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チアミン - Wikipedia

チアミンえい: thiamin, thiamine)は、ビタミンB1えい: vitamin B1)ともばれ、ビタミンなか水溶すいようせいビタミン分類ぶんるいされる生理せいり活性かっせい物質ぶっしつである。栄養素えいようそのひとつ。このほか、サイアミンアノイリンともばれる。

チアミンの構造こうぞうしきたまぼうモデル
IUPAC命名めいめいほうによる物質ぶっしつめい
臨床りんしょうデータ
発音はつおん [ˈθしーた.əmɪn] THY-ə-min
Drugs.com monograph
ライセンス US Daily Med:リンク
胎児たいじ危険きけん分類ぶんるい
法的ほうてき規制きせい
投与とうよ経路けいろ 経口けいこう, IV, IM[2]
薬物やくぶつ動態どうたいデータ
生物せいぶつがくてき利用りようのう3.7% 〜 5.3%
識別しきべつ
CAS番号ばんごう
70-16-6  チェック
59-43-8 (塩化えんかぶつ チェック
ATCコード A11DA01 (WHO)
PubChem CID: 1130
DrugBank DB00152
ChemSpider 1098
UNII X66NSO3N35
KEGG C00378
ChEBI CHEBI:18385
ChEMBL CHEMBL1547
別名べつめい ビタミンB1、アノイリン
化学かがくてきデータ
化学かがくしきC12H17N4OS+
分子ぶんしりょう265.35
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とうしつおよび分岐ぶんき脂肪酸しぼうさん代謝たいしゃもちいられ、不足ふそくすると脚気かっけ神経しんけいえんなどの症状しょうじょうしょうじる。酵母こうぼ豚肉ぶたにく胚芽はいがまめるいおお含有がんゆうされる。

酵素こうそがたチアミンリンさん(TPP)。

構造こうぞう

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分子ぶんししきC12H17N4OS である。

2-メチル-4-アミノ-5-ヒドロキシメチルピリミジン(ピリミジン、OPM、構造こうぞうしきひだり半分はんぶん六角形ろっかっけい部分ぶぶん)と4-アミノ-5-ヒドロキシエチルチアゾール(チアゾール、Th、構造こうぞうしきみぎ半分はんぶん五角形ごかっけい部分ぶぶん)がメチレンもとかいして結合けつごうしたもの。生体せいたいないでは、かく組織そしきにおいてチアミンピロリンさん(チアミンリンさん)に変換へんかんされる。チアミンリンさんは、生体せいたいないにおいて各種かくしゅ酵素こうそ酵素こうそとしてはたらく。チアミンさんリンさんは、シナプスしょうにおいて、アセチルコリン遊離ゆうり促進そくしんし、神経しんけい伝達でんたつ関与かんよするといわれている。

生理せいり活性かっせい

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ちゅう濃度のうど通常つうじょう68.1±32.1 (ng/mL)で40 (ng/mL)をると脚気かっけなどの欠乏症けつぼうしょうじょうがあらわれるといわれている。リンさんもと構造こうぞうしき右側みぎがわのヒドロキシもと(OHもと)に結合けつごうする。結合けつごうするリンさんながさにより、チアミンいちリンさん(TMP, thiamine monophosphate)、チアミンリンさん(TPP, thiamine pyrophosphate)、チアミンさんリンさん(TTP, thiamine triphosphate)がある。

物性ぶっせい

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  • 分子ぶんしりょう 300.81
  • 水溶すいようせい加熱かねつにより可溶性かようせいす。
  • アルコールに不溶ふよう
  • 無色むしょく
  • アルカリ条件下じょうけんか容易ようい分解ぶんかい
  • 弱酸じゃくさんせい条件下じょうけんか安定あんてい

CAS番号ばんごう 59-43-8

おおふく食品しょくひん

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酵母こうぼは、アルコール発酵はっこうによりピルビンさんだつ炭酸たんさんしてエタノール生成せいせいすることができ、ピルビンさんデヒドロゲナーゼEC 1.2.4.1)の因子いんしであるチアミンをみずか合成ごうせいできるとともに、培地ばいち存在そんざいするチアミンを吸収きゅうしゅうし、細胞さいぼうない集積しゅうせきすることができる。たねによっては、その乾燥かんそう重量じゅうりょうの10%ちかくのチアミンを集積しゅうせきできる[3]酒粕さけかすにも酵母こうぼふくまれているため、チアミンがふくまれている。

摂取せっしゅ注意ちゅうい

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1にち所要しょようりょう成人せいじん男性だんせいで1.1 ミリグラム、成人せいじん女性じょせいで0.8 ミリグラム。くわえて、摂取せっしゅエネルギー1,000 キロカロリーあたり0.35 ミリグラムが必要ひつようとされる。

