報道ほうどう

報道ほうどう（ほうどう、英えい: reporting）とは、ニュース・出来事できごと・事件じけん・事故じこなどを取材しゅざいし、記事きじ・番組ばんぐみ・本ほんを作成さくせいして広ひろく公表こうひょう・伝達でんたつする行為こういであり、言論げんろん活動かつどうのひとつである。特とくに報道ほうどうやそれに伴ともなう世論せろんの形成けいせいの研究けんきゅうを「新聞しんぶん学がく」と呼称こしょうする。

2013年ねん11月、バラク・オバマアメリカ大統領だいとうりょうを撮影さつえいするフォトジャーナリスト

いっぽう、ジャーナリズム（英えい: journalism）とは、事実じじつの伝達でんたつのほか、それについての解説かいせつや論評ろんぴょうも含ふくむ。テレビ放送ほうそうでは報道ほうどう番組ばんぐみは娯楽ごらく番組ばんぐみなどと対置たいちされるが、スポーツ中継ちゅうけいのように娯楽ごらく番組ばんぐみであると同時どうじに事実じじつを伝つたえる報道ほうどう番組ばんぐみとしての側面そくめんを含ふくむものもあり、明確めいかくな区分くぶんは困難こんなんである。ただし、ジャーナリズムの定義ていぎを無条件むじょうけんに拡大かくだいすると本質ほんしつが見みえなくなることから、一般いっぱんには時事じじ問題もんだいに関かんする報道ほうどう・解説かいせつ・批評ひひょう等とうの活動かつどうを指さして用もちいられる。

概要がいよう

議会ぎかいでの議論ぎろんや戦争せんそうの経過けいかなど数すう多おおくの事件じけんや出来事できごとを直接ちょくせつ見聞みききしている人ひとはまれであり、特とくに現代げんだい社会しゃかいではマスメディアの提供ていきょうする情報じょうほうを通とおして事件じけんや出来事できごとを間接かんせつ的てきに体験たいけんしている。

報道ほうどうにおける取材しゅざい（しゅざい）とは、報道ほうどう対象たいしょうの事実じじつを確認かくにんする行為こういで、報道ほうどう機関きかんは原則げんそくとして所属しょぞくする記者きしゃの取材しゅざいに基もとづく記事きじを報道ほうどうするが、国外こくがいなど遠隔えんかく地ちで発生はっせいした出来事できごとは、通信つうしん社しゃなどの配信はいしんする記事きじによって報道ほうどうする場合ばあいもある。この場合ばあい、記事きじの頭あたまに「○日にちニューヨーク共同きょうどう」のような形かたちでクレジットが入はいる。

世界せかいのジャーナリズムで一般いっぱん的てきかつ重要じゅうようとみなされている機能きのうとして、「バイライン（署名しょめい）」「ソース（情報じょうほう源げん）」「クレジット（引用いんよう・参照さんしょう元もと）」「オプ・エド（反対はんたい意見いけん）」「コレクション（訂正ていせい欄らん）」が挙あげられる。

媒体ばいたいと担にない手て

メディア

報道ほうどうの媒体ばいたいはメディアと呼よばれ、不ふ特定とくてい多数たすうの大衆たいしゅうに情報じょうほうを伝達でんたつすることはマスコミュニケーションと呼よばれる。マスコミュニケーションに使用しようされる媒体ばいたいはマスメディアと総称そうしょうされる。これらの概念がいねんは非常ひじょうに近接きんせつしたものであるため、メディアやマスメディア、マスコミ（マスコミュニケーション）という言葉ことばがジャーナリズムを指さすことも多おおい。報道ほうどうを行おこなう主体しゅたいは報道ほうどう機関きかんと呼よばれる。マスメディアのなかでも影響えいきょう力りょくが強つよいテレビ・ラジオ・新聞しんぶん・雑誌ざっしはマスコミ四よん媒体ばいたいと呼よばれ、狭義きょうぎにおいてマスメディアとはこの4つのメディアのことを指さしていた。

こうしたマスメディアによってジャーナリズムは事実じじつ上じょう独占どくせんされていたが、インターネットの発達はったつとともにマスメディアを通とおさない不ふ特定とくてい多数たすうへの情報じょうほう発信はっしんが可能かのうとなった。また同様どうように、企業きぎょうがマスメディアを通とおさず直接ちょくせつ情報じょうほうを発信はっしんするオウンドメディアも2010年ねん頃ごろから盛さかんになってきている。一方いっぽう、従来じゅうらい型がたメディアであるテレビや新聞しんぶん、雑誌ざっしがインターネットで情報じょうほうを発信はっしんすることも盛さかんに行おこなわれている。

