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セメント - Wikipedia

セメントえい: cement)、にかわはい(こうかい)[1]とは、一般いっぱんてきには、みず液剤えきざいなどによりみず重合じゅうごう硬化こうかするこなたいす。広義こうぎには、アスファルトにかわ(にかわ)、樹脂じゅし石膏せっこう石灰せっかいひとしや、これらをわせた接着せっちゃくざい全般ぜんぱんす。

セメントを投入とうにゅう混合こんごう攪拌する様子ようす

ほんこうでは、モルタルコンクリートとして使用しようされる、ポルトランドセメント混合こんごうセメントなどのみず硬性こうせいセメント(狭義きょうぎの「セメント」)について記述きじゅつする。

歴史れきし 編集へんしゅう

セメントの利用りようふるく、古代こだいエジプトピラミッドにもモルタルとして使用しようされたセメント(硬性こうせいセメント)がのこっている。水酸化すいさんかカルシウムポゾラン英語えいごばん混合こんごうするとみず硬性こうせいゆうするようになることが発見はっけんされたのがいつごろなのかは不明ふめいだが、古代こだいギリシア古代こだいローマ時代じだいになると、凝灰岩ぎょうかいがん分解ぶんかいぶつ添加てんかしたみず硬性こうせいセメントが水中すいちゅう工事こうじ道路どうろ工事こうじなどにもちいられるようになった[2]。そういった時代じだいには自然しぜん産出さんしゅつするポゾラン(火山かざん軽石かるいし)や人工じんこうポゾラン(焼成しょうせいした粘土ねんど陶器とうきへんなど)を使つかっていた。ローマパンテオンカラカラ浴場よくじょうなど、現存げんそんする古代こだいローマの建物たてものにもそのようなコンクリートローマン・コンクリート)が使つかわれている[3]

ローマ水道すいどうにもみず硬性こうせいセメントが多用たようされている[4]。ところが、中世ちゅうせいになるとヨーロッパではみず硬性こうせいセメントによるコンクリートが使つかわれなくなり、いしかべいしはしらしんめるのによわいセメントが使つかわれる程度ていどになった。

現代げんだいてきみず硬性こうせいセメントは、産業さんぎょう革命かくめいとも開発かいはつされはじめた。これには以下いかの3つの必要ひつようせい影響えいきょうしている。

産業さんぎょう革命かくめい時代じだいきゅう成長せいちょうげたイギリスでは、建築けんちくようのよい石材せきざい価格かかくがったため、高級こうきゅう建物たてものであってもレンガつくりにして表面ひょうめん漆喰しっくいかためていしのようにせかけるのが一般いっぱんした。このためみず硬性こうせい石灰せっかい重宝ちょうほうされたが、かたまるまでの時間じかんをよりみじかくする必要ひつようせいからあらたなセメントの開発かいはつ促進そくしんされた。なかでもパーカーのローマンセメント有名ゆうめいである[5]。これはジェームズ・パーカー英語えいごばん1780年代ねんだい発明はつめいし、1796ねん特許とっきょ取得しゅとくした。それは実際じっさいには古代こだいローマで使つかわれていたセメントとはことなるが、粘土ねんどしつ石灰石せっかいせきを1000 - 1100 推定すいていされる高温こうおん焼成しょうせいし、そのかたまり粉砕ふんさいして粉末ふんまつとしたセメントであり、天然てんねん原料げんりょうをそのまま使つかっていた。これをすなぜたものがモルタルとなり、5ふんから15ふんかたまった。このローマンセメントの成功せいこうけて、粘土ねんど石灰せっかい人工じんこうてき配合はいごうして焼成しょうせいしてセメントをつくろうとするもの何人なんにんあらわれた。

