炎症 えんしょう (えんしょう、英 えい : Inflammation )とは、生体 せいたい に対 たい する刺激 しげき や侵 おかせ 襲 かさね によって生 しょう じる局所 きょくしょ 的 てき 反応 はんのう の一種 いっしゅ 。
生体 せいたい が受 う けるストレス侵 おかせ 襲 かさね には微生物 びせいぶつ 感染 かんせん などの生物 せいぶつ 学 がく 的 てき ストレス、温度 おんど 変化 へんか や打撃 だげき などの物理 ぶつり 的 てき ストレス、酸 さん やアルカリなどの化学 かがく 的 てき ストレスがあり、炎症 えんしょう はこれらを受 う けた組織 そしき とストレスとの応答 おうとう により生 しょう じる[ 2] 。炎症 えんしょう 部位 ぶい には発熱 はつねつ 、発赤 はっせき 、腫脹 しゅちょう 、疼痛 とうつう などを生 しょう じる[ 2] 。
歴史 れきし 的 てき には紀元前 きげんぜん 3000年 ねん 頃 ごろ の古代 こだい エジプト のパピルス に既 すで に炎症 えんしょう に関 かん する記述 きじゅつ がみられる[ 3] 。
1793年 ねん にはスコットランド の外科医 げかい ジョン・ハンター が「炎症 えんしょう は病気 びょうき ではなく非特異 ひとくい 的 てき な反応 はんのう 」であるとし、炎症 えんしょう は自己 じこ 防御 ぼうぎょ 反応 はんのう として位置 いち づけられるようになった[ 3] 。
生体 せいたい に、これらの異常 いじょう が生 しょう じると発赤 はっせき (ほっせき、redness)、熱 ねつ 感 かん (heat)、腫脹 しゅちょう (swelling)、疼痛 とうつう (pain) を特徴 とくちょう とする徴候 ちょうこう が生 しょう じる。これを炎症 えんしょう の4徴候 ちょうこう (ケルスス の4徴候 ちょうこう 、Celsus tetrad of inflammation)と呼 よ ぶ。さらに組織 そしき 異常 いじょう の発生 はっせい 部位 ぶい によるが、機能 きのう 障害 しょうがい (loss of function) をもたらし、これをあわせて、炎症 えんしょう の5徴候 ちょうこう (ガレノス の5徴候 ちょうこう )と呼 よ ぶ。この徴候 ちょうこう の詳細 しょうさい を以下 いか にまとめる。
発赤 はっせき (羅 ら :Rubor、英 えい :redness)
血管 けっかん が拡張 かくちょう して局所 きょくしょ 血液 けつえき 量 りょう が増加 ぞうか し(充血 じゅうけつ )、その結果 けっか として患部 かんぶ が赤 あか くなる。
疼痛 とうつう (羅 ら :Dolor、英 えい :pain)
充血 じゅうけつ や浮腫 ふしゅ による組織 そしき 圧 あつ 、疼痛 とうつう 性 せい 起 おこり 炎 えん 物質 ぶっしつ の産 さん 生 せい により患部 かんぶ に痛 いた みを生 しょう じる。痛 いた み感覚 かんかく は体 からだ 中 ちゅう に分布 ぶんぷ する自由 じゆう 神経 しんけい 終末 しゅうまつ への入力 にゅうりょく 、中枢 ちゅうすう の応答 おうとう によっている。炎症 えんしょう の場合 ばあい 、当該 とうがい 部位 ぶい に遊 ゆう 走 そう した食 しょく 細胞 さいぼう などが、キニン、プロスタグランジンなどの化学 かがく 物質 ぶっしつ を放出 ほうしゅつ し、痛 いた み感覚 かんかく の受容 じゅよう 器 き を刺激 しげき し、これが感覚 かんかく 系 けい を通 つう じて中枢 ちゅうすう 神経 しんけい に伝 つた えられることで生 しょう じる。これにより、異常 いじょう の生 しょう じたことを認知 にんち して防御 ぼうぎょ 治癒 ちゆ のための個体 こたい 行動 こうどう を起 お こす。たとえば休養 きゅうよう 、逃避 とうひ あるいは運動 うんどう の制限 せいげん が生 しょう じるなど。
発熱 はつねつ (羅 ら :Calor、英 えい :fever)
