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酵素 - Wikipedia

酵素こうそ

触媒しょくばいとして機能きのうするおおきな生体せいたい分子ぶんし

(こうそ、えい: enzyme)とは、生体せいたい内外ないがいこる化学かがく反応はんのうたいして触媒しょくばいとして機能きのうする分子ぶんしである。酵素こうそによって触媒しょくばいされる反応はんのうを「酵素こうそてき反応はんのうという。このことについて酵素こうそ構造こうぞう反応はんのう機構きこう研究けんきゅうする古典こてんてき学問がくもん領域りょういきが、酵素こうそがく(こうそがく、えい: enzymology)である。

核酸かくさん塩基えんき代謝たいしゃ関与かんよするプリンヌクレオシドフォスフォリラーゼの構造こうぞうリボン)。酵素こうそ研究けんきゅう利用りようされる、構造こうぞう抽象ちゅうしょうしたいちれい

酵素こうそ生物せいぶつ物質ぶっしつ消化しょうかする段階だんかいから吸収きゅうしゅう分布ぶんぷ代謝たいしゃ排泄はいせついたるまでのあらゆる過程かていADME)に関与かんよしており、生体せいたい物質ぶっしつ変化へんかさせて利用りようするのにかせない。したがって、酵素こうそ生化学せいかがく研究けんきゅうにおける一大いちだい分野ぶんやであり、はや段階だんかいから研究けんきゅう対象たいしょうになっている。

最近さいきん[いつ?]研究けんきゅうでは、擬似ぎじ酵素こうそ分析ぶんせき英語えいごばんあたらしい分野ぶんや成長せいちょうし、進化しんかあいだ、いくつかの酵素こうそにおいて、アミノ酸あみのさん配列はいれつおよび異常いじょうな「擬似ぎじ触媒しょくばい特性とくせいにしばしば反映はんえいされている生物せいぶつがくてき触媒しょくばいおこな能力のうりょくうしなわれたことが認識にんしきされている[1][2]

おおくの酵素こうそ生体せいたいないつくされるタンパク質たんぱくしつ主成分しゅせいぶんとして構成こうせいされている。したがって、生体せいたいないでの生成せいせい分布ぶんぷ特性とくせい加熱かねつpHの変化へんかによって変性へんせいして活性かっせいうしなう(しつかつ)といった特徴とくちょうなどは、ほかのタンパク質たんぱくしつ同様どうようである。

生体せいたい機関きかんたとえると、核酸かくさん塩基えんき配列はいれつあらわゲノム設計せっけい相当そうとうするのにたいして、生体せいたいないにおける酵素こうそ組立くみた工具こうぐ相当そうとうする。酵素こうそはその特徴とくちょうとして、作用さようする物質ぶっしつ基質きしつ)をえりごのみし(基質きしつ特異とくいせい)、目的もくてきはんおうだけを進行しんこうさせること(反応はんのう選択せんたくせいあるいは反応はんのう特異とくいせいとも)によって、生命せいめい維持いじ必要ひつようなさまざまな化学かがく変化へんかこす。

酵素こうそ人為じんいてき利用りようとして、古来こらいから人類じんるい酵素こうそもちいた発酵はっこうによる食品しょくひん飲料いんりょう製造せいぞうおこなってきた。今日きょうでは、酵素こうそ利用りよう食品しょくひん製造せいぞうだけにとどまらず、化学かがく工業こうぎょう製品せいひん製造せいぞうにち用品ようひん機能きのう向上こうじょう医療いりょうなどのひろ分野ぶんや応用おうようされている。とりわけ医療いりょう分野ぶんやには、酵素こうそふかかかわっている。たとえば、消化しょうか酵素こうそ消化しょうか酵素こうそざいとして処方しょほうしたり[3][4]疾患しっかんによる酵素こうそりょう増減ぞうげん検査けんさ診断しんだん利用りようしている[5]。また、ほとんどの医薬品いやくひんは、ターゲットとなる酵素こうそ作用さよう大小だいしょう調節ちょうせつすることで効果こうか発現はつげんしている。

おも役割やくわり

編集へんしゅう
 
細胞さいぼうない主要しゅよう代謝たいしゃ経路けいろ
 
細胞さいぼう呼吸こきゅうにおける酵素こうそ調節ちょうせつ機構きこう上記じょうき経路けいろみどりむらさき矢印やじるし部分ぶぶん
あかてん酵素こうそくろせん調節ちょうせつ機構きこうあらわす。まる配置はいちされたあかてんTCAサイクルである。

生体せいたいないでの酵素こうそ役割やくわりは、生命せいめい構成こうせいする有機ゆうき化合かごうぶつ無機むき化合かごうぶつみ、必要ひつよう化学かがく反応はんのうこすことにある。生命せいめい現象げんしょうおおくの代謝たいしゃ経路けいろふくみ、それぞれの代謝たいしゃ経路けいろ段階だんかい化学かがく反応はんのうからなっている。

細胞さいぼうないでは、そのなかこるさまざまな化学かがく反応はんのう担当たんとうするかたち多種たしゅ多様たよう酵素こうそはたらいている。それぞれの酵素こうそ自分じぶんかたちった特定とくてい原料げんりょう化合かごうぶつ基質きしつ)をそとからみ、担当たんとうする化学かがく反応はんのう触媒しょくばいし、生成せいせいぶつそとへと放出ほうしゅつする。そしてふたた反応はんのうのために基質きしつみ、目的もくてき物質ぶっしつ生成せいせいつづける。

ここで放出ほうしゅつされた生成せいせいぶつは、べつ化学かがく反応はんのう担当たんとうする酵素こうそ作用さようけて、さらにべつ生体せいたい物質ぶっしつへと代謝たいしゃされていく。このような酵素こうそ触媒しょくばい反応はんのうかえしで必要ひつよう物質ぶっしつ生成せいせい必要ひつよう物質ぶっしつ分解ぶんかい進行しんこうし、生命せいめい活動かつどう維持いじされていく。

生体せいたいないでは化学かがく工業こうぎょうのプラントのように基質きしつ生成せいせいぶつ容器ようきへだてられているわけではなく、さまざまな物質ぶっしつ渾然一体こんぜんいったいとなって存在そんざいしている。しかし、生命せいめい現象げんしょうつく代謝たいしゃ経路けいろでいろいろな化合かごうぶつ無秩序むちつじょ反応はんのうしてしまっては生命せいめい活動かつどう維持いじできない。

したがって酵素こうそは、生体せいたいない物質ぶっしつなかから作用さようするべきものをえらさなければならない。また、反応はんのう余分よぶんなものをつくしてしまうと周囲しゅうい悪影響あくえいきょうおよぼしかねないので、ある基質きしつたいしてこす反応はんのうまっていなければならない。酵素こうそ生体せいたいない化学かがく反応はんのう秩序ちつじょててすすめるために、このように高度こうど基質きしつ選択せんたくせい反応はんのう選択せんたくせいつ。

さらにアロステリズム阻害そがいなどによって化学かがく反応はんのう進行しんこうまわりから制御せいぎょされる機構きこうそなえた酵素こうそもある。それらの選択せんたくせい制御せいぎょせいつことで、酵素こうそ渾然こんぜんとした細胞さいぼうない必要ひつようなときに必要ひつよう原料げんりょう選択せんたくし、目的もくてき生成せいせいぶつだけをさんせいするのである。

このように、細胞さいぼうよりもちいさいスケールで組織そしきてき作用さようをするのが酵素こうそ役割やくわりである。人類じんるい先史せんし時代じだいから利用りようしていた発酵はっこう細胞さいぼう内外ないがいこる酵素こうそ反応はんのうによっておこなわれる。

発見はっけん

編集へんしゅう
 
ヒトの唾液だえきふくまれるアミラーゼ(リボン)。うすはカルシウムイオン、みどり塩化えんかぶつイオン。
 
エドゥアルト・ブフナー
ノーベル化学かがくしょう 
 
エミール・フィッシャー

最初さいしょ発見はっけんされた酵素こうそジアスターゼアミラーゼ)であり、1833ねんA・パヤンとJ・F・ペルソ(Jean Francois Persoz)によるものである。かれらは麦芽ばくが細胞さいぼう抽出ちゅうしゅつえきによるでんぷん糖化とうか発見はっけんし、生命せいめい細胞さいぼう)が存在そんざいしなくても、発酵はっこうのプロセスの一部いちぶ進行しんこうすることをはじめて発見はっけんした[6]酵素こうそ命名めいめいほう一部いちぶである語尾ごびの「-ase」はジアスターゼ (diastase)が由来ゆらいとなっている。

また、1836ねんにはT・シュワンによって、胃液いえきちゅうからタンパク質たんぱくしつ分解ぶんかい酵素こうそペプシン発見はっけん命名めいめいされている[7]。このころの酵素こうそ生体せいたいから抽出ちゅうしゅつされたまま、実体じったい不明ふめい因子いんしとして分離ぶんり発見はっけんされている。

酵素こうそ(enzyme)」というかたり酵母こうぼなか(in yeast)という意味いみのギリシア"εいぷしろんνにゅー ζぜーたυうぷしろんμみゅーηいーた"(en zymi)に由来ゆらいし、1876ねんドイツウィルヘルム・キューネによって命名めいめいされた[8][9]

19世紀せいき当時とうじルイ・パスツールによって、生命せいめい自然しぜん発生はっせいせず、生命せいめいがないところでは発酵はっこう腐敗ふはい現象げんしょうこらないことがしめされていた。したがって「有機物ゆうきぶつ生命せいめいたすけをりなければつくることができない」とする生気せいきせつひろしんじられており、酵素こうそ作用さよう生命せいめいからはなすことができる化学かがく反応はんのう生化学せいかがく反応はんのう)のひとつにすぎないということは画期的かっきてき発見はっけんであった。

しかし、酵素こうそ生物せいぶつから抽出ちゅうしゅつするしか方法ほうほうがなく、微生物びせいぶつ同様どうよう加熱かねつするとしつかつする性質せいしつっていたため、その現象げんしょう酵素こうそこしているのか、それともえない生命せいめい細胞さいぼう)が混入こんにゅうしてこしているのかを区別くべつすることは困難こんなんであった。

したがって、酵素こうそ生化学せいかがく反応はんのうこすというかんがかたはすぐにはれられなかった。当時とうじヨーロッパ学会がっかいでは、酵素こうそ存在そんざい否定ひていするパスツールらの生気せいきせつ酵素こうそ存在そんざいみとめるユストゥス・フォン・リービッヒらの発酵はっこうもとせつとにかれて論争ろんそうつづいた。