ジャーナリスト

ジャーナリズムに携たずさわる人々ひとびとはジャーナリストと総称そうしょうされる。ジャーナリストはマスメディアを通つうじて自みずからの取得しゅとくし所持しょじしている情報じょうほうを公開こうかいし、報道ほうどうする。ジャーナリストの判断はんだんによって人々ひとびとが入手にゅうしゅできる情報じょうほうの質しつは大おおきく変動へんどうするため、その報道ほうどう姿勢しせいひとつで世論せろんが大おおきく動うごく危険きけん性せいを常つねにはらんでいる。ジャーナリストは19世紀せいき頃ごろには職業しょくぎょう化かが進展しんてんし、20世紀せいきにはおおよそプロによって占しめられるようになっていたが、インターネットは一般いっぱんの一個人いっこじんがジャーナリズム的てき活動かつどうを行おこなう道みちを開ひらいた。

主おもにジャーナリストの育成いくせいを目的もくてきとして、大学だいがくにジャーナリズム学科がっかを設置せっちしジャーナリズム教育きょういくを行おこなうところも多おおく存在そんざいする。こうしたジャーナリズム教育きょういくはアメリカを発祥はっしょうとし、21世紀せいきにおいても同国どうこくが中心ちゅうしんとなっている。ただしジャーナリスト育成いくせいに関かんしては各国かっこくで手法しゅほうに違ちがいがあり、大学だいがく教育きょういくを柱はしらとするアメリカに対たいし、イギリスや日本にっぽんなどでは職場しょくばでの実地じっち訓練くんれん、いわゆるOJTが中心ちゅうしんとなっている。このため、日本にっぽんではジャーナリズム教育きょういくを掲かかげる学科がっかは多おおいものの、とくに実務じつむ教育きょういくにおいてマスメディア側がわからの評価ひょうかが低ひくく、必かならずしもそこで教育きょういくを受うけることが報道ほうどう機関きかんへの就職しゅうしょくに有利ゆうりとなるわけではない。

ジャーナリズムと権力けんりょく

ジャーナリズムと独裁どくさい国家こっか

「表現ひょうげんの自由じゆう」、「報道ほうどうの自由じゆう」、「知しる権利けんり」、および「偏向へんこう報道ほうどう」も参照さんしょう

2002年ねんから2013年ねんに殺害さつがいされたジャーナリスト数すうの国くに別べつ図ず

日々ひびのできごとに限かぎらず建造けんぞう物ぶつ・風景ふうけい・珍めずらしい動植物どうしょくぶつなど特とくに現代げんだい社会しゃかいでは人々ひとびとはマスメディアの提供ていきょうする情報じょうほうを通とおして世界せかいを認識にんしきすることが多おおい。このようなマスメディアの影響えいきょう力りょくから権力けんりょく者しゃにはその情報じょうほうをコントロールしたいという志向しこうが現あらわれることがあり、現げんにいくつかの国々くにぐにでは厳きびしい情報じょうほう統制とうせいが実施じっしされている。権力けんりょく者しゃによるマスメディアのコントロールが明確めいかくに表あらわれるのがクーデター発生はっせい時じであり、クーデターが発生はっせいすると情報じょうほうによって市民しみんや兵士へいしの行動こうどうのコントロールを図はかるためまず放送ほうそう局きょくが占拠せんきょされる。

情報じょうほう統制とうせいの敷しかれた国々くにぐにでは権力けんりょく者しゃにとって都合つごうの良よい情報じょうほうだけが住民じゅうみんに伝つたわり、世界せかい情勢じょうせいや自国じこくの置おかれている状況じょうきょうも客観きゃっかん的てきに判断はんだんすることが困難こんなんになる。一方いっぽう、言論げんろん統制とうせいが形骸けいがい化かして正確せいかくな報道ほうどうが他国たこくから入はいってくる場合ばあいは独裁どくさい政権せいけんには不利ふりとなる。冷戦れいせん末期まっき、西側にしがわ諸国しょこくの衛星えいせいテレビの情報じょうほうは国境こっきょうを越こえて東欧とうおう諸国しょこくの人々ひとびとの世界せかい観かんや行動こうどうに影響えいきょうを与あたえ、東欧とうおう革命かくめいの大おおきな原動力げんどうりょくとなった。

