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沿岸警備隊 - Wikipedia

沿岸えんがん警備けいびたい

海上かいじょうにおいて警備けいびおこなじゅん軍事ぐんじ組織そしき警察けいさつ

ほん項目こうもくでは、各国かっこく沿岸えんがん警備けいびたい(えんがんけいびたい、英語えいご: Coast guard)についてべる。おおむね海上かいじょう安全あんぜん治安ちあんおよび環境かんきょう保護ほごかんする業務ぎょうむあつかっているが、下記かきとお位置いちづけや所掌しょしょう業務ぎょうむきわめて多彩たさいである[1]。また日本語にほんごわけさだまっておらず、英語えいご直訳ちょくやくした沿岸えんがん警備けいびたいのほか、そのまま片仮名かたかな転写てんしゃしたコーストガード、また海上保安庁かいじょうほあんちょう類似るいじする組織そしきとして海上かいじょう保安ほあん機関きかん(かいじょうほあんきかん)などももちいられているが[2]ほん項目こうもくでは「沿岸えんがん警備けいびたい」の表記ひょうきもちいる。

概説がいせつ

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沿岸えんがん警備けいびたい歴史れきしはいずれも比較的ひかくてきあさく、100ねんえる歴史れきしつものは一部いちぶであり、おおくがすうじゅうねん歴史れきしぎない[3]。しかし国連こくれん海洋かいようほう条約じょうやく(UNCLOS)検討けんとう採択さいたくとあわせて、1970年代ねんだい以降いこう沿岸えんがん警備けいびたい設立せつりつ増加ぞうかしており、2000ねん以降いこうさらにそのうごきが加速かそくしている[3]

海上保安庁かいじょうほあんちょうでは、2017ねんより、各国かっこく沿岸えんがん警備けいびたい長官ちょうかんによる多国たこくあいだ協議きょうぎとして「世界せかい海上かいじょう保安ほあん機関きかん長官ちょうかんきゅう会合かいごう」(Coast Guard Global Summit)を開催かいさいしている[4]。この会合かいごう参加さんかした機関きかんおおくが、みずからの組織そしき英語えいご名称めいしょうとして「コーストガード」を名乗なのっているが、その位置いちづけや所掌しょしょう業務ぎょうむきわめて多彩たさいである[2]

たとえばアメリカ沿岸えんがん警備けいびたい海上保安庁かいじょうほあんちょうは、海上かいじょう安全あんぜん治安ちあんおよび環境かんきょう保護ほごかんする業務ぎょうむ専任せんにんてき総合そうごうてき実施じっししている[2]。これにたいし、カナダ沿岸えんがん警備けいびたいイギリス沿岸えんがん警備けいびたいしゅとして海上かいじょう安全あんぜんおよび環境かんきょう保護ほごを、中国ちゅうごくうみ警局しゅとして海上かいじょう治安ちあん維持いじ任務にんむとする[2]。またベルギー沿岸えんがん警備けいびたい英語えいごばんのようにみずからは実働じつどう勢力せいりょくたず調整ちょうせい機能きのうてっする機関きかんもあれば、モルディブ沿岸えんがん警備けいびたいのように実質じっしつてき海軍かいぐんとしての機能きのう代行だいこうしている機関きかんもある[2]

沿岸えんがん警備けいびたい実施じっしする海上かいじょう安全あんぜん治安ちあんおよび環境かんきょう保護ほごかんする業務ぎょうむは、それぞれのくに社会しゃかいてき地理ちりてき環境かんきょうなどにおうじて決定けっていされているが、おおむねつぎのようなものが包含ほうがんされている[2]