最終さいしゅうてきには、1896ねんエドゥアルト・ブフナー酵母こうぼ細胞さいぼう抽出ちゅうしゅつぶつもちいてアルコール発酵はっこう達成たっせいしたことによって生気せいきせつ完全かんぜん否定ひていされ、酵素こうそ存在そんざい認知にんちされた[10]

かぎ鍵穴かぎあなせつ

編集へんしゅう

上述じょうじゅつしたように、19世紀せいき後半こうはんにはまだ酵素こうそ生物せいぶつから抽出ちゅうしゅつされる実体じったい不明ふめい因子いんしかんがえられていたが、酵素こうそ性質せいしつかんする研究けんきゅうすすんだ。その研究けんきゅうはや段階だんかいで、酵素こうそ特徴とくちょうとして基質きしつ特異とくいせい反応はんのう特異とくいせい認識にんしきされていた。

これを概念がいねんモデルとして集大成しゅうたいせいしたのが、1894ねんドイツエミール・フィッシャー発表はっぴょうしたかぎ鍵穴かぎあなせつである[11]。これは、基質きしつ形状けいじょう酵素こうそのある部分ぶぶん形状けいじょうかぎ鍵穴かぎあな関係かんけいにあり、かたちていない物質ぶっしつ触媒しょくばいされない、と酵素こうそ特徴とくちょう概念的がいねんてきあらわしたせつである。

現在げんざいでも酵素こうそ反応はんのうもと過程かていのモデルとして十分じゅうぶん通用つうようする。ただし、フィッシャーはこのモデルの実体じったいなにであるかについては科学かがくてき実証じっしょうおこなっていない。

酵素こうそ実体じったい発見はっけん

編集へんしゅう

1926ねんジェームズ・サムナーナタマメウレアーゼ結晶けっしょう成功せいこうし、はじめて酵素こうそ実体じったい発見はっけんした[12]。サムナーはみずからが発見はっけんした酵素こうそウレアーゼはタンパク質たんぱくしつであると実験じっけん結果けっかとともに提唱ていしょうしたが、当時とうじサムナーが研究けんきゅう後進こうしんこく米国べいこく研究けんきゅうしていたこともあり、酵素こうそ実体じったいタンパク質たんぱくしつであるという事実じじつはなかなかみとめられなかった。

そのタンパク質たんぱくしつからなる酵素こうそ存在そんざいジョン・ノースロップウェンデル・スタンレーによって証明しょうめいされ、酵素こうそ実体じったいタンパク質たんぱくしつであるということがひろみとめられるようになった[13]

酵素こうそ分子ぶんし細胞さいぼう生物せいぶつがく

編集へんしゅう

20世紀せいき後半こうはんになると、Xせん回折かいせつをはじめとした生体せいたい分子ぶんし分離ぶんり分析ぶんせき技術ぎじゅつ向上こうじょうし、生命せいめい現象げんしょう分子ぶんし構造こうぞうおこ機能きのうとして理解りかいする分子生物学ぶんしせいぶつがくと、細胞さいぼうない現象げんしょう細胞さいぼうしょう器官きかん機能きのうとそれに関係かんけいする生体せいたい分子ぶんし挙動きょどうとして理解りかいする細胞さいぼう生物せいぶつがく成立せいりつした。これらの学問がくもんによってさらに酵素こうそ研究けんきゅう進展しんてんする。すなわち、酵素こうそ機能きのう性質せいしつが、酵素こうそ酵素こうそ形成けいせいするタンパク質たんぱくしつ構造こうぞうやそのコンホメーション変化へんかによって説明せつめいづけられるようになった。

酵素こうそ機能きのうタンパク質たんぱくしつ構造こうぞう起因きいんするものであれば、なんらかの酵素こうそてきした構造こうぞうつものは酵素こうそとしての機能きのう発現はつげんしうるとかんがえることができる。実際じっさいに、1986ねんにはトーマス・チェックらが、タンパク質たんぱくしつ以外いがいはじめて酵素こうそ作用さようしめ物質ぶっしつリボザイム)を発見はっけんしている[14]

今日きょうにおいては、この酵素こうそ構造こうぞうろん機能きのうろんもとづいて人工じんこうてき触媒しょくばい作用さようちょう分子ぶんし人工じんこう酵素こうそ)を設計せっけい開発かいはつする研究けんきゅうすすめられている[15][16][17]

特性とくせい

編集へんしゅう

酵素こうそ生体せいたいないでの代謝たいしゃ経路けいろのそれぞれの生化学せいかがく反応はんのう担当たんとうするために、有機ゆうき化学かがく使用しようされるいわゆる触媒しょくばいとはことなる基質きしつ特異とくいせい反応はんのう特異とくいせいなどの機能きのうじょう特性とくせいつ。

また、酵素こうそタンパク質たんぱくしつをもとに構成こうせいされているため、ほかのタンパク質たんぱくしつ同様どうようしつかつ特性とくせい、すなわちねつやpHによって変性へんせい活性かっせいうしな特性とくせいつ。つぎ酵素こうそ共通きょうつう特性とくせいである基質きしつ特異とくいせい反応はんのう特異とくいせい、およびしつかつについて説明せつめいする。

基質きしつ特異とくいせい

編集へんしゅう
 
基質きしつ結合けつごうする酵素こうそ

酵素こうそ作用さようする物質ぶっしつ選択せんたくする能力のうりょくち、その特性とくせい基質きしつ特異とくいせいえい: substrate specificity)とぶ。

たとえば、あるペプチド分解ぶんかい酵素こうそ(ペプチターゼ)を作用さようさせてタンパク質たんぱくしつ分解ぶんかいする場合ばあいは、特定とくてい部位ぶいペプチド結合けつごう加水かすい分解ぶんかいするため、部位ぶいによっては基質きしつとして認識にんしきせずにまったく作用さようしない。

一方いっぽうタンパク質たんぱくしつを(酵素こうそではなく)さん塩基えんき触媒しょくばい加水かすい分解ぶんかいする場合ばあいは、ペプチド結合けつごう任意にんい箇所かしょ作用さようする。また、ペプチド分解ぶんかい酵素こうそはペプチド結合けつごうだけに反応はんのうし、ほかの結合けつごう(エステルやグリコシド結合けつごう)には作用さようしないが、さん塩基えんき触媒しょくばいならばペプチド結合けつごうもほかの結合けつごう区別くべつすることなく分解ぶんかいする。

この特性とくせい酵素こうそ研究けんきゅうのごく初期しょきから認識にんしきされており、かぎ鍵穴かぎあなたとえたモデルで説明せつめいされていた。20世紀せいき中頃なかごろ以降いこうXせん結晶けっしょう解析かいせき酵素こうそ分子ぶんし立体りったい構造こうぞう特定とくていできるようになり、鍵穴かぎあな仕組しくみのがかりが入手にゅうしゅできるようになった。

すなわち、酵素こうそであるタンパク質たんぱくしつ立体りったい構造こうぞうにはさまざまなおおきさや形状けいじょうのくぼみが存在そんざいし、それはタンパク質たんぱくしついち配列はいれつアミノ酸あみのさん配列はいれつ順序じゅんじょ)におうじて決定けっていされている。前述ぜんじゅつかぎあなはまさにタンパク質たんぱくしつ立体りったい構造こうぞうのくぼみ(クラフト)である。酵素こうそは、くぼみにった基質きしつだけをくぼみのおく存在そんざいする酵素こうそ活性かっせい中心ちゅうしんみちびくことで、酵素こうそ作用さよう発現はつげんする。

今日きょうでは、Xせん結晶けっしょう解析かいせきによって立体りったい構造こうぞう決定けっていしなくても、過去かこ知見ちけん計算けいさん化学かがくもとづき、タンパク質たんぱくしついち配列はいれつ情報じょうほうやその設計せっけいとなる遺伝子いでんし塩基えんき配列はいれつ情報じょうほうから立体りったい構造こうぞう予測よそくすることが可能かのうになりつつある。さらに、生物せいぶつかい存在そんざいしないタンパク質たんぱくしつ酵素こうそ設計せっけいすることも、タンパク質たんぱくしつ以外いがい物質ぶっしつ同様どうよう手法しゅほうによって人工じんこう酵素こうそ設計せっけいすることも可能かのうである。

生物せいぶつかい存在そんざいする酵素こうそ適合てきごうする基質きしつ研究けんきゅうすることで、ぎゃく各種かくしゅ酵素こうそ阻害そがいざいつくることも可能かのうとなる。すなわち、本来ほんらい基質きしつよりもつよ酵素こうそ活性かっせい部位ぶい結合けつごうする物質ぶっしつ設計せっけいすることで、酵素こうそ機能きのう阻害そがいさせるこころみである。酵素こうそ阻害そがいざい設計せっけいできるようになったことは、医薬品いやくひん分子生物学ぶんしせいぶつがく研究けんきゅう発展はってん役立やくだっている。

誘導ゆうどう適合てきごう

編集へんしゅう
 
酵素こうそ基質きしつ結合けつごうで、ふく合体がったい立体りったい構造こうぞう変化へんかする様子ようす誘導ゆうどう適合てきごうモデル)

酵素こうそ基質きしつふく合体がったい形成けいせいすると、酵素こうそ基質きしつのそれぞれで立体りったい構造こうぞう変化へんかこる。そのさい基質きしつエントロピー減少げんしょうするというモデルがあり、計算けいさん科学かがく手法しゅほうとうからそのエントロピーの変化へんか検証けんしょうされている[18]具体ぐたいてきには、酵素こうそ基質きしつとの結合けつごうによって、酵素こうそ基質きしつともに触媒しょくばい反応はんのうによりてきした分子ぶんし形状けいじょうへと変化へんかするとかんがえられている[19]酵素こうそとのふくごうつうじて、基質きしつ立体りったい構造こうぞう束縛そくばく規制きせいされ(エントロピーの減少げんしょう)、遷移せんい状態じょうたいちかいものへと変化へんかする。すなわち、反応はんのう活性かっせいエネルギーが低下ていかした状態じょうたいにあるとかんがえられている。これらの酵素こうそ基質きしつ双方そうほう構造こうぞう変化へんかによって、誘導ゆうどうてき化学かがく反応はんのうしょうじるというモデルは誘導ゆうどう適合てきごうばれる。[よう検証けんしょう]

誘導ゆうどう適合てきごう基質きしつ特異とくいせい発現はつげんするうえでも重要じゅうようである。アロステリック効果こうかなどもふくめて、酵素こうそ活性かっせい発現はつげんおよびその制御せいぎょにおいて重要じゅうよう役割やくわりになっているとされる。