独裁どくさい国家こっかにおいて、政府せいふはジャーナリズムに対たいしさまざまな方法ほうほうで統制とうせいを試こころみる。中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこくを例れいに取とると、同国どうこく政府せいふは2021年ねんには、それまで認みとめられていた民間みんかん企業きぎょうの報道ほうどう事業じぎょうを禁止きんしする案あんを公表こうひょうしている。また2023年ねんにジャーナリストに中国共産党ちゅうごくきょうさんとうへの忠誠ちゅうせい度どを問とう資格しかく試験しけんを課かすと報ほうじられた。また香港ほんこんにおいては、一いち国こく二に制度せいどのもとで高度こうどな報道ほうどうの自由じゆうが確保かくほされていたが、2020年ねんに中国ちゅうごく政府せいふの圧力あつりょくの元もとで香港ほんこん国家こっか安全あんぜん維持いじ法ほうが施行しこうされて以降いこう急速きゅうそくに言論げんろんの自由じゆうが失うしなわれていき、2021年ねん6月がつ24日にちには中国ちゅうごくに厳きびしい論調ろんちょうを取とっていた新聞しんぶんである蘋果日報にっぽうが廃刊はいかんに追おい込こまれ、さらに立場たちば新聞しんぶんなどいくつかの民主みんしゅ派はネットメディアも停止ていしされるなど相次あいついでジャーナリズムへの弾圧だんあつを行おこなった結果けっか、報道ほうどうの自由じゆう度どランキングが急落きゅうらくした。その後ごも弾圧だんあつは続つづき、2022年ねん9月がつ7日にちには香港ほんこん記者きしゃ協会きょうかいの会長かいちょうが逮捕たいほされている。

報道ほうどうの自由じゆうの認みとめられていない国家こっかにおいては、ジャーナリストの逮捕たいほ・投獄とうごくは珍めずらしくない。2022年ねん一いち年ねんだけでも、中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこくを筆頭ひっとうとしてミャンマーやイラン、ベトナム、ベラルーシといった独裁どくさい国家こっかを中心ちゅうしんに、世界中せかいじゅうで533人にんのジャーナリストが報道ほうどう活動かつどう中ちゅうに逮捕たいほされ投獄とうごくされている。また治安ちあんの安定あんていしていない地域ちいきでは殺害さつがいされるジャーナリストも多おおく、2022年ねんには年間ねんかんで57人にんが報道ほうどう活動かつどう中ちゅうに殺害さつがいされている。

こうしたことから、独裁どくさい国家こっかから亡命ぼうめいして国外こくがいから報道ほうどうを続つづけるジャーナリストも多おおい。例れいとして、2022年ねんに自身じしんの出演しゅつえんするテレビ番組ばんぐみにおいて反戦はんせん活動かつどうを行おこなったマリーナ・オフシャンニコワは2023年ねん2月がつにロシアから脱出だっしゅつし、フランスへと亡命ぼうめいした。

ジャーナリズムと民主みんしゅ国家こっか

こうした情報じょうほう統制とうせいを防ふせぐために、民主みんしゅ主義しゅぎ国家こっかにおいては表現ひょうげんの自由じゆうが保障ほしょうされ、報道ほうどうの自由じゆうもその中なかにおいて保障ほしょうがなされている。このような自由じゆうはアメリカ独立どくりつ戦争せんそうやフランス革命かくめいなどの市民しみん革命かくめいの中なかで、新聞しんぶんなどの行おこなう報道ほうどうが世論せろんの形成けいせいに大おおきな役割やくわりを果はたしたことによって確立かくりつされ、樹立じゅりつされた新しん政府せいふにおいては自由じゆう権けんの一部いちぶとして法的ほうてきに表現ひょうげんの自由じゆうが認みとめられるようになった。日本にっぽんにおいても、日本国にっぽんこく憲法けんぽうの第だい二に十じゅう一いち条じょうにおいて「集会しゅうかい、結社けっしゃ及および言論げんろん、出版しゅっぱんその他た一切いっさいの表現ひょうげんの自由じゆうは、これを保障ほしょうする」との一文いちぶんがあり、この中なかで報道ほうどうの自由じゆうは保障ほしょうされている。さらに第だい二に項こうでは「検閲けんえつは、これをしてはならない」と定さだめられており、検閲けんえつも明確めいかくに禁止きんしされている。報道ほうどうの自由じゆうには取材しゅざいの自由じゆうや媒体ばいたいの流通りゅうつう・頒布はんぷの自由じゆうが含ふくまれている。