海上かいじょう安全あんぜん確保かくほ

編集へんしゅう

海上かいじょう人命じんめいおよび資産しさん保護ほごし、海上かいじょうでの円滑えんかつ安全あんぜん経済けいざい活動かつどう確保かくほする業務ぎょうむであり、海上かいじょうにおける事故じこ災害さいがい防止ぼうしおよび対応たいおう海上かいじょう交通こうつう管理かんり水路すいろ調査ちょうさ保全ほぜん海上かいじょうにおける捜索そうさく救難きゅうなんひとしふくまれる[2]海上かいじょう経済けいざい活動かつどう活発かっぱつ船舶せんぱく大型おおがた気候きこう変動へんどうによるだい規模きぼ災害さいがい発生はっせい危険きけんせい拡大かくだいにより、沿岸えんがんこくにおいて、このような業務ぎょうむ重要じゅうようせいたかまっている[2]

海上かいじょうにおけるこのような業務ぎょうむ実施じっしにあたっては、ふねてい航空機こうくうきといった実働じつどう勢力せいりょくくわえて、安全あんぜんかんする情報じょうほう提供ていきょう遭難そうなん情報じょうほうあつかいのための通信つうしん施設しせつ不可欠ふかけつである[2]。かつては、これらの業務ぎょうむ海軍かいぐん実施じっしするくにおおかったが、沿岸えんがん警備けいびたいげたくにではこちらが所掌しょしょうするようになっている[2]

陸上りくじょう場合ばあいは、消防しょうぼう救急きゅうきゅう業務ぎょうむおこな消防しょうぼう機関きかんほう執行しっこう機関きかん分業ぶんぎょうされているのにたいし、海上かいじょうにおいては、救難きゅうなん災害さいがい対応たいおう海上かいじょうほう執行しっこうとはほぼ同種どうしゅふねてい航空機こうくうき対応たいおう可能かのうであることから、おおくのくにでは効率こうりつ観点かんてんからこれらの業務ぎょうむ分化ぶんかせず、沿岸えんがん警備けいびたいにおいて一体いったいてき対応たいおうするように発展はってんしてきている[2]

海上かいじょう治安ちあん確保かくほ

編集へんしゅう

海洋かいよう輸送ゆそう漁業ぎょぎょうレジャーなど様々さまざま活動かつどうであり、また沿岸えんがんこくにとっては国境こっきょうともなることから、その治安ちあん (Maritime security確保かくほ不可欠ふかけつとなる[2]。かつては、条約じょうやくじょう執行しっこうけん行使こうし主体しゅたい軍艦ぐんかんになってきたが、沿岸えんがん警備けいびたい整備せいびすすむにつれて、こちらが運用うんようする船舶せんぱくおおやけせん)に重点じゅうてんうつってきている[1]たとえば1958ねん署名しょめいされた公海こうかいかんする条約じょうやくでは、条文じょうぶんによって、権限けんげん行使こうし主体しゅたいとして軍艦ぐんかんおおやけせん両方りょうほう規定きていしている場合ばあい軍艦ぐんかんのみを規定きていしている場合ばあいとがあったが、1982ねん署名しょめいされた国連こくれん海洋かいようほう条約じょうやくでは、軍艦ぐんかんとはべつおおやけせん権限けんげん行使こうし主体しゅたいとして明記めいきされた[1]

