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無害通航 - Wikipedia

無害むがい通航つうこう

外国がいこく船舶せんぱく沿岸えんがんこく安全あんぜんなどをがいさないことを条件じょうけんとして事前じぜん通告つうこくすることなく領海りょうかい通航つうこうすること

無害むがい通航つうこう(むがいつうこう、英語えいご: Innocent passage)とは、沿岸えんがんこく平和へいわ秩序ちつじょ安全あんぜんがいさないことを条件じょうけんとして、沿岸えんがんくにたいして事前じぜん通告つうこくをすることなく沿岸えんがんこく領海りょうかい外国がいこく船舶せんぱく通航つうこうすることをす。またこのような通航つうこう保護ほごするための当然とうぜん権利けんりとして、国際こくさい海洋かいようほうにおいては、内陸ないりくこくふくすべてのくに船舶せんぱくは、他国たこく領海りょうかいにおいて無害むがい通航つうこうけんゆうする[1][2]ものとされる。

一方いっぽう領海りょうかい沿岸えんがんこくは、自国じこく領海りょうかいないにおいて国家こっか主権しゅけんもとづき、領海りょうかい使用しよう条件じょうけんさだめたり航行こうこう規制きせいすることができるが、他国たこく無害むがい通航つうこう妨害ぼうがいする結果けっかとならないように、一定いってい国際こくさい義務ぎむされる[3]

1958ねん採択さいたくされた領海りょうかい条約じょうやくだい14じょう4こうでは、無害むがい通航つうこうとは「沿岸えんがんこく平和へいわ秩序ちつじょまた安全あんぜんがいしない」航行こうこう定義ていぎされ[3]1982ねん国連こくれん海洋かいようほう条約じょうやくだい19じょうだい1こうでは前記ぜんき領海りょうかい条約じょうやくだい14じょうだい4こうさだめられた無害むがいせいかんする定義ていぎ踏襲とうしゅうされ、どうじょうだい2こうでは無害むがいとみなされない活動かつどう具体ぐたいてき列挙れっきょされた[4]

沿革えんかく 編集へんしゅう

1958ねん領海りょうかい条約じょうやくだい14じょうだい4こう[5]
通航つうこうは、沿岸えんがんこく平和へいわ秩序ちつじょまた安全あんぜんがいしないかぎり、無害むがいとされる。無害むがい通航つうこうは、この条約じょうやく規定きていおよ国際こくさいほうほか規則きそくしたがえつておこなわなければならない。
1982ねん国連こくれん海洋かいようほう条約じょうやくだい19じょう[6]
  1. 通航つうこうは、沿岸えんがんこく平和へいわ秩序ちつじょまた安全あんぜんがいしないかぎり、無害むがいとされる。無害むがい通航つうこうは、この条約じょうやくおよ国際こくさいほうほか規則きそくしたがっておこなわなければならない。
  2. 外国がいこく船舶せんぱく通航つうこうは、当該とうがい外国がいこく船舶せんぱく領海りょうかいにおいてつぎ活動かつどうのいずれかに従事じゅうじする場合ばあいには、沿岸えんがんこく平和へいわ秩序ちつじょまた安全あんぜんがいするものとされる。
(a) 武力ぶりょくによる威嚇いかくまた武力ぶりょく行使こうしであって、沿岸えんがんこく主権しゅけん領土りょうど保全ほぜんしくは政治せいじてき独立どくりつたいするものまたはその国際こくさい連合れんごう憲章けんしょう規定きていする国際こくさいほうしょ原則げんそく違反いはんする方法ほうほうによるもの
(b) 兵器へいき(種類しゅるいのいかんをわない。)をもちいる訓練くんれんまた演習えんしゅう
(c) 沿岸えんがんこく防衛ぼうえいまた安全あんぜんがいすることとなるような情報じょうほう収集しゅうしゅう目的もくてきとする行為こうい
(d) 沿岸えんがんこく防衛ぼうえいまた安全あんぜん影響えいきょうあたえることを目的もくてきとする宣伝せんでん行為こうい
(e) 航空機こうくうき発着はっちゃくまた積込つみこ
(f) 軍事ぐんじ機器きき発着はっちゃくまた積込つみこ
(g) 沿岸えんがんこく通関つうかんじょう財政ざいせいじょう出入国しゅつにゅうこく管理かんりじょうまた衛生えいせいじょう法令ほうれい違反いはんする物品ぶっぴん通貨つうかまたひと積込つみこまた積卸つみおろ
(h) この条約じょうやく違反いはんする故意こいのかつ重大じゅうだい汚染おせん行為こうい
(i) 漁獲ぎょかく行為こうい
(j) 調査ちょうさ活動かつどうまた測量そくりょう活動かつどう実施じっし
(k) 沿岸えんがんこく通信つうしんけいまた施設しせつへの妨害ぼうがい目的もくてきとする行為こうい
(l) 通航つうこう直接ちょくせつ関係かんけいゆうしないその活動かつどう

