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軍事 - Wikipedia

軍事ぐんじ

戦争せんそう軍人ぐんじん軍隊ぐんたいなどにかんする事柄ことがら

軍事ぐんじぐんじえい: military affairs: res militaris)とは、戦争せんそう軍人ぐんじん軍隊ぐんたいなどにかんする事柄ことがら総称そうしょうである[1][注釈ちゅうしゃく 1]

概要がいよう

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軍事ぐんじは、公共こうきょうてき利益りえき政治せいじてき重要じゅうようせいともなうものである。軍事ぐんじ民事みんじ[注釈ちゅうしゃく 2]とも国際こくさい関係かんけいあつか分野ぶんやひとつであり、外交がいこう経済けいざいなどとなら政府せいふ主要しゅよう行政ぎょうせい機能きのうひとつに位置いちづけられる[2]軍事ぐんじがなぜ公益こうえき重要じゅうようせいともなっているかを理解りかいするじょうで、フィレンツェの政治せいじ思想家しそうかであるニッコロ・マキアヴェリ見解けんかい参考さんこうとなる。かれは『政略せいりゃくろん』において「たたかいにうったえねばならない場合ばあいに、国民こくみんからなる軍隊ぐんたいをもっていない指導しどうしゃ国家こっかじてしかるべきだとおもう」とろんじている。なぜならば、みずからの安全あんぜん自力じりき確保かくほする意志いしがなければ、国家こっか独立どくりつ平和へいわ期待きたいすることはできないからである[注釈ちゅうしゃく 3]戦争せんそう勃発ぼっぱつすることは不可避ふかひであり、それに対処たいしょするために軍備ぐんび必要ひつようであるという現実げんじつ主義しゅぎ政治せいじ思想しそう軍事ぐんじ基本きほんてきかんがかたとなっている。

軍事ぐんじ基本きほんてき問題もんだいとは軍隊ぐんたい根本こんぽんてき任務にんむである戦争せんそうにおける戦闘せんとう勝利しょうりすることにあると要約ようやくすることができる[注釈ちゅうしゃく 4]。ただしこの基本きほんてき問題もんだいかんしても幅広はばひろ視角しかく存在そんざいしている。たとえば自然しぜん科学かがく視角しかくから軍事ぐんじ問題もんだい観察かんさつすれば、戦場せんじょう地理ちりがくてき特性とくせい戦闘せんとう使用しようされる武器ぶき兵器へいきなどの工学こうがくてき性能せいのう戦闘せんとうりょく戦闘せんとう行動こうどう数学すうがくてき性質せいしつなどの側面そくめんみとめられる[注釈ちゅうしゃく 5]。これに社会しゃかい科学かがく視点してん導入どうにゅうすれば、戦闘せんとう行動こうどうをより大局たいきょくてき観点かんてんから指導しどうしている国家こっか安全あんぜん保障ほしょう政策せいさく国際こくさいほうとの関係かんけい軍隊ぐんたいささえる国家こっか行政ぎょうせい機能きのう戦闘せんとう組織そしきする戦略せんりゃく戦術せんじゅつ、そして作戦さくせん計画けいかく具体ぐたいするための補給ほきゅう輸送ゆそう通信つうしんなどの兵站へいたん活動かつどうなどのおおくの側面そくめんがあることがかる[注釈ちゅうしゃく 6]。さらに人文じんぶん科学かがく視座しざめば、戦争せんそうかんする文学ぶんがくてき記述きじゅつ戦闘せんとう様相ようそうかんする歴史れきしてき観察かんさつ戦闘せんとうにおける兵士へいし心理しんりてき反応はんのうなどの着眼ちゃくがんてん指摘してきすることができる[注釈ちゅうしゃく 7]。つまり軍事ぐんじとは軍隊ぐんたい活動かつどうである戦争せんそう戦闘せんとうにおいて勝利しょうりするための諸々もろもろ問題もんだいであるが、広義こうぎにおいては上記じょうきべたような複雑ふくざつしょ問題もんだいふくんでいる。

複雑ふくざつさにくわえて軍事ぐんじという問題もんだい時代じだいおうじて流動的りゅうどうてきである。軍隊ぐんたい使命しめい歴史れきし変化へんかしつつあり、古代こだいギリシアの歴史れきしヘロドトスが『歴史れきし』で叙述じょじゅつしたペルシア戦争せんそうにおいて軍隊ぐんたいてき軍隊ぐんたい殲滅せんめつすることのみを使命しめいとしていた[3]。しかし近代きんだいにおいてポーランドの戦争せんそう研究けんきゅうしゃイヴァン・ブロッホは『将来しょうらい戦争せんそう』では戦争せんそう軍事ぐんじ技術ぎじゅつ進歩しんぽによって大量たいりょう損害そんがいともな長期ちょうきせん発展はってんするとろんじ、だいいち世界せかい大戦たいせんだい世界せかい大戦たいせん様相ようそう予測よそくした[注釈ちゅうしゃく 8]。また冷戦れいせんうしろではイギリスの軍人ぐんじんルパート・スミスが『軍事ぐんじりょく有用ゆうようせい』で戦争せんそう歴史れきしてき変容へんよう指摘してきしており、戦争せんそう国家こっか武力ぶりょく衝突しょうとつてきぐん殲滅せんめつ領土りょうど占領せんりょう特徴付とくちょうづけられるものではなく、人々ひとびとあいだしょうじる戦争せんそう前線ぜんせん後方こうほう混在こんざいなどに特徴付とくちょうづけられる戦争せんそう変化へんかしているとろんじた[注釈ちゅうしゃく 9]三者さんしゃ一様いちよう戦争せんそうについてろんじているものの、その問題もんだい意識いしきはそれぞれことなっている。ヘロドトスがえがいた戦争せんそうでは戦場せんじょう刀剣とうけんなどで武装ぶそうしたりょうぐん機動きどう打撃だげきおこなっていたが、ブロッホが予測よそくした戦争せんそうにおいては高度こうど火力かりょく戦闘せんとうおこなりょうぐん決定的けっていてき戦果せんかげることができることなくすべての国力こくりょく動員どういんした長期ちょうきせんとなり、スミスの戦争せんそうかんではてき存在そんざい明確めいかく混乱こんらん地帯ちたいにおいて軍隊ぐんたい行動こうどうするというものである。このように軍事ぐんじにおいて問題もんだい意識いしき力点りきてん変化へんかつづけており、現在げんざいにおいてあたらしい課題かだい出現しゅつげんつづけている。

軍事ぐんじ全般ぜんぱんてき理解りかいのために、ここではおも社会しゃかい科学かがく見地けんちからべており、そのためほん項目こうもくでは軍事ぐんじかんする基本きほんてき主題しゅだい戦争せんそう軍事ぐんじシステム、戦争せんそう能力のうりょく軍事ぐんじドクトリンとまとめている。これらよっつの主題しゅだい沿って、戦争せんそう理論りろんてき枠組わくぐみ、戦争せんそうひとつの形態けいたいであるそう力戦りきせん制限せいげん戦争せんそう、ゲリラせん特性とくせい戦争せんそう政治せいじ理論りろんとしての国際こくさい政治せいじ問題もんだい戦争せんそうほう枠組わくぐみ、国防こくぼう基本きほん概念がいねん軍隊ぐんたい制度せいどてきち、指揮しき統制とうせい基本きほんシステム、軍事ぐんじ教育きょういくのありかた政府せいふ軍隊ぐんたい関係かんけい軍事ぐんじ能力のうりょく機能きのう種類しゅるい陸上りくじょう戦力せんりょく海上かいじょう戦力せんりょく航空こうくう戦力せんりょく概念がいねん軍事ぐんじりょくささえる経済けいざいてき基盤きばん、そして軍事ぐんじ行動こうどう指導しどうする安全あんぜん保障ほしょう政策せいさく軍事ぐんじ戦略せんりゃく戦術せんじゅつ兵站へいたん、そして戦争せんそう以外いがい作戦さくせんについて説明せつめいする。詳細しょうさいについては個別こべつ記事きじべている。またほん項目こうもくではげられなかった戦争せんそう軍隊ぐんたい戦闘せんとう歴史れきしてき説明せつめいについては軍事ぐんじを、工学こうがくてき見地けんちもとづく諸々もろもろ装備そうびについては兵器へいきを、各国かっこく軍事ぐんじ情勢じょうせいについては各国かっこく軍事ぐんじ各国かっこく軍隊ぐんたい一覧いちらんから該当がいとうする記事きじ参照さんしょうされたい。

戦争せんそう

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戦争せんそう理論りろん

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戦争せんそう国家こっか存亡そんぼう決定けっていするきわめて重大じゅうだい出来事できごとであることは古来こらいから『孫子まごこ』がろんじてきたことである。戦争せんそうにおいて国家こっかてき軍事ぐんじりょくによって安全あんぜんおびやかされる事態じたい直面ちょくめんするのであり、それは領土りょうど都市とし破壊はかい占領せんりょう国民こくみん生存せいぞんとその財産ざいさん所有しょゆうけん侵害しんがい政治せいじてき自由じゆう独立どくりつ制限せいげんなどの方法ほうほうおこなわれる[注釈ちゅうしゃく 10]同時どうじ戦争せんそう社会しゃかい現象げんしょうなかでもとく分析ぶんせきむずかしい複雑ふくざつ主題しゅだいひとつであり、戦闘せんとうなどの軍事ぐんじてき出来事できごとだけでしょうじるのではなく、対外たいがい政策せいさく国内こくないでの政治せいじ過程かていなどの政治せいじてき文脈ぶんみゃくもとづいて生起せいきするものである。しかもその展開てんかいにおいては戦時せんじ特有とくゆう動員どういん生産せいさんなどの経済けいざいてき要素ようそ国民こくみん心理しんりなどの社会しゃかいてき要素ようそ関連かんれんするものである。しかも戦争せんそう敵国てきこく自国じこく相互そうご作用さようによってしょうじた結果けっかであるため、戦争せんそうにおいて最適さいてき意思いし決定けっていなにであるかを明確めいかく理論りろんすることはできない[注釈ちゅうしゃく 11]。つまり重大じゅうだい戦争せんそう原因げんいんとその実態じったい理解りかいするためには、その複雑ふくざつせい概観がいかんできる理論りろんてき把握はあく必要ひつようとなる。

プロイセンの軍事ぐんじ学者がくしゃカール・フォン・クラウゼヴィッツは『戦争せんそうろん』において戦争せんそう一般いっぱん理論りろん構築こうちくした戦略せんりゃくである。かれにんあいだでの決闘けっとう戦争せんそうをなぞらえたうえで、戦争せんそうとは「てき強制きょうせいしてわれわれの意志いし遂行すいこうさせるためにもちいられる暴力ぼうりょく行為こういである」と説明せつめいしようとした。そして戦争せんそうにおいてしょうじる暴力ぼうりょく相互そうご作用さようによって無制限むせいげん極大きょくだいする法則ほうそくがあることをあきらかにしたうえで、そのような戦争せんそう絶対ぜったい戦争せんそうとして定式ていしきした。絶対ぜったい戦争せんそうでは軍事ぐんじてき合理ごうりせいしたであらゆる事柄ことがら徹底的てっていてき合理ごうりされ、最大限さいだいげん軍事ぐんじりょくてき殲滅せんめつするために使用しようされることになる。ただし戦争せんそうたん軍事ぐんじにおいて完結かんけつする現象げんしょうではないことにクラウゼヴィッツは注意ちゅういはらっており、この絶対ぜったい戦争せんそうのような形式けいしき現実げんじつこっている戦争せんそうとはことなることを認識にんしきしていた。つまり戦争せんそう固有こゆう法則ほうそくしたがって無制限むせいげん暴力ぼうりょくせいたかめるだけではなく、その戦争せんそう行為こうい制限せいげんすることができる政治せいじてき目的もくてきともなうものである。戦争せんそう発生はっせいにはかなら外交がいこうてきまたは経済けいざいてき心理しんりてき情勢じょうせい起因きいんしており、あらゆる戦争せんそう政治せいじてき目的もくてき究極きゅうきょくてきには達成たっせいしようと指導しどうされるものである[5]。このクラウゼヴィッツの戦争せんそう理論りろんは「戦争せんそう手段しゅだんを以ってする政治せいじ継続けいぞくである」と理解りかいされており、戦略せんりゃく研究けんきゅうではひろ参照さんしょうされている。

しかし現代げんだい戦略せんりゃく研究けんきゅうではクラウゼヴィッツが前提ぜんていとしていた主権しゅけん国家こっかによる戦争せんそう戦争せんそうすべてではないことがかっている。国家こっか主体しゅたいによって戦争せんそう遂行すいこうされる可能かのうせい提唱ていしょうしたのは社会しゃかい主義しゅぎ政治せいじイデオロギーをかかげて革命かくめい戦争せんそう指導しどうしたマルクス主義まるくすしゅぎものたちであった。レーニンはクラウゼヴィッツが定式ていしきした戦争せんそう政治せいじ関係かんけいさい解釈かいしゃくし、政治せいじ武力ぶりょくによらない戦争せんそう戦争せんそう武力ぶりょくによる政治せいじであるととらえて革命かくめい戦争せんそう理論りろん適用てきようした。このことでパルチザン部隊ぶたいによる戦争せんそう形態けいたい成立せいりつすることになり、国家こっか国家こっか戦争せんそうという図式ずしき陳腐ちんぷすることになった[注釈ちゅうしゃく 12]。またクラウゼヴィッツにたいする批判ひはん展開てんかいする戦略せんりゃく研究けんきゅうしゃマーチン・ファン・クレフェルトは『戦争せんそう変遷へんせん』において戦争せんそう歴史れきしてき事例じれいもとづいて理論りろん構築こうちくしている。クラウゼヴィッツの戦争せんそう理論りろんでの国家こっか前提ぜんてい政府せいふ軍隊ぐんたい国民こくみんから成立せいりつしている三位一体さんみいったい戦争せんそうモデルであったが、クレフェルトは三位一体さんみいったい戦争せんそう存在そんざいすることを指摘してきしており、したがってクラウゼヴィッツの理論りろん主権しゅけん国家こっかによる戦争せんそう限定げんていされたモデルであるとろんじている。つまりかならずしも戦争せんそう理性りせいてき政治せいじ延長えんちょうではなく、むしろ宗教しゅうきょう正義まさよしなどの価値かちかん実現じつげんするための手段しゅだんとしておこなわれているものとかんがえる[注釈ちゅうしゃく 13]