イギリス海峡かいきょうさん代目だいめエディストン灯台とうだい建設けんせつ(1755ねん - 1759ねん)では、満潮まんちょう満潮まんちょうあいだの12あいだ素早すばやかたまるうえに、ある程度ていど強度きょうど発揮はっきするみず硬性こうせいモルタルが必要ひつようとされた。このとき土木どぼく工学こうがくものジョン・スミートン生産せいさん現場げんばにも出向でむき、入手にゅうしゅ可能かのうみず硬性こうせい石灰せっかい調査ちょうさ徹底的てっていてきったことで石灰せっかいの「みず硬性こうせい」は原料げんりょう石灰岩せっかいがんふくまれる粘土ねんど成分せいぶん比率ひりつ直接ちょくせつ関係かんけいしていることにづいた。しかし土木どぼく工学こうがくもののスミートンはこの発見はっけんをさらに研究けんきゅうすることはなかった。この原理げんり19世紀せいきはいってルイ・ヴィカーによりさい発見はっけんされたが、あきらかにかれはスミートンの業績ぎょうせきらなかったとおもわれる。1817ねん、ヴィカーは石灰せっかい粘土ねんど混合こんごうし、それを焼成しょうせいして「人工じんこうセメント」を生産せいさんした。ジェームズ・フロスト[6]はイギリスで「ブリティッシュセメント」とばれるほぼおな製法せいほうのセメントをどう時期じき開発かいはつしたが、特許とっきょ取得しゅとくしたのは1822ねんだった。1824ねん、イギリス・リーズ煉瓦れんがせき職人しょくにんジョセフ・アスプディン同様どうよう製法せいほうについて特許とっきょ取得しゅとくした。イングランドのポートランドせき色調しきちょうていたことから、Portland cementと命名めいめいした。このポルトランドセメント今日きょうのセメントの主流しゅりゅうであり、たんにセメントとった場合ばあい、このポルトランドセメントをすことがおおい。

これらの製品せいひん石灰せっかいとポゾランによるコンクリートにくらべると、かたまる時間じかんはやすぎ(施工しこう可能かのう時間じかん不十分ふじゅうぶんかたまった直後ちょくご強度きょうど不十分ふじゅうぶんだった(かたわくはずすのにすう週間しゅうかんかかる)。天然てんねんセメントも人工じんこうセメントも、その強度きょうど含有がんゆうするビーライト(Ca2SiO4)の比率ひりつ依存いぞんする。ビーライトによる強度きょうど徐々じょじょたかまっていく。1,250 ℃ 以下いか焼成しょうせいされているため、現代げんだいのセメントで素早すばや強度きょうど発揮はっきするエーライト(Ca3SiO5)をふくんでいない。エーライトをつね含有がんゆうするセメントをはじめて製造せいぞうしたのは、ジョセフ・アスプディンの息子むすこウィリアム・アスプディンで、1840年代ねんだいのことである。こちらが今日きょう使つかわれているポルトランドセメントとおなじものである。ウィリアム・アスプディンの製法せいほうにはなぞがあったため、ヴィカーやI・C・ジョンソン発明はつめいしゃだとされていたが、ウィリアムがケントのノースフリートでつくったコンクリートやセメントにかんする最近さいきん調査ちょうさ[7]で、エーライトをベースとしたセメントであることが判明はんめいした。しかしウィリアム・アスプディンの製法せいほうは「大雑把おおざっぱ」なもので、現代げんだいてきセメントの化学かがくてき基盤きばん確立かくりつしたのはヴィカーとっていい。またジョンソンは、混合こんごうぶつかまなか焼成しょうせいすることの重要じゅうようせい確立かくりつした。

ウィリアム・アスプディンのおこなった改良かいりょうによる製法せいほうでは(ちちあつめるのに苦労くろうしていた)石灰せっかいをよりおお必要ひつようとし、かま温度おんどもよりたかくする必要ひつようがあり(そのため燃料ねんりょうおお消費しょうひする)、出来上できあがったクリンカーかたすぎていしうすがすぐにってしまうという問題もんだいがあった(当時とうじ、クリンカーをこなにする方法ほうほう石臼いしうすしかなかった)。このため製造せいぞうコストがかなりたかくなったが、その製品せいひん適度てきどにゆっくりかたくなり、かたまると即座そくざ強度きょうど発揮はっきするもので、製造せいぞう過程かていにデメリットがたくさんあっても用途ようと格段かくだんひろがった。1850ねんだい以降いこう、コンクリートが建築けんちくにどんどん使つかわれるようになり、セメントの用途ようとのほとんどをめるようになった。

