アメリカ同時どうじ多発たはつテロ事件じけん

アメリカ同時どうじ多発たはつテロ事件じけん（アメリカどうじたはつテロじけん、英えい: September 11 attacks）は、2001年ねん9月11日にちにイスラム過激かげき派はテロ組織そしきアルカイダによって行おこなわれたアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくに対たいする4つの協調きょうちょう的てきなテロ攻撃こうげき。9.11事件じけん（きゅういちいちじけん）や、9.11（きゅうてんいちいち）などと呼称こしょうされる場合ばあいもある。

アメリカ同時どうじ多発たはつテロ事件じけん
最さい上段じょうだん：旅客機りょかくきの衝突しょうとつで炎上えんじょうするワールドトレードセンター 2段だん目め左ひだり：ペンタゴンに突入とつにゅうした痕跡こんせき 2段だん目め右みぎ：2機き目めの旅客機りょかくきが激突げきとつし爆発ばくはつ炎上えんじょうするワールドトレードセンター 3段だん目め左ひだり：崩壊ほうかい後ごのワールドトレードセンターと生存せいぞん者しゃの救出きゅうしゅつ活動かつどうを行おこなう消防しょうぼう士し 3段だん目め右みぎ：ユナイテッド航空こうくう93便びんの残骸ざんがい 最さい下段げだん：ペンタゴンに突入とつにゅうする瞬間しゅんかんを捉とらえた映像えいぞうのコマ
場所ばしょ	アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく ニューヨーク州しゅうニューヨーク（1度目どめと2度目どめ） バージニア州しゅうアーリントン（3度目どめ） ペンシルベニア州しゅうシャンクスヴィル（4度目どめ）
日付ひづけ	2001年ねん9月11日にち（火曜日かようび） 午前ごぜん8時じ46分ふん - 午前ごぜん10時じ28分ふん 東部とうぶ夏時間なつじかん (EDT)
標的ひょうてき	ワールドトレードセンターの北きた棟とうと南みなみ棟とう（第だい1・2） アメリカ国防総省こくぼうそうしょう本部ほんぶ庁舎ちょうしゃ（第だい3） 第だい4の標的ひょうてきは不明ふめい（合衆国がっしゅうこく議事堂ぎじどうかホワイトハウスと推測すいそくされている）。
攻撃こうげき手段しゅだん	ハイジャック、自爆じばくテロ
死亡しぼう者しゃ	2,996人にん（被害ひがい者しゃ2,977人にん ＋ 実行じっこう犯はん19人にん）
負傷ふしょう者しゃ	25,000人にん以上いじょう
容疑ようぎ者しゃ	アルカーイダ（#実行じっこう者しゃも参照さんしょう）
動機どうき	アメリカ軍ぐんのサウジアラビア駐留ちゅうりゅう、アメリカの親しんイスラエル政策せいさく等とう（#動機どうきも参照さんしょう）

一連いちれんの攻撃こうげきで、日本人にっぽんじん24人にんを含ふくむ2,977人にんが死亡しぼう、25,000人にん以上いじょうが負傷ふしょうし、少すくなくとも100億おくドル(日本円にほんえん換算かんさん1兆ちょう1465億おく9500万まん円えん)のインフラ被害ひがい・物的ぶってき損害そんがいに加くわえて、長期ちょうきにわたる健康けんこう被害ひがいが発生はっせいした。アメリカの歴史れきし上うえ、最もっとも多おおくの消防しょうぼう士しと法ほう執行官しっこうかんが死亡しぼうした事件じけんであり、殉職じゅんしょく者しゃはそれぞれ343人にんと72人にんだった。また、この事件じけんを契機けいきとしてアフガニスタン紛争ふんそう (2001年ねん-2021年ねん)が勃発ぼっぱつし、世界せかい規模きぼでの対たいテロ戦争せんそうが始はじまった。

概要がいよう

2001年ねん9月がつ11日にち（火曜日かようび）の朝あさ、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく北東ほくとう部ぶの空港くうこうから西海岸にしかいがんに向むけて出発しゅっぱつした旅客機りょかくき計けい4機きが、イスラム原理げんり主義しゅぎ過激かげき派はアルカイダのメンバー計けい19人にんにハイジャックされた。

ワールドトレードセンターへのテロ攻撃こうげき

アメリカン航空こうくう11便びんとユナイテッド航空こうくう175便びんの2機きはニューヨーク州しゅうニューヨークのワールドトレードセンター（世界せかい貿易ぼうえきセンタービル）に向むかい、午前ごぜん8時じ46分ふん（日本にっぽん時間じかん11日にち午後ごご9時じ46分ふん）にアメリカン航空こうくう11便びんがノースタワー（北きた棟とう）に、午前ごぜん9時じ3分ふん（日本にっぽん時間じかん午後ごご10時じ3分ふん）にユナイテッド航空こうくう175便びんがサウスタワー（南みなみ棟とう）に激突げきとつした。

南みなみ棟とうはハイジャック機きの突入とつにゅうから56分ふん後ご、北きた棟とうは1時じ間あいだ42分ふん後ごに倒壊とうかいし、それに伴ともなう衝撃しょうげきと火災かさいは7 ワールドトレードセンタータワー（47階かい建だて）を含ふくむワールドトレードセンター内ないのすべての建物たてものへの一部いちぶまたは全体ぜんたいへの破壊はかいを引ひき起おこしただけでなく、周囲しゅうい10ヵ所かしょの大型おおがた構造こうぞう物ぶつに甚大じんだいな損傷そんしょうを与あたえた。

ペンタゴンへのテロ攻撃こうげき

3機き目めのアメリカン航空こうくう77便びんは、午前ごぜん9時じ37分ふん（日本にっぽん時間じかん午後ごご11時じ37分ふん）にバージニア州しゅうアーリントン郡ぐんのペンタゴン（アメリカ国防総省こくぼうそうしょう本ほん庁舎ちょうしゃ）に激突げきとつし、建物たてものの西側にしがわを部分ぶぶん的てきに倒壊とうかいさせた。

テロ攻撃こうげきの失敗しっぱい

4機き目めのユナイテッド航空こうくう93便びんはコロンビア特別とくべつ区くに向むけて飛行ひこうしていたが、乗員じょういん乗客じょうきゃくがハイジャック犯はんの制圧せいあつを試こころみた結果けっか、ペンシルバニア州しゅうストーニークリーク郡こおり区くの野原のはらに墜落ついらくした。

ワールドトレードセンターおよび周辺しゅうへんのインフラへの破壊はかいは、ニューヨークの経済けいざいに深刻しんこくな打撃だげきを与あたえ、世界せかい市場いちばにも大おおきな影響えいきょうを与あたえた。米国べいこくとカナダの民間みんかん空域くういきは9月13日にちまで閉鎖へいさされ、ウォうぉール街るがいは9月17日にちまで閉鎖へいさされた。新あらたな攻撃こうげきへの恐怖きょうふと警戒けいかい心しんから、多おおくの閉鎖へいさ、避難ひなん、キャンセルが続つづいた。

捜査そうさの結果けっか、アルカイダの指導しどう者しゃであるウサーマ・ビン・ラーディンに疑うたがいを向むけた米国べいこくは、テロから約やく1ヵ月かげつ後ごの2001年ねん10月がつ、有志ゆうし連合れんごう諸国しょこくとともに軍事ぐんじ作戦さくせんを開始かいしした。アフガニスタンを攻略こうりゃくし、同国どうこくからのアルカイダの放逐ほうちくと、テロの首謀しゅぼう者しゃとみられるビン・ラーディンの身柄みがら引ひき渡わたしに応おうじなかったタリバン政権せいけんを同年どうねん11月がつに事実じじつ上じょう崩壊ほうかいさせた。ビン・ラーディンは当初とうしょ、事件じけんへの自身じしんの関与かんよを否定ひていしていたが、2004年ねんにテロ攻撃こうげきの責任せきにんが自みずからにあることを認みとめた。

アルカイダとビン・ラーディンは、アメリカのイスラエル支援しえん、サウジアラビアへのアメリカ軍ぐんの駐留ちゅうりゅう、幼児ようじ50万まん人にんが犠牲ぎせいになったと言いわれるイラクに対たいする制裁せいさいなどをテロの理由りゆうに挙あげた。ビン・ラーディンはテロから10年ねん近ちかく捕捉ほそくを逃のがれ、パキスタン国境こっきょう付近ふきんに潜伏せんぷくしていたが、テロから約やく10年ねん後ごの2011年ねん5月がつ、アメリカ軍ぐんの急襲きゅうしゅうにより殺害さつがいされた。

ワールドトレードセンター跡地あとちの清掃せいそうは2002年ねん5月がつに完了かんりょうし、ペンタゴンは1年ねん以内いないに修復しゅうふくされた。1 ワールドトレードセンターの建設けんせつは2006年ねん11月に始はじまり、2014年ねん11月に開業かいぎょうした。ニューヨーク市しの911メモリアル&ミュージアム、バージニア州しゅうアーリントン郡ぐんのペンタゴンメモリアル、ペンシルバニア州しゅうの墜落ついらく現場げんばにある93便びんナショナルメモリアルなど、多数たすうの慰霊いれい碑ひが建立こんりゅうされた。

ハイジャックされた旅客機りょかくき

ハイジャックされた各かく旅客機りょかくきの飛行ひこうルート

2001年ねん9月がつ11日にち朝あさ（現地げんち時間じかん）、マサチューセッツ州しゅうボストン、バージニア州しゅうダレス（ワシントンD.C.近郊きんこう）、ニュージャージー州しゅうニューアークを発たった4機きの旅客機りょかくきが、モハメド・アタを中心ちゅうしんとするアラブ系けいの集団しゅうだんによってほぼ同時どうじにハイジャックされた。彼かれらは操縦そうじゅう室しつに侵入しんにゅうし、操縦そうじゅう士しを殺害さつがいした後のち、自みずから操縦そうじゅうして、2機き（アメリカン航空こうくう11便びん、ユナイテッド航空こうくう175便びん）をニューヨーク州しゅうニューヨーク・マンハッタンへ、残のこり2機き（アメリカン航空こうくう77便びん、ユナイテッド航空こうくう93便びん）をワシントンD.C.へ向むかわせた。

なお、乗のっ取とられた4機きのうち2機きが米べいボーイング社しゃ製せいのボーイング767型かた機きで、残のこりの2機きがボーイング757型かた機きである。この2種類しゅるいの機体きたいは、運行うんこうする航空こうくう会社かいしゃの操縦そうじゅう士しに互換ごかん性せいを持もたせるために、操縦そうじゅう室しつの操縦そうじゅうシステムは基本きほん的てきに同どうじ物ぶつが使つかわれており、いずれも2人ふたりのみで操縦そうじゅうできるため、意図いとしてこれらの機体きたいが運行うんこうされている便びんが選択せんたくされハイジャックされたと考かんがえられている。

また、実行じっこう犯はんのリーダー、モハメド・アタをはじめとする一部いちぶのハイジャック犯はんたちは、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく内ないにある民間みんかんの航空こうくう学校がっこう（ホフマン飛行機ひこうき学校がっこう）で小型こがた機きの自家用じかよう操縦そうじゅう免許めんきょを取得しゅとくした後のちに、これらの機体きたいの操縦そうじゅう方法ほうほうを事前じぜんにフライトシミュレータで訓練くんれんしていたことが明あきらかになっている。

これら4機きがいずれも北米ほくべい大陸たいりく横断おうだんルートという、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく国内線こくないせんの中なかでは長距離ちょうきょり飛行ひこうに入はいるルートを飛行ひこうする便びんであったのは、長距離ちょうきょり便びんのために燃料ねんりょう積載せきさい量りょうが多おおく、衝突しょうとつ後ごの延焼えんしょう規模きぼを多おおくすることを狙ねらったと推測すいそくする者ものもいる。なお、ハイジャックされて激突げきとつ・墜落ついらくさせられた旅客機りょかくきの乗客じょうきゃく・乗員じょういんは全員ぜんいん死亡しぼうしている。

アメリカン航空こうくう11便びん

詳細しょうさいは「アメリカン航空こうくう11便びんテロ事件じけん」を参照さんしょう

アメリカン航空こうくうのボーイング767-200ER（N334AA）		アメリカン航空こうくう11便びんの飛行ひこう経路けいろ

ボストン発はつロサンゼルス行いきアメリカン航空こうくう11便びん（AA011; ボーイング767-200ER型がた機き・機体きたい記号きごうN334AA）は、乗客じょうきゃく81人にん（日本人にっぽんじん1人にんを含ふくむ）・乗員じょういん11人にんを乗のせ、午前ごぜん8時じ00分ふん頃ごろにローガン国際こくさい空港くうこうを離陸りりくし、ロサンゼルス国際こくさい空港くうこうに向むかった。その後ご、11便びんは午前ごぜん8時じ14分ふん頃ごろに始はじめられたハイジャックにより、コックピットを乗のっ取とられた。11便びんは午前ごぜん8時じ27分ふんに進路しんろを南みなみ向むきに変かえ、午前ごぜん8時じ46分ふんにニューヨーク・ロウアー・マンハッタンのワールドトレードセンター・ツインタワー北きた棟とう（110階かい建けん）に突入とつにゅうし爆発ばくはつ炎上えんじょうした。角度かくど、速度そくどともに浅あさい離着陸りちゃくりく時じの事故じこと違ちがい、機体きたいの残骸ざんがいはほとんど原形げんけいを留とめていなかった。

11便びんがWTC北きた棟とうに衝突しょうとつする瞬間しゅんかんは、ニューヨーク市し消防局しょうぼうきょくLadder Companyの取材しゅざいをしていたフランスの映像えいぞう作家さっか、ノーデ兄弟きょうだいによって撮影さつえいされていた。また、ホームビデオや定点ていてんカメラに写うつり込こんだ映像えいぞうも存在そんざいする。

ユナイテッド航空こうくう175便びん

詳細しょうさいは「ユナイテッド航空こうくう175便びんテロ事件じけん」を参照さんしょう

ユナイテッド航空こうくうのボーイング767-200（N612UA）		ユナイテッド航空こうくう175便びんの飛行ひこう経路けいろ

ボストン発はつロサンゼルス行いきユナイテッド航空こうくう175便びん（UA175; ボーイング767-200ER型がた機き・機体きたい記号きごうN612UA）は、乗客じょうきゃく56人にん・乗員じょういん9人にんを乗のせ、午前ごぜん8時じ14分ふんにローガン国際こくさい空港くうこうを離陸りりくし（アメリカン航空こうくう11便びんでのハイジャック発生はっせいとほぼ同時どうじ）、ロサンゼルス国際こくさい空港くうこうに向むかった。午前ごぜん8時じ42分ふん頃ごろ、UA175便びんのパイロットは離陸りりく直後ちょくごに耳みみにした不審ふしんな内容ないようの無線むせん（ハイジャックされたアメリカン航空こうくう11便びんからの無線むせんだった）について管制かんせい官かんに報告ほうこくしたが、それから午前ごぜん8時じ46分ふんまでの間あいだにUA175便びんもハイジャックされ、コックピットを乗のっ取とられた。その後ご、UA175便びんは午前ごぜん8時じ58分ふんにニューヨークへ進路しんろを変かえ、午前ごぜん9時じ03分ふんにWTC・ツインタワー南みなみ棟とう（110階かい建けん）に突入とつにゅうし爆発ばくはつ炎上えんじょうした。南みなみ棟とうでは北きた棟とうの爆発ばくはつを受うけて多おおくの人ひとが避難ひなんを開始かいししていたため、人的じんてき被害ひがいは北きた棟とうよりも少すくないが、先さきに突入とつにゅうを受うけた北きた棟とうより早はやく南みなみ棟とうが崩壊ほうかいしている。

11便びんとは異ことなり、175便びんの突入とつにゅう時じには、既すでに多おおくの人ひとに事態じたいが認識にんしきされていたことから、突入とつにゅうの瞬間しゅんかんの映像えいぞうや写真しゃしんが多数たすう記録きろくされている。なお、105階かいに居いたエーオン副ふく社長しゃちょうのケビン・コスグローブ（南みなみ棟とうの崩壊ほうかい時じに死亡しぼう）が、南みなみ棟とうが崩壊ほうかいする瞬間しゅんかんまで911番ばんへ電話でんわで状況じょうきょうを伝つたえていた音声おんせいが録音ろくおんされており、この録音ろくおんはザカリアス・ムサウイの裁判さいばんにおいて証拠しょうことして用もちいられた。

アメリカン航空こうくう77便びん

詳細しょうさいは「アメリカン航空こうくう77便びんテロ事件じけん」を参照さんしょう

アメリカン航空こうくうのボーイング757-200		アメリカン航空こうくう77便びんの飛行ひこう経路けいろ

ワシントンD.C.（ダレス国際こくさい空港くうこう）発はつ、ロサンゼルス（ロサンゼルス国際こくさい空港くうこう）行いきアメリカン航空こうくう77便びん（AA077; ボーイング757-200：機体きたい記号きごうN644AA）は、乗客じょうきゃく58人にん・乗員じょういん6人にんを乗のせて、午前ごぜん8時じ20分ふんに出発しゅっぱつした。午前ごぜん8時じ50分ふん頃ごろまでにハイジャックされコックピットを乗のっ取とられた。直後ちょくごに進路しんろを北きた向むきに変かえた後のち、南みなみへ転回てんかい、その後ご東ひがしへ進路しんろを変かえた。最初さいしょの進路しんろ離脱りだつから3分間ふんかんは管制塔かんせいとうと機長きちょうが交信こうしんしていたが、その後ご通信つうしん不能ふのうとなった。

そして午前ごぜん9時じ38分ふん、バージニア州しゅうアーリントンにあるアメリカ国防総省こくぼうそうしょう本庁ほんちょう舎しゃ（ペンタゴン）に激突げきとつし、爆発ばくはつ炎上えんじょうした。激突げきとつの瞬間しゅんかんの映像えいぞうがペンタゴンの駐車ちゅうしゃ場じょうの監視かんしカメラによって記録きろくされており、また付近ふきんを通行つうこう中ちゅうの多おおくのドライバーや歩行ほこう者しゃによって降下こうかし激突げきとつする瞬間しゅんかんが目撃もくげきされた。

防犯ぼうはんカメラなどの映像えいぞうによると、機体きたいは水平すいへいの状態じょうたいで地面じめんを滑走かっそうしながらペンタゴンに衝突しょうとつしていたが、高速こうそくで建築けんちく物ぶつに激突げきとつ・炎上えんじょうしたため機体きたいの残骸ざんがいはほとんど原形げんけいを留とめていなかった。

ユナイテッド航空こうくう93便びん

詳細しょうさいは「ユナイテッド航空こうくう93便びんテロ事件じけん」を参照さんしょう

ユナイテッド航空こうくうのボーイング757-200（N591UA）		ユナイテッド航空こうくう93便びんの飛行ひこう経路けいろ

ユナイテッド航空こうくう93便びんの墜落ついらく跡地あとちにできた穴あな

ニューアーク（ニューアーク空港くうこう）発はつサンフランシスコ（サンフランシスコ国際こくさい空港くうこう）行いきユナイテッド航空こうくう93便びん（UA093; ボーイング757-200、機体きたい記号きごうN591UA）は、午前ごぜん8時じ42分ふん、乗客じょうきゃく37人にん（日本人にっぽんじん1人にんを含ふくむ）（乗客じょうきゃく37人にん中ちゅう4人にんはテロリスト）・乗員じょういん7人にんを乗のせて、滑走かっそう路ろの混雑こんざつで30分ふん遅延ちえんで出発しゅっぱつした。

乗客じょうきゃくの機内きない電話でんわからの通報つうほうによると、午前ごぜん9時じ27分ふんにハイジャックされ、コックピットを乗のっ取とられた。オハイオ州しゅうクリーブランド付近ふきんで進路しんろを南みなみに変かえ、さらに南東なんとうへ向むかった。ワシントンD.C.へ向むかうことを管制かんせい官かんに通告つうこく、標的ひょうてきはアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく議会ぎかい議事堂ぎじどうかホワイトハウスであったと推測すいそくされている。

午前ごぜん9時じ57分ふん、機内きない電話でんわや携帯けいたい電話でんわによる外部がいぶとの連絡れんらくで、ハイジャックの目的もくてきを自爆じばくテロと認識にんしきした乗客じょうきゃくが機きの奪還だっかんに乗のり出だす。午前ごぜん10時じ03分ふん、93便びんは490ノット (563マイル毎時まいじ (906 km/h)) の速度そくどでペンシルベニア州しゅうピッツバーグ郊外こうがいシャンクスヴィル（ワシントンD.C. 北西ほくせい240キロの場所ばしょ）に墜落ついらくした。離着陸りちゃくりく時じの速度そくどの倍ばい以上いじょうの高速こうそくで地上ちじょうに衝突しょうとつしたため、機体きたいの残骸ざんがいはほとんど原形げんけいを留とめていなかった。なお、地震じしん計けいのデータから墜落ついらくの時刻じこくを午前ごぜん10時じ06分ふんと公式こうしき記録きろくと異ことなる報告ほうこくがなされたが、後のちにこの時刻じこくを算出さんしゅつした地震じしん学者がくしゃ本人ほんにんにより撤回てっかいされている。