反応はんのう特異とくいせい

編集へんしゅう

生体せいたいないではある1つの基質きしつ着目ちゃくもくしても、作用さようする酵素こうそちがえば生成せいせいぶつわってくる。通常つうじょう酵素こうそは1つの化学かがく反応はんのうしか触媒しょくばいしない性質せいしつち、これを酵素こうそ反応はんのう特異とくいせいぶ。

酵素こうそ反応はんのう特異とくいせいつため、消化しょうか酵素こうそなどいくつかの例外れいがいのぞけば、通常つうじょう1つの酵素こうそ生体せいたいない複雑ふくざつ代謝たいしゃ経路けいろの1かしょだけを担当たんとうしている。これは、生体せいたい恒常こうじょうてき維持いじするための重要じゅうよう性質せいしつである。

まず、ある代謝たいしゃ経路けいろ存在そんざいするかどうかは、その代謝たいしゃ経路けいろ担当たんとうする固有こゆう酵素こうそ存在そんざいするかどうかに左右さゆうされるため、その酵素こうそタンパク質たんぱくしつさんせいする遺伝子いでんし発現はつげんによって制御せいぎょできる。また、代謝たいしゃ産物さんぶつの1つが過剰かじょうになった場合ばあい、その代謝たいしゃ経路けいろ担当たんとうする固有こゆう酵素こうそ活性かっせいフィードバック阻害そがいこるため、過剰かじょう生産せいさん動的どうてき制御せいぎょされる。

酵素こうそはそれぞれに固有こゆう基質きしつ生化学せいかがく反応はんのう担当たんとうするが、おな生体せいたいないでも組織そしき細胞さいぼう種類しゅるいことなると、別種べっしゅ酵素こうそおな基質きしつおな生化学せいかがく反応はんのう担当たんとうする場合ばあいがある。このような関係かんけい酵素こうそたがいにアイソザイムえい: isozyme)とぶ。

酵素こうそ作用さようしつかつ

編集へんしゅう

酵素こうそ役割やくわりたすとき、またはその活性かっせいうしな原因げんいんには、酵素こうそ構成こうせいするタンパク質たんぱくしつ立体りったい構造こうぞうコンホメーション)がふか関与かんよしている。しつかつ原因げんいんとなる要因よういんとしては、ねつpHしお濃度のうど溶媒ようばい、ほかの酵素こうそによる作用さようなどがられている。

タンパク質たんぱくしつねつ、pH、しお濃度のうど溶媒ようばいなどかれた条件じょうけんちがいによって容易ようい立体りったい構造こうぞうえるが、条件じょうけんおおきくわると立体りったい構造こうぞう可逆かぎゃくてきおおきくわり、酵素こうそ場合ばあいしつかつすることもある。したがって、酵素こうそ反応はんのういたりてき温度おんどいたりてきpHや水溶すいようなかだちなど条件じょうけん限定げんていされる。場合ばあいによっては、汚染おせんした微生物びせいぶつ発生はっせいするペプチダーゼなどの消化しょうか酵素こうそによってタンパク質たんぱくしつ構造こうぞううしなわれてしつかつすることもある。

ただし、生物せいぶつ多様たようせい非常ひじょうひろいため、こうねつきんこう酸性さんせいきんこうアルカリきんなどの酵素こうそ(イクストリーモザイム)のように極端きょくたん温度おんどやpHにえうるとされるものや、有機ゆうき溶媒ようばいちゅうでも活性かっせいたもたれるものもあり、こうした酵素こうそ工業こうぎょう利用りよう現実げんじつてきになりはじめている。

分類ぶんるい

編集へんしゅう

酵素こうそ分類ぶんるい方法ほうほうはいくつかあるが、ここでは酵素こうそ所在しょざいによる分類ぶんるいと、基質きしつ酵素こうそ反応はんのう種類しゅるい基質きしつ特異とくいせい反応はんのう特異とくいせいちがい)による系統けいとうてき分類ぶんるいげる。後者こうしゃによる分類ぶんるい酵素こうそ命名めいめいほう関連かんれんしている。

所在しょざいによる分類ぶんるい

編集へんしゅう

酵素こうそ生物せいぶつ体内たいないにおける反応はんのうのすべてをこしているといっても過言かごんではない。したがって、代謝たいしゃ反応はんのう関与かんよする生物せいぶつ体内たいないであれば普遍ふへんてき存在そんざいしている。酵素こうそは、生体せいたいまく細胞さいぼうまく細胞さいぼうしょう器官きかんまく)に結合けつごうしているまく酵素こうそと、細胞さいぼうしつ細胞さいぼうがい存在そんざいする溶型酵素こうそとに分類ぶんるいされる。溶型酵素こうそのうち、細胞さいぼうがい分泌ぶんぴつされる酵素こうそとく分泌ぶんぴつがた酵素こうそぶ。

このような酵素こうそ種類しゅるいちがいは、酵素こうそ以外いがいタンパク質たんぱくしつ種類しゅるいちがい(まくタンパク質たんぱくしつ分泌ぶんぴつがたタンパク質たんぱくしつ)と同様どうように、立体りったい構造こうぞうにおける疎水そすいせいがわくさり親水しんすいせいがわくさりいち構造こうぞうじょう分布ぶんぷタンパク質たんぱくしつ配列はいれつのモチーフ)のちがいによる。ほかのタンパク質たんぱくしつ同様どうよう酵素こうそ細胞さいぼうないリボゾームなま合成ごうせいされるが、アミノ酸あみのさん配列はいれつ遺伝子いでんし依存いぞんするため、その構造こうぞう酵素こうそ進化しんか反映はんえいしている。遺伝いでんてき近隣きんりん酵素こうそ類似るいじのモチーフをち、酵素こうそぐんのグループを形成けいせいする。

まく酵素こうそ

編集へんしゅう
 
まく酵素こうそしきひだりから埋没まいぼつがた貫通かんつうがた付着ふちゃくがた

生体せいたいまく存在そんざいするまく酵素こうそはエネルギー保存ほぞん物質ぶっしつ輸送ゆそう関与かんよするものもおおく、生体せいたいまく機能きのうにな重要じゅうよう酵素こうそぐんATPアーゼATP合成ごうせい酵素こうそ呼吸こきゅうくさりふく合体がったいバクテリオロドプシンなど)がおおい。生体せいたいまく酵素こうそとの位置いち関係かんけいによって3種類しゅるい大分だいぶできる。

生体せいたいまく内部ないぶ疎水そすいせい外部がいぶ親水しんすいせいであるため(=脂質ししつじゅうまくばれる)、まく酵素こうそであるタンパク質たんぱくしつ部分ぶぶん構造こうぞうがわくさり)の性質せいしつも、まくせっしているところは疎水そすいせいつよくてまく脂質ししつへの親和しんわせいがきわめてたかく、まくから突出とっしゅつしているところは親水しんすいせいつよくなっている。

溶型酵素こうそ

編集へんしゅう

細胞さいぼうしつ存在そんざいしている酵素こうそは、みず比較的ひかくてきよくける。細胞さいぼうしつでの代謝たいしゃにはこの可溶性かようせい酵素こうそおおかかわっている。可溶性かようせい酵素こうそは、外部がいぶには親水しんすいせいアミノ酸あみのさん内部ないぶには疎水そすいせいアミノ酸あみのさんあつまって、球形きゅうけい立体りったい構造こうぞうをとっている場合ばあいおおい。

分泌ぶんぴつがた酵素こうそ
編集へんしゅう

酵素こうそ細胞さいぼうないさんされるが、さん生後せいご細胞さいぼうがい分泌ぶんぴつされるものもあり、分泌ぶんぴつがた酵素こうそばれる。消化しょうか酵素こうそ代表だいひょうれいであり、細胞さいぼうがい存在そんざいする物質ぶっしつみやすいように消化しょうかするために分泌ぶんぴつされる。その形状けいじょう可溶性かようせい酵素こうそおなじく球形きゅうけいをしている場合ばあいおおい。

生物せいぶつたいしてなんらかの刺激しげきねつ、pH、圧力あつりょくなどの変化へんか)をあたえると、その刺激しげきたいしてエキソサイトーシスばれる分泌ぶんぴつ形態けいたい分泌ぶんぴつがた酵素こうそ放出ほうしゅつする現象げんしょうられる場合ばあいがある。構造こうぞう生物せいぶつがく進歩しんぽにおいて、最初さいしょ結晶けっしょうされ立体りったい構造こうぞう決定けっていされていった酵素こうそおおくは分泌ぶんぴつがた酵素こうそであった。

系統けいとうてき分類ぶんるい

編集へんしゅう

酵素こうそ反応はんのう特異とくいせい基質きしつ特異とくいせいちがいによって分類ぶんるいすると、系統けいとうてき分類ぶんるい可能かのうとなる。このような系統けいとうてき分類ぶんるいあらわ記号きごうとして、EC番号ばんごうがある。

EC番号ばんごうは "EC"[注釈ちゅうしゃく 1]つづけた4番号ばんごう "EC X.X.X.X"(Xは数字すうじ)によってあらわし、数字すうじひだりからみぎにかけて分類ぶんるいこまかくなっていく。EC番号ばんごうでは、まず反応はんのう特異とくいせいを、酸化さんか還元かんげん反応はんのう転移てんい反応はんのう加水かすい分解ぶんかい反応はんのう解離かいり反応はんのう異性いせい反応はんのう、ATPの補助ほじょともな合成ごうせい、イオンや分子ぶんし生体せいたいまくえての輸送ゆそう合計ごうけいななつのグループに分類ぶんるいしている。

さらにかくグループで分類ぶんるい基準きじゅんことなるが、反応はんのう特異とくいせい基質きしつ特異とくいせいとのちがいとで細分さいぶんしていく。すべての酵素こうそについてこのEC番号ばんごうられており、現在げんざいやく3,000種類しゅるいほどの反応はんのうつかっている[注釈ちゅうしゃく 2]

また、ある活性かっせいにな酵素こうそがほかの活性かっせいつこともおおく、ATPアーゼなどはATP加水かすい分解ぶんかい反応はんのうのほかにタンパク質たんぱくしつ加水かすい分解ぶんかい反応はんのうへの活性かっせいっている(EC番号ばんごう酸化さんか還元かんげん酵素こうそ転移てんい酵素こうそ加水かすい分解ぶんかい酵素こうそリアーゼ異性いせい酵素こうそリガーゼなどを参照さんしょう)。