公共こうきょう安全あんぜん秩序ちつじょ維持いじ
海上かいじょうにおける犯罪はんざい予防よぼう鎮圧ちんあつ犯罪はんざい捜査そうさ被疑ひぎしゃ逮捕たいほ法令ほうれい励行れいこう、その公共こうきょう安全あんぜん秩序ちつじょ維持いじといった海上かいじょうにおけるほう執行しっこう業務ぎょうむは、陸上りくじょう同様どうよう沿岸えんがんこくにとって不可欠ふかけつ業務ぎょうむである[2]一方いっぽう土地とちである領土りょうどことなり、領海りょうかいにおいては外国がいこく船舶せんぱく無害むがい通航つうこうみとめられていることから、領海りょうかいない進入しんにゅうした外国がいこく船舶せんぱく無害むがいとみなされない活動かつどうおこなっていないかを確認かくにんし、必要ひつよう措置そちることも海上かいじょう領域りょういきでは必要ひつようとなる[2]
国境こっきょう管理かんり
国境こっきょう管理かんり関連かんれんした税関ぜいかん出入国しゅつにゅうこく管理かんり検疫けんえき薬物やくぶつ規制きせいといった業務ぎょうむは、海上かいじょうにおいても不可欠ふかけつである[2]通常つうじょう、これら国境こっきょう管理かんり関連かんれんする業務ぎょうむについては、地上ちじょうにおいてそれらの業務ぎょうむ担当たんとうするしょ機関きかん海上かいじょうでもつづ担当たんとうすることがおおいが、これらの機関きかん保有ほゆうする船舶せんぱく小型こがたのものがおおいことから、より大型おおがた船舶せんぱく保有ほゆうする沿岸えんがん警備けいびたい関与かんよするくにえている[2]
領域りょういき警備けいび
沿岸えんがんこくにとって、領域りょういき外縁がいえんである国境こっきょう管理かんりだけでなく、領域りょういきそのものの警備けいび保全ほぜん常態じょうたいてき不可欠ふかけつ業務ぎょうむである[2]上記じょうき外国がいこく船舶せんぱくによる無害むがい通航つうこう確認かくにんも、自国じこく領域りょういきかんする主張しゅちょう対外たいがいてき抵抗ていこうりょく維持いじするという側面そくめんもある[2]。とりわけ、侵害しんがい船舶せんぱく軍艦ぐんかんおおやけせんである場合ばあいには、国際こくさいほうじょう、これらの船舶せんぱくたいする立入検査たちいりけんさ拿捕だほといった措置そち実施じっしないが、その侵害しんがい行為こうい侵害しんがい船舶せんぱくはたこく意思いし体現たいげんしたものにもなりることから、現場げんばにおける国家こっかとしての意思いし表示ひょうじ対応たいおうは、外交がいこうてき対応たいおうとともに、領域りょういき保全ほぜんにおいてきわめて重要じゅうようである[2]。またこのような場合ばあいに、軍艦ぐんかん同士どうし対峙たいじとなると緊張きんちょうたかまることから、沿岸えんがん警備けいびたいふねてい対応たいおうすることが緊張きんちょう拡大かくだい防止ぼうしするとの認識にんしきひろまっている[2]
海洋かいよう権益けんえき保全ほぜん
国連こくれん海洋かいようほう条約じょうやくにより、沿岸えんがんこく排他はいたてき経済けいざい水域すいいき(EEZ)および大陸棚たいりくだなにおいて、生物せいぶつ生物せいぶつ天然てんねん資源しげん探査たんさ開発かいはつとうかんする主権しゅけんてき権利けんりゆうする[2]水産すいさん資源しげんたいする密漁みつりょうふるくから問題もんだいになってきたが、海底かいてい資源しげんについても、違法いほう探査たんさ開発かいはつなどの活動かつどう監視かんし防止ぼうし重要じゅうようになっている[2]

海洋かいよう環境かんきょう保護ほご

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国連こくれん海洋かいようほう条約じょうやくにより、沿岸えんがんこくはEEZないにおいて海洋かいよう環境かんきょう保護ほごおよび保全ほぜんかんする管轄かんかつけんゆうし、外国がいこく船舶せんぱくによる海洋かいよう汚染おせんたいして、関連かんれんする国際こくさいてき規則きそくしたがって、所要しょよう防止ぼうし規制きせいなどの措置そちをとることができる[2]

本来ほんらい、これらの業務ぎょうむ各国かっこく環境かんきょう当局とうきょく業務ぎょうむではあるが、海洋かいよう汚染おせん監視かんし確認かくにん取締とりしまり防除ぼうじょといった業務ぎょうむにはふねてい航空機こうくうきとう実働じつどう勢力せいりょく不可欠ふかけつであることから、沿岸えんがん警備けいびたい主要しゅよう業務ぎょうむひとつとなっている[2]