しかし報道ほうどうの自由じゆうが確立かくりつされたのちも、政府せいふとマスメディアの間あいだではその自由じゆうの範囲はんいをめぐってしばしば対立たいりつが起おきている。軍事ぐんじ的てき・外交がいこう的てきなものを中心ちゅうしんに重要じゅうよう事項じこうがしばしば国家こっか機密きみつに指定していされ情報じょうほう流出りゅうしゅつが制限せいげんされる一方いっぽう、情報じょうほう公開こうかい法ほうが制定せいていされ政府せいふの公文書こうぶんしょ等ひとしが一般いっぱんに公開こうかいされるよう定さだめられている国家こっかも多おおくなってきている。また、ジャーナリストの重要じゅうような職業しょくぎょう倫理りんりのひとつに取材しゅざい源げんの秘匿ひとくが挙あげられるが、刑事けいじ裁判さいばんにおいてはある程度ていどの尊重そんちょうはされるものの、どこまでそれが認みとめられるかについては議論ぎろんがある。

権力けんりょくの監視かんし、いわゆる「番犬ばんけん」（ウォッチドッグ）機能きのうはジャーナリズムにおいて非常ひじょうに重視じゅうしされており、権力けんりょく悪あくの追求ついきゅうこそがジャーナリズムの使命しめいであるとする論説ろんせつも多おおい。一方いっぽうで、権力けんりょく批判ひはんを至上しじょう命題めいだいとした場合ばあいともすれば権力けんりょくに従したがわない犯罪はんざい者しゃをも擁護ようごすることになりかねず、善悪ぜんあくの転倒てんとうが起おきる場合ばあいがある。

報道ほうどうの自由じゆうを示しめす指標しひょうとしては、国境こっきょうなき記者きしゃ団だんが毎年まいとし世界せかい報道ほうどう自由じゆう度ど指数しすうを公表こうひょうしている。

ジャーナリズム自体じたいの権力けんりょく性せい

報道ほうどう・ジャーナリズムは世論せろんを形成けいせいすることができるため社会しゃかい的てきに非常ひじょうに大おおきな影響えいきょう力りょくをもっており、それはジャーナリズムが権力けんりょく性せいを帯おびていることを意味いみする。この権力けんりょくは大おおきなもので、「立法りっぽう」「行政ぎょうせい」「司法しほう」の3つの権力けんりょくにこの「報道ほうどう機関きかん」（マスメディア）を加くわえ、「第だい四よんの権力けんりょく」と呼よぶ者ものもいる。

報道ほうどう倫理りんり

ジャーナリズムと正確せいかく性せい

「イエロー・ジャーナリズム」も参照さんしょう

報道ほうどうでは事実じじつ確認かくにんの怠おこたりや他社たしゃとの競争きょうそうを背景はいけいとする勇いさみ足あしなどによって誤報ごほうが生しょうじることがある。この他ほか、部数ぶすうを増ふやすためのやらせや虚偽きょぎ報道ほうどうなどの問題もんだい（イエロー・ジャーナリズム）がある。また表現ひょうげんの自主じしゅ規制きせいや報道ほうどうにおけるタブーの問題もんだいもある。このうち、明確めいかくな誤報ごほうや捏造ねつぞう報道ほうどうに関かんしては、訂正ていせい報道ほうどうがなされる場合ばあいがある。例れいとして、日本にっぽんの放送ほうそう法ほうでは報道ほうどうが事実じじつでないことが判明はんめいした場合ばあい、その判明はんめいした日ひから2日にち以内いないに訂正ていせい・取とり消けし放送ほうそうを行おこなうことが義務ぎむづけられている。また放送ほうそうに関かんしては、2003年ねんに設立せつりつされた放送ほうそう倫理りんり・番組ばんぐみ向上こうじょう機構きこう（BPO)が放送ほうそうへの苦情くじょうや放送ほうそう倫理りんりに関かかわる諸しょ問題もんだいを審理しんりし、各局かくきょくに見解けんかいの提示ていじや勧告かんこくを行おこなっている。