命名めいめいほう

編集へんしゅう

酵素こうそ名前なまえ国際こくさい生化学せいかがく連合れんごう酵素こうそ委員いいんかいによって命名めいめいされ、同時どうじにEC番号ばんごうあたえられる。酵素こうそ名称めいしょうには「常用じょうようめい」と「系統けいとうめい」がされる。常用じょうようめい系統けいとうめいちがいについてれいげながら説明せつめいする。

れいつぎ酵素こうそ同一どういつ酵素こうそ(EC番号ばんごう=EC 1.1.1.1)
  • 系統けいとうめい — アルコール:NAD+ オキシドレダクターゼ(酸化さんか還元かんげん酵素こうそ
    基質きしつ分子ぶんし名称めいしょう複数ふくすう場合ばあい併記へいき)と反応はんのう名称めいしょう連結れんけつして命名めいめいされる。系統けいとうめいにおける反応はんのう名称めいしょうには規制きせいがある。
  • 常用じょうようめいアルコールデヒドロゲナーゼだつ水素すいそ酵素こうそ
    系統けいとうめいおな規則きそく命名めいめいされるが、基質きしつ一部いちぶ省略しょうりゃくして短縮たんしゅくされている。また、命名めいめい規則きそくしたがわない酵素こうそおおく、DNAポリメラーゼなどはそのひとつである。

ふるくに発見はっけんされ命名めいめいされた酵素こうそについては、上述じょうじゅつ規則きそくではなく当時とうじ名称めいしょうがそのまま使用しようされている。

ペプシントリプシンキモトリプシンカタラーゼ

などがこれにあたる。

構成こうせい

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酵素こうそ因子いんし関係かんけい

RNAのぞいて、酵素こうそタンパク質たんぱくしつから構成こうせいされるが、タンパク質たんぱくしつだけで構成こうせいされる場合ばあいもあれば、タンパク質たんぱくしつせい構成こうせい要素ようそ因子いんし)をふく場合ばあいふくあいタンパク質たんぱくしつ)もある。酵素こうそふくあいタンパク質たんぱくしつ場合ばあい因子いんし結合けつごうしていないと活性かっせい発現はつげんしない。このとき、因子いんし結合けつごうしていないタンパク質たんぱくしつアポ酵素こうそ、アポ酵素こうそ因子いんしとが結合けつごうした酵素こうそホロ酵素こうそという。以下いかでは、とくことわらないかぎり、タンパク質たんぱくしつ以外いがいの、金属きんぞくんでいない有機ゆうき化合かごうぶつたん有機ゆうき化合かごうぶつ呼称こしょうする。

因子いんしれいとしては、無機むきイオン英語えいごばん有機ゆうき化合かごうぶつ酵素こうそ)があり、金属きんぞく含有がんゆう有機ゆうき化合かごうぶつのこともある。いくつかのビタミン酵素こうそであることがられている[20]因子いんし酵素こうそとの結合けつごう強弱きょうじゃく分類ぶんるいされるが、その境界きょうかい曖昧あいまいである。

また、酵素こうそ構成こうせいするタンパク質たんぱくしつくさりペプチドくさり)は複数ふくすうほんであったり、複数ふくすう種類しゅるいであったりする場合ばあいがある。複数ふくすうほんのペプチドくさりから構成こうせいされる場合ばあい立体りったい構造こうぞうつそれぞれのペプチドくさりサブユニットぶ。

補欠ほけつ分子ぶんしぞく

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酵素こうそ必須ひっす元素げんそ[21][22]
元素げんそめい 酵素こうそめい
てつ シトクロームcオキシダーゼ(E.C. 1.9.3.1[23])、コレステロールモノオキシゲナーゼ(E.C. 1.14.15.6)、リボヌクレオシドリンさんレダクターゼE.C. 1.17.4.1[23]、アコニターゼ(E.C. 4.2.1.3[23]
亜鉛あえん DNAポリメラーゼ(E.C. 2.7.7.7[23])、RNAポリメラーゼ(E.C. 2.7.7.6[23])、カルボネートデヒドラターゼ(E.C. 4.2.1.1,)、アルカリホスファターゼ(E.C. 3.1.3.1[23])、アルドラーゼ(E.C. 4.2.1.1)、カルボキシペプチダーゼA/B(E.C. 3.4.17.1/2)、ロイシンアミノペプチダーゼ(E.C. 3.4.11.1[23])、アルコールデヒドロゲナーゼE.C. 1.1.1.1[23]
元素げんそめい 酵素こうそめい
どう L-アスコルビンさんオキシダーゼ(E.C. 1.10.3.3[23])、ラッカーゼE.C. 1.10.3.2[23])、モノフェノールモノオキシゲナー(E.C. 1.14.18.1[23])、カテコールオキシダーゼ(E.C. 1.10.3.2[23]
カルシウム カルパインE.C. 3.4.22.17[23]
マンガン スーパーオキシドディスムター(E.C. 1.15.1.1[23]
モリブデン キサンチンオキシダーゼ(E.C. 1.1.3.22[23])、亜硫酸ありゅうさんオキシダーゼ(E.C. 1.8.3.1[23])、ニトロゲナーゼ(E.C. 1.18.6.1[23]
コバルト ビタミンB12レダクターゼ(E.C. 1.6.99.9)
ニッケル ウレアーゼ(E.C. 3.5.1.5[23]
セレン グルタチオンペルオキシダーゼ(E.C. 1.11.1.9[23]

強固きょうこ結合けつごう共有きょうゆう結合けつごうをしている因子いんし補欠ほけつ分子ぶんしぞく(ほけつぶんしぞく、えい: prosthetic group)という。補欠ほけつ分子ぶんしぞく有機ゆうき化合かごうぶつのこともあるが、酵素こうそから遊離ゆうりしうる因子いんし補欠ほけつ分子ぶんしぞく区別くべつして、酵素こうそぶ。

カタラーゼP450などの活性かっせい中心ちゅうしん存在そんざいするヘムてつなどが代表だいひょうてき補欠ほけつ分子ぶんしぞくである。金属きんぞくプロテアーゼの亜鉛あえんイオンなど、直接ちょくせつタンパク質たんぱくしつ結合けつごうしていることもある。生体せいたい要求ようきゅうする微量びりょう金属きんぞく元素げんそは、補欠ほけつ分子ぶんしぞくとして酵素こうそまれていることがおおい。

酵素こうそ

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有機ゆうき化合かごうぶつ因子いんし酵素こうそという。遊離ゆうりしない場合ばあい補欠ほけつ分子ぶんしぞくという。アポ酵素こうそとの結合けつごうよわい、有機ゆうき化合かごうぶつ補欠ほけつ分子ぶんしぞく酵素こうそとし、酵素こうそ補欠ほけつ分子ぶんしぞく一種いっしゅととらえるかんがえもある[24]。とはいえ、たとえば、酵素こうそ共有きょうゆう結合けつごうしていても遊離ゆうりしうるリポさん酵素こうそ区別くべつされるなど、酵素こうそであるか補欠ほけつ分子ぶんしぞくであるかの基準きじゅん厳密げんみつではない。

酵素こうそは、常時じょうじ酵素こうそ構造こうぞうまれていないが、酵素こうそ反応はんのうしょうじるさい基質きしつ共存きょうぞんすることが必要ひつようとされる。酵素こうそ活性かっせいのときにまれ、ホロ酵素こうそしょうじさせる。したがって、酵素こうそ反応はんのう進行しんこうによって基質きしつとともに消費しょうひされ、典型てんけいてき補欠ほけつ分子ぶんしぞくとはことなる[25]

酵素こうそタンパク質たんぱくしつねつによって変性へんせいしつかつするのにたいして、酵素こうそ比較的ひかくてきたい熱性ねっせいたかく、かつ透析とうせきによって酵素こうそタンパク質たんぱくしつから分離ぶんりすることが可能かのうであるため、因子いんしとしてはや時期じきからその存在そんざいられていた。1931ねんにはオットー・ワールブルクによってはじめて酵素こうそ発見はっけんされている。ビタミンあるいはビタミンの代謝たいしゃぶつおぎなえ酵素こうそとなるものがおおい。

NADNADPFMNFADチアミンリンさんピリドキサールリンさん酵素こうそAαあるふぁ-リポさん葉酸ようさんなどが代表だいひょうてき酵素こうそであり、サプリメントとして健康けんこう食品しょくひん利用りようされるものもおおい。

サブユニットとアイソザイム

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ホウレンソウRubisCOだいサブユニットとしょうサブユニットのヘテロダイマーの8りょうたい構成こうせいされる(サブユニットごとに色分いろわけ)。

酵素こうそ複数ふくすうのペプチドくさりタンパク質たんぱくしつくさり)から構成こうせいされることがある。その場合ばあいかくペプチドくさりはそれぞれ固有こゆうさん構造こうぞう立体りったい構造こうぞう)をとり、サブユニットばれる。サブユニット構成こうせい酵素こうそよん構造こうぞうぶこともある。

ヒト乳酸にゅうさんデヒドロゲナーゼと
アイソザイムタイプ
アイソザイム
タイプ
サブユニット
構成こうせい
組織そしき分布ぶんぷ
LD1 H4 心臓しんぞう
LD2 H3M 骨格こっかくすじ
横隔膜おうかくまく
腎臓じんぞうなど
LD3 H2M2
LD4 HM3
LD5 M4 肝臓かんぞう

たとえばヒトにおける乳酸にゅうさんデヒドロゲナーゼ(LDH; E.C. 1.1.1.27)は4つのサブユニットから構成こうせいされるよんりょうからだだが、体内たいない組織そしき位置いちによってサブユニット構成こうせいことなることがられている。この場合ばあい、サブユニットは心筋しんきんがたH[23])と骨格こっかくすじがたM[23])の2種類しゅるいであり、そのいずれか4つがわされて乳酸にゅうさんデヒドロゲナーゼが構成こうせいされる(たとえばH2とM2から構成こうせいされるH2M2など)。したがって5タイプの乳酸にゅうさんデヒドロゲナーゼが存在そんざいするが、これらはおな基質きしつおな生化学せいかがく反応はんのう担当たんとうするアイソザイム関係かんけいにある。これを応用おうようすると、たとえば臨床りんしょう検査けんさ乳酸にゅうさんデヒドロゲナーゼのアイソザイムタイプを同定どうてい電気でんきおよげどう同定どうていできる)して、疾患しっかん肝炎かんえんであるか心筋しんきん疾患しっかんであるかを識別しきべつすることができる。

なお、ここにしめした以外いがい要因よういん遺伝子いでんし変異へんいによるいち構造こうぞう変化へんかなど)によってアイソザイムとなることもある。

ふくあい酵素こうそ

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ふくあい酵素こうそしき
脂肪酸しぼうさん生成せいせいけい

