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意識 - Wikipedia

意識いしき(いしき、Consciousness)は、一般いっぱんに、「きている状態じょうたいにあること(覚醒かくせい)」または「自分じぶんいまある状態じょうたいや、周囲しゅうい状況じょうきょうなどを認識にんしきできている状態じょうたいのこと」を[1]

ただし、歴史れきしてき文化ぶんかてきに、この言葉ことば様々さまざまかたちもちいられており、その意味いみ多様たようである。哲学てつがく心理しんりがく生物せいぶつがく医学いがく宗教しゅうきょう日常にちじょう会話かいわなどのなかで、様々さまざま意味いみもちいられる。生物せいぶつがく神経しんけいがくなど学術がくじゅつめんでは、意識いしき有無うむ注目ちゅうもくした植物しょくぶつ動物どうぶつ線引せんひ[2]ヒト以外いがいふく動物どうぶつ意識いしき進化しんかのどの段階だんかい発生はっせいしたか[3]考察こうさつ研究けんきゅうされている。

日本語にほんごでは、「ある物事ものごとについて注意ちゅういはらっている」という意味いみで「意識いしきする」、「かんがかたかたについて努力どりょくおこなわれている」といったことをあらわ場合ばあい意識いしきたかい(またはひくい)」といったいいかたがなされる。たとえば公害こうがい廃棄はいきぶつなどの問題もんだいについてよく勉強べんきょうし、改善かいぜんのために様々さまざま行動こうどう対策たいさくおこなっている個人こじん集団しゅうだんを、環境かんきょう問題もんだいについての意識いしきたかい、などと表現ひょうげんする。このような用法ようほうは「遵法じゅんぽう意識いしき」「コスト意識いしき」「プロ意識いしき」「意識いしき調査ちょうさ」「意識いしき改革かいかく」など様々さまざま表現ひょうげんられる。

学術がくじゅつてきには、文脈ぶんみゃくおうじて意識いしきというかたり様々さまざま意味いみ使用しようされる。以下いかでは、哲学てつがく心理しんりがく臨床りんしょう医学いがくをはじめとするいくつかの分野ぶんやけて、代表だいひょうてき意味いみ解説かいせつする。

哲学てつがく

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ライプニッツの思想しそうにおける、認識にんしき光芒こうぼう悟性ごせい理性りせい感性かんせい各々おのおの役割やくわりつ。ライプニッツの影響えいきょうけたクリスティアン・ヴォルフは、「意識いしき」の概念がいねんを「られている状態じょうたい」(ドイツ: Bewusstsein)と造語ぞうごづけた。カントは、Cogitoを「純粋じゅんすい統覚とうかく」とみなし、すべての悟性ごせいてき認識にんしき根源こんげんであるとしたが、意識いしきそのものの主題しゅだいにはかわず、かく認識にんしき能力のうりょく身分みぶん能力のうりょくについての考察こうさつをその批判ひはんにおいて展開てんかいした。

意識いしきがドイツ哲学てつがくにおいて全面ぜんめんてき主題しゅだいされるのはドイツ観念論かんねんろんにおいてである。フィヒテは、デカルトやカントが cogito/Ich denke から遡行そこうてきられるとした "ich bin" わがあり、をデカルトにおいてそうであったような個我こが自己じこ認識にんしきから、カントが主題しゅだいした超越ちょうえつろんてき認識にんしき能力のうりょく原理げんり拡大かくだいし、自我じがび、そのはたらきを定式ていしきした。ここで自我じがとは意識いしき能力のうりょくにほかならない。つまり、そのような自我じがは、自己じこ自身じしん真正しんせい対象たいしょうとする活動かつどう、すなわちことぎょうどく: Tathandlung)と把握はあくされ、このみずからを客観きゃっかんとする認識にんしき主観しゅかんとしての自我じが自己じこ意識いしきぶ。フィヒテのほか、シェリングヘーゲルらが自己じこ意識いしき哲学てつがく問題もんだいとしてげた。シェリングは、対象たいしょうされた自己じこ意識いしきを「無意識むいしき」とづけた。ユングはシェリングが無意識むいしき発見はっけんしゃであると指摘してきしている。ドイツけんにおける意識いしきについての研究けんきゅうは1780年代ねんだいから1810ねんごろまでさかんにおこなわれたが、その存在そんざいろんてき哲学てつがくゆずった。

認知にんち科学かがく人工じんこう知能ちのうにおける意識いしき

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認知にんち科学かがく人工じんこう知能ちのう分野ぶんやでは、人間にんげん人工じんこう知能ちのう質問しつもんなどをして、その人工じんこう知能ちのうがあたかもひとのように反応はんのうし、ひとからひとなん区別くべつがつかなければ、それをもってしてその存在そんざい知能ちのうあるいは意識いしきっているとなしていいのではないか、とアラン・チューリング提案ていあんした(チューリング・テスト)。

現代げんだいにおいて、ヒトふく動物どうぶつ神経しんけい細胞さいぼうのう活動かつどう計測けいそくする技術ぎじゅつ進歩しんぽし、意識いしき医学いがく以外いがい自然しぜん科学かがくでも研究けんきゅうテーマとなっている。動物どうぶつ神経しんけい細胞さいぼう電子でんし回路かいろ接続せつぞく成功せいこうしている。五感ごかんなどをもとのう統合とうごうされた感覚かんかくクオリア)と、外部がいぶから計測けいそくされたのうからの信号しんごうとの関連かんれん解明かいめいであるが、意識いしきまれる過程かてい電子でんし計算けいさんアルゴリズム類似るいじしているという仮説かせつもある。将来しょうらいけて、電子でんし計算けいさんに「人工じんこう意識いしき」をたせる(動物どうぶつ意識いしきのアップロードをふくむ)研究けんきゅうはじまっている[4]

心理しんりがく

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19世紀せいき中葉ちゅうようのヨーロッパでは、哲学てつがくから心理しんりがく分科ぶんかした。ヴィルヘルム・ヴント意識いしきという概念がいねん中心ちゅうしん心理しんりがくてようとした。意識いしき自分じぶんかんずる「感覚かんかく」「感情かんじょう」「観念かんねん」にけられる。このみっつの意識いしき自分じぶん自身じしんかんじたままにることを内観ないかんほう(ないかんほう)という。

行動こうどう主義しゅぎ心理しんりがくでは、意識いしきという概念がいねんもちいずに、刺激しげき反応はんのうという図式ずしき人間にんげん行動こうどう理解りかいしようとする。

精神せいしん分析ぶんせきがく

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精神せいしん分析ぶんせきがくでは人間にんげんしんを、意識いしきぜん意識いしき無意識むいしきみっつにける。

