この項目 こうもく では、天然 てんねん 型 がた のD -グルコースについて説明 せつめい しています。L 体 からだ については「L-グルコース 」をご覧 らん ください。
グルコース (英 えい : glucose )は、分子 ぶんし 式 しき C6 H12 O6 を持 も つ単純 たんじゅん な糖 とう である。ブドウ糖 ぶどうとう ( ブドウとう 、( 葡萄糖 ぶどうとう )とも呼 よ ばれる。三文字 さんもじ 表記 ひょうき の略称 りゃくしょう はGlc であり、ドイツ語 ご のTraubenzucker(トラウベンツッカー:Trauben ブドウ 、Zucker 糖 とう )からTz とも略記 りゃっき される。なお、しばしば用 もち いられるGluという表記 ひょうき ではグルタミン酸 ぐるたみんさん などを指 さ すことがあるため、少 すく なくとも化学 かがく において使 つか われることはあまりない。また、ブドウ糖 ぶどうとう の名 な の由来 ゆらい は、「熟 じゅく したブドウの果汁 かじゅう に多 おお く含 ふく まれていたから」、「化学 かがく 式 しき の形状 けいじょう がブドウの房 ぼう に似 に ていたから」などの説 せつ がある。
グルコースは血糖 けっとう として動物 どうぶつ の血液 けつえき 中 ちゅう を循環 じゅんかん している。糖 とう は植物 しょくぶつ などに含 ふく まれる葉 は 緑 みどり 体 たい において、太陽光 たいようこう からのエネルギーを使 つか って水 みず と二酸化炭素 にさんかたんそ から光合成 こうごうせい によって作 つく られる。グルコースは細胞 さいぼう 呼吸 こきゅう (英語 えいご 版 ばん ) のための最 もっと も重要 じゅうよう なエネルギー源 げん である。植物 しょくぶつ ではデンプン 、動物 どうぶつ ではグリコーゲン のようなポリマー として貯蔵 ちょぞう される。
グルコースは6個 こ の炭素 たんそ 原子 げんし を含 ふく み、単 たん 糖 とう の下位 かい 区分 くぶん であるヘキソース に分類 ぶんるい される。D -グルコースは16種類 しゅるい のアルドヘキソース 立体 りったい 異性 いせい 体 たい の一 ひと つである。D 型 かた 異性 いせい 体 たい であるD -グルコースは、デキストロース (dextrose)とも呼 よ ばれ、天然 てんねん に広 ひろ く存在 そんざい するが、L -型 かた 異性 いせい 体 たい であるL -グルコース はそうではない。グルコースは乳糖 にゅうとう やショ糖 とう 、麦芽糖 ばくがとう 、セルロース 、グリコーゲンなどといった炭水化物 たんすいかぶつ の加水 かすい 分解 ぶんかい によって得 え ることができる。グルコースは通常 つうじょう コーンスターチ から商業 しょうぎょう 的 てき に製造 せいぞう されている[ 2] 。
グルコースは世界 せかい 保健 ほけん 機関 きかん 必須 ひっす 医薬品 いやくひん モデル・リスト に入 はい っている[ 3] 。Glucoseという名称 めいしょう は、「ワイン、ブドウ果汁 かじゅう 」を意味 いみ するギリシア語 ご γλυκός (glukós, 「甘 あま い」を意味 いみ する γλυκύς (glykýs)に由来 ゆらい する) から来 き ている[ 4] [ 5] 。接尾 せつび 辞 じ の "-ose" は炭水化物 たんすいかぶつ を示 しめ す化学 かがく 分類 ぶんるい 辞 じ である。
グルコースはドイツ の化学 かがく 者 しゃ 、アンドレアス・マルクグラーフ (英語 えいご 版 ばん ) によって1747年 ねん に干 ほ し葡萄 ぶどう (レーズン )から初 はじ めて単 たん 離 はな された[ 6] [ 7] 。グルコースは多 おお くの生物 せいぶつ の基本 きほん 的 てき 必需 ひつじゅ 品 ひん であるため、その化学 かがく 組成 そせい と構造 こうぞう の正 ただ しい理解 りかい は、有機 ゆうき 化学 かがく の一般 いっぱん 的 てき 進歩 しんぽ に大 おお きく寄与 きよ した。この理解 りかい の大 だい 部分 ぶぶん はドイツの化学 かがく 者 しゃ エミール・フィッシャー の研究 けんきゅう の結果 けっか である。フィッシャーは糖 とう の研究 けんきゅう によって、1902年 ねん のノーベル化学 かがく 賞 しょう を授与 じゅよ された[ 8] 。
グルコースの合成 ごうせい によって有機 ゆうき 物質 ぶっしつ の構造 こうぞう が確立 かくりつ し、その結果 けっか としてヤコブス・ヘンリクス・ファント・ホッフ の化学 かがく 反応 はんのう 速度 そくど 論 ろん と、炭素 たんそ を含 ふく む分子 ぶんし における化学 かがく 結合 けつごう の配置 はいち の理論 りろん で、最初 さいしょ の決定的 けっていてき な検証 けんしょう となった[ 9] 。1891年 ねん から1894年 ねん 、フィッシャーは全 すべ ての既知 きち の糖 とう の立体 りったい 化学 かがく 的 てき 配置 はいち を証明 しょうめい し、ファント・ホッフの不 ふ 斉 ひとし 炭素 たんそ 原子 げんし の理論 りろん を適用 てきよう することで、可能 かのう な異性 いせい 体 たい を正確 せいかく に予測 よそく した。