そう力戦りきせん

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そう力戦りきせん (Total war) とは戦争せんそうりうる形態けいたいひとつであり、軍事ぐんじりょく行使こうしだけでなく、軍事ぐんじりょくささえる経済けいざいてき基盤きばん構成こうせいする工業こうぎょう生産せいさんりょく労働ろうどうりょく総動員そうどういん民間みんかんじん全国ぜんこくてき戦争せんそう協力きょうりょく、そして戦争せんそう遂行すいこう正当せいとうするためのイデオロギー思想しそう宣伝せんでん活動かつどうなどをともなうような、国家こっか総力そうりょくげる戦争せんそう遂行すいこう形式けいしきである。このような概念がいねん提唱ていしょうしたのはだいいち世界せかい大戦たいせん敗北はいぼくしたドイツぐん指導しどうした軍人ぐんじんエーリッヒ・ルーデンドルフであった。ルーデンドルフは著作ちょさくそう力戦りきせん』のなかだいいち世界せかい大戦たいせん契機けいき戦争せんそう主体しゅたい政府せいふ軍隊ぐんたいだけではなく民衆みんしゅうんで遂行すいこうされる形式けいしきへと変化へんかしたことを指摘してきし、これをそう力戦りきせん命名めいめいした[注釈ちゅうしゃく 14]そう力戦りきせん概念がいねんせいとは従来じゅうらい戦争せんそう戦場せんじょうでの軍事ぐんじ行動こうどう完結かんけつしていたものから、銃後じゅうご経済けいざい活動かつどう生活せいかつまでもが軍事ぐんじ行動こうどうむすけられたことである。したがって、そう力戦りきせんにおいては海上かいじょう封鎖ふうさ戦略せんりゃく爆撃ばくげきのようにてき経済けいざい活動かつどう破壊はかいするための行動こうどう継続けいぞくてきおこなわれ、またてき抗戦こうせん意志いし減耗げんもうさせるためにラジオビラなどのマスメディア利用りようした思想しそう宣伝せんでん実施じっしする。これらに対抗たいこうするために経済けいざい活動かつどう政府せいふにより統制とうせいされ、人員じんいん物資ぶっし情報じょうほうなどは軍事ぐんじ作戦さくせん支援しえんするために配分はいぶん管理かんりされる。ルーデンドルフはとくにドイツ敗戦はいせんまねいた原因げんいんとして革命かくめい運動うんどう指示しじするような思想しそうてき要因よういん重要じゅうようしており、国民こくみん士気しき低下ていかはドイツぐん士気しきそのものに悪影響あくえいきょうおよぼしていたとべている。そのためにそう力戦りきせん遂行すいこうするためには総力そうりょく政治せいじ不可欠ふかけつであると主張しゅちょうしている。総力そうりょく政治せいじそう力戦りきせんかかわるあらゆる要素ようそ統制とうせいする機能きのうになっており、単独たんどく指導しどうしゃによって総力そうりょく政治せいじ実践じっせんされなければならない。つまりそう力戦りきせんとは従来じゅうらい武力ぶりょく紛争ふんそうだけではなく、経済けいざい紛争ふんそう情報じょうほう紛争ふんそう結合けつごうしたふくあいてき戦争せんそうのありかたであり、核兵器かくへいき存在そんざいする現代げんだいにおいてはかく戦争せんそう意味いみするものである。

制限せいげん戦争せんそう

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制限せいげん戦争せんそう (Limited war) とは軍事ぐんじりょく抑制よくせいてき行使こうしすることで、戦争せんそうのエスカレーションを制御せいぎょすることを可能かのうとする戦争せんそう形態けいたい一種いっしゅである。アメリカの外交がいこうかんヘンリー・キッシンジャーは『核兵器かくへいき外交がいこう政策せいさく』このような戦争せんそうを「特定とくてい政治せいじ目的もくてきのため(中略ちゅうりゃく相手あいて意志いししつぶすのではなく、影響えいきょうおよぼし、せられる条件じょうけん抵抗ていこうするより魅力みりょくてきであるとおもわせ、特定とくてい目標もくひょう達成たっせいせんとする」戦争せんそう描写びょうしゃした。つまり限定げんてい戦争せんそう主眼しゅがんとは、軍事ぐんじりょくだけでてき意志いし全面ぜんめんてき強制きょうせいするのではなく、外交がいこう交渉こうしょうまじえながら軍事ぐんじ作戦さくせん遂行すいこうすることで、目標もくひょう達成たっせいする手段しゅだんとして戦争せんそう規模きぼ程度ていど抑制よくせいすることにある。キッシンジャーは核兵器かくへいき登場とうじょうによって戦争せんそうそのものが遂行すいこう不可能ふかのうになるという見解けんかい退しりぞけ、この限定げんてい戦争せんそうもとづいた限定げんていかく戦争せんそうという戦争せんそう方式ほうしき提唱ていしょうした[6]事実じじつ核兵器かくへいき登場とうじょうしてからも朝鮮ちょうせん戦争せんそうインドシナ戦争せんそうなどの戦争せんそう勃発ぼっぱつしており、これらは限定げんてい戦争せんそう形式けいしきのっとって遂行すいこうされている。限定げんてい戦争せんそうりたせている外交がいこう通常つうじょう外交がいこう区別くべつされており、アメリカの政治せいじ学者がくしゃアレキサンダー・ジョージなどの研究けんきゅうしゃたちによって強制きょうせい外交がいこうばれている[注釈ちゅうしゃく 15]強制きょうせい外交がいこうてきとのあいだ成立せいりつするためには、彼我ひが双方そうほうにとって軍事ぐんじ行動こうどうともな損害そんがい抑制よくせいする意図いと共有きょうゆうしなければならず、戦略せんりゃくぼうぜい立場たちばるために作戦さくせん主導しゅどうけん喪失そうしつする危険きけんともなうが、そう力戦りきせんくらべて最小限さいしょうげん費用ひよう危険きけん目的もくてき達成たっせいする選択肢せんたくしとされている。

ゲリラ戦争せんそう

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ゲリラ戦争せんそう(Guerrilla Warfare)[注釈ちゅうしゃく 16]または革命かくめい戦争せんそうとは本質ほんしつてき国家こっかたいする国家こっか主体しゅたいにより遂行すいこうされる戦争せんそう形態けいたいである。このような戦争せんそう形態けいたい成立せいりつした背景はいけいにはマルクス主義まるくすしゅぎ指向しこうする政治せいじ運動うんどうがあり、ロシア革命かくめいキューバ革命かくめい国共こっきょう内戦ないせんなどの革命かくめい勃発ぼっぱつしたことで、ゲリラ戦争せんそうのありかた研究けんきゅうされてきた。革命かくめいでありながらゲリラ戦争せんそう理論りろん確立かくりつした毛沢東もうたくとうはゲリラ戦争せんそうには正規せいきぐんによって遂行すいこうされる在来ざいらい戦争せんそうとはことなる背景はいけいった固有こゆう領域りょういきがあることを指摘してきし、『ゆうげきせんろん』でこの問題もんだい論考ろんこうしている。ゲリラ戦争せんそう特徴とくちょうとは戦略せんりゃくぼうぜい立場たちばかれながらも、分散ぶんさんされた小規模しょうきぼ部隊ぶたいによる急襲きゅうしゅうてき連続れんぞくてき損害そんがいいることで戦争せんそうそのものを主導しゅどうすることにある。したがって、ゲリラ戦争せんそうにおいて短期たんき決戦けっせん発生はっせいせず、決戦けっせん想定そうていした戦闘せんとう部隊ぶたいかならずしも優位ゆういではなくなる[注釈ちゅうしゃく 17]革命かくめいチェ・ゲバラは『ゲリラ戦争せんそう』においてゲリラ戦争せんそう成立せいりつさせるための戦略せんりゃく戦術せんじゅつについてろんじている。そこではけるたたかいをけ、つねゆうげきし、てきから武器ぶき略取りゃくしゅし、行動こうどう秘匿ひとくし、奇襲きしゅう活用かつようするというゲリラせん原則げんそくしめされている。ゲリラ戦争せんそう戦略せんりゃくてきにはぼうぜいかれるが、しかしいちげき離脱りだつかえすゲリラ戦士せんしけっして包囲ほうい殲滅せんめつされることはないために、戦争せんそう主導しゅどうけん維持いじすることができる[注釈ちゅうしゃく 18]

戦争せんそうほう

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戦争せんそうほうとは戦争せんそう行為こうい規制きせいする戦時せんじにおける国際こくさいほうである。これは今日きょうでは武力ぶりょく紛争ふんそうほう人道じんどう国際こくさいほうともばれる場合ばあいがある。現実げんじつ主義しゅぎ立場たちばつならば、戦争せんそう本質ほんしつてきには道徳どうとく法律ほうりつによって規制きせいすることはできるものではない。したがって戦争せんそうほう存在そんざいする価値かちみとめることはできないものである。しかしながら、国際こくさい政治せいじがくにおけるもうひとつの立場たちばである理想りそう主義しゅぎ立脚りっきゃくするならば、戦争せんそうけっして許容きょようできないものである。このようなかんがかた人文じんぶん主義しゅぎものエラスムスが『平和へいわうったえ』において「およそいかなる平和へいわも、たとえそれがどんなにただしくないものであろうと、もっとただしいとされる戦争せんそうよりはいものなのです」とろんじたことで表現ひょうげんされる[7]戦争せんそう回避かいひするためにあらゆる戦争せんそう行為こういきんじられなければならない。しかしこの現実げんじつ主義しゅぎ理想りそう主義しゅぎのような全面ぜんめんてき肯定こうてい否定ひていあいだつもうひとつの立場たちばがある。それは国際こくさい法学ほうがくしゃフーゴー・グロティウスが「ふたつの極端きょくたんせつ治療ちりょうほどこし、なにもゆるされないとか、すべてがゆるされる、などとしんむことがないようにしなければならない」と表現ひょうげんした、条件じょうけんきで戦争せんそう行為こうい許容きょようする立場たちばである[8]。その条件じょうけん法的ほうてき理論りろんとして発展はってんさせたものが戦争せんそうほうであるとえる。

戦争せんそうほうには開戦かいせん法規ほうき交戦こうせん法規ほうきというふたつの基本きほんてき部門ぶもんがある。開戦かいせん法規ほうきとはどのような場合ばあいにおいて戦争せんそう開始かいしすることができるのかをさだめたほうであり、交戦こうせん法規ほうきはどのような手段しゅだんによって戦争せんそう遂行すいこうすることができるのかをさだめるほうである。開戦かいせん法規ほうきかんしては主権しゅけん国家こっか政策せいさく手段しゅだんとして戦争せんそううったえる権利けんりっていたが、1929ねんの「戦争せんそう放棄ほうきせきスル条約じょうやく」によって武力ぶりょく行使こうし違法いほうすすみ、現在げんざいでは国連こくれん憲章けんしょうした他国たこく領土りょうど保全ほぜん政治せいじてき独立どくりつたいする武力ぶりょく行使こうし国連こくれん国際こくさい平和へいわ維持いじするという目的もくてき相反あいはんする武力ぶりょく行使こうし違法いほうした。もし国家こっか侵略しんりゃくけた場合ばあいには個別こべつてき集団しゅうだんてき自衛じえいけん行使こうしして防衛ぼうえいすることができるが、同時どうじ国連こくれん侵略しんりゃくこくたいして集団しゅうだん安全あんぜん保障ほしょうもとづいて武力ぶりょく制裁せいさいふくめた制裁せいさい措置そち可能かのうである。ただし自衛じえいけん行使こうしする判断はんだん国家こっか判断はんだんすることができるが、国連こくれん制裁せいさい措置そちおこな場合ばあいには安全あんぜん保障ほしょう理事りじかいによる決議けつぎ必要ひつようであり、常任じょうにん理事りじこく全員ぜんいん同意どうい必要ひつようである。

交戦こうせん法規ほうきかんしては、もともとは騎士きしどう規範きはんもとづいて人道的じんどうてき殺戮さつりく破壊はかい活動かつどう規制きせいしていたが、近代きんだい軍事ぐんじ技術ぎじゅつ発達はったつによって戦闘せんとう様相ようそう変化へんかするとあたらしく交戦こうせん法規ほうき確立かくりつしなければならなくなった。交戦こうせん法規ほうき一般いっぱんてき原則げんそく効率こうりつせい人道じんどうせい均衡きんこうある両立りょうりつであり、これは攻撃こうげき目標もくひょう選定せんていする場合ばあいにおいて、任務にんむ達成たっせいのために市街地しがいち軍事ぐんじ基地きちふたつが選択せんたく可能かのうであるならば、必要ひつよう犠牲ぎせい可能かのうせいがよりすくない軍事ぐんじ基地きち攻撃こうげきするべきであるという原則げんそくである。交戦こうせん法規ほうき大系たいけいにおいては攻撃こうげき目標もくひょう攻撃こうげき禁止きんし目標もくひょう合法ごうほうてき戦闘せんとう手段しゅだん方法ほうほう戦闘せんとういん保護ほご中立ちゅうりつこく権利けんり保護ほごなどの細目さいもくがあり、これらの規則きそく作戦さくせん行動こうどうにおいて指揮しきかん責任せきにんを以って遵守じゅんしゅしなければならない。この戦時せんじ国際こくさいほうたいする違反いはんがあり、その行為こうい責任せきにんしゃがいる場合ばあいには、戦争せんそう犯罪はんざいとしてさばかれなければならない。1990年代ねんだい戦争せんそう犯罪はんざいへの措置そち強化きょうかされ、ボスニア・ヘルツェゴビナで人道的じんどうてき紛争ふんそう発生はっせいしたさいには国連こくれん安全あんぜん保障ほしょう理事りじかい国際こくさい裁判所さいばんしょ設立せつりつして戦犯せんぱんさばき、1998ねんには常設じょうせつ国際こくさい刑事けいじ裁判所さいばんしょ既定きてい国連こくれん外交がいこう会議かいぎ採択さいたくされた。