日本にっぽんでは、幕末ばくまつころにフランスせいポルトランドセメント輸入ゆにゅうしたのが最初さいしょとされる。 1875ねん明治めいじ8ねん)、日本にっぽん最初さいしょ官営かんえいセメント会社かいしゃである深川ふかがわセメント製造せいぞうしょにて、当時とうじこうしょう技術ぎじゅつかん宇都宮うつのみや三郎さぶろうがポルトランドセメントの製造せいぞう成功せいこうした。その1884ねんにこの工場こうじょう民間みんかんはらげとなり、日本にっぽんセメント現在げんざい太平洋たいへいようセメント)となった。また、1881ねんには山口やまぐちけん小野田おのだに、民営みんえいセメント工場こうじょうとして最初さいしょのセメント製造せいぞう会社かいしゃ小野田おのだセメント現在げんざい太平洋たいへいようセメント)が誕生たんじょうした。当時とうじ生産せいさんだかりょう工場こうじょう月産げっさんやく230t程度ていどであった。1924ねん10がつ5にち、18しゃ構成こうせいのセメント連合れんごうかい設立せつりつされ、生産せいさん制限せいげん販売はんばい協定きょうてい実施じっしした。

種類しゅるい 編集へんしゅう

セメントは、「ポルトランドセメント」、ポルトランドセメントを主体しゅたいとして混合こんごう材料ざいりょうわせた「混合こんごうセメント」、そのの「特殊とくしゅセメント」の3つに大別たいべつされる。2018ねん国内こくない生産せいさんしたセメントのうち、75%がポルトランドセメント、24%が混合こんごうセメントであった[8]

ポルトランドセメント 編集へんしゅう

ポルトランドセメントには、用途ようとわせた品質ひんしつ性質せいしつことなる種類しゅるいがある。一般いっぱんてき工事こうじ構造こうぞうぶつ使用しようされる「普通ふつうポルトランドセメント」、短期間たんきかんたか強度きょうど発現はつげんする「はやきょうポルトランドセメント」、みずねつひくい「中庸ちゅうようねつポルトランドセメント」、セメントよりも白色はくしょくである「白色はくしょくポルトランドセメント」がおも種類しゅるいである。

混合こんごうセメント 編集へんしゅう

高炉こうろセメント
製鉄せいてつしょ銑鉄せんてつ製造せいぞう工程こうていである高炉こうろから生成せいせいする副産物ふくさんぶつである高炉こうろスラグ微粉びふんまつとポルトランドセメントを混合こんごうしたセメントである。高炉こうろスラグには、セメントのみず反応はんのう発生はっせいした水酸化すいさんかカルシウムなどのアルカリ性あるかりせい物質ぶっしつ石膏せっこうなどの刺激しげきによりみず硬化こうかする性質せいしつがある。そのため高炉こうろセメントは、初期しょき強度きょうど普通ふつうポルトランドセメントよりもひくいが、この性質せいしつにより長期ちょうきにわたって強度きょうど増進ぞうしんし、長期ちょうき強度きょうど普通ふつうポルトランドセメントを上回うわまわ場合ばあいもある[9]海水かいすい化学かがく物質ぶっしつたいする抵抗ていこうせいすぐ[9]港湾こうわんダムなどの大型おおがた土木どぼく工事こうじ使用しようされる[9]
JISでは JIS R 5211 で規定きていされ、高炉こうろスラグの分量ぶんりょうにより Aたね (5 - 30 %)、Bたね (30 - 60 %)、Cたね (60% - 70 %) に分類ぶんるいされる。
ドイツでは20世紀せいき初頭しょとうから製造せいぞうされ、日本にっぽんでは八幡やはた製鐵せいてつしょ1913ねん大正たいしょう2ねん)に製造せいぞうされたのがはじまりである。2018ねん時点じてん混合こんごうセメントの87%をめる[8]
シリカセメント
二酸化にさんか珪素けいそ(シリカ)を60 % 以上いじょうふく天然てんねんのシリカしつ混合こんごうざいとポルトランドセメントを混合こんごうしたセメントである。たい薬品やくひんせいようする化学かがく工場こうじょう使用しようされる。JISでは JIS R 5212 で規定きていされている。2010ねん以降いこう生産せいさんされていない[8]
フライアッシュセメント
フライアッシュ火力かりょく発電はつでんしょ発生はっせいする石炭せきたん焼却灰しょうきゃくばい)とポルトランドセメントを混合こんごうしたセメントである。球形きゅうけいのフライアッシュを混合こんごうするため、このセメントを使用しようするコンクリートは流動りゅうどうせい改善かいぜんされワーカビリティにすぐれる[10]。また、フライアッシュにふくまれる二酸化にさんかケイ素けいそみず反応はんのうによってしょうじた水酸化すいさんかカルシウムと反応はんのう(ポゾラン反応はんのう)し、緻密ちみつ耐久たいきゅうせいすぐれたケイ酸けいさんカルシウムみず和物あえもの発生はっせいさせる。そのため水密すいみつせいがあり、港湾こうわんやダムなど水密すいみつせい要求ようきゅうされる構造こうぞうぶつ使用しようされる。
JISでは JIS R 5213 で規定きていされ、フライアッシュの分量ぶんりょうにより Aたね (5-10%)、Bたね (10-20%)、Cたね (20-30%) に分類ぶんるいされる。
日本にっぽんでは宇部興産うべこうさんのセメント事業じぎょうげんUBE三菱みつびしセメント)で1956ねん昭和しょうわ31ねん)に製造せいぞうされたのがはじまりである。