直接的 ちょくせつてき には血管 けっかん が拡張 かくちょう して局所 きょくしょ 血液 けつえき 量 りょう が増加 ぞうか し(充血 じゅうけつ )、その結果 けっか として患部 かんぶ が熱 ねつ を持 も つ。炎症 えんしょう 反応 はんのう の発熱 はつねつ は、当該 とうがい 組織 そしき に湧出 ゆうしゅつ したマクロファージ、白血球 はっけっきゅう が発熱 はつねつ 物質 ぶっしつ を産 さん 生 せい することで引 ひ き起 お こされる。修復 しゅうふく 細胞 さいぼう 免疫 めんえき 細胞 さいぼう などの体 からだ 細胞 さいぼう は高 たか い温度 おんど 下 か で運動 うんどう 量 りょう が増大 ぞうだい する。これが熱 ねつ を産 さん 生 せい する理由 りゆう である。
腫脹 しゅちょう (羅 ら :Tumor、英 えい :swelling)
血管 けっかん の透過 とうか 性 せい の亢進 こうしん により炎症 えんしょう 性 せい 水腫 すいしゅ が生 しょう じることで患部 かんぶ が脹 ふく れる。ヒスタミン 、キニン、ロイコトリエンなどの働 はたら きで毛細血管 もうさいけっかん 透過 とうか 性 せい が増 ま すため、当該 とうがい 部位 ぶい に血 ち 流 りゅう が増大 ぞうだい し、通常 つうじょう 血管 けっかん 内 ない にとどまる物質 ぶっしつ も組織 そしき 液 えき に流出 りゅうしゅつ し、腫脹 しゅちょう が生 しょう じる。腫脹 しゅちょう は活発 かっぱつ な物質 ぶっしつ 交換 こうかん の場 ば を提供 ていきょう する。
機能 きのう 障害 しょうがい (英 えい :disturbance of function)
腫脹 しゅちょう や疼痛 とうつう の結果 けっか 、患部 かんぶ が機能 きのう しなくなることをいう。19世紀 せいき 、ドイツの病理 びょうり 学者 がくしゃ であるルドルフ・ルートヴィヒ・カール・ウィルヒョー が「機能 きのう 喪失 そうしつ 」として炎症 えんしょう の徴候 ちょうこう に挙 あ げたが、完全 かんぜん に機能 きのう が失 うしな われることは稀 まれ であり「機能 きのう 障害 しょうがい 」として挙 あ げられることが一般 いっぱん 的 てき である[ 3] 。
炎症 えんしょう の原因 げんいん (causes of inflammation)には細胞 さいぼう や組織 そしき 障害 しょうがい を生 しょう じるあらゆるものが含 ふく まれる。
具体 ぐたい 的 てき な原因 げんいん (ストレス侵 おかせ 襲 かさね )には、細菌 さいきん 、真 ま 菌 きん 、ウイルス 、原虫 げんちゅう 、寄生虫 きせいちゅう などの侵入 しんにゅう による感染 かんせん 症 しょう などによって生 しょう じる生物 せいぶつ 学 がく 的 てき 因子 いんし (生物 せいぶつ 学 がく 的 てき ストレス)、機械 きかい 的 てき 外力 がいりょく などの打撃 だげき 、電気 でんき 、紫外線 しがいせん 、放射線 ほうしゃせん 、高温 こうおん (熱傷 ねっしょう )や低温 ていおん (凍傷 とうしょう )といった温度 おんど 変化 へんか など一定 いってい の物理 ぶつり 的 てき 刺激 しげき によって生 しょう じる物理 ぶつり 的 てき 因子 いんし (物理 ぶつり 的 てき ストレス)、重金属 じゅうきんぞく や有機 ゆうき 溶剤 ようざい による中毒 ちゅうどく あるいは酸 さん やアルカリによる腐食 ふしょく などで生 しょう じる化学 かがく 的 てき 因子 いんし (化学 かがく 的 てき ストレス)がある[ 2] [ 7] 。
炎症 えんしょう を引 ひ き起 お こす物質 ぶっしつ を起 おこり 炎 えん 物質 ぶっしつ という。起 おこり 炎 えん 物質 ぶっしつ には体外 たいがい から生体 せいたい 内 ない に侵入 しんにゅう したもの(外因 がいいん )と体内 たいない で産 さん 生 む されたもの(内因 ないいん )がある。例 たと えば外傷 がいしょう などで細胞 さいぼう 組織 そしき が壊死 えし し、遊離 ゆうり した崩壊 ほうかい 産物 さんぶつ が有害 ゆうがい 因子 いんし として働 はたら く場合 ばあい などである。