乗客じょうきゃくたちがハイジャッカーたちに反撃はんげきした際さいに「Let's Roll.（さあやろうぜ・よし、皆みなかかれ）」を合図あいずにしたと言いわれている。この「Let's Roll」は、9・11事件じけん以降いこうのアフガニスタンでの「報復ほうふく戦争せんそう」において一いち種しゅのスローガンとして用もちいられた。9・11事件じけんの調査ちょうさ委員いいん会かいは乗客じょうきゃくは操縦そうじゅう室しつ内ないに進入しんにゅうできなかったと結論けつろんづけているが、一部いちぶの遺族いぞくはCVR音声おんせいに乗客じょうきゃくが操縦そうじゅう室しつに進入しんにゅうした証拠しょうこが記録きろくされていると主張しゅちょうしている。なお、離陸りりくからハイジャック、墜落ついらくまでの乗員じょういん乗客じょうきゃくの行動こうどうを基もとにした映画えいが『ユナイテッド93』が2006年ねんに公開こうかいされた。

被害ひがい

ワールドトレードセンター（WTC）

ユナイテッド航空こうくう175便びんがツインタワー南みなみ棟とうに突入とつにゅうした瞬間しゅんかん

NASAが宇宙うちゅうから撮影さつえいしたテロ攻撃こうげきの様子ようす

自由じゆうの女神めがみの背景はいけいで炎上えんじょうしているツインタワー

午前ごぜん8時じ46分ふん40秒びょう、ハイジャックされたアメリカン航空こうくう11便びんがワールドトレードセンター北きた棟とう （1 WTC）の北面ほくめん、93 – 99階かいの部分ぶぶんに衝突しょうとつした。衝突しょうとつによってハイジャック機きのジェット燃料ねんりょうが引火いんかしたことで北きた棟とうの高層こうそう階かいでは爆発ばくはつ的てきな火災かさいが発生はっせいし、また燃料ねんりょうがエレベーターシャフトを通つうじて落下らっかしたことで地上ちじょうロビー等とうの低層ていそうのフロアでも爆発ばくはつが起おこった。

衝突しょうとつから間まもなく火災かさいと黒くろ煙けむりは周辺しゅうへん階かいに広ひろがり始はじめ、8時じ52分ふんには、過酷かこくな状況じょうきょうに耐たえかねて高層こうそう階かいから飛とび降おりる人にん々も現あらわれた。この時点じてんでは、北きた棟とうへの航空機こうくうきの突入とつにゅうは（テロ攻撃こうげきではなく）事故じこであるとの見方みかたが大勢おおぜいを占しめていた。当時とうじの大統領だいとうりょうジョージ・W・ブッシュも第一報だいいっぽうを受うけて「これはパイロットエラーによる事故じこだ」と発言はつげんした。

午前ごぜん9時じ02分ふん59秒びょう、ハイジャックされたユナイテッド航空こうくう175便びんがワールドトレードセンター南みなみ棟とう (2 WTC) に突入とつにゅうし、南みなみ棟とうは爆発ばくはつ炎上えんじょうした。ハイジャック機きは機体きたいを傾かたむけながら南みなみ棟とうの南面なんめん、77 – 85階かいの部分ぶぶんに衝突しょうとつしており、これによって南みなみ棟とうが負おった構造こうぞう的てきダメージは北きた棟とうと比較ひかくしてより深刻しんこくだった。2機き目めのジェット機じぇっときが南みなみ棟とうに衝突しょうとつした瞬間しゅんかんは既すでに多数たすうの報道ほうどうカメラが記録きろくを始はじめており、一般いっぱん者しゃも含ふくめた数多すうたのカメラによって様々さまざまな角度かくどから捉とらえられた。この時点じてんで、一連いちれんの出来事できごとが事故じこではなく故意こいに起おこされた攻撃こうげきであることが広ひろく認識にんしきされた。

午前ごぜん9時じ37分ふん、ハイジャックされた旅客機りょかくき（アメリカン航空こうくう77便びん）がペンタゴンに突入とつにゅうした。9時じ42分ふん、連邦れんぽう航空局こうくうきょく (FAA) はアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく大陸たいりく部ぶ内うちのすべての民間みんかん航空機こうくうきを離陸りりく禁止きんしとし、すでに飛行ひこう中ちゅうの民間みんかん機きにはただちに着陸ちゃくりくするよう指示しじした。

午前ごぜん9時じ59分ふん、ユナイテッド航空こうくう175便びんの南みなみ棟とう突入とつにゅうから56分ふん後ご、ワールドトレードセンター南みなみ棟とうが崩壊ほうかいした。その直後ちょくごの10時じ03分ふん11秒びょう、ハイジャックされたユナイテッド航空こうくう93便びんがペンシルベニア州しゅうで墜落ついらくした。10時じ28分ふん、アメリカン航空こうくう11便びんの北きた棟とう突入とつにゅうから1時じ間あいだ42分ふん後ご、南みなみ棟とうに続つづきワールドトレードセンター北きた棟とうが崩壊ほうかいした。

ワールドトレードセンターのツインタワーは、航空機こうくうきの衝突しょうとつによる大だい規模きぼな構造こうぞう的てきダメージに加くわえ、ジェット燃料ねんりょうが引ひき起おこした火災かさいの熱ねつで構造こうぞう部材ぶざい（鉄骨てっこつ柱ばしら・床ゆかトラス部材ぶざい等とう）の強度きょうどが著いちじるしく低下ていかしたことで崩壊ほうかいしたと考かんがえられている。アメリカ国立こくりつ標準ひょうじゅん技術ぎじゅつ研究所けんきゅうじょの報告ほうこく書しょによれば、火災かさいによるダメージは（ジェット燃料ねんりょうではなく）主おもにオフィス内ないの可燃かねん物ぶつによるものであり、それらの可燃かねん物ぶつが火災かさいを増長ぞうちょうしなければ、ツインタワーは崩壊ほうかいを免まぬかれていた可能かのう性せいがある。ツインタワーは、建設けんせつ当時とうじに世界せかい最大さいだいのジェット旅客機りょかくきであったボーイング707が突入とつにゅうしても崩壊ほうかいしないよう設計せっけいされていたが、漏もれ出だしたジェット燃料ねんりょうとそれによる大だい規模きぼ火災かさいの影響えいきょうは設計せっけい上じょう考慮こうりょされていなかった。日本にっぽんの鹿島建設かしまけんせつは事件じけんの翌年よくねんにWTC建物たてもの内部ないぶの損傷そんしょうについて独自どくじのシミュレーションを実施じっしし、崩壊ほうかいが火災かさいによるものであることを裏付うらづけた。

北きた棟とうの崩壊ほうかい時じの瓦礫がれきが隣接りんせつする7 ワールドトレードセンタービル (7 WTC) に降ふり注そそぎ、7 ワールドトレードセンターは損傷そんしょう、さらに火災かさいが数時間すうじかんにわたって発生はっせいし、ビルの構造こうぞう的てき健全けんぜん性せいは失うしなわれた。午後ごご5時じ21分ふん、7 ワールドトレードセンターは倒壊とうかいした。

各かく旅客機りょかくきのツインタワー両りょう棟むねへの突入とつにゅうの様子ようす

7 WTC以外いがいにも、ワールドトレードセンター・コンプレックスと周辺しゅうへんの多おおくのビルが壊滅かいめつ的てきな被害ひがいを受うけた。全壊ぜんかいした施設しせつには聖せいニコラス聖堂せいどうも含ふくまれていた。1 WTC（北きた棟とう）、2 WTC（南みなみ棟とう）と同様どうように、3 WTC（マリオット・ワールドトレードセンター）と7 WTCは跡形あとかたもなく破壊はかいされた。4 WTC、5 WTC、6 WTC（合衆国がっしゅうこく税関ぜいかんビル）、ウエスト・ストリートを渡わたる2つの横断おうだん歩道橋ほどうきょうは激はげしく損壊そんかいした。リバティ・ストリートを隔へだてたドイツ銀行ぎんこうビルは部分ぶぶん的てきに損壊そんかいし、2007年ねんに始はじまった解体かいたい作業さぎょうで取とり壊こわされた。ウエスト・ストリートを隔へだてたワールドフィナンシャルセンターの2棟むねのビルもダメージを被こうむった。ワールドトレードセンター・コンプレックスの地下ちかにはPATHトレインのワールド・トレード・センター駅えきが位置いちしていた。ツインタワーの崩壊ほうかい時じ、この駅えきは完全かんぜんに破壊はかいされ、この駅えきからハドソン川がわの下したを通とおってニュージャージー州しゅうジャージーシティのエクスチェンジ・プレイス駅えきへ向むかうトンネルも水没すいぼつした。

北きた棟とうの崩壊ほうかいにより、北きた棟とうの屋上おくじょうに設置せっちされていた通信つうしんアンテナも破壊はかいされた。一時いちじ的てきに多おおくのTV局きょく・ラジオ局きょくの放送ほうそうが断絶だんぜつしたが（WCBS-TVのみがエンパイアステートビルにバックアップ用ようの通信つうしん装置そうちを持もっていた）、それらの放送ほうそう局きょくはすぐに別べつルートでの通信つうしんを確立かくりつし、放送ほうそうを再開さいかいすることができた。ワールドトレードセンターの敷地しきちにおける火災かさいは、テロ事件じけんから100日にち後ごの12月20日にちにようやく鎮火ちんかした。この事件じけん以降いこう、ワールドトレードセンター・コンプレックス跡地あとちは「グラウンド・ゼロ」や「ワールドトレードセンター・サイト（跡地あとち）」とも呼よばれている。

人的じんてき被害ひがい

ブルックリン側がわから見みたツインタワー南みなみ棟とう (2 WTC) の崩壊ほうかい

ワールドトレードセンター (WTC) へのテロ攻撃こうげきによる死者ししゃは合計ごうけいで2,763人にんだった。その内訳うちわけは、事件じけん当時とうじWTCに居いた民間みんかん人じんが2,192人にん、消防しょうぼう士しが343人にん、警察官けいさつかんが71人にん、ハイジャックされた旅客機りょかくきの乗員じょういん・乗客じょうきゃくが147人にん、ハイジャック犯はんのテロリストが10人にんとなっていた。

WTCのツインタワーにおける民間みんかん人死ひとじに者しゃの90%以上いじょうは、ハイジャック機きによる衝突しょうとつを受うけた階かい以上いじょうのフロアで発生はっせいした。北きた棟とうではハイジャック機きの衝突しょうとつ時じに数すう百ひゃく人にんが即死そくししたほか、直撃ちょくげきを受うけた階かい以上いじょうのフロアに1,355人にんが閉とじ込こめられ、煙けむりの吸引きゅういん・タワーからの落下らっか・最終さいしゅう的てきなタワーの崩壊ほうかいなどの理由りゆうによってその全員ぜんいんが最終さいしゅう的てきに死亡しぼうした。北きた棟とうの3つの非常ひじょう階段かいだんすべてがアメリカン航空こうくう11便びんの衝突しょうとつの際さいに破壊はかいされており、上層じょうそう階かいから人々ひとびとが脱出だっしゅつすることは不可能ふかのうだった。一方いっぽうで、（北きた棟とうにおいて）直撃ちょくげきを受うけた階かいより下したのフロアで死亡しぼうした民間みんかん人じんは107人にんとされている。

南みなみ棟とうで死亡しぼうした民間みんかん人じんは計けい630人にんであり、北きた棟とうの半分はんぶん以下いかの数字すうじだった。南みなみ棟とうでは、北きた棟とうへのジェット機じぇっとき突入とつにゅうの直後ちょくごから多おおくの人々ひとびとが自主じしゅ的てきに避難ひなんを開始かいししていたため、死者ししゃの数かずは大幅おおはばに抑おさえられた。一方いっぽうで、南みなみ棟とうへのハイジャック機きの突入とつにゅう時じには78階かいのスカイロビーでエレベーターを待まっていた数すう百ひゃく人にんに及およぶ避難ひなん者しゃの多おおくが死傷ししょうした。『USAトゥデイ』は、最初さいしょのジェット機じぇっとき突入とつにゅう後ごに南みなみ棟とうに居いた全員ぜんいんを避難ひなんさせることができなかったことを「事件じけん当日とうじつに起おきた大おおきな悲劇ひげきのひとつ」と評ひょうしている。南みなみ棟とうでは、ユナイテッド航空こうくう175便びんの衝突しょうとつの後のちも非常ひじょう階段かいだんのひとつ（A階段かいだん）が崩壊ほうかいを免まぬかれており、このA階段かいだんを利用りようすることで18人にん（直撃ちょくげきを受うけた階かいから14人にん、それより上うえの階かいから4人にん）が生還せいかんした。

ジェット機じぇっときの衝突しょうとつによって北きた棟とう・南みなみ棟とうではエレベータが停止ていしし、多おおくの人ひとが閉とじ込こめられた。『USAトゥデイ』の推定すいていでは、最小さいしょうで200人にん、最大さいだいで400人にんがツインタワーのエレベータに閉とじ込こめられた状態じょうたいで死亡しぼうしたとされている。エレベータに閉とじ込こめられたものの、そこから自力じりきで脱出だっしゅつした生還せいかん者しゃは21人にんのみだった。エレベータにおける死者ししゃは、ケーブルの破断はだんによるエレベータ籠かごの急きゅう落下らっかや、エレベータへの火炎かえんの侵入しんにゅうによって死亡しぼうしており、それらを免まぬかれた者ものもタワーの崩落ほうらく時じに死亡しぼうした。

上空じょうくうから見みたWTC跡地あとち（2001年ねん9月がつ17日にち撮影さつえい）

ツインタワーからの転落てんらくもしくは飛とび降おりによる死者ししゃは最低さいていでも200人にんと推定すいていされている。そのほとんどが北きた棟とうで発生はっせいしたものであり、南みなみ棟とうからの転落てんらく・飛とび降おりによる死者ししゃは12人にんに満みたなかった。北きた棟とうから落下らっかした人々ひとびとの多おおくは、タワーに隣接りんせつする道路どうろや広場ひろば（トービン・プラザ）および3 WTCビルの屋上おくじょうにたたきつけられて死亡しぼうした。消防しょうぼう士しの1人ひとりは落下らっかしてきた人ひとの巻まき添ぞえとなり死亡しぼうした。

北きた棟とうの101 – 105階かいを占しめていた投資とうし銀行ぎんこうのキャンター・フィッツジェラルドでは、他たの雇用こよう主ぬしを大おおきく上回うわまわる658人にんもの従業じゅうぎょう員いんが犠牲ぎせいとなった。キャンター・フィッツジェラルドの直下ちょっか、北きた棟とうの93 – 100階かいを占しめていたマーシュ・アンド・マクレナンでは358人にんの従業じゅうぎょう員いんが犠牲ぎせいとなった。南みなみ棟とうのエーオンでは175人にんの従業じゅうぎょう員いんが犠牲ぎせいとなった。

アメリカ国立こくりつ標準ひょうじゅん技術ぎじゅつ研究所けんきゅうじょ (NIST) は、事件じけん発生はっせい当時とうじのワールドトレードセンター・コンプレックスには約やく1万まん7400人にんの民間みんかん人じんが存在そんざいしたと推定すいていしている。港湾こうわん公社こうしゃのターンスタイルによる記録きろくでは、午前ごぜん8時じ45分ふんには（通常つうじょうは）1万まん4154人にんがツインタワー内ないに存在そんざいしたことが示唆しさされている。ジェット機じぇっときが直撃ちょくげきした階かいよりも下したのフロアに居いた人々ひとびとは、その大半たいはんが安全あんぜんにタワーから避難ひなんすることができた。ツインタワー南みなみ棟とうの崩壊ほうかい時じ、当時とうじ南みなみ棟とうに居いた民間みんかん人じん、消防しょうぼう士しならびに警察官けいさつかんは全員ぜんいん死亡しぼうし、タワー周辺しゅうへんの道路どうろやビルでも多数たすうの死者ししゃが生しょうじた。北きた棟とうの崩壊ほうかい時じには、12人にんの消防しょうぼう士し、1人ひとりの警察官けいさつかん、および3人にんの民間みんかん人じんが崩壊ほうかいを免まぬかれた非常ひじょう階段かいだんに守まもられる形かたちで生いき残のこったが、それ以外いがいに生存せいぞん者しゃはいなかった。

救助きゅうじょ活動かつどう

炎上えんじょうするワールドトレードセンター北きた棟とう・南みなみ棟とうから市民しみんを救助きゅうじょするため、ニューヨーク市し消防局しょうぼうきょくは過去かこに例れいのない大だい規模きぼな動員どういんを行おこない、200以上いじょう（全体ぜんたいの約やく半数はんすう）の消防しょうぼう部隊ぶたいがの現場げんばに派遣はけんされた。また、多おおくの非番ひばんの消防しょうぼう士しも自主じしゅ的てきに救助きゅうじょ活動かつどうに参加さんかした。

ニューヨーク市し警察けいさつは緊急きんきゅう出動しゅつどう部隊ぶたい（ESU）を含ふくむ多数たすうの警察官けいさつかんを救助きゅうじょのために動員どういんしたほか、航空こうくう隊たいのヘリコプター3機きを現場げんばに派遣はけんしたが、北きた棟とう・南みなみ棟とうからのヘリコプター救助きゅうじょは炎ほのおと煙けむりによる極端きょくたんな悪条件あくじょうけんにより不可能ふかのうと判断はんだんされた。その他た、港湾こうわん公社こうしゃ警察けいさつ所属しょぞくの警察官けいさつかんも多おおくが救助きゅうじょ活動かつどうに参加さんかした。

消防しょうぼう隊たいやヘリコプターは9時じ00分ふんまでに現場げんばに到着とうちゃくし、救助きゅうじょを試こころみていた。

国防総省こくぼうそうしょう本庁ほんちょう舎しゃ（ペンタゴン）

アメリカン航空こうくう77便びんが国防総省こくぼうそうしょう本庁ほんちょう舎しゃに突入とつにゅうした瞬間しゅんかんの映像えいぞう

炎上えんじょうする国防総省こくぼうそうしょう本ほん庁舎ちょうしゃと突入とつにゅうしたアメリカン航空こうくう77便びんの破片はへん

午前ごぜん9時じ37分ふん45秒びょう、ハイジャックされたアメリカン航空こうくう77便びん（AA077; ボーイング757）が、バージニア州しゅうアーリントン郡ぐんのアメリカ国防総省こくぼうそうしょう本庁ほんちょう舎しゃ（ペンタゴン）に突入とつにゅうした。アメリカン77便びんはビルの西にし壁かべに衝突しょうとつして爆発ばくはつ炎上えんじょうし、AA077便びんの乗客じょうきゃく・乗員じょういん全員ぜんいんが死亡しぼうしたほか、ペンタゴンに居いた125人にんの国防総省こくぼうそうしょう職員しょくいん（民間みんかん人じん70人にん、軍ぐん関係かんけい者しゃ55人にん）が死亡しぼう、106人にんが重傷じゅうしょうを負おった。

AA077便びんの衝突しょうとつと続つづいて発生はっせいした火災かさいによってペンタゴンは激はげしく損傷そんしょうし、ビルは部分ぶぶん的てきに倒壊とうかいした。ペンタゴンに突入とつにゅうする直前ちょくぜん、旅客機りょかくきの翼つばさは地上ちじょうの街灯がいとうをなぎ倒たおし、さらに発電はつでん機きに接触せっしょくした。77便びんはペンタゴン西側にしがわ外壁がいへきの1階かい部分ぶぶんに激突げきとつしたが、衝突しょうとつの瞬間しゅんかんにボーイング757の胴体どうたい前部ぜんぶはバラバラになり、その後ご一瞬いっしゅんのうちに機体きたい中央ちゅうおう部ぶと尾翼びよく部ぶが勢いきおいを保たもったまま外壁がいへきを突つき抜ぬけた。最もっとも深ふかくまで到達とうたつしたのは尾翼びよく部ぶの破片はへんであり、5層そうある外壁がいへきのうち3層そうを突つき破やぶり、94 m内側うちがわまで貫通かんつうしていた。その後ご10時じ10分ふんには、衝突しょうとつで損傷そんしょうしたビルの一部分いちぶぶんが倒壊とうかいした。ビルの倒壊とうかい部分ぶぶんは最大さいだいで幅はば29 m、奥行おくゆき15 mにわたった。77便びんの衝突しょうとつからビルの崩壊ほうかいまで時間じかん的てき猶予ゆうよがあったため、4 - 5階かいに居いた職員しょくいんは全員ぜんいんが安全あんぜんに避難ひなんすることができた。旅客機りょかくきの突入とつにゅう時じ、ペンタゴンでは約やく1万まん8000人にんが働はたらいていたが、この数字すうじは1998年ねんに始はじまった改修かいしゅう工事こうじによって通常つうじょうより4,000人にんほど少すくなかった。

