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国 - Wikipedia

くに

ある地域ちいき支配しはいする実体じったい

くにくに、こくは、一般いっぱんてきに、住民じゅうみん領土りょうど主権しゅけんおよ外交がいこう能力のうりょく他国たこくからの承認しょうにん)をそなえた地球ちきゅううえ地域ちいきのことを[1][2]

古代こだいギリシャソクラテスプラトンアリストテレスなどは、最高さいこうぜんもとめてポリス都市とし国家こっか)がつくられるとく。おおくのくに憲法けんぽう成文法せいぶんほう作成さくせい[3]自国じこく権利けんり能力のうりょく他国たこく表明ひょうめいしている。あたらしいくにつく手法しゅほうとして、すでにあるくに(の一部いちぶ地域ちいき)が憲法けんぽう改正かいせい革命かくめいなど「しん憲法けんぽう制定せいてい」によって統治とうちけん表明ひょうめいして成立せいりつする場合ばあいもある。

くに」の多義たぎせい 編集へんしゅう

くにくに、こくは、「くに」「しゅう」などともあらわされる多義たぎてきかたりである。現在げんざいでは「国家こっか権利けんりおよ義務ぎむかんする条約じょうやく」にもとづいた、おもおおきさと独立どくりつせい統治とうち機構きこう担税たんぜいりょくなど)をそなえた国家こっか独立どくりつこく)を意味いみし、以下いかのような地域ちいきあらわす。

  1. 国家こっか中央ちゅうおう政府せいふ
    政治せいじてき国家こっか (state/état) が支配しはいする一定いってい領域りょういき住民じゅうみん共同きょうどうたい制度せいど文化ぶんかなどの総体そうたい新興しんこうこくにおいては、国家こっか統治とうち機構きこうとなる中央ちゅうおう政府せいふ場合ばあいもある。
  2. れいせいこく
    古代こだい日本にっぽんでの、律令制りつりょうせいした行政ぎょうせい単位たんい律令制りつりょうせい崩壊ほうかいしたのちも、受領じゅりょう支配しはい区分くぶん守護しゅご軍事ぐんじ警察けいさつ管区かんくとして、また地域ちいき区分くぶん単位たんいとして明治めいじ時代じだい初期しょきまでもちいられた。現在げんざいでも「きゅう国名こくめい」として、都道府県とどうふけん別名べつめいや、都道府県とどうふけんない地域ちいきめいとしてもちいられることがある。
  3. 故郷こきょう地方ちほう
    まれ故郷こきょう出身しゅっしん。また、国家こっかたいして、地方ちほうすこともある。英語えいごの「country」も、国家こっか場合ばあいと、地方ちほう場合ばあいの2つの意味いみつ。
  4. 大地だいち
    れいてんたいするをもってくにとし、国津くにつしんというようにもちいられる。「」のてられることがおおい。
  5. くに」の原義げんぎ古代こだい中国ちゅうごく)は、諸侯しょこう統治とうちする城塞じょうさい都市としした。

中国ちゅうごくの「くに 編集へんしゅう

元来がんらいくにとは諸侯しょこう統治とうちする城塞じょうさい都市としした。いんおう諸侯しょこう地方ちほう統治とうちみと連合れんごうした。しゅうおう諸侯しょこう統治とうちりょうみとめることを封建ほうけんんだ。戦国せんごく時代じだいには諸侯しょこうおうごうしょうした。

かんだいに、皇帝こうてい親族しんぞく功臣こうしん朝貢ちょうこうこくおうを、さい上位じょうい臣下しんかとして王位おうい地方ちほう統治とうちゆるし、その統治とうちりょうを「くに」とした(ぐんこくせい)。

なお現在げんざいうところの「中国ちゅうごく」は元来がんらいは「天下てんか」であり、したがって「くに」ではない。

欧米おうべいの「くに 編集へんしゅう

state、nation、country 編集へんしゅう

くに和訳わやくされる英語えいごには、state、nation、country がある。

  • country は、ラテン語らてんごの contrata terra(こうがわ土地とち)が語源ごげんで、地理ちりてき国土こくど意味いみする。政体せいたい性質せいしつ問題もんだいにしないため、日本にっぽんでの「くに地域ちいき」に相当そうとうする使つかわれかたもする。
  • nation は、ラテン語らてんごの natalis(出生しゅっしょう)が語源ごげんで、土地とち住民じゅうみん総体そうたい意味いみする。国家こっか場合ばあい国民こくみんのことだが、国家こっかむすびつかない、少数しょうすう民族みんぞく分断ぶんだん民族みんぞく流浪るろう民族みんぞくなどにも nation はある。
  • state は、ラテン語らてんごの status(土地とちとその住民じゅうみんへの支配しはいけん)が語源ごげんで、土地とちとその住民じゅうみんたいする統治とうちけん統治とうち機構きこう意味いみする。