自分じぶん現在げんざい認識にんしきしている内容ないよう意識いしきという。つまり、我々われわれ直接的ちょくせつてきしん現象げんしょうとして経験けいけんしていること、これはわたし経験けいけんだとかんじることのできることを総体そうたいてき意識いしきという。意識いしき短期たんき記憶きおく作動さどう記憶きおく関係かんけいがある[よう出典しゅってん]、ともされる。

自分じぶん現在げんざい認識にんしきしていないが、努力どりょくすればおもすことができる内容ないようぜん意識いしきという。

自分じぶん現在げんざい認識にんしきしておらず、努力どりょくしてもおもせない内容ないよう無意識むいしきという。精神せいしん分析ぶんせきがくでは通常つうじょう方法ほうほうではおもせない意識いしきにあるものを、自由じゆう連想れんそうほうなどをもちいて意識いしきってゆくことで無意識むいしき理解りかいしようとした。

覚醒かくせい状態じょうたいとかかわる部位ぶいとして、脳幹のうかんあみさまたいふくうえこうせいもうさまたい賦活ふかつけい(じょうこうせいもうようたいふかつけい、Ascending Reticular Activating System; ARAS)という構造こうぞう重要じゅうようであることがられている。うえぎょうせいもうさまたい賦活ふかつけい刺激しげきするとねむりからめる。ぎゃくにこの部位ぶい破壊はかいされると昏睡こんすい状態じょうたいおちいる。うえぎょうせいもうさまたい賦活ふかつけい概念がいねん1949ねんにMoruzziとMagounによってまとめられた[5][6]

ヒトの覚醒かくせい睡眠すいみんやく24あいだ周期しゅうきかえされる。24あいだ周期しゅうきでの睡眠すいみん-覚醒かくせいリズムは、ヒトの場合ばあい生後せいご15-16しゅうよわいからはじまる[7] 。この地球ちきゅう自転じてん周期しゅうき同調どうちょうしたリズムはサーカディアン・リズムばれる。ヒトをふく哺乳類ほにゅうるいのサーカディアン・リズムは、左右さゆう視神経ししんけい交差こうさする交叉こうさうえにある交叉こうさじょうかくという視床ししょう下部かぶ神経しんけいかくされている。交叉こうさじょうかく破壊はかいされた生物せいぶつ睡眠すいみん覚醒かくせい周期しゅうきてきなリズムがうしなわれる[8]睡眠すいみん覚醒かくせいリズムは網膜もうまくから入射にゅうしゃする外部がいぶ光信みつのぶごうなどにより修飾しゅうしょく調整ちょうせいされている。時間じかんかんするがかり情報じょうほうのない場所ばしょ(たとえばあかるさの変化へんかしない地下ちかしつなど)にヒトを長期間ちょうきかんくと、睡眠すいみん-覚醒かくせいリズムはおよそ25あいだ周期しゅうきとなる。これはフリーラン・リズムとばれる[9]

医療いりょう現場げんばの「意識いしきレベル」

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医療いりょう分野ぶんやでは患者かんじゃ意識いしき状態じょうたいを「意識いしきレベル」という数値すうち評価ひょうかする。とく救急きゅうきゅう医療いりょう麻酔ますい科学かがく分野ぶんやもちいられる。

意識いしき構成こうせいには「清明せいめい」「ひろがり」「質的しつてき」のみっつの要素ようそ存在そんざいするが、このうち一般いっぱんてき意識いしき障害しょうがいというと「清明せいめい」の低下ていかについてをす。「ひろがり」の低下ていか意識いしき狭窄きょうさく)は催眠さいみんであり、「質的しつてき」の変化へんか意識いしき変容へんよう)はせんもうもうろうひとしす。

意識いしきのうはたらきが活性かっせいし、五感ごかんたいする刺激しげきかんることが可能かのう状態じょうたいである。「意識いしきがある」とは、のうにおいて刺激しげき認識にんしきすることが可能かのうであり、刺激しげきたい明確めいかく反応はんのうしめ状態じょうたいす。これにたいして、 無意識むいしき五感ごかんたいする刺激しげきのうかんられず、刺激しげき認識にんしきしていない状態じょうたいである。刺激しげきたいする反応はんのう部分ぶぶんてき状態じょうたいである。また、「意識いしきがない」とは、のうはたらきが部分ぶぶんてき停止ていしし、刺激しげき入力にゅうりょく拒否きょひした状態じょうたいである。「うしなう」とは、過剰かじょう刺激しげきたいしショックをけ、のうはたらきが停止ていしした状態じょうたいである。

医療いりょう現場げんばにおいては、意識いしき状態じょうたい反応はんのうおうじて「意識いしきレベル」で表示ひょうじする。救急きゅうきゅう医療いりょうでは、バイタルサイン重要じゅうよう項目こうもくひとつとして疾病しっぺいしゃとう意識いしきをアセスメント(確認かくにん)して「意識いしきレベル」の判定はんていおこなう。簡易かんいてきおこな場合ばあいは、アセスメントは3STEPでおこな[10]。STEP1 - まず「○○さん、わかりますか~?」などとこえがけして、こえ反応はんのうがあるか観察かんさつする[10]たおれたひと身元みもと不明ふめいしゃなどで名前なまえからない場合ばあいは、名前なまえきで「大丈夫だいじょうぶですか~?」などと適当てきとうこえがけして観察かんさつする[10]。このSTEP1で反応はんのうかったらSTEP2にすすみ、かたのひらでパタパタなどとはたつつ「○○さーん、きてくださーい!」とおおきなこえさけんで反応はんのう観察かんさつする(ただみみとおいだけ、というひともいるため)[10]。STEP2でも反応はんのうかったらSTEP3にすすみ、うで皮膚ひふなどをつねり反応はんのう観察かんさつする[10]

意識いしきレベル」はGlasgow Coma ScaleJapan Coma ScaleEmergency Coma Scaleによって数値すうちして評価ひょうかされる。

意識いしき研究けんきゅう

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意識いしきという言葉ことばじつ様々さまざま意味いみ使つかわれており、意識いしきという言葉ことば多義たぎせいは、議論ぎろん研究けんきゅうなかでしばしば混乱こんらんこしやすいものとなっている。