一連いちれん代謝たいしゃ過程かてい担当たんとうする複数ふくすう酵素こうそがクラスターを形成けいせいしてふくあい酵素こうそとなることもおおい。

代表だいひょうれいとして脂肪酸しぼうさん合成ごうせいけいふくあい酵素こうそしめす。これらは [ACP]S-アセチルトランスフェラーゼ(AT; E.C. 2.3.1.38)、マロニルトランスフェラーゼ(MT; E,C.2.3.1.39)、3-オキソアシル-ACPシンターゼI(KS)、3-オキソアシル-ACPレダクターゼ(KR; E.C. 1.1.1.100)、クロトニル-ACPヒドラターゼ(DH; E.C. 4.2.1.58)、エノイル-ACPレダクターゼ(ER; E.C. 1.3.1.10)の6種類しゅるい酵素こうそがアシルキャリアタンパクしつ(ACP)とともにクラスターとなってふくあい酵素こうそ形成けいせいしている。脂肪酸しぼうさん合成ごうせいけいはほとんどがふくあい酵素こうそで、単独たんどく酵素こうそはアセチルCoAカルボギラーゼ(TE; E.C. 6.4.1.2)だけである[21]

生化学せいかがく

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酵素こうそ反応はんのう速度そくど

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日本工業規格にほんこうぎょうきかくに「酵素こうそ選択せんたくてき触媒しょくばい作用さようをもつタンパク質たんぱくしつ主成分しゅせいぶんとする生体せいたい高分子こうぶんし物質ぶっしつ」(JIS K 3600:2000-1418[26])と定義ていぎされているように触媒しょくばいとして利用りようされるが、化学かがく工業こうぎょうなどでもちいられる典型てんけいてき金属きんぞく触媒しょくばいとは反応はんのう特性とくせいことなる。

 

だいいち酵素こうそ反応はんのう場合ばあい基質きしつ濃度のうど[S]がたかくなると反応はんのう速度そくど飽和ほうわする現象げんしょうられる。酵素こうそ場合ばあい基質きしつ濃度のうどたかえると、反応はんのう速度そくど飽和ほうわ最大さいだい速度そくど Vmax へといた双曲線そうきょくせんえがく。一方いっぽう金属きんぞく触媒しょくばい場合ばあい反応はんのうはつ速度そくど [νにゅー] は触媒しょくばい濃度のうど依存いぞんせず基質きしつ濃度のうど [S] のいちしき決定けっていされる。

これは、酵素こうそ金属きんぞく触媒しょくばいとの粒子りゅうし状態じょうたいちがいによって説明せつめいできる。金属きんぞく触媒しょくばい場合ばあい触媒しょくばい粒子りゅうし表面ひょうめん金属きんぞく原子げんしおおわれており、無数むすう触媒しょくばい部位ぶい存在そんざいする。それにたいして酵素こうそ場合ばあいは、酵素こうそ分子ぶんし基質きしつくらべて巨大きょだい場合ばあいおおく、活性かっせい中心ちゅうしんおおくてもすうしょ程度ていどしかたない。したがって、金属きんぞく触媒しょくばいくらべて、基質きしつ触媒しょくばい酵素こうそ)とが衝突しょうとつしても(活性かっせい中心ちゅうしん適合てきごうし)反応はんのうこす頻度ひんどちいさい。そして基質きしつ濃度のうどたかまると、すくない酵素こうそ活性かっせい中心ちゅうしん基質きしつうようになるため、飽和ほうわ現象げんしょうしょうじる。このように酵素こうそ反応はんのうでは、酵素こうそ基質きしつった基質きしつふく合体がったいつく過程かてい反応はんのう速度そくどめるりつそく過程かていになっているとかんがえられる。

酵素こうそ反応はんのう定式ていしき

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1913ねんL・ミカエリスM・メンテン酵素こうそによるショとう加水かすい分解ぶんかい反応はんのう測定そくていし、「かぎ鍵穴かぎあな」モデルと実験じっけん結果けっかから酵素こうそ基質きしつふく合体がったいモデルみちびし、酵素こうそ反応はんのう定式ていしきした。このモデルによると、酵素こうそつぎのようにしめされる。

酵素こうそ(E)+ 基質きしつ(S)  酵素こうそ基質きしつふく合体がったい(ES)→ 酵素こうそ(E)+ 生成せいせいぶつ(P)

すなわち、酵素こうそ反応はんのうは、酵素こうそ基質きしつ一時いちじてきむすびついて酵素こうそ基質きしつふく合体がったい形成けいせいするだい1の過程かていと、酵素こうそ基質きしつふく合体がったい酵素こうそ生産せいさんぶつとに分離ぶんりするだい2の過程かていとにけられる。

きわめて分子ぶんし活性かっせいたか酵素こうそ炭酸たんさん脱水だっすい酵素こうそがあるが、この酵素こうそは1びょうあたり100まん二酸化炭素にさんかたんそ炭酸たんさんイオン変化へんかさせる(kcat = 106 s−1)。

阻害そがい様式ようしき酵素こうそ反応はんのう速度そくど

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酵素こうそ反応はんのう速度そくど曲線きょくせんを、阻害そがいざいのないはらけいあおせん阻害そがいざい存在そんざいするけいあかせんしめ

酵素こうそ反応はんのう速度そくどは、基質きしつ構造こうぞう分子ぶんし存在そんざいや、後述こうじゅつのアロステリック効果こうかによって影響えいきょうける(阻害そがいされる)。阻害そがい作用さよう種類しゅるいによって、酵素こうそ反応はんのう速度そくど応答おうとう様式ようしき阻害そがい様式ようしき)がわる。そこで、反応はんのう速度そくど反応はんのう速度そくどパラメータを解析かいせきして阻害そがい様式ようしき調しらべることで、ぎゃくにどのような阻害そがい作用さようけているかを識別しきべつすることができる。どのような阻害そがい様式ようしきであるかを調しらべることによって、酵素こうそがどのような調節ちょうせつ作用さようけているか類推るいすいすることができる。医薬品いやくひん開発かいはつでは、調節ちょうせつ作用さよう研究けんきゅうすることは、酵素こうそ作用さよう制御せいぎょすることによって症状しょうじょう改善かいぜんするあらたな治療ちりょうやく開発かいはつ応用おうようされている。

阻害そがい様式ようしきおおきくけるとつぎのように分類ぶんるいされる。

酵素こうそ反応はんのう活性かっせいエネルギー

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触媒しょくばい活性かっせいエネルギー比較ひかく[27]
反応はんのうめい 触媒しょくばい/酵素こうそ エネルギー
cal/mol[注釈ちゅうしゃく 3]
H2O2分解ぶんかい (なし) 18,000
白金はっきんコロイド 11,000
カタラーゼ
Catalase; きも
5,000
ショとう加水かすい分解ぶんかい H+ 26,500
サッカラーゼ
酵母こうぼ
11,500
カゼイン
加水かすい分解ぶんかい
HCl aq. 20,000
キモトリプシン
(Trypsin)
12,000
酢酸さくさんエチル
加水かすい分解ぶんかい
H+ 13,200
リパーゼ
(Lipase;
4,200

一般いっぱん化学かがく反応はんのう進行しんこうする方向ほうこう化学かがくポテンシャルちいさくなる方向ほうこう(エネルギーを消費しょうひする方向ほうこう)に進行しんこうし、反応はんのう速度そくど反応はんのう活性かっせいエネルギーたかいかいやかにおおきく左右さゆうされる(化学かがく平衡へいこう反応はんのう速度そくどろん参照さんしょう)。

酵素こうそ反応はんのう触媒しょくばい反応はんのうで、化学かがく反応はんのう一種いっしゅなので、その性質せいしつ同様どうようである。ただし、一般いっぱん触媒しょくばい反応はんのう化学かがく反応はんのうなかでも活性かっせいエネルギーがひくいのが通常つうじょうであるが、酵素こうそ反応はんのう活性かっせいエネルギーはとくひくいものがおおい。

一般いっぱん活性かっせいエネルギーが15,000cal/molから10,000cal/molに低下ていかすると、反応はんのう速度そくど定数ていすうはおよそ4.5×107ばいになる。

反応はんのう機構きこうモデル

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単純たんじゅん構造こうぞう無機むき触媒しょくばいさん塩基えんき触媒しょくばいとうとはことなり、酵素こうそ基質きしつ特異とくいせい発揮はっきし、ターゲットとする反応はんのうのみの活性かっせいエネルギーげている。こういった、酵素こうそ特有とくゆう特徴とくちょう酵素こうそ反応はんのう機構きこうについては、いまだ統一とういつてき見解けんかいられていない。しかし今日きょうでは、構造こうぞう生物せいぶつがく発展はってんタンパク質たんぱくしつひとし変異へんい導入どうにゅうといったしょ技法ぎほうによって、その片鱗へんりんあきらかにされつつある。

たとえば、タンパク質たんぱくしつ分解ぶんかい酵素こうそセリンプロテアーゼでは、酵素こうそふく合体がったい形成けいせいすることで基質きしつ遷移せんい状態じょうたいちか分子ぶんし構造こうぞう束縛そくばくされ(反応はんのうけいエントロピー減少げんしょう)、その結果けっかとして活性かっせいエネルギーの低下ていか反応はんのう促進そくしん)がこる(エントロピー・トラップ)。[よう検証けんしょう]

 
キモトリプシンのさん塩基えんき触媒しょくばい部位ぶい

酵素こうそ結合けつごうした基質きしつは、酵素こうそ活性かっせい中心ちゅうしん付近ふきんにおいて分子ぶんし構造こうぞう規制きせいされ(誘導ゆうどう適合てきごう)、より反応はんのうしやすい状態じょうたいとなり、生成せいせいぶつへの反応はんのう進行しんこうする[よう検証けんしょう]。ここでは、セリンプロテアーゼの一種いっしゅであるキモトリプシンれいしめす。

  1. His57プロトンまけ荷電かでんしたAsp102譲渡じょうとする。
  2. His57塩基えんきとなり、活性かっせい中心ちゅうしんSer195からプロトンをうばう。
  3. Ser195活性かっせいされて(まけ荷電かでんして)基質きしつ攻撃こうげきする。
  4. His57がプロトンを基質きしつ譲渡じょうとする
  5. Asp102からHis57がプロトンをうばい、1.の状態じょうたいもどる。

遷移せんい状態じょうたい抗体こうたい酵素こうそ

編集へんしゅう

酵素こうそ反応はんのうにおいて、酵素こうそ基質きしつふく合体がったいから生成せいせいぶつへと変化へんかする過程かていでは、原子げんしあいだ結合けつごう距離きょり角度かくどなどが変形へんけいした分子ぶんし構造こうぞうとなる遷移せんい状態じょうたい反応はんのうちゅうあいだたい経由けいゆする。