特殊とくしゅセメント 編集へんしゅう

アルミナセメント
アルミニウム原料げんりょうであるボーキサイト石灰石せっかいせきからつくられる、酸化さんかアルミニウム(アルミナ)をふくむセメントである。ねりぜたのちすぐにつよ強度きょうど発揮はっきし、耐火たいかせいたい酸性さんせいがある。緊急きんきゅう工事こうじ寒冷かんれいでの工事こうじ化学かがく工場こうじょうでの建設けんせつ工事こうじ耐火たいかぶつなどに使用しようされる。

用途ようと 編集へんしゅう

ポルトランドセメントと混合こんごうセメントは、土木どぼく建築けんちくようコンクリートモルタル材料ざいりょうとして使用しようされる。

ポルトランドセメントの用途ようとは、使用しよう実績じっせきおおく、各種かくしゅ工事こうじ特別とくべつ配慮はいりょ必要ひつようなく使用しようできる。はやきょうがた緊急きんきゅう工事こうじ寒中かんちゅう工事こうじてきし、ちょうはやきょうセメントは粉末ふんまつたかいのでグラウト工事こうじてきしている[11]中庸ちゅうようねつセメントは、従来じゅうらいのダムコンクリートよう使つかわれてきたが、RCD工法こうほうようコンクリートではセメントの20 - 30%をフライアッシュで置換ちかんした中庸ちゅうようねつセメントがおお使つかわれている[11]たい硫酸りゅうさんしおセメントは温泉おんせん地帯ちたい海洋かいよう構造こうぞうぶつ下水げすい工事こうじなどに使つかわれる[11]。ただし、ポルトランドセメントはたい酸性さんせいひくく、化学かがく抵抗ていこうせい期待きたいできない[11]

混合こんごうセメントの用途ようとは、化学かがく抵抗ていこうせいたかく、スラグの潜在せんざいすい硬性こうせいとフライアッシュのポゾラン反応はんのうによって長期ちょうき強度きょうどおおきくなることから、ダム海洋かいよう構造こうぞうぶつ下水道げすいどう工事こうじ使つかわれることがおおい。ただし、初期しょき強度きょうどよわいため、わかざいよわいにおける養生ようじょう管理かんり重要じゅうようとなる[11]

特殊とくしゅセメントでは、アルミナセメントが24時間じかん以内いない普通ふつうポルトランドセメントのざいよわい28にち強度きょうど上回うわまわ強度きょうど発現はつげんする特性とくせいがありたい酸性さんせいたかいが、価格かかくたか発熱はつねつりょうおおいうえ、転移てんい現象げんしょう長期ちょうき強度きょうど低下ていかするなどあつかいがむずかしいことから、耐火たいか製品せいひん以外いがいはほとんど使用しようされない[11]ちょうはやかたセメント(ジェットセメント)は、2 - 3あいだ実用じつようてき強度きょうどられる特性とくせいがあり、低温ていおんでも強度きょうど発現はつげんはや転移てんい現象げんしょう発生はっせいしないため、道路どうろ緊急きんきゅう補修ほしゅう工事こうじ寒中かんちゅう工事こうじ、トンネルのくつがえこうのショットクリートなどに使つかわれる。ただし、使用しようするときには凝結ぎょうけつ遅延ちえんざい(ジェットセッター)の併用へいよう必要ひつようとなる[11]膨張ぼうちょうセメントは、ポルトランドセメントに膨張ぼうちょうざい添加てんかしたもので、とく水密すいみつせい必要ひつようとする構造こうぞうぶつのひび抑制よくせい空隙くうげき充填じゅうてん目的もくてき使用しようされる[11]。なお、膨張ぼうちょうざい風化ふうかしやすいことと、添加てんかりょう膨張ぼうちょうりょう調整ちょうせいするので計量けいりょう厳密げんみつおこな必要ひつようがある[12]