この直前ちょくぜんに起おきたワールドトレードセンター・ツインタワーへの他ほかの飛行機ひこうきの突入とつにゅうの影響えいきょうで情報じょうほうは錯綜さくそうし、最初さいしょの報道ほうどうは単たんにペンタゴンが爆発ばくはつ炎上えんじょうしたというだけであったが、後のちに付近ふきんを通行つうこう中ちゅうのドライバーや歩行ほこう者しゃによってアメリカン航空機こうくうきが北側きたがわから旋回せんかいして激突げきとつしたとの目撃もくげきが証言しょうげんされ報ほうじられた。さらに激突げきとつの瞬間しゅんかんの映像えいぞうがペンタゴンの駐車ちゅうしゃ場じょうの監視かんしカメラによって記録きろくされ、すぐにFBIによって回収かいしゅう、捜査そうさされた。

防空ぼうくう状況じょうきょう

テロ当日とうじつは北きたアメリカ航空こうくう宇宙うちゅう防衛ぼうえい司令しれい部ぶ（ノーラッド）の年としに一度いちど行おこなわれる訓練くんれんの日ひであり、東海岸ひがしかいがんから離はなれた場所ばしょで万全ばんぜんの防空ぼうくう体制たいせいで訓練くんれんに当あたっていたはずだった。しかし連邦れんぽう航空こうくう保安ほあん局きょくからアメリカン航空こうくう11便びんハイジャック発生はっせいの第一報だいいっぽうが入はいったのは8時じ40分ふんごろで、マサチューセッツ州しゅうのケープコッド南西なんせい部ぶにあるオーティス空軍くうぐん州兵しゅうへい基地きちからF-15戦闘せんとう機き2機きがスクランブル発進はっしんしたのは8時じ52分ふんだった。

スクランブル発進はっしんしたF-15はアメリカン航空こうくう11便びんを追跡ついせきするよう命めいじられたが、発進はっしんした時ときAA011便びんはすでにツインタワー北きた棟とうに突入とつにゅうした後のちだった。管制かんせい室しつは途中とちゅうからユナイテッド航空こうくう175便びんを追跡ついせきさせているという認識にんしきだったが、状況じょうきょうの把握はあくが不十分ふじゅうぶんで、パイロットも何なにを追跡ついせきしているか認識にんしきできていなかった。同機どうきは一旦いったんロングアイランド湾わんで待機たいきするよう命めいじられ、ニューヨーク上空じょうくうへの進入しんにゅうを命めいじられたのはUA175便びんがツインタワー南みなみ棟とうに突入とつにゅうした後のちだった。しかしF-15には旅客機りょかくき攻撃こうげきの権限けんげんが無なく、突入とつにゅうを止とめることは不可能ふかのうだったとされる（進路しんろ妨害ぼうがいは可能かのうだったという指摘してきもある）。

ワシントンD.C.には、ノースカロライナ州しゅう上空じょうくうで訓練くんれんしていたF-16戦闘せんとう機き3機きが呼よばれたが、飛来ひらいしたところで基地きちへの着陸ちゃくりく待機たいきを命めいじられた。3機きはアメリカン航空こうくう77便びんの追跡ついせきを命めいじられ再度さいど離陸りりくしたが、もともと訓練くんれん中ちゅうだったために燃料ねんりょうが不足ふそくし始はじめ、うちの2機きは訓練くんれん用ようの模擬もぎ弾だんしか装備そうびしていなかった。9時じ30分ふんに別べつのF-16が3機き発進はっしんし、ワシントン近ちかくに飛来ひらいしたが、これらには攻撃こうげき用ようのサイドワインダーAAMが装備そうびされ、旅客機りょかくき撃墜げきついの権限けんげんが与あたえられていた。しかし、結局けっきょくAA077便びん(アメリカン航空こうくう77便びん)に合流ごうりゅうすることは無なく、9時じ38分ふんにペンタゴンへの攻撃こうげきの阻止そしには至いたらなかった。

オハイオ州しゅう上空じょうくうを飛行ひこうしていたユナイテッド航空こうくう93便びんの付近ふきんで、積荷つみにの搬送はんそうを行おこなっていたC-130輸送ゆそう機きが、管制かんせい官かんからUA093便びんを捕捉ほそくするように命めいじられた。C-130はUA093便びん墜落ついらくの際さい、17マイル (27 km)離はなれたところに位置いちしていた。

ノーラッドから10時じ6分ふんにスクランブル発進はっしん命令めいれいがあった2機きのF-16が発進はっしんしたのは10時じ16分ふんだった。別べつの2機きのF-16が93便びんを追跡ついせきしていたという話はなしもあるが、公式こうしきな発表はっぴょうにはない。さらに事故じこから約やく10分ふん後ごに現場げんばのはるか上空じょうくうを戦闘せんとう機きらしい航空機こうくうき1機きが通過つうかするのを目撃もくげきされた。ノーラッドは連邦れんぽう航空局こうくうきょくから93便びん墜落ついらくの報告ほうこくを受うけたのは10時じ15分ふんで、10分ふん近ちかく93便びんの追跡ついせきを続つづけさせていた。

連邦れんぽう航空局こうくうきょくがアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく中ちゅうのすべての空港くうこうの閉鎖へいさの措置そちを決定けっていしたのはワールドトレードセンターへの2度目どめの突入とつにゅうの直後ちょくごからで、9時じ45分ふんに全米ぜんべいの空港くうこうからの民間みんかん機きの離陸りりくが停止ていしされ、飛行ひこう中ちゅうのすべての民間みんかん機きは直ただちに最さい寄よせの空港くうこうへ着陸ちゃくりくするよう通告つうこくされた。民間みんかん機きの飛行ひこう禁止きんしは3日間にちかんにわたり、常つねに5,000機き以上いじょうが飛とんでいた航空機こうくうきがアメリカ上空じょうくう、そしてアメリカが管制かんせいを担当たんとうする空域くういきから姿すがたを消けした。

アメリカ政府せいふ首脳しゅのうの動うごき

本ほん事件じけんの発生はっせい当時とうじ、43代だい合衆国がっしゅうこく大統領だいとうりょうジョージ・W・ブッシュはフロリダ州しゅうに滞在たいざいしていた。当日とうじつは教育きょういく政策せいさくの成功せいこうをアピールする為ために同どう州しゅうサラソータにあるエマ・E・ブッカー小学校しょうがっこうの授業じゅぎょうを視察しさつし、午後ごごにはワシントンD.C.に戻もどって共和党きょうわとう議員ぎいんとのバーベキューが行おこなわれる予定よていだった。1機き目めのツインタワー攻撃こうげきの際さいには小学校しょうがっこうへ向むかう専用せんよう車しゃの車中しゃちゅうにいたが、このときは（多おおくのメディアが速報そくほうした様ように）単たんなる航空こうくう事故じこだと考かんがえていたとされる。ただし、一時いちじ的てきにホワイトハウスとの間あいだで電話でんわ会議かいぎが行おこなわれた。また補佐ほさ官かんら周辺しゅうへんも同おなじように事故じこと考かんがえ、予定よてい通どおり小学校しょうがっこうへ入はいった。

エマ・E・ブッカー小学校しょうがっこうで連絡れんらくを行おこなうブッシュ大統領だいとうりょう

大統領だいとうりょう専用せんよう機内きないでチェイニー副ふく大統領だいとうりょうとの連絡れんらくを行おこなうブッシュ大統領だいとうりょう

授業じゅぎょう視察しさつ中ちゅうに2機き目めのツインタワー突入とつにゅうがあり、数すう分ふん後ご、ブッシュ大統領だいとうりょうがアンドリュー・カード首席しゅせき補佐ほさ官かんから2機き目めの突入とつにゅうと「合衆国がっしゅうこくが攻撃こうげきされている可能かのう性せいがある」との報告ほうこくを受うけたが、ブッシュは「無駄むだな動揺どうようを与あたえないために」との理由りゆうですぐに動うごかずに7分間ふんかん、小学生しょうがくせいの朗読ろうどくを聞きき続つづけていた。朗読ろうどくが終おわるとブッシュ大統領だいとうりょうは小学生しょうがくせいを褒ほめ、ただちに隣室りんしつで補佐ほさ官かんと話はなし、電話でんわでコンドリーザ・ライス国家こっか安全あんぜん保障ほしょう担当たんとう補佐ほさ官かんと州しゅう知事ちじに連絡れんらくした。その後ご、テレビカメラで「アメリカが攻撃こうげきを受うけた」と小学生しょうがくせいの前まえで国民こくみんへ呼よびかけ、9時じ30分ふん頃ごろに小学校しょうがっこうから車列しゃれつとともに出発しゅっぱつ、3マイル (5 km) のところにある空港くうこうへ向むかった。

9時じ55分ふんに、大統領だいとうりょう専用せんよう機き「VC-25」が目的もくてき地ちを決きめないまま離陸りりく、地上ちじょうからの攻撃こうげきを避さけるため直後ちょくごに急上昇きゅうじょうしょうした。この時点じてんでは護衛ごえいの戦闘せんとう機きは無なかった。国内こくない上空じょうくうには未いまだに連絡れんらくの取とれない旅客機りょかくきが11機きあったが、管制かんせいの指示しじで地上ちじょうに降おろし、国内こくない空域くういきは大統領だいとうりょう専用せんよう機きと哨戒しょうかい機きだけになった。航空こうくう管制かんせいからは自由じゆうに飛行ひこうしてもよいとの許可きょかがあり、機長きちょうが行いき先さきを尋たずねた際さいに大統領だいとうりょうはワシントンを指示しじした。アンドリュー・カードは国民こくみんに声こえを伝つたえるべきと進言しんげんしたが、当時とうじ専用せんよう機きからは生なまの声明せいめい発表はっぴょうができなかったため、一いち度どルイジアナ州しゅうバークスデール空軍くうぐん基地きちに立たち寄より、国民こくみんに向むけた声明せいめい発表はっぴょうを行おこなった。ここでは有事ゆうじの際さいに大統領だいとうりょうが軍ぐんを指揮しきするために搭乗とうじょうするE-4B ナイトウォッチも随行ずいこうしていたが、乗のり換かえはしなかった。その後ご、ネブラスカ州しゅうオファット空軍くうぐん基地きち（E-4B ナイトウォッチが所属しょぞくする基地きち）で事態じたいの沈静ちんせい化かを待まち、夕刻ゆうこくにメリーランド州しゅうアンドルーズ空軍くうぐん基地きち（大統領だいとうりょう専用せんよう機きが所属しょぞくする基地きち）経由けいゆでワシントンD.C.へ帰還きかんした。専用せんよう機きは通常つうじょう、国内こくないでのフライトでは戦闘せんとう機きの護衛ごえいを受うけないが、この日ひのオファット基地きちからアンドルーズ基地きちへのフライトでは、国内こくないでは初はじめてゼネラル・ダイナミクスF-16戦闘せんとう機きの護衛ごえいを受うけて飛行ひこうしている。戦闘せんとう機きは大統領だいとうりょう専用せんよう機きからパイロットの顔かおが判別はんべつできるほどの至近しきん距離きょりを飛行ひこうしていた。

ホワイトハウスではリチャード・チェイニー副ふく大統領だいとうりょうらが執務しつむを行おこなっていたが、ツインタワーへの2度目どめの攻撃こうげきの直後ちょくご、シークレットサービスにつれられて、地下ちか6階かいの地下ちか壕ごうへ避難ひなんした。

ドナルド・ラムズフェルド国防こくぼう長官ちょうかんは上級じょうきゅう軍人ぐんじんと朝食ちょうしょくをとった後のち、ペンタゴンの執務しつむ室しつへ入はいって議員ぎいんと懇談こんだんしていた。ラムズフェルド国防こくぼう長官ちょうかんにツインタワー「攻撃こうげき」の知しらせが入はいったのは、ペンタゴン攻撃こうげきのわずか2分ふん前まえであり、アメリカン航空こうくう77便びんがペンタゴンに向むかっていることは知しらなかった。また、平時へいじのペンタゴンにはホワイトハウスのような防空ぼうくう装備そうびがない。攻撃こうげきの後のち、ラムズフェルド国防こくぼう長官ちょうかんが建物たてものの外そとへ出でると女性じょせい職員しょくいんが血ちを流ながして倒たおれていたため、彼女かのじょを抱かかえて避難ひなんし、担架たんかに乗のせ救急きゅうきゅう車しゃが来くるまで看病かんびょうしていた。現場げんばから避難ひなんしたのはその後ごで、数すう十じゅう分ふんが経過けいかしていた。

コリン・パウエル国務こくむ長官ちょうかんは、事件じけん当時とうじ南米なんべいペルーを実務じつむ訪問ほうもん中ちゅうであったが、ツインタワーおよびペンタゴンへの攻撃こうげきの報告ほうこくを聞きいて、すぐに政府せいふ専用せんよう機きでアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくに帰国きこくした。

なおロシア連邦れんぽうのウラジーミル・プーチン大統領だいとうりょうは、この一報いっぽうに対たいし「アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく軍ぐんが必要ひつような動員どういんをかけたとしても、直ただちにロシア連邦れんぽう軍ぐんに迎撃げいげき体制たいせいを取とらせることはない」とホットラインでブッシュ大統領だいとうりょうに告つげた。ロシア連邦れんぽう軍ぐんにはアメリカが大だい規模きぼな動員どういんをかけるとそれに反応はんのうするように指揮しき系統けいとうが準備じゅんびされている為ためであった。

テロの実行じっこう者しゃ

ウサーマ・ビン・ラーディン

詳細しょうさいは「ウサーマ・ビン・ラーディン」を参照さんしょう

オサマ・ビン・ラーディン（1997年ねん撮影さつえい）

アメリカ同時どうじ多発たはつテロ事件じけんの首謀しゅぼう者しゃは、イスラーム過激かげき派はテロ組織そしき「アルカーイダ」の指導しどう者しゃウサーマ・ビン・ラーディンとされている。当初とうしょ、ビン・ラーディンは事件じけんへの関与かんよを否定ひていしていたが、2004年ねんには一転いってんして同時どうじ多発たはつテロ事件じけんへの関与かんよを公おおやけに認みとめた。

2001年ねん9月がつ16日にち、アルジャジーラ上うえでビン・ラーディンによるビデオ声明せいめいが放送ほうそうされた。声明せいめいの中なかでビン・ラーディンは、「私わたしは攻撃こうげきを実行じっこうしていないと強調きょうちょうする。攻撃こうげきは別べつの個人こじんによって、彼かれ自身じしんの動機どうきに基もとづいて実行じっこうされたように見みえる」と述のべた。2001年ねん11月、アメリカ軍ぐんはアフガニスタン東部とうぶのジャラーラーバードで1本ほんのビデオテープを回収かいしゅうした。このテープにはビン・ラーディンと他たのアルカイダ構成こうせい員いんとの会話かいわが記録きろくされており、その中なかでビン・ラーディンは同時どうじ多発たはつテロを事前じぜんに知しっていたことを認みとめていた。

2004年ねんのアメリカ大統領だいとうりょう選挙せんきょの直前ちょくぜん、ビン・ラーディンは新あらたなビデオ声明せいめいを発表はっぴょうし、アルカイダが同時どうじ多発たはつテロ事件じけんに関与かんよしたことを公式こうしきに認みとめ、自みずからが実行じっこう犯はんにテロ攻撃こうげきを指示しじしたことを認みとめた。 2006年ねん9月がつにアルジャジーラが入手にゅうしゅしたビデオテープには、ビン・ラーディンとラムジ・ビン・アル＝シブが、2人ふたりのハイジャック犯はん（ハムザ・アル＝ガームディーおよびワイル・アル＝シェフリ）と共ともに同時どうじ多発たはつテロの準備じゅんびをしている模様もようが記録きろくされていた。ビン・ラーディンは、同時どうじ多発たはつテロ事件じけんに関かんしてアメリカ政府せいふ当局とうきょくから正式せいしきに起訴きそされたことはなかったが、ケニアの首都しゅとナイロビとタンザニアの首都しゅとダルエスサラームにおけるアメリカ大使館あめりかたいしかん爆破ばくは事件じけんに関かんする容疑ようぎでFBI10大だい最さい重要じゅうよう指名しめい手配てはい者ものに指定していされていた。

2011年ねん5月がつ2日にち、10年間ねんかんの追跡ついせきの末すえに、アメリカ軍ぐん特殊とくしゅ部隊ぶたいはパキスタンのアボッターバードに潜伏せんぷくしていたビン・ラーディンを急襲きゅうしゅうの上うえで殺害さつがいした。なお、この時ときの映像えいぞうは当時とうじのオバマ大統領だいとうりょうら閣僚かくりょうに生なま中継ちゅうけいされた。

動機どうき

ウサーマ・ビン・ラーディンが1996年ねんに発表はっぴょうした対たいアメリカ宣戦せんせん布告ふこくと、1998年ねんに発表はっぴょうしたアメリカ国民こくみんの無差別むさべつな殺害さつがいを呼よびかける布告ふこくは、ビン・ラーディンの動機どうきを示しめす証拠しょうことして扱あつかわれている。ビン・ラーディンは、非ひイスラム教徒きょうとがアラビア半島はんとうに常駐じょうちゅうすることは預言よげん者しゃムハンマドによって禁きんじられていると解釈かいしゃくしており、湾岸わんがん戦争せんそうが勃発ぼっぱつした1990年ねん8月がつ以降いこうアメリカ軍ぐんがサウジアラビアに駐留ちゅうりゅうしていることに強つよい怒いかりを抱だいていた。

1996年ねん8月がつ、ビン・ラーディンは最初さいしょの「ファトワー（布告ふこく）」を発はっし、「2つの聖せいなるモスクの地ち（サウジアラビア）の占領せんりょう者しゃ」であるアメリカに対たいするジハード（聖戦せいせん）を宣言せんげんすると共ともに、異教徒いきょうとであるアメリカ人じんをアラビア半島はんとうから駆逐くちくするよう全ぜん世界せかいのムスリムに呼よびかけた。1998年ねん2月がつ、ビン・ラーディンは第だい2の「ファトワー」を発はっし、アメリカ軍ぐんによるサウジアラビア駐留ちゅうりゅうへ再度さいど抗議こうぎすると共ともに、アメリカの親しんイスラエル的てきな外交がいこう政策せいさくを批判ひはんした。1998年ねんの「ファトワー」はさらに、世界せかい各地かくちでアメリカおよびその同盟どうめい国こくの国民こくみんを軍人ぐんじん・民間みんかん人じんの区別くべつなく殺害さつがいすることが、「占領せんりょうされているアル＝アクサー・モスクとメッカの聖せいなるモスクを解放かいほう」するために、「全ぜんムスリムに課かせられた義務ぎむである」と宣言せんげんしていた。

ビン・ラーディンは自みずからの直接的ちょくせつてき関与かんよを認みとめた2004年ねんの声明せいめいの中なかで、テロ攻撃こうげきを行おこなった動機どうきについて以下いかのように述のべた。

1982年ねん、アメリカはイスラエルがレバノンを侵略しんりゃくすることを許可きょかし、侵略しんりゃくを助たすけるためアメリカ第だい6艦隊かんたいを派遣はけんした……レバノンの破壊はかいされたタワーを目めにした私わたしの心しんに、我々われわれも迫害はくがい者しゃたちを同おなじやり方かたで罰ばっするべきだという考かんがえが浮うかんだ。我々われわれはアメリカのタワーを破壊はかいして、我々われわれが体験たいけんしたものの一いち端はしを迫害はくがい者しゃたちにも体験たいけんさせるべきであり、そうすることで彼かれらが我々われわれの女おんなや子供こどもを殺ころすのを思おもいとどまるようにすべきだと考かんがえた。

ハリド・シェイク・モハメド

詳細しょうさいは「ハリド・シェイク・モハメド」を参照さんしょう

テロの発案はつあん者しゃとされるハリド・シェイク・モハメド（画像がぞう）は、2003年ねんに逮捕たいほされた

アルジャジーラ記者きしゃヨスリ・フォウダの報告ほうこくによれば、アルカイダ幹部かんぶのハリド・シェイク・モハメドは2002年ねん4月がつに、自みずからが同時どうじ多発たはつテロを計画けいかくしたことを認みとめた。モハメドは逮捕たいほされた後のちの2007年ねんにも犯行はんこうを自供じきょうした。