常温 じょうおん 常 つね 圧 あつ で白色 はくしょく の粉末 ふんまつ 状 じょう の結晶 けっしょう 。水 みず に溶 と けやすく甘味 あまみ がある。
単 たん 糖 とう の一種 いっしゅ であり、ヘキソース (六 ろく 炭 すみ 糖 とう )およびアルドース に分類 ぶんるい される、アルドヘキソースである。光学 こうがく 活性 かっせい 物質 ぶっしつ であり、天然 てんねん に大量 たいりょう に存在 そんざい するのはD体 からだ である。
グルコースは以下 いか のようなオリゴ糖 とう や多 た 糖 とう の構成 こうせい 単位 たんい である。グルコースを構成 こうせい 単位 たんい とする多 た 糖 とう の総称 そうしょう をグルカン と称 しょう する。
キノボース (6-デオキシグルコース)キナの樹皮 じゅひ の配 はい 糖 とう 体 からだ
パラトース (3,6-デオキシグルコース)サルモネラ菌 さるもねらきん のリポ多 た 糖 とう
グルコースは、チマーゼ と呼 よ ばれる酵素 こうそ 群 ぐん によりエタノール と二酸化炭素 にさんかたんそ に分解 ぶんかい される。この反応 はんのう をアルコール発酵 はっこう という。
C
6
H
12
O
6
⟶
2
C
2
H
5
OH
+
2
CO
2
{\displaystyle {\ce {C6H12O6 -> 2 C2H5OH + 2 CO2}}}
グルコースは水溶液 すいようえき 中 ちゅう ではごく一部 いちぶ が鎖 くさり 状 じょう 構造 こうぞう となっている。この構造 こうぞう の末端 まったん にはアルデヒド基 もと が存在 そんざい するため、グルコース水溶液 すいようえき は還元 かんげん 性 せい を示 しめ す。水溶液 すいようえき 中 ちゅう でアルデヒド基 もと をもつ単 たん 糖 とう はアルドースと呼 よ ばれる。
水溶液 すいようえき 中 なか では、以下 いか の3種類 しゅるい の構造 こうぞう が一定 いってい の割合 わりあい で存在 そんざい する平衡 へいこう 状態 じょうたい となっている。
グルコースの平衡 へいこう
水中 すいちゅう において平衡 へいこう 状態 じょうたい に達 たっ したとき、グルコースはほぼα あるふぁ -グルコース(α あるふぁ -ピラノース 、38%、上 うえ 図 ず 左 ひだり )とβ べーた -グルコース(β べーた -ピラノース、62%、上 うえ 図 ず 右 みぎ )の形 かたち で存在 そんざい しており(アノマー効果 こうか を参照 さんしょう )、他 た の異性 いせい 体 たい (フラノース 、鎖 くさり 状 じょう 体 たい 〈上 うえ 図 ず 中央 ちゅうおう 〉)は合 あ わせても1%に満 み たない[ 注釈 ちゅうしゃく 1] 。
α あるふぁ -ピラノースとβ べーた -ピラノースは、再 さい 結晶 けっしょう の溶媒 ようばい や条件 じょうけん をきちんと選 えら べばそれぞれの純 じゅん 品 ひん の結晶 けっしょう を作 つく り分 わ けることができる。その純 じゅん 品 ひん の結晶 けっしょう を水 みず に溶 と かすと平衡 へいこう 状態 じょうたい へ移行 いこう する過程 かてい で旋光度 ど の変化 へんか がみられる。この現象 げんしょう は変 へん 旋光 と呼 よ ばれる。
食事 しょくじ から摂取 せっしゅ された炭水化物 たんすいかぶつ は小腸 しょうちょう でグルコースに分解 ぶんかい され、ナトリウム-グルコース共 ども 輸送 ゆそう 体 たい タンパクのSGLT-1およびSGLT-2により大量 たいりょう のグルコースが体内 たいない に吸収 きゅうしゅう される。
グルコースは、小腸 しょうちょう から吸収 きゅうしゅう されてから、体内 たいない で主要 しゅよう なエネルギー源 げん として利用 りよう されており、特 とく に脳 のう での通常 つうじょう 時 じ のエネルギー源 げん として利用 りよう されている。
グルコースの分子 ぶんし は極性 きょくせい を有 ゆう するため、細胞 さいぼう 膜 まく を通過 つうか するのには特別 とくべつ な膜 まく 輸送 ゆそう タンパク質 たんぱくしつ を必要 ひつよう とする。
グルコースが細胞 さいぼう に取 と り込 こ まれると直 ただ ちにリン酸化 さんか が起 お こり、グルコース-6-リン酸 さん が生成 せいせい される。このリン酸化 さんか は、グルコースが細胞 さいぼう 外 がい に拡散 かくさん してしまうのを防 ふせ ぐためである。リン酸化 さんか により電荷 でんか が導入 どうにゅう されるので、グルコース-6-リン酸 さん は容易 ようい に細胞 さいぼう 膜 まく を通過 つうか することができない。リン酸化 さんか されたグルコースは解 かい 糖 とう 系 けい 等 とう の代謝 たいしゃ 経路 けいろ に入 はい る。