セメントにみずぜたものはセメントペーストとばれ、それにほそほねざいすな)をくわえたものがモルタルである。モルタルにほねざい砂利じゃり)をぜあわせたものはコンクリートとばれる。モルタルやコンクリートは化学かがく混和こんわざい添加てんかし、さらに、空気くうきりょう適度てきど確保かくほするように考慮こうりょして設計せっけい製造せいぞうされる。

安全あんぜんせい 編集へんしゅう

セメントは、みず反応はんのうすると水酸化すいさんかカルシウム発生はっせいさせ、つよアルカリ性あるかりせいしめ性質せいしつがある。そのため、はな皮膚ひふたいして刺激しげきせい溶解ようかいせいがあり、硬化こうかまえのセメントが付着ふちゃくした状態じょうたいつづくと角膜かくまくはな粘膜ねんまく皮膚ひふ炎症えんしょう出血しゅっけつこる可能かのうせいがある(セメント皮膚ひふえん)。

完全かんぜん硬化こうかしたのちのセメント(モルタル・コンクリート)の場合ばあい水酸化すいさんかカルシウムは二酸化炭素にさんかたんそ反応はんのうして中性ちゅうせい炭酸たんさんカルシウムとなっているので、炎症えんしょうこす可能かのうせいおおくの場合ばあいない。

セメントの粉塵ふんじん平均へいきんつぶみちが10 μみゅーm 程度ていど微粉びふんまつであるためはつちりせいがあり、多量たりょうのセメントを吸引きゅういんすると塵肺じんぱいになる可能かのうせいがある。また、セメントは高温こうおん製造せいぞう過程かていで、原料げんりょうちゅうさんクロムがろくクロム変化へんかし、微量びりょうにこれをふくんでいる。

環境かんきょう配慮はいりょ 編集へんしゅう

廃棄はいきぶつ副産物ふくさんぶつ有効ゆうこう利用りよう 編集へんしゅう

セメントは製造せいぞう工程こうていじょう廃棄はいきぶつ発生はっせいせず、高温こうおん処理しょりするためダイオキシンるい発生はっせいしにくいため、日本にっぽんでは発電はつでんしょ石炭せきたんはい下水げすい処理しょりじょう汚泥おでいふくめ、廃棄はいきぶつ副産物ふくさんぶつをリサイクルしている[13]。この有効ゆうこう活用かつようにより、天然てんねん資源しげん削減さくげん最終さいしゅう処分しょぶんじょうへの廃棄はいきぶつ搬入はんにゅう抑制よくせい貢献こうけんしている[13]

二酸化炭素にさんかたんそ排出はいしゅつ削減さくげん 編集へんしゅう

日本にっぽんのセメント産業さんぎょうは、日本にっぽん全体ぜんたい温室おんしつ効果こうかガス排出はいしゅつりょうやく4%を排出はいしゅつしており[14]しょうエネ対策たいさくについてはすでに世界せかい最高さいこう水準すいじゅんたっしているが、さらなる対策たいさく検討けんとうされている。ポルトランドセメントは焼成しょうせい工程こうていにおいて石灰石せっかいせきねつ分解ぶんかい( CaCO3   CaO + CO2 )およ焼成しょうせい燃料ねんりょう二酸化炭素にさんかたんそ発生はっせいする[15]混合こんごうセメントは、ポルトランドセメントに高炉こうろスラグ粉末ふんまつやフライアッシュをれるぶん、セメントのりょう削減さくげんでき[16]、また高炉こうろセメントは焼成しょうせい不要ふようなため、二酸化炭素にさんかたんそ発生はっせいりょう削減さくげんできる[15]。そのため、高炉こうろセメントをふく混合こんごうセメントの普及ふきゅう促進そくしん[17]およてい炭素たんそがたコンクリートの技術ぎじゅつ開発かいはつ[18]などがすすめられている。