アメリカ議会ぎかい調査ちょうさ委員いいん会かいによる同時どうじ多発たはつテロ事件じけんの最終さいしゅう報告ほうこく書しょは、モハメドを911テロの主しゅたる企画きかく者しゃとして紹介しょうかいしており、彼かれのアメリカに対たいする敵意てきいは「イスラエルに好意こうい的てきなアメリカの外交がいこう政策せいさくとの著いちじるしい意見いけんの不一致ふいっち」に起因きいんすると結論けつろんづけた。モハメドは1993年ねんの世界せかい貿易ぼうえきセンター爆破ばくは事件じけんにも関与かんよしており、主犯しゅはんラムジ・ユセフの叔父おじでもあった。モハメドは2003年ねん3月がつ1日にちにパキスタンのラーワルピンディーで逮捕たいほされた。

逮捕たいほ後ご、モハメドは複数ふくすうのCIA秘密ひみつ軍事ぐんじ施設しせつとグアンタナモ湾わん収容しゅうようキャンプに拘留こうりゅうされ、尋問じんもん中ちゅうにウォーターボーディングを含ふくむ拷問ごうもんを受うけた。2007年ねん3月がつにグアンタナモ湾わんで行おこなわれた聴聞ちょうもん会かいにおいて、モハメドは自みずからには「9月がつ11日にちの作戦さくせんについて初はじめから終おわりまで全すべての責任せきにんがあった」と証言しょうげんした上うえで、この証言しょうげんは強要きょうようの下したでなされたものではないと述のべた。

その他たのアルカイダ構成こうせい員いん

バージニア州しゅう東部とうぶ地区ちく連邦れんぽう地方裁判所ちほうさいばんしょがザカリアス・ムサウイの裁判さいばん中ちゅうに使用しようした資料しりょうであるSubstitution for the Testimony of Khalid Sheikh Mohammedは、同時どうじ多発たはつテロ計画けいかくの全貌ぜんぼうを事前じぜんに把握はあくしていたアルカイダ構成こうせい員いんとして、ビン・ラーディン、モハメド、ビン・アル＝シブ、ムハンマド・アーティフ、アブ・トゥラ・アル＝ウルドゥニの5名めいを挙あげている。

同時どうじ多発たはつテロ事件じけんにおいて重要じゅうような役割やくわりを担になったテロリストの多おおくは、ドイツのハンブルクに拠点きょてんを置おくイスラーム過激かげき派は集団しゅうだん（通称つうしょうハンブルク・セル）に所属しょぞくしていた。事件じけん当日とうじつにハイジャック機きのパイロット役やくを務つとめたモハメド・アタとマルワン・アル＝シェヒおよびズィアド・ジャッラーフに、調整ちょうせい役やくのラムジ・ビン・アル＝シブを加くわえた4人にんが「ハンブルク・セル」の中心ちゅうしん的てきメンバーであり、彼かれらはアフガニスタン訪問ほうもん時じにアルカイダ指導しどう部ぶによってテロの実行じっこう者しゃに任命にんめいされていた。

同時どうじ多発たはつテロの計画けいかくと実行じっこう犯はんの準備じゅんび

モハメド・アタら「ハンブルク・セル」が1998年ねんから2001年ねんまで使用しようしていたハンブルクのアパート

同時どうじ多発たはつテロ計画けいかくの考案こうあん者しゃはハリド・シェイク・モハメドであり、モハメドは1996年ねんに初はじめて計画けいかくをウサーマ・ビン・ラーディンに提示ていじした。当時とうじ、ビン・ラーディンとアルカイダはスーダンからアフガニスタンに拠点きょてんを移うつしたばかりであり、一種いっしゅの過渡かと期きにあった。1998年ねんにビン・ラーディンが発はっした、「アメリカ人じんの殺害さつがいはムスリムの義務ぎむである」とする自称じしょう「ファトワー」とされたものと、同おなじく1998年ねんに発生はっせいしたアメリカ大使館あめりかたいしかん爆破ばくは事件じけんは、ビン・ラーディンが攻撃こうげきの焦点しょうてんをアメリカに定さだめたことを示しめす1つの転換てんかん点てんとなった。

1998年ねん末まつもしくは1999年ねんの初はじめ頃ごろ、ビン・ラーディンはモハメドが同時どうじ多発たはつテロ計画けいかくの準備じゅんびに着手ちゃくしゅすることを承認しょうにんした。1999年ねん春はるには、モハメドとビン・ラーディン、およびビン・ラーディンの代理人だいりにんムハンマド・アーティフが参加さんかする会合かいごうが立たて続つづけに開ひらかれた。アーティフは、ターゲットの選定せんていやハイジャック犯はんのための渡航とこうの手配てはいなど、テロ計画けいかくの作戦さくせん面めんでの支援しえんを提供ていきょうした。モハメドの提案ていあんは一部いちぶビン・ラーディンによって却下きゃっかされ、ロサンゼルスのライブラリータワーのようないくつかのターゲット候補こうほは、「攻撃こうげきの準備じゅんびをするのに必要ひつような時間じかんが不足ふそくしている」ことを理由りゆうに拒否きょひされた。

ビン・ラーディンはテロ計画けいかくの統率とうそつと資金しきん援助えんじょを担当たんとうし、計画けいかくを実行じっこうするテロリストの選抜せんばつにも関与かんよした。当初とうしょ、ビン・ラーディンはナワフ・アル＝ハズミとハリド・アル＝ミフダールというボスニア・ヘルツェゴビナ紛争ふんそうで戦たたかった2人ふたりの熟練じゅくれん戦闘せんとう員いんをハイジャック機きのパイロット役やくに任命にんめいしていた。2000年ねん1月がつ中旬ちゅうじゅん、アル＝ハズミとアル＝ミフダールはアメリカに到着とうちゃくし、2000年ねん春はるにはサンディエゴで飛行ひこう訓練くんれんを受うけたが、2人ふたりはほとんど英語えいごを話はなせず、また訓練くんれんの成績せいせきも悪わるかったため、最終さいしゅう的てきにはパイロット役やく以外いがいのハイジャック犯はん（武力ぶりょくによる制圧せいあつ要員よういん）としてテロに参加さんかすることとなった。

1999年ねん後半こうはん、モハメド・アタ、マルワン・アル＝シェヒ、ズィアド・ジャッラーフ、ラムジ・ビン・アル＝シブらドイツ・ハンブルク在住ざいじゅうのイスラーム過激かげき派はの一団いちだんが、アフガニスタンのアルカーイダ訓練くんれんキャンプを訪問ほうもんした。ビン・ラーディンは、彼かれらが高たかい教育きょういくを受うけており、また英語えいごが堪能たんのうで欧米おうべいでの生活せいかつに慣なれていることを評価ひょうかし、テロ計画けいかくの中核ちゅうかくとなる実行じっこうメンバーに抜擢ばってきした。その後ご、2000年ねんにはアガニスタンの訓練くんれんキャンプにハニ・ハンジュールという新兵しんぺいが加入かにゅうした。ハンジュールは1999年ねんにアメリカで職業しょくぎょう操縦そうじゅう士し免許めんきょを取得しゅとくしており、その事実じじつを知しったアルカーイダは彼かれをテロ計画けいかくに参加さんかさせた。

ハンブルク在住ざいじゅうのテロリストの内うち、アル＝シェヒは2000年ねん5月がつ末まつに、アタは2000年ねん6月がつ3日にちに、ジャッラーフは2000年ねん6月がつ27日にちに、それぞれアメリカに到着とうちゃくした。ビン・アル＝シブは渡米とべいのためアメリカのビザを何なん度ども申請しんせいしたが、イエメン国籍こくせきであったため、有効ゆうこう期限きげんを過すぎて不法ふほう滞在たいざいすることへの懸念けねんからビザが発給はっきゅうされなかった。ビン・アル＝シブは渡米とべいを諦あきらめざるを得えず、ハンブルクに留とどまってアタとハリド・シェイク・モハメドの間あいだの調整ちょうせい役やくを務つとめることとなった。アメリカに渡わたった3人にんの「ハンブルク・セル」メンバーはフロリダ州しゅう南部なんぶの航空こうくう学校がっこうで飛行ひこう訓練くんれんを受うけた。一方いっぽう、ハニ・ハンジュールは2000年ねん12月8日にちにサンディエゴに到着とうちゃくし、アル＝ハズミと合流ごうりゅうした。2人ふたりはその後ごすぐにアリゾナ州しゅうに向むかい、ハンジュールはそこで操縦そうじゅうの再さい訓練くんれんを受うけた。

2001年ねん春はるには、パイロット役やく以外いがいのハイジャック犯はんもアメリカに到着とうちゃくし始はじめた。2001年ねん7月がつ、アタはスペインでビン・アル＝シブと会あい、攻撃こうげき目標もくひょうの最終さいしゅう的てきな選択せんたく等とう、テロ計画けいかくの調整ちょうせいを行おこなった。その際さい、ビン・アル＝シブはアタに、ビン・ラーディンができるだけ早はやいテロ攻撃こうげきの実行じっこうを望のぞんでいることを伝つたえた。9月7日にちには在日ざいにちアメリカ大使館あめりかたいしかんが「日本にっぽん国内こくないに滞在たいざいするアメリカ人じんに対たいしてテロ攻撃こうげきの可能かのう性せいがある」ことを発表はっぴょうしていたが、アメリカ国内こくないのテロ攻撃こうげきの警報けいほうは出だされないままであった。

実行じっこう犯はんの一覧いちらん

便びん	氏名しめい	年齢ねんれい	国籍こくせき
アメリカン航空こうくう11便びんテロ事件じけん	モハメド・アタ	33	エジプト
	アブドゥルアズィーズ・アル＝オマリー	22	サウジアラビア
	ワイル・アル＝シェフリ	28
	ワリード・アル＝シェフリ	22
	サタム・アル＝スカミ	25
ユナイテッド航空こうくう175便びんテロ事件じけん	マルワーン・アル＝シェッヒー	23	アラブ首長しゅちょう国こく連邦れんぽう
	ファイヤーズ・バニーハンマード	24
	ムハンド・アル＝シャフリー	22	サウジアラビア
	ハムザ・アル＝ガームディー	20
	アフマド・アル＝ガームディー	22
アメリカン航空こうくう77便びんテロ事件じけん	ハーニー・ハンジュール	29
	ハリード・アル＝ミンザール	26
	マージアド・ムーカド	24
	ナワーフ・アル＝ハーズミー	25
	サリーム・アル＝ハーズミー	20
ユナイテッド航空こうくう93便びんテロ事件じけん	ズィアド・ジャッラーフ	26	レバノン
	アフマド・アル＝ハズナーウィー	20	サウジアラビア
	アフマド・アル＝ナーミー	24
	サイード・アル＝ガームディー	21

出典しゅってん:

報道ほうどう

ニューヨークやワシントンには世界中せかいじゅうの報道ほうどう機関きかんが本社ほんしゃ・支社ししゃ・事務じむ局きょくを置おいているため、一連いちれんの事件じけんは、テレビ・ラジオ・インターネットなどを通つうじて全ぜん世界せかいにリアルタイムで伝つたえられた。連日れんじつ、新聞しんぶんや週刊しゅうかん誌しなども最大さいだい級きゅうの扱あつかいで事件じけんを伝つたえた。

当日とうじつおよびその後ごのテレビ報道ほうどうはインターネットアーカイブで保存ほぞん公開こうかいされている 。1機き目めの激突げきとつは、数カ月すうかげつ前まえから地元じもと消防署しょうぼうしょの日常にちじょうを密着みっちゃく取材しゅざいしていたフランスのテレビ局てれびきょくから派遣はけんされていたビデオジャーナリストのノーデ兄弟きょうだいによって偶然ぐうぜん撮影さつえい（ガス漏もれの通報つうほうがあり、出動しゅつどうしていた消防しょうぼう隊たいに同行どうこうしていた）され翌日よくじつに報道ほうどうされている。2機き目めの旅客機りょかくきが激突げきとつする瞬間しゅんかんは、上記じょうきのようにプロやアマチュアを含ふくむ多おおくのカメラマンに撮影さつえいされている。

アメリカ国内こくない

事件じけんの放送ほうそうを行おこなうアメリカのテレビニュースを見みつめるプラハ市民しみん

1機き目めが突入とつにゅうしたニューヨーク時間じかん（アメリカ東部とうぶ夏時間なつじかん）8時じ46分ふんはテレビ各局かくきょくが朝あさのニュースショーなどの最中さいちゅうで、CNNは8時じ49分ふんから、ABC・CBSなど他たのテレビ局てれびきょくも8時じ50分ふん前後ぜんこうから特別とくべつ報道ほうどう番組ばんぐみを開始かいし、ロウアー・マンハッタン（WTC所在地しょざいち）方面ほうめんを向むく情報じょうほうカメラや報道ほうどうヘリコプターが建物たてものの様子ようすを伝つたえ始はじめた。この時点じてんでは「小型こがた機きがビルに誤あやまって衝突しょうとつした事故じこ」と報ほうじるものが多おおかったが、中継ちゅうけいの最中さいちゅうの9時じ3分ふん、ツインタワー南みなみ棟とうにユナイテッド航空こうくう175便びんが突入とつにゅうした。2機き目めの突入とつにゅう以降いこう、各かくテレビ局てれびきょくはテロの可能かのう性せいが高たかいと論調ろんちょうを変かえることになった。その後ご、9時じ30分ふんにブッシュ大統領だいとうりょうの演説えんぜつが各局かくきょくで中継ちゅうけいされる。

その後ごもツインタワーの炎上えんじょうと崩壊ほうかい、アメリカン航空こうくう77便びんのペンタゴン攻撃こうげき、93便びんの墜落ついらく（報道ほうどうされたのは墜落ついらくしてから30分ふん以上いじょうたってからだった）など事態じたいが続つづき、報道ほうどうは週末しゅうまつの16日にち（日曜日にちようび）深夜しんやまで休やすむことなく続つづいた。特とくにネットワーク3局きょくの夕方ゆうがたニュースのアンカーは最長さいちょうで1日にち17時じ間あいだにわたって伝つたえ続つづけた。この週しゅうは新しん番組ばんぐみが始はじまる時期じきだったので、軒並のきなみ放送ほうそうが順延じゅんえんされ、内容ないよう変更へんこうを強しいられた番組ばんぐみもあった。

また、国外こくがい向むけの放送ほうそう局きょくであるCNBC（ヨーロッパ/アジア向むけ、本部ほんぶはアメリカ国内こくない）やCNNインターナショナルでも、本来ほんらいあまり放送ほうそうされない国内こくない向むけの放送ほうそうを全編ぜんぺん放送ほうそうし続つづけた。

イギリス

イギリスは昼過ひるすぎであった。BBCにおいてはテレビ国際こくさい放送ほうそう・BBCワールド（現げん・BBCワールドニュース）内うちで速報そくほうとして13時じ前まえに炎上えんじょうするワールドトレードセンターを映うつし出だしたのが第一報だいいっぽうであった。午後ごご1時じからのニュース番組ばんぐみを始はじめた直後ちょくご、2機き目めの突入とつにゅうの瞬間しゅんかんを生なま中継ちゅうけいした。トニー・ブレア首相しゅしょうは14時じ30分ふんごろ、出席しゅっせきしていたブライトンでの労働ろうどう組合くみあい会議かいぎの場ばで「深ふかい哀悼あいとう」の意いを伝つたえた。

日本にっぽん

以下いか、日本にっぽんにおける報道ほうどうについては日本にっぽん時間じかんを使用しようする。なお、日本にっぽん時間じかんは現地げんちの時間じかん（アメリカ東部とうぶ夏時間なつじかん (UTC-4)）より13時じ間あいだ進すすんでいる。当時とうじの状況じょうきょうの主軸しゅじくである世界せかい貿易ぼうえきセンタービルへの航空機こうくうき衝突しょうとつと崩壊ほうかいの時刻じこくを太字ふとじで示しめす。なお、日本にっぽんではワールドトレードセンター・ツインタワーの名称めいしょうを「世界せかい貿易ぼうえきセンタービル」と報道ほうどうした。

テロ発生はっせい直前ちょくぜんの報道ほうどう内容ないよう

2001年ねん9月がつ11日にちは台風たいふう15号ごうと台風たいふう16号ごうが前日ぜんじつから関東かんとう地方ちほうと沖縄おきなわを襲おそって多おおくの被害ひがいをもたらしたほか、9月1日にちに発生はっせいした歌舞伎町かぶきちょうビル火災かさいの原因げんいん究明きゅうめい、9月がつ10日とおかに国内こくないで初はじめて狂牛病きょきょうぎゅうびょう疑うたがいのある牛うしが千葉ちば県けんで発見はっけんされるなど、この日ひのニュース番組ばんぐみでは重大じゅうだいニュースが多数たすう報道ほうどうされていた。

2001年ねん9月がつ11日にち21時じ46分ふん、1機き目めのアメリカン航空こうくう11便びんが世界せかい貿易ぼうえきセンタービル北きた棟とうへ衝突しょうとつ

22時じ前後ぜんこう、「ニューヨークの世界せかい貿易ぼうえきセンタービルに航空機こうくうきが激突げきとつ（1機き目めのアメリカン航空こうくう11便びん）」という情報じょうほうが各局かくきょくのニュース番組ばんぐみまたはニュース速報そくほう で一斉いっせいに伝達でんたつされた。この時点じてんでは殆ほとんど情報じょうほうが集あつまっておらず、詳細しょうさいな状況じょうきょうは不明ふめいであった。

テレビ朝日てれびあさひ (ANN) では、定時ていじの21時じ54分ふんより「ニュースステーション」の放送ほうそうを開始かいしした。冒頭ぼうとうからCNNの映像えいぞうをそのまま放送ほうそうしており、1機き目め激突げきとつ後ごの時点じてんではまだ事故じこと考かんがえられていたため、1機き目めの激突げきとつにより炎上えんじょうする北きた棟とうの映像えいぞうをしばらく流ながした後のち、台風たいふう関連かんれんのニュースを伝つたえていた。なお、この時ときメインキャスターの久米くめ宏ひろしは夏季かき休養きゅうよう中ちゅうであり、久米くめの進行しんこうはサブキャスターである渡辺わたなべ真理まりが務つとめた。

22時じ開始かいしの「NHKニュース10」（NHK総合そうごうテレビ）も、オープニング直後ちょくごのヘッドラインは台風たいふうのニュースなどを流ながしていた。しかし、ヘッドライン終了しゅうりょう後ごキャスターの堀尾ほりお正明まさあきが「台風たいふうのニュースをまずお伝つたえしようと思おもってたんですが、たった今いまこういうニュースが入はいってきました」と切きり出だし、1機き目め激突げきとつの第一報だいいっぽうを伝つたえ、間まもなくABCニュースの中継ちゅうけい映像えいぞうで炎上えんじょうする世界せかい貿易ぼうえきセンタービルの姿すがたが映うつし出だされた。

この時点じてんではまだ「事故じこ」か「事件じけん」かは明言めいげんされていなかった。報道ほうどう機関きかんは1機き目め衝突しょうとつの瞬間しゅんかんを捉とらえておらず、消防しょうぼう士しの取材しゅざいをしていたカメラマンが撮影さつえいした1機き目めの映像えいぞうも翌日よくじつまで放送ほうそうされていなかった。ただ「ニュース10」に出演しゅつえんしていたコメンテーターは、晴天せいてん時じでの不可思議ふかしぎな衝突しょうとつという状況じょうきょうを理由りゆうとして、2機き目め衝突しょうとつ前まえからテロの可能かのう性せいを指摘してきしていた。CNNでも同おなじような理由りゆうからテロの可能かのう性せいが指摘してきされていたが、同時どうじに、1945年ねん7月がつ28日にちにエンパイア・ステート・ビルディングにアメリカ陸軍りくぐんのB-25爆ばく撃げき機きが衝突しょうとつした事故じこを例れいに挙あげ、操縦そうじゅうミスによる突発とっぱつ的てきな事故じこである可能かのう性せいも指摘してきしていた（なお、この事故じこ当時とうじは深ふかい霧きりが出でていた）。また、CNNなどでは「ボーイング737などの小型こがたの双発そうはつジェット機じぇっとき」が衝突しょうとつしたと伝つたえていたものの、英語えいごの翻訳ほんやくミスからか、日本にっぽんではこの時点じてんで「激突げきとつした航空機こうくうきは小型こがたの双発そうはつ機き」であるとの情報じょうほうが報道ほうどうされていた。しかし「小型こがた」の根拠こんきょや「双発そうはつ機き」という語かたりの解説かいせつがなされないなど情報じょうほうが錯綜さくそうしていた。

