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SMILES記法 - Wikipedia
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SMILES記法きほう

分子ぶんしの化学かがく構造こうぞうをASCII符号ふごうの英数字えいすうじで文字もじ列れつ化かした、構造こうぞうの曖昧あいまい性せいの無ない表記ひょうき方法ほうほう

SMILES記法きほう（スマイルスきほう、英語えいご: simplified molecular input line entry system）とは、分子ぶんしの化学かがく構造こうぞうをASCII符号ふごうの英数字えいすうじで文字もじ列れつ化かした、構造こうぞうの曖昧あいまい性せいの無ない表記ひょうき方法ほうほうである。SMILES文字もじ列れつは多おおくの種類しゅるいの分子ぶんしエディタにおいてインポート可能かのうで、二に次元じげんの図表ずひょうあるいは三さん次元じげんのモデルとして表示ひょうじすることができる。

SMILES表記ひょうきは1980年代ねんだいの終おわりにDavid Weiningerにより開発かいはつされ、その後ごに多数たすうの人ひとの手てで変更へんこうあるいは拡張かくちょうがなされてきた。中なかでもDaylight Chemical Information Systems社しゃの貢献こうけんが大おおきい。他たの線形せんけいな同様どうような表記ひょうき法ほうとしてはWiswesser Line Notation (WLN), ROSDAL そして SLN (Tripos社しゃ)が挙あげられる。

グラフ理論りろんに基もとづいた記法きほうの定義ていぎ

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グラフ理論りろんに基もとづくコンピュータ処理しょりの観点かんてんでは、SMILESは分子ぶんしグラフ（英語えいご版ばん）を深ふかさ優先ゆうせんで走査そうさして、節点せってん（原子げんし）と辺あたり（結合けつごう）を表現ひょうげんする文字もじ列れつである。分子ぶんしグラフの構築こうちくでは、まず系けいの水素すいそ原子げんしを取とり除のぞき（ただし不ふ斉ひとし中心ちゅうしんを除のぞく）、環たまきを形成けいせいしているところは切きり開ひらいて全域ぜんいき木き（spanning tree）に変換へんかんする。環たまきを開ひらいたところには数字すうじでラベル付らべるつけ（後ご置おけ）して、つながっていた節点せってん同士どうしを示しめす。丸まる括弧かっこ（parenthesis, ()）は木きが分ぶん枝えだしている場所ばしょを表あらわすのに使用しようする。

原子げんしは角かく括弧かっこ（bracket, []）でくくられるが、organic subset、すなわち B, C, N, O, P, S, F, Cl, Br, I のいずれかで、形式けいしき電荷でんかを持もたず、同位どうい体たいを陽ひに指定していする必要ひつようがなく、かつ不ふ斉ひとし中心ちゅうしんでない場合ばあいは[]を省略しょうりゃくしてもよい。この場合ばあいは原子げんし価かに基もとづいて水素すいそが暗黙あんもく的てきに付加ふかしているものとみなされる。たとえばO、Nはそれぞれ水みず、アンモニアである（水素すいそを陽ひに書かくと[H]O[H]などになるが、このように書かかれることはほとんどない）。形式けいしき電荷でんかを持もっている場合ばあいは+-と数字すうじを後こう置おけする（たとえばアンモニウムイオンは[NH4+]、鉄てつ (II) は[Fe+2]）。同位どうい体たいを陽ひに指定していする場合ばあいは質量しつりょう数すうを整数せいすうで前ぜん置おけする（たとえば炭素たんそ14は[14C]）。不ふ斉ひとし中心ちゅうしんについては後述こうじゅつする。

結合けつごうは一いち重じゅうから順じゅんに-、=、#で、芳香ほうこう環たまき（1.5重じゅう結合けつごう）では:で表あらわされる（ただし一重ひとえ結合けつごう-は通常つうじょう省略しょうりゃくされる）。OpenSMILES 拡張かくちょうで四よん重じゅう結合けつごうは$ である。二に重じゅう結合けつごう=につながっている一いち重じゅう結合けつごうの向むきを/、\で表あらわすことでシス-トランス異性いせい体たいを区別くべつする。たとえばC/C=C\C、C/C=C/Cはそれぞれシス・トランス2-ブテンである。結合けつごうがないことは.で表現ひょうげんされる（たとえば過酸化水素かさんかすいそOOに対たいしO.Oは水みず2分子ぶんし）。