組織そしき形態けいたい

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沿岸えんがん警備けいびたい組織そしき形態けいたい多彩たさいだが、おおきくけて、独立どくりつ機関きかんである場合ばあい主要しゅよう任務にんむゆうする機関きかん傘下さんか設置せっちされている場合ばあいかく組織そしき調整ちょうせい機関きかんである場合ばあいがある[3]。なお、かく機関きかん実施じっしする海上かいじょう保安ほあん業務ぎょうむ内容ないようはそれぞれことなっており、また海上かいじょう保安ほあん業務ぎょうむにあわせて軍事ぐんじ機能きのうゆうするものもあり、その任務にんむ多彩たさいである[3]

独立どくりつ機関きかん

編集へんしゅう

実働じつどう機関きかんぞくさずに独立どくりつして、上記じょうきのような機能きのう実施じっししている機関きかんである[3]

総合そうごうてき実施じっししている機関きかんとしては、アメリカ沿岸えんがん警備けいびたい海上保安庁かいじょうほあんちょうのほか、大韓民国だいかんみんこく海洋かいよう警察庁けいさつちょうインド沿岸えんがん警備けいびたいマレーシア海上かいじょうほう執行しっこうちょう英語えいごばんフィリピン沿岸警備隊ふぃりぴんえんがんけいびたいコスタリカ沿岸えんがん警備けいびたいなどがある[3]。これらの沿岸えんがん警備けいびたい所属しょぞくする行政ぎょうせい機関きかんは、アメリカが国土こくど安全あんぜん保障ほしょうしょう日本にっぽん国土こくど交通省こうつうしょう大韓民国だいかんみんこく海洋かいよう水産すいさん、インドが国防省こくぼうしょう、マレーシアが内務省ないむしょうフィリピン運輸省うんゆしょうなど様々さまざまである[3]。またコスタリカのように、軍事ぐんじ組織そしきゆうさないくにでも、沿岸えんがん警備けいびたいゆうしている場合ばあいもある[3]

一方いっぽう独立どくりつ機関きかんではあるが、上記じょうきのとおり、カナダやイギリスの沿岸えんがん警備けいびたいのように、しゅとして海上かいじょう安全あんぜんおよび環境かんきょう保護ほご任務にんむとしているものもある[3]。この場合ばあい海上かいじょう治安ちあんかんする業務ぎょうむ機関きかん実施じっししているものとかんがえられ[3]たとえばイギリスでは海軍かいぐん洋上ようじょうほう執行しっこう実働じつどう機関きかんとなっているほか[5]密輸みつゆ防止ぼうしなどには内務ないむ大臣だいじん指揮しき国境こっきょう部隊ぶたいもちいられる[6]

またパキスタンでは、洋上ようじょう担当たんとうする海上かいじょう警備けいびちょう英語えいごばんと、沿岸えんがん河川かせん担当たんとうする沿岸えんがん警備けいびたい英語えいごばんという2つの独立どくりつ機関きかん併存へいそんしている[3]

主要しゅよう任務にんむゆうする機関きかん傘下さんか機関きかん

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軍事ぐんじ機関きかん

編集へんしゅう

海軍かいぐんなど、軍事ぐんじ活動かつどうおも任務にんむとする軍事ぐんじ機関きかん本体ほんたい、あるいはその下部かぶ組織そしき上記じょうきのような機能きのうっている場合ばあいである[3]

ブラジルメキシコでは海軍かいぐん自身じしん沿岸えんがん警備けいびたい兼任けんにんしている[3]ポルトガルでは、海軍かいぐん司令しれい長官ちょうかん参謀さんぼう総長そうちょう海事かいじ行政ぎょうせいおよび海上かいじょうほう執行しっこう統括とうかつする国家こっか海事かいじ当局とうきょく (National Maritime Authority兼務けんむするかたちで、海軍かいぐん海上かいじょう保安ほあん業務ぎょうむ担当たんとうしている[3]一方いっぽうノルウェー沿岸えんがん警備けいびたいイタリア沿岸えんがん警備けいびたい海軍かいぐん下部かぶ組織そしきとして設置せっちされているが、これらの沿岸えんがん警備けいびたい海上かいじょう保安ほあん業務ぎょうむ専任せんにんてき総合そうごうてき実施じっししており、その意味いみでは独立どくりつ沿岸えんがん警備けいびたい類似るいじする[3]。そのモルディブセントクリストファー・ネイビスセーシェルトリニダード・トバゴでは、国内こくない海軍かいぐん存在そんざいしないため、沿岸えんがん警備けいびたいがその機能きのう代行だいこうしている[3]