まがりなりにも正確せいかく性せいを担保たんぽするシステムが整ととのえられている従来じゅうらい型がたジャーナリズムに比くらべ、ソーシャルメディア上じょうのニュースはさらに信頼しんらい性せいが低ひくく、2018年ねんの日本国にっぽんこく総務そうむ省しょうの調査ちょうさでは従来じゅうらいのマスメディアを信頼しんらいするとの回答かいとうが6割わり以上いじょうを占しめるのに対たいし、ソーシャルメディア上じょうのニュースを信頼しんらいするとの回答かいとうは3割わりにとどまっている。また、正確せいかく性せいを担保たんぽするシステムがないため、ソーシャルメディア上じょうのニュースの信頼しんらい性せいについては発信はっしん者しゃの信頼しんらい性せいによって担保たんぽされたと見みなす傾向けいこうがある。実際じっさいに、インターネット記事きじの正確せいかく性せいにまつわるトラブルは後ごを絶たたない。2016年ねんには、キュレーションサイトであるWELQの著作ちょさく権けん侵害しんがいや誤あやまった記事きじ内容ないようが炎上えんじょうし、休止きゅうしに追おい込こまれている。またインターネット上じょうでは2016年ねん頃ごろより、ソーシャルメディアにおけるフェイクニュースが急速きゅうそくに問題もんだい視しされるようになり、さまざまな機関きかんでファクトチェックが行おこなわれるようになってきている。フェイクニュースに関かんしては広告こうこく収入しゅうにゅうを求もとめて意図いと的てきに量産りょうさんされる場合ばあいがある。

ニュースに対たいする社会しゃかい全体ぜんたいからの信頼しんらい度どは、日本にっぽんにおいてはほぼ変化へんかを見みせていないものの全ぜん世界せかい的てきに低下ていか傾向けいこうにある。

ジャーナリズムと過剰かじょう性せい

犯罪はんざいの被害ひがい者しゃや加害かがい者しゃに関かんしては、日本にっぽんでは20歳さい以下いかの少年しょうねんに関かんしては少年しょうねん法ほうによって匿名とくめいでの報道ほうどうが法的ほうてきに定さだめられているものの、それ以外いがいの場合ばあいは基本きほん的てきに実名じつめいでの報道ほうどうが行おこなわれている。しかしこうした実名じつめい報道ほうどうはプライバシーの侵害しんがいや報道ほうどう被害ひがい・人権じんけん侵害しんがいにつながるとされ、匿名とくめいでの報道ほうどうを求もとめる声こえも上あがっている。

記者きしゃたちの取材しゅざいマナーやモラルの欠かけた過剰かじょうな取材しゅざいも大おおきな問題もんだいとなってきている。例れいとしては、事件じけんが起おきた際さいに報道ほうどう各社かくしゃが関係かんけい者しゃの元もとに殺到さっとうして人々ひとびとの日常にちじょう生活せいかつを脅おびやかすメディアスクラムや、パパラッチの横行おうこうなどが挙あげられる。

このほか、犯罪はんざいに関かんする過剰かじょうに詳細しょうさいな報道ほうどうは市民しみんの間あいだの不安ふあんを増幅ぞうふくさせ、模倣もほう犯はんを生うみ出だしたり、動機どうきや手口てぐちまでもが詳細しょうさいに報ほうじられることにより、新あらたな犯罪はんざいや連鎖れんさ自殺じさつが誘発ゆうはつされることがある。またニュースが娯楽ごらく化かし、報道ほうどう番組ばんぐみがショー化かして、取材しゅざい映像えいぞうにBGMや効果こうか音おん、あるいはテロップやナレーションを付加ふかすることにより必要ひつよう以上いじょうに演出えんしゅつしてしまう過剰かじょう演出えんしゅつも問題もんだいである。逮捕たいほされた容疑ようぎ者しゃが裁判さいばんで有罪ゆうざいとなる前まえから犯人はんにんと決きめつけられる、いわゆる犯人はんにん視し報道ほうどうも人権じんけん上じょう非常ひじょうに大おおきな問題もんだいがあるとされている。

報道ほうどうによって個人こじんの名誉めいよ毀損きそんが起おきることは珍めずらしくなく、裁判所さいばんしょによって名誉めいよ毀損きそんが認みとめられた場合ばあいは損害そんがい賠償ばいしょうや謝罪しゃざい広告こうこくなどの名誉めいよ回復かいふく処分しょぶんを受うけることが可能かのうである。ただし、その報道ほうどうに公共こうきょう性せいと公益こうえき性せいがあり真実しんじつである場合ばあいは名誉めいよ毀損きそん罪ざいの免責めんせき要件ようけんにあたり、罪つみに問とうことはできない。名誉めいよ毀損きそんと報道ほうどうの自由じゆうは対立たいりつする関係かんけいにあり、適用てきよう範囲はんいを巡めぐって多数たすうの裁判さいばんが起おこされ、多おおくの判例はんれいが出でている。