いかえると、化学かがく反応はんのうがしやすい分子ぶんし形状けいじょう遷移せんい状態じょうたいであり、酵素こうそ酵素こうそ基質きしつふく合体がったい誘導ゆうどう適合てきごうすることでその状態じょうたいつくしている。遷移せんい状態じょうたい活性かっせいポテンシャルのたか状態じょうたい相当そうとうするため、すくないエネルギーで反応はんのうちゅうあいだたい状態じょうたいえて生成せいせいぶつへと変化へんかする。

遷移せんい状態じょうたいつくることが酵素こうそタンパクのしゅたる役割やくわりだとすれば、結合けつごうによって遷移せんい状態じょうたいつくすことができれば酵素こうそになるともかんがえられる。実際じっさい酵素こうそおなじように分子ぶんし構造こうぞう識別しきべつし、その分子ぶんし結合けつごうする生体せいたい物質ぶっしつ抗体こうたいがある。1986ねんアメリカのトラモンタノらは、酵素こうそおなはたらきをするように意図いとして製造せいぞうした抗体こうたい意図いとどおりの酵素こうそ作用さようしめすことを発見はっけんし、抗体こうたい酵素こうそ(abzyme)とづけた。

ちょう分子ぶんし化合かごうぶつによって、人工じんこう酵素こうそつく研究けんきゅう成果せいかげている。

酵素こうそ反応はんのう調節ちょうせつ機構きこう

編集へんしゅう

生体せいたい酵素こうそ活性かっせい大小だいしょう制御せいぎょするには、酵素こうそりょう制御せいぎょする場合ばあいと、酵素こうそ性質せいしつ変化へんかさせる場合ばあいとがある。それらはつぎのように分類ぶんるいされる[28]

  1. 酵素こうそタンパク質たんぱくしつ合成ごうせいりょう制御せいぎょによる酵素こうそりょう増大ぞうだい
  2. 酵素こうそタンパク質たんぱくしつ生体せいたい分子ぶんし可逆かぎゃくてき作用さようすることによる酵素こうそ活性かっせい変化へんか
  3. 酵素こうそタンパク質たんぱくしつ修飾しゅうしょくされることによる酵素こうそ活性かっせい変化へんか

1.の調整ちょうせい遺伝子いでんし発現はつげんりょう転写てんしゃ調節ちょうせつによって実現じつげんし、2.や3.については酵素こうそ質的しつてき変化へんかであり、1.の転写てんしゃ制御せいぎょより素早すばや応答おうとうしめす。

2.や3.の調節ちょうせつれいとして「フィードバック阻害そがい」がげられる。フィードバック阻害そがいによって生産せいさんぶつ過剰かじょうになると酵素こうそ活性かっせい低減ていげんし、生産せいさんぶつると酵素こうそ活性かっせい復元ふくげんする。

酵素こうそはたら条件じょうけん

編集へんしゅう

おおきくつぎの4つにけられる。

  1. 最適さいてきpH
  2. 最適さいてき温度おんど
  3. 基質きしつ濃度のうど
  4. 酵素こうそ濃度のうど

最適さいてきpH

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かく酵素こうそにはもっとも活発かっぱつ機能きのうするpHがあり、これを最適さいてきpHえい: optimal pH)、もしくはいたりてきpHという。ほとんどの酵素こうそかく環境かんきょう生理せいりてきpHで活動かつどうがもっともはげしくなる。たとえばヒトの体内たいないでは通常つうじょう最適さいてきpHは7付近ふきんであるが、胃液いえきなかふくまれるペプシン最適さいてきpHは1.5、トリプシン最適さいてきpHはやく8、アルギナーゼen:Arginase)の最適さいてきpHは9.5である。最適さいてきpHが酵素こうそをもっとも安定あんていさせるpHではないことに注意ちゅうい必要ひつようである。

最適さいてき温度おんど

編集へんしゅう

最適さいてきpHと同様どうように、酵素こうそ活動かつどうがもっともはげしくなる温度おんど存在そんざいする。これを最適さいてき温度おんど(optimal temperature)、もしくはいたりてき温度おんどともいう。ヒトの酵素こうそ場合ばあい通常つうじょう生理せいりてき温度おんどである35℃から40℃付近ふきんとされる。最適さいてきpHと同様どうように、最適さいてき温度おんど酵素こうそをもっとも安定あんていさせる温度おんどではないことに注意ちゅうい必要ひつようである。

基質きしつ濃度のうど

編集へんしゅう

酵素こうそ機能きのう基質きしつ濃度のうど依存いぞんする。基本きほんてきには、基質きしつ濃度のうどがるほどはんおう速度そくどがるが、ある一定いってい濃度のうど飽和ほうわむかえる。さらに基質きしつ濃度のうどやすことで、ぎゃく酵素こうそ機能きのういちじるしく阻害そがいされることもある。これら酵素こうそ基質きしつ濃度のうど関係かんけいは、酵素こうそ基質きしつ種類しゅるいによってさまざまである。

酵素こうそ濃度のうど

編集へんしゅう

酵素こうそ機能きのう酵素こうそ自体じたい濃度のうどにも依存いぞんする。基本きほんてきには、酵素こうそ濃度のうどがるほどはんおう速度そくど上昇じょうしょうする。生体せいたいないでの酵素こうそ濃度のうどは、遺伝子いでんし発現はつげんによって制御せいぎょされる。In vitroでは、酵素こうそ溶解ようかい依存いぞんするが、濃度のうどたかめすぎた結果けっか沈殿ちんでんした酵素こうそ構造こうぞう破壊はかいされている場合ばあいがほとんどであり、ふたた溶解ようかいさせても機能きのう回復かいふくさせることはむずかしい。

酵素こうそ実生活じっせいかつのさまざまな場面ばめん応用おうようされている。1つは酵素こうそ自体じたい利用りようするもので、代表だいひょうてき分野ぶんやとして食品しょくひん加工かこうぎょうげられる。もう1つは生体せいたい酵素こうそ観測かんそく制御せいぎょするもので、代表だいひょうてき分野ぶんやとして医療いりょう製薬せいやくぎょうげられる。

食品しょくひん

編集へんしゅう
 
チーズの製造せいぞうにはレンネットが利用りようされる

人間にんげん有史ゆうし以前いぜんから、保存ほぞんしょくなどをつくすために発酵はっこう利用りようしてきた。たとえば、味噌みそ醤油じょうゆさけなどの発酵はっこう食品しょくひん製造せいぞうには、伝統でんとうてきこうじ麦芽ばくがなどの生物せいぶつ利用りようしてきた。

ふけまいふけむぎたねこうじあたえ、40あいだほどおくと麹菌こうじきん増殖ぞうしょくし、べいこうじむぎこうじとなるが、こうしたこうじには各種かくしゅ酵素こうそ、プロテアーゼ、アミラーゼ、リパーゼなどが蓄積ちくせきされる[29]発酵はっこうとは、これらの酵素こうそ食品しょくひんちゅうタンパク質たんぱくしつをペプチドやアミノ酸あみのさんへと分解ぶんかいして旨味うまみとなり、炭水化物たんすいかぶつ乳酸菌にゅうさんきん酵母こうぼ利用りようできるとうへと分解ぶんかい甘味あまみとなり、独特どくとく風味ふうみとなっていく[29]

今日きょうでは、酵素こうそ実体じったい機能きのう詳細しょうさい判明はんめいしたため、発酵はっこう食品しょくひんであっても生物せいぶつ使つかわずに酵素こうそ自体じたい作用さようさせて製造せいぞうすることもあり、酵素こうそ使つかって食品しょくひん性質せいしつ意図いとしたように変化へんかさせることが可能かのうになっている。

酵素こうそ反応はんのうは、一般いっぱん流通りゅうつうしている加工かこう食品しょくひんおおくにおいて製造せいぞう工程こうていちゅう利用りようされているほか、でんぷん原料げんりょうとした各種かくしゅ糖類とうるい製造せいぞうにももちいられている。また、果汁かじゅう清澄せいちょう苦味にがみ除去じょきょにく軟化なんかといった品質ひんしつ改良かいりょうや、リゾチームによる日持ひも向上こうじょうなどにももちいられている。最初さいしょ発見はっけんされた酵素こうそであるジアスターゼはアミラーゼの一種いっしゅであり、消化しょうかざいとしてもちいられる。

酵素こうそ工業こうぎょう利用りよう
目的もくてき たんぱくしつ
分解ぶんかい
でんぷんるい
分解ぶんかい
セルロース
木質もくしつ分解ぶんかい
成分せいぶん変換へんかん その
酵素こうそめい プロテアーゼるい アミラーゼるい セルラーゼるい イソメラーゼるい
化粧けしょうひんにち用品ようひん アルカリプロテアーゼ
セリンプロテアーゼ
デキストラナーゼ      
食品しょくひん工業こうぎょう グルタミナーゼ αあるふぁ-アミラーゼ
βべーた-アミラーゼ
アミロプルラナーゼ
グルコアミラーゼ
ヘミセルラーゼ
アラバナーゼ
イソメラーゼ全般ぜんぱん
グルコースイソメラーゼ転化てんかとう
 
醸造じょうぞう工業こうぎょう プロテアーゼ全般ぜんぱん αあるふぁ-アミラーゼ
βべーた-グルカナーゼ
セルラーゼ全般ぜんぱん
ヘミセルラーゼ
   
飼料しりょうよう   αあるふぁ-アミラーゼ セルラーゼ全般ぜんぱん
ヘミセルラーゼ
ペクチナーゼ
フィターゼ
   
洗剤せんざいよう
繊維せんい加工かこうよう
アルカリプロテアーゼ アミロプルラナーゼ セルラーゼ全般ぜんぱん
プロトペクチナーゼ
ペクチナーゼ
  リパーゼ
あぶらぶん分解ぶんかい
ペルオキシダーゼ
漂白ひょうはく
かみパルプ関連かんれん     キシラナーゼ   リパーゼ
エステル交換こうかん

以下いかげるような分野ぶんや酵素こうそ使つかわれている。

これらの酵素こうそ生物せいぶつ由来ゆらい天然てんねんぶつとされるため、食品しょくひん関連かんれん法規ほうきもとめられる原材料げんざいりょう表示ひょうじでは省略しょうりゃくされていることがおおい。また、発酵はっこう食品しょくひんのぞ加工かこう食品しょくひんでは、酵素こうそ加工かこうすけざいとして利用りようするため、製造せいぞう工程こうていちゅうしつかつまたは除去じょきょされて、完成かんせいした食品しょくひんちゅうには存在そんざいしない。したがって、これらの酵素こうそ食品しょくひん添加てんかぶつとはことなるあつかいになっている。