2001年ねん9月がつ11日にち22時じ3分ふん、2機き目めのユナイテッド航空こうくう175便びんが世界せかい貿易ぼうえきセンタービル南みなみ棟とうへ衝突しょうとつ

ABCニュースの中継ちゅうけい映像えいぞうをそのまま放送ほうそうしていた「NHKニュース10」では、2機き目めの突入とつにゅうの瞬間しゅんかんが生なま中継ちゅうけいされた。映像えいぞうでは画面がめん右側みぎがわから飛行機ひこうきが現あらわれ、炎上えんじょうする北きた棟とう（第だい1ビル）の真後まうしろに隠かくれるように見みえた。そこには南みなみ棟とう（第だい2ビル）があり、数すう秒びょうの後のち、南みなみ棟とうを襲おそった巨大きょだいな爆発ばくはつによって炎ほのおと黒くろ煙けむりが上あがる様子ようすが映うつし出だされた。画面がめんを通とおして見みれば、1機き目めの激突げきとつで炎上えんじょうする北きた棟とうが2度目どめの大だい爆発ばくはつを起おこしたように見みえ、NHKニューヨーク支局しきょくの記者きしゃは単たんに「今いま、また爆発ばくはつがありました」と伝つたえた。これに対たいして堀尾ほりおが「今いま、2機き目めの飛行機ひこうきが突入とつにゅうしたように見みえましたが」とき返きかえした。

「ニュースステーション」では台風たいふう関連かんれんのニュースを伝つたえていた間あいだに2機き目めの突入とつにゅうが起おこったため、突入とつにゅうの瞬間しゅんかんは生なま放映ほうえいされなかったものの、すぐに再ふたたびテロ関連かんれんのニュースに切きり替かえられた。この時とき、コメンテーターの萩谷はぎや順じゅんが「先週せんしゅう末まつからアメリカの情報じょうほう機関きかんにより『中東ちゅうとうのテログループがアメリカの利益りえきを代表だいひょうする建物たてものないし組織そしきに対たいしてテロを行おこなおうとしている』との警告けいこくが流ながされていました」と述のべている。

22時じ20分ふん頃ごろ、NHKは「旅客機りょかくきがビルに激突げきとつしたとみられる」と伝つたえた。22時じ30分ふん、フロリダ州しゅうの小学校しょうがっこうを訪おとずれていたブッシュ大統領だいとうりょうが演説えんぜつで「明あきらかなテロ」と発言はつげんした。22時じ45分ふん頃ごろ、「ペンタゴン（国防総省こくぼうそうしょう）が炎上えんじょう」というニュースが各局かくきょくで伝つたえられ、一連いちれんの事件じけんが「同時どうじ多発たはつテロ」であるとの見方みかたが固かたまった。間あいだもなく炎上えんじょうするペンタゴンの映像えいぞうが映うつし出だされ、爆発ばくはつ・火災かさいの原因げんいんが3機き目めの旅客機りょかくきの可能かのう性せいがあると伝つたえられた。旅客機りょかくきがハイジャックされていたという内容ないようの現地げんちメディアの報道ほうどうも日本にっぽん国内こくないに伝つたえられ始はじめた。

これらの各かくニュース番組ばんぐみでは放送ほうそう予定よていだった他ほかのニュースより優先ゆうせんして、ニューヨーク・ワシントンとの中継ちゅうけい映像えいぞうが放送ほうそうされ続つづけた。時間じかん（事件じけんの拡大かくだい）とともに民放みんぽう各社かくしゃも次々つぎつぎに通常つうじょう番組ばんぐみを打うち切きり、臨時りんじニュースの放送ほうそうを開始かいしした。TBS系列けいれつでは22時じ37分ふん、放送ほうそう中ちゅうの毎日放送まいにちほうそう制作せいさく「ジャングルTV ～タモリの法則ほうそく～」を途中とちゅうで打うち切きり、「筑紫哲也ちくしてつや NEWS23」を前倒まえだおしで開始かいし。フジテレビ系列けいれつでは、関西かんさいテレビ制作せいさくのテレビドラマ「ウソコイ」最終さいしゅう回かいを放送ほうそうしていたが、番組ばんぐみの途中とちゅうで「ニュースJAPAN」キャスターの田代たしろ尚子しょうこアナウンサーによるニュースを何なん度どか流ながした後のち、ドラマ終了しゅうりょう直前ちょくぜんの22時じ45分ふんから報道ほうどう特番とくばんを開始かいしした。独立どくりつUHF局きょくにおいても、通常つうじょう時じはテレビ東京てれびとうきょうのニュースをネット受うけしない三重みえテレビは、この日ひは「ワールドビジネスサテライト」を臨時りんじネットした。21時じから「火曜かようサスペンス劇場げきじょう」を放送ほうそう中ちゅうの日本にほんテレビはCMと本編ほんぺんの間あいだに「NNNきょうの出来事できごと」キャスターの井田いだ由美ゆみアナウンサーによる短みじかいニュースを挟はさんだが、番組ばんぐみ自体じたいは休止きゅうししなかった（同局どうきょくは次じ番組ばんぐみのきょうの出来事できごと以降いこう、本格ほんかく的てきな特番とくばん体制たいせいに入はいる）。

2001年ねん9月がつ11日にち22時じ59分ふん、世界せかい貿易ぼうえきセンタービル南みなみ棟とうが崩壊ほうかい

ワールドトレードセンターの崩壊ほうかい直後ちょくごの煙けむりの様子ようす

NHKではワシントン支局しきょくと中継ちゅうけいを結むすんでいる間あいだにそれが起おこり、途中とちゅうで当時とうじの支局しきょく長ちょう手嶋てじま龍一りゅういちの発言はつげんを遮さえぎるようにニューヨークに画面がめんが切きり替かえられた。片方かたがたのビルが姿すがたを消けし、大量たいりょうの煙けむりに覆おおわれたニューヨークと、 NHKのカメラが路上ろじょうから撮影さつえいした南みなみ棟とう崩壊ほうかい時じの映像えいぞう（この映像えいぞうはNHKが世界せかいで唯一ゆいいつデジタルハイビジョンカメラで撮影さつえいした映像えいぞうである）が映うつし出だされた。これらの映像えいぞうは二に棟むねが重かさなるアングルであったため崩壊ほうかいの程度ていどが分わかりにくく、当初とうしょは「ビルの一部いちぶが崩壊ほうかいした」とも伝つたえられていた。また、ワシントンの各所かくしょで爆発ばくはつが相次あいついだという誤報ごほうが流ながれ、画面がめんに「アメリカで同時どうじテロ」の字幕じまくが映うつし出だされた。

2001年ねん9月がつ11日にち23時じ28分ふん、世界せかい貿易ぼうえきセンタービル北きた棟とうが崩壊ほうかい

この時ときもNHKはスタジオを映うつしていて2つのビルの崩壊ほうかいの瞬間しゅんかんはいずれも中継ちゅうけいされなかった。しかし間あいだもなく、巨大きょだいな超ちょう高層こうそうビルが上部じょうぶから完全かんぜんに崩壊ほうかいし、膨大ぼうだいな瓦礫がれきと化かしてマンハッタン南部なんぶが煙けむりで覆おおいつくされる衝撃しょうげき的てきな映像えいぞうが放送ほうそうされた。さらに23時じ40分ふん頃ごろには、4機き目め（ユナイテッド航空こうくう93便びん）がペンシルベニア州しゅう西部せいぶに墜落ついらくしたというニュースが伝つたえられた。NHKアナウンサーの堀尾ほりおは次々つぎつぎと起おこる惨劇さんげきを報道ほうどうする中なかで「大変たいへんショッキングな映像えいぞうですが、現実げんじつの映像えいぞうです」と発言はつげんした。

日本にっぽんのほぼ全すべてのメディアは、翌日よくじつの明あけ方がたまでテロに関かんする情報じょうほうを伝つたえ続つづけた。

民放みんぽうテレビ局てれびきょくは深夜しんやのCMが全面ぜんめん休止きゅうしされ終夜しゅうや放送ほうそうを行おこなった。

深夜しんやから早朝そうちょうにかけての民放みんぽうテレビではTBS、フジテレビなどCMの全面ぜんめんカットを行おこなった局きょくがあったものの、日本にっぽん時間じかん翌朝よくあさ以降いこうは民放みんぽうテレビ局てれびきょくのCM枠わくこそ再開さいかいされたが、一部いちぶ企業きぎょうのCMが順次じゅんじ自粛じしゅくされ、その穴埋あなうめとして公共こうきょう広告こうこく機構きこう（現げん・ACジャパン）のCMに差さし替かえられた。

NHKはテロ発生はっせい直後ちょくごから、総合そうごうテレビとBS1を中心ちゅうしんに9月12日にち夜よるまで断続だんぞく的てきにテロ報道ほうどうを実施じっし（総合そうごうテレビの連続れんぞくテレビ小説しょうせつ「ちゅらさん」は通常つうじょう通どおり放送ほうそう、大相撲おおずもう秋場所あきばしょについては幕内まくうちの取とり組くみに限定げんていして放送ほうそう時間じかんを短縮たんしゅくして放送ほうそうした）。それ以後いごも深夜しんや1-5時じに予定よていしていた「ミッドナイトチャンネル」で放送ほうそうする予定よていの番組ばんぐみを休止きゅうしして、毎時まいじ00分ふんからの臨時りんじニュースに充あてた。

ラジオも、NHKラジオ第だい1放送ほうそう（23:20から）、NHK-FM放送ほうそう（1:00から飛とび乗のり）の「ラジオ深夜しんや便びん」を急遽きゅうきょ全編ぜんぺん休止きゅうしし、断続だんぞく的てきに翌朝よくあさまでテロ報道ほうどうに充あてたほか 民放みんぽうのAM放送ほうそうはローカル局きょくまで含ふくめてほぼ全局ぜんきょくが特番とくばん体制たいせいとなり、FM放送ほうそう民放みんぽう局きょくは番組ばんぐみ編成へんせい自体じたいは通常つうじょう体制たいせいとしながらもMCによる状況じょうきょうアナウンスが小刻こきざみに入いれられた。

日本にっぽんの放送ほうそうメディアにおける海外かいがいの非常ひじょう事態じたいの終夜しゅうや放送ほうそうは、1991年ねん1月がつ17日にちに勃発ぼっぱつした湾岸わんがん戦争せんそう（多た国籍こくせき軍ぐんによる空爆くうばく開始かいし）以来いらいであった。また駐ちゅう日ひアメリカ軍ぐん向むけに英語えいごでラジオ放送ほうそうを行おこなうAFNも通常つうじょう放送ほうそうを中断ちゅうだんしてニュースを伝つたえ続つづけると同時どうじに、アメリカ軍ぐんの警戒けいかい態勢たいせいや行動こうどう上じょうの注意ちゅういを喚起かんきする内容ないようの放送ほうそうを、ニュースの合間あいまに繰くり返かえし行いっていた。

2001年ねん9月がつ12日にち6時じ25分ふん、世界せかい貿易ぼうえきセンターの第だい7ビルが崩壊ほうかい

8時じ30分ふんごろ、日本人にっぽんじん大学生だいがくせい1人にんがユナイテッド航空こうくう93便びんに搭乗とうじょうしていたと報道ほうどうされた。9時じ30分ふんからブッシュ大統領だいとうりょうがホワイトハウスで行おこなった演説えんぜつが中継ちゅうけいされ、10時じ20分ふんから小泉こいずみ純一郎じゅんいちろう首相しゅしょう、福田ふくだ康夫やすお官房かんぼう長官ちょうかんが首相しゅしょう官邸かんていで記者きしゃ会見かいけんを開始かいしした。午後ごご1時じ50分ふんごろ、1機き目め激突げきとつの瞬間しゅんかんを撮影さつえいしたカメラマンの映像えいぞうが放送ほうそうされた。こうしてこの日ひもほとんどテロ事件じけん関連かんれんニュース一色いっしょくとなった。夜よるのゴールデンタイム枠わくではお笑わらい・バラエティ番組ばんぐみが休止きゅうしされ、特別とくべつ番組ばんぐみが放送ほうそうされた（テレビ朝日てれびあさひでは「ニュースステーション」を1時じ間あいだ前倒まえだおしして放送ほうそう、TBSではナイター中継ちゅうけいを通常つうじょう時間じかんより1時じ間あいだ短縮たんしゅくし、特別とくべつ番組ばんぐみを放送ほうそう）。

テレビでは、事件じけんから1週間しゅうかん程度ていどの期間きかんは、通常つうじょう番組ばんぐみを休止きゅうしあるいは放送ほうそう延期えんき等とうを行おこない特別とくべつ報道ほうどう番組ばんぐみを放送ほうそうする局きょくもあった。 新聞しんぶん各紙かくしも一いち面めんに大だい見出みだしで事件じけんを伝つたえたほか、号外ごうがいも発行はっこうされた。事件じけんが朝刊ちょうかん各かく版はんの締しめ切きり間際まぎわに立たて続つづけに起おこったため、各かく新聞しんぶんは配達はいたつ先さきによって記事きじ内容ないようが一部いちぶ異ことなっている。多おおくの週刊しゅうかん誌しも特集とくしゅうを組くむなどして大おおきく事件じけんを伝つたえた。

当時とうじ、CNNインターナショナルを日本にっぽん国内こくないの衛星えいせい放送ほうそう・ケーブルテレビ局てれびきょく向むけに配信はいしんしていたJCTVでは、この事件じけんを受うけ、急遽きゅうきょ通常つうじょうは行おこなっていない深夜しんや帯たいの同時どうじ通訳つうやくを行おこなった。後のちに当時とうじの同時どうじ通訳つうやく陣じんの心境しんきょうをまとめた短みじかい記事きじを、同社どうしゃCNN紹介しょうかいウェブサイト内ないに期間きかん限定げんていで掲載けいさいしている。

情報じょうほうの錯綜さくそう

「同時どうじ多発たはつテロ」と呼よばれるように複数ふくすうのテロが短時間たんじかんに連続れんぞくして発生はっせいした。当時とうじの社会しゃかいにおいて、従来じゅうらい型がたの「テロ」や「犯罪はんざい」の概念がいねんを超越ちょうえつした規模きぼだったため、時事じじ刻々こっこくと変化へんかする状況じょうきょうに対たいして報道ほうどう機関きかんの対応たいおうが追おいつかず、情報じょうほうが錯綜さくそうした状況じょうきょうが続つづいた。

当時とうじはインターネットの回線かいせん速度そくどが遅おそい上うえに、情報じょうほう共有きょうゆうが可能かのうなWebサイトが電子でんし掲示板けいじばんしか存在そんざいせず、カメラ付つき携帯けいたい電話でんわやSNSもまだアメリカでは普及ふきゅうしていなかったため、一般人いっぱんじんからのリアルタイムな情報じょうほう共有きょうゆうにも期待きたいできなかった。

事件じけん当日とうじつから事件じけん翌日よくじつの日本にっぽんもしくはアメリカの各かく新聞しんぶん・テレビ報道ほうどうにおいて確認かくにんされた誤報ごほうの一部いちぶとして、下表かひょうのようなものがあげられる。日本にっぽんの新聞しんぶんにおける誤報ごほうについては訂正ていせいが締切しめきり時間じかんに間まに合あわず、結果けっか的てきに翌よく12日にちの朝刊ちょうかんのいくつかの掲載けいさいが誤報ごほうになった例れいも含ふくまれている。

報道ほうどう内容ないよう	実際じっさいの状況じょうきょう・備考びこう
小型こがたの双発そうはつ機きが衝突しょうとつした「事故じこ」	2機き目め衝突しょうとつによりテロと判明はんめい。小型こがた機きではなく中型ちゅうがたのジェット旅客機りょかくき
ハイジャックされた飛行機ひこうきの便びん名めい・航空こうくう会社かいしゃの取とり違ちがえ	12日にち未明みめいに確定かくてい
被害ひがい者しゃは6人にん死亡しぼう・約やく1000人にん負傷ふしょう	左記さきの情報じょうほうは1993年ねんの爆破ばくは事件じけんの数字すうじ。ビルの崩壊ほうかい後ご「数すう千せん人にんの可能かのう性せい」に
パレスチナ解放かいほう民主みんしゅ戦線せんせん (DFLP) が犯行はんこう声明せいめい	数すう十じゅう分ふん後ご、ダマスカスの本部ほんぶでスポークスマンが否定ひていと報道ほうどう
国務省こくむしょうで自動車じどうしゃ爆ばく弾だん爆発ばくはつ	発生はっせいしていない
ホワイトハウス、連邦れんぽう議会ぎかい付近ふきんで爆発ばくはつ
ペンシルベニア州しゅうで墜落ついらくした飛行機ひこうきはボーイング747	ボーイング757
11機きの旅客機りょかくきがハイジャックされ、数すう機きが行方ゆくえ不明ふめい	4機き以外いがいにハイジャック機きは存在そんざいしない。
ハイジャック機きがキャンプ・デービッドへ墜落ついらく	発生はっせいしていない
大韓航空だいかんこうくう85便びんがハイジャックされた	同どう便びんパイロットの操作そうさミス（大韓航空だいかんこうくう85便びんハイジャック誤報ごほう事件じけん）

これらの状況じょうきょうはアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくなどにおいても同様どうようで、事件じけん発生はっせい当初とうしょは激突げきとつした航空機こうくうきも中型ちゅうがたのジェット旅客機りょかくきではなく小型こがた民間みんかん機き（小型こがたの単発たんぱつもしくは双発そうはつプロペラ機きなど）と報道ほうどうされていた。またユナイテッド航空こうくう93便びんがクリーブランド・ホプキンス国際こくさい空港くうこうに着陸ちゃくりくしたという内容ないようの速報そくほう記事きじも報道ほうどうされたが、後のちにデルタ航空こうくう1989便びんをUA093便びんと混同こんどうしていたことが判明はんめいし、誤報ごほうとして訂正ていせいされた。この他ほかにもBBCはテロ攻撃こうげきの直後ちょくごにハイジャック犯はんとされる人物じんぶつの情報じょうほうを発表はっぴょうしたが、その後ごその内うちの数すう人にんが存命ぞんめい中ちゅうの別人べつじんであったことが判明はんめいすると情報じょうほうを修正しゅうせいした。BBCは後のちに当時とうじ報告ほうこくされた氏名しめいがアラブ人じんやイスラム教徒きょうとに多おおく見みられるものであったため。初期しょきでの混乱こんらんが起おきたのだろうと釈明しゃくめいしている。また、これらの情報じょうほうの混乱こんらんが根拠こんきょのない陰謀いんぼう説せつや都市とし伝説でんせつが起おきるきっかけになった。

映像えいぞう・写真しゃしんなど

テレビでは事件じけん発生はっせい直後ちょくごから、さまざまな場所ばしょ・方向ほうこうから記録きろくされた映像えいぞうが放送ほうそうされた。特とくに旅客機りょかくきがワールドトレードセンターなどの被害ひがいを受うけた建物たてものに突入とつにゅうする瞬間しゅんかんや、ツインタワーの上層じょうそう階かいから飛とび降おりる人ひと、ツインタワーが崩くずれ落おちる衝撃しょうげき的てき瞬間しゅんかんをとらえた映像えいぞうは1週間しゅうかん近ちかくにわたり何なん十じゅう回かい、何なん百ひゃく回かいとなく繰くり返かえされた。しかしこれは数すう千せん人にんが殺害さつがいされた瞬間しゅんかんにほかならず、遺族いぞくや関係かんけい者しゃ、さらには子供こどもにショックやトラウマを与あたえる可能かのう性せいが懸念けねんされ、次第しだいに自粛じしゅくを要請ようせいする声こえが上あがった。やがてニュースでこの事件じけんの映像えいぞうが放送ほうそうされるときも、こうした「衝撃しょうげき映像えいぞう」は少すくなくなった。

ユナイテッド航空こうくう93便びんの残骸ざんがい

事件じけん後ごの新聞しんぶん各紙かくしや週刊しゅうかん誌しなどには、ビルが炎上えんじょう・崩壊ほうかいする写真しゃしんのみならず、血ちまみれでうずくまる市民しみんや炎上えんじょうしているツインタワーの上層じょうそう階かいから飛とび降おりる人ひとの写真しゃしんなどが大おおきく掲載けいさいされた。アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくでは後者こうしゃの写真しゃしんをめぐって論争ろんそうが起おこった。アメリカ国民こくみんの大だい多数たすうが信仰しんこうするキリスト教きりすときょうは自殺じさつを禁きんじているからである。2006年ねんにイギリスで製作せいさくされたドキュメンタリー「The Falling Man」は、この論争ろんそうを取とり扱あつかったものである。