それぞれのひとがそれぞれの場面ばめんで、どういう意味いみでもって、意識いしきという言葉ことば使つかっているのか、そのてんについて相互そうご了解りょうかいたないまま議論ぎろんをしていくと、ちがいが発散はっさんしていくことがおおい。そうした混乱こんらんは、心理しんり学者がくしゃ神経しんけい科学かがくしゃといった、専門せんもんてき肩書かたがきを人々ひとびとあいだでも普通ふつうられる。このような問題もんだいけるため意識いしきかかわる研究けんきゅう分野ぶんやでは、注意深ちゅういぶか研究けんきゅうしゃ論文ろんぶん書籍しょせき冒頭ぼうとうで、わたし意識いしきという言葉ことば使つかうときそれはどういう意味いみか、といった説明せつめいあらかじおこなうこともすくなくない。意識いしき研究けんきゅうしているそれぞれの科学かがくしゃ研究けんきゅうしている対象たいしょう様々さまざまだが(選択せんたくてき注意ちゅういのメカニズムや覚醒かくせい麻酔ますいのメカニズム、主観しゅかんてき体験たいけん神経しんけい相関そうかんぶつなど)、そうした全体ぜんたいふくもっと包括ほうかつてき意識いしき定義ていぎとして暫定ざんていてきにしばしば使用しようされるのはアメリカの哲学てつがくしゃジョン・サール採用さいようした定義ていぎもとづくつぎのような定義ていぎである[11][12][13][14]

意識いしきとは、わたしたちが、ゆめないねむりからめて、ふたたゆめのないねむりにもどるまでのあいだっているしんてき性質せいしつのことである

一方いっぽう日常にちじょうなかでは、意識いしきというかたり知性ちせいえい:intelligence)や自由じゆう意志いしえい:free will)の意味いみ混同こんどうされることがある。しかし、しばしばられるこれらの用法ようほうは、しんのう直接ちょくせつかかわる分野ぶんや現代げんだい研究けんきゅうしゃによって、ほとんど採用さいようされていない。

以下いか意識いしきという言葉ことば容易ようい区別くべつできるいくつかの意味いみべる[15]。この区分くぶんかならずしも相互そうご排他はいたてき分類ぶんるいではなく、相互そうご重複じゅうふく関連かんれんった区分くぶんである。このような区分くぶん仕方しかた研究けんきゅうしゃによって、とりわけ哲学てつがくてき立場たちばによってまちまちで、統一とういつされた見解けんかいはない。このこうでは混同こんどうされやすい意味いみ区分くぶんべるにめて哲学てつがくてき議論ぎろん詳細しょうさいにはらない。

覚醒かくせい

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意識いしきには、きている、覚醒かくせいしている、といった意味いみがある(えい:vigilance, arousal, awakening, wakefulness など)。これは睡眠すいみん失神しっしん昏睡こんすいまたは死亡しぼう、という状態じょうたいにない、ということ意味いみする。この意味いみでの用例ようれいをあげるとたとえば「柔道じゅうどうで、わざをかけられて我慢がまんしていたら、意識いしきうしなってしまった」とか「交通こうつう事故じこのあとずっと昏睡こんすい状態じょうたいだったひと意識いしきが、今朝けさやっともどった」などがある。この意味いみでの意識いしきは、意識いしきがある、意識いしきがない、といったかたち表現ひょうげんされる。この意味いみでの意識いしきは、creature consciousness (クリーチャー・コンシャスネス、生物せいぶつ意識いしき造物ぞうぶつ意識いしき)とばれることもある。また、この意味いみでの意識いしき目的もくてきらずに表現ひょうげんされるため intransitive consciousness (イントランジッティブ・コンシャスネス、自動詞じどうしてき意識いしき)とばれることもある。

意識いしきには、づいている、またはっている、といった意味いみがある(えい:awareness)。たとえばいまあなたがこの文章ぶんしょう室内しつないんでいるとしたら、エアコンの稼動かどうおん、パソコンのファンのうなり、冷蔵庫れいぞうこうごおと蛍光けいこうとうおとまどけるかぜおとそと通過つうかするくるまおと等々とうとうなんらかのおとつねっているとおもわれる。しかしそうしたことはおそらくいまわれてみてづいただろうが、それまではとくかんがえていなかったとおもわれる。このようなとき「たしかに色々いろいろおとがなっているね。でもいままでとく意識いしきしていなかった」などとう。このような用法ようほうが「意識いしき」という言葉ことばにはある。ほかにもれいげると、あなたはこの文章ぶんしょうんでいるあいだなんまばたをしている(人間にんげんはおよそすうびょうごとにいちかいじる動作どうさかえす)。これもわれてみばそうだとおもうかもしれないが、しかしわれるまではおそらくそうしたことはかんがえていなかったはずである。このようなときも「たしかにまばたきはしている。でも普段ふだんとく意識いしきしていないね」などとう。意識いしきする、意識いしきしない、という言葉ことばでこのようなことが表現ひょうげんされている。この意味いみでの意識いしきは「○○を意識いしきしている」「△△について意識いしきしていなかった」などと、目的もくてきって表現ひょうげんされるため transitive consciousness (トランジッティブ・コンシャスネス、他動詞たどうしてき意識いしき)とばれることもある。

注意ちゅうい

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意識いしきという言葉ことば注意ちゅういえい:attention)の意味いみもちいられることがある。「意識いしき」と「注意ちゅうい」というふたつの概念がいねん学者がくしゃたちのあいだでも、しばしば相互そうご混同こんどうしてもちいられる概念がいねんである。しかし意識いしき注意ちゅうい専門せんもんたちはこのふたつの概念がいねんを、ふかかかわりはあるがべつ概念がいねんであるとして、はっきり区別くべつして使用しようする[16]注意ちゅういには定位ていい(orienting)、フィルターリング(filtering)、探索たんさく(searching)というおおきくみっつの側面そくめんがある[17]定位ていいとは、注意ちゅういけている対象たいしょうについての情報じょうほうやすいようにからだ姿勢しせいなど制御せいぎょすること。たとえばいぬちかくでおおきいおとらしてみる。すると各部かくぶ筋肉きんにく収縮しゅうしゅく弛緩しかんつうじて物音ものおとのした方向ほうこういぬかおけられ、眼球がんきゅう対象たいしょう方向ほうこうけられる。そしておとったほうかっていぬみみがピンとつ。こうして対象たいしょうについての情報じょうほう取得しゅとくしやすくなる(これは定位ていい反射はんしゃばれる)。フィルタリングとは注意ちゅういけている情報じょうほうについての情報処理じょうほうしょり強化きょうかし、対象たいしょうについてよりおおくの情報じょうほう取得しゅとくする一方いっぽう対象たいしょうについての情報処理じょうほうしょり作業さぎょう抑制よくせいすることである。たとえば音楽おんがくっているなかでワイワイ・ガヤガヤとおおくのひと会話かいわひろげているおおきいパーティの会場かいじょうで、だれかがどこかで自分じぶん名前なまえしたようにおもったとき、その自分じぶん名前なまえんだようにおもったひと会話かいわ情報処理じょうほうしょり強化きょうかし、ひとたちがおこなっている会話かいわについての情報処理じょうほうしょり抑制よくせいすることができる。つまりフィルタリングされる(カクテル・パーティー効果こうか)。