軍事ぐんじシステム

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国防こくぼう

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国防こくぼうとは脅威きょういたいして国家こっか安全あんぜん確保かくほすることであり、幅広はばひろ範囲はんいとらえられる国家こっか安全あんぜん保障ほしょう意味いみもちいられる場合ばあい軍事ぐんじりょくによる防衛ぼうえい意味いみもちいられる場合ばあいがある。ここでの国家こっかとは領域りょういき国民こくみん主権しゅけんさん要素ようそからっている政治せいじてき共同きょうどうたいである。領域りょういき国家こっか排他はいたてき支配しはいけんおよ地理ちりてき範囲はんいであり、領土りょうど領海りょうかい領空りょうくう区別くべつされる。領域りょういきにおいて生活せいかつする国家こっか構成こうせいいんとは国民こくみんであり、国民こくみんはその国家こっか主権しゅけん服従ふくじゅうする。国家こっか主権しゅけんとは国家こっかのありかた国家こっか構成こうせいいん政治せいじ決定けっていする権利けんりであり、その具体ぐたいてき構成こうせい国家こっか体制たいせいによってこくごとにことなっている。このように成立せいりつしている国家こっか内部ないぶてき構成こうせい概観がいかんすれば、国家こっか物理ぶつりてき手段しゅだんによって打撃だげきあたえることができることがかる。国家こっか領域りょういき奪取だっしゅ国民こくみん殺傷さっしょうによってその統治とうち能力のうりょく低下ていかさせる可能かのうせいがありうるのであり、そのような事態じたい対処たいしょするために国防こくぼう準備じゅんび必要ひつようとなる[注釈ちゅうしゃく 19]

国防こくぼう国家こっかたんまもることではなく、脅威きょういから国家こっかまもることである。国防こくぼうにおいて脅威きょういとは国家こっか存続そんぞく利益りえきおびやかす他者たしゃ存在そんざい能力のうりょく行動こうどうす。それは武力ぶりょくによる威嚇いかく領空りょうくう侵犯しんぱん領海りょうかい侵犯しんぱん海上かいじょう交通こうつうでの通商つうしょう破壊はかいミサイル航空機こうくうきによる攻撃こうげき全面ぜんめんてき武力ぶりょく行使こうし、などの軍事ぐんじてき脅威きょういおもなものである。ただし、海上かいじょう封鎖ふうさなどによる経済けいざい制裁せいさい経済けいざいてき脅威きょういだい規模きぼ内乱ないらんなどの政治せいじてき脅威きょういなどの存在そんざい指摘してきすることもできるが[注釈ちゅうしゃく 20]、ここでは軍事ぐんじてき脅威きょういについてべる。軍事ぐんじてき脅威きょうい程度ていど判断はんだんする基礎きそ軍事ぐんじりょくとそれを行使こうしする意志いしである。軍事ぐんじりょく現有げんゆう兵力へいりょく動員どういん兵力へいりょく装備そうび兵員へいいん配備はいびじょうきょうなどから定量ていりょうてき評価ひょうかすることが可能かのうである。しかし意志いしについては相手あいてこく政策せいさく決定けっていしゃ思考しこうから評価ひょうかするしかなく、そのために国家こっか政策せいさく作戦さくせん計画けいかくなどから定性的ていせいてき推測すいそくすることになり、判断はんだんむずかしい。また環境かんきょう条件じょうけん相手あいてこくにとって有利ゆうりかどうかも重要じゅうよう判断はんだん材料ざいりょうとなる。国際こくさい環境かんきょう不安定ふあんてい国家こっか内部ないぶ分裂ぶんれつによる外部がいぶ勢力せいりょく介入かいにゅうなどは進攻しんこう決定けっていするさい有利ゆうり一般いっぱん情勢じょうせいである。

国防こくぼう脅威きょういから国家こっかまもることであるが、そのためには手段しゅだん必要ひつようである。その手段しゅだんとして軍事ぐんじりょく中心ちゅうしんであるとかんがえられているが、軍事ぐんじてき要素ようそについても注目ちゅうもくされている。政治せいじ学者がくしゃモーゲンソーは国家こっか国力こくりょく構成こうせい要素ようそとして軍備ぐんび以外いがい地理ちり人口じんこう工業こうぎょうちから資源しげん国民こくみんせい国民こくみん士気しき政府せいふ外交がいこう性質せいしつげており、また政治せいじ学者がくしゃクラインも領土りょうど人口じんこう経済けいざいりょく国家こっか戦略せんりゃく遂行すいこうする意志いし戦略せんりゃく目的もくてきという構成こうせい要素ようそ列挙れっきょしている。このような幅広はばひろ国力こくりょく要素ようそ出現しゅつげんした背景はいけいにはそう力戦りきせん革命かくめい戦争せんそうかく戦争せんそう特徴付とくちょうづけられるように、戦争せんそう範囲はんい戦闘せんとうだけでない社会しゃかい全体ぜんたいおよぶように変化へんかしたことが理由りゆうとしてげられる。このような国防こくぼう能力のうりょく使用しようする国防こくぼう政策せいさくとして単独たんどくによる国防こくぼうだけではなく、同盟どうめいによる共同きょうどう防衛ぼうえい集団しゅうだんてき安全あんぜん保障ほしょう中立ちゅうりつ政策せいさくなどがある。

軍隊ぐんたい

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軍隊ぐんたい一定いってい規律きりつ組織そしきもとづいて編制へんせいされた武装ぶそう組織そしきである。しかし今日きょう軍隊ぐんたいはそれ自体じたい独立どくりつした組織そしきではなく、国家こっか枠組わくぐみにもとづいて政府せいふ組織そしき権力けんりょくした組織そしきされている。したがってその組織そしきのありかたくにによってさまざまであり、その社会しゃかい事情じじょう関連かんれんして社会しゃかい階層かいそう部隊ぶたい編制へんせい反映はんえいされている場合ばあいや、政治せいじ権力けんりょく一体化いったいかしている場合ばあいもある。アケメネスあさ軍隊ぐんたい貴族きぞくである騎兵きへい部隊ぶたい主力しゅりょくとなり、農奴のうどから構成こうせいされる歩兵ほへい部隊ぶたい補助ほじょてき役割やくわりまかせられていたが、始皇帝しこうてい一般いっぱん公募こうぼ応募おうぼした人々ひとびと編制へんせいされた軍隊ぐんたい中国ちゅうごく統一とういつした。中世ちゅうせいヨーロッパでは封建ほうけんせい背景はいけいとした騎士きし階級かいきゅう軍事ぐんじてき義務ぎむたし、名誉めいよみとめられていた。しかし近代きんだいにおいてあたらしい軍事ぐんじ技術ぎじゅつである小銃しょうじゅう火砲かほう戦闘せんとう導入どうにゅうされ、フランスの軍人ぐんじんギベールが『戦術せんじゅつ一般いっぱんろん』がべたような国民こくみんぐんフランス革命かくめい契機けいき成立せいりつすると、そのヨーロッパ諸国しょこくもその軍制ぐんせい移行いこうしていく[注釈ちゅうしゃく 21]近代きんだいヨーロッパの情勢じょうせい背景はいけいとした軍事ぐんじ制度せいどについてスイスの軍人ぐんじんジョミニ軍隊ぐんたい構成こうせい要素ようそ列挙れっきょしている。それは徴募ちょうぼ組織そしき部隊ぶたい編成へんせい予備よびやく行政ぎょうせい管理かんり軍紀ぐんき報酬ほうしゅう制度せいど砲兵ほうへい工兵こうへいなどの特技とくぎ兵科へいか攻防こうぼう両面りょうめんにおける装備そうび戦術せんじゅつ教育きょういく機能きのうそなえた参謀さんぼう本部ほんぶ兵站へいたん組織そしき指揮しき系統けいとう制度せいど国民こくみん戦闘せんとう精神せいしん喚起かんきすることである[注釈ちゅうしゃく 22]。これら要素ようそそなえていることが、ジョミニが強調きょうちょうしているように近代きんだいぐんとして不可欠ふかけつ要素ようそであるとかんがえられる。

軍隊ぐんたい組織そしき理論りろん観点かんてんからるならば、軍隊ぐんたい組織そしきとしてはドイツの社会しゃかい学者がくしゃマックス・ヴェーバー定式ていしきした官僚かんりょうせいのモデルの典型てんけいれいである。つまり規則きそくによる職務しょくむ権限けんげん配分はいぶん階級かいきゅう制度せいどもとづいた指揮しき系統けいとう文章ぶんしょうによる事務じむ処理しょり専門せんもんせいそなえた職員しょくいん公平こうへい選抜せんばつなどの合理ごうりてき組織そしき運営うんえいおこなわれている組織そしきである。同時どうじ軍隊ぐんたい専門せんもんてき職業しょくぎょう団体だんたいでもあり、アメリカの政治せいじ学者がくしゃサミュエル・ハンチントン軍隊ぐんたい暴力ぼうりょく管理かんりかんする専門せんもん知識ちしき責任せきにん団体だんたいせいそなえた職業しょくぎょう集団しゅうだんであることを将校しょうこうだん分析ぶんせきから論証ろんしょうした。独自どくじ行動こうどう様式ようしき参加さんか手続てつづき共通きょうつう経験けいけん職業しょくぎょう集団しゅうだんであるために軍事ぐんじ問題もんだいとくした組織そしきてき能力のうりょく発揮はっきすることが可能かのうであり、このような軍隊ぐんたい職業しょくぎょうてき性格せいかくこそが近代きんだいぐん基礎きそとなった。プロイセンが創設そうせつした軍事ぐんじがく研究けんきゅう機関きかんである陸軍りくぐん大学だいがく参謀さんぼう本部ほんぶ職業しょくぎょう軍人ぐんじん育成いくせいするための機関きかんであり、ドイツの軍人ぐんじんモルトケシュリーフェン職業しょくぎょう軍人ぐんじんとしての立場たちば政治せいじ野心やしんつべきではないという軍人ぐんじん職業しょくぎょう倫理りんり模範もはんしめした[注釈ちゅうしゃく 23]

軍隊ぐんたい組織そしき構造こうぞう地域ちいき時代じだいによってそれぞれことなるが、軍隊ぐんたい文民ぶんみん組織そしきとはことなる固有こゆう組織そしき構造こうぞう形成けいせいしている。軍隊ぐんたい体制たいせい軍事ぐんじ作戦さくせん部門ぶもん軍事ぐんじ行政ぎょうせい部門ぶもん、そして軍事ぐんじ司法しほう部門ぶもん大別たいべつすることができる[注釈ちゅうしゃく 24]軍隊ぐんたいにおいて軍事ぐんじ作戦さくせんもっと基本きほんてき部門ぶもんであり、幕僚ばくりょうによって補佐ほさされた指揮しきかん任務にんむ達成たっせいするために部隊ぶたい指揮しきする。かく部隊ぶたいにはさらに下級かきゅう部隊ぶたい組織そしきされていることによって指揮しき系統けいとう形成けいせいされている。軍事ぐんじ行政ぎょうせい部門ぶもんにおいては、部隊ぶたい予算よさん兵員へいいん装備そうび提供ていきょうすることは軍隊ぐんたいではなく国防省こくぼうしょう防衛ぼうえいしょうなどの行政ぎょうせい機関きかんによって実施じっしされる。軍事ぐんじ行政ぎょうせい政府せいふ一員いちいんである大臣だいじん指導しどうする官僚かんりょうによって軍事ぐんじりょく開発かいはつ維持いじ管理かんりする。くわえて軍事ぐんじ司法しほう部門ぶもんにおいては立法府りっぽうふによって制定せいていされた軍法ぐんぽう部隊ぶたい服従ふくじゅうしなければならない。フランスの軍人ぐんじんマルモンは軍隊ぐんたいこった犯罪はんざい国家こっか司法しほうけん軍隊ぐんたい指揮しきけん調整ちょうせいしながらほうもとづいてさばかなければならないと『軍制ぐんせいようろん』でろんじている。軍法ぐんぽう任務にんむ放棄ほうき敵前てきぜん逃亡とうぼう利敵りてき行為こういなどの行為こうい軍事ぐんじ犯罪はんざいさだめており、軽微けいび犯罪はんざいであればその部隊ぶたい指揮しきかん決裁けっさいによって処罰しょばつすることができるが、重大じゅうだい軍事ぐんじ犯罪はんざいであるとなされれば軍法ぐんぽう会議かいぎ召集しょうしゅうされ、その判決はんけつもとづいてけい執行しっこうされることになる[注釈ちゅうしゃく 25]