なお、抗原 こうげん 抗体 こうたい 反応 はんのう や液 えき 性 せい 免疫 めんえき 、細胞 さいぼう 性 せい 免疫 めんえき も炎症 えんしょう の原因 げんいん として分類 ぶんるい されることがあり、これらは免疫 めんえき 学 がく 的 てき 因子 いんし と呼 よ ばれることがある。生物 せいぶつ 学 がく 的 てき 因子 いんし 、物理 ぶつり 的 てき 因子 いんし 、化学 かがく 的 てき 因子 いんし が外因 がいいん にあたるのに対 たい し、免疫 めんえき 学 がく 的 てき 因子 いんし は内因 ないいん にあたる。
急性 きゅうせい 炎症 えんしょう と慢性 まんせい 炎症 えんしょう
編集 へんしゅう
炎症 えんしょう は経過 けいか がすみやかで早期 そうき に終息 しゅうそく する急性 きゅうせい 炎症 えんしょう と、長期 ちょうき の組織 そしき 障害 しょうがい や原因 げんいん の病原 びょうげん の処理 しょり がおそいために4週間 しゅうかん 以上 いじょう に長引 ながび く慢性 まんせい 炎症 えんしょう に分 わ けられる[ 7] 。
炎症 えんしょう は、細胞 さいぼう や組織 そしき の変性 へんせい ・壊死 えし が高度 こうど に見 み られるが滲出 しんしゅつ や増殖 ぞうしょく が生 しょう じていない変質 へんしつ 性 せい 炎症 えんしょう (変質 へんしつ 性 せい 炎 えん )、局所 きょくしょ の循環 じゅんかん 障害 しょうがい や血液 けつえき 成分 せいぶん の滲出 しんしゅつ を特徴 とくちょう とする滲出 しんしゅつ 性 せい 炎症 えんしょう (滲出 しんしゅつ 性 せい 炎 えん )、線維 せんい 芽 め 細胞 さいぼう の増殖 ぞうしょく を特徴 とくちょう とする増殖 ぞうしょく 性 せい 炎症 えんしょう (増殖 ぞうしょく 性 せい 炎 えん )に分 わ けられ、特 とく に増殖 ぞうしょく 性 せい 炎症 えんしょう (増殖 ぞうしょく 性 せい 炎 えん )のうち肉芽 にくが 腫 しゅ 形成 けいせい を特徴 とくちょう とするものを特殊 とくしゅ 性 せい 炎 えん (肉芽 にくが 腫 しゅ 性 せい 炎 えん )という[ 7] 。
急性 きゅうせい 炎症 えんしょう の古典 こてん 的 てき な徴候 ちょうこう と症状 しょうじょう [ 8]
日本語 にほんご
ラテン語 らてんご
発赤 はっせき
Rubor *
腫 は れ
Tumor *
発熱 はつねつ
Calor *
疼痛 とうつう
Dolor *
機能 きのう 喪失 そうしつ
Functio laesa **
急性 きゅうせい 炎症 えんしょう (きゅうせいえんしょう )は生体 せいたい 内 ない に異常 いじょう が生 しょう じた時 とき 、その初期 しょき 、あるいは軽微 けいび な異常 いじょう に対処 たいしょ するために生 しょう じる反応 はんのう である。
生体 せいたい が何 なん らかの傷害 しょうがい を受 う けた場合 ばあい 、通常 つうじょう は体内 たいない に存在 そんざい しない特徴 とくちょう 的 てき な物質 ぶっしつ が放出 ほうしゅつ される。これらの物質 ぶっしつ をダメージ関連 かんれん 分子 ぶんし パターン と呼 よ ぶ。この分子 ぶんし 群 ぐん には、体外 たいがい から侵入 しんにゅう した微生物 びせいぶつ に由来 ゆらい する病原 びょうげん 体 たい 関連 かんれん 分子 ぶんし パターン と、損傷 そんしょう を受 う けた自己 じこ 組織 そしき に由来 ゆらい するアラーミン (alarmin) が含 ふく まれる[ 9] 。 このような傷害 しょうがい に特徴 とくちょう 的 てき な物質 ぶっしつ 群 ぐん が、自然 しぜん 免疫 めんえき 系 けい に属 ぞく する細胞 さいぼう に多 おお く発現 はつげん するパターン認識 にんしき 受容 じゅよう 体 たい により認識 にんしき されることにより、炎症 えんしょう を惹起 じゃっき するサイトカイン などが放出 ほうしゅつ される。