ジャーナリズムと客観きゃっかん性せい

詳細しょうさいは「ジャーナリズムの客観きゃっかん性せい」を参照さんしょう

客観きゃっかん報道ほうどうに対たいする考かんがえ方かたは媒体ばいたいの種別しゅべつによっても国くにによっても異ことなっている。

新聞しんぶん社しゃや雑誌ざっし社しゃには社是しゃぜとして不偏不党ふへんふとうを掲かかげる社しゃがある。2000年ねんに制定せいていされた日本にっぽん新聞しんぶん協会きょうかい「新聞しんぶん倫理りんり綱領こうりょう」では「新聞しんぶんは歴史れきしの記録きろく者しゃであり、記者きしゃの任務にんむは真実しんじつの追究ついきゅうである。報道ほうどうは正確せいかくかつ公平こうへいでなければならず、記者きしゃ個人こじんの立場たちばや信条しんじょうに左右さゆうされてはならない」としている。一方いっぽうで特定とくていの政党せいとうや政治せいじ団体だんたいを支持しじしている新聞しんぶんや雑誌ざっしもある。また、新聞しんぶんを政党せいとうや政治せいじ団体だんたいが発行はっこうしていることも多おおい。米国べいこくではニューヨーク・タイムズは政治せいじ報道ほうどうでは共和党きょうわとうより民主党みんしゅとうに近ちかい立場たちばとされている。

客観きゃっかん報道ほうどうの中身なかみについてはさまざまな議論ぎろんがある。数多かずおおく発生はっせいする事件じけんやできごとに対たいし、どのニュースを選択せんたくし、どのような順序じゅんじょで、どれくらいの紙面しめん・放送ほうそう時間じかんで報道ほうどうするか、どの写真しゃしん・映像えいぞうを選択せんたくするかという決定けっていのプロセスが介在かいざいするからである。報道ほうどう機関きかんは、事件じけんや事故じこといった事象じしょうに対たいし、報道ほうどうする価値かちが「ある」「ない」といったふるい分わけを行おこない、価値かちがあると判断はんだんした事象じしょうを報道ほうどうする。判断はんだんする基準きじゅんについてニクラス・ルーマンによれば

「驚おどろき」「新奇しんきさ」「断絶だんぜつ」「非ひ連続れんぞく」などの特性とくせいを備そなえており、広ひろく報ほうじる価値かちがある情報じょうほうとなる。そして、「驚おどろき」などの判断はんだん基準きじゅんはそのときどきの社会しゃかいの状況じょうきょうによって異ことなるため、「同おなじような事件じけんであっても、昔むかしは報道ほうどうされなかった（情報じょうほう価値かちがなかった）のに、今いまでは報道ほうどうされる（情報じょうほう価値かちが生うまれた）」といったことが、普通ふつうに起おこりうる。

ここから報道ほうどうに対たいする指摘してきの一ひとつとして、「報道ほうどうに「社会しゃかい的てき責任せきにん」や「中立ちゅうりつ性せい」、「正義まさよし」などの「あるべき論ろん」を求もとめるのは、そもそも間あいだ違ちがっている」という考かんがえが生うまれる（ルーマン）。報道ほうどうは、社会しゃかい的てき責任せきにんなどの規範きはんとは別べつ次元じげんの基準きじゅんで情報じょうほうを峻別しゅんべつし、多おおくの人ひとが求もとめるものを報ほうじる仕組しくみとなっている。そこへ外部がいぶから規範きはんを基準きじゅんとして入いれ込こもうとしても機能きのうするわけがない、ということである。

日本にっぽんにおける客観きゃっかん報道ほうどうの定義ていぎは曖昧あいまいであり、客観きゃっかん報道ほうどうそのものに疑問ぎもんを呈ていする意見いけんもある。客観きゃっかん報道ほうどうの定義ていぎは人ひとによって千差万別せんさばんべつで、定さだまった合意ごういがないからである。記者きしゃクラブが持もつ問題もんだい点てんと併あわせ日本にっぽんの報道ほうどう機関きかんの偏向へんこう報道ほうどう体質たいしつはよく批判ひはんされ、客観きゃっかん報道ほうどうは空想くうそうでしかないとの意見いけんもみられる。

