう由来ゆらい窒素ちっそ化合かごうぶつから窒素ちっそ酸化さんかぶつとなる場合ばあい(フューエルNOx)がある。たとえば、排気はいきガスや天然てんねんガスボイラー家庭かていよう調理ちょうりガス器具きぐふくむ)などから排出はいしゅつされる窒素ちっそ酸化さんかぶつ前者ぜんしゃおもであり、石炭せきたん燃焼ねんしょうした場合ばあい窒素ちっそ酸化さんかぶつはそのほとんどが石炭せきたんちゅう窒素ちっそ化合かごうぶつ由来ゆらいすることがられている。

よん酸化さんか窒素ちっそ二酸化にさんか窒素ちっそ平衡へいこう状態じょうたいにあり、環境かんきょうちゅうなど低圧ていあつてい濃度のうどでは二酸化にさんか窒素ちっそがわかたよっている。

かく窒素ちっそ酸化さんかぶつ生成せいせいほう当該とうがい記事きじくわしい)

大気たいきから陸上りくじょう沈着ちんちゃくする窒素ちっそりょうは、1890ねんから1990ねんの100年間ねんかんで5ばい増加ぞうかし21世紀せいき初頭しょとう時点じてんでは 125 Tg-N y-1(テラグラム窒素ちっそ毎年まいとし)とされており、放出ほうしゅつりょうの80 %が肥料ひりょう起源きげんで20 %が燃焼ねんしょう起源きげんである[1]

人体じんたいたいする作用さよう

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二酸化にさんか窒素ちっそ(NO2自体じたい中性ちゅうせいはいから吸収きゅうしゅうされやすい赤褐色せきかっしょく気体きたいまたは液体えきたい細胞さいぼううちでは二酸化にさんか窒素ちっそつよ酸化さんか作用さようしめして細胞さいぼう傷害しょうがいするので、粘膜ねんまく刺激しげき気管支炎きかんしえんはい水腫すいしゅなどの原因げんいんとなる。

一酸化いっさんか窒素ちっそ(NO)については、1980年代ねんだいごろから、その生体せいたいないでの生理せいり機能きのうについて研究けんきゅうすすみ、血管けっかん拡張かくちょう作用さようつことなどがあきらかにされたほか、この一酸化いっさんか窒素ちっそ神経しんけい伝達でんたつ物質ぶっしつとしても作用さようすることが判明はんめいした。なお、1998ねんノーベル生理学せいりがく医学いがくしょうは、この一酸化いっさんか窒素ちっそ生理せいり作用さよう発見はっけんたいしておくられている。現在げんざいでも、その多様たよう生理せいり機能きのうについて研究けんきゅうつづいている。

NO、NO2吸入きゅうにゅうするとメトヘモグロビン生成せいせいする[2]。メトヘモグロビンは、通常つうじょうヘモグロビンはいされている(フェロ)のてつイオンがさん(フェリ)になっているもので、酸素さんそはこぶことができない。

一酸化いっさんか窒素ちっそ(N2O)は麻酔ますい作用さようつため、吸入きゅうにゅう麻酔ますいざいとして医療いりょう現場げんば使用しようされている。

除去じょきょ方法ほうほう

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NOx防除ぼうじょ技術ぎじゅつとしては、バーナー燃焼ねんしょうほう改善かいぜんによってていNOx実現じつげんするていNOx燃焼ねんしょうほうと,はいガスちゅうからNOxを除去じょきょする排煙はいえん脱硝だつしょうほうがある[3]

ていNOx燃焼ねんしょうほう
空気くうきちゅう窒素ちっそ起因きいんするいわゆるサーマルNOxと、燃焼ねんしょうちゅうふくまれる窒素ちっそ化合かごうぶつ起因きいんするフューエルNOxがある。双方そうほう有効ゆうこう方法ほうほうとして、燃焼ねんしょうよう空気くうき段階だんかいけてだん燃焼ねんしょうほうが、ガス燃焼ねんしょうから石炭せきたん燃焼ねんしょういたるまでもっとひろ範囲はんいもちいられている。
排煙はいえん脱硝だつしょうほう
湿式しっしきほう乾式かんしきほうがあり、大型おおがた燃焼ねんしょう装置そうちでは現在げんざい乾式かんしきほうひとつである選択せんたく触媒しょくばいほう主流しゅりゅうとなっている。けむり道部みちぶ手前てまえはいガスちゅうNH3み、下流かりゅう設置せっちされた触媒しょくばい反応はんのうで、NH3によるNOの選択せんたくてき還元かんげんおこなわせる。

対策たいさく

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ディーゼルエンジンの
尿素にょうそSCRシステム
鉄道てつどうでの
JR各社かくしゃでは、ディーゼルカー搭載とうさいされているディーゼルエンジンからの窒素ちっそ酸化さんかぶつ削減さくげんんでおり、JR東日本ひがしにっぽんキハE130けい気動車きどうしゃJR四国しこく1500かたち気動車きどうしゃなどがてい排出はいしゅつしゃである。