いずれも、明確めいかく国家こっか意味いみはなく、文脈ぶんみゃくによっては国家こっか未満みまんちょう国家こっか意味いみでも使つかわれる。また、具体ぐたいてき行政ぎょうせい区画くかく名称めいしょうとしてこれらのかたり使つかうこともある。

これらの場合ばあいは、country、nation、state の本来ほんらい意味いみ区別くべつ問題もんだいにならない。

empire、kingdom、duchy 編集へんしゅう

empire、kingdom、duchy とうはそれぞれ帝国ていこく王国おうこく公国こうこくひとし和訳わやくされるが、これらはたんにそれぞれ皇帝こうていおうおおやけ領地りょうちという意味いみにすぎず、国家こっか意味いみはない。西欧せいおう社会しゃかいでは、中世ちゅうせい封建ほうけん社会しゃかいから絶対ぜったい王政おうせい時代じだいいたるまで、あるくに君主くんしゅべつ君主くんしゅ兼任けんにんあるいは臣下しんかであることはめずらしくなかった。たとえば、インド皇帝こうていイングランドおう兼任けんにんであり、インド帝国ていこくはイギリスの一部いちぶだった。最近さいきんれいでは、アンドラ大公たいこうフランス大統領だいとうりょうウルヘル司教しきょうが(共同きょうどうで)いており、それにより1993ねんまでアンドラ公国こうこく独立どくりつこくではなく、フランススペイン共同きょうどう統治とうちてき地域ちいきだった。

republic 編集へんしゅう

republic は共和きょうわこく和訳わやくされるが、これは民衆みんしゅうによる政体せいたいという意味いみで、これも国家こっか意味いみはない。たとえば、ロシア連邦れんぽう(およびソビエト連邦れんぽう)は国内こくない共和きょうわこくつ。

日本にっぽんの「くに 編集へんしゅう

中国ちゅうごく史書ししょ 編集へんしゅう

日本にっぽんにおいては、ふるくは中国ちゅうごく史書ししょ漢書かんしょ』にあらわれるやつこくなこくなどがある。

こころざし倭人わじんでん収載しゅうさい邪馬台国やまたいこくなどの地方ちほうの「くに」の連合れんごうしるされている。

また、「倭国わのくに」「三国一さんごくいち」のような、視点してん日本にっぽん列島れっとうがいくような表現ひょうげんにあっては、日本にっぽん全体ぜんたいひとつの「くに」としてあつかわれた。

近代きんだい以前いぜん 編集へんしゅう

「くに」は元来がんらい自然しぜん国土こくどかたりだった。

弥生やよい時代じだい日本にっぽん列島れっとう各地かくち政治せいじてき支配しはいはじまり、その地方ちほう政権せいけん支配しはいする領域りょういきも「くに」とぶようにもなった[4]。これら地方ちほうの「くに」は、地域ちいきとしてはのちの「ぐん相当そうとうひろさしかない狭小きょうしょう地域ちいきにすぎなかったが、政体せいたいとしての独立どくりつせいたも原初げんしょてき政権せいけんであった。民俗みんぞく学者がくしゃ折口おりぐち信夫しのぶによれば、「くに」のかたり原義げんぎは、ヤマト[よう曖昧あいまい回避かいひ]宮廷きゅうていたいしてはんぞくはん独立どくりつ関係かんけいにある地方ちほう意味いみしており[5]、また、「くに」には「くにたま」(くにたましい)があって、これを所有しょゆうするものがその地方ちほう統治とうちする権限けんげんゆうするものと観念かんねんされていた[6]。それゆえに、ある地方ちほう宮廷きゅうてい支配しはいふくすることは、当該とうがい地方ちほうの「くにたま」が宮廷きゅうていたてまつられることを意味いみしていた[6][注釈ちゅうしゃく 1]

ヤマト王権おうけんによって日本にっぽん列島れっとう統一とういつ進行しんこうしていった4世紀せいき古墳こふん時代じだいにあっては、そのような「くに」の地方ちほう豪族ごうぞく首長しゅちょうを「国造くにのみやつこくにつのみやつこ」ににんじた。なお地方ちほう豪族ごうぞくすくなからずは元来がんらい中央ちゅうおう豪族ごうぞくであったものが地方ちほう統治とうち進出しんしゅつし、そこで定住ていじゅうした地方ちほう首長しゅちょうそうであった。

