武力ぶりょく行使こうし

武力ぶりょく行使こうし（英語えいご: use of force）とは、日本国にっぽんこく政府せいふの見解けんかいでは、基本きほん的てきには国くにの物的ぶってき・人的じんてき組織そしき体たいによる国際こくさい紛争ふんそうの一環いっかんとしての戦闘せんとう行為こういをいう。ただし日本にっぽん法ほうと国際こくさい法ほうではこの問題もんだいに関かんする枠組わくぐみが異ことなるため、この定義ていぎをそのまま国際こくさい法ほうに適用てきようすることはできない。

日本にっぽん法ほうでの扱あつかい

日本国にっぽんこく憲法けんぽう第だい9条じょうおよび自衛隊じえいたい法ほう第だい88条じょうでは、武力ぶりょくの行使こうしの「新しん三さん要件ようけん」を満みたして自衛じえい権けんを発動はつどうする場合ばあいを除のぞいて、自衛隊じえいたいによる武力ぶりょくの行使こうしは禁止きんしされている。一方いっぽう、軍隊ぐんたい・自衛隊じえいたい以外いがいの法ほう執行しっこう機関きかんなどによる実力じつりょく行使こうしは武力ぶりょくの行使こうしとは見み做されない。

また自衛隊じえいたいを主体しゅたいとする場合ばあいでも、「武力ぶりょくの行使こうし」とは別べつに「武器ぶきの使用しよう」として実力じつりょく行使こうしを行おこなうことができる。この「武器ぶきの使用しよう」とは、一般いっぱん的てきに、人ひとを殺傷さっしょうし物ぶつを破壊はかいすることを目的もくてきとする物ものを、その本来ほんらいの用法ようほうに従したがって用もちいることをいう。自衛隊じえいたいの行動こうどうにおいては、治安ちあん出動しゅつどうや海上かいじょう警備けいび行動こうどうなど非ひ国家こっか主体しゅたいを相手あいてとする場合ばあいや、正当せいとう防衛ぼうえいなど自然しぜん権けん的てき権利けんりに基もとづき自分じぶんの身みや武器ぶき等とうを守まもる場合ばあい（自己じこ保存ほぞん型がた武器ぶき使用しよう）などにおいて、武器ぶきの使用しようを行おこなうことができる。

国際こくさい法ほうでの扱あつかい

国際こくさい連合れんごう憲章けんしょう2条じょうにおいて、国際こくさい紛争ふんそうの平和へいわ的てき解決かいけつ原則げんそく（3項こう）とともに武力ぶりょく不ふ行使こうし原則げんそく（4項こう）が定さだめられた。この「武力ぶりょく」（force）とは「軍事ぐんじ力りょく・兵力へいりょく」のことを指さしていると解ほぐされる。

ただし国際こくさい法ほうにおいて「武力ぶりょくの行使こうし」の有権ゆうけん的てきな定義ていぎは存在そんざいせず、軍隊ぐんたい以外いがいの国家こっか機関きかん（警察けいさつなど）による実力じつりょく行使こうしが武力ぶりょくの行使こうしとなる可能かのう性せいが完全かんぜんに排除はいじょされていない点てんには注意ちゅういが必要ひつようである。逆ぎゃくに軍隊ぐんたいによる実力じつりょく行使こうしであっても、全すべてが国連こくれん憲章けんしょう2条じょう4項こうで禁止きんしされている武力ぶりょく行使こうしに該当がいとうするわけではないという「些細ささいな敷居しきい」論ろんも唱となえられており、その行為こういの重大じゅうだい性せい（gravity）と意図いと（intention）という2つの基準きじゅんを組くみ合あわせて判断はんだんされると主張しゅちょうされている。

脚注きゃくちゅう

参考さんこう文献ぶんけん

• 稲葉いなば義よし泰やすし『ここまでできる自衛隊じえいたい 国際こくさい法ほう・憲法けんぽう・自衛隊じえいたい法ほうではこうなっている』秀和しゅうわシステム、2020年ねん。ISBN 978-4798063348。 
• 稲葉いなば義よし泰やすし『「戦争せんそう」は許ゆるされるのか? 国際こくさい法ほうで読よみ解とく武力ぶりょく行使こうしのルール』イカロス出版いかろすしゅっぱん、2022年ねん。ISBN 978-4802212069。 
• 黒くろ﨑将広ひろ; 坂元さかもと茂樹しげき; 西村にしむら弓ゆみ; 石垣いしがき友明ともあき; 森もり肇はじめ志こころざし; 真山まやま全あきら; 酒井さかい啓あきら亘わたる『防衛ぼうえい実務じつむ国際こくさい法ほう』弘文こうぶん堂どう、2021年ねん。ISBN 978-4335356926。