無害むがい通航つうこう制度せいど国際こくさいほううえ成立せいりつしたのはじゅうしょう主義しゅぎから自由じゆう貿易ぼうえき主義しゅぎ転換てんかんした1840年代ねんだい以降いこうのことであるといわれる[2]無害むがい通航つうこうみと外国がいこく船舶せんぱく領海りょうかいない通航つうこうけん確保かくほすることで、領海りょうかいたいする沿岸えんがんこく権利けんり規制きせいしようとしたのである[2]。それより以前いぜん17世紀せいきまでは、領海りょうかいにおいて外国がいこく船舶せんぱく沿岸えんがんこく恩恵おんけいによる許可きょかによって無害むがい通過つうかみとめられるだけであった[2]

19世紀せいきには領海りょうかいにおける無害むがい通航つうこう公海こうかい自由じゆう原則げんそく当然とうぜん結果けっかとしてすべての船舶せんぱくみとめられるとされたが、これを規制きせいする沿岸えんがんこく権利けんりについては領域りょういき主権しゅけん根拠こんきょとするのか、地役ちえきけん根拠こんきょとするのか、意見いけん対立たいりつしてきた[7]。その領海りょうかいない外国がいこく船舶せんぱく通航つうこう自由じゆうみとめながら、沿岸えんがんこく規制きせいという観点かんてんから安全あんぜん公序こうじょ歳入さいにゅう軍事ぐんじてき安全あんぜんへの有害ゆうがいせい有無うむという基準きじゅん導入どうにゅうされた[7]。このようにして当初とうしょ船舶せんぱく具体ぐたいてき行為こういなどではなくふねしゅなどのような内在ないざいてき要因よういん重視じゅうしされ、ついで船舶せんぱくじょうおこなわれる具体ぐたいてき行為こうい船舶せんぱく航行こうこう態様たいようなどにも着目ちゃくもくされるようになっていく[7]

だい世界せかい大戦たいせんまえには、ふねしゅ基準きじゅんとする無害むがいせい認定にんてい基準きじゅん有力ゆうりょくとなった[7]。この基準きじゅんによれば、外国がいこくわたしせん国際こくさい通商つうしょう交通こうつう自由じゆうなどの観点かんてんから国際こくさいほうじょう領海りょうかいない通航つうこう権利けんりみとめられるとされたが、外国がいこく軍艦ぐんかんわたしせん場合ばあいことなり性質せいしつじょう有害ゆうがいせい推定すいていされることから、外国がいこく軍艦ぐんかん領海りょうかいない通航つうこう慣例かんれい国際こくさい礼譲れいじょうなどによりみとめられるにしかぎないとされたのである[7]。これにたいして戦後せんごになると、航行こうこううえ不可避ふかひてき領海りょうかいない通航つうこうかんしては軍艦ぐんかんわたしせん区別くべつする必要ひつようはなく、無害むがいせい認定にんてい船舶せんぱく具体ぐたいてき行為こうい態様たいようによっておこなわれるべきとする立場たちばあらわれた[7]たとえば1949ねんコルフ海峡かいきょう事件じけん国際司法裁判所こくさいしほうさいばんしょ判決はんけつでは、軍艦ぐんかんであっても行為こうい態様たいよう着目ちゃくもくし、武力ぶりょく行使こうし威嚇いかく該当がいとうするようなものでないかぎりは無害むがいせい推定すいていされると判断はんだんされた[7]