このサイトカインなどの作用 さよう により、周辺 しゅうへん の血管 けっかん の直径 ちょっけい は増 ま し、血管 けっかん 壁 かべ の浸透 しんとう 性 せい が高 たか まる。この結果 けっか 、血液 けつえき 供給 きょうきゅう 量 りょう の増加 ぞうか に伴 ともな う発赤 はっせき や熱 ねつ 感 かん 、浸透 しんとう 性 せい の増加 ぞうか から来 く る体液 たいえき の浸潤 しんじゅん に伴 ともな う腫脹 しゅちょう や疼痛 とうつう が引 ひ き起 お こされる[ 10] 。
これら、炎症 えんしょう の誘導 ゆうどう に関 かか わる分子 ぶんし は炎症 えんしょう メディエーター といい、これらの作用 さよう が合 あ わさって炎症 えんしょう 反応 はんのう を引 ひ き起 お こす。
炎症 えんしょう にかかわる物質 ぶっしつ や仕組 しく み(炎症 えんしょう メディエーター)は、その組織 そしき 異常 いじょう の症候 しょうこう に応 おう じて様々 さまざま な組 く み合 あ わせで生 しょう じるので、血管 けっかん 拡張 かくちょう がわずかなため赤 あか みを帯 お びない炎症 えんしょう なども生 しょう じえる。あるいは発熱 はつねつ を生 しょう じるほどでないため、熱 ねつ をそれほど持 も たない炎症 えんしょう も存在 そんざい する。これらの反応 はんのう が起 お きると、恒常 こうじょう 性 せい は血液 けつえき 循環 じゅんかん を制御 せいぎょ して、異常 いじょう 部位 ぶい へのエネルギー供給 きょうきゅう を増 ふ やす。外傷 がいしょう や内 うち 傷 きず の場合 ばあい 、周辺 しゅうへん 組織 そしき に攣縮が起 お きる場合 ばあい もある。このように症候 しょうこう に応 おう じて反応 はんのう が起 お きるが、異常 いじょう のレベルが高 たか ければ、より複雑 ふくざつ かつ多重 たじゅう 的 てき になる。
微小 びしょう 循環 じゅんかん 領域 りょういき に急速 きゅうそく に出現 しゅつげん する急性 きゅうせい 炎症 えんしょう 反応 はんのう は、微小 びしょう 循環 じゅんかん 血 ち 流 りゅう の増加 ぞうか 、微小 びしょう 循環 じゅんかん からの血漿 けっしょう たんぱく質 しつ の滲出 しんしゅつ 、微小 びしょう 循環 じゅんかん からの白血球 はっけっきゅう の血管 けっかん 外遊 がいゆう 走 はし のプロセスからなる[ 11] 。
血 ち 流 りゅう の増加 ぞうか
急性 きゅうせい 炎症 えんしょう で最 もっと も早 はや く出現 しゅつげん する変化 へんか は血管 けっかん 拡張 かくちょう で、ヒスタミン や一酸化 いっさんか 窒素 ちっそ (NO)が血管 けっかん 壁 かべ の平滑 へいかつ 筋 すじ を弛緩 しかん させることで引 ひ き起 お こされる[ 11] 。
血漿 けっしょう たんぱく質 しつ の滲出 しんしゅつ
血管 けっかん 拡張 かくちょう が引 ひ き起 お こす最 もっと も目立 めだ つ変化 へんか が血管 けっかん 透過 とうか 性 せい の亢進 こうしん で、これにより血液 けつえき 中 ちゅう の細胞 さいぼう 成分 せいぶん や比較 ひかく 的 てき サイズの大 おお きい血漿 けっしょう たんぱく質 しつ が血管 けっかん から血管 けっかん 外 がい の間 あいだ 質 しつ に移動 いどう (滲出 しんしゅつ )できるようになる[ 11] 。放出 ほうしゅつ されたヒスタミンなどの化学 かがく 伝達 でんたつ 物質 ぶっしつ には、血管 けっかん 壁 かべ の透過 とうか 性 せい を亢進 こうしん させる作用 さよう があり、局所 きょくしょ への炎症 えんしょう 細胞 さいぼう 浸潤 しんじゅん を促 うなが す[ 7] 。たんぱく質 しつ 含量が多 おお く、細胞 さいぼう の残骸 ざんがい 等 とう も含 ふく む滲出 しんしゅつ 液 えき によって腫脹 しゅちょう (局所 きょくしょ 的 てき な浮腫 ふしゅ ) が出現 しゅつげん する[ 11] 。炎症 えんしょう 部位 ぶい で血漿 けっしょう 成分 せいぶん が血管 けっかん 透過 とうか 性 せい の亢進 こうしん により血管 けっかん 外 がい に滲出 しんしゅつ することを液 えき 性 せい 滲出 しんしゅつ (exudation)という。