一連いちれんの事件じけんを記録きろくした写真しゃしんや映像えいぞうは、各かくマスコミのみならずマグナム・フォトのようなプロフォトグラファー、あるいは事件じけんを目撃もくげきし撮影さつえいした市民しみんによって大量たいりょうに残のこされた。マグナムは「NEW YORK SEPTEMBER 11」と題だいして写真しゃしん集しゅうを発売はつばいした（日本にっぽん版ばんあり）。ニューヨークでは事件じけん後ごに写真しゃしん展覧てんらん会かいが行おこなわれ、それらの写真しゃしんはインターネットで公開こうかいされたほか、「HERE IS NEW YORK」と題だいした写真しゃしん集しゅうとして発売はつばいされている。

2006年ねんに公開こうかいされたユナイテッド航空こうくう93便びんを描えがいた映画えいが「ユナイテッド93」や、「ワールド・トレード・センター (映画えいが)」でも、事件じけんを伝つたえる当時とうじのテレビ局てれびきょくの映像えいぞうが使つかわれている。なお「ユナイテッド93」では当時とうじの様子ようすを極力きょくりょく再現さいげんするため、情報じょうほう伝達でんたつの混乱こんらんや誤あやまりなどがそのまま伝つたえられている。

被害ひがい者しゃに関かんする情報じょうほう

テロによる犠牲ぎせい者しゃ

死者ししゃ（被害ひがい者しゃ + ハイジャック犯はん）

ニューヨーク市し	ワールドトレードセンター	2,606
	アメリカン11便びん	87 + 5
	ユナイテッド175便びん	60 + 5
アーリントン	ペンタゴン	125
	アメリカン77便びん	59 + 5
シャンクスヴィル近郊きんこう	ユナイテッド93便びん	40 + 4
合計ごうけい		2,977 + 19

事件じけん現場げんばに張はられた行方ゆくえ不明ふめい者しゃの安否あんぴを尋たずねる張はり紙がみ

この無む差別さべつテロ事件じけんにおける死者ししゃは合計ごうけい2,996人にん、負傷ふしょう者しゃは6,000人にん以上いじょうとされている。テロリストを除のぞいた犠牲ぎせい者しゃは2,977人にんであり、ワールドトレードセンターへの攻撃こうげきによる犠牲ぎせい者しゃは2,753人にん、アメリカ国防省こくぼうしょう（ペンタゴン）への衝突しょうとつによる犠牲ぎせい者しゃは184人にん、ユナイテッド航空こうくう93便びんの墜落ついらくによる犠牲ぎせい者しゃは40人にんだった。

ワールドトレードセンターの現場げんばでの犠牲ぎせい者しゃ2,753人にんには、ニューヨーク市し消防局しょうぼうきょくの消防しょうぼう士し343人にんと、71人にんの警察官けいさつかん（ニューヨーク市し警察けいさつ本部ほんぶの警察官けいさつかん23人にん、ニューヨーク・ニュージャージー港湾こうわん公社こうしゃ警察けいさつの警察官けいさつかん37人にんを含ふくむ）が含ふくまれている。

2,996人にんの死者ししゃの内訳うちわけは、ハイジャックされた4機きの旅客機りょかくきの乗員じょういん・乗客じょうきゃくが265人にん（テロリストを含ふくむ）、ワールドトレードセンターでの死亡しぼう者しゃが2,606人にん、アメリカ国防省こくぼうしょうでの死亡しぼう者しゃが125人にんとされている。

このテロ攻撃こうげきでは270人にんから400人にんのユダヤ人じんが犠牲ぎせいになったと推定すいていされている。またこれに関連かんれんしてアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく国務省こくむしょうは76人にん分ぶんのユダヤ人じん犠牲ぎせい者しゃのリストの一部いちぶを公開こうかいした。

2017年ねん8月がつの時点じてんでも、犠牲ぎせい者しゃ全体ぜんたいの40%にあたる1,112人にんの遺体いたいがいまだ未み確認かくにんの状態じょうたいだった。多おおくの遺体いたいがばらばらになって散乱さんらんしており、2006年ねんには南みなみ棟とうに隣接りんせつするドイツ銀行ぎんこうビルの屋上おくじょうで無数むすうの遺骨いこつの破片はへんが発見はっけんされた。

なお、日本人にっぽんじんの犠牲ぎせい者しゃは24人にんに及およんだ。

WTCツインタワー両りょう棟むね崩壊ほうかいによる健康けんこう被害ひがい

ツインタワー崩壊ほうかい後ごに破片はへんに覆おおわれたパトカー

現場げんばはワールドトレードセンターの鉄骨てっこつに吹ふき付つけられていた石綿いしわた（アスベスト）やツインタワー内ないにあったコンピュータや蛍光けいこう灯とうからの水銀すいぎん、ベンゼンをはじめとする火災かさいにより発生はっせいした多た環たまき芳香ほうこう族ぞく炭化たんか水素すいそ化合かごう物ぶつ等とうの危険きけんな粉塵ふんじんも含ふくまれており、救難きゅうなん活動かつどうを行おこなった犬いぬが次々つぎつぎに死しに、肺はいに障害しょうがいを訴うったえる人ひとが続出ぞくしゅつしていた。しかし、アメリカ政府せいふはそれを否定ひていし、十分じゅうぶんなデータの裏付うらづけもないのにEPAも「空気くうきは安全あんぜん」と報知ほうちしたことから、安全あんぜんよりもニューヨークの復旧ふっきゅう作業さぎょうといち早はやいウォールストリートの営業えいぎょうの再開さいかいを優先ゆうせんしたのではないかという疑惑ぎわくも挙あがっている。これに対たいして、EPA監査かんさ局きょくはホワイトハウスの環境かんきょう諮問しもん委員いいん会かいからの圧力あつりょくで安全あんぜん宣言せんげんの発表はっぴょうに至いたったという報告ほうこく書しょを2008年ねん8月がつに発表はっぴょうしている。これによると、EPAの安全あんぜん宣言せんげんはアスベストの含有がんゆう量りょうの数値すうちなど実際じっさいのサンプルがあったにもかかわらず、曖昧あいまいな表現ひょうげんに書かき換かえられた形跡けいせきもあるという。

現場げんばで救助きゅうじょ作業さぎょうなどにあたった人ひとでは、安全あんぜん宣言せんげんにより防塵ぼうじんマスクを付つけなかったため、健康けんこう被害ひがいが拡大かくだいされた可能かのう性せいも指摘してきされている。このような作業さぎょう員いんや消防しょうぼう士し、住人じゅうにんを含ふくめテロ発生はっせい時じまたはその直後ちょくごに現場げんば近辺きんぺんにいた人ひとでは、肺はい疾患しっかんや白血病はっけつびょう、癌がんなどの発生はっせいが報告ほうこくされており、医療いりょう機関きかんなどにより粉塵ふんじん被害ひがいとの因果いんが関係かんけいが追跡ついせき調査ちょうさされている。特とくに消防しょうぼう士しでは、精巣せいそう癌がんや非ひホジキンリンパ腫しゅ、前立腺ぜんりつせん癌がん、多発たはつ性せい骨髄腫こつづいしゅになるリスクが有意ゆういに高たかいとする論文ろんぶんも発表はっぴょうされている。約やく3000人にんの作業さぎょう員いんに対たいする追跡ついせき調査ちょうさでは、28%の人ひとで肺はい機能きのうに何なんらかの異常いじょうが認みとめられている。

ニューヨーク市し警察けいさつ（NYPD）など法ほう執行しっこう機関きかんにおいても、多数たすうの警察官けいさつかんがテロ事件じけんに関連かんれんした疾病しっぺい（9/11 related illness）で死亡しぼうしている。2016年ねん8月がつまでの警察官けいさつかん及および法ほう執行官しっこうかんの死者ししゃ数すうは110人にん。内訳うちわけ以下いかの通とおり。

• ニューヨーク市し警察けいさつ：99人にん
• 港湾こうわん公団こうだん警察けいさつ：1人ひとり
• ナッソー郡ぐん警察けいさつ：1人ひとり
• アメリカ動物どうぶつ虐待ぎゃくたい防止ぼうし協会きょうかい警察けいさつ部ぶ：1人ひとり
• ニューヨーク市立しりつ大学だいがく警察けいさつ部ぶ：1人ひとり
• ヨンカーズ市し警察けいさつ：1人ひとり
• アルコール・タバコ・火器かき及および爆発ばくはつ物ぶつ取締とりしまり局きょく (ATF)：1人ひとり
• 連邦れんぽう保安ほあん官かん：1人ひとり
• ピークスキル市し警察けいさつ：1人ひとり
• ニューヨーク州しゅう警察けいさつ：1人ひとり
• ニューヨーク郡ぐん地方ちほう検事けんじ付づけ捜査そうさ官かん：1人ひとり
• ヴァージニア州しゅう・アーリントン郡ぐん警察けいさつ：1人ひとり

2011年ねん1月がつ、健康けんこう被害ひがいを受うけた消防しょうぼう士しや警察官けいさつかんらに医療いりょう費ひ補償ほしょうなど約やく42億おくドルを支給しきゅうする法案ほうあんが成立せいりつした。

アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく政府せいふの対応たいおう

非常ひじょう事態じたい宣言せんげん

ブッシュ大統領だいとうりょうは速すみやかに非常ひじょう事態じたいを宣言せんげんした。冷戦れいせん時代じだいにつくられた政府せいふ存続そんぞく計画けいかくが初はじめて実行じっこうされた。ワールドトレードセンター・ツインタワーやペンタゴンへの攻撃こうげきがなされた後のちしばらくの間あいだは、さらなるテロに備そなえて、州兵しゅうへい、予備よび役やくが動員どういんされた。空港くうこうなどには厳戒げんかい態勢たいせいが敷しかれ、全すべての国境こっきょうが封鎖ふうさされた。また、連邦れんぽう航空局こうくうきょくの命令めいれいによりアメリカ国内こくないの民間みんかん航空こうくう路ろの封鎖ふうさ、アメリカ領空りょうくう内ないへの民間みんかん機きの入にゅう域いき・通過つうかが禁止きんしされ、領空りょうくう内ないを飛行ひこう中ちゅうの民間みんかん機きは全すべて最さい寄よせの空港くうこうに強制きょうせい的てきに着陸ちゃくりくさせられた。

これらの措置そちは数すう日間にちかん続つづいた上うえ、この措置そちが行おこなわれた地域ちいきはアメリカ本土ほんどのみならず、アメリカが航空こうくう管制かんせいを担当たんとうしているサイパンやパラオなどの太平洋たいへいよう諸国しょこくの一部いちぶ地域ちいきや、北大西洋きたたいせいようの一部いちぶ地域ちいきなど広範囲こうはんいに及およんだ。これにより多おおくの外国がいこく人じんがアメリカ国内こくないに足止あしどめされた上うえに、多おおくの旅客機りょかくきと乗客じょうきゃく、運航うんこう乗務じょうむ員いんと客室きゃくしつ乗務じょうむ員いんが地上ちじょう待機たいきさせられたため、世界せかい各国かっこくの航空こうくう会社かいしゃの運行うんこうが大だい混乱こんらんに陥おちいった。

捜査そうさ

この事件じけんにおいては、ハイジャック犯はんの機器きき操作そうさミス（犯人はんにん側がわは乗客じょうきゃくに向むけて、機内きない放送ほうそうをするつもりだったと見みられるが、機内きない放送ほうそう用ようのスイッチではなく、管制塔かんせいとうとのやり取とり用ようの無線むせんスイッチを押おしていた）によって操縦そうじゅう室しつ内ないの会話かいわが管制かんせい室しつに入はいるようになり、アラビア語ごを話はなしていることから、おそらくはアラブ人じんが犯人はんにんであることが早期そうきに推測すいそくできた。

また、客室きゃくしつ乗務じょうむ員いんは機内きない電話でんわを使用しようして会社かいしゃへハイジャックを報告ほうこくし、犯人はんにんの特徴とくちょう、人数にんずうと座席ざせき番号ばんごうを伝つたえた。このため、航空こうくう会社かいしゃは犯人はんにんの氏名しめい、住所じゅうしょ、電話でんわ番号ばんごうからクレジットカードの使用しよう履歴りれきまでを把握はあくすることが可能かのうとなった。また、数すう名めいの乗客じょうきゃくも手持てもちの携帯けいたい電話でんわや機内きない電話でんわで家族かぞくや友人ゆうじんにハイジャックの事実じじつを伝つたえた。これらの電話でんわの会話かいわはほとんどが機体きたいの破壊はかいの時ときまで続つづいた。この内うちいくつかの会話かいわは録音ろくおんされており、事件じけん捜査そうさに使用しようされた。

犯人はんにん引渡ひきわたし要求ようきゅう

ウサーマ・ビン・ラーディン（左ひだり/2001年ねん11月撮影さつえい）

アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく政府せいふはこれらの捜査そうさの結果けっかから、このテロ攻撃こうげきがサウジアラビア人じんのウサーマ・ビン・ラーディンをリーダーとするテロ組織そしき「アルカーイダ」によって計画けいかく・実行じっこうされたと断定だんていし、彼かれらが潜伏せんぷくするアフガニスタンのターリバーン政権せいけんに引ひき渡わたしを要求ようきゅうした。

しかしターリバーン側がわは、「証拠しょうこがあれば引ひき渡わたす。しかし、今いまの段階だんかいではアルカーイダのやったこととは断定だんていできない」と主張しゅちょうし、引ひき渡わたしを拒否きょひしたが、アルカーイダの司令しれい官かんのビン＝ラーディンは、後のちにアメリカ同時どうじ多発たはつテロ事件じけんを実行じっこうしたことを認みとめ逃亡とうぼうし、2011年ねん5月がつ1日にちに殺害さつがいされた。

なお、サウジアラビアなど湾岸わんがん協力きょうりょく会議かいぎを構成こうせいするアラブ諸国しょこくもテロ攻撃こうげきを批判ひはんし、アメリカによるアフガニスタン攻撃こうげきを支持しじする声明せいめいを出だした。

以降いこうの推移すいいはアフガニスタン紛争ふんそう (2001年ねん-2021年ねん)を参照さんしょう

アメリカ市民しみんの様々さまざまな反応はんのう

愛国心あいこくしん

喪失そうしつ感かんが充溢じゅういつする中なかでアメリカ国民こくみんは、求心力きゅうしんりょくを愛国あいこく的てきな意識いしきを共有きょうゆうすることに求もとめ、速すみやかな報復ほうふくを肯定こうていする世論せろんが形成けいせいされていった。具体ぐたい的てきな物的ぶってき証拠しょうこが挙あげられないうちから、CNNなどのアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくの大手おおてマスコミなどにおいても、イスラム原理げんり主義しゅぎを信奉しんぽうするアラブ系けい人種じんしゅによるテロ説せつが唱となえられ（同おなじような事ことは、オクラホマシティ連邦れんぽう政府せいふビル爆破ばくは事件じけんの際さいにも発生はっせいした）、流言りゅうげんに乗のった市民しみんによるアラブ系けい住民じゅうみんへの暴行ぼうこう事件じけんが多発たはつ、アラブ系けい男性だんせいが射殺しゃさつされる惨事さんじにまで発展はってんした。また、ヨルダン系けいアメリカ人じんアメリカ兵へいがテロ後ごに受うけた差別さべつがきっかけにより、8年ねん後ごの2009年ねん11月5日にちに陸軍りくぐん少佐しょうさがフォートフッド陸軍りくぐん基地きちで銃じゅう乱射らんしゃ事件じけんを起おこしている。

これに対たいし、アラブ系けいアメリカ人じんには「Arabic Americans support U.S.（アラブ系けいアメリカ人じんは合衆国がっしゅうこくを支持しじする）」などと書かいた横断幕おうだんまくを自家用車じかようしゃに掲かかげ、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくの味方みかたであることを示しめした者ものもいた。事件じけん発生はっせい直後ちょくごのテレビ報道ほうどうの中なかで、中東ちゅうとう系けいの人々ひとびとが勝かち誇ほこったように興奮こうふんする映像えいぞうが流ながされるなど（本ほんテロ攻撃こうげきとの関係かんけいは全まったく不明ふめい）、いわゆる国家こっか的てき陰謀いんぼう論ろんに結むすびつくような偏かたよった報道ほうどうが事件じけん直後ちょくごから行おこなわれていたとする説せつもある。

（大統領だいとうりょう時代じだいにはビン・ラーディンを脅威きょういと考かんがえていた）前ぜん大統領だいとうりょうであるビル・クリントンは、「同時どうじ多発たはつテロ事件じけんを見みて、それが直ただちにビン・ラーディンによるものだろうと考かんがえた」と後のちに述のべており、方法ほうほうはともかくとしても、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくに対たいするイスラム原理げんり主義しゅぎ勢力せいりょくによるテロ攻撃こうげきの可能かのう性せいは以前いぜんから意識いしきされていたものである。

消防しょうぼう隊員たいいん、警察官けいさつかん

炎上えんじょうするワールドトレードセンター・ツインタワーに取とり残のこされた人々ひとびとを救出きゅうしゅつすべく命いのちがけでビルに突入とつにゅうし、ツインタワー両りょう棟むねの崩壊ほうかいで殉職じゅんしょくした消防しょうぼう隊員たいいんや警察官けいさつかんに対たいしてその勇気ゆうきと献身けんしん的てき態度たいどを賞賛しょうさんする声こえがアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくのみならず世界中せかいじゅうから寄よせられ、その遺族いぞくに対たいする募金ぼきんや手紙てがみも世界せかい各国かっこくから寄よせられた。同おなじような賞賛しょうさんは有毒ゆうどく物質ぶっしつが散乱さんらんする事件じけん現場げんばで遺体いたいや遺留いりゅう品ひんの捜索そうさくを行おこなった作業さぎょう員いんたちにも同様どうように寄よせられた。

テロ直後ちょくご、ニューヨークの消防しょうぼう隊員たいいんから日本にっぽんの公安こうあん職員しょくいんで構成こうせいするNGO日本にっぽん警察けいさつ消防しょうぼうスポーツ連盟れんめい宛あてにSOSが発信はっしんされ、同どう連盟れんめいから消防しょうぼう救助きゅうじょ隊員たいいん11人にんを現地げんち入いりさせて救助きゅうじょ活動かつどうを実施じっしした。世界中せかいじゅうから多数たすうの救助きゅうじょ隊たいがテロ現場げんばに向むかいアメリカ入いりしたが、アメリカ国籍こくせき以外いがいの外国がいこく人じんで実際じっさいに救助きゅうじょ活動かつどうしたのは、唯一ゆいいつ日本にっぽんの救助きゅうじょ隊たいのみであった。

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  活動かつどうする消防しょうぼう隊員たいいんら
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  活動かつどうする消防しょうぼう隊員たいいんら

ブッシュ大統領だいとうりょうの支持しじ率りつ

事件じけん直前ちょくぜん、ジョージ・W・ブッシュ大統領だいとうりょうの支持しじ率りつは50%を切きっていた。そもそも、前年ぜんねんの大統領だいとうりょう選挙せんきょは僅差きんさでの勝利しょうりであるために、また大統領だいとうりょう選せんにおける大だい規模きぼな混乱こんらんは選挙せんきょの正当せいとう性せいへの議論ぎろんを招まねいたことから、選挙せんきょ直後ちょくごから政権せいけん支持しじ率りつは高たかくなかった。大統領だいとうりょう就任しゅうにん後ごの初はじめての大おおきな事件じけんとしてその指導しどう力りょくが国民こくみんの注目ちゅうもくを浴あびることとなり、それがテロとの戦争せんそうとして位置いちづけられたことから、事件じけん直後ちょくごには国民こくみんの支持しじ率りつは史上しじょう最高さいこうの9割わりに到達とうたつ、いみじくも政権せいけん最初さいしょの年としから国民こくみんの支持しじを得えた形かたちとなった。

娯楽ごらく・文化ぶんか活動かつどうの自粛じしゅく

崩壊ほうかいしたワールドトレードセンター・ツインタワーにおける捜索そうさく作業さぎょうの終了しゅうりょうに際きわする式典しきてん（2002年ねん5月28日にち）

テロ以降いこう、ニューヨークでは数々かずかずのイベントが、市民しみん感情かんじょうおよびセキュリティ上じょうから中止ちゅうしとなり、また週末しゅうまつに予定よていされていたNFLのレギュラーシーズンも中止ちゅうしが決定けっていされた。

しかし、2日にち後ごにWWEがヒューストンにて興行こうぎょうを決行けっこうすると、ブロードウェイのミュージカルやメジャーリーグをはじめとする多おおくのイベントは、再度さいどのテロを警戒けいかいする警察官けいさつかんの警護けいごの元もとに程ほどなくして再開さいかいし、「テロにひるまず通常つうじょうの生活せいかつを続つづける」という意思いし表示ひょうじを行おこなうとともに、打うちひしがれたアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく国民こくみんの心しんを慰なぐさめた。