環かん構造こうぞうではつながっている原子げんしの後うしろに数字すうじでラベル付らべるつけする。たとえばプロパンとシクロプロパンをSMILESで表あらわすとそれぞれCCC、 C1CC1となる。 ラベルの数字すうじは1つの原子げんしに1つが原則げんそくだが、あるラベルがすでに2箇所かしょに現あらわれ、その2箇所かしょのペアが同一どういつの原子げんしであることを示しめす役目やくめを終おえた場合ばあいは、その数字すうじを別べつのペアのために再さい利用りようしてもよい。 ラベルは一いち桁けたの数字すうじとみなされ、たとえばC12はラベル1、2につながっている炭素たんそである。二に桁けたのラベルを表あらわすには%を前まえ置おけする（たとえばC%12はラベル12）。

芳香ほうこう環たまきを構成こうせいする原子げんし（炭素たんそ、窒素ちっそ、酸素さんそ、リン、硫黄いおう、ヒ素ひそ、セレン；OpenSMILES 拡張かくちょうではさらにホウ素ほうそ）は小文字こもじにする。例たとえばシクロヘキサンC1CCCCC1に対たいしベンゼンはc1ccccc1である。芳香ほうこう環たまきの結合けつごうを一いち重じゅう・二に重じゅう結合けつごうで表あらわすこと（ベンゼンを1,3,5-シクロヘキサトリエンのようにC1=CC=CC=C1）をケクレ化か (英語えいご: kekulization) とよぶことがある。

不ふ斉ひとし中心ちゅうしんには@または@@を後こう置おけし、根ねの方向ほうこうから見みてそれぞれ左ひだり回まわり・右みぎ回まわりに後続こうぞくの原子げんし団だんが並ならんでいることを表あらわす（@が左ひだり回まわりのため）。たとえばS-アラニンのSMILESは、アミノ基もとを根ねにするとN[C@@H](C)C(=O)Oである（N[C@@]([H])(C)C(=O)Oのように書かいてもよい）。

ある系けいについてのSMILESは必かならずしも一意いちいに定さだまらず、たとえばS-アラニンは上記じょうきのSMILESだけでなく、C[C@H](N)C(=O)O、C[C@@H](C(=O)O)N、OC(=O)[C@H](C)Nなどでも表あらわすことができる。そのため、あるアルゴリズムに基もとづいて系けいに対たいし一意いちいになるよう変換へんかんしたものを、正規せいき化かされた（canonical）SMILESと呼よぶ。ただし、データベースやプログラムによってはアルゴリズムが違ちがうことがある。

化学かがく反応はんのうは原はら系けい>>生成せいせい系けいまたは原はら系けい>触媒しょくばいなど>生成せいせい系けいで表あらわされる。たとえばプロペンに水みずが付加ふかしてプロパン-2-オールができる反応はんのうはCC=C.O>>CC(O)Cである。

詳細しょうさいについては[1]や[2]を参照さんしょうすること。

発展はってん

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SMARTS[3]は部分ぶぶん構造こうぞう検索けんさくができるようにSMILESを拡張かくちょうしたものであり、化学かがくデータベース検索けんさくプログラムなどで使用しようされる。原子げんしならびに結合けつごうについてのクエリが追加ついかされており、たとえば[C,c]は任意にんいの（脂肪しぼう族ぞくまたは芳香ほうこう族ぞくの）炭素たんそにマッチする。