1958ねん領海りょうかい条約じょうやくだい14じょうだい4こうでは、無害むがいかどうかを判断はんだんするにさいして特定とくてい基準きじゅん採用さいようされず、そのため船舶せんぱく具体ぐたいてきにどのような行為こういをするかという行為こうい基準きじゅん(行為こうい基準きじゅん)とする無害むがいせい認定にんていだけでなく、たとえば船舶せんぱく軍艦ぐんかんかどうかなど、船舶せんぱく種類しゅるい性質せいしつなどを基準きじゅん(ふねしゅ基準きじゅん)とした無害むがいせい認定にんてい余地よちがある規定きていとなった[4]1982ねん国連こくれん海洋かいようほう条約じょうやくでは、だい19じょうだい1こう上記じょうき領海りょうかい条約じょうやくだい14じょうだい4こう無害むがいせいかんする定義ていぎをそのまま踏襲とうしゅうしながら、だい19じょうだい2こう無害むがいとはされない活動かつどう具体ぐたいてき列挙れっきょされた(#無害むがい基準きじゅん参照さんしょう)[4]

国連こくれん海洋かいようほう条約じょうやくにおける制度せいど 編集へんしゅう

通航つうこう定義ていぎ 編集へんしゅう

国連こくれん海洋かいようほう条約じょうやくだい18じょうによれば、無害むがい通航つうこう制度せいどにおける「通航つうこう」とは領海りょうかい継続けいぞくてきかつ迅速じんそく通過つうか、または内水うすいへの出入でいりのための航行こうこうとされる[2]。そのため不可抗力ふかこうりょく遭難そうなんなどの場合ばあいのぞ外国がいこく船舶せんぱく領海りょうかいない停船ていせん投錨とうびょうをしたり、徘徊はいかいやその不審ふしん行動こうどうなどあきらかに通過つうか以外いがい目的もくてきによる活動かつどう通常つうじょうみとめられない[2]外国がいこく船舶せんぱく内水うすい出入でいりする目的もくてき領海りょうかい航行こうこうする場合ばあいには慣習かんしゅう国際こくさいほうじょう無害むがい通航つうこうけんゆうすると推定すいていされるが、沿岸えんがんこく内水うすいでの自国じこく利益りえき確保かくほする必要ひつようから国内こくないほうじょう制度せいどもとづく規制きせいをする場合ばあいもある[2]

無害むがい基準きじゅん 編集へんしゅう

イギリス軍艦ぐんかんのアルバニア領海りょうかい航行こうこう問題もんだいとされた1949ねんコルフ海峡かいきょう事件じけん国際司法裁判所こくさいしほうさいばんしょ判決はんけつでは、裁判所さいばんしょ軍艦ぐんかん戦闘せんとう形態けいたい有無うむ通行つうこう目的もくてき着目ちゃくもくしてイギリス軍艦ぐんかん航行こうこうアルバニアがいをなすものではなかったという判断はんだんがなされた[4]。1958ねん領海りょうかい条約じょうやくだい14じょうだい4こうでは、「沿岸えんがんこく平和へいわ秩序ちつじょまた安全あんぜんがいしない」通行つうこうは「無害むがい」であるとさだめられた[4]。しかしここでは外国がいこく船舶せんぱく領海りょうかい通過つうか無害むがいかどうかを判断はんだんするにあたって特定とくてい基準きじゅんしめされておらず、条文じょうぶん解釈かいしゃくによりことなる基準きじゅん適用てきようされる余地よちのこされことなる立場たちば対立たいりつすることとなった[4]。このうち行為こうい基準きじゅんせつ立場たちばでは、たとえば軍事ぐんじ演習えんしゅう防衛ぼうえい情報じょうほう収集しゅうしゅう資源しげん調査ちょうさなど、外国がいこく船舶せんぱく領海りょうかいないでどのような行為こういをするかを尺度しゃくどとして判断はんだんする[4]。これにたいふねしゅ基準きじゅんせつ立場たちばによれば、船舶せんぱく軍艦ぐんかん原子力げんしりょくせんなど、船舶せんぱく種類しゅるい性質せいしつ基準きじゅん無害むがいかどうかを判断はんだんする[4]。1982ねん国連こくれん海洋かいようほう条約じょうやくでは、だい19じょうだい1こう領海りょうかい条約じょうやくだい14じょうだい4こう無害むがいかんする抽象ちゅうしょうてき定義ていぎ踏襲とうしゅうしながら、だい19じょうだい2こう無害むがいではない活動かつどう具体ぐたいてき列挙れっきょした[4]だい19じょうだい2こうは、行為こうい基準きじゅんによって無害むがいせい判断はんだんする場合ばあい具体ぐたいてき内容ないようあきらかにしたものとえる[4]。しかしこうした国連こくれん海洋かいようほう条約じょうやく文言もんごんからは、たしかにふねしゅ基準きじゅんせつ一般いっぱんてき規則きそくとして成立せいりつしていると判断はんだんすることはできないが、ぎゃくふねしゅ基準きじゅんせつにもとづく沿岸えんがんこくふね種別しゅべつ規制きせい禁止きんしされているとも条文じょうぶん文言もんごんじょう判断はんだんできず、だい19じょうだい1こう行為こうい基準きじゅん以外いがい基準きじゅんをもふく余地よちのこしているため、いまなお解釈かいしゃくじょう問題もんだいのこ[4][8]実際じっさい軍艦ぐんかん領海りょうかいない通航つうこうかんして事前じぜん許可きょかせい採用さいようしているくにおお[8]