環境かんきょう問題もんだい

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窒素ちっそ酸化さんかぶつ硫黄いおう酸化さんかぶつとならび酸性さんせい酸性さんせい降下こうかぶつ粒子りゅうしじょう物質ぶっしつ原因げんいん物質ぶっしつで、硫黄いおう酸化さんかぶつ脱硫だつりゅう装置そうちにより液体えきたい化石かせき燃料ねんりょう由来ゆらい発生はっせい抑制よくせいさせること可能かのうであるが、燃焼ねんしょう高温こうおんとの接触せっしょく)で生成せいせいされる窒素ちっそ酸化さんかぶつ生成せいせい抑制よくせい困難こんなんである。生成せいせいされた窒素ちっそ酸化さんかぶつ降雨こううきり湿性しっせい沈着ちんちゃく)や粒子りゅうしじょう物質ぶっしつ降下こうか乾性かんせい降下こうか)などにより地上ちじょう沈着ちんちゃく森林しんりん生態せいたいけい蓄積ちくせきされるとともに、森林しんりんへの蓄積ちくせきりょう飽和ほうわりょうえると流下りゅうかするみず硝酸しょうさんイオン濃度のうど上昇じょうしょうさせる[1]

大気たいき汚染おせん
これらは、光化学こうかがくスモッグ酸性さんせいなどをこす大気たいき汚染おせん原因げんいん物質ぶっしつである。おも発生はっせいげんは、内燃ないねん機関きかんをもつ自動車じどうしゃ排気はいきガスであり、平成へいせい4ねん制定せいてい平成へいせい13ねん改正かいせい)された自動車じどうしゃから排出はいしゅつされる窒素ちっそ酸化さんかぶつおよ粒子りゅうしじょう物質ぶっしつ特定とくてい地域ちいきにおける総量そうりょう削減さくげんとうかんする特別とくべつ措置そちほう自動車じどうしゃNOx・PMほう)によって、規制きせいされることになる。
とく毒性どくせいたか二酸化にさんか窒素ちっそ(NO2)は、大気たいき汚染おせん防止ぼうしほうによって環境かんきょう基準きじゅんさだめられている。
NO2環境かんきょう基準きじゅん:1あいだの1にち平均へいきんが0.04ppmから0.06ppmまでのゾーンうちまたはそれ以下いかであること。
温室おんしつ効果こうか
また、一酸化いっさんか窒素ちっそ(N2O、酸化さんか窒素ちっそ)は二酸化炭素にさんかたんその310ばい温室おんしつ効果こうかがある。
オゾンそう破壊はかい
1970年代ねんだいスウェーデンのクルーツェンが、成層圏せいそうけんでNOxが触媒しょくばい作用さようでオゾン消滅しょうめつ反応はんのう作用さようしていることを指摘してきし、オゾンそう科学かがく進展しんてんがもたらされた[4]
2008ねんにN2Oが最大さいだいのオゾンそう破壊はかい物質ぶっしつであったことがべい研究けんきゅうチームにより発表はっぴょうされた[5]

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ a b 田林たばやしつよし山室やまむろ真澄ますみ大気たいき降下こうか窒素ちっそ渓流けいりゅうすい流出りゅうしゅつする過程かてい」『地学ちがく雑誌ざっしだい121かんだい3ごう、2012ねん、411-420ぺーじdoi:10.5026/jgeography.121.411 
  2. ^ 石井いしい邦彦くにひこ「アカタラセミアマウスに一酸化いっさんか窒素ちっそ,二酸化にさんか窒素ちっそ曝露ばくろのメトヘモグロビン生成せいせい」『岡山おかやま学会がっかい雑誌ざっしだい101かんだい5-6ごう、473-486ぺーじ、1989ねんdoi:10.4044/joma1947.101.5-6_473 
  3. ^ 定方さだかた正毅まさき酸性さんせい対策たいさくとしてのSOx,NOx防除ぼうじょ技術ぎじゅつ最近さいきん動向どうこう将来しょうらい展望てんぼう」『国立こくりつ環境かんきょう研究所けんきゅうじょニュース』だい8かんだい4ごう、1990ねん、8-9ぺーじ 
  4. ^ 佐々木ささきとおる「オゾンそう創立そうりつ125周年しゅうねん記念きねん解説かいせつ)」『天気てんきだい54かんだい5ごう、2007ねん、391-394ぺーじCRID 1520572359393464192 
  5. ^ Ravishankara, A.R.; Daniel, John S.; Portmann, Robert W. (2009). “Nitrous Oxide (N2O): The Dominant Ozone-Depleting Substance Emitted in the 21st Century”. Science 326 (5949): 123-125. doi:10.1126/science.1176985. PMID 19713491.