なお、現代げんだいではぐんほう執行しっこう使用しようすることをひかえるというかんがかたひろまっており、ぐんもちいる場合ばあいでも、軍法ぐんぽうではなく一般いっぱんほうもとづき、文民ぶんみん組織そしきじゅんじて行動こうどうすることが原則げんそくとなっている[1]イギリス場合ばあいはこれをマンスフィールド原則げんそくしょうしており[ちゅう 1]文民ぶんみん当局とうきょくたいするぐん支援しえん (MACP原則げんそくとして位置いちづけられる[7]

国境こっきょう警備けいび機関きかん

編集へんしゅう

国境警備隊こっきょうけいびたいまたはその海上かいじょう部門ぶもん上記じょうきのような機能きのうっている場合ばあいである[3]ロシア国境こっきょうぐん海上かいじょう部門ぶもん英語えいごめいとして「コーストガード」を名乗なのっている[3]。またオーストラリア国境警備隊こっきょうけいびたい英語えいごばんには、海軍かいぐん少将しょうしょう指揮しきかんとする海上かいじょう国境こっきょう司令しれい (MBC設置せっちされ、国境警備隊こっきょうけいびたいおよび海軍かいぐん実働じつどう勢力せいりょく使つかって海上かいじょう保安ほあん業務ぎょうむ実施じっししている[3]

治安ちあん警察けいさつ機関きかん

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一般いっぱん警察けいさつ機関きかんとはべつじゅん軍事ぐんじ組織そしきとしてもうけられた治安ちあん警察けいさつ国家こっか憲兵けんぺいまたはその下部かぶ組織そしき上記じょうきのような機能きのうっている場合ばあいである[3]中国ちゅうごく人民じんみん武装ぶそう警察けいさつ部隊ぶたい傘下さんかにある中国ちゅうごくうみ警局や、スペイン治安ちあん警備けいびたい傘下さんかにある海上かいじょう部隊ぶたい (SEMARがあり、中国ちゅうごくうみ警局は英語えいごめいとして「コーストガード」を名乗なのっている[3]

一般いっぱん警察けいさつ機関きかん

編集へんしゅう

一般いっぱん警察けいさつ機関きかんまたはその海上かいじょう部門ぶもん上記じょうきのような機能きのうっている場合ばあいである[3]シンガポール警察けいさつたい警察けいさつ沿岸えんがん警備けいびたいモーリシャス警察けいさつたい沿岸えんがん警備けいびたいのほか、ぐん保有ほゆうしていないおおくの島嶼とうしょ国家こっかでもこの形態けいたいがとられている[3]

調整ちょうせい機関きかん

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上記じょうきのような機能きのう単独たんどく機関きかんもうけるのではなく、警察けいさつ税関ぜいかん海運かいうん当局とうきょく漁業ぎょぎょう当局とうきょく海軍かいぐんなどの様々さまざま関係かんけい機関きかんが、調整ちょうせい機関きかん調整ちょうせいしたに、それぞれの所掌しょしょうないでこれらの機能きのうっている場合ばあいである[3]