随意ずいい運動うんどう

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えい:voluntary action)

自己じこ意識いしき

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うえ意味いみているが、自分じぶんがいるということにづいていること、または自分じぶんがいるということをっていることを、「意識いしきがある」と表現ひょうげんすることがある(えい:self-consciousness, self-recognition)。これは自己じこ意識いしき自意識じいしきともわれる。ヒトは成長せいちょう過程かてい自己じこ存在そんざいづくようになるが、これは、自我じが芽生めばえ、ともわれる。このような側面そくめんかかわる実験じっけん心理しんりがく分野ぶんやおおい。発達はったつ心理しんりがくをはじめ、比較ひかく心理しんりがくにおけるかがみぞう自己じこ認知にんち研究けんきゅうなどがある。かがみぞう自己じこ認知にんちとは、かがみてそこにうつった自分じぶんぞう自分じぶんだと理解りかいできること、をす。このかがみぞう自己じこ認知にんちが、ネコはできるか、ゾウはできるか、チンパンジーはできるか、イルカはできるか、といったことが調しらべられている。

メタ認知にんち

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また、自分じぶん自身じしん心的しんてき状態じょうたいなどを把握はあくすること、たとえば「自分じぶんこん機嫌きげんわるい」「自分じぶんいま○○をしたいとおもっている」といったことをることができること、を「意識いしきがある」と表現ひょうげんすることがある。このような自己じこしんてき状態じょうたいについての把握はあくする行為こういは、メタ認知にんちえい:metacognition)ともわれる。

主観しゅかんてき経験けいけん現象げんしょうてきしつ

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意識いしきという言葉ことばのもつもうひとつの意味いみ主観しゅかんてき経験けいけん現象げんしょうてきしつである(えい:subjective character of experience, phenomenal quality など)。物理ぶつり化学かがくてき三人称さんにんしょうてき視点してん(third-person perspective)と対比たいひさせて一人称いちにんしょうてき視点してん(first-person perspective)、また客観きゃっかんてき側面そくめん対比たいひさせてたん主観性しゅかんせい(subjectivity)などともう。この意味いみでの意識いしきは、もっともひろ関心かんしんあつめており、非常ひじょうはげしい哲学てつがくじょう議論ぎろんわされている部分ぶぶんである。しかしこの意味いみでの意識いしき明確めいかく定義ていぎすることがむずかしく、ときに「それはただすことしかできない」、「ちょくしめせてき定義ていぎすることしかできない」ということがわれることもある。とりあえず主観しゅかんてき経験けいけんという意味いみでの意識いしき定義ていぎもっと有名ゆうめいなものは、ユーゴスラビア出身しゅっしんのアメリカの哲学てつがくしゃトマス・ネーゲルが1974ねん論文ろんぶんコウモリであるとはどのようなことか』において提出ていしゅつしたつぎ定義ていぎである[18]

ある生物せいぶつ意識いしきをともなうしんてきしょ状態じょうたいをもつのは、その生物せいぶつであることはそのようにあることであるようなそのなにかが―しかもその生物せいぶつにとってそのようにあることであるようなそのなにかが―存在そんざいしている場合ばあいであり、またその場合ばあいだけである。

—トマス・ネーゲル(『コウモリであるとはどのようなことか』より)

この定義ていぎはこのままでは暗号あんごうめいているので、いくつかれいして説明せつめいする。まず1れい「タンスのかく小指こゆびをぶつけたひとである、とは一体いったいどのようなことか」。もしあなたがおなじような経験けいけんしたことがあるならなんとなくかるだろうが、このようなひとは、あしさき突如とつじょおとずれたはげしいいたみ、そしてどこにぶつけていいのかからないやりのないいかり、などを経験けいけんしている。2れい。「おまつりのでニコニコしながらチョコレートあじのアイスクリームをべている子供こどもである、とは一体いったいどのようなことか」。これもたような場面ばめん経験けいけんしたことがあるならなんとなくかるであろうが、このような子供こどもは、おまつりのにともなう高揚こうようかん、そしてくちなかひろがるあまかんじ、などを体験たいけんしている。ではここで問題もんだいである。「なかにガソリンをめられたドラム缶どらむかんである、とはどのようことか」。これはおかしな質問しつもんであり、おおくのひとつぎのようにおもうだろう。ドラム缶どらむかんはただのモノでありなにかをかんじるとか、そういうるいのものではないと。つまりドラム缶どらむかんであるとはどのようなことかとえるようななにものかはない、つまり意識いしきはない、と。ネーゲルの意識いしき定義ていぎは、このような意味いみでの意識いしきしている。このネーゲルの意味いみ関連かんれんふか用法ようほうとして、主観しゅかんてき経験けいけんなかあらわれるそれぞれのしつのことを「意識いしき」という言葉ことば表現ひょうげんすることがある。これは普通ふつうクオリア感覚かんかくしつなどといわれ、一般いっぱんにいくつものれいげるかたち枚挙まいきょてき定義ていぎされる(あかあかさ、虫歯むしばいたみ、コーヒーの苦味にがみなど)。こうした意識いしき主観しゅかんてき側面そくめんについて物理ぶつり化学かがくてき神経しんけい科学かがくてき見地けんちから説明せつめいすることがむずかしくおもえる、という問題もんだい説明せつめいのギャップ意識いしきのハードプロブレムばれる。1990年代ねんだいごろから科学かがく領域りょういきでもこうした主観性しゅかんせい問題もんだい議論ぎろんされている[19]

実体じったいとしての意識いしき

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もうひとつの意味いみとして、意識いしきはしばしば心霊しんれい主義しゅぎてき霊魂れいこん同義語どうぎごのようなかたち使つかわれる(えい:soul, spirit, consciousness as substance など)。このような用例ようれいとしてたとえば「意識いしき肉体にくたいからして幽体ゆうたい離脱りだつ体外たいがい離脱りだつ)した」といったものがげられる。このようなかんがかたからだ独立どくりつ心的しんてき実体じったいがあるというかんがかたは、哲学てつがく世界せかいでは心身しんしん二元論にげんろん実体じったい二元論にげんろんなどとばれているが、科学かがくしゃなかにも哲学てつがくしゃなかにも、このかんがかた支持しじしているひとはほとんどいない。しかしながら臨死りんし体験たいけん研究けんきゅうしゃなど一部いちぶ科学かがくしゃはこのせつ支持しじしているひともいる。