白血球 はっけっきゅう の血管 けっかん 外遊 がいゆう 走 はし
血管 けっかん 内 ない 成分 せいぶん の滲出 しんしゅつ が起 お こると血 ち 流 りゅう 速度 そくど は低下 ていか し、血液 けつえき の粘 ねば 稠度が増加 ぞうか して血管 けっかん うっ血 けつ を生 しょう じる[ 11] 。血管 けっかん うっ血 けつ により赤血球 せっけっきゅう が充満 じゅうまん すると白血球 はっけっきゅう は血管 けっかん 壁 かべ に押 お し当 あ てられ、血管 けっかん 内皮 ないひ 細胞 さいぼう は細胞 さいぼう 接着 せっちゃく 因子 いんし の発現 はつげん の効果 こうか により白血球 はっけっきゅう は血管 けっかん 内皮 ないひ 細胞 さいぼう に固定 こてい される[ 11] 。この移動 いどう を血管 けっかん 外 がい 遊 ゆう 走 はし (extravasation) という。好 こう 中 ちゅう 球 だま と単 たん 核 かく 白血球 はっけっきゅう が血管 けっかん 外 がい に遊 ゆう 走 はし することを白血球 はっけっきゅう 遊 ゆう 出 で (emigration of leukocyte)という。また、炎症 えんしょう 性 せい 細胞 さいぼう および血管 けっかん 内皮 ないひ 細胞 さいぼう からメディエーターが放出 ほうしゅつ されることをケミカルメディエーター(化学 かがく 的 てき 仲介 ちゅうかい 物質 ぶっしつ )の活性 かっせい 化 か (activation of chemical mediators)という。
有害 ゆうがい 物質 ぶっしつ の除去 じょきょ と組織 そしき の修復 しゅうふく
編集 へんしゅう
壊死 えし 細胞 さいぼう は細胞 さいぼう や組織 そしき の破壊 はかい 物 ぶつ に含 ふく まれる酵素 こうそ により分解 ぶんかい され、好 こう 中 ちゅう 球 だま やマクロファージの貪食 どんしょく によって除去 じょきょ される。欠損 けっそん した組織 そしき は線維 せんい 芽 め 細胞 さいぼう によって作 つく り出 だ される膠 にかわ 原 げん 線維 せんい で修復 しゅうふく され、修復 しゅうふく の材料 ざいりょう を輸送 ゆそう するための豊富 ほうふ な毛細血管 もうさいけっかん からなる肉芽組織 にくがそしき が形成 けいせい される[ 7] 。
急性 きゅうせい 炎症 えんしょう の転帰 てんき は、完全 かんぜん 治癒 ちゆ 、不完全 ふかんぜん 治癒 ちゆ 、慢性 まんせい 炎症 えんしょう への移行 いこう に分 わ けることができる[ 13] 。
完全 かんぜん 治癒 ちゆ :病原 びょうげん 体 たい が駆逐 くちく され、組織 そしき や細胞 さいぼう が修復 しゅうふく されて、病気 びょうき の痕跡 こんせき を残 のこ すことなく回復 かいふく すること[ 13] 。
不完全 ふかんぜん 治癒 ちゆ : 異物 いぶつ や病原 びょうげん 体 たい を完全 かんぜん に排除 はいじょ できず、組織 そしき の欠損 けっそん を修復 しゅうふく できないまま硬 かた い線維 せんい に置 お き換 か わり線維 せんい 化 か すること[ 13] 。
瘢痕 はんこん 治癒 ちゆ :欠損 けっそん 組織 そしき が多 おお い場合 ばあい 、線維 せんい 芽 め 細胞 さいぼう 、マクロファージ、新生 しんせい 血管 けっかん が肉芽組織 にくがそしき を形成 けいせい して瘢痕 はんこん 組織 そしき となって、欠損 けっそん 部 ぶ を補 おぎな う
膿瘍 のうよう 治癒 ちゆ :化膿 かのう (pyogenic) 菌 きん 感染 かんせん が炎症 えんしょう 部位 ぶい に起 お こった場合 ばあい に起 お こる