健康けんこう効果こうか標榜ひょうぼうする製品せいひん

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キモトリプシンとトリプシン(うし)、パンクレアチンはうしぶた膵臓すいぞうから、パンクレリパーゼ(ぶた)は医薬品いやくひんとして、ブロメライン(パイナップル)やパパイン(パパイヤ)はタンパク質たんぱくしつ消化しょうかたすける健康けんこう食品しょくひんとしてよくもちいられる[30]酵素こうそふく消化しょうか酵素こうそざいが、だい2るい医薬品いやくひん医薬いやく部外ぶがいひんとして販売はんばいされている。高峰たかみね譲吉じょうきち小麦こむぎかわフスマから発酵はっこう培養ばいようさせたデンプン分解ぶんかい酵素こうそタカヂアスターゼも、配合はいごうされる酵素こうそのひとつである[31]消化しょうか酵素こうそざい病院びょういん処方しょほうされることもあり、体内たいない消化しょうか酵素こうそ不足ふそくによる消化しょうか症状しょうじょうりゅう皮膚ひふ症状しょうじょうこしている状態じょうたい改善かいぜんすることが目的もくてきである[32]。また消化しょうか酵素こうそざい膵臓すいぞう病気びょうきによる酵素こうそ不足ふそくのために医療いりょうとしてもちいられ有効ゆうこうである[3][4]

日本にっぽんではきず壊死えし組織そしき除去じょきょするためのブロメラインの軟膏なんこう医薬品いやくひんがある。日本にっぽん国外こくがいではおな目的もくてきでパパインの軟膏なんこう利用りようできるくにもあり、健康けんこう皮膚ひふ組織そしきには影響えいきょうあたえにくい[33]。パパインがふくまれるパックや洗顔せんがんりょう市販しはんされている。

にち用品ようひん

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今日きょうでは、洗剤せんざい化粧けしょうひんなどのにち用品ようひんたか付加ふか価値かちをつけるために酵素こうそ利用りようされる場合ばあいおおい。

たとえば洗濯せんたく場合ばあいあせしみやものしみは石鹸せっけんだけではとしにくい。単純たんじゅんあぶらしみとちがって固形こけいぶつであるタンパク質たんぱくしつふくんでおり、しみ成分せいぶん固形こけいぶんからまって衣類いるい繊維せんいつよ接着せっちゃくしているため、界面かいめん活性かっせいざいだけで洗濯せんたくしてもよごれをとしきれない。そこで、タンパク質たんぱくしつ分解ぶんかいする酵素こうそであるプロテアーゼふくんだ酵素こうそ洗剤せんざいひろ利用りようされている。

ただし、通常つうじょうのプロテアーゼは石鹸せっけんけたアルカリ性あるかりせい領域りょういきでは作用さようしないため、アルカリ性あるかりせい領域りょういき良好りょうこう作用さようする(いたりてきpHをつ)アルカリプロテアーゼが利用りようされている。

アルカリプロテアーゼは、1947ねんにオッテセン(M. Ottesen)らがこうアルカリきんから発見はっけんした。今日きょうではアルカリプロテアーゼは酵素こうそ洗剤せんざいよう大量たいりょう生産せいさんされており、工業こうぎょう製品せいひんとして生産せいさんされるプロテアーゼの60%以上いじょうめるようになっている[21]

 
パパイヤからるパパイン(リボン

プロテアーゼ以外いがいには、衣類いるいセルロース繊維せんい部分ぶぶんてき分解ぶんかいしてよごれが拡散かくさんしやすいようにするために、セルラーゼ添加てんかしている洗剤せんざいもある。

おなじようなれいとして、食器しょっき洗剤せんざい酵素こうそであるプロテアーゼタンパク質たんぱくしつよごれ)やリパーゼあぶらよごれ)を添加てんかすることでよごちを増強ぞうきょうしたり、アミラーゼ澱粉でんぷんしつのり)を添加てんかすることで流水りゅうすいだけで洗浄せんじょうする自動じどう食器しょっき洗浄せんじょうでもよごれがちるように工夫くふうしたりしているれいげられる。なお、洗剤せんざいよう酵素こうそ安全あんぜんせいはよく調しらべられており、環境かんきょうちゅう容易よういかつ究極きゅうきょくてき分解ぶんかいする[34]

化粧けしょうひんへの酵素こうそおう用例ようれいとしては、脱毛だつもうざいケラチン分解ぶんかいする酵素こうそパパインプロテアーゼ一種いっしゅ)を添加てんかすることで、皮膚ひふから突出とっしゅつしたむだ分解ぶんかい切断せつだんするれいなどがある。

歯磨はみがきへの酵素こうそおう用例ようれいとして、歯垢しこうふくまれるデキストラン分解ぶんかいする酵素こうそデキストラナーゼ添加てんかしている製品せいひんがある。

医療いりょう

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20世紀せいきはいって増大ぞうだいした酵素こうそたいする知見ちけんは、医療いりょう治療ちりょうやく劇的げきてき改革かいかくをもたらした。ヒト体内たいないしょうじている代謝たいしゃには酵素こうそ関与かんよしているため、酵素こうそ存在そんざいりょう測定そくていする臨床りんしょう検査けんさによって疾病しっぺい診断しんだんすることが可能かのうになっている(サブユニットとアイソザイムふし乳酸にゅうさんデヒドロゲナーゼのれい参照さんしょう)。

また酵素こうそによる調節ちょうせつホメオスタシス〉の失調しっちょう病気びょうき原因げんいんである場合ばあいは、酵素こうそ活性かっせい抑制よくせいする治療ちりょうやくによって症状しょうじょう治療ちりょうすることができる(れい高血圧こうけつあつにおけるアンジオテンシン変換へんかん酵素こうそ阻害そがいやく糖尿とうにょうびょうにおけるインクレチン分解ぶんかい酵素こうそ阻害そがいするDPP4阻害そがいやくなど)。

ぎゃくに、酵素こうそ欠損けっそんする先天せんてんせい代謝たいしゃ異常いじょう疾患しっかんられているが、発病はつびょうまえ酵素こうそりょう検査けんさして、発症はっしょうおさえる治療ちりょうおこなうことができる〈記事きじ 遺伝子いでんし疾患しっかんくわしい〉(れいゴーシェびょう)。

工業こうぎょう利用りよう技術ぎじゅつ固定こてい酵素こうそ

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バイオリアクター装置そうち小型こがた

製品せいひんにはふくまれなくても、食品しょくひん工業こうぎょうから香料こうりょう医薬品いやくひん原料げんりょうなどファインケミカルの分野ぶんやまで多方面たほうめん食品しょくひん原料げんりょう化成かせいひん製造せいぞう酵素こうそ利用りようされている。

たとえば、生体せいたいから抽出ちゅうしゅつされた酵素こうそ工業こうぎょう化学かがく利用りようするさい技術ぎじゅつとして、酵素こうそ固定こてい一般いっぱんしている。固定こていとは、工業こうぎょうよう酵素こうそ土台どだいとなる物質ぶっしつ担体)に固定こていしてもちいる方法ほうほうである。経済けいざいてき生産せいさんするためには、ぎゃく反応はんのうこらないように反応はんのうけいから生成せいせいぶつ効率こうりつよく除去じょきょする必要ひつようがある。しかし、このとき同時どうじ酵素こうそ除去じょきょしてしまうと、本来ほんらい再生さいせいさい利用りよう可能かのう触媒しょくばいである酵素こうそ使つかてになってしまう。固定こていは、この問題もんだい解決かいけつする方法ほうほうである。

今日きょうでは、固定こてい酵素こうそは、バイオリアクター技術ぎじゅつとして食品しょくひん工業こうぎょうから香料こうりょう医薬品いやくひん原料げんりょうなどファインケミカルの分野ぶんやまで多方面たほうめん化成かせいひん製造せいぞう利用りようされている。バイオリアクターは、ポンプで基質きしつ原料げんりょう)を注入ちゅうにゅうすると同時どうじ生成せいせいぶつ流出りゅうしゅつさせる生産せいさん装置そうちであり、酵素こうそを担体とともに柱状ちゅうじょう反応はんのう装置そうちない固定こていすることによって、酵素こうそのリサイクルの問題もんだい連続れんぞく生産せいさんによる経済けいざいせい向上こうじょうなどの問題もんだいてん解決かいけつしている。バイオリアクターよう酵素こうそあるいは酵素こうそふく微生物びせいぶつ固定こていには、べにるいからたんはなされるとうるいκかっぱ-カラギーナン食品しょくひん化粧けしょうひんゲルざいにも利用りようされる)が汎用はんようされる。

世界せかいはじめて固定こてい酵素こうそ使つかった工業こうぎょう成功せいこうしたのは千畑せんはた一郎いちろう土佐とさ哲也てつやらであり、1967ねんに DEAE-Sepadex担体に固定こていしたアミノアシラーゼ(E.C. 3.5.1.14)を使つかって、ラセミたいであるN-アシル-DL-アミノ酸あみのさん混合こんごうぶつから目的もくてきL-アミノ酸あみのさんだけをひとし加水かすい分解ぶんかいして光学こうがく活性かっせいアミノ酸あみのさん方法ほうほう開発かいはつした[21]

バイオセンサー

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酵素こうそ基質きしつ特異とくいせい反応はんのうせい利用りようして化学かがく物質ぶっしつ検出けんしゅつするセンサーが実用じつようされている。これらは生体せいたい由来ゆらい機能きのう利用りようすることからバイオセンサーばれ、1960年代ねんだい研究けんきゅうはじまり1976ねんにアメリカでグルコースセンサーが市販しはんされて以来いらい医療いりょう診断しんだん環境かんきょう測定そくていなどの場面ばめんもちいられてきた[35]酵素こうそもちいるバイオセンサーはとく酵素こうそセンサーとばれる。

電気でんき化学かがく酵素こうそ化学かがくわせられたグルコースセンサーでは、電極でんきょくうえにグルコースオキシダーゼが固定こていされている。検体けんたいちゅうにグルコースが存在そんざいしてグルコースオキシダーゼが作用さようすると酸化さんか還元かんげん反応はんのうによって電極でんきょく電流でんりゅうながれ、グルコースを定量ていりょうすることができる。糖尿とうにょうびょう患者かんじゃ自身じしん血糖けっとう調しらべるためにもちいる市販しはん血糖けっとう測定そくていでは、このグルコースセンサーが利用りようされている。