セメント産業さんぎょう 編集へんしゅう

ホルシムスイス)、セメックスメキシコ)、ハイデルベルク・マテリアルズドイツ)、イタルチェメンティイタリア)の西側にしがわ大手おおてセメントメーカー4しゃは「セメントメジャー」とばれる。

統計とうけい 編集へんしゅう

 
2015ねんこくべつセメント生産せいさん

世界せかいくに地域ちいきべつセメント生産せいさんりょう推移すいい単位たんいせんトン)

くに地域ちいき 1995ねん 2000ねん 2005ねん 2010ねん 2015ねん
中国ちゅうごく 445,610 576,000 1,000,000 1,800,000 2,350,000
インド 70,000 95,000 130,000 220,000 270,000
米国べいこく 78,320 92,300 99,100 63,500 83,400
ブラジル 25,500 41,500 39,000 59,000 72,000
エジプト ---- 23,000 27,000 48,000 55,000
フランス 21,000 20,000 20,000 ---- ----
ドイツ 40,000 37,000 32,000 31,000 32,000
インドネシア 19,500 27,000 37,000 42,000 65,000
イラン ---- ---- 32,000 55,000 65,000
イタリア 35,000 35,000 38,000 35,000 23,000
日本にっぽん 90,474 77,500 66,000 56,000 55,000
韓国かんこく 55,130 50,000 50,000 46,000 63,000
メキシコ 23,971 30,000 36,000 34,000 35,000
パキスタン ---- ---- ---- 30,000 32,000
ロシア 36,400 30,000 45,000 49,000 69,000
サウジアラビア ---- ---- 24,000 45,000 55,000
スペイン 25,000 30,000 48,000 50,000 ----
台湾たいわん 22,478 19,000 ---- ---- ----
タイ 26,500 38,000 40,000 31,000 35,000
トルコ 33,153 33,000 38,000 60,000 77,000
ベトナム ---- ---- 27,000 50,000 61,000
その 373,300 450,000 392,000 520,000 603,000
総計そうけい 1,421,300 1,700,000 2,220,000 3,300,000 4,100,000
出典しゅってん:Mineral Commodity Summaries http://minerals.usgs.gov/minerals/pubs/mcs/ べい内務省ないむしょう、アメリカ地質調査所ちしつちょうさしょえい: United States Geological Survey; USGS)ホームページMineral Resources Programない年次ねんじサマリーより。1995ねんのデータには推測すいそくおおふくまれる。
世界せかい大手おおてセメント生産せいさん企業きぎょう(2014ねん
順位じゅんい 企業きぎょう くに 容量ようりょう (ひゃくまんトン/とし) プラントすう
1 ラファ―ジュ フランス 225 166
2 ホルシム スイス 217 149
3 中国ちゅうごく建築けんちく材料ざいりょう集団しゅうだん有限ゆうげん公司こうし 中国ちゅうごく 200 69
4 安徽あんきかいにしセメントまた份有げん公司こうし 中国ちゅうごく 180 34
5 ハイデルベルクセメント ドイツ 118 71
6 冀東発展はってん集団しゅうだん有限ゆうげん責任せきにん公司こうし 中国ちゅうごく 100 100
7 セメックス メキシコ 96 61
8 はなじゅんセメントひかえまた有限ゆうげん公司こうし 中国ちゅうごく 89 16
9 中国ちゅうごくちゅうざい集団しゅうだん有限ゆうげん公司こうし 中国ちゅうごく 87 24
10 山東さんとう山水さんすいセメント集団しゅうだん有限ゆうげん公司こうし 中国ちゅうごく 84 13
11 Italcementi イタリア 74 55
12 Taiwan Cement 台湾たいわん 70
13 Votorantim* ブラジル 57 37
14 CRH** アイルランド 56 11
15 UltraTech インド 53 12
16 はなしんセメントまた份有げん公司こうし 中国ちゅうごく 52 51
17 Buzzi イタリア 45 39
18 Eurocement ロシア 40 16
19 てんみず集団しゅうだんセメント有限ゆうげん公司こうし 中国ちゅうごく 35 11
20 Jaypee*** インド 34 16
出典しゅってんhttp://www.globalcement.com/より引用いんよう、「Annual reports of respective companies and their websites and the Global Cement Directory 2013」がソース資料しりょうひょうないの*は CIMPOR(シンポール、ポルトガル)ポルトガル最大手さいおおてのセメント会社かいしゃから15ひゃくまんトンを共有きょうゆうする。**クリンカー容量ようりょうから推定すいていした(95%)。***は2012ねん4がつのもの。