指揮しき統制とうせい

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軍事ぐんじシステムにおいて指揮しき統制とうせいとは指揮しきかん任務にんむ達成たっせいするために隷下れいか部隊ぶたい作戦さくせん運用うんよう指導しどうするために必要ひつよう施設しせつ通信つうしん人員じんいん、そして手順てじゅん総体そうたいであり、軍隊ぐんたい神経しんけいけいうべき機能きのうたしている。この指揮しき統制とうせいふくあいてき機能きのう整理せいりすると、それは指揮しき統制とうせい通信つうしんコンピュータそして諜報ちょうほう機能きのうからっており、英語えいご頭文字かしらもじからC4Iシステム要約ようやくされる。このシステムにもとづいて情報じょうほう資料しりょう諜報ちょうほうにより獲得かくとくし、コンピュータにより情報処理じょうほうしょりおこなったうえ指揮しきかんはそれを通信つうしんらされる。そして意思いし決定けっていくだったのちにはふたた通信つうしんによってかく部隊ぶたいたいして指揮しきけんもとづいて命令めいれいかく部隊ぶたいはっせられる。これはかならずしも近代きんだい以後いご軍事ぐんじ技術ぎじゅつだけに合致がっちする概念がいねんではなく、古代こだい軍事ぐんじ組織そしきにおいても指揮しきかん歩哨ほしょう間諜かんちょうがもたらす報告ほうこくを、伝令でんれい狼煙のろし音響おんきょうによって通信つうしん伝達でんたつされ、幕僚ばくりょう軍師ぐんしによる状況じょうきょう分析ぶんせき参考さんこうにしながら状況じょうきょう判断はんだんおこなって命令めいれいはっしていた。現代げんだいではこの情報じょうほうのやりりをさらに発展はってんさせ、国防こくぼう体制たいせいにおいて指揮しき統制とうせい体系たいけい早期そうき警戒けいかい衛星えいせいシステムや長距離ちょうきょりレーダーなどの諜報ちょうほう活動かつどう手段しゅだん活用かつようし、専門せんもんされた情報じょうほう分析ぶんせきかんから情報じょうほう機関きかん情報じょうほう資料しりょう分析ぶんせきし、幕僚ばくりょう本部ほんぶ安全あんぜん保障ほしょう会議かいぎ指揮しきかん補佐ほさし、しかも無線むせん中継ちゅうけいシステムにより通信つうしんもう確保かくほしているために、より迅速じんそく詳細しょうさい意思いし決定けってい大量たいりょう情報じょうほう伝達でんたつ可能かのうとなっている。

軍事ぐんじ教育きょういく

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軍事ぐんじ教育きょういくとは軍人ぐんじん必要ひつよう能力のうりょく付与ふよするための教育きょういく訓練くんれん演習えんしゅう体系たいけいである。軍事ぐんじ教育きょういく重要じゅうようせい古代こだいギリシアから認識にんしきされており、体力たいりょく戦闘せんとう技術ぎじゅつねりし、部隊ぶたい団結だんけつ規律きりつたかめることで戦闘せんとうりょく改善かいぜんすることが軍隊ぐんたいおこなわれていた。マキアヴェッリは国民こくみんぐん創設そうせつにあたって軍事ぐんじ教育きょういく重要じゅうようせい指摘してきし、部隊ぶたいたびおうじて教育きょういく水準すいじゅん段階だんかいてきたかめることをしめしている。オランダぐんマウリッツおおやけ基本きほん教練きょうれん教範きょうはんるいとしてまとめたことで、規律きりつただしく部隊ぶたい行動こうどうさせる操典そうてん各国かっこくぐん確立かくりつされていった。またプロイセンぐんではシャルンホルストなどの功績こうせきにより高級こうきゅう指揮しきかん育成いくせいする陸軍りくぐんだい学校がっこう創設そうせつされ、高級こうきゅう将校しょうこう教育きょういく原型げんけい確立かくりつしている。このような軍事ぐんじ教育きょういく整備せいびがなされるようになった背景はいけいには18世紀せいきにおける軍事ぐんじ科学かがく成立せいりつがあり、ビューローロイドギベールなどが展開てんかいした科学かがくてき方法ほうほう重要じゅうようした軍事ぐんじ思想しそうによって、それまで断片だんぺんてきであった経験けいけん知識ちしき概念がいねんモデル理論りろんもとづいて体系たいけいされていった。軍隊ぐんたいおこなわれている教育きょういく体系たいけいはまず陸海空りくかいくうぐん設置せっちされた教育きょういく部隊ぶたい基本きほん教練きょうれん基礎きそてき歩兵ほへいとしての戦闘せんとう訓練くんれんなどを新兵しんぺい教育きょういく課程かていけることになる。しかし陸海空りくかいくうぐんぐんしゅ、そして兵卒へいそつ下士官かしかん将校しょうこうという階級かいきゅうによってその訓練くんれん内容ないよう細分さいぶんされており、小銃しょうじゅう射撃しゃげき能力のうりょく付与ふよする射撃しゃげき訓練くんれんからだい規模きぼ戦力せんりょく運用うんようする能力のうりょく付与ふよする図上ずじょう戦術せんじゅつまでかれている。これら教育きょういく訓練くんれん付与ふよされた能力のうりょく評価ひょうかする方法ほうほうとして閲兵えっぺい想定そうていされた状況じょうきょう実際じっさい行動こうどうする軍事ぐんじ演習えんしゅう実施じっしすることがおこなわれている。

せいぐん関係かんけい

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せいぐん関係かんけいとは政府せいふ軍隊ぐんたい関係かんけいのありかたであり、政治せいじはあらゆる軍事ぐんじ行動こうどう上位じょうい位置いちして目標もくひょう規定きていするべきであるとかんがえられている。その理由りゆうとしてクラウゼヴィッツの「戦争せんそう手段しゅだんを以ってする政治せいじ延長えんちょうである」という命題めいだい引用いんようできる。軍事ぐんじりょく侵略しんりゃく防衛ぼうえいのために運用うんようされるものであるが、それは政治せいじ意志いし従属じゅうぞくするものであり、このことは文民ぶんみん統制とうせい理念りねんとしてられている。ハンチントンは『軍人ぐんじん国家こっか』において軍隊ぐんたい本来ほんらいてきなありかたについて職業しょくぎょう主義しゅぎ概念がいねん使用しようして分析ぶんせきしている。そして軍隊ぐんたい軍事ぐんじてき職業しょくぎょう主義しゅぎ最大限さいだいげん発揮はっきすることで軍隊ぐんたい軍事ぐんじ専門せんもんし、政治せいじ介入かいにゅうする動機どうき機会きかいうしなわれるとろんじた。このような職掌しょくしょう主義しゅぎ最大さいだいするせいぐん関係かんけいをもたらすための文民ぶんみん統制とうせい客体かくたいてき文民ぶんみん統制とうせいんでおり、これは主体しゅたいてき政府せいふ軍隊ぐんたい介入かいにゅうするのではなく、政府せいふ軍隊ぐんたい分離ぶんりしたうえ客体かくたいとして統制とうせいする方式ほうしきである[9]

ただしこのハンチントンの客体かくたいてき文民ぶんみん統制とうせいとそれによりもたらされる職業しょくぎょう主義しゅぎ概念がいねん批判ひはんけている。社会しゃかい学者がくしゃジャノヴィッツはそもそも軍人ぐんじん政治せいじすることは不可避ふかひてき事態じたいであり、軍人ぐんじん国益こくえき保護ほごしゃである以上いじょう政治せいじ決定けっていたいして国益こくえき保護ほごするように介入かいにゅうする権利けんりっているとかんがえる。そのため、軍人ぐんじん文民ぶんみん価値かちかんつことで文民ぶんみん統制とうせい実現じつげんされると主張しゅちょうした。そして具体ぐたいてきには軍隊ぐんたいたいして行政ぎょうせい立法府りっぽうふ監視かんしつよめ、軍隊ぐんたい職業しょくぎょう訓練くんれん文民ぶんみん介入かいにゅうすること有効ゆうこうせいべている。またファイナーはさまざまなぐんによるクーデタ事例じれいしめしながら軍隊ぐんたい政治せいじ介入かいにゅう防止ぼうしするために文民ぶんみん絶対ぜったいてき優位ゆういせい軍人ぐんじん従属じゅうぞくしなければならないとろんじた。ファイナーも『馬上もうえひと』において軍人ぐんじん政治せいじ介入かいにゅうすることは軍人ぐんじん宿命しゅくめいであり、とく政治せいじ文化ぶんか未熟みじゅく国家こっかにおいては文民ぶんみん政治せいじにはそれほど正統せいとうせいみとめられないために政治せいじ介入かいにゅういた傾向けいこうがあるとかんがえた[10]

戦争せんそう能力のうりょく

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軍事ぐんじりょく

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軍事ぐんじりょくとは平時へいじ戦時せんじにおいて国家こっか政策せいさく目標もくひょう達成たっせいまたは支援しえんするために活用かつようされる能力のうりょくであり、これは政治せいじてき経済けいざいてき社会しゃかいてき軍事ぐんじてき資源しげんから構成こうせいされている。根本こんぽんてき軍事ぐんじりょくとは人間にんげん装備そうびから組織そしきされた暴力ぼうりょくであり、この組織そしきてき技術ぎじゅつてき組合くみあわせや計画けいかくてき運用うんようによって平時へいじでの抑止よくし危機きき管理かんり戦争せんそうでの攻撃こうげき防御ぼうぎょなどの能力のうりょく左右さゆうされる。軍事ぐんじりょく機能きのう基本きほんてきには安全あんぜん保障ほしょうかんする、抑止よくし強制きょうせいおよび抵抗ていこうさん種類しゅるいにまとめることができる。抑止よくしとはてき軍事ぐんじ行動こうどうおもいとどまらせる機能きのうであり、これはてき対抗たいこう可能かのう軍事ぐんじりょく準備じゅんびすることでたすことができる機能きのうである。一方いっぽう強制きょうせい抵抗ていこうはより直接的ちょくせつてき機能きのうである。強制きょうせい自分じぶん意志いし相手あいて強制きょうせいする機能きのうであり、威嚇いかくてき軍事ぐんじりょくから全面ぜんめんてき攻撃こうげきなど幅広はばひろ軍事ぐんじ行動こうどう機能きのう該当がいとうする。ぎゃく抵抗ていこう相手あいて強制きょうせい退しりぞける機能きのうであり、威嚇いかくてき軍事ぐんじ行動こうどうへの対処たいしょ徹底てってい抗戦こうせんにわたる軍事ぐんじ行動こうどう機能きのう該当がいとうする[注釈ちゅうしゃく 26]

軍事ぐんじりょく構成こうせい要素ようそ理解りかいするためには物質ぶっしつてき要素ようそだけではなく精神せいしんてき要素ようそ考慮こうりょすることが重要じゅうようであることがろんじられている。フランスの軍人ぐんじんモーリス・ド・サックス軍隊ぐんたい精神せいしんてき要素ようそ発見はっけんした軍人ぐんじんであり、著作ちょさく瞑想めいそう』のなかで「戦争せんそうにまつわる、あらゆる事柄ことがら人間にんげんの「こころ」にはしはっする」とべている。サックスはみずからの軍務ぐんむ経験けいけんから軍隊ぐんたい士気しき重要じゅうようはたらきをつことを軍事ぐんじ思想しそうとして展開てんかいした。したがって軍事ぐんじりょく構成こうせい要素ようそには軍用ぐんよう車両しゃりょう軍艦ぐんかん軍用ぐんようなどの有形ゆうけい戦力せんりょくだけではなく、指揮しき統制とうせい能力のうりょく兵站へいたん能力のうりょくたび士気しきなどの無形むけい戦力せんりょくからっているとかんがえられている[11]。さらに軍事ぐんじりょく潜在せんざいてき構成こうせい要素ようそである政府せいふ指導しどうりょく外交がいこうりょくなどの政治せいじりょく軍需ぐんじゅ産業さんぎょう備蓄びちく資源しげんなどの経済けいざいりょく技術ぎじゅつ革新かくしんすすめるための科学かがく技術ぎじゅつりょく軍隊ぐんたいたいする国民こくみんてき支持しじなどを考慮こうりょすることも可能かのうである。

軍事ぐんじりょく構成こうせい要素ようそたん集合しゅうごうしているのではなく、戦闘せんとう教義きょうぎした有機ゆうきてき統合とうごうされた能力のうりょくである。戦闘せんとう教義きょうぎ軍事ぐんじにおいて装備そうび革新かくしん部隊ぶたい編成へんせいともないながら変革へんかくされてきた。古代こだいローマの軍事ぐんじ学者がくしゃヴェゲティウス古代こだいローマ軍制ぐんせいについての研究けんきゅうつうじてレギオンばれた戦闘せんとう教義きょうぎしるしている。レギオンは120めい中隊ちゅうたいさんれつ間隔かんかくたもって横隊おうたい戦闘せんとう展開てんかいして作戦さくせんするものであり、必要ひつようおうじた疎開そかい密集みっしゅう機動きどう可能かのうとなっている。レギオンは古代こだいローマの戦闘せんとう教義きょうぎであっただけでなく、近世きんせいにおける軍事ぐんじ思想しそうでマキアヴェリの『戦術せんじゅつろん』によって模範もはんとして参照さんしょうされている。現代げんだいのアメリカの軍事ぐんじ学者がくしゃビドルは『軍事ぐんじりょく (ビドル)』のなか軍事ぐんじりょく運用うんよう方法ほうほう注目ちゅうもくして近代きんだいてき軍事ぐんじりょく特徴とくちょう近代きんだいシステムであると主張しゅちょうする。近代きんだいシステムとは射撃しゃげき運動うんどう組織そしきてき連携れんけいであり、だいいち世界せかい大戦たいせんでドイツぐんにより本格ほんかくてき導入どうにゅうされて戦果せんかげた[12]現在げんざいでは、軍事ぐんじりょくはDOTMLPF(ドクトリン、オーガニゼーション、トレーニング、軍需ぐんじゅひん、ロジスティックス、リーダーシップ、人事じんじ施設しせつりゃく)の総合そうごうりょくとしてのケイパビリティとして把握はあくするのが、アメリカを中心ちゅうしんとした西側にしがわ先進せんしんこく常識じょうしきしており、のぞましい軍事ぐんじケイパビリティを達成たっせいするための軍事ぐんじ能力のうりょく分野ぶんやべつ軍事ぐんじ能力のうりょく不足ふそく(ケイパビリティギャップ)の数量すうりょうてき把握はあくとそれにたいする合理ごうりてき対処たいしょ制度せいどされている。