たとえばベルギー沿岸えんがん警備けいびたい英語えいごばん実働じつどう部隊ぶたいたず、調整ちょうせい機関きかんとして、連邦れんぽう政府せいふ地方ちほう政府せいふ関係かんけいしょ機関きかん海上かいじょう保安ほあん業務ぎょうむかんする調整ちょうせいおこなっている[3]。ドイツの連邦れんぽう沿岸えんがん警備けいびたいKüstenwache des Bundes)は、関係かんけいしょ機関きかん実働じつどう部隊ぶたいたいする総称そうしょうであり、調整ちょうせい機関きかんである海上かいじょう保安ほあんセンター(MSZ)が、その内部ないぶ設置せっちされた合同ごうどうじょうきょう把握はあくセンター(GLZ-See)をつうじて運用うんよう調整ちょうせいおこなっている[3]。またフランスでは、海洋かいよう事務じむ総局そうきょくSGMer)が調整ちょうせい機関きかんとして、コーストガード機能きのう運用うんようセンター(Centre opérationnel de la fonction garde-côtes, CoFGC)をつうじて、海上かいじょう憲兵けんぺいたいなど関係かんけいしょ機関きかん実働じつどう部隊ぶたい調整ちょうせいおこなっている[3]

なお、インドネシアでは、調整ちょうせい機関きかん母体ぼたいとして、実働じつどう部隊ぶたいゆうする総合そうごうてき専任せんにんてき沿岸えんがん警備けいびたいであるインドネシア海上かいじょう保安ほあん機構きこう (BAKAMLA設置せっちした[3]

武力ぶりょく紛争ふんそうほうじょう地位ちい

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軍事ぐんじ機関きかん国境こっきょう警備けいび機関きかん如何いかわず、当該とうがいこく政府せいふによって軍隊ぐんたい地位ちい付与ふよされ、または武力ぶりょく行使こうしともな軍事ぐんじてき任務にんむ国内こくないほうじょう付与ふよされている機関きかんについては、国際こくさいほうじょう軍隊ぐんたい(armed forces)としてあつかわれ、国際こくさいほう上合かみあい法的ほうてき戦闘せんとう参加さんかすること可能かのうであり、戦闘せんとういん資格しかく捕虜ほりょ資格しかくゆうするとされる[8]。また、文民ぶんみん警察けいさつ機関きかんとしての沿岸えんがん警備けいびたい海上かいじょう警察けいさつであっても、これを海軍かいぐんへと公式こうしき編入へんにゅうし、敵対てきたいする紛争ふんそう当事とうじしゃ通知つうちすること合法ごうほうてき軍隊ぐんたいとしてあつかわれる[ちゅう 2]

一方いっぽうで、2023ねん2がつまつ現在げんざい軍隊ぐんたい編入へんにゅうされておらず指揮しき系統けいとうこととし、また当該とうがいこく国内こくないほうじょう武力ぶりょく行使こうしともな軍事ぐんじてき任務にんむ付与ふよされていない治安ちあん警察けいさつ機関きかん一般いっぱん警察けいさつ機関きかんとしての文民ぶんみん沿岸えんがん警備けいびたい(Coast Guard)ないし海上かいじょう警察けいさつ(Maritime Police)といった一定いってい武装ぶそう組織そしきを、どのような場合ばあいに「軍隊ぐんたい(armed forces)」としてあつかうか、どこまでなら軍隊ぐんたいいたらない「武装ぶそうしたほう執行しっこう機関きかん(armed law enforcement agency)」としてあつかうのかを機能きのうてき側面そくめんから明示めいじてき定義ていぎした国際こくさい条約じょうやく存在そんざいしていない[ちゅう 3]