体内 たいない でのグルコースは、エネルギー源 げん として重要 じゅうよう である反面 はんめん 、高 こう 濃度 のうど のグルコースは生体 せいたい に有害 ゆうがい であるため、インスリン などによりその濃度 のうど (血糖 けっとう )が常 つね に一定 いってい 範囲 はんい に保 たも たれている。
食後 しょくご に大量 たいりょう のグルコースが体内 たいない に吸収 きゅうしゅう されるが、体内 たいない のインスリンが十分 じゅうぶん に機能 きのう しないと血糖 けっとう のコントロールができなくなり病的 びょうてき 症状 しょうじょう が現 あらわ れる。
グルコースには、そのアルデヒド基 もと の反応 はんのう 性 せい の高 たか さからタンパク質 たんぱくしつ を修飾 しゅうしょく する作用 さよう (糖化 とうか 反応 はんのう 、メイラード反応 はんのう 参照 さんしょう )がある。グルコースによる修飾 しゅうしょく は主 おも に細胞 さいぼう 外 がい のタンパク質 たんぱくしつ に対 たい して生 しょう じる。細胞 さいぼう 内 ない に入 はい ったグルコースはすぐに解 かい 糖 とう 系 けい により代謝 たいしゃ されてしまう。インスリンによる血糖 けっとう の制御 せいぎょ ができず生体 せいたい が高 こう 濃度 のうど のグルコースにさらされるとタンパク質 たんぱくしつ 修飾 しゅうしょく のために糖 とう 毒性 どくせい が生 しょう じ、これが長 なが く続 つづ くと糖尿 とうにょう 病 びょう 合併症 がっぺいしょう とされる微小 びしょう 血管 けっかん 障害 しょうがい によって生 しょう じる糖尿 とうにょう 病 びょう 性 せい 神経 しんけい 障害 しょうがい 、糖尿 とうにょう 病 びょう 性 せい 網膜 もうまく 症 しょう 、糖尿 とうにょう 病 びょう 性 せい 腎 じん 症 しょう などを発症 はっしょう する[ 10] [ 11] 。
医薬品 いやくひん として様々 さまざま な濃度 のうど (5 %、20 %、50 %など)のブドウ糖 ぶどうとう 注射 ちゅうしゃ 製剤 せいざい が複数 ふくすう の製薬 せいやく 会社 かいしゃ より製造 せいぞう ・販売 はんばい されている。日本 にっぽん 薬局方 やっきょくほう にも記載 きさい され、ブランドとしてでなく「局方 きょくほう 品 ひん 」として調剤 ちょうざい されることが多 おお い。医療 いりょう 現場 げんば では、しばしば「5プロ糖 とう 」「ツッカー」(ドイツ語 ご の「Zucker 糖 とう 」に由来 ゆらい )と呼 よ ばれる。
糖尿 とうにょう 病 びょう 治療 ちりょう 薬 やく の過 か 量 りょう 服用 ふくよう などで低 てい 血糖 けっとう になった際 さい などには、携帯 けいたい したブドウ糖 ぶどうとう 顆粒 かりゅう の経口 けいこう 摂取 せっしゅ がしばしば行 おこな われる。ショ糖 とう では血 ち 中 ちゅう のブドウ糖 ぶどうとう 濃度 のうど は速 すみ やかに上昇 じょうしょう しないため、ブドウ糖 ぶどうとう の摂取 せっしゅ が好 この ましい。
血液 けつえき 内 ない のブドウ糖 ぶどうとう 濃度 のうど (血糖 けっとう 値 ち )は、健常 けんじょう なヒトの場合 ばあい 空腹 くうふく 時 じ 血糖 けっとう 値 ち でおおよそ80-100 mg/dL程度 ていど 、食後 しょくご は若干 じゃっかん 高 たか い値 ね を示 しめ す。血糖 けっとう 値 ち の異常 いじょう については糖尿 とうにょう 病 びょう 、耐 たい 糖 とう 能 のう 異常 いじょう を参照 さんしょう 。
^ ピラノースは六 ろく 員 いん 環 たまき 、フラノースは五 ご 員 いん 環 たまき の環状 かんじょう ヘミアセタール である
^ 奥山 おくやま 格 かく 「有機 ゆうき 化合 かごう 物 ぶつ 命名 めいめい 法 ほう 」[リンク切 き れ ]
^ "glucose." The Columbia Encyclopedia, 6th ed.. 2015. Encyclopedia.com. 17 Nov. 2015 http://www.encyclopedia.com .
^ “WHO Model List of Essential Medicines ”. World Health Organization (October 2013). 22 April 2014 閲覧 えつらん 。
^ “Online Etymology Dictionary ”. Etymonline.com . 2016年 ねん 11月25日 にち 閲覧 えつらん 。