慢性 まんせい 炎症 えんしょう :炎症 えんしょう の病原 びょうげん が弱 よわ くなりながらも残存 ざんそん して持続 じぞく するもの[ 13] 。詳細 しょうさい は後述 こうじゅつ 。
慢性 まんせい 炎症 えんしょう (まんせいえんしょう )は、急性 きゅうせい 炎症 えんしょう の症状 しょうじょう がやや軽減 けいげん しながらも治 なお りきらずに持続 じぞく する場合 ばあい あるいは発症 はっしょう が潜行 せんこう 性 せい で症状 しょうじょう は強 つよ く出 で ないが持続 じぞく する場合 ばあい をいう[ 3] 。慢性 まんせい 炎症 えんしょう の症状 しょうじょう は数 すう か月 げつ から数 すう 年 ねん に及 およ ぶことがある[ 3] 。
炎症 えんしょう は限局 げんきょく 性 せい の生体 せいたい の防御 ぼうぎょ 反応 はんのう であるが、疾患 しっかん の原因 げんいん になることもある。例 たと えば脳 のう 内 ない の腫瘍 しゅよう は占拠 せんきょ 性 せい 病変 びょうへん として脳 のう 内 ない の周囲 しゅうい の構造 こうぞう を圧迫 あっぱく 損傷 そんしょう することがある。
静 しず かに沈 しず むような軽度 けいど の慢性 まんせい 炎症 えんしょう は、 ほとんどすべての人 ひと に影響 えいきょう を及 およ ぼし、認知 にんち 症 しょう 、うつ病 びょう 、心 こころ 血管 けっかん 疾患 しっかん 、癌 がん 、2型 がた 糖尿 とうにょう 病 びょう 、アレルギー、喘息 ぜんそく などの症状 しょうじょう の原因 げんいん となる可能 かのう 性 せい がある。驚 おどろ くべきことに、世界中 せかいじゅう の5人 にん に3人 にん が、慢性 まんせい 炎症 えんしょう に関連 かんれん する病気 びょうき で亡 な くなっている。慢性 まんせい 炎症 えんしょう が認知 にんち 機能 きのう 低下 ていか 、脳卒中 のうそっちゅう 、認知 にんち 症 しょう (アルツハイマー病 びょう を含 ふく む)、うつ病 びょう につながる可能 かのう 性 せい がある。慢性 まんせい 的 てき なストレスなどは、慢性 まんせい 炎症 えんしょう の発症 はっしょう を引 ひ き起 お こす[ 14] 。多 おお くの慢性 まんせい 疾患 しっかん は炎症 えんしょう に関連 かんれん しており、その炎症 えんしょう を制御 せいぎょ することはしばしば治療 ちりょう の重要 じゅうよう な部分 ぶぶん である。しかし、炎症 えんしょう はほとんどの慢性 まんせい 疾患 しっかん の直接的 ちょくせつてき な原因 げんいん ではない。したがって、慢性 まんせい 炎症 えんしょう は一般 いっぱん の人々 ひとびと の想像 そうぞう をはるかに超 こ えているが、それが唯一 ゆいいつ の死因 しいん ではなく、慢性 まんせい 炎症 えんしょう を制御 せいぎょ することは他 た の慢性 まんせい 疾患 しっかん の排除 はいじょ につながらない。それでも、地中海 ちちゅうかい 式 しき 食事 しょくじ 療法 りょうほう は慢性 まんせい 炎症 えんしょう を軽減 けいげん するのに役立 やくだ つ[ 15] 。
急性 きゅうせい 炎症 えんしょう
慢性 まんせい 炎症 えんしょう
トートラ; Sandra Reynolds Grabowski; 大野 おおの 忠雄 ただお 他 た 『トートラ 人体 じんたい の構造 こうぞう と機能 きのう 』2004年 ねん 3月 がつ 。ISBN 4621073745 。
エレイン N.マリーブ; 林 はやし 正 ただし 健 けん 二 に 他 た 『人体 じんたい の構造 こうぞう と機能 きのう 』(2版 はん )医学書院 いがくしょいん 、2005年 ねん 3月 がつ 。ISBN 4260333933 。
亀山 かめやま 洋一郎 よういちろう ; 前田 まえだ 初 はつ 彦『病理 びょうり 学 がく 概論 がいろん 』永末 ながすえ 書店 しょてん 、2009年 ねん 12月28日 にち 。ISBN 978-4816012129 。