この場合ばあい一般いっぱんてきに「軍隊ぐんたいではない海上かいじょう警察けいさつ」は「文民ぶんみんないしみんようぶつ」と定義ていぎされ、軍隊ぐんたいからの攻撃こうげきから保護ほごされるとほぐされる一方いっぽうで、その構成こうせい要員よういんおよ装備そうび施設しせつが「敵対てきたい行為こういへの直接的ちょくせつてき参加さんか」ないし「軍事ぐんじ目標もくひょう定義ていぎたす」場合ばあいは、文民ぶんみんとしての保護ほご消滅しょうめつし、軍隊ぐんたいからの国際こくさいほう上合かみあい法的ほうてき攻撃こうげき対象たいしょうとなる[ちゅう 4]。いかなる場合ばあい文民ぶんみんとしての保護ほご消滅しょうめつするかについては沿岸えんがん警備けいびたい海上かいじょう警察けいさつであることによる特殊とくしゅせいく、文民ぶんみん機関きかん同様どうようであるとされる[10]いちれいとして、かならずしも海上かいじょう警察けいさつ直接ちょくせつ適用てきようできるとはかぎらないものの、民間みんかん商船しょうせん合法ごうほうてき軍事ぐんじ目標もくひょうとなり敵対てきたい行為こういれいとして「機雷きらい敷設ふせつ掃海そうかい海底かいていパイプライン切断せつだんとう破壊はかい工作こうさく中立ちゅうりつこく商船しょうせんへの臨検りんけん商船しょうせんへの攻撃こうげき」、「軍隊ぐんたい輸送ゆそう軍艦ぐんかんへの補給ほきゅうとう海軍かいぐん補助ほじょ船舶せんぱくとしての活動かつどう」、「当該とうがいこく軍事ぐんじけい情報じょうほうシステムに統合とうごうされている場合ばあいまたはそれを支援しえんする場合ばあい偵察ていさつ早期そうき警戒けいかい監視かんし、C4ISRにかか任務にんむへの従事じゅうじ)」、「軍艦ぐんかんまた軍用ぐんよう航空機こうくうき護衛ごえい行動こうどうする場合ばあい」、「停船ていせん命令めいれい拒否きょひ拿捕だほ積極せっきょくてき抵抗ていこうする場合ばあい」、「軍艦ぐんかん損害そんがいあたえる程度ていど武装ぶそうする場合ばあい[ちゅう 5]、ただし個人こじん携行けいこうようけい火器かきやチャフとう回避かいひシステムをのぞく」、「軍事ぐんじ物資ぶっし輸送ゆそうとう軍事ぐんじ活動かつどう効果こうかてき貢献こうけんする場合ばあい」が例示れいじされている[12]とくに、海戦かいせん法規ほうきにおいては「軍事ぐんじ情報じょうほう送信そうしん敵対てきたい行為こういである」とほぐされており、哨戒しょうかい活動かつどう恒常こうじょうてき任務にんむとする沿岸えんがん警備けいびたい海上かいじょう警察けいさつ武力ぶりょく紛争ふんそう相手あいてこく海軍かいぐん艦艇かんてい位置いち情報じょうほう通報つうほうおこなった場合ばあい文民ぶんみんみんようぶつとしての保護ほご喪失そうしつあい法的ほうてき攻撃こうげき目標もくひょうとなるとされている[13]

一方いっぽうで、ほう執行しっこう機関きかんとしての比例ひれい原則げんそくでその装備そうび通常つうじょう説明せつめいできないだい口径こうけいほう対地たいちたいかんミサイルを装備そうびするならば、武力ぶりょく行使こうしともな軍事ぐんじてき任務にんむ付与ふよされた実質じっしつてき軍隊ぐんたい及として国際こくさいほうじょうあつかわれ、軍事ぐんじ目標もくひょう定義ていぎたす可能かのうせいはあるものの、どこまでの装備そうびならほう執行しっこう機関きかんとして許容きょようされるのかについての定説ていせつはもとより[11]、それを明確めいかく定義ていぎした国際こくさい条約じょうやく国際こくさい司法しほう機関きかん裁定さいてい安保理あんぽり決議けつぎとうは2023ねん2がつまつ時点じてん存在そんざいしていない。