プロトサイエンスにおける意識いしき

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プロトサイエンスにおいては、探求たんきゅうしゃ立場たちばにより定義ていぎ内容ないよう様々さまざまで、大胆だいたん仮説かせつおおく、議論ぎろんかれているのが現状げんじょうである。

自分じぶんしたしんだしょ理論りろん学問がくもんじょうのツールを、なかば強引ごういん流用りゅうようして意識いしき理論りろん構築こうちくしようとこころみている研究けんきゅうしゃなども存在そんざいする(究極きゅうきょくいち要素ようそにこだわる還元かんげん主義しゅぎてき発想はっそうおちいっているもの、数式すうしき方程式ほうていしき表現ひょうげんすることにこだわるものなど)。

また、一部いちぶでは、しん哲学てつがくにおけるこまかい論点ろんてんたいする科学かがく分野ぶんやにおける議論ぎろん未熟みじゅくであること、意識いしきそのもののとらかた研究けんきゅうしゃごとにおおきくことなり曖昧あいまいになっていることなどを問題もんだい疑問ぎもんするこえもある。今後こんごは、従来じゅうらい分野ぶんやいきえた学際がくさいてき議論ぎろん期待きたいされる。

以下いかに、意識いしき仕組しくみを解明かいめいしようとしている仮説かせつ提唱ていしょうしゃ一部いちぶしめす。

ロジャー・ペンローズ スチュワート・ハメロフ
量子りょうしのう理論りろんなどとばれる意識いしきかんする独自どくじ仮説かせつ提唱ていしょうしており、「のうない神経しんけい細胞さいぼうにある微小びしょうかんで、波動はどう関数かんすう収縮しゅうしゅくすると、素粒子そりゅうし付随ふずいする基本きほんてき単純たんじゅん意識いしき属性ぞくせいわさり、生物せいぶつ高度こうど意識いしき生起せいきする」としている。微小びしょうかんとは細胞さいぼう骨格こっかく一種いっしゅで、細胞さいぼう構造こうぞう維持いじする役割やくわりになっているタンパク質たんぱくしつふく合体がったいである。微小びしょうかん採用さいようされた背景はいけいには、のうないひろ範囲はんいで、ある程度ていど時間じかん量子力学りょうしりきがくてきかさわせ状態じょうたい維持いじできそうな構造こうぞうぶつ見当みあたらなかったためだという理由りゆうがある。
ペンローズの量子りょうしのう理論りろんみっつのおおきな仮定かていうえてられている。ひとつは「人間にんげん思考しこうチューリングマシン動作どうさには還元かんげんできない」という仮定かてい、もうひとつは「波動はどう関数かんすう収縮しゅうしゅくはチューリングマシンで計算けいさんすることが不可能ふかのうな、実在じつざいてき物理ぶつりプロセスである」という仮定かてい、そして最後さいごは「量子りょうしろん相対そうたいろん理論りろんてき統合とうごうすることで、意識いしき問題もんだい同時どうじ解決かいけつされる」という仮定かていである。これら個々ここ仮定かていはどれも、科学かがくしゃコミュニティーのあいだ一般いっぱんてきれられているものではないが、それらをさらひとつの理論りろんとしてむすびつけたのが、ペンローズの量子りょうしのう理論りろんである。このような憶測おくそくうえ憶測おくそくかさねて構成こうせいされた仮説かせつであるため、内容ないようただしさについては一般いっぱんてき懐疑かいぎられている。ただ、著名ちょめい理論りろん物理ぶつり学者がくしゃペンローズによって提唱ていしょうされた仮説かせつということもあり、知名度ちめいどたかくまた、ハメロフは生物せいぶつがくじょう様々さまざま現象げんしょう量子りょうしろん応用おうようすることで説明せつめい可能かのうてんからすこしずつ立証りっしょうされていて20ねんまえからとなえられてきたこのせつ根本こんぽんてき否定ひていできたひとはいないと主張しゅちょうしている[20]
こう邦夫くにお

のうのマクロスケールでの振舞ふるまい、または意識いしき問題もんだいに、けい量子力学りょうしりきがくてき性質せいしつふかかかわっているとするかんがかた総称そうしょうこころまたは意識いしきかんする量子力学りょうしりきがくてきアプローチ(Quantum approach to mind/consciousness)、クオンタム・マインド(Quantum mind)、量子りょうし意識いしき(Quantum consciousness)などともわれる。具体ぐたいてき理論りろんにはいくつかの流派りゅうは存在そんざいする。 宇宙うちゅう創成そうせいされたとき、なにもない状態じょうたい、すなわち宇宙うちゅうひとつの量子力学りょうしりきがくけいかんがえたときのその真空しんくう状態じょうたい最低さいていエネルギー固有こゆう状態じょうたい)からトンネル効果こうかによるあい転移てんい疑似ぎじ真空しんくう状態じょうたいとしての比較的ひかくてき平坦へいたん宇宙うちゅう出現しゅつげんしたとされる。そして、その宇宙うちゅううえでのおど素粒子そりゅうしもまた、量子りょうしろんにより記述きじゅつされる。スケールこそちがえ、これとおな現象げんしょう人間にんげんのうなかしょうじているという、このかんがかた量子りょうしのう力学りきがく(Quantum Brain Dynamics)とぶ。しんとは、記憶きおくたくわえたのう組織そしきからなくされる光量子こうりょうしフォトン凝集ぎょうしゅうたいであり、量子りょうしろんによって記述きじゅつされるその物理ぶつりてき運動うんどう意識いしきである。のうをひとつの量子力学りょうしりきがくけいかんがえたとき、外部がいぶからの刺激しげきけてその状態じょうたい、すなわち真空しんくう状態じょうたいからトンネル効果こうかによるあい転移てんいじゅん安定あんてい疑似ぎじ真空しんくう状態じょうたい出現しゅつげんする。これがその刺激しげき記憶きおくならない。あらたなる刺激しげきふたたびトンネル効果こうかがねとなり、のう量子力学りょうしりきがくけいべつ真空しんくう状態じょうたい転移てんいする。これは以前いぜん刺激しげき記憶きおく加味かみしたあらたな刺激しげき記憶きおくであり、したがってたんなるあらたな刺激しげきのみの記憶きおくではない。つまり、のう量子力学りょうしりきがくけい疑似ぎじ真空しんくう状態じょうたいつね過去かこ記憶きおく総体そうたいあらわしている。宇宙うちゅううえおど素粒子そりゅうし運動うんどう対応たいおうするものは、のう場合ばあいは、過去かこ記憶きおくじょうでの人間にんげん意識いしきそのものとかんがえる。意識いしきとは、過去かこ記憶きおく総体そうたいであるのう量子力学りょうしりきがくけいにおける疑似ぎじ真空しんくう状態じょうたいうえ生成せいせい消滅しょうめつかえ励起れいきエネルギー量子りょうし運動うんどうにほかならないとする。これを量子りょうしのう力学りきがくという。1999ねん5がつ25にちから28にちまで、日本にっぽんはじめてツーソン会議かいぎ東京とうきょう青山あおやま国際連合大学こくさいれんごうだいがくにて開催かいさいされた。その内容ないよう意識いしき科学かがく中心ちゅうしんとし、会議かいぎ幹事かんじであった。は、この国際こくさい会議かいぎ手作てづく国際こくさい研究けんきゅう集会しゅうかい呼称こしょう協力きょうりょくかく方面ほうめんあおいだ。開催かいさいきわめてむずかしい状況じょうきょうであったが、熱意ねつい国連大学こくれんだいがく高等こうとう研究所けんきゅうじょのデラ・センタ所長しょちょうつうじて国連大学こくれんだいがく開催かいさい場所ばしょとして確保かくほできた。によれば、のちになってかんがえるとこれもごうあいたましい)の効果こうかだったのかもしれないと回顧かいこしている。

