事故じこ

事故じこ（じこ、英えい: accident）とは、思おもいがけず起おこった悪わるいできごと^[1]。よくないことが起おこること^[2]。予期よきせず、意図いとせずに発生はっせいする不幸ふこうな出来事できごとで、典型てんけい的てきには損傷そんしょうまたは傷害しょうがいをもたらすもの（Oxford Lexicoの説明せつめい）^[3]。

概説がいせつ

事故じことは、一般いっぱん的てきな用法ようほうでは、意図いとしていなかったのに、また予期よきしていなかったのに、人ひとのからだが傷きずついたり、生命せいめいが失うしなわれたり、あるいは財産ざいさんに損害そんがいが発生はっせいしたり環境かんきょうが汚染おせんされるような出来事できごとのことである^[4]。

上記じょうきのように事故じこという言葉ことばには、基本きほん的てきには「予期よきしていなかった / 予期よきしていた」あるいは「意図いとしていなかった / 意図いとしていた」という線引せんひきが横よこたわっている。よくないことのうち、予期よきしていなかったのに、また意図いとしていなかったのに、起おきてしまった（起おこしてしまった）ことが事故じこである。事故じこをなくしたいという考かんがえは人間にんげん共通きょうつうのものである^[4]。

日本にっぽんの保険ほけん関係かんけいでは、被ひ保険ほけん者しゃの被こうむった事故じこが「不慮ふりょの事故じこ」であったかどうかを「偶然ぐうぜん性せい」・「急激きゅうげき性せい」・「外来がいらい性せい」の3つで判断はんだんしている^[5]。欧米おうべいでは事故じこを意味いみする言葉ことばとして「 accident 」が用もちいられてきたが、事故じこは予測よそく可能かのうであり、科学かがく的てき分析ぶんせきを講こうじて対策たいさくすれば予防よぼうすることが可能かのうであるという考かんがえ方かたが一般いっぱん的てきとなり、injury（傷害しょうがい、外傷がいしょう）という言葉ことばに置おき換かえられつつある^[5]。この動うごきは医学いがく界さかいで顕著けんちょであり、一部いちぶの医学いがく誌しではaccidentの使用しようを禁止きんししている。

なお、故意こいに損害そんがいを起おこすことを「事件じけん」と呼よび、事故じこと区別くべつする意味いみで用もちいられる場合ばあいもあるが、本来ほんらいの事件じけんというのは事故じこも含ふくむ広範こうはんな意味いみを持もつ語かたりであって、損害そんがいを起おこすという意味いみだけで用もちいられる語かたりではない。詳細しょうさいは事件じけんの項目こうもくを参照さんしょうのこと。

なお、痛いたましい事故じこ・事件じけんの場合ばあいは、「惨事さんじ（さんじ）」とも称しょうされ、特とくに大おおきく悲惨ひさんな事故じこ・事件じけんの場合ばあいは「大だい惨事さんじ（だいさんじ）」とも称しょうされる。

学問がくもんとしては、安全あんぜん学がく、安全あんぜん工学こうがく、失敗しっぱい学がくなどが事故じこが起おきる原因げんいんやその防止ぼうし策さくについて研究けんきゅうしている。

船舶せんぱく事故じこの一いち例れい。意図いとせず座礁ざしょうした、座礁ざしょう事故じこ。
(2005年ねん・アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくカリフォルニア州しゅう)
炭鉱たんこう事故じこで負傷ふしょうした炭すみ鉱夫こうふ（アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくコロラド州しゅう、1943年ねん）
鉄道てつどう事故じこの一いち例れい（アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく、2011年ねん）
航空こうくう事故じこの一いち例れい。
原子力げんしりょく事故じこの一いち例れい。ロシア・チェルノブイリ原子力げんしりょく発電はつでん所しょ事故じこの現場げんば。（事故じこ後ごに覆おおわれた原子げんし炉ろ棟とう）