陸上りくじょう戦力せんりょく

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陸上りくじょう戦力せんりょくとは陸上りくじょうにおいて作戦さくせん行動こうどうする能力のうりょく戦力せんりょくである。陸上りくじょう戦力せんりょく役割やくわりとは人間にんげん本来ほんらいてき生活せいかつ領域りょういきである陸上りくじょうにおいて軍事ぐんじ作戦さくせん展開てんかいすることであり、陸上りくじょう戦力せんりょく代表だいひょうする軍事ぐんじ組織そしきとしては陸軍りくぐんがある。ただし治安ちあん部隊ぶたい国境警備隊こっきょうけいびたい、また場合ばあいによっては海兵かいへいたい陸戦りくせんたい陸上りくじょう戦力せんりょくとして機能きのうすることができる。陸上りくじょう戦力せんりょく活動かつどうする陸上りくじょうには土地とち資源しげん、そして住民じゅうみんみっつの基本きほんてき要素ようそ存在そんざいするが、陸上りくじょう戦力せんりょくはそれらを統制とうせいくことが可能かのうである。これらみっつの要素ようそはいずれも密接みっせつ関連かんれんしており、土地とち支配しはいすることはその地域ちいき交通こうつう管制かんせいすることになるため、天然てんねん資源しげん使用しよう制約せいやくすることが可能かのうとなり、同時どうじにそれは住民じゅうみん生活せいかつ必要ひつよう物資ぶっし統制とうせいすることをも可能かのうとする。陸上りくじょう戦力せんりょくはその特性とくせいから地形ちけい密接みっせつ関係かんけいするものであり、運用うんようによって地形ちけい戦力せんりょくすることが可能かのうである一方いっぽうで、森林しんりん市街しがい砂漠さばく山岳さんがくなどの地形ちけいによって弱体じゃくたいされる可能かのうせいもある[注釈ちゅうしゃく 27]

陸上りくじょう戦力せんりょく戦略せんりゃくてき役割やくわり表現ひょうげんするランドパワーばれる概念がいねんがある。イギリスの地政学ちせいがくしゃハルフォード・マッキンダーは『デモクラシーの理想りそう現実げんじつ』においてランドパワーとは海洋かいようたいして大陸たいりく根拠地こんきょち勢力せいりょく地政学ちせいがく概念がいねんである。マッキンダーによれば世界せかい覇権はけん獲得かくとくするためにはユーラシア大陸たいりく内陸ないりく位置いちするハートランド支配しはいすることが重要じゅうようであるとろんじた。つまりハートランドから投射とうしゃされるランドパワーはぜん世界せかいてき支配しはいけん確立かくりつすることができる[注釈ちゅうしゃく 28]くわえてこの大陸たいりくもとづいた戦略せんりゃく思想しそう展開てんかいしたドイツの地政学ちせいがくしゃには『太平洋たいへいよう地政学ちせいがく』の著者ちょしゃであるカール・ハウスホーファーがいる。ハウスホーファーはだいいち世界せかい大戦たいせん敗北はいぼくしたドイツが自給自足じきゅうじそくするために必要ひつよう生存せいぞんけんをユーラシアからアフリカにいた地域ちいきさだめ、アメリカ、日本にっぽん、ロシアとともに世界せかい分割ぶんかつする統合とうごう地域ちいき理論りろん主張しゅちょうした[13]

陸上りくじょう戦力せんりょく具体ぐたいてき組成そせいについて観察かんさつすれば、その最小さいしょう単位たんい部隊ぶたいである分隊ぶんたいから出発しゅっぱつし、小隊しょうたい中隊ちゅうたい大隊だいたい連隊れんたいそして師団しだんという部隊ぶたい編制へんせい採用さいようされている。これは師団しだん制度せいどばれる部隊ぶたい編制へんせいであり、この師団しだん制度せいどもとづいて歩兵ほへい砲兵ほうへい機構きこうなどの戦闘せんとう兵科へいかになかく部隊ぶたい師団しだんなか組織そしきされている。近代きんだいてき師団しだん制度せいど歴史れきしてきにはスウェーデン国王こくおうグスタフ・アドルフによって確立かくりつされたものであり[独自どくじ研究けんきゅう?]今日きょう陸軍りくぐん部隊ぶたい編制へんせいでもひろ採用さいようされている[注釈ちゅうしゃく 29]。また近代きんだい以後いごでは火器かき破壊はかいりょく向上こうじょうしたために要塞ようさい使用しようする効率こうりつせいうしなわれ、機動きどうりょく活用かつようすることが重視じゅうしされるようになっている。ドイツの軍人ぐんじんハインツ・グデーリアンによって実践じっせんされた電撃でんげきせん近代きんだい陸上りくじょう作戦さくせんにおいて戦車せんしゃ最大限さいだいげん活用かつようした戦闘せんとう教義きょうぎであり[注釈ちゅうしゃく 30]現在げんざいでも陸上りくじょう戦力せんりょくにとって機甲きこう部隊ぶたい重要じゅうようせいわっていない。

海上かいじょう戦力せんりょく

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海上かいじょう戦力せんりょくとは海洋かいようにおいて戦闘せんとうりょく発揮はっきする戦力せんりょく形態けいたいであり、海軍かいぐんによって海上かいじょう戦力せんりょく造成ぞうせい運用うんようされている。しかし海軍かいぐんだけでなく沿岸えんがん警備けいびたい海上かいじょう戦力せんりょくとして把握はあくすることは可能かのうである。人間にんげん生活せいかつにとって海洋かいようという地理ちりてき環境かんきょう陸地りくち住民じゅうみんにとっては障害しょうがいとなるが、船舶せんぱく港湾こうわんなどの交通こうつう手段しゅだん確立かくりつされれば広大こうだい交通こうつうとなるものである。海上かいじょう交通こうつうによって大量たいりょう物資ぶっし輸送ゆそうやその輸送ゆそうつうじた沿岸えんがん地域ちいきまたは海外かいがい地域ちいきとの交易こうえきられる経済けいざいてき便益べんえきがもたらされる。海上かいじょう戦力せんりょくとはこの海上かいじょう交通こうつう保持ほじして管制かんせいする意義いぎがあり、さらにてき海上かいじょう交通こうつう防止ぼうしする意味いみもある。海洋かいよう環境かんきょう気象きしょう海象せいうちによって変化へんかするが、それを戦力せんりょくとして活用かつようすることは困難こんなんであり、戦力せんりょく優劣ゆうれつがそのまま戦闘せんとう結果けっか反映はんえいされやすい[注釈ちゅうしゃく 31]

海上かいじょう戦力せんりょく戦略せんりゃくとして代表だいひょうてき人物じんぶつにアメリカの戦略せんりゃくアルフレッド・セイヤー・マハンがいる。マハンは『海上かいじょう権力けんりょく史論しろん』や『海軍かいぐん戦略せんりゃく』などの著作ちょさくがあり、海洋かいよう巨大きょだい公道こうどうであり、海上かいじょう交通こうつう防衛ぼうえい海軍かいぐんさい重要じゅうよう目的もくてきであると指摘してきした。そして生産せいさん海運かいうん植民しょくみん連環れんかんとしてつな能力のうりょくとしてシーパワー概念がいねん提起ていきする。シーパワーは海上かいじょう戦力せんりょくだけでなく、地理ちりてき位置いち自然しぜんてき形態けいたい領土りょうど範囲はんい人口じんこう国民こくみんせい政府せいふ性格せいかくなど海洋かいようかんする総合そうごう能力のうりょくである[注釈ちゅうしゃく 32]。マハンとおなじく海上かいじょう戦力せんりょく戦略せんりゃくてき意義いぎろんじたイギリスの戦略せんりゃくにジュリアン・コーベットがいる。コーベットは『海洋かいよう戦略せんりゃくしょ原則げんそく』で海軍かいぐんだけでなく陸軍りくぐんとの連携れんけい位置いちづける制限せいげん戦争せんそう戦略せんりゃく研究けんきゅうしており、わずかな陸上りくじょう戦力せんりょくでも戦争せんそう目的もくてき制限せいげんし、てき海上かいじょう戦力せんりょく孤立こりつできる地域ちいき派遣はけんするならば、勝利しょうりすることが可能かのうであるとろんじた[注釈ちゅうしゃく 33]

海上かいじょう戦力せんりょく基本きほんてき洋上ようじょう展開てんかい能力のうりょく艦艇かんてい航空機こうくうき単位たんいとして組織そしきされる戦力せんりょくである。艦艇かんてい船舶せんぱく工学こうがく発達はったつにともなってさまざまなかんしゅ開発かいはつされてきたが、現代げんだいにおいては潜水せんすいかん航空こうくう母艦ぼかん巡洋艦じゅんようかん駆逐くちくかんフリゲート掃海そうかいてい給油きゅうゆかんなどのかんしゅがある。これらのかんしゅ排水はいすいりょうことなるだけでなく、それにおうじて火砲かほうミサイルなどのへいそうことなる。しかも航空こうくう母艦ぼかん航空こうくう戦力せんりょく運用うんようする能力のうりょく潜水せんすいかん潜水せんすい能力のうりょく水上すいじょう艦艇かんていとはことなる能力のうりょくとして特別とくべつ設計せっけいされている。これら艦艇かんてい艦隊かんたいとして編制へんせいされ、艦隊かんたいかく艦艇かんてい保有ほゆうする水上すいじょう戦闘せんとう対戦たいせん戦闘せんとう対空たいくう戦闘せんとうなどの戦闘せんとう機能きのうわせて総合そうごうてき戦闘せんとうりょく発揮はっきできなければならない。海軍かいぐん航空機こうくうき哨戒しょうかい哨戒しょうかい任務にんむき、機動きどうりょく駆使くしして広大こうだい海域かいいきのパトロールをおこなう。海軍かいぐんはその水域すいいき制海権せいかいけん確保かくほするために艦隊かんたい決戦けっせん航空こうくう打撃だげきせん海上かいじょう封鎖ふうさなどによっててき艦隊かんたいさまたげ、自国じこくシーレーン保護ほごし、てきのシーレーンを封殺ふうさつする。

航空こうくう戦力せんりょく

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航空こうくう戦力せんりょく空中くうちゅう戦闘せんとうりょく発揮はっきすることが可能かのう戦力せんりょくであり、空軍くうぐんがこの航空こうくう戦力せんりょく組織そしきしている。航空こうくう戦力せんりょく経由けいゆする空中くうちゅうには陸地りくち海洋かいようとはことなる地理ちりてき特性とくせいがあり、地球ちきゅうじょうあらゆる地点ちてん直接的ちょくせつてき接触せっしょくすることが可能かのう唯一ゆいいつ空間くうかんである。また航空機こうくうき陸上りくじょう海上かいじょう交通こうつう手段しゅだん比較ひかくして短時間たんじかん広範囲こうはんいおよ移動いどう輸送ゆそう能力のうりょく発揮はっきすることが可能かのうである。さらに現代げんだい社会しゃかいにおいて飛行場ひこうじょう航空機こうくうきなどによって形成けいせいされている航空こうくう海上かいじょう交通こうつうなら重要じゅうよう交通こうつう手段しゅだんである。ただし航空こうくう戦力せんりょく迅速じんそく機動きどうすることが可能かのうであるものの、その戦闘せんとうりょく戦力せんりょくくらべて短時間たんじかん消耗しょうもうしてしまう。なぜならば、航空こうくう戦力せんりょく本質ほんしつてき要素ようそ航空機こうくうきであるために、滞空たいくうするだけでも燃料ねんりょう消費しょうひし、また搭載とうさい可能かのうへいそう制約せいやくされている。したがって地上ちじょうまた空中くうちゅうでの燃料ねんりょう弾薬だんやく補給ほきゅう航空こうくう要員よういん交替こうたいおこな必要ひつようてくるのである[注釈ちゅうしゃく 34]

航空こうくう戦力せんりょく戦略せんりゃくてき効果こうかについてろんじたイタリアの軍人ぐんじんジュリオ・ドゥーエだいいち世界せかい大戦たいせん航空機こうくうき軍事ぐんじてき可能かのうせい発見はっけんし、『せいそら』において独立どくりつ空軍くうぐん効率こうりつせい主張しゅちょうした。その理由りゆうとして航空機こうくうき距離きょり拡大かくだいしたことでてき前線ぜんせんえて後方こうほう地域ちいき戦略せんりゃくばくげきおこなうことが可能かのうになったためであり、そのため制空権せいくうけん争奪そうだつがこれからの戦争せんそう主要しゅよう基軸きじくとなるためであった[14]同様どうようにアメリカの軍人ぐんじんウィリアム・ミッチェルも『空軍くうぐんによる防衛ぼうえい』においてこれからの戦争せんそう主力しゅりょく航空こうくう戦力せんりょくであり、独立どくりつ空軍くうぐん創設そうせつ主張しゅちょうしている。かれらの主張しゅちょう当初とうしょ支持しじされなかったが、だい世界せかい大戦たいせん航空こうくう戦力せんりょく有効ゆうこうせい認識にんしきされるようになる[15]。イギリスの軍人ぐんじんウィリアム・テッダーだい世界せかい大戦たいせんでの航空こうくう戦力せんりょくはたらきをまえて、『戦争せんそうにおける空軍くうぐんりょく』で航空こうくう優勢ゆうせい陸海空りくかいくういずれの作戦さくせんにとっても不可欠ふかけつであるとべて航空こうくう戦力せんりょく普遍ふへんてき重要じゅうようせいろんじた。