茂木もき健一郎けんいちろう
茂木もきは、基本きほんてき立場たちばとしてはデイヴィッド・チャーマーズおな路線ろせんあゆんでおり、クオリアまでをもふくんだすべての現象げんしょうあつかいうる「拡張かくちょうされた物理ぶつりがく」を志向しこうしている。茂木もき著書ちょしょ『クオリア入門にゅうもん』も「しん自然しぜん法則ほうそく一部いちぶである」という表題ひょうだいからはじめられており、「意識いしきのほんとうの科学かがく目指めざす」という自身じしん方向ほうこうせいをはっきりと明示めいじしている。また茂木もきは「のうないでのニューロンとき空間くうかんてき発火はっかパターンに対応たいおうしてクオリア生起せいきしている」という独自どくじ作業さぎょう仮説かせつをとり、そこからクオリアがつ(であろう)なんらかの数学すうがくてき構造こうぞうつけることが出来できるのではないか、として研究けんきゅうおこなっている。具体ぐたいてきには発火はっかしているニューロンの時間じかんてき空間くうかんてきパターンをミンコフスキー空間くうかんうち幾何きかがくてきまたは位相いそう幾何きかがくグラフ理論りろんてき抽象ちゅうしょうし、そこに群論ぐんろんてき数学すうがくてき構造こうぞう見出みいだそうとしている[よう出典しゅってん]、ともされる。
前野まえの隆司たかし
前野まえのは、ロボットに人間にんげん同等どうとう機能きのうをもたせるようプログラミングする、といういわゆる人工じんこう知能ちのう問題もんだいいかけている途上とじょうで、意識いしきかんする仮説かせつ受動じゅどう意識いしき仮説かせつ」を見出みいだし、提唱ていしょうしている。工学こうがくしゃ前野まえのらしく、意識いしきについてかなり工学こうがくてき議論ぎろん展開てんかいする。
中田なかたつとむ
中田なかたは、のうにはニューロンネットワーク以外いがい機能きのう構造こうぞうがあるとし、グリア細胞さいぼう存在そんざいするアクアポリン4をかいした水分すいぶんのクラスター形成けいせいによってランダムなニューロンの発火はっか、つまり覚醒かくせいがおこるとする仮説かせつ展開てんかいしている[21]
野口のぐち豊太とよた
野口のぐちは、のうない情報じょうほう意味いみながれ「そのもの」が意識いしきであるとう。のうない情報じょうほう意味いみとは、たとえばリンゴをときからの形状けいじょう信号しんごうだけで出来上できあがるのではなく、記憶きおく情報じょうほうかき・ミカン・かきたねあかいとかの色彩しきさいまるい・甘酸あまずっぱいあじ・リンゴえん青森あおもり信州しんしゅう・アップルパイ・リンゴの値段ねだん・リンゴという言葉ことば藤村ふじむら初恋はつこい等々とうとうリンゴの周囲しゅうい情報じょうほうがあってはじめてリンゴの意味いみ脳神経のうしんけい活動かつどうなかまれてくる。このよう外界がいかい世界せかい情報じょうほう意味いみ要素ようそ単体たんたいからではなく要素ようそ相互そうご依存いぞんによりそうされる。つまりコンピュータない意味いみとはことなりあたえられたものではない。のうないには依存いぞん関係かんけいによる外界がいかい情報じょうほう世界せかい出来上できあがる。(モザイクボール情報じょうほう世界せかい仮説かせつ神経しんけい発火はっか現象げんしょうぎないなかひそ意味いみ理解りかい出来できるのは、ただ次段じだんつながる神経しんけいけいである。意味いみ外界がいかい把握はあくし「わたし」のつぎ行動こうどうめる。そして意味いみは、あかるい・いたいではなく、あかるくかんじる・いたかんじるとする。つまり意味いみ主体しゅたいがそこにかくれているとかんがえる。この主体しゅたいが「わたし」の原型げんけいとなる。(主体しゅたい情報じょうほう仮説かせつ)この物的ぶってき意味いみながれは、たんなる信号しんごう情報じょうほうながれで生命せいめい維持いじ目的もくてきだけに寄与きよしているのだろうか?そうではなくそこには「わたし」が存在そんざいし、リンゴをあかかんじ、あのとき甘酸あまずっぱいあじおもし、藤村ふじむらおもいだす。この一連いちれん複雑ふくざつ繊細せんさい情報じょうほう意味いみながれが「意識いしき」となり、「わたし」だけがかんじられる。これは「意味いみながれそのもの」が自立じりつした意識いしきとなるのではないか。すると「意識いしき」は随伴ずいはん現象げんしょうではなく、のうない神経しんけいけい情報じょうほうの「意味いみながれそのもの」が自立じりつしたものであるとえる[22]

意識いしき神経しんけい相関そうかん

編集へんしゅう

神経しんけい科学かがくなどを専門せんもんとしている科学かがくしゃによる意識いしき探求たんきゅうは、人間にんげん(あるいは患者かんじゃ)の事例じれい症例しょうれい多数たすうまえ、のう解剖かいぼう神経しんけい組織そしき観察かんさつ実験じっけんなどから意識いしき現象げんしょう物理ぶつりてき要素ようそをすりわせてき検証けんしょうしている。