^ Thénard, Gay-Lussac, Biot, and Dumas (1838) "Rapport sur un mémoire de M. Péligiot, intitulé: Recherches sur la nature et les propriétés chimiques des sucres" (Report on a memoir of Mr. Péligiot, titled: Investigations on the nature and chemical properties of sugars), Comptes rendus , 7 : 106–113. From page 109 : "Il résulte des comparaisons faites par M. Péligot, que le sucre de raisin, celui d'amidon, celui de diabètes et celui de miel ont parfaitement la même composition et les mêmes propriétés, et constituent un seul corps que nous proposons d'appeler Glucose (1). … (1) γλευχος, moût, vin doux." It follows from the comparisons made by Mr. Péligot, that the sugar from grapes, that from starch, that from diabetes and that from honey have exactly the same composition and the same properties, and constitute a single substance that we propose to call glucose (1) … (1) γλευχος, must, sweet wine.
^ (英語 えいご ) Encyclopedia of Food and Health . Academic Press. (2015). p. 239. ISBN 9780123849533 . https://books.google.com/books?id=O-t9BAAAQBAJ&pg=RA2-PA239
^ Marggraf (1747) "Experiences chimiques faites dans le dessein de tirer un veritable sucre de diverses plantes, qui croissent dans nos contrées" [Chemical experiments made with the intention of extracting real sugar from diverse plants that grow in our lands], Histoire de l'académie royale des sciences et belles-lettres de Berlin , pages 79–90. From page 90: "Les raisins secs, etant humectés d'une petite quantité d'eau, de maniere qu'ils mollissent, peuvent alors etre pilés, & le suc qu'on en exprime, etant depuré & épaissi, fournira une espece de Sucre." (Raisins, being moistened with a small quantity of water, in a way that they soften, can be then pressed, and the juice that is squeezed out, [after] being purified and thickened, will provide a sort of sugar.)
^ Emil Fischer , Nobel Foundation, https://www.nobelprize.org/prizes/chemistry/1902/fischer/biographical/ 2009年 ねん 9月 がつ 2日 にち 閲覧 えつらん 。
^ Fraser-Reid, Bert, “van't Hoff's Glucose”, Chem. Eng. News 77 (39): 8
^ High Blood Glucose and Diabetes Complications: The buildup of molecules known as AGEs may be the key link , American Diabetes Association, (2010), ISSN 0095-8301 , http://forecast.diabetes.org/magazine/features/high-blood-glucose-and-diabetes-complications
^ 生体 せいたい 分子 ぶんし に起 お こる加 か 齢 よわい 変化 へんか 05-異常 いじょう たんぱく質 しつ はなぜ増 ふ えるのか? 健康 けんこう 長寿 ちょうじゅ 2024年 ねん 8月 がつ 8日 にち 閲覧 えつらん 。
ウィキメディア・コモンズには、
グルコース に
関連 かんれん するカテゴリがあります。