発表はっぴょう報道ほうどうと調査ちょうさ報道ほうどう

官公庁かんこうちょうや捜査そうさ機関きかん、各かく企業きぎょうから記者きしゃ会見かいけんやプレスリリースなどで発表はっぴょうされる情報じょうほうを、精査せいさや取捨選択しゅしゃせんたくすることなくそのまま報ほうじるような報道ほうどうは発表はっぴょう報道ほうどうと呼よばれ、画一かくいつ的てき・一いち面めん的てきな報道ほうどうや対象たいしょうへの無む批判ひはんなどを引ひき起おこすため、あまり望のぞましくない報道ほうどう姿勢しせいとされている。これの対照たいしょうとなるのが調査ちょうさ報道ほうどうで、公的こうてきな発表はっぴょうに頼たよらず丹念たんねんな取材しゅざいによってさまざまな情報じょうほうを集あつめ、それを積つみ上あげて隠かくされた事実じじつを突つき止とめる報道ほうどうスタイルのことを指さし、ジャーナリズムの神髄しんずいであるとされている。

ジャーナリズムの報道ほうどう姿勢しせいに関かんして、日本にっぽんでは記者きしゃクラブが問題もんだいとされることが多おおい。官公庁かんこうちょうや各種かくしゅ業界ぎょうかい団体だんたいに設置せっちされた記者きしゃクラブは加盟かめい社しゃ記者きしゃの取材しゅざい拠点きょてんとなっており、当該とうがい団体だんたいから情報じょうほうを迅速じんそくに引ひき出だしやすく、また団体だんたい側がわからも発表はっぴょうが行おこないやすいというメリットがあるものの、団体だんたいから提供ていきょうされるニュースソースで満足まんぞくしそれ以上いじょうの掘ほり下さげた取材しゅざいを行おこなわなくなることで発表はっぴょう報道ほうどうに陥おちいりやすい問題もんだい点てんがあるとされている。

また、通常つうじょう記事きじを作成さくせいする際さいには直接ちょくせつ取材しゅざいを行おこない、内容ないように関かんしても検証けんしょうし誤あやまりのないものとすることが求もとめられるが、インターネットやSNSの発達はったつに伴ともない、ネット上じょうの有名人ゆうめいじんの発言はつげんなどを取材しゅざいなしにそのまま引ひき写うつして粗雑そざつな記事きじを乱造らんぞうすることが問題もんだいとなっている。これはコタツに入はいっていても作成さくせいできるような記事きじ、すなわちコタツ記事きじと呼よばれ、ネットメディアやスポーツ新聞しんぶんを中心ちゅうしんにその乱造らんぞうぶりと記事きじ作成さくせい姿勢しせいが批判ひはんを浴あびている。

様々さまざまな組織そしきから要求ようきゅうされるガイドライン

• 自殺じさつ報道ほうどうガイドライン - 2000年ねんにWHO（世界せかい保健ほけん機関きかん）が発表はっぴょう、厚生こうせい労働省ろうどうしょうが従したがうよう要請ようせいしている。
• LGBTQ報道ほうどうガイドライン - 2019年ねん3月がつに第だい一いち版はんが発表はっぴょうされた。
• 薬物やくぶつ報道ほうどうガイドライン - 2017年ねん、偏向へんこう報道ほうどうや無断むだん撮影さつえいで叩たたくことより治療ちりょうにつなげるよう評論ひょうろん家かの荻おぎ上じょうチキが発表はっぴょうした。
• ひきこもり報道ほうどうガイドライン‐ 2022年ねん12月8日にち、偏見へんけんや無断むだん撮影さつえいなどを行おこなうことに対たいして、弁護士べんごし、精神せいしん科か医い、当事とうじ者しゃらが発表はっぴょうした。

歴史れきし

1690年ねん9月がつ25日にち付づけのボストンの新聞しんぶん。

17世紀せいきごろから新聞しんぶんの発行はっこう間隔かんかくが狭せばまりつつ定期ていき化かしていき、また内容ないようも多岐たきにわたるようになっていった。名誉めいよ革命かくめいやアメリカ独立どくりつ戦争せんそうなどの市民しみん革命かくめいにおいて新聞しんぶんは世論せろんの形成けいせいに大おおきな役割やくわりを果はたし、樹立じゅりつされた新しん政府せいふにおいては自由じゆう権けんの一部いちぶとして法的ほうてきに言論げんろんの自由じゆうが認みとめられるようになった。