各国かっこく沿岸えんがん警備けいびたい一覧いちらん

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アジアオセアニア

アメリカしゅう

ヨーロッパ

脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ 1780ねんゴードン暴動ぼうどう英語えいごばんかんする裁判さいばんマンスフィールド伯爵はくしゃく (初代しょだい提唱ていしょうしたもので、権威けんいある見解けんかいとして、その踏襲とうしゅうされた[7]
  2. ^ ジュネーヴしょ条約じょうやくだいいち追加ついか議定ぎていしょだい43じょう3「紛争ふんそう当事とうじしゃは、じゅん軍事ぐんじてきまた武装ぶそうしたほう執行しっこう機関きかん自国じこく軍隊ぐんたい編入へんにゅうしたときは、紛争ふんそう当事とうじしゃにそのむね通報つうほうする[9]。」
  3. ^ 1978ねん12月7にち発効はっこうした ジュネーヴしょ条約じょうやくだいいち追加ついか議定ぎていしょだい43じょうによれば、「軍隊ぐんたいとは「部下ぶか行動こうどうについて当該とうがい紛争ふんそう当事とうじしゃたいして責任せきにん司令しれいしたにある組織そしきされおよ武装ぶそうしたすべての兵力へいりょく集団しゅうだんおよ部隊ぶたいから[9]」とあるものの、これのみでは循環じゅんかん論法ろんぽうおちいってしまい、沿岸えんがん警備けいびたい海上かいじょう警察けいさつが「軍隊ぐんたい文民ぶんみん警察けいさつ武装ぶそうしたほう執行しっこう機関きかん)か」を判断はんだんすること困難こんなん[8]
  4. ^ ジュネーヴしょ条約じょうやくだいいち追加ついか議定ぎていしょだい65じょう1「ぐん文民ぶんみん保護ほご組織そしき以外いがい文民ぶんみん保護ほご組織そしきならびにその要員よういん建物たてもの避難ひなんしょおよ物品ぶっぴんけることのできる保護ほごは、これらのものが本来ほんらい任務にんむから逸脱いつだつしててき有害ゆうがい行為こういおこなまたおこなうために使用しようされる場合ばあいのぞくほか、消滅しょうめつしない。ただし、この保護ほごは、適当てきとう場合ばあいにはいつでも合理ごうりてき期限きげんさだめる警告けいこくはっせられ、かつ、その警告けいこく無視むしされたのちにおいてのみ、消滅しょうめつさせることができる。[9]。」
  5. ^ ただし、21世紀せいきにおいて一般いっぱん商船しょうせんはともかく、一般いっぱん警察けいさつとしての沿岸えんがん警備けいびたい海上かいじょう警察けいさつ機関きかんほう程度ていど武装ぶそうをすることがとがめられることはまずなく、日本国にっぽんこく海上保安庁かいじょうほあんちょうにおいても2023ねん現在げんざい巡視じゅんしせんに40mm機関きかんほう搭載とうさいしており、またその創設そうせつには76mmほう搭載とうさいした軍用ぐんよう戦闘せんとうかん転用てんようした巡視じゅんしせん存在そんざいしていた[11]が、創設そうせつから2023ねん現在げんざいいたるまで純粋じゅんすい海上かいじょうほう執行しっこう機関きかんとして存在そんざいしている。

出典しゅってん

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  1. ^ a b c d 村上むらかみ & もり 2009, pp. 33–45.
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x 岩並いわなみ & 大根だいこん 2021, pp. 3–12.
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab 岩並いわなみ & 大根だいこん 2021, pp. 12–20.
  4. ^ 海上保安庁かいじょうほあんちょう. “世界せかい海上かいじょう保安ほあん機関きかん長官ちょうかんきゅう会合かいごう”. 2022ねん7がつ18にち閲覧えつらん
  5. ^ 上田うえだ 2003.
  6. ^ Our fleet of cutters”. 2022ねん7がつ22にち閲覧えつらん
  7. ^ a b 黒木くろき 2021.
  8. ^ a b くろ﨑 et al. 2021, p. 479.
  9. ^ a b c ジュネーヴしょ条約じょうやくだいいち追加ついか議定ぎていしょ(ジュネーヴしょ条約じょうやくだいいち追加ついか議定ぎていしょ
  10. ^ くろ﨑 et al. 2021, p. 481.
  11. ^ a b くろ﨑 et al. 2021, p. 480.
  12. ^ 鈴木すずき 2016, p. 141.
  13. ^ くろ﨑 et al. 2021, p. 482.

参考さんこう文献ぶんけん

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関連かんれん項目こうもく

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