このほか、蛍光けいこう発光はっこう水晶すいしょう振動しんどう表面ひょうめんプラズモン共鳴きょうめいなどの原理げんり酵素こうそとをわせたバイオセンサーが研究けんきゅうされている。

生命せいめい起源きげん酵素こうそ

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現存げんそんするすべての生物せいぶつしゅにおいて、酵素こうそふくむすべてのタンパク質たんぱくしつ設計せっけいDNAうえ遺伝いでん情報じょうほうであるゲノムもとづいている。一方いっぽう、DNA自身じしん複製ふくせい合成ごうせいにも酵素こうそ必要ひつようとしている。つまり、酵素こうそ存在そんざいはDNAの存在そんざい前提ぜんていであり、一方いっぽうでDNAの存在そんざい酵素こうそ存在そんざい前提ぜんていであるから、ゲノムの起源きげんにおいてDNAの確立かくりつさき酵素こうそ確立かくりつさきかというパラドックス存在そんざいしていた。最近さいきん研究けんきゅうでは、このパラドックスについて、いまだ確証かくしょうはないものの以下いかのように説明せつめいしている。

 
リボザイムの作用さようじょ。リボザイムは配列はいれつ認識にんしきしてmRNAを特定とくてい部位ぶい切断せつだんする。

1986ねんアメリカトーマス・チェックらによって発見はっけんされたリボザイムは、触媒しょくばい作用さようRNAであり、つぎの3種類しゅるい反応はんのう触媒しょくばいすることがられている[36]

  1. 自分じぶん自身じしん作用さようしてRNAを切断せつだんする。(グループ I, II, III イントロン自己じこスプライシング
  2. の RNA に作用さようしてRNAを切断せつだんする。(リボヌクレアーゼP
  3. ペプチド結合けつごう形成けいせい。(リボゾーム23S rRNA

特性とくせい1.および2.からは、RNAは自己じこ複製ふくせいしていた段階だんかい存在そんざいがあるともかんがえられる。また、特性とくせい3.からは、RNAが酵素こうそ役割やくわりにな場合ばあいがあることがわかる。このことから、仮説かせつではあるが、現在げんざいのゲノムの発現はつげん機構きこうセントラルドグマといいあらわされる)が確立かくりつするぜん段階だんかいにおいて、遺伝子いでんし酵素こうそとの役割やくわりおなじRNAがになっているRNAワールドという段階だんかい存在そんざいしたとかんがえられている。

なお、特性とくせい3.のれいとしてげた23S rRNAは、大腸菌だいちょうきんタンパク質たんぱくしつ合成ごうせいするリボゾームうち存在そんざいする。大腸菌だいちょうきんのリボゾームにおいては、アミノアシルtRNAから合成ごうせいされるペプチドにアミノ酸あみのさん転位てんい結合けつごうさせる酵素こうそ活性かっせい中心ちゅうしん主役しゅやくが、タンパク質たんぱくしつではなく23S rRNAとなっている[37]。さらに、この場合ばあい酵素こうそ作用さよう(ペプチジルトランスフェラーゼ活性かっせい)は、23S rRNAのドメインVに依存いぞんすることも判明はんめいしている[38]

また、リボザイムが自己じこ切断せつだんするさいにはなまりイオンが関与かんよするれい判明はんめいしている。このことから、RNAもタンパク質たんぱくしつ酵素こうそ因子いんし共通きょうつう仕組しくみをっているという可能かのうせい示唆しさされている[39]

RNAワールドせつによると、ゲノムを保持ほじする役割やくわりはDNAへ、酵素こうそ機能きのうタンパク質たんぱくしつへと淘汰とうたすすんで、RNAワールドが今日きょうセントラルドグマへと進化しんかしたとかんがえられている。その段階だんかいでは、つぎのようなRNAの特性とくせい進化しんか要因よういんとして寄与きよしたと推定すいていされている[40]

遺伝子いでんし保管ほかんがDNAではなくRNAであったと仮定かていした場合ばあい、RNAには不利ふり特性とくせいがある。それは、リボース2'くらい水酸基すいさんき存在そんざいするため、エステル交換こうかんによって環状かんじょうヌクレオシド(環状かんじょうAMPなど)を形成けいせいしてヌクレオチド切断せつだんされやすいという性質せいしつである。これにたいしてDNAは、リボース2'くらい水酸基すいさんきくため環状かんじょうリンさんエステルを形成けいせいせず、RNAの場合ばあいより安定あんていなヌクレオチドを形成けいせいする。

また、立体りったい構造こうぞう多様たようせいについて考察こうさつすると、RNAの立体りったい構造こうぞうタンパク質たんぱくしつくらべて高次こうじ構造こうぞう単純たんじゅんになることが判明はんめいしている。したがって、RNAから構成こうせいされる酵素こうそくらべ、タンパク質たんぱくしつから構成こうせいされる酵素こうそほう立体りったい構造こうぞう多様たようせいおおきく、基質きしつ特異とくいせいめん遷移せんい状態じょうたいモデルを形成けいせいするじょうでより性能せいのうのよい酵素こうそになるとかんがえられる[41]

人工じんこう酵素こうそ

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分子ぶんし構造こうぞう分子ぶんし認識にんしき遷移せんい状態じょうたい形成けいせい関与かんよしていることが判明はんめいして以来いらい酵素こうそ構造こうぞう変化へんかさせることで人工じんこうてき酵素こうそ人工じんこう酵素こうそ)をつくこころみがなされている。そのアプローチ方法ほうほうとしては

  1. 酵素こうそタンパク質たんぱくしつ設計せっけいえる方法ほうほう
  2. ちょう分子ぶんし化合かごうぶつ設計せっけいする方法ほうほう

げられる。

前者ぜんしゃ1980年代ねんだいごろからこころみられており、アミノ酸あみのさん配列はいれつ変異へんいさせて酵素こうそ特性とくせいがどのように変化へんかするのか、試行錯誤しこうさくごてき研究けんきゅうがなされた。異種いしゅ生物せいぶつあいだゲノム比較ひかくできるようになり、ことなる生物せいぶつ由来ゆらいするどういち酵素こうそについて共通きょうつうせいたか部分ぶぶんとそうでない部分ぶぶんとが明確めいかくになったため、それをまえて配列はいれつ変化へんかさせるのである(いわゆるバイオテクノロジー技術ぎじゅつ一環いっかん)。1990年代ねんだい以降いこうにはコンピュータ大幅おおはば速度そくど向上こうじょうとデータのだい容量ようりょう進行しんこうし、実際じっさいタンパク質たんぱくしつ測定そくていすることなく、コンピュータシミュレーションによっていち配列はいれつからタンパク質たんぱくしつ立体りったい構造こうぞう設計せっけいし、物性ぶっせい予測よそくすることができつつある。また、2000年代ねんだいはいるとゲノム完全かんぜん解読かいどくがさまざまな生物せいぶつしゅ完了かんりょうし、遺伝子いでんし情報じょうほうから分子生物学ぶんしせいぶつがくじょう問題もんだい解決かいけつしようとするこころみ(バイオインフォマティクス技術ぎじゅつ)がなされている。そして現在げんざい、バイオインフォマティクス情報じょうほうからタンパク質たんぱくしつ機能きのう解明かいめいするプロテオミックス技術ぎじゅつへと応用おうよう展開てんかいされつつある。2008ねんには、計算けいさん科学かがくてき手法しゅほうによって設計せっけいされた、実際じっさいケンプだつはなれ触媒しょくばいとして機能きのうする酵素こうそ報告ほうこくされている[42]

後者こうしゃちょう分子ぶんし化合かごうぶつ設計せっけいする方法ほうほうについては、1980年代ねんだいごろから、分子ぶんし認識にんしきおこなちょう分子ぶんし化合かごうぶつ(すなわち基質きしつ特異とくいせいをモデルした化合かごうぶつ)の研究けんきゅう開始かいしされた。当初とうしょ基質きしつ構造こうぞう細部さいぶまでは認識にんしきできなかったため、分子ぶんし嵩高かさだかさを識別しきべつすることからはじめられた。ただしはや時期じきから、ほかの分子ぶんしせいでん相互そうご作用さよう結合けつごうする包摂ほうせつ化合かごうぶつシクロデキストリンクラウンエーテルなど)はられていた。そこで最初さいしょ人工じんこう酵素こうそとして、リングじょう構造こうぞうつシクロデキストリンに活性かっせい中心ちゅうしん模倣もほうしたがわくさり構造こうぞう修飾しゅうしょくすることによって、中心ちゅうしん空洞くうどうにはまり化合かごうぶつたいしてだけ反応はんのうする化学かがく物質ぶっしつ設計せっけいされた。今日きょうでは分子ぶんし認識にんしきすると蛍光けいこうはっするようなちょう分子ぶんし化合かごうぶつ設計せっけいされている。

また、活性かっせい中心ちゅうしんしょうじている遷移せんい状態じょうたいつく方法ほうほうろん反応はんのうじょう理論りろんとして体系たいけいけられている。反応はんのうじょう理論りろんの1つの応用おうようが、2001ねんノーベル化学かがくしょう受賞じゅしょうした野依のより良治よしはるバリー・シャープレスらのひとし触媒しょくばいとして成果せいかげている。

代表だいひょうてき酵素こうそ一覧いちらん

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代表だいひょうてき酵素こうそ一覧いちらんしめす。

  1. 消化しょうか同化どうか作用さよう異化いか作用さよう・エネルギー代謝たいしゃ関与かんよする酵素こうそ
  2. 遺伝いでん関与かんよする酵素こうそ
  3. 細胞さいぼうないのシグナル伝達でんたつ分子ぶんし修飾しゅうしょく関与かんよする酵素こうそ

酵素こうそかんする年表ねんぴょう

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脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ "E.C." や "EC." と表記ひょうきされるれいもある。
  2. ^ EC番号ばんごう酵素こうそ特性とくせいによって分類ぶんるいされるので、おなじ EC番号ばんごうであってもことなる配列はいれつタンパク質たんぱくしつ酵素こうそふくまれる。
  3. ^ 1,000cal/molがやく4.2kJ/molに相当そうとうする。

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関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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  • 酵素こうそ』 - コトバンク
  • 谷川たにがわみのる酵素こうそ反応はんのう基礎きそ名前なまえはよくくが,よくわからない「酵素こうそ」をるために—」『化学かがく教育きょういくだい66かんだい12ごう日本にっぽん学会がっかい、2018ねん、584-587ぺーじdoi:10.20665/kakyoshi.66.12_584