食品しょくひんちゅうふくまれる総量そうりょうのうち、やく半分はんぶんから1/3は調理ちょうりちゅううしなわれる。水溶すいようせいであり、食材しょくざいみずにさらすと流失りゅうしつしてしまう。煮汁にじるやゆでじる利用りようすれば、食材しょくざいから流失りゅうしつしたぶんもどすことができる。こめさい手早てばやすくない水量すいりょうおこなうか、洗米せんまい麦飯むぎめし玄米げんまいあるいは強化きょうかまい利用りようするとい。

アルカリ条件下じょうけんかにおいて分解ぶんかいすすむので、重曹じゅうそう調理ちょうり利用りようすると分解ぶんかいされてしまう。ニンニクふくまれるアリシン結合けつごうし、アリチアミンとなると吸収きゅうしゅう効率こうりつ向上こうじょうする(詳細しょうさいニンニク参照さんしょうのこと)。

強度きょうど労作ろうさくや、消耗しょうもうせい疾患しっかん罹患りかんにより要求ようきゅうりょうがかなり上昇じょうしょうする。一方いっぽうで、脂質ししつ摂取せっしゅにより、要求ようきゅうりょうすこ減少げんしょうする。体内たいない貯蔵ちょぞうできるりょうすくなく、吸収きゅうしゅう効率こうりつたかくない。進行しんこう脚気かっけなど、胃腸いちょうよわっているときにはさらに吸収きゅうしゅう効率こうりつがる可能かのうせいがある。こういった場合ばあいは、こう吸収きゅうしゅうりつのビタミンB1誘導体ゆうどうたい摂取せっしゅするとい。過剰かじょう摂取せっしゅしても、すみやかに排泄はいせつされるため問題もんだいはない。

欠乏症けつぼうしょう

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過剰かじょうしょう

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長期間ちょうきかん多量たりょう投与とうよにおける障害しょうがいは、現在げんざいのところられていない。過剰かじょう摂取せっしゅされたチアミンはすみやかに尿にょうちゅう排泄はいせつされる。

生化学せいかがく

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かく組織そしきにおいてチアミンピロホスホキナーゼ(EC 2.7.6.2)の作用さようによりチアミンリンさん変換へんかんされる。

EC 2.7.6.2 ATP + thiamine = AMP + thiamine diphosphate

チアミンリンさんはチアミンリンさんキナーゼ(EC 2.7.4.15)の作用さようによりチアミンさんリンさんへと変換へんかんされる。

EC 2.7.4.15 ATP + thiamine diphosphate = ADP + thiamine triphosphate

生理せいり活性かっせい

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チアミンリンさんは、生体せいたいないにおいて各種かくしゅ酵素こうそ酵素こうそとして、アルデヒドもと転移てんい運搬うんぱんたいとしてはたらく。

たとえば、TCAサイクルくちにある重要じゅうよう反応はんのうかかわる。TCAサイクルは、細胞さいぼうにおいてとうしつ代謝たいしゃし、生体せいたいないでのエネルギー貯蔵ちょぞうがたといわれるATPを合成ごうせいする経路けいろである。かいとうけいしょうじたピルビンさんだつ炭酸たんさんしてアセチルCoA変換へんかんするピルビンさんデヒドロゲナーゼふく合体がったい(EC 1.2.4.1、EC 1.8.1.4、EC 2.3.1.12さん酵素こうそふく合体がったい)の反応はんのう関与かんよする。

pyruvate + CoA + NAD+ = CO2 + acetyl-CoA + NADH + H+

EC 1.2.4.1 pyruvate + [dihydrolipoyllysine-residue acetyltransferase] lipoyllysine = [dihydrolipoyllysine-residue acetyltransferase] S-acetyldihydrolipoyllysine + CO2
EC 1.8.1.4 protein N6-(dihydrolipoyl)lysine + NAD+ = protein N6-(lipoyl)lysine + NADH + H+
EC 2.3.1.12 CoA + enzyme N6-(S-acetyldihydrolipoyl)lysine = acetyl-CoA + enzyme N6-(dihydrolipoyl)lysine

EC 1.2.4.1の触媒しょくばいする反応はんのうのうち、ピルビンさん (CH3COCOOH) からの二酸化炭素にさんかたんそ (CO2) のき(だつ炭酸たんさん反応はんのう)において、酵素こうそとして重要じゅうようはたらきをしめす。

脂質ししつ摂取せっしゅによりチアミンの要求ようきゅうりょう減少げんしょうするが、これは、脂質ししつβべーた酸化さんかによりアセチルCoAが合成ごうせいされ、上述じょうじゅつ反応はんのう迂回うかいしてTCAサイクルに供給きょうきゅうされるため、結果けっかとして上述じょうじゅつ反応はんのう回転かいてん速度そくどちるためによる。同様どうようつよ労作ろうさく消耗しょうもうせい疾患しっかんにより要求ようきゅうりょう上昇じょうしょうするのは、体内たいないでのATP消費しょうひ上昇じょうしょう反応はんのうしてTCAサイクルの回転かいてんはやまるためによる。

ペントースリンさん経路けいろにおいてもトランスケトラーゼによるNADPHや、デオキシリボースリボースといったすみとうさんせい関与かんよしている。また、アルコールの分解ぶんかいにも関与かんよしている。こう神経しんけいえん作用さようられているが、作用さようじょなどは不明ふめいである。