航空こうくう戦力せんりょく本質ほんしつにあるものは航空機こうくうきであるが、この航空機こうくうきもその偵察ていさつ戦闘せんとうばくげきなどの目的もくてきからさまざまな設計せっけいほどこされる。軍用ぐんよう種類しゅるいとしては偵察ていさつ戦闘せんとう攻撃こうげきばくげき電子でんし戦機せんき空中くうちゅう給油きゅうゆなどの種類しゅるいがある。しかし航空機こうくうき航空こうくう能力のうりょく継続けいぞくてき発揮はっきするために必要ひつよう航空こうくう基地きち不可欠ふかけつ要素ようそである。航空こうくう基地きちでの航空こうくう管制かんせい後方こうほう支援しえん機能きのうにより航空機こうくうき航行こうこう可能かのうとなる。航空機こうくうき戦術せんじゅつてき機能きのう統合とうごうした航空こうくうだんなどに編制へんせいされ、航空こうくう偵察ていさつたい航空こうくう作戦さくせん航空こうくう阻止そし近接きんせつ航空こうくう支援しえん戦略せんりゃく爆撃ばくげきなどの航空こうくう作戦さくせん運用うんようされる。

経済けいざい基盤きばん

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戦争せんそう能力のうりょく軍事ぐんじりょくだけでなく経済けいざいてき要素ようそ国力こくりょく重要じゅうよう構成こうせい要素ようそである。なぜならば、経済けいざい成長せいちょうしていれば政府せいふ増加ぞうかする税収ぜいしゅうから財政ざいせいにおける軍事ぐんじ割合わりあい拡大かくだいすることが容易よういとなるからである。ただし財政ざいせいにおける軍事ぐんじ問題もんだいはいわゆる大砲たいほうとバターの支出ししゅつトレードオフ関係かんけいにある問題もんだいとして把握はあくされており、したがって自由じゆう主義しゅぎ観点かんてんからしばしば軍備ぐんび民生みんせい圧迫あっぱくする危険きけんせい指摘してきされる。一方いっぽうケインズ主義しゅぎ立場たちばてば軍拡ぐんかく公共こうきょう事業じぎょう一環いっかんとしてかんがえることも可能かのうであり、このように拡大かくだいする軍需ぐんじゅ成長せいちょうした軍需ぐんじゅ産業さんぎょう構造こうぞうぐんさんふく合体がったいばれる。戦争せんそう能力のうりょくにおける経済けいざいりょくとは軍事ぐんじりょく要素ようそである兵器へいき供給きょうきゅうするための労働ろうどうりょく資源しげん生産せいさん設備せつび資本しほんなどから判断はんだんできる。戦争せんそう必要ひつよう経済けいざいりょく獲得かくとくするために社会しゃかい主義しゅぎてき経済けいざい統制とうせい実施じっしされる場合ばあいがあり、戦時せんじ動員どういん配給はいきゅうせい具体ぐたいてき施策しさくとして導入どうにゅうすることができる。ぎゃくてき経済けいざいりょく低下ていかさせるための政府せいふ軍隊ぐんたい経済けいざい対策たいさくとして、経済けいざい制裁せいさい通商つうしょう破壊はかい海上かいじょう封鎖ふうさ航空こうくう封鎖ふうさ市場いちば価格かかくへの介入かいにゅうなどが実施じっしすることが可能かのうである[注釈ちゅうしゃく 35]

経済けいざい軍備ぐんび関係かんけいについて検討けんとうした経済けいざい学者がくしゃにイギリスの経済けいざい学者がくしゃアダム・スミスがいる。スミスは『国富こくふろん』で市場いちば経済けいざい自由じゆう放任ほうにんざい適切てきせつ配分はいぶんする原理げんりろんじた。そして経済けいざい自然しぜん成長せいちょう植民しょくみん運営うんえいのためには軍事ぐんじりょく行政ぎょうせい能力のうりょく必要ひつようであり、またこれらは政府せいふ財政ざいせい状況じょうきょうおうじた規模きぼ調整ちょうせいすることを主張しゅちょうしている。軍事ぐんじりょく造成ぞうせいのために必要ひつよう産業さんぎょう政策せいさくろんじたアメリカの政治せいじアレクサンダー・ハミルトン軍務ぐんむ経験けいけんもとづいてアメリカの工業こうぎょう保護ほご主張しゅちょうする『製造せいぞうぎょうかんする報告ほうこく』をあらわしている。このかんがえたほうのちにドイツの経済けいざい学者がくしゃフリードリヒ・リストがれ、ドイツが自給自足じきゅうじそくをするために必要ひつよう産業さんぎょう育成いくせいしなければ、戦争せんそうには対応たいおうできない危険きけんせい指摘してきしている。このような戦争せんそう必要ひつよう産業さんぎょう育成いくせいする経済けいざい政策せいさく世界せかい大戦たいせんちゅう各国かっこく総動員そうどういん体制たいせい導入どうにゅうともなって遂行すいこうされることになる。

軍事ぐんじドクトリン

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安全あんぜん保障ほしょう政策せいさく

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安全あんぜん保障ほしょう概念がいねんとは、これはある主体しゅたいみずからにとってかけがえのないなんらかの価値かちを、なんらかの脅威きょういからなんらかの手段しゅだんによってまもる、と定義ていぎできる[注釈ちゅうしゃく 36]安全あんぜん保障ほしょう政策せいさくには大別たいべつしてみっつの主要しゅよう学派がくはがあり、それは軍備ぐんび維持いじ増進ぞうしんによって敵対てきたい勢力せいりょくとの勢力せいりょく均衡きんこう維持いじする重要じゅうようせい強調きょうちょうする現実げんじつ主義しゅぎ学派がくは経済けいざいてき交流こうりゅうつうじて彼我ひが相互そうご依存いぞんたかめることを重要じゅうようする自由じゆう主義しゅぎ学派がくは、そして地球ちきゅう全体ぜんたい統合とうごうされた国際こくさい共同きょうどうたいなし、紛争ふんそう予防よぼう平和へいわ維持いじのシステムを準備じゅんびし、人間にんげん地球ちきゅう安全あんぜん保障ほしょうすることの意義いぎ主張しゅちょうするグローバリズムの学派がくはみっつがある。つまり安全あんぜん保障ほしょう政策せいさくなん価値かち重要じゅうようするのか、またどの方法ほうほう適切てきせつであるかにかんして論争ろんそうてきでありうる複雑ふくざつ問題もんだいである。したがって、安全あんぜん保障ほしょう政策せいさく軍事ぐんじ戦略せんりゃく政治せいじてきコンテクストを形成けいせいするものであり、その方針ほうしんによって兵員へいいん兵器へいき定数ていすう指揮しき系統けいとう部隊ぶたい編制へんせい内容ないよう、また戦争せんそうにおける軍事ぐんじ戦略せんりゃく作戦さくせん計画けいかくなどが決定けっていされる。

戦略せんりゃく

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戦略せんりゃくとは戦争せんそうにおいて目的もくてき達成たっせいするためにどのように行動こうどうすべきかをしした準備じゅんび運用うんよう計画けいかくであり、またそれを策定さくていするための理論りろんまたは技術ぎじゅつ[注釈ちゅうしゃく 37]。しかしながら、戦略せんりゃく概念がいねん軍事ぐんじ思想しそうにおいて論争ろんそうてきであったために画一かくいつてき定義ていぎさだまっているわけではない。その時代じだい地域ちいき情勢じょうせいによって戦略せんりゃく概念がいねんはさまざまな文脈ぶんみゃくもちいられてきており、論者ろんしゃによってその内容ないようことなっている。しかしながら、戦略せんりゃくもとづいた思考しこうたん局地きょくちてき戦闘せんとう勝利しょうりするだけでなく、より幅広はばひろ視野しやから戦争せんそう勝利しょうりする意義いぎがあることは戦略せんりゃくによってみとめられている。戦略せんりゃくという用語ようご普及ふきゅうする以前いぜんからそのような思考しこうほう重要じゅうようせい指摘してきされてきた。古代こだい中国ちゅうごく戦略せんりゃくまごたけしあらわした『孫子まごこ』では、戦争せんそうがもたらすさまざまな弊害へいがい認識にんしきしたうえで、可能かのうかぎ軍事ぐんじてき手段しゅだんによって目的もくてき達成たっせいすることを優先ゆうせんすべきであり、もし開戦かいせんしたとしても不敗ふはい態勢たいせい確立かくりつしたのち短期たんき決戦けっせん勝利しょうりすべきであるとろんじた[注釈ちゅうしゃく 38]。このような戦略せんりゃくてき思考しこう現代げんだい研究けんきゅうしゃによって戦略せんりゃく原点げんてんとして参照さんしょうされている。

軍事ぐんじ思想しそうにおいて近代きんだい戦略せんりゃく理論りろん体系たいけいした戦略せんりゃくとしてげられる人物じんぶつは『戦争せんそうろん』をあらわしたクラウゼヴィッツである。クラウゼヴィッツがのこした戦略せんりゃくがく業績ぎょうせきとは政治せいじたいする戦争せんそう従属じゅうぞくてき関係かんけいあきらかにしたことである。理論りろんてき観点かんてんかられば、戦争せんそうとは暴力ぼうりょく行為こういであり、敵対てきたい関係かんけい結果けっかとして戦争せんそう暴力ぼうりょくせい無制限むせいげん増大ぞうだいつづける法則ほうそくがある。つまり戦争せんそう本来ほんらい目標もくひょうとはてき戦闘せんとうりょく破壊はかいすることにならないとかんがえられる。しかし現実げんじつ戦争せんそう観察かんさつすれば、戦争せんそうにはつね政治せいじてき目的もくてきあたえられており、戦争せんそう暴力ぼうりょくせい合理ごうりてき調整ちょうせいすることができることがかる。しかも戦争せんそう計画けいかく実施じっしうつさい直面ちょくめんするさまざまな不測ふそく事態じたい確実かくじつせいなどの摩擦まさつによって戦争せんそう行為こういさまたげられる。このようにクラウゼヴィッツがろんじた戦略せんりゃく理論りろんとは戦争せんそう本質ほんしつ立脚りっきゃくした理論りろんであり、現代げんだいにおいても戦争せんそう本性ほんしょう政治せいじ目的もくてき合致がっちした軍事ぐんじ戦略せんりゃくかたしめしている。

現代げんだい戦略せんりゃくとしてられているイギリスの戦略せんりゃくリデル=ハートはそれまでの戦略せんりゃく概念がいねんをより包括ほうかつてき概念がいねんとして発展はってんさせた。かれ著作ちょさく戦略せんりゃくろん』ではだい戦略せんりゃく概念がいねん間接かんせつアプローチ戦略せんりゃく概念がいねん提唱ていしょうされている。だい戦略せんりゃくとは政治せいじ目的もくてき達成たっせいするために軍事ぐんじてき手段しゅだん適用てきようする技術ぎじゅつであり、軍事ぐんじ戦略せんりゃく上位じょういった包括ほうかつてき戦略せんりゃく概念がいねんとして整理せいりされる。だい戦略せんりゃく概念がいねんによって戦争せんそう軍事ぐんじ作戦さくせん成否せいひだけではなく、より総合そうごうてき観点かんてんもとづいて戦争せんそう指導しどうすることの意義いぎ戦略せんりゃく理論りろん表現ひょうげんされることになった。さらに間接かんせつアプローチ戦略せんりゃくてきぐんたいして直接ちょくせつ対決たいけつすることを回避かいひし、てき弱点じゃくてんたいして接近せっきんする戦略せんりゃく理念りねんである。ここでのてきぐん弱点じゃくてんとは物理ぶつりてき戦力せんりょく希薄きはく方面ほうめんであるだけでなく、心理しんりてき警戒けいかい希薄きはく方面ほうめん用語ようごである。リデル=ハートは優勢ゆうせい戦力せんりょくを以って正面しょうめんからてき圧倒あっとうするのではなく、このような戦略せんりゃくてき機動きどう重要じゅうようしていた[16]。リデル=ハートの戦略せんりゃく理論りろんには導入どうにゅうされただい戦略せんりゃく概念がいねん間接かんせつアプローチの軍事ぐんじ思想しそう最小限さいしょうげん戦力せんりょく戦争せんそう勝利しょうりすることの可能かのうせいしめしている。

戦術せんじゅつ

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戦術せんじゅつ (Tactics) とは戦闘せんとうにおいて戦闘せんとうりょく効果こうかてき運用うんようするための科学かがく、または技術ぎじゅつであるとかんがえられている[注釈ちゅうしゃく 39]。その作戦さくせん形態けいたい相違そういから戦術せんじゅつがくでは陸軍りくぐん戦術せんじゅつ海軍かいぐん海戦かいせんじゅつ空軍くうぐん航空こうくう戦術せんじゅつ分類ぶんるいされて研究けんきゅうされる。どれほどすぐれた戦略せんりゃくであっても、その実行じっこうにはすぐれた戦術せんじゅつをも必要ひつようとする。戦闘せんとう効率こうりつてき指導しどうするためには優勢ゆうせい戦力せんりょく投入とうにゅうするだけではなく、それら戦力せんりょく状況じょうきょうおうじて適切てきせつ運用うんようすることの重要じゅうようせいられている。戦術せんじゅつ黎明れいめいにおいては戦闘せんとう隊形たいけい重要じゅうようせい戦場せんじょう機動きどう方式ほうしき研究けんきゅうされていなかった。しかし古代こだいギリシアのファランクスばれる歩兵ほへい密集みっしゅう隊形たいけい活用かつようした戦闘せんとうほう導入どうにゅうされ、また騎兵きへい部隊ぶたい決定的けっていてき打撃だげきりょくとして戦場せんじょう登場とうじょうすると戦闘せんとう陣形じんけい選定せんてい防御ぼうぎょ戦闘せんとう攻撃こうげき戦闘せんとう連携れんけいなどの戦術せんじゅつてき選択肢せんたくしひろがることになった。