軍艦ぐんかん無害むがい通航つうこう 編集へんしゅう

すでにべたように軍艦ぐんかん無害むがい通航つうこうけんみとめられるかどうかについて明文化めいぶんかした条約じょうやくはなく、このてんについてはことなる複数ふくすう解釈かいしゃく存在そんざいする[9]。1958ねん国連こくれん海洋かいようほう会議かいぎではこのてんについて合意ごういいたることができず、領海りょうかい条約じょうやくだい23じょう規則きそく違反いはん軍艦ぐんかんたいする退去たいきょ要請ようせいけんさだめられたことをのぞき、軍艦ぐんかん無害むがい通航つうこうけんかんする規定きてい採択さいたくすることはできなかった[4]。1973ねんから1982ねんにかけてのだい3国連こくれん海洋かいようほう会議かいぎにおいても意見いけん一致いっちられず、どう会議かいぎにおいて採択さいたくされた国連こくれん海洋かいようほう条約じょうやくでは無害むがいせい基準きじゅんについてふねしゅ基準きじゅんとするのか行為こうい基準きじゅんとするのか解釈かいしゃくじょう問題もんだいのこ規定きてい採択さいたくされた(#無害むがい基準きじゅん参照さんしょう[4]。その結果けっか軍艦ぐんかん無害むがい通航つうこうけんみとめるくにアメリカイギリスオランダ日本にっぽん)、事前じぜん通告つうこくすることをもとめるくにエジプト)、事前じぜん許可きょかもとめるくにルーマニアスーダンオマーン)と、各国かっこく立場たちばかれることとなった[4]。1989ねんにはアメリカとソ連それんが「無害むがい通航つうこう統一とういつ解釈かいしゃく」という共同きょうどう声明せいめいはっし、「軍艦ぐんかんふくむすべての船舶せんぱくは、積荷つみに軍備ぐんび推進すいしん方法ほうほうにかかわりなく、国際こくさいほうにしたがって領海りょうかい無害むがい通航つうこうけんゆうし、事前じぜん通告つうこくないし許可きょか必要ひつようとしない」という立場たちばしめした[10](その前年ぜんねん1988ねん黒海こっかいべい艦船かんせん衝突しょうとつ事件じけんきていた)。このように軍艦ぐんかん無害むがい通航つうこうけん有無うむについては意見いけん一致いっちられないものの、国連こくれん海洋かいようほう条約じょうやくでは領海りょうかい条約じょうやくだい23じょう国際こくさいほう沿岸えんがんこく法令ほうれいしたがわない軍艦ぐんかんたいして沿岸えんがんこく退去たいきょ要求ようきゅうをできるとさだめられたほか(だい30じょう)、軍艦ぐんかん違法いほう行為こうい結果けっかとして沿岸えんがんこくあたえた損失そんしつたいしてはたこく船舶せんぱく所属しょぞくするくに[11])が国際こくさい責任せきにんうとさだめられた(だい31じょう[9]