研究けんきゅう

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日本薬理学会にほんやくりがっかい学会がっかいにおいてニコチン拮抗きっこう作用さよう報告ほうこくされている[5][6][7][8][9][10][11]人体じんたい対象たいしょうとした実験じっけんでは、多量たりょう投与とうよによって喫煙きつえんどき一般いっぱん症状しょうじょう顔面がんめん蒼白そうはく悪心あくしん嘔吐おうとせん呼吸こきゅう促迫、心悸亢進しんきこうしんとう)がいちじるしく軽減けいげんしたという報告ほうこくがある[12]

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ American Society of Health-System Pharmacists. “Thiamine Hydrochloride”. Drugsite Trust (Drugs.com). 2018ねん4がつ17にち閲覧えつらん
  2. ^ Office of Dietary Supplements - Thiamin”. ods.od.nih.gov (2016ねん2がつ11にち). 2016ねん12月30にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2016ねん12月30にち閲覧えつらん
  3. ^ 岩島いわしま昭夫あきお酵母こうぼによるビタミンB1の集積しゅうせき化学かがく生物せいぶつ』 Vol.27 (1989) No.12 P779-786, doi:10.1271/kagakutoseibutsu1962.27.779
  4. ^ さきあいだ裕之ひろゆき, きむあきらめぐみ, 市川いちかわ康広やすひろ ほか、ビタミンB1 欠乏けつぼうによりちょあかりはいだか血圧けつあつきたした1 れい日本にっぽん小児しょうに循環じゅんかん学会がっかい雑誌ざっし』 Vol.29 (2013) No.6 p.352-356, doi:10.9794/jspccs.29.352
  5. ^ 山本やまもといわお; 岩田いわた平太郎へいたろう; 田守たもり靖男やすお; 平山ひらやま雅美まさみ「ビタミンB1のニコチン拮抗きっこう作用さようについて だい1ほう」『日本にっぽん薬理やくりがく雑誌ざっしだい52かんだい3ごう日本にっぽん薬理やくり学会がっかい、1956ねんdoi:10.1254/fpj.52.429 
  6. ^ 山本やまもといわお; 岩田いわた平太郎へいたろう; 田守たもり靖男やすお; 平山ひらやま雅美まさみ「ビタミンB1のニコチン拮抗きっこう作用さようについて だい2ほう」『日本にっぽん薬理やくりがく雑誌ざっしだい53かんだい2ごう日本にっぽん薬理やくり学会がっかい、1957ねんdoi:10.1254/fpj.53.307 
  7. ^ 田守たもり靖男やすお「ThiamineのNicotine拮抗きっこう作用さようかんする研究けんきゅう」『日本にっぽん薬理やくりがく雑誌ざっしだい54かんだい3ごう日本にっぽん薬理やくり学会がっかい、1958ねんdoi:10.1254/fpj.54.571 
  8. ^ 山本やまもといわお; 猪木いのき令三けいぞう; 溝口みぞぐち幸二こうじ; 辻本つじもとあきら「Nicotineにかんする研究けんきゅう Pyruvate酸化さんかにおけるNicotineとThiamineの関係かんけい」『日本にっぽん薬理やくりがく雑誌ざっしだい58かんだい2ごう日本にっぽん薬理やくり学会がっかい、1962ねんdoi:10.1254/fpj.58.120 
  9. ^ 大鳥おおとり喜平きへい「Nicotineにかんする研究けんきゅう Nicotineによる致死ちしならびに痙攣けいれんたいする拮抗きっこう物質ぶっしつについて」『日本にっぽん薬理やくりがく雑誌ざっしだい60かんだい6ごう日本にっぽん薬理やくり学会がっかい、1964ねんdoi:10.1254/fpj.60.573 
  10. ^ 岩田いわた平太郎へいたろう; 井上いのうえあきら「モルモット心房しんぼう標本ひょうほんにおけるNicotineとThiamineならびにその誘導体ゆうどうたい拮抗きっこう作用さようについて」『日本にっぽん薬理やくりがく雑誌ざっしだい64かんだい2ごう日本にっぽん薬理やくり学会がっかい、1968ねんdoi:10.1254/fpj.64.46 
  11. ^ 岩田いわた平太郎へいたろう; 井上いのうえあきら神経しんけい機能きのうにおけるThiamineの役割やくわり」『日本にっぽん薬理やくりがく雑誌ざっしだい68かんだい1ごう日本にっぽん薬理やくり学会がっかい、3ぺーじ、1972ねんdoi:10.1254/fpj.68.1 
  12. ^ 田守たもり靖男やすお「ThiamineのNicotine拮抗きっこう作用さようかんする研究けんきゅう」『日本にっぽん薬理やくりがく雑誌ざっしだい54かんだい3ごう日本にっぽん薬理やくり学会がっかい、578ぺーじ、1958ねんdoi:10.1254/fpj.54.571 

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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