19世紀せいきになると新聞しんぶんの低てい価格かかく化かが進すすみ大衆たいしゅうにも広ひろく読よまれるようになると、ニュースの速報そくほう性せいがより重要じゅうようになるとともに、従来じゅうらいともすれば事実じじつ性せい・客観きゃっかん性せいが等閑なおざり視しされ、全まったく虚偽きょぎのニュースさえ掲載けいさいしていた新聞しんぶんが、読者どくしゃからの信頼しんらいを高たかめるために事実じじつを重視じゅうしするようになり、また客観きゃっかん性せいも重おもんじるようになった。この客観きゃっかん報道ほうどうの成立せいりつに関かんしては、1830年代ねんだいのペニー・ペーパーと呼よばれる安価あんかな新聞しんぶんの普及ふきゅうによるというもの、19世紀せいき中頃なかごろの通信つうしん社しゃの成立せいりつによるというもの、そして20世紀せいき初頭しょとうのジャーナリストのプロフェッショナリズムの成立せいりつによるというものの3つの有ゆう力説りきせつが存在そんざいするが、いずれにせよ20世紀せいき初頭しょとうには客観きゃっかん報道ほうどうが成立せいりつしたと考かんがえられている。この時期じきにはニュースの需要じゅようが増大ぞうだいしたためジャーナリストの職業しょくぎょう化かが進展しんてんし、大量たいりょうの職業しょくぎょうジャーナリストによってニュース記事きじの生産せいさんが進すすめられていった。一方いっぽう、この時期じきの新聞しんぶんの低てい価格かかく化かと部数ぶすうの拡大かくだいはセンセーショナリズムを引ひき起おこし、いわゆるイエロージャーナリズムを登場とうじょうさせることとなった。

20世紀せいき初頭しょとうまで新聞しんぶんや雑誌ざっしといった出版しゅっぱん物ぶつに限かぎられていたマスメディアは、1920年ねんにアメリカのピッツバーグで世界せかい初はつのラジオ放送ほうそうが始はじまることで放送ほうそうメディアの時代じだいの幕まくが開ひらき、1920年代ねんだいには世界せかい各国かっこくで急速きゅうそくにラジオ放送ほうそうが普及ふきゅうしていった。さらに第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん後ごにはテレビ放送ほうそうが各国かっこくで相次あいついで始はじまり、これも急速きゅうそくに普及ふきゅうしてマスコミ四よん媒体ばいたいの中心ちゅうしんとなっていった。

参考さんこう文献ぶんけん

• ビル・コヴァッチ、トム・ローゼンスティール 著ちょ、加藤かとう岳文たかふみ、斎藤さいとう邦くに泰たい 訳やく『ジャーナリズムの原則げんそく』日本にっぽん経済けいざい評論ひょうろん社しゃ、2002年ねん12月。ISBN 978-4818814479。 
• ビル・コヴァッチ、トム・ローゼンスティール 著ちょ、奥村おくむら信幸のぶゆき 訳やく『インテリジェンス・ジャーナリズム―確たしかなニュースを見極みきわめるための考かんがえ方かたと実践じっせん』ミネルみねるヴァ書房ぁしょぼう、2015年ねん8月がつ20日はつか。ISBN 978-4623073870。 
• 前川まえかわ徹とおる、中野なかの潔きよし『サイバージャーナリズム論ろん―インターネットによって変容へんようする報道ほうどう』東京電機大学とうきょうでんきだいがく出版しゅっぱん局きょく、2013年ねん11月。ISBN 978-4501620301。 

関連かんれん項目こうもく

• ジャーナリスト
• Category:ジャーナリズムの賞しょう
  • ピューリッツァー賞しょう
• 被害ひがい者しゃ非難ひなん
• アクタ・ディウルナ
• ブラウンエンベロープ・ジャーナリズム - 世界せかい的てきに問題もんだいとなっている不正ふせい行為こういの一ひとつで、金銭きんせん的てきな誘因ゆういんを与あたえる慣習かんしゅうとして注視ちゅうしされている。ブラウンエンベロープは英語えいごで「茶色ちゃいろの封筒ふうとう」を意味いみする。略称りゃくしょうはBEJ
• 報道ほうどうスタイル
• ニュース

報道ほうどうの種類しゅるい

• 調査ちょうさ報道ほうどう、発表はっぴょう報道ほうどう、ビデオゲームジャーナリズム

外部がいぶリンク

• デジタル大辞泉だいじせん『報道ほうどう』 - コトバンク