海中かいちゅう 編集へんしゅう

国連こくれん海洋かいようほう条約じょうやくだい20じょうにおいて、潜水せんすいせんその水中すいちゅう航行こうこう機器ききは、沿岸えんがんこく領海りょうかい航行こうこうする場合ばあい海面かいめん浮上ふじょう所属しょぞくしめはた軍艦ぐんかんはた国旗こっき)を掲揚けいようすれば無害むがい通航つうこうけん行使こうしできる。

沿岸えんがんこく規制きせいけん 編集へんしゅう

沿岸えんがんこく航行こうこう安全あんぜん資源しげん保護ほご汚染おせん防止ぼうし関税かんぜい出入国しゅつにゅうこく管理かんりのために必要ひつよう法令ほうれい制定せいていすることができ、安全あんぜん確保かくほ必要ひつようなときは航路こうろたい分離ぶんり通航つうこう方式ほうしき採用さいようすることができるが、外国がいこく船舶せんぱく国際こくさい基準きじゅん上回うわまわおも規制きせいすことはできず、一方いっぽうてき基準きじゅんえるきびしい基準きじゅんせば部外ぶがい通行つうこう阻害そがいすることとなり国家こっか責任せきにん追及ついきゅうされることとなる(国連こくれん海洋かいようほう条約じょうやくだい21じょうだい22じょう[4][12]内水うすい出入でいりせずに領海りょうかい通行つうこうする外国がいこく船舶せんぱく沿岸えんがんこく法令ほうれい違反いはんとなる行為こういをした場合ばあいには一定いってい強制きょうせい措置そち実施じっしする権限けんげん沿岸えんがんこくみとめられるが、前述ぜんじゅつ国連こくれん海洋かいようほう条約じょうやくだい19じょう規定きていされる無害むがいではない通航つうこう該当がいとうする場合ばあいのぞき、通行つうこうけんそのものを否定ひていしたり通航つうこう阻害そがいする結果けっかとなってはならない(国連こくれん海洋かいようほう条約じょうやくだい24じょうだい2こう[12]無害むがいではない通航つうこう該当がいとうする場合ばあいには、その通航つうこう防止ぼうしするために必要ひつよう措置そちをとることができ、軍事ぐんじてき安全あんぜん保護ほごのために不可欠ふかけつ場合ばあいには特定とくてい海域かいいきにおいて外国がいこく船舶せんぱく無害むがい通航つうこう一時いちじ停止ていしすることができる(国連こくれん海洋かいようほう条約じょうやくだい25じょう[12]無害むがい通航つうこうちゅう船舶せんぱくないきた犯罪はんざい行為こういたいしては基本きほんてき船舶せんぱくはたこく裁判さいばん管轄かんかつけんゆうするが、密輸みつゆ不法ふほう入国にゅうこく汚染おせん安全あんぜん保障ほしょうかんする法令ほうれい違反いはんなど、犯罪はんざい結果けっか沿岸えんがんこくおよ場合ばあい犯罪はんざい沿岸えんがんこく平和へいわ領海りょうかい秩序ちつじょみだすものである場合ばあい船舶せんぱく船長せんちょうはたこく外交がいこうかん領事りょうじかんから沿岸えんがんこく援助えんじょ要請ようせいがあった場合ばあい麻薬まやくこう精神せいしんやく不法ふほう取引とりひき抑圧よくあつ必要ひつよう場合ばあい、これらの場合ばあいかぎ沿岸えんがんこく捜査そうさ逮捕たいほなどの刑事けいじ管轄かんかつけん行使こうしすることができる[12]。ただしその場合ばあいにも沿岸えんがんこく犯罪はんざい重大じゅうだいせい運航うんこう阻害そがい危険きけんとをくらべ航行こうこう利益りえき妥当だとう考慮こうりょはらわなければならない(国連こくれん海洋かいようほう条約じょうやくだい27じょう[12]