放送ほうそう自粛じしゅく

これを受うけ、全米ぜんべい1200もの系列けいれつ局きょくを傘下さんかに持もつラジオ放送ほうそう大手おおてのクリアチャンネル (Clear Channel Communications) は、事件じけん直後ちょくごに放送ほうそう自粛じしゅく曲きょくリストを作成さくせいした。リストには以下いかのような著名ちょめいなアーティストの楽曲がっきょくが多数たすう含ふくまれ物議ぶつぎを醸かもした。

• ルイ・アームストロング「この素晴すばらしき世界せかい」
• クイーン「地獄じごくへ道みちづれ」・「キラー・クイーン」
• ジョン・レノン「イマジン」
• ビートルズ「涙なみだの乗車じょうしゃ券けん」・「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」・「ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンズ」・「オブ・ラ・ディ、オブ・ラ・ダ」
• サイモンとガーファンクル「明日あしたに架かける橋はし」
• レッド・ツェッペリン「天国てんごくへの階段かいだん」
• ドアーズ「ジ・エンド」
• レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン 全曲ぜんきょく

移動いどう手段しゅだんの変化へんか

オヘア国際こくさい空港くうこうを訪問ほうもんし、航空こうくう会社かいしゃ社員しゃいんから歓迎かんげいを受うけるブッシュ大統領だいとうりょう（2001年ねん9月がつ27日にち）

テロ攻撃こうげきの後のち、アメリカ人じんの多おおくがテロを警戒けいかいして民間みんかん航空機こうくうきによる移動いどうを避さけて自家用車じかようしゃによる移動いどうを選択せんたくしたために、同年どうねんの10月がつから12月がつまでのアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくにおける自動車じどうしゃ事故じこによる死者ししゃの数かずは前年ぜんねん比ひで約やく1,000人にん増加ぞうかした。

また、アムトラックやグレイハウンドなどの民間みんかん航空機こうくうき以外いがいの公共こうきょう中ちゅう長距離ちょうきょり交通こうつう機関きかんや、レンタカーの利用りよう者しゃも急増きゅうぞうした。これによりグレイハウンドなどは臨時りんじ増便ぞうびんを行おこなうなどして収益しゅうえきが改善かいぜんしたものの、空席くうせきが増ふえた航空こうくう会社かいしゃの収益しゅうえきは悪化あっかする結果けっかとなった。

イスラム教いすらむきょうへのヘイトクライム

同時どうじ多発たはつテロの後のち、アメリカではイスラム教いすらむきょうへの敵意てきいが広ひろまり、ムスリム（男性だんせいなら頭あたまにターバンを巻まき髭ひげを生はやした人ひと、女性じょせいならばヒジャブを被こうむり顔がおだけ出だしている人ひと）に対たいするヘイトクライムの数かずが急増きゅうぞうした。

イスラム寺院じいんやイスラム教いすらむきょうの学校がっこう、中東ちゅうとう系けいのコミュニティセンターには電話でんわや手紙てがみによる脅迫きょうはくが相次あいつぎ、落書らくがき、石いしや火炎瓶かえんびんの投擲とうてき、銃撃じゅうげき、豚ぶたの血ちを入いれた箱はこをモスクの入いり口くちに置おいておくという悪質あくしつな嫌いやがらせが起おきた。道みちを歩あるいていても罵声ばせいを浴あびたり、アラブ系けい経営けいえい者しゃの店舗てんぽ、特とくにガソリンスタンドは危険きけんなため、閉鎖へいさせざるをえない状況じょうきょうになった。ムスリムは1日にち5回かいの祈いのりをするが、その祈いのりの中心ちゅうしんであるモスクも暴動ぼうどうを恐おそれて閉鎖へいさされた。大学だいがくキャンパスでは中東ちゅうとう系けいの学生がくせいが卵たまごを投なげつけられたり、職場しょくばでは突然とつぜん解雇かいこされたり、数々かずかずの嫌いやがらせが広ひろがった。アラブ系けいには全員ぜんいん身分みぶん証明しょうめい書しょ携帯けいたいを義務ぎむづける案あんに対たいして賛成さんせい者しゃが49%、アラブ系けいの強制きょうせい送還そうかんを求もとめようという案あんには58%ものアメリカ人じんが賛成さんせいする結果けっかが出でた。

アメリカ人じんが持もつイスラム教いすらむきょうへの敵意てきいは長ながらく続つづいた。8年ねん前まえの1993年ねんにアメリカ・イスラム評議ひょうぎ会かいが行おこなった世論せろん調査ちょうさによるとアメリカ国内こくないで最もっとも嫌きらわれている宗教しゅうきょうはイスラム教徒きょうとというデータが出でており、2010年ねん9月11日にちには、牧師ぼくしテリー・ジョーンズの主催しゅさいにより、「国際こくさいコーラン焼却しょうきゃく日び」と称しょうするコーランを燃もやすイベントが開ひらかれようとした。しかし、世界中せかいじゅうのイスラム教徒きょうとから抗議こうぎが殺到さっとうして中止ちゅうしに追おい込こまれた。

国際こくさい社会しゃかいの対応たいおう

このテロに対たいする国際こくさい的てきな反発はんぱつは大おおきかった。国際こくさい連合れんごうは安全あんぜん保障ほしょう理事りじ会かいで9月がつ12日にちにテロの脅威きょういに対たいして「あらゆる手段しゅだんを用もちいて闘たたかう」とした国際こくさい連合れんごう安全あんぜん保障ほしょう理事りじ会かい決議けつぎ1368、この日ひに行おこなわれた第だい56回かい国際こくさい連合れんごう総会そうかいでもアメリカ政府せいふと市民しみんに哀悼あいとうと連帯れんたいを表あらわしてワシントン及およびペンシルベニア、そして国連こくれん本部ほんぶを置おくニューヨークへのテロ攻撃こうげきを非難ひなんする決議けつぎA/RES/56/1を当時とうじの全ぜん加盟かめい国こく189カ国かこくが満場一致まんじょういっちで採択さいたくし、9月28日にちには史上しじょう初はつの国際こくさい立法りっぽう とされる国際こくさい連合れんごう安全あんぜん保障ほしょう理事りじ会かい決議けつぎ1373で「全すべての国くに」にテロ対策たいさくとその報告ほうこくを義務付ぎむづけた。11月10日にちにはルドルフ・ジュリアーニがニューヨーク市長しちょうとしては初はつの国連こくれん演説えんぜつを行おこなってテロとの戦たたかいを呼よびかけ、ブッシュ大統領だいとうりょうも国連こくれん総会そうかいでの初はじめての演説えんぜつでこれらの世界せかいの支持しじに感謝かんしゃしてテロとの戦たたかいを宣言せんげん、11月12日にちには国際こくさい連合れんごう安全あんぜん保障ほしょう理事りじ会かい決議けつぎ1377ではテロは「全ぜん国家こっかと全ぜん人類じんるいへの挑戦ちょうせん」とされ、世界せかい各国かっこくでテロ対策たいさくが進すすんだ。

11日にちにブッシュ大統領だいとうりょうは、イギリスのブレア首相しゅしょう、フランスのシラク大統領だいとうりょう、ロシアのプーチン大統領だいとうりょう、中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこくの江沢民こうたくみん国家こっか主席しゅせきら4人にんの常任じょうにん理事りじ国こく首脳しゅのうと電話でんわ会談かいだんし、テロ対策たいさくで共闘きょうとうを合意ごういした。同年どうねん4月がつに南シナ海みなみしなかいでおきた海南かいなん島とう事件じけんで米べい中ちゅうは緊張きんちょう関係かんけいにあったが、テロ後ごの初はつ外遊がいゆう で同年どうねん10月がつに訪中ほうちゅうしたブッシュと協調きょうちょうする中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこくは上海しゃんはいAPECの議長ぎちょう国こくとしてロシアや日本にっぽんなど各国かっこく首脳しゅのうとテロとの戦たたかいを呼よびかける共同きょうどう声明せいめいをまとめた。また、北大西洋きたたいせいよう条約じょうやく機構きこう (NATO)・欧州おうしゅう連合れんごう (EU)・東南とうなんアジア諸国しょこく連合れんごう (ASEAN)・アフリカ統一機構あふりかとういつきこう・アラブ連盟れんめい、イスラム諸国しょこく会議かいぎ機構きこう などのような機関きかんもブッシュ大統領だいとうりょうのテロとの戦たたかいの呼よびかけに応おうじた。米州べいしゅう機構きこうは米州べいしゅう相互そうご援助えんじょ条約じょうやくに基もとづいてテロは米州べいしゅう全体ぜんたいへの攻撃こうげきとし、NATOとオーストラリアはテロは北大西洋きたたいせいよう条約じょうやく第だい5条じょうと太平洋たいへいよう安全あんぜん保障ほしょう条約じょうやく第だい4条じょうに当あたるとして自衛じえい権けんを発動はつどうした。

また、アメリカの同盟どうめい国こくや先進せんしん国こくと大国たいこくだけではなく、インドなどアジアの非ひ同盟どうめい諸国しょこくもアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくを支持しじし、さらに1980年代ねんだいにパンアメリカン航空こうくう機きに対たいするテロを支援しえんした過去かこのあるリビアや、ターリバーンの公然こうぜんたる後援こうえん者しゃであったサウジアラビアとパキスタン、イランアメリカ大使館たいしかん人質ひとじち事件じけん以来いらいアメリカとは犬猿けんえんの仲なかであるイラン、北朝鮮きたちょうせんのような反米はんべいとされる国々くにぐにでさえ犯人はんにんグループを非難ひなんし、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくに対たいする支援しえんに同意どういした（但ただし、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくはこの後のち、後述こうじゅつするようにアフガニスタン、イラクに侵攻しんこうするが、これが中東ちゅうとうの反米はんべい感情かんじょうを刺激しげきしたことを原因げんいんとして2007年ねんにはイランがイラク国内こくないの過激かげき派はに武器ぶきを供与きょうよしている疑うたがいがあると報道ほうどうされた）。

2006年ねん11月14日にちに、反米はんべい的てきなウゴ・チャベス大統領だいとうりょう率ひきいるベネズエラの国会こっかいは、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく大統領だいとうりょうに呼よびかける決議けつぎ案あんを満場一致まんじょういっちで採択さいたくした。メキシコ国境こっきょうにおける壁かべの建設けんせつを激はげしく攻撃こうげきし、第だい4章しょうで、「イスラム・テロとの戦争せんそう」の根拠こんきょとなった2001年ねん9月がつ11日にちの事件じけんについて「ブッシュ政権せいけんが、ワールドトレードセンター・ツインタワーとその犠牲ぎせい者しゃに対たいする自爆じばくテロに関かんし、またペンタゴンに激突げきとつしたとされる航空機こうくうきについての明確めいかくな釈明しゃくめい、およびビンラディンとブッシュ家かとの関係かんけいを提示ていじするよう強つよく」 要求ようきゅうしている。

調査ちょうさ

サウジ政府せいふの関与かんよ疑惑ぎわく

詳細しょうさいは「アメリカ同時どうじ多発たはつテロ事件じけんへのサウジアラビア関与かんよ疑惑ぎわく」、「en:Saudi Arabia–United States relations」、および「テロ支援しえん国家こっか」を参照さんしょう

オバマ政権せいけんは2016年ねん7月がつ、米べい捜査そうさ官かんのダナ・レゼマンとマイケル・ジェイコブソンがまとめた「ファイル17」と呼よばれる文書ぶんしょを公開こうかいしたが、その中なかには、サウジアラビアとハイジャック犯はんを結むすびつける ワシントンD.C.のサウジアラビア大使館たいしかん付属ふぞくのサウジアラビア諜報ちょうほう員いんの疑うたがいがある人物じんぶつ を含ふくむ、3ダースの人物じんぶつを名指なざしで挙あげたリストが含ふくまれていた。

その後ご

テロ事件じけん発生はっせい以前いぜんのワールドトレードセンター・ツインタワー

2004年ねん9月がつ11日にち、ツインタワーが光線こうせんによって再現さいげんされた

2005年ねん時点じてんのワールドトレードセンター・ツインタワー跡地あとち(グラウンド・ゼロ)

対たいテロ戦争せんそう

「対たいテロ戦争せんそう」も参照さんしょう

ブッシュ政権せいけんは、このテロ事件じけんを契機けいきにアフガニスタン侵攻しんこうを行おこない、さらに2002年ねんに国際こくさいテロ組織そしきとならず者もの国家こっかと断だんじた悪あくの枢軸すうじく（イラク、イラン、北朝鮮きたちょうせん）との戦たたかいを国家こっか戦略せんりゃくとし、「アメリカの防衛ぼうえいのためには、予防よぼう的てきな措置そちと時ときには先制せんせい攻撃こうげきが必要ひつよう」として推進すいしんする方針ほうしんを決きめた。これを元もとに、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくはイラクに対たいして大量たいりょう破壊はかい兵器へいきを隠かくし持もっているという疑惑ぎわくを理由りゆうに、イラク戦争せんそうに踏ふみ切きった。

この行動こうどうに対たいしては、アフガニスタン（当時とうじはターリバーン政権せいけん）攻撃こうげきと異ことなり、国際こくさい的てきな態度たいどは分わかれ、日本にっぽん・イギリス・フィリピン・スペイン・イタリアなどのアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく同調どうちょう国こくと、フランス・ドイツ・ロシア・中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこくなどのアメリカ非ひ同調どうちょうの立場たちばに分わかれた。

その後ごの2004年ねん10月がつ、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく政府せいふ調査ちょうさ団だんは「開戦かいせん時じにはイラク国内こくないに大量たいりょう破壊はかい兵器へいきは存在そんざいせず、具体ぐたい的てき開発かいはつ計画けいかくもなかった」と結論けつろんづけた最終さいしゅう報告ほうこく書しょを米べい議会ぎかいに提出ていしゅつ。2006年ねん9月がつには、アメリカ上院じょういん情報じょうほう特別とくべつ委員いいん会かいが「旧きゅうフセイン政権せいけんとアルカイダの関係かんけいを裏付うらづける証拠しょうこはない」との報告ほうこく書しょを公表こうひょうしており、開戦かいせんの正当せいとう性せいが根底こんていから揺ゆらぐ結果けっかとなっている。

なお、テロ直後ちょくごのアメリカ連邦れんぽう議会ぎかいで、対たいテロ戦争せんそうへの反対はんたいを表明ひょうめいした者ものは、民主党みんしゅとう議員ぎいんのバーバラ・リーただ1人ひとりだけだった。

詳細しょうさいは「イラク武装ぶそう解除かいじょ問題もんだい」および「イラク戦争せんそう」を参照さんしょう

またブッシュ大統領だいとうりょうは、イラク戦争せんそう後ごの2004年ねんに中東ちゅうとう首脳しゅのうを招まねいて会談かいだんを開ひらき、サウジアラビアやシリアの様ように王制おうせいや独裁どくさい政治せいじが色濃いろこい中東ちゅうとう各国かっこくがテロの温床おんしょうになっているとして、これらの国々くにぐにを民主みんしゅ化かすると宣言せんげんし、中東ちゅうとう各国かっこくは“それぞれの国情こくじょうを無視むししアメリカ式しきを押おし付つけるもの”と強つよく反発はんぱつした。アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくは中東ちゅうとう民主みんしゅ化かを今後こんごの外交がいこうの方針ほうしんに掲かかげるとしているが、この様ような強権きょうけん的てきなやり方かたには中東ちゅうとう諸国しょこくのみならず、多おおくの国くにから批判ひはんが集中しゅうちゅうしている。

さらに、「アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくがアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくであり続つづける為ために必要ひつよう」として、「愛国あいこく者しゃ法ほう（反はんテロ法ほう）」を制定せいてい、2005年ねん7月がつには暫定ざんてい法ほうであった同どう法ほうを恒久こうきゅう化か。市民しみんのプライバシーを大幅おおはばに制限せいげん、公安こうあん活動かつどうの用ように供きょうするとして、また12月には、国家こっか安全あんぜん保障ほしょう局きょくの行おこなう不法ふほうな盗聴とうちょうを大統領だいとうりょう権限けんげんで事実じじつ上じょう黙認もくにんしていた事こと、2006年ねん5月がつには、テロリスト関係かんけい者しゃ、またはそれらと少すこしでも接触せっしょくのあった外国がいこく人じんをアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく入国にゅうこくの際さいに令状れいじょう抜ぬきで不法ふほうに連行れんこう・収監しゅうかん、自白じはくを取とる為ための拷問ごうもんがCIAとFBIによって行おこなわれていた事ことが明あきらかになるなど、警察けいさつ国家こっか化か傾向けいこうが国内こくないの一部いちぶ市民しみん団体だんたいから批判ひはんされている。

WTCコンプレックス跡地あとちの再さい開発かいはつ

ワールドトレードセンター・コンプレックスの跡地あとちについては、遺族いぞくから慰霊いれいの場ばとしてほしいという意見いけんもあった。しかし多おおくのオフィススペースを失うしなったためにニューヨークから企業きぎょうが流出りゅうしゅつすることを恐おそれた市し当局とうきょくや、跡地あとちを所有しょゆうしてきたニューヨーク・ニュージャージー港湾こうわん局きょくらは、金融きんゆう街がいに近ちかくビジネス街がいの一いち等地とうちであるこの場所ばしょに新あらたなオフィスビル・商業しょうぎょう施設しせつと交通こうつうターミナルの再建さいけんを希望きぼうした。当初とうしょの再建さいけん案あんはあまりにも経済けいざい復興ふっこうの色いろが強つよく遺族いぞくの反対はんたいで撤回てっかいされ、改あらためて世界せかいの建築けんちく家かを集あつめて行おこなわれた建築けんちく設計せっけい競技きょうぎの結果けっか、アメリカ人じん建築けんちく家かダニエル・リベスキンドの案あんが採用さいようされた。

2004年ねん7月がつ、ワールドトレードセンター・コンプレックス跡地あとちに再ふたたびビルを建設けんせつするための起工式きこうしきが行おこなわれた。敷地しきち内ないにはツインタワー北きた棟とう・南みなみ棟とう跡あとの祈念きねんスペースを囲かこむように数すう本ほんの超ちょう高層こうそうビルが建たち、最もっとも高たかいビルは「フリーダム・タワー（自由じゆうの塔とう）」（2009年ねんに1 ワールドトレードセンターに名称めいしょう変更へんこう）と名なづけられ、アメリカの独立どくりつした1776年ねんにちなんで、1,776フィート (541 m)の高たかさとなる。2014年ねん11月3日にち開業かいぎょう。周囲しゅういにはタワー3・タワー4・タワー7が建設けんせつ済ずみ、タワー2・タワー5が建たつ予定よてい。

一方いっぽう、崩落ほうらくしたワールドトレードセンター・コンプレックスの残骸ざんがいには、発見はっけんされない相当そうとう数すうの遺体いたいが含ふくまれると思おもわれた。遺体いたいはDNAすら判別はんべつできないほどに傷いたんでいると思おもわれるが、遺族いぞくは取とり扱あつかいに非常ひじょうに神経しんけいを尖とがらせていたため、残骸ざんがいは廃棄はいきすることができず、ごみ処分しょぶん場じょうに大量たいりょうに放置ほうちされている状態じょうたいであった。しかし、2005年ねん3月がつ初はじめ、当局とうきょくはおよそ1100人にん分ぶんの身元みもとが判明はんめいできないまま確認かくにん作業さぎょうを中止ちゅうしすると発表はっぴょうした。鉄骨てっこつ類るいは屑鉄くずてつとして再さい利用りようのためインドへと輸出ゆしゅつされた。

アメリカ同時どうじ多発たはつテロ以降いこうのアメリカ国内こくないでのテロ状況じょうきょう

2001年ねんのアメリカ同時どうじ多発たはつテロ後ごから現在げんざい（2022年ねん）に至いたるまでの間あいだ、アメリカ国内こくないではアルカイダなどの国際こくさい的てきテロ組織そしきによるテロは一いち度ども起おきていない。この間あいだにテロ計画けいかくやテロ警報けいほうは何なん度どもあったが、そのほとんどをFBIがテロの実行じっこう前まえに犯人はんにんを逮捕たいほしているか、計画けいかくだけで実際じっさいには実行じっこうされずに終おわったテロがほとんどである。

しかしFBIが察知さっちできずに実行じっこうされたテロが3件けんだけ起おきている。それは2009年ねん12月25日にちのノースウェスト機きテロ、2010年ねん5月がつ1日にちのタイムズスクエアテロ、2010年ねん10月がつ29日にちのアメリカ行いき航空こうくう便びんテロの3件けんがある。しかしこれら3件けんとも爆ばく弾だんが爆発ばくはつせずに未遂みすいに終おわっている。したがって、アメリカ国内こくないにおいてアルカイダなどの国際こくさい的てきなテロ組織そしきによるテロはこの事件じけん以降いこう一いち度ども成功せいこうしていない。