フランシス・クリッククリストフ・コッホ
コッホは、フランシス・クリックとともに、科学かがく意識いしき問題もんだいいど第一歩だいいっぽとして、「意識いしき相関そうかんするのう活動かつどう(NCC)」を神経しんけい科学かがく実験じっけんにより追求ついきゅうしていくことが得策とくさくであるとして具体ぐたいてき研究けんきゅう手法しゅほう提案ていあんしている[23][24]意識いしき機能きのうのう活動かつどう対応たいおうづけていくことが着実ちゃくじつ進展しんてんにつながるとかんがえている。意識いしき機能きのうとして将来しょうらい行動こうどうのプラニングが重要じゅうようであることから、前頭葉ぜんとうよう直接ちょくせつ投射とうしゃのあるのう部位ぶい活動かつどうがNCCの一部いちぶとなっているとかんがえており、解剖かいぼうてき前頭葉ぜんとうよう投射とうしゃしていないいち視覚しかく活動かつどう直接ちょくせつ意識いしきのぼらないという「V1仮説かせつ」を提唱ていしょうしている。そのにも、意識いしきかんして理論りろんてき考察こうさつから、「意識いしきホムンクルス」などの概念がいねん提唱ていしょうしている。クオリアは計画けいかくモジュールなどのいち手前てまえのニューロン連合れんごうからつくられるとかんがえている。これはレイ・ジャッケンドフの「意識いしきなかあいだレベル理論りろん」に準拠じゅんきょし、意識いしき内容ないようつね知覚ちかく形式けいしきをとると主張しゅちょうしている。一方いっぽう、より抽象ちゅうしょうてきな「思考しこう」などは意識いしき遂行すいこうされるとかんがえられる。
ジェラルド・エーデルマンジュリオ・トノーニ
視床ししょう-皮質ひしつけいのネットワークで構成こうせいされるダイナミック・コア意識いしき体験たいけんしているとするダイナミック・コア仮説かせつ[25]、また視床ししょう-皮質ひしつけいにおいて相互そうご情報じょうほうりょうはかられるかく部位ぶいあいだ情報じょうほうてき統合とうごうつよさが主観しゅかんてき意識いしき体験たいけん内容ないようめるとする意識いしき統合とうごう情報じょうほう理論りろんInformation Integration theory of Consciousness)を提出ていしゅつしている[14][26]

運動うんどう準備じゅんび電位でんい

編集へんしゅう

自発じはつてき運動うんどうかんする研究けんきゅうから、意識いしきてき決定けってい体験たいけん行動こうどうさきんじないこと確認かくにんされており(つまり後追あとおいする)、のうない神経しんけい細胞さいぼう活動かつどうはじまってからすうひゃくミリびょう意識いしきてき決定けってい体験たいけんきる、という順序じゅんじょたしかめられている。このことから「意識いしきとは自分じぶん現状げんじょうをモニター(監視かんし)する機能きのうである」と結論けつろんけられつつある。 つまり意識いしきはモニター監視かんしした結果けっかをフィードバックすることで、その行動こうどう反映はんえいするというかたち間接かんせつてき行動こうどう制御せいぎょできるが、その瞬間しゅんかん瞬間しゅんかん行動こうどう直接的ちょくせつてき制御せいぎょしているのではない、といったことである。簡潔かんけつに、わたしたちがつのは自由じゆう意志いし(free will)ではなく自由じゆう拒否きょひ(free won't)だ、と表現ひょうげんされることもある。意識いしきてき決定けってい運動うんどうかんする先駆せんくてき研究けんきゅうは1980年代ねんだいにアメリカの生理学せいりがくしゃベンジャミン・リベットによりおこなわれた[27]