強化きょうかされた無害むがい通航つうこう 編集へんしゅう

海上かいじょう交通こうつう要衝ようしょうである国際こくさい海峡かいきょうにおいては、伝統でんとうてき通常つうじょう領海りょうかいにおけるよりも緩和かんわされた通航つうこうみとめられる「強化きょうかされた無害むがい通航つうこう」の制度せいどみとめられてきた[13]

1958ねん領海りょうかいおよ接続せつぞく水域すいいきかんする条約じょうやく領海りょうかい条約じょうやくだい16じょうだい4こうでは、沿岸えんがんこく国際こくさい海峡かいきょうにおける無害むがい通航つうこう停止ていしすることがみとめられず、平時へいじには海峡かいきょう閉鎖へいさなどが禁止きんしされた(国際こくさい海峡かいきょうでない領海りょうかいにおいては領海りょうかい条約じょうやくだい16じょうだい3こうにより一定いってい条件下じょうけんか停止ていしけんみとめられる)[13]

こうした国際こくさい海峡かいきょう閉鎖へいさせいは、1894ねん万国ばんこく国際こくさいほう学会がっかい領海りょうかい定義ていぎ地位ちいかんする決議けつぎや1930ねんのハーグ国際こくさいほう法典ほうてん会議かいぎ準備じゅんび委員いいんかい報告ほうこくしょにおいてもすでにさだめられていた[13]。また1947ねんコルフ海峡かいきょう事件じけん判決はんけつ英語えいごばんみとめたように、軍艦ぐんかん通行つうこうみとめられた。1982ねん国連こくれん海洋かいようほう条約じょうやくにより領海りょうかいはばが12カイリまでとされたことにともない、おおくの国際こくさい海峡かいきょうがいずれかのくに領海りょうかいとされることとなった[14]

しかし1973ねんからはじめられただいさん国連こくれん海洋かいようほう会議かいぎにおいては、おおきな海軍かいぐんりょくアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくソビエト連邦れんぽうがこうした従来じゅうらいの「強化きょうかされた無害むがい通航つうこう」に否定ひていてきで、国際こくさい海峡かいきょうにおいては公海こうかいなみの航行こうこう自由じゆうみとめるべきであると主張しゅちょうした[13]。こうした主張しゅちょうたいしてスペインモロッコインドネシアといった海峡かいきょうゆうする国々くにぐに反発はんぱつし、国際こくさい海峡かいきょうにおいて厳格げんかく無害むがい通航つうこう制度せいど適用てきよう主張しゅちょうした[13]。この対立たいりつたいする打開だかいさくとしてイギリスは通過つうか通航つうこう制度せいど提唱ていしょうした[13]

通過つうか通航つうこう制度せいどとは、「継続けいぞくてきかつ迅速じんそく通過つうか目的もくてきのみのための航行こうこうおよ上空じょうくう飛行ひこう自由じゆう」と定義ていぎされ、無害むがいせい通航つうこう直接ちょくせつ基準きじゅんとはされず、軍用ぐんようふく上空じょうくう飛行ひこうみとめられたことが無害むがい通航つうこうとのちがいである[13]。1982ねん国連こくれん海洋かいようほう条約じょうやくでは、この通過つうか通航つうこう制度せいどさだめられ(だい38じょうだい2こう)、それまでの「強化きょうかされた無害むがい通航つうこう」の制度せいどあらためられることとなった[14]

航空機こうくうき 編集へんしゅう

歴史れきし 編集へんしゅう

航空機こうくうき開発かいはつされた当初とうしょ外国がいこく航空機こうくうきにも船舶せんぱく無害むがい通航つうこう類似るいじした権利けんりみとめられていたが、だいいち世界せかい大戦たいせんになると欧州おうしゅう諸国しょこく領空りょうくううちでの排他はいたてき主権しゅけん主張しゅちょうするようになり事前じぜん飛行ひこうルートを通告つうこくするようもとめるくにえた[15]