戦死せんし兵へいと自殺じさつ兵へい

ブラウン大学だいがくが2021年ねん6月がつに発表はっぴょうした調査ちょうさによると、9・11以降いこう、アメリカはアフガニスタンやイラクへの軍事ぐんじ作戦さくせんを展開てんかいし、この一連いちれんの軍事ぐんじ行動こうどう（2001年ねんから2021年ねんの20年間ねんかん）で、戦死せんしした米兵べいへいは7,057人にんであるのに対たいし、戦地せんちから帰国きこくした後のちにPTSDなどを発症はっしょうして自殺じさつした元もと米兵べいへいは、4倍ばい以上いじょうの3万まん177人にんにのぼることが分わかった。

事件じけんの影響えいきょう

アメリカ同時どうじ多発たはつテロは、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくの政治せいじ、そして冷戦れいせん後ごの国際こくさい社会しゃかいの大おおきな転換てんかん点てんとなった。アメリカ同時どうじ多発たはつテロ事件じけんが勃発ぼっぱつする前まえには、20世紀せいきの「アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく国民こくみんの記憶きおくに残のこる日ひ」は、1963年ねん11月22日にちのジョン・F・ケネディ暗殺あんさつ事件じけん、あるいは1941年ねん12月7日にちの大日本帝国だいにっぽんていこく海軍かいぐんによる真珠湾しんじゅわん攻撃こうげきであった。これらに代かわってアメリカ国民こくみんは、この2001年ねん9月11日にちをテロの脅威きょういと共ともに永遠えいえんに記憶きおくにとどめることになった。

「ネオコンの代表だいひょう的てき人物じんぶつ」とされる大統領だいとうりょうジョージ・W・ブッシュと国防こくぼう副ふく長官ちょうかんポール・ウォルフォウィッツ

ブッシュとサウジアラビアのアブドラ皇太子こうたいし（当時とうじ）

アメリカ同時どうじ多発たはつテロは、「外国がいこくがアメリカ本土ほんどを襲撃しゅうげきした事件じけん」として、「真珠湾しんじゅわん攻撃こうげき」と度々たびたび対比たいひされている。真珠湾しんじゅわん攻撃こうげきは日本にっぽんの正規せいき軍ぐんが軍事ぐんじ行動こうどうとしてアメリカ本土ほんどではなくハワイのアメリカ軍ぐん基地きちを攻撃こうげきしたケースであったが、アメリカ同時どうじ多発たはつテロはアメリカ本土ほんどが襲撃しゅうげきされた事件じけんという意味いみでも衝撃しょうげき的てきな大だい事件じけんともなった（なお1942年ねんには日本にっぽん海軍かいぐん機きがアメリカ本土ほんどを数すう回かい爆ばく撃げきしている）。しかも、真珠湾しんじゅわん攻撃こうげきとアメリカ同時どうじ多発たはつテロ事件じけんは干支えとが同おなじ辛からし巳みであり、「60年ねん後ごの真珠湾しんじゅわん攻撃こうげき」とも呼よばれた。2001年ねん12月に開ひらかれた真珠湾しんじゅわん攻撃こうげき60周年しゅうねんのイベントでも、真珠湾しんじゅわん攻撃こうげきとアメリカ同時どうじ多発たはつテロ事件じけんが一緒いっしょに言及げんきゅうされた。

アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく国内こくないの世論せろんは急速きゅうそくに先鋭せんえい化か・超ちょう国家こっか主義しゅぎ化かしたと言いわれ、ネオコン（新しん保守ほしゅ主義しゅぎ）勢力せいりょくが政治せいじの世界せかいで隆盛りゅうせいし、影響えいきょう力りょくを増大ぞうだいさせた引ひき金がねともなった。その後ご、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくによるテロ支援しえん国家こっかへの攻撃こうげきには国民こくみんの大半たいはんが賛同さんどうした。議会ぎかいでも野党やとう民主党みんしゅとうが共和党きょうわとうのタカ派は路線ろせんを容認ようにんする動うごきが目立めだった。事件じけん直後ちょくご、ブッシュ政権せいけんがアメリカ同時どうじ多発たはつテロ事件じけんへのイラクの関与かんよをほのめかし、過剰かじょうなマスコミ報道ほうどうによりそれが増幅ぞうふくされた為ために国民こくみんの間あいだにイラクとサッダーム・フセインに対たいする敵意てきいが増大ぞうだいし、2年ねん後ごのイラク戦争せんそうの呼よび水みずとなったと言いわれる。その後ご、独立どくりつ調査ちょうさ委員いいん会かいの調査ちょうさでイラクの関与かんよが否定ひていされ、ブッシュ大統領だいとうりょう自身じしんもそれを認みとめたにもかかわらず、2005年ねん3月がつの世論せろん調査ちょうさでは、米べい国民こくみんの約やく60%が「イラクはアルカーイダを支援しえんしていたと思おもう」と答こたえている。

一方いっぽう、他たの国くにではアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくの方針ほうしんに対たいして世論せろんが二ふたつに割われた。親米しんべい的てきな意見いけん（アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくの主張しゅちょう）としては、これを基もとに世界中せかいじゅうの独裁どくさい国家こっかの自由じゆう民主みんしゅ化かを進すすめるべきだという意見いけんなどがある。特とくにブッシュ大統領だいとうりょうが悪あくの枢軸すうじくとしたイラク・イラン・北朝鮮きたちょうせんなどで非ひ自由じゆう民主みんしゅ的てき体制たいせいが猛威もういを振ふるっているとされる状況じょうきょうで、これを解決かいけつするべきだとの声こえもある。その後ごのアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくの対応たいおうを見みると、イラクやイランに対たいしては攻撃こうげき的てきな姿勢しせいであるものの、表向おもてむき寧辺にょんびょん核かく施設しせつ無力むりょく化かを受うけ入いれた北朝鮮きたちょうせん、大量たいりょう破壊はかい兵器へいきを放棄ほうきしたリビア、同盟どうめい国こくのサウジアラビアに対たいしては穏和おんわな姿勢しせいを持もつなど、二に重じゅう基準きじゅんと批判ひはんする対応たいおうが目立めだつ。

反米はんべい反戦はんせん的てきな意見いけんとしては、「自由じゆうの国くにアメリカ」のシステムを国外こくがいに普及ふきゅうさせることを使命しめいとするネオコン勢力せいりょくの拡大かくだいは、政府せいふの好戦こうせん的てき姿勢しせいに反対はんたいする意見いけんを言いえない雰囲気ふんいきを作つくり出だしているとする声こえもあり、リバタリアニズムなど反はんネオコン陣営じんえいからの反発はんぱつも高たかまっている上うえに、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく国内こくないでさえ破綻はたんしかけているアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく的てき価値かち観かん・システムの押おし売うりであるという反発はんぱつが多おおい。

このテロ事件じけんを動機どうきにして、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくは国連こくれん協調きょうちょうを投なげ棄すてて一いち国こく独走どくそう主義しゅぎの時代じだいになったり、冷戦れいせん時代じだいの米べいソ対立たいりつの構図こうずの残滓ざんしも消きえ、世界せかいの軸じくは無類むるいの超ちょう大国たいこく一いち国こくによって動うごかされる（ジョン・ボルトンの国連こくれん軽視けいし発言はつげん）時代じだいになったとする意見いけんもあり、これを「アメリカ帝国ていこく」と表現ひょうげんするアントニオ・ネグリ、マイケル・ハートのような思想家しそうかなどもいる。

軍事ぐんじ面めんでは、戦争せんそうをこれまでの「国家こっかvs国家こっか」から、「民間みんかん軍事ぐんじ組織そしきvs国家こっか」の構図こうずとして描えがく傾向けいこうが濃厚のうこうになった。

対たいアフガニスタン人道じんどう援助えんじょ

事件じけん後ごのアフガニスタン攻撃こうげきに伴ともなう対たいアフガニスタン人道じんどう援助えんじょ・資金しきん援助えんじょは、アフガニスタンとの国交こっこうを唯一ゆいいつ保たもったパキスタンが窓口まどぐちとなった。アフガニスタン向むけ援助えんじょは、その10-80%がアフガニスタンに届とどく前まえにパキスタンにおいて横流よこながしされ、イスラム原理げんり主義しゅぎ者しゃを勢いきおいづかせたのではないか、という意見いけんもある。

政権せいけん交代こうたい

なお、事件じけん後ごにアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくを中心ちゅうしんに行おこなわれたイラクへの侵攻しんこうに同調どうちょうし派兵はへいを行おこなったイギリスやスペインでは、この派兵はへいに反対はんたいするイスラム過激かげき派はと見みられる集団しゅうだんによる一般いっぱん市民しみんを狙ねらったテロ事件じけんが発生はっせいし、多おおくの人命じんめいが失うしなわれた。また、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく主導しゅどうで行おこなわれたイラク侵攻しんこうに同調どうちょうし派兵はへいすることに対たいして、上記じょうきのようにこれらの国くにの内部ないぶで国民こくみんの意見いけんが二分にぶんした。

その結果けっかスペインでは、2004年ねん3月のマドリードにおける列車れっしゃ爆破ばくはテロ事件じけん後のちに行おこなわれた選挙せんきょで、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくへの支持しじと派兵はへいを決定けっていしたホセ・マリア・アスナール首相しゅしょう率ひきいる国民党こくみんとうが敗退はいたいし、ホセ・ルイス・ロドリゲス・サパテロ率ひきいるスペイン社会労働党しゃかいろうどうとうに政権せいけんが交代こうたいした。

同おなじくアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくへの支持しじと派兵はへいを打うち出だして以降いこう人気にんきが急落きゅうらくしていたイギリスのトニー・ブレア首相しゅしょうが任期にんき途中とちゅうで退陣たいじんすることを発表はっぴょうするなど、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくへの支持しじと派兵はへいはこれらの国くににおける政権せいけん交代こうたいのきっかけを作つくることとなった。

金融きんゆう市場いちば

アメリカ同時どうじ多発たはつテロ事件じけんが起おきた時刻じこくはアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくでの取引とりひきが始はじまる前まえで、多おおくの金融きんゆう機関きかんが入居にゅうきょするワールドトレードセンターで起おきた事件じけんということもあり、その日ひのアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく国内こくないの取引とりひきは中止ちゅうし。翌週よくしゅうの17日にち（月曜日げつようび）に再開さいかいするまで、取引とりひき所しょや金融きんゆう機関きかんは修復しゅうふく作業さぎょうに追おわれた。9月10日にちの終値おわりねが9,605.51ドルだったNYダウは、取引とりひきが再開さいかいされた17日にちには取引とりひき時間じかん中ちゅうに8,883.4ドルまで下落げらくすることになり、9月がつ10日とおかに121円えんを付つけていた円えんドルのレートも、翌日よくじつには118.5円えんまで値ねを落おとした。なお、1機き目めの衝突しょうとつ直後ちょくごから南側みなみがわビルの崩壊ほうかいまでの間あいだだけでNYダウは100ドル以上いじょう下落げらくしていた。

一方いっぽう、取引とりひき中ちゅうだったヨーロッパではCNNやCNBCを通つうじて事態じたいが明あきらかになるとすべての取引とりひき所しょで株価かぶかの全面ぜんめん安やすが起おきる。明あかりくる12日にちの東京とうきょう市場いちばの日経にっけい平均へいきん株価かぶかは680円えん以上いじょうの下落げらくとなった。これは一部いちぶで「9・11ショック」とも報道ほうどうされていた。その後ご多おおくの国くににおいては株価かぶかの低迷ていめいがしばらくの間あいだ続つづくこととなる。

また、9月18日にちのタイムズ紙しによると、事件じけんの数日すうじつから数すう週間しゅうかん前まえにかけて、アメリカ・日本にっぽん・イギリス・ドイツ・イタリアの株式かぶしき市場いちばで航空こうくう会社かいしゃや保険ほけん会社かいしゃ、軍事ぐんじ関連かんれん企業きぎょうなどの株式かぶしきが大量たいりょうに信用しんよう売うりされ、テロ攻撃こうげきの結果けっか、株価かぶかが暴落ぼうらくした直後ちょくごに安値やすねで大量たいりょうに買かい戻もどされた不審ふしんな売買ばいばい形跡けいせきが認みとめられたという。

航空こうくう業界ぎょうかい

ポートランド国際こくさい空港くうこうの身体しんたい検査けんさ場じょう

このテロが航空機こうくうきを用もちいたものであったことや、シティグループやオムニコム・グループ、マイクロソフトなど、アメリカを中心ちゅうしんとした大だい企業きぎょうが緊急きんきゅうなものを除のぞく外国がいこく出張しゅっちょうの禁止きんしを命めいじたことなどから、事件じけん後ごは航空こうくう需要じゅようが一時いちじ的てきに激減げきげんし、世界中せかいじゅうの航空こうくう会社かいしゃが大おおきな打撃だげきを受うけることとなった。

テロの標的ひょうてきとなったユナイテッド航空こうくうだけでなく、標的ひょうてきにならなかったノのースウエスト航空すうえすとこうくう・デルタ航空こうくうも、連邦れんぽう倒産とうさん法ほう第だい11章しょうの適用てきようを申請しんせいし経営けいえい破綻はたんした。また、サベナ航空こうくうやスイス航空こうくう、アンセット航空あんせっとこうくうなど、アメリカ以外いがいの航空こうくう会社かいしゃも多おおくが赤字あかじに転落てんらくしたうえ経営けいえい破綻はたんし、そのうちのいくつかは姿すがたを消けした。

また、以前いぜんより空港くうこうや機内きないでの保安ほあん体制たいせいが強化きょうかされ、搭乗とうじょう客きゃくへの身体しんたい検査けんさや手荷物てにもつの検査けんさが厳重げんじゅう化かされたほか、操縦そうじゅう室しつのドアなども強化きょうかするよう法律ほうりつが改あらためられた。

アメリカは全ぜん世界せかいにバイオメトリック・パスポートの導入どうにゅうを要求ようきゅうし、従したがわない国くに及および市民しみんはビザ免除めんじょプログラムの対象たいしょう外がいとした。

陰謀いんぼう説せつ

詳細しょうさいは「アメリカ同時どうじ多発たはつテロ事件じけん陰謀いんぼう説せつ」を参照さんしょう

博物館はくぶつかん

国立こくりつ9・11記念きねん館かん・博物館はくぶつかん（9・11メモリアル・ミュージアム）

跡地あとちには事件じけんを後世こうせいに残のこす為ための9.11記念きねん碑ひ・博物館はくぶつかん (en)が2011年ねん9月にオープンした。

「ナショナル・セプテンバー11メモリアル&ミュージアム」を参照さんしょう

9・11トリビュート・ミュージアム（9/11追悼ついとう博物館はくぶつかん）

事件じけんの遺族いぞくや現場げんばに駆かけつけた消防しょうぼう隊員たいいんなどによって設立せつりつされ、2006年ねんにニューヨーク市しのロウアー・マンハッタン地区ちくにオープンした（国立こくりつ9・11記念きねん館かん・博物館はくぶつかんとは別べつの施設しせつ）。140を超こえる国くにや地域ちいきから500万まん人にん以上いじょうが訪おとずれたが、新型しんがたコロナウイルスの世界せかい的てき大だい流行りゅうこうで来館らいかん者しゃが減少げんしょうして財政難ざいせいなんとなり、2022年ねん8月がつ17日にちに閉鎖へいさされ、展示てんじ品ひんや記録きろく映像えいぞうの大半たいはんはニューヨーク州しゅう博物館はくぶつかんに移うつされた。

参考さんこう文献ぶんけん

• McDermott, Terry (2005), Perfect Soldiers: The 9/11 Hijackers, HarperCollins, pp. 191–192, ISBN 978-0-06-058470-2, https://books.google.com/books?id=4Oufo58esZAC&pg=PP1#v=onepage 
• Wright, Lawrence (2006), The Looming Tower: Al-Qaeda and the Road to 9/11, Knopf, ISBN 978-0-375-41486-2, https://books.google.com/books?id=RNkj-mO-Nt8C&pg=PP1 
• Bergen, Peter (2006), The Osama Bin Laden I Know: An Oral History of Al Qaeda's Leader, Simon and Schuster, ISBN 978-0-7432-9592-5, https://books.google.com/books?id=_XkM92XMlQ4C&pg=PP1 2016年ねん3月がつ18日にち閲覧えつらん。 
• サイイッド・クトゥブ ペンでアメリカと闘たたかった男おとこ
• イスラーム原理げんり主義しゅぎのイデオロギー　サイイッド・クトゥブ三さん部ぶ作さく: アルカイダからイスラム国こくまで　アメリカと戦たたかう思想しそう
• イスラーム原理げんり主義しゅぎのイデオロギー・解説かいせつ編へん

関連かんれん資料しりょう

報告ほうこく書しょ

• National Commission on Terrorist Attacks (2004). The 9/11 Commission Report: Final Report of the National Commission on Terrorist Attacks Upon the United States ; W. W. Norton & Company. ISBN 0-393-32671-3.
• 同時どうじ多発たはつテロに関かんする独立どくりつ調査ちょうさ委員いいん会かい 『9/11委員いいん会かいレポート ダイジェスト 同時どうじ多発たはつテロに関かんする独立どくりつ調査ちょうさ委員いいん会かい報告ほうこく書しょ、その衝撃しょうげきの事実じじつ』 WAVE出版しゅっぱん、2008年ねん。ISBN 4-87290-326-9.
• American Society of Civil Engineers (2003). The Pentagon Building Performance Report, January 2003; American Society of Civil Engineers. ISBN 0-7844-0638-3.
• Therese McAllister (Editor), Federal Emergency Management Agency (U.S.) (Producer), Federal Insurance and Mitigation Administration (U.S.) (Producer) (2002). World Trade Center Building Performance Study: Data Collection, Preliminary Observations, and Recommendations; Federal Emergency Management Agency（United States Government Printing）. ISBN 0-16-067389-5.
• 「“テロリスト”と呼よばれて」（Nスペ）

関連かんれん書籍しょせき

• 青木あおき冨貴子ふきこ「目撃もくげき アメリカ崩壊ほうかい」文春ぶんしゅん新書しんしょ ISBN 978-4166602254
• 堤つつみ未み果はて「グラウンド・ゼロがくれた希望きぼう」ポプラ社ぽぷらしゃ ISBN 4591081419
• 岡崎おかざき玲子れいこ「9・11ジェネレーション ―米国べいこく留学りゅうがく中ちゅうの女子高じょしこう生せいが学まなんだ『戦争せんそう』」集英社しゅうえいしゃ新書しんしょ ISBN 408720233X

脚注きゃくちゅう

関連かんれん項目こうもく

• ワールドトレードセンター爆破ばくは事件じけん
• 外国がいこく情報じょうほう監視かんし法ほう
• アメリカ炭疽たんそ菌きん事件じけん
• テロリズム
• 大量たいりょう殺人さつじん
• アフマド・シャー・マスード
• アイマン・ザワヒリ
• アメリカ新しん世紀せいきプロジェクト (PNAC)
• ボジンカ計画けいかく
• マーシャル・ロー
• グアンタナモ米まい軍ぐん基地きち
• チリ・クーデター（1973年ねんの「9・11」）
• 1945年ねんエンパイア・ステート・ビルディングB-25爆撃ばくげき機き衝突しょうとつ事故じこ - 同おなじニューヨークで起おきた航空機こうくうきのビルへの衝突しょうとつ事故じこ
• 対たいイラク経済けいざい制裁せいさい：UNICEFから多大ただいな犠牲ぎせい者しゃが出でたとの調査ちょうさ結果けっかが出でた。反対はんたい意見いけんもある
• 2002 Tampa Cessna 172 crash - 模倣もほう犯はん

題材だいざいとした作品さくひん

詳細しょうさいは「Category:アメリカ同時どうじ多発たはつテロ事件じけんを題材だいざいとした作品さくひん」を参照さんしょう

外部がいぶリンク

• ９・１１米国べいこく同時どうじ多発たはつテロ - NHK放送ほうそう史し
• 平成へいせい13年ねん（2001）アメリカ同時どうじ多発たはつテロ｜平成へいせい -次代じだいへの道標どうひょう｜NHK NEWS WEB
• Understanding 9/11　A Television News Archive - インターネットアーカイブ
• アメリカ同時どうじ多発たはつテロ事件じけんから20年ねん｜共同通信きょうどうつうしんイメージズ
• 第だい2章しょう国際こくさいテロ情勢じょうせいと警察けいさつの対応たいおう｜警視庁けいしちょう