種類しゅるい・表現ひょうげん

詳細しょうさいは「事故じこの一覧いちらん」を参照さんしょう

「事故じこ」には「交通こうつう事故じこ」や「海難かいなん事故じこ」など事故じこの生しょうじた場所ばしょを表あらわすい方いかた、「人身じんしん事故じこ」や「製品せいひん事故じこ」など事故じこの作用さよう先さきを表あらわすい方いかたがある^[4]。また、事故じこの重大じゅうだい性せいや被害ひがいの大おおきさから「大だい事故じこ」や「軽微けいびな事故じこ」などと表現ひょうげんすることがある^[4]。

天候てんこうによる事故じこ
- 雨あめによる事故じこ
- 雪ゆきによる事故じこ
山岳さんがく部ぶでの遭難そうなん、人里ひとざとでの雪降ゆきおろし中ちゅうの落下らっか事故じこや生いき埋うめ事故じこ、自動車じどうしゃや人ひとのスリップ事故じこや転倒てんとう事故じこ、飲酒いんしゅと関かかわりが深ふかい事故じこ、豪雪ごうせつによる通信つうしん網もう切断せつだん、等々とうとう、多岐たきに及およぶ。
- 落雷らくらい事故じこ
- ほか、気流きりゅうによる事故じこなど、多数たすう。
火災かさい事故じこ
爆発ばくはつ事故じこ
水難すいなん事故じこ
- 海難かいなん事故じこ
- 潜水せんすい事故じこ
- 水中すいちゅう洞窟どうくつでの事故じこ（テクニカルダイビングの事故じこ）
自動車じどうしゃ交通こうつう事故じこ
鉄道てつどう事故じこ
航空こうくう事故じこ
医療いりょう事故じこ
咬傷こうしょう事故じこ - 野生やせい動物どうぶつやペットとして飼かわれている動物どうぶつなどが人ひとに噛かみつき、負傷ふしょう事故じこを起おこすものを指さす。外傷がいしょうが狂犬病きょうけんびょうや破傷風はしょうふうなどに起因きいんする場合ばあいもある。
炭鉱たんこう事故じこ
原子力げんしりょく事故じこ：臨界りんかい事故じこを含ふくむ。
製品せいひん事故じこ
放送ほうそう事故じこ
電気でんき事故じこ
家庭かてい内ない事故じこ（住宅じゅうたく内ない事故じこ、住宅じゅうたく事故じこ）
学校がっこう内ない事故じこ

人命じんめいに直接ちょくせつ影響えいきょうしない「事故じこ」

直接ちょくせつ人間にんげんの生命せいめいを脅おどかしたりしない場合ばあいでも、事故じこと呼よばれる場合ばあいがある。主おもに業務ぎょうむにおいて、思おもわぬ手違てちがいや予期よきしない機械きかいの故障こしょうなどにより、正常せいじょうな業務ぎょうむをなしえなかった場合ばあいが相当そうとうする。トラブル・障害しょうがいと呼よばれる場合ばあいが多おおい。

民事みんじにおける事故じこ - 債務さいむ返済へんさいの不履行ふりこう、手形てがたの不渡ふわたり。「手形てがた事故じこ」などと呼よぶ。
郵便ゆうびんや宅配たくはい便びん - 「郵送ゆうそう事故じこ」や「配達はいたつ事故じこ」などと呼よばれる。誤あやま配送はいそうや何なにかの手違てちがいにより配達はいたつすべき手紙てがみや荷物にもつが不ふ達たち（＝とどかない状態じょうたい）になってしまった場合ばあい。
放送ほうそう - 放送ほうそう事故じこと呼よばれる。設備せつびの故障こしょうや手配てはい・操作そうさミスなどで、放送ほうそうすべき番組ばんぐみを間違まちがえてしまったり、停とま波なみさせてしまい放送ほうそうが途切とぎれてしまったりした場合ばあい。

事