SMIRKS[4]はSMILESとSMARTSのハイブリッドで、一般いっぱん的てきな化学かがく反応はんのうを記述きじゅつする。

特徴とくちょう

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SMILES記法きほうの長所ちょうしょは化学かがく構造こうぞうを、少すくないバイト長ちょうで表現ひょうげんできることと、ルールが簡単かんたんなので人間にんげんが文字もじ列れつに変換へんかんする際さいに複雑ふくざつな演算えんざんが不ふ必要ひつような点てんにある。

一方いっぽう、欠点けってんとしては元もとの構造こうぞう式しきの向むきや置換ちかん基もとが張はり出だす方向ほうこうなどの構造こうぞう式しきを目めで見みたときの印象いんしょうが完全かんぜんに失うしなわれる点てんがある。ほかにも、標準ひょうじゅんSMILES記法きほうでは相対そうたい配置はいちも絶対ぜったい配置はいちも表現ひょうげんすることができない。

実例じつれい

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分子ぶんし 構造こうぞう SMILES記法きほう
窒素ちっそ N≡N N#N
イソシアン酸さんメチル (MIC) CH3N=C=O CN=C=O
硫酸りゅうさん銅どう(II) Cu2+ SO42- [Cu+2].[O-]S(=O)(=O)[O-]
エナントトキシン (C17H22O2)   CCC[C@@H](O)CC\C=C\C=C\C#CC#C\C=C\CO
ピレトリン II (C21H28O5)   COC(=O)C(\C)=C\C1C(C)(C)[C@H]1C(=O)O[C@@H]2C(C)=C(C(=O)C2)CC=CC=C
アフラトキシンB1 (C17H12O6)   O1C=C[C@H]([C@H]1O2)c3c2cc(OC)c4c3OC(=O)C5=C4CCC(=O)5
グルコース (glucose, glucopyranose) (C6H12O6)   OC[C@@H](O1)[C@@H](O)[C@H](O)[C@@H](O)[C@@H](O)1
クスクチン又またの名なベルゲニン(天然てんねん樹脂じゅし) (C14H16O9)   OC[C@@H](O1)[C@@H](O)[C@H](O)[C@@H]2[C@@H]1c3c(O)c(OC)c(O)cc3C(=O)O2
カリフォルニア州しゅうのカイガラムシのフェロモン   CC(=O)OCCC(/C)=C\C[C@H](C(C)=C)CCC=C
2S,5R-カルコガラン:キクイムシ（ホシガタキクイムシ(Pityogenes chalcographus)）のフェロモン [5]   CC[C@H](O1)CC[C@@]12CCCO2
バニリン   O=Cc1ccc(O)c(OC)c1
メラトニン (C13H16N2O2)   CC(=O)NCCC1=CNc2c1cc(OC)cc2
フラボペレイリン (C17H15N2)   CCc(c1)ccc2[n+]1ccc3c2Nc4c3cccc4
ニコチン (C10H14N2)   CN1CCC[C@H]1c2cccnc2
ツジョン (C10H16O)   CC(C)[C@@]12C[C@@H]1[C@@H](C)C(=O)C2
チアミン (C12H17N4OS+)
(vitamine B1) 		  OCCc1c(C)[n+](=cs1)Cc2cnc(C)nc(N)2

脚注きゃくちゅう

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[脚注きゃくちゅうの使つかい方かた]
  1. ^ “Daylight Theory: SMILES”. 2019年ねん10月がつ9日にち閲覧えつらん。
  2. ^ “OpenSMILES specification” (2016年ねん5月がつ15日にち). 2019年ねん10月がつ9日にち閲覧えつらん。
  3. ^ “Daylight Theory: SMARTS - A Language for Describing Molecular”. 2019年ねん10月がつ9日にち閲覧えつらん。
  4. ^ “Daylight Theory: SMIRKS - A Reaction Transform Language”. 2019年ねん10月がつ9日にち閲覧えつらん。
  5. ^ ISOLATION OF PHEROMONE SYNERGISTS OF BARK BEETLE, Pityogenes chalcographus, FROM COMPLEX INSECT-PLANT ODORS BY FRACTIONATION AND SUBTRACTIVE-COMBINATION BIOASSAY

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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