脚注きゃくちゅう出典しゅってん

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  1. ^ G.Bryan Young ら(へん), 井上いのうえきよしけいら(わけ)『昏睡こんすい意識いしき障害しょうがい
  2. ^ フロランス・ビュルガ『そもそも植物しょくぶつとはなにか』河出書房新社かわでしょぼうしんしゃ、2021ねん4がつ
  3. ^ シモーナ・ギンズバーグ、エヴァ・ヤブロンカ(ちょ)、鈴木すずき大地だいち(わけ)『動物どうぶつ意識いしき誕生たんじょう 生体せいたいシステム理論りろん学習がくしゅう理論りろんからかすしん進化しんかじょうした勁草書房しょぼう、2021ねん5がつ
  4. ^ 計算けいさん意識いしき宿やどるか 動物どうぶつからアップロード実験じっけんも」日本経済新聞にほんけいざいしんぶん朝刊ちょうかん2021ねん6がつ6にちサイエンスめん
  5. ^ Moruzzi G. & Magoun H.W. (1949) Brain stem reticular formation and activation of the EEG. Electroencephalography and Clinical Neurophysiology 1:455–473.
  6. ^ 前田まえだ敏博としひろ 睡眠すいみん神経しんけい機構きこう動物どうぶつ心理しんりがく研究けんきゅうだい47かんだい2ごう 99-106 (1997)
  7. ^ 井深いぶか信男のぶお 「サーカディアン・システムの神経しんけい機構きこうとその生理せいり心理しんりがく『The Japanese Journal of Psychology』1985, Vol. 56, No. 5, 300-315
  8. ^ 秋山あきやま正憲まさのり, 守屋もりや孝洋たかひろ, 柴田しばた重信しげのぶ 生体せいたい時計とけい生理学せいりがくてき,薬理やくりがくてき,分子生物学ぶんしせいぶつがくてき解析かいせきにち薬理やくり』(Folia Pharmacol. Jpn.)112, 243~250(1998ねん
  9. ^ 本間ほんま研一けんいち 「ヒトのサーカディアンリズムとひかり環境かんきょう人間にんげん工学こうがくだい37かん 特別とくべつごう pp.44-45(2001ねん
  10. ^ a b c d e [1]
  11. ^ "By "consciousness" I mean those states of sentience or awareness that typically begin when we wake up in the morning from a dreamless sleep and continue throughout the day until we fall asleep again. " (「意識いしき」という言葉ことばわたし意味いみするのは、典型てんけいてきにはゆめのないねむりからめたときにはじまり、ふたたねむりにつくまでにちちゅうつづく、感覚かんかくづきのこうした状態じょうたいである) John R Searle "Mind, Language And Society: Philosophy In The Real World" Basic Books (1999) pp.40-41 ISBN 978-0465045211
  12. ^ Antonio Damasio and Kaspar Meyer "Consciousness: An Overview of the Phenomenon and of Its Possible Neural Basis" The Neurology of Consciousness: Cognitive Neuroscience and Neuropathology Steven Laureys et al. ed. p.4 Academic Press (2008) ISBN 978-0123741684
  13. ^ クリストフ・コッホしる土谷つちたにしょう金井かない良太りょうたわけ意識いしき探求たんきゅう神経しんけい科学かがくからのアプローチ <うえ>』岩波書店いわなみしょてん 2006ねん ISBN 4000050532 pp.28-29
  14. ^ a b Gerald Edelman, Giulio Tononi "A Universe Of Consciousness How Matter Becomes Imagination" Basic Books (2001) ISBN 978-0465013777
  15. ^ ここでは非常ひじょう簡単かんたん区分くぶんしかしめさない。より詳細しょうさい議論ぎろんについては、たとえば哲学てつがく分野ぶんやでの議論ぎろん反映はんえいした文献ぶんけんとして、スタンフォード哲学てつがく事典じてん記事きじ、Van Gulick, Robert, "Consciousness", The Stanford Encyclopedia of Philosophy (Spring 2009 Edition), Edward N. Zalta (ed.) がある。また「意識いしき」という概念がいねんについて分析ぶんせきおこなっている様々さまざま論文ろんぶんを、PhilPapersというサイトがリストしている。こちらも参照さんしょうのこと。文献ぶんけんリスト)The Concept of Consciousness 英語えいご - PhilPapers 「「意識いしき概念がいねん」についてろんじた文献ぶんけんのリスト。」の文献ぶんけん一覧いちらん
  16. ^ Naotsugu Tsuchiya and Christof Koch (2008), "Attention and consciousness" Scholarpedia, 3(5):4173. (オンライン・ペーパー)
  17. ^ Lawrence M. Ward (2008), "Attention" Scholarpedia, 3(10):1538. (オンライン・ペーパー)
  18. ^ Thomas Nagel (1974). "What is It Like to Be a Bat?" Philosophical Review 83 (October):435-50 (Online PDF) 永井ながいひとしわけ『コウモリであるとはどのようなことか』勁草書房しょぼう、1989ねんISBN 4326152222 PhilPapersにネーゲルのこの What it is like の用法ようほう関連かんれんした論文ろんぶんをリストしているカテゴリがある。そちらも参照さんしょうのこと。文献ぶんけんリスト)What is it Like? 英語えいご - PhilPapers 「「○○であるとはどのようなことか」についてろんじた文献ぶんけんのリスト。サイトPhilPapersより」の文献ぶんけん一覧いちらん
  19. ^ Koch, C, and Greenfield, S, (2007) How Does Consciousness Happen? Scientific American (Online PDF)
  20. ^ モーガン・フリーマン 時空じくうえて だい2かい死後しご世界せかいはあるのか?」
  21. ^ 中田なかたつとむのうのなかの水分すいぶん 意識いしきつくられるとき』紀伊國屋きのくにや書店しょてん ISBN 4314010118
  22. ^ 野口のぐち豊太とよた『「意識いしきなぞ」への挑戦ちょうせん文芸ぶんげいしゃ ISBN 978-4-286-08872-3
  23. ^ Florian Mormannクリストフ・コッホ Neural correlates of consciousness. scholapieida.org, 2(12):1740
  24. ^ クリストフ・コッホしる土谷つちたにしょう金井かない良太りょうたわけ意識いしき探求たんきゅう神経しんけい科学かがくからのアプローチ』岩波書店いわなみしょてん 2006ねん 上巻じょうかん:ISBN 4000050532 下巻げかん:ISBN 4000050540
  25. ^ ジェラルド M. エーデルマン (ちょ)『のうそらよりひろいか―「わたし」という現象げんしょうかんがえる』くさおもえしゃ 2006ねん ISBN 978-4794215451
  26. ^ Giulio Tononi "An information integration theory of consciousness", BMC Neuroscience 2004ねん, 5:42. doi:10.1186/1471-2202-5-42
  27. ^ ベンジャミン・リベット (ちょ), 下條しもじょうしん (翻訳ほんやく)『マインド・タイム のう意識いしき時間じかん岩波書店いわなみしょてん 2005ねん ISBN 978-4000021630

参考さんこう文献ぶんけん

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  • エベン・アレグザンダープルーフ・オブ・ヘヴン 脳神経のうしんけい外科げか死後しご世界せかい白川しらかわ貴子たかこ わけ早川書房はやかわしょぼう、2013ねん10がつ10日とおかISBN 978-4-15-209408-7http://www.hayakawa-online.co.jp/product/books/116806.html  - はらタイトル:Proof of Heaven.
  • David Rosenthal. "Concepts and Definitions of Consciousness". In P W. Banks (ed.), Encyclopedia of Consciousness. Elsevier. ISBN 0123738644 - エルゼビアから出版しゅっぱんされている意識いしき百科ひゃっか事典じてんの「意識いしき」の項目こうもく前半ぜんはん部分ぶぶん意識いしき様々さまざま意味いみ解説かいせつとなっており、後半こうはん部分ぶぶん高階たかしな思考しこうせつ解説かいせつとなっている。
  • G.Bryan Young (へん), Charles F. Bolton (へん), Allan H. Ropper (へん), 井上いのうえ きよしけい (わけ), つつみ 晴彦はるひこ (わけ), 有賀ありが とおる (わけ)『昏睡こんすい意識いしき障害しょうがい』メディカル・サイエンス・インターナショナル 2001ねん ISBN 4895922634 - 医療いりょう分野ぶんやほん昏睡こんすい意識いしき障害しょうがいをもたらす様々さまざま症例しょうれいについて、診断しんだん治療ちりょうのための情報じょうほう指針ししんなどがかれている。
  • Steven Laureys (へん), Giulio Tononi (へん) "The Neurology of Consciousness: Cognitive Neuroscience and Neuropathology" Academic Press (2008) ISBN 0123741688 - 科学かがくてき意味いみでの意識いしき研究けんきゅうかんする論文ろんぶんしゅう
  • ジュリアン・ジェインズ 柴田しばた裕之ひろゆき やく『「かみ々の沈黙ちんもく意識いしき誕生たんじょう文明ぶんめい興亡こうぼう紀伊國屋きのくにや書店しょてん ISBN 4314009780
  • RobinH, et al. "Consciousness Studies" (2005ねん-) - ウィキブックス英語えいごばんにある意識いしき研究けんきゅうについての概説がいせつしょアリストテレスからはじまり、現代げんだい神経しんけい科学かがくしん哲学てつがくまでを丁寧ていねいにレビュー。

関連かんれん項目こうもく

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