日本にっぽんのセメントにちな地名ちめい 編集へんしゅう

 
山陽さんよう小野田おのだの「セメントまち」の町名ちょうめいしるべ

脚注きゃくちゅう 編集へんしゅう

  1. ^ にかわはいとは - コトバンク
  2. ^ Hill, Donald: A History of Engineering in Classical and Medieval Times, Routledge 1984, p106
  3. ^ PURE NATURAL POZZOLAN CEMENT
  4. ^ Aqueduct Architecture: Moving Water to the Masses in Ancient Rome
  5. ^ A J Francis, The Cement Industry 1796-1914: A History, David & Charles, 1977, ISBN 0-7153-7386-2, Ch 2
  6. ^ Francis op. cit., Ch 5
  7. ^ P. C. Hewlett (Ed)Lea's Chemistry of Cement and Concrete: 4th Ed, Arnold, 1998, ISBN 0-340-56589-6, Chapter 1
  8. ^ a b c 一般いっぱん社団しゃだん法人ほうじんセメント協会きょうかいセメントハンドブック2019 」8ぺーじ
  9. ^ a b c NEDOプロジェクト実用じつようドキュメント”. www.nedo.go.jp. NEDO. 2020ねん5がつ4にち閲覧えつらん
  10. ^ 社団しゃだん法人ほうじん 日本にっぽん建築けんちく学会がっかい建築けんちく工事こうじ標準ひょうじゅん仕様しようしょどう解説かいせつ JASS5 鉄筋てっきんコンクリート工事こうじ 2003」
  11. ^ a b c d e f g h 青山あおやま咸康・服部はっとりきゅうゆう野中のなかはく長束ながつかいさむへん 2003, p. 11.
  12. ^ 青山あおやま咸康・服部はっとりきゅうゆう野中のなかはく長束ながつかいさむへん 2003, p. 12.
  13. ^ a b 一般いっぱん社団しゃだん法人ほうじんセメント協会きょうかい環境かんきょうにやさしいセメント産業さんぎょう2019
  14. ^ 温暖おんだん対策たいさく高炉こうろセメント:協会きょうかい活動かつどう”. www.slg.jp. 鐵鋼てっこうスラグ協会きょうかい. 2020ねん5がつ4にち閲覧えつらん
  15. ^ a b 野畑のばた健志たけし高炉こうろセメントのCO2削減さくげん効果こうかについて」『コンクリート工学こうがくだい48かんだい9ごう日本にっぽんコンクリートこう学会がっかい、2010ねん9がつ、9_58-9_61、doi:10.3151/coj.48.9_58 
  16. ^ 金津かなづつとむ, 中井なかい雅司まさし, 齊藤さいとうただしフライアッシュの活用かつようによる環境かんきょう負荷ふか低減ていげんへの取組とりく」『コンクリート工学こうがくだい48かんだい9ごう日本にっぽんコンクリートこう学会がっかい、2010ねん9がつ、9_54-9_57、doi:10.3151/coj.48.9_54 
  17. ^ 一般いっぱん社団しゃだん法人ほうじん日本にっぽん建設けんせつぎょう連合れんごうかいてい炭素たんそがたコンクリートの普及ふきゅう促進そくしんけて」2016ねん4がつ
  18. ^ NEDOプロジェクト実用じつようドキュメント”. www.nedo.go.jp. NEDO. 2020ねん5がつ4にち閲覧えつらん

参考さんこう文献ぶんけん 編集へんしゅう

  • 青山あおやま咸康・服部はっとりきゅうゆう野中のなかはく長束ながつかいさむへん建設けんせつ材料ざいりょう 地域ちいき環境かんきょう創造そうぞう朝倉書店あさくらしょてん、2003ねん2がつ25にちISBN 4-254-44023-5 
  • 小野田おのだセメント 『ひゃくねん小野田おのだセメント、1981ねん
  • 日本にっぽんセメント 『ひゃくねん日本にっぽんセメント、1983ねん

関連かんれん項目こうもく 編集へんしゅう

外部がいぶリンク 編集へんしゅう