飛行ひこう計画けいかく 編集へんしゅう

現代げんだいでは通過つうかする領域りょういきこく飛行ひこう計画けいかく事前じぜん提出ていしゅつすることがもとめられる。

飛行ひこう計画けいかく提出ていしゅつしていない場合ばあい領空りょうくう進入しんにゅうするまえ段階だんかい、すなわち防空ぼうくう識別しきべつけんはいった時点じてん領空りょうくう侵犯しんぱん可能かのうせいがあるものと判断はんだんし、当該とうがいこくスクランブル対処たいしょする。

出典しゅってん 編集へんしゅう

  1. ^ 無害むがい通航つうこうけん」、国際こくさいほう辞典じてん、326ぺーじ
  2. ^ a b c d e f g 山本やまもと(2003)、366-367ぺーじ
  3. ^ a b 山本やまもと(2003)、368-369ぺーじ
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n o 杉原すぎはら(2008)、126-129ぺーじ
  5. ^ 領海りょうかいおよ接続せつぞく水域すいいきかんする条約じょうやく”. データベース「世界せかい日本にっぽん. 東京大学とうきょうだいがく東洋とうよう文化ぶんか研究所けんきゅうじょ田中たなか明彦あきひこ研究けんきゅうしつ. 2015ねん3がつ29にち閲覧えつらん
  6. ^ 海洋かいようほうかんする国際こくさい連合れんごう条約じょうやく”. データベース「世界せかい日本にっぽん. 東京大学とうきょうだいがく東洋とうよう文化ぶんか研究所けんきゅうじょ田中たなか明彦あきひこ研究けんきゅうしつ. 2015ねん3がつ29にち閲覧えつらん
  7. ^ a b c d e f g 山本やまもと(2003)、367-371ぺーじ
  8. ^ a b 小寺こでら(2006)、256ぺーじ
  9. ^ a b 山本やまもと(2003)、372-374ぺーじ
  10. ^ 杉原すぎはら(2008)、126-129ぺーじより、べいソの「無害むがい通航つうこう統一とういつ解釈かいしゃく」の日本語にほんごやく引用いんよう1989 USA-USSR Joint Statement with Attached Uniform Interpretation of Rules of International Law Governing Innocent Passage, Article 2. "All ships, including warships, regardless of cargo, armament or means of propulsion, enjoy the right of innocent passage through the territorial sea in accordance with international law, for which neither prior notification nor authorization is required."
  11. ^ はたこく」、国際こくさいほう辞典じてん、60ぺーじ
  12. ^ a b c d e 山本やまもと(2003)、371-372ぺーじ
  13. ^ a b c d e f g 杉原すぎはら(2008)、135-136ぺーじ
  14. ^ a b 杉原すぎはら(2008)、135ぺーじ
  15. ^ 浦野うらのおこりひさし地図ちず年表ねんぴょう日本にっぽん領土りょうど問題もんだい』2014ねん、28ぺーじ 

参考さんこう文献ぶんけん 編集へんしゅう

  • 小寺こでらあきら岩沢いわさわ雄司ゆうじ森田もりた章夫あきお講義こうぎ国際こくさいほう有斐閣ゆうひかく、2006ねんISBN 4-641-04620-4 
  • 杉原すぎはら高嶺たかね水上すいじょうせんこれ臼杵うすきとも吉井よしいあつし加藤かとう信行のぶゆき高田たかだうつ現代げんだい国際こくさいほう講義こうぎ有斐閣ゆうひかく、2008ねんISBN 978-4-641-04640-5 
  • 筒井つつい若水じゃくすい国際こくさいほう辞典じてん有斐閣ゆうひかく、2002ねんISBN 4-641-00012-3 
  • 山本やまもとくさ国際こくさいほう新版しんぱん】』有斐閣ゆうひかく、2003ねんISBN 4-641-04593-3 
  • 1989 USA-USSR Joint Statement with Attached Uniform Interpretation of Rules of International Law Governing Innocent Passage. Centre for International Law, National University of Singapore. https://cil.nus.edu.sg/rp/il/pdf/1989%20USA-USSR%20Joint%20Statement%20on%20the%20Uniform%20Interpretation%20of%20Rules%20of%20International%20Law-pdf.pdf. 

関連かんれん項目こうもく 編集へんしゅう

外部がいぶリンク 編集へんしゅう