これにともなって古墳こふん文化ぶんか東北とうほくから九州きゅうしゅうまでひろがっていった。国造くにのみやつこたちは自分じぶんたちの祖神そしんまつり、祭政さいせい一致いっち支配しはい体系たいけい確立かくりつされた一方いっぽう国造くにのみやつこ人間にんげんたちは朝廷ちょうてい軍事ぐんじ外交がいこうたったほか、宮廷きゅうてい舎人とねり采女うねめ奉仕ほうしさせた。

日本にっぽんでは、「くに」にたいして漢字かんじの「くにくに)」の[4]中国ちゅうごくならい、地方ちほう豪族ごうぞくおさめる地域ちいきした。これにともない、統一とういつされたヤマト国家こっかの「日本にっぽん」)をして「くに」とぶこともくなった。

これらとはべつに、「大地だいち」「土地とち」「出身しゅっしん」にちか意味合いみあいもあった。天津てんしんしんたいする国津くにつしん(くにつかみ)の「くに」は、てんたいする意味いみし、実際じっさい漢字かんじてられることもあった。また、「くにしゅくにしゅう」「国替くにがえくにがえ」などのかたりでは、土地とち意味いみした。

れいせいこく 編集へんしゅう

このような地方ちほう領域りょういきの「くに」は、飛鳥あすか時代ときよには律令制りつりょうせいのもとでれいせいこくとしてさだめられた。れいせいこく官吏かんりである国司こくし中央ちゅうおうから派遣はけんされおさめた。

れいせいこくは、その広狭こうきょう人口じんこう生産せいさんりょくなどを基準きじゅんにして大国たいこくうえこく中国ちゅうごくしたこくの4等級とうきゅう分類ぶんるいされ、「まもり以下いか四等官しとうかん国司こくし定員ていいんかんじん位階いかいなどにもうけられた。大宝たいほう律令りつりょう制定せいてい8世紀せいき初頭しょとうには58こく3とうであったが、その分割ぶんかつ統合とうごうなどをて、9世紀せいき初頭しょとう段階だんかいでは66こく2とうとなり、それ以後いご固定こていされた[4]

近代きんだい 編集へんしゅう

明治めいじ時代じだい以降いこう、「くに」は、ほぼ現在げんざいうところの「国家こっか」の意味いみ使つかわれるようにわった。「国家こっか正当せいとう政府せいふ」をたんに「くに」と呼称こしょうするあらたな用法ようほうまれた。日本にっぽんにおいては、日本国にっぽんこく政府せいふくに呼称こしょうされることがおおい。また、独立どくりつこくではない政体せいたい日本にっぽんこく承認しょうにんしていない政権せいけんたいし、報道ほうどう統計とうけい発表はっぴょうなどにおいて明示めいじてきに「くに」の使用しようけることがあり、マスメディア中心ちゅうしんに「くに地域ちいき」のような表現ひょうげんもみられる。

れいせいこく文書ぶんしょなどによって法的ほうてき廃止はいしされたわけではないが、廃藩置県はいはんちけんひとし明治めいじ時代じだい以降いこうしょ施策しさくによって有名ゆうめい無実むじつした。これを「くに」とぶのはまぎらわしくなったため、「きゅうくに」と呼称こしょうされることがおおくなった。

ただし現在げんざいでも「くに」は、文脈ぶんみゃくによっては、「出身しゅっしん」の「くに」の意味いみ普通ふつう使つかわれる。その場合ばあいでも都道府県とどうふけん定着ていちゃくした今日きょうでは、きゅうくに単位たんいではなく都道府県とどうふけん単位たんいかんがえることがおおくなっている。

脚注きゃくちゅう 編集へんしゅう

注釈ちゅうしゃく 編集へんしゅう

  1. ^ 「くにたま」はおおくの場合ばあい稲穂いなほによって象徴しょうちょうされた。したがって、大嘗祭だいじょうさいにおいては地方ちほう各国かっこく稲穂いなほ天子てんしのもとにおくられ、しん嘗の神事しんじがおこなわれた[7]

出典しゅってん 編集へんしゅう

参考さんこう文献ぶんけん 編集へんしゅう

  • 西村にしむらとおるうた民俗みんぞくがく岩崎いわさき美術びじゅつしゃ民俗みんぞく民芸みんげい双書そうしょ〉、1966ねん7がつ全国ぜんこく書誌しょし番号ばんごう:66007016 
  • まゆずみ弘道ひろみち ちょくに」、小学館しょうがくかん へん日本にっぽんだい百科全書ひゃっかぜんしょ』(スーパーニッポニカProfessional Winばん小学館しょうがくかん、2004ねん2がつISBN 4-09-906745-9 

関連かんれん項目こうもく 編集へんしゅう