劣勢れっせいでありながらもすぐれた戦術せんじゅつ力量りきりょうによって勝利しょうりした有名ゆうめい戦史せんしがある。マケドニアの国王こくおうアレクサンドロス3せい大王だいおう)はその戦術せんじゅつ一人ひとりであり、ペルシア遠征えんせいでのガウガメラのたたかにおいてはペルシアぐんたいして劣勢れっせいでありながらもてき部隊ぶたい誘致ゆうちすることでてき中央ちゅうおう戦力せんりょく希薄きはくさせ、その地点ちてんたいして突破とっぱ実施じっししたことで勝利しょうりすることができた。またポエニ戦争せんそうにおいてはカルタゴの将軍しょうぐんハンニバルカンナエのたたか采配さいはい発揮はっきし、優勢ゆうせいなローマぐんたいして歩兵ほへい部隊ぶたい防御ぼうぎょ戦闘せんとう騎兵きへい部隊ぶたい包囲ほうい機動きどうわせて模範もはんてき包囲ほうい殲滅せんめつ実践じっせんしてみせた。またプロイセンの国王こくおうフリードリヒ2せいななねん戦争せんそうロイテンのたたか優勢ゆうせいなオーストリアぐんよこじんたいし、地形ちけい部隊ぶたい隠匿いんとくしながら迅速じんそく側面そくめん接近せっきんし、側面そくめん攻撃こうげきをしかけることで勝利しょうりすることができた。ナポレオン戦争せんそうではフランスの国王こくおうナポレオン1せい優勢ゆうせいなオーストリアぐんアウステルリッツのたたか衝突しょうとつしたが、意図いとてき防御ぼうぎょ後退こうたい行動こうどうわせててき部隊ぶたい誘致ゆうちしたのちにその中央ちゅうおう突破とっぱすることで勝利しょうりおさめた。これらの戦史せんしはいずれも戦力せんりょく劣勢れっせい運用うんようによっておぎなっており、またその実施じっし成功せいこうしたことから戦術せんじゅつてきたか評価ひょうかされている。

スイスの軍人ぐんじんアントワーヌ・アンリ・ジョミニが『戦争せんそう概論がいろん』でしめした戦術せんじゅつ理論りろん体系たいけい近代きんだいにおける戦術せんじゅつがく起源きげんとしてしめすことができる。なぜならば、ジョミニは戦場せんじょうでの勝利しょうりにとって不可欠ふかけつ行動こうどう原則げんそく戦術せんじゅつには存在そんざいするととらえることで、その原則げんそくをさまざまな戦闘せんとうじょうきょう適用てきようする方法ほうほう理論りろんした。ジョミニの学説がくせつ世界せかい各地かくち士官しかん学校がっこう教範きょうはんるい採用さいようされており、戦力せんりょく集中しゅうちゅう戦場せんじょうでの機動きどうなどの原則げんそくかんしては戦術せんじゅつがく基礎きそ知識ちしきとして普及ふきゅうした。このような原則げんそくはイギリスの軍人ぐんじんジョン・フレデリック・チャールズ・フラーによってさらに発展はってんさせられ、目的もくてき主導しゅどう統一とういつ集中しゅうちゅう機動きどう節約せつやく警戒けいかい奇襲きしゅう簡明かんめいからたたかいのしょ原則げんそくとして整理せいりされた。戦術せんじゅつてき戦闘せんとう行動こうどうである攻撃こうげき防御ぼうぎょについても、攻撃こうげき主導しゅどうてき能動のうどうてき戦闘せんとう行動こうどうである一方いっぽう戦力せんりょく消耗しょうもうはげしく、ぎゃく防御ぼうぎょ従属じゅうぞくてき受動じゅどうてき戦闘せんとう行動こうどうでありながらも、消耗しょうもうすくないなどの特性とくせいあきらかにされていった。そして戦術せんじゅつ研究けんきゅうすすむにつれてさらに戦闘せんとう陣形じんけい戦闘せんとう行動こうどうあらわ戦術せんじゅつ用語ようご戦術せんじゅつてき決心けっしんもとめられる状況じょうきょう判断はんだん思考しこうほう確立かくりつされていった。

兵站へいたん

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兵站へいたんとは作戦さくせんちゅう部隊ぶたい活動かつどう後方こうほうから支援しえんする方法ほうほうであり、具体ぐたいてきには物資ぶっし補給ほきゅう兵器へいき整備せいび輸送ゆそう管理かんり衛生えいせい業務ぎょうむなどの業務ぎょうむす。兵站へいたん古来こらいから戦争せんそう勝敗しょうはい左右さゆうする重大じゅうだい考慮こうりょ事項じこうであり、その基本きほんてき問題もんだいとは後方こうほうにおける根拠地こんきょち補給ほきゅう物資ぶっしにより、後方こうほう連絡れんらくせん輸送ゆそうりょくつうじて、前線ぜんせんにおける部隊ぶたい補給ほきゅう所要しょよう充足じゅうそくさせることである。しかし根拠地こんきょちでの補給ほきゅう物資ぶっし不足ふそくてきによる後方こうほう連絡れんらくせん遮断しゃだん戦闘せんとうでの戦力せんりょく消耗しょうもう増加ぞうかなどによって兵站へいたん現実げんじつはより複雑ふくざつである。したがって兵站へいたんとはたんなる輸送ゆそう計画けいかくではなく、融通ゆうずうせい継続けいぞくせい強靭きょうじんせい効率こうりつせい創造そうぞうせいもとめられる活動かつどうであるととらえなければならない。戦争せんそうにおいてしょうじる不測ふそく事態じたい兵站へいたん臨機応変りんきおうへん対処たいしょしなければならず、てき妨害ぼうがい直面ちょくめんしてもその活動かつどう維持いじしなければならない。さらに兵站へいたん問題もんだいとして有限ゆうげん物資ぶっし部隊ぶたいにどのように配分はいぶんするかという効率こうりつ問題もんだいもある。しかも兵站へいたん戦場せんじょう突発とっぱつてき障害しょうがい即応そくおうするために創造そうぞうてき問題もんだい解決かいけつせまられる場合ばあいもある[注釈ちゅうしゃく 40]

軍隊ぐんたいにおいて兵站へいたん体系たいけいされた背景はいけいには作戦さくせん装備そうび複雑ふくざつがある。ジョミニはぐん行軍こうぐんするさい兵站へいたんかん考慮こうりょしなければならない事項じこう列挙れっきょしており、それは交通こうつう選定せんてい補給ほきゅうしょ警戒けいかい行軍こうぐん管制かんせい輸送ゆそう手段しゅだん確保かくほ宿営しゅくえい計画けいかくなど細部さいぶわたっている。図上ずじょうでの軍事ぐんじ作戦さくせん具体ぐたいするためにはこのような緻密ちみつ兵站へいたん活動かつどう必要ひつようであり、ジョミニは兵站へいたんがくをあらゆる軍事ぐんじ知識ちしき応用おうようする科学かがくであるととらえている。兵站へいたん重要じゅうようせいについては戦略せんりゃく戦術せんじゅつとの関係かんけいせいからも検討けんとうすることができる。アメリカの軍人ぐんじんジョージ・C・ソープは『純粋じゅんすい兵站へいたんがく』において戦争せんそう演劇えんげきたとえてろんじており、戦略せんりゃく演技えんぎ指導しどうする脚本きゃくほんであり、戦術せんじゅつ役者やくしゃ役割やくわりであるならば、兵站へいたんとは舞台ぶたい備品びひん小道具こどうぐ準備じゅんびすることであると位置いちづけた。つまり卓越たくえつした戦略せんりゃくすぐれた戦術せんじゅつ兵站へいたんによって根拠こんきょけられているとかんがえることができる。しかし兵站へいたん重要じゅうようであることがわかったとしても、軍事ぐんじにおいて現実げんじつ兵站へいたん計画けいかくどおりいかなかった事例じれい数多かずおおい。この歴史れきしてき事実じじつマーチン・ファン・クレフェルトは『補給ほきゅうせん』においてあきらかにしており、つまり知性ちせい活用かつようしたどれほど綿密めんみつ兵站へいたん計画けいかくであったとしても、クラウゼヴィッツが提起ていきした戦争せんそうでの摩擦まさつちからつね破壊はかいされるのである。兵站へいたん使命しめいとはそのような障害しょうがい克服こくふくして部隊ぶたい支援しえんすることであり、軍事ぐんじにとって末端まったん研究けんきゅう領域りょういきではなく、むしろ本質ほんしつてき研究けんきゅう領域りょういきなすことができる。

兵站へいたん活動かつどう機能きのうべつ分類ぶんるいすると補給ほきゅう輸送ゆそう整備せいび衛生えいせい大別たいべつすることができる。後方こうほう地域ちいき遂行すいこうされる支援しえんはさらに多種たしゅ多様たようであるが、これらよん種類しゅるい業務ぎょうむ部隊ぶたい戦闘せんとうりょく維持いじするじょうとく緊要きんようなものであるとえる。補給ほきゅうとは部隊ぶたいたいしておこなわれる食糧しょくりょう燃料ねんりょう弾薬だんやく医薬品いやくひんとう消耗しょうもう提供ていきょうすることであり、補給ほきゅう所要しょよう算定さんてい補給ほきゅう物資ぶっし入手にゅうしゅ補給ほきゅう物資ぶっし配分はいぶんなどの段階だんかいんでおこなわれる。また整備せいび車両しゃりょう航空機こうくうき艦艇かんてい状態じょうたい使用しよう可能かのう状態じょうたい維持いじすることであり、装備そうび破損はそんじょうきょうによって使用しよう部隊ぶたい整備せいび整備せいび部隊ぶたい整備せいび外部がいぶ委託いたく整備せいびおこなわれる。輸送ゆそう人員じんいん装備そうび物資ぶっし位置いち適時てきじにおいて適所てきしょ移動いどうさせることであり、その地形ちけい敵情てきじょうおうじて陸海空りくかいくう交通こうつう手段しゅだん選定せんていされ、安全あんぜんせい秘匿ひとくせい迅速じんそくせい輸送ゆそうりょくなどの観点かんてんから判断はんだんされることになる。衛生えいせい戦闘せんとうなどでしょうじた人的じんてき戦闘せんとうりょく消耗しょうもう回復かいふくするための活動かつどうであり、前線ぜんせん部隊ぶたいでの処置しょち、または後方こうほう野戦やせん病院びょういんでの処置しょちなどがおこなわれ、回復かいふくした兵員へいいん復帰ふっきさせる機能きのうがある。このような兵站へいたんふくあいてき業務ぎょうむ陸軍りくぐん海軍かいぐん空軍くうぐんによってそれぞれ別個べっこ体系たいけいされている。たとえば陸軍りくぐん兵站へいたん基地きち外部がいぶにおいても兵站へいたん機能きのう維持いじしなければならないが、海軍かいぐん空軍くうぐん兵站へいたん機能きのう根拠地こんきょち集約しゅうやくされており、また兵器へいき体系たいけいことなるため必要ひつよう補給ほきゅう物資ぶっしことなるものである。

戦争せんそう以外いがい軍事ぐんじ作戦さくせん

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軍事ぐんじ作戦さくせん基本きほんてき戦争せんそうにおいて実施じっしされるものである。しかし、戦争せんそう以外いがいでも軍事ぐんじ作戦さくせん実施じっしすることはありるものだと現在げんざいではかんがえられている。これは冷戦れいせん終結しゅうけつしてから地域ちいき紛争ふんそう人道じんどう危機きき軍隊ぐんたい対処たいしょする情勢じょうせい出現しゅつげんしたことに呼応こおうして、アメリカの統合とうごう参謀さんぼう本部ほんぶにより1995ねん提唱ていしょうされた概念がいねんである。この概念がいねんについて詳説しょうせつした書籍しょせき統合とうごう教義きょうぎ教範きょうはん3-07『戦争せんそう以外いがい軍事ぐんじ作戦さくせんのための統合とうごう教義きょうぎ』があり、ここでは戦争せんそう以外いがい軍事ぐんじ作戦さくせん政治せいじてき考慮こうりょまえて遂行すいこうされる戦争せんそういたらない軍事ぐんじりょく使用しようとして定義ていぎされる。その具体ぐたいてき内容ないようには戦争せんそう抑止よくし解決かいけつのための平和へいわ創造そうぞう活動かつどうたいテロ作戦さくせん部隊ぶたい予防よぼうてき展開てんかい平和へいわ維持いじ活動かつどう戦闘せんとういん避難ひなん作戦さくせんたい暴動ぼうどう作戦さくせんふくまれる。さらに平和へいわ促進そくしんするための海上かいじょう交通こうつう確保かくほたい麻薬まやく作戦さくせん人道じんどう支援しえん海上かいじょう護衛ごえい文民ぶんみん支援しえんなどもその概念がいねんふくまれている。このような軍隊ぐんたいあたらしい任務にんむについて国連こくれん事務じむ総長そうちょうダグ・ハマーショルド平和へいわ維持いじげながら「平和へいわ維持いじ活動かつどう兵士へいし仕事しごとではないが、それをできるのは兵士へいししかいない」とべている。戦争せんそう以外いがい軍事ぐんじ作戦さくせん遂行すいこうするためには従来じゅうらいのように計画けいかくせい安全あんぜんせい戦闘せんとう効率こうりつせいなどをたかめるだけではなく、政治せいじ社会しゃかいてき影響えいきょう配慮はいりょしながら人道じんどうせい公平こうへいせい重視じゅうし民事みんじ作戦さくせん円滑えんかつ実施じっし文民ぶんみん機関きかん支援しえん確保かくほおこな必要ひつようがある。

脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ この定義ていぎけっして厳密げんみつなものではない。
  2. ^ えい: civil affairs
  3. ^ マキアヴェリは『君主くんしゅろん』でも法律ほうりつ軍備ぐんびによって基礎きそけており、政治せいじ指導しどうしゃ軍事ぐんじ精通せいつうすることを主張しゅちょうしている。
  4. ^ 軍事ぐんじ基本きほんてき問題もんだい戦争せんそうにおける戦闘せんとう勝利しょうりであると限定げんていすることは初歩しょほてき理解りかいぎない。軍事ぐんじ思想しそうにおいて勝利しょうり方法ほうほう追究ついきゅうすることは古来こらいより重要じゅうよう検討けんとう課題かだいであったが、後述こうじゅつするように戦争せんそう変化へんかにともなって軍事ぐんじ問題もんだい複雑ふくざつ多様たようしている。
  5. ^ ここでしめしたしょ問題もんだいについては、それぞれ軍事ぐんじ地理ちりがく軍事ぐんじ工学こうがく、そしてオペレーションズ・リサーチなどの研究けんきゅう参照さんしょうされたい。
  6. ^ これらのしょ問題もんだい国際こくさい政治せいじがく戦時せんじ国際こくさいほう軍事ぐんじ行政ぎょうせいがく戦略せんりゃくがく戦術せんじゅつがく兵站へいたんがくなどの研究けんきゅうあつかわれている。その一部いちぶほん項目こうもくろんじている。
  7. ^ 戦争せんそう文学ぶんがく軍事ぐんじ軍事ぐんじ心理しんりがくなどの学問がくもん研究けんきゅう対象たいしょうとされる問題もんだいぐんである。
  8. ^ 著作ちょさく英訳えいやくはIs War Now Impossible?: Being an Abridgment of the War of the Future in Its Technical, Economic, and Political Relations(Kessinger Pub Co)でむことができる。ブロッホの戦略せんりゃく思想しそうはピーター・パレットへん防衛大学校ぼうえいだいがくこう・「戦争せんそう戦略せんりゃく変遷へんせん研究けんきゅうかいやく現代げんだい戦略せんりゃく思想しそう系譜けいふ マキャヴェリからかく時代じだいまで』でげられており参考さんこうになる。
  9. ^ スミスの著作ちょさくはRupert Smith, The Utility of Force: The Art of War in the Modern World(London, ALLen lane,2005)でむことができる。
  10. ^ 孫子まごこけいへんによれば「へいとはくに大事だいじなり、死生しせいみち存亡そんぼうみちさっせざるべからざるなり」とされている[4]
  11. ^ 戦争せんそう複雑ふくざつせいについては後述こうじゅつするようにクラウゼヴィッツが『戦争せんそうろん』で論考ろんこうしている問題もんだいであり、ここでげた戦争せんそう複雑ふくざつせい暴力ぼうりょく相互そうご作用さよう戦争せんそうきり摩擦まさつとして概念がいねんされている。
  12. ^ 政治せいじ学者がくしゃカール・シュミットは『パルチザンの理論りろん』(ちくま学芸がくげい文庫ぶんこ、2005ねん)でマルクス主義まるくすしゅぎしゃたちにあたえたクラウゼヴィッツの思想しそうてき影響えいきょうろんじている。
  13. ^ クラウゼヴィッツ批判ひはんとして位置いちづけられるこの著作ちょさくはMatin van Creveld, The Transformation of War: The Most Radical Reinterpretation of Armed Conflict since Clausewitz(New York: The Free Press, 1991)でむことができる。
  14. ^ この翻訳ほんやくにはエーリヒ・ルーデンドルフちょ間野まの俊夫としおやく国家こっかそう力戦りきせん』(三笠みかさ書房しょぼう)がある。
  15. ^ 強制きょうせい外交がいこう理論りろん事例じれいについてはゴードン・A・クレイグ/アレキサンダー・L・ジョージちょ軍事ぐんじりょく現代げんだい外交がいこう 歴史れきし理論りろんまな平和へいわ条件じょうけん』(有斐閣ゆうひかく)などが参考さんこうとなる。
  16. ^ えい: guerrilla war
  17. ^ この理論りろん詳細しょうさいについてはゆうげきせんろん項目こうもくか、原書げんしょ翻訳ほんやくである毛沢東もうたくとうちょ藤田ふじた敬一けいいち吉田よしだ富夫とみおやくゆうげきせんろん』(中央公論ちゅうおうこうろんしんしゃ、2001ねん)を参照さんしょうされたい。
  18. ^ 甲斐かい美都里みどりやく新訳しんやく ゲリラ戦争せんそう キューバ革命かくめいぐん戦略せんりゃく戦術せんじゅつ』(中央公論ちゅうおうこうろんしんしゃ)を参照さんしょうされたい。
  19. ^ 国防こくぼう概念がいねん概観がいかんした研究けんきゅう服部はっとりみのる防衛ぼうえいがく概論がいろん』(はら書房しょぼう、1980ねん)などがある。
  20. ^ 対外たいがいてき安全あんぜん保障ほしょうだけでなく、対内たいないてき安全あんぜん保障ほしょう状況じょうきょうてき安全あんぜん保障ほしょう視角しかくかんがえることができる。
  21. ^ ギベールの著作ちょさくはGatt, The Origins of Military Thought, (Oxford, 1989).でむことができる。
  22. ^ 佐藤さとう徳太郎とくたろうやく戦争せんそう概論がいろん』(中央公論ちゅうおうこうろんしんしゃ、2001ねん)の軍事ぐんじ政策せいさくしょう参照さんしょうされたい。
  23. ^ 近代きんだいぐんのこのような成立なりたちとモルトケやシュリーフェンの位置いちづけはサミュエル・ハンチントンちょ市川いちかわ良一りょういち新装しんそうばん ハンチントン 軍人ぐんじん国家こっか うえした』(はら書房しょぼう、2008ねん)でしめされている。
  24. ^ この軍事ぐんじ制度せいど分類ぶんるい大学だいがく教育きょういくしゃへん現代げんだい政治せいじがく事典じてん』(ブレーンしゃ)の「軍制ぐんせい」の項目こうもく参考さんこうにしている。
  25. ^ 軍制ぐんせい全般ぜんぱんについてはきゅう日本にっぽんぐん軍制ぐんせい概説がいせつした三浦みうら裕史ゆうじによる『軍制ぐんせい講義こうぎ』(しんやましゃ出版しゅっぱん、1996ねん)が参考さんこうになる。
  26. ^ 防衛大学校ぼうえいだいがくこう防衛ぼうえいがく研究けんきゅうかいへん軍事ぐんじがく入門にゅうもん』(かや書房しょぼう、2000ねん)で軍事ぐんじりょくしょ機能きのうについて詳細しょうさいろんじられている。
  27. ^ ここの記述きじゅつ防衛大学校ぼうえいだいがくこう防衛ぼうえいがく研究けんきゅうかいへん軍事ぐんじがく入門にゅうもん』(かや書房しょぼう、2000ねん)の陸上りくじょう戦力せんりょくしょう参考さんこうとしている。
  28. ^ この著作ちょさくむら保信やすのぶやく『デモクラシーの理想りそう現実げんじつ』(はら書房しょぼう、1985ねん)で全訳ぜんやくされている。
  29. ^ 一般いっぱんてきには師団しだんdivisionとは、言葉ことばどおり「(ぐんを)分割ぶんかつしたもの」であり、モーリス・ド・サックス理論りろんヴィクトル=フランソワ (だい2だいブロイ公爵こうしゃく)実践じっせんしたことにはじまるとされる。
  30. ^ 正確せいかくにはグデーリアンのまえにイギリスの軍人ぐんじんフラーによる機甲きこうせん研究けんきゅう存在そんざいしたが、グデーリアンは実戦じっせんにおいてその有効ゆうこうせい実証じっしょうしたことからも評価ひょうかされている。電撃でんげきせん参考さんこうとなるかれ著作ちょさく本郷ほんごうけんやく電撃でんげきせん-グデーリアン回想かいそうろく』(中央公論ちゅうおうこうろんしんしゃ、1999ねん)などがある。
  31. ^ ここの記述きじゅつ防衛大学校ぼうえいだいがくこう防衛ぼうえいがく研究けんきゅうかいへん軍事ぐんじがく入門にゅうもん』(かや書房しょぼう、2000ねん)の海上かいじょう戦略せんりゃくしょう参照さんしょうしている。
  32. ^ これはマハンの著作ちょさくろんじられており、北村きたむら謙一けんいちやくの『マハン海上かいじょう権力けんりょく史論しろん』(はら書房しょぼう、2008ねん新装しんそうばん)を参照さんしょうされたい。
  33. ^ かれ著作ちょさくでは陸上りくじょう戦力せんりょく海上かいじょう戦力せんりょく相補そうほせいがより詳細しょうさいろんじられている。著作ちょさく全訳ぜんやく戦略せんりゃく研究けんきゅう学会がっかいへん高橋たかはし弘道ひろみち編著へんちょ戦略せんりゃくろん大系たいけい8 コーベット』(芙蓉ふよう書房しょぼう出版しゅっぱん、2006ねん)でむことができる。
  34. ^ 防衛大学校ぼうえいだいがくこう防衛ぼうえいがく研究けんきゅうかいへん軍事ぐんじがく入門にゅうもん』(かや書房しょぼう、2000ねん)の航空こうくう戦力せんりょくしょう参照さんしょうされたい。
  35. ^ 経済けいざいりょく軍事ぐんじりょくあたえる影響えいきょうについてろんじた戦略せんりゃく思想家しそうかはピーター・パレットへん防衛大学校ぼうえいだいがくこう・「戦争せんそう戦略せんりゃく変遷へんせん研究けんきゅうかいやく現代げんだい戦略せんりゃく思想しそう系譜けいふ マキャヴェリからかく時代じだいまで』(ダイヤモンド社だいやもんどしゃ、1989ねん)でげられており、以下いか記述きじゅつ同書どうしょ依拠いきょしている。
  36. ^ この定義ていぎ防衛大学校ぼうえいだいがくこう安全あんぜん保障ほしょうがく研究けんきゅうかい編著へんちょ最新さいしんばん 安全あんぜん保障ほしょうがく入門にゅうもん』(亜紀あき書房しょぼう、2003ねん)でしめされたものである。
  37. ^ 戦略せんりゃくがく概説がいせつしたものにJohn Baylis, James Wirtz, Colin S. Gray, and Eliot Cohen, Strategy in the Comtemprary World, (Oxford: Oxford University Press, 2007).や西村にしむら繁樹しげき編著へんちょ『「戦略せんりゃく」の教化きょうかしょ』(芙蓉ふよう書房しょぼう出版しゅっぱん、2009ねん)などがある。
  38. ^ この問題もんだいかんする孫子まごこ戦略せんりゃく思想しそうについては金谷かなやおさむやくしんてい孫子まごこ』(岩波書店いわなみしょてん、2000ねん)の作戦さくせんへん参照さんしょうされたい。
  39. ^ 戦術せんじゅつがく概説がいせつした書籍しょせき一般いっぱん入手にゅうしゅできるものにHeadquarters Department of the Army, Field Manual 3-90(Department of the Army, 2001)や松村まつむら劭『バトル・シミュレーション 戦術せんじゅつ指揮しき 命令めいれいあたかた集団しゅうだんうごかしかた』(文藝春秋ぶんげいしゅんじゅう、2005ねん)などがある。
  40. ^ 防衛大学校ぼうえいだいがくこう防衛ぼうえいがく研究けんきゅうかいへん軍事ぐんじがく入門にゅうもん』(かや書房しょぼう、2000ねん)の後方こうほう支援しえんしょう参照さんしょうしている。

出典しゅってん

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  1. ^ 軍事ぐんじ(ぐんじ)の意味いみ - goo国語こくご辞書じしょ”. goo国語こくご辞書じしょ. 2020ねん11月5にち閲覧えつらん
  2. ^ 防衛大学校ぼうえいだいがくこう防衛ぼうえいがく研究けんきゅうかいへん軍事ぐんじがく入門にゅうもん』(かや書房しょぼう、2000ねん
  3. ^ ヘロドトス、 松平まつだいら千秋ちあきやく、『歴史れきし』(岩波いわなみ文庫ぶんこ
  4. ^ 金谷かなやおさむやく孫子まごこ』(岩波書店いわなみしょてん、2000ねん
  5. ^ クラウゼヴィッツちょ清水しみず多吉たきちやく 『戦争せんそうろん』(うえした) 中公ちゅうこう文庫ぶんこ
  6. ^ キッシンジャーちょ田中たなかたけかつ桃井ももいしんやく核兵器かくへいき外交がいこう政策せいさく』(日本にっぽん外政がいせい学会がっかい, 1958ねん抄訳しょうやくばん
  7. ^ 平和へいわうったえ』(岩波書店いわなみしょてん、1961ねん)66
  8. ^ 戦争せんそう平和へいわほう』プロレゴメナ29
  9. ^ サミュエル・ハンチントンちょ市川いちかわ良一りょういち新装しんそうばん ハンチントン 軍人ぐんじん国家こっか うえした』(はら書房しょぼう、2008ねん
  10. ^ Samuel E. Finer, The Man Horseback: The Role of the military in Politics, Second enlarged edition, first published by Pall mall Press 1962, Revised and published in Peregrine Books (Middlesex: Penguin Books, 1976).
  11. ^ T.R.Philips. Roots of Strategy(London, 1943)
  12. ^ Stephen Biddle, Military Power: Explaining Victory and defeat in Modern Battle, Princeton, NJ: Princeton University Press, 2004.
  13. ^ ハウスホーファーちょ太平洋たいへいよう協会きょうかいへん太平洋たいへいよう地政学ちせいがく』(岩波書店いわなみしょてん、1942ねん
  14. ^ Giulio Douhet, Command of the Air, (Office of Air Force History, United States Government Printing Office, 1983).
  15. ^ William Mitchell, Winged Defense: The Development and Possibilities of Modern Air Power-Economic and Military, New york and London, G.P. Putnam's Sons, 1925.和訳わやくされたものは戦略せんりゃく研究けんきゅう学会がっかい源田げんたこうへん戦略せんりゃくろん大系たいけい11 ミッチェル』(芙蓉ふよう書房しょぼう出版しゅっぱん、2006ねん)がある。
  16. ^ リデル・ハートちょ森沢もりさわ亀鶴きかくやく戦略せんりゃくろん 間接かんせつてきアプローチ』(はら書房しょぼう、1986ねん

参考さんこう文献ぶんけん

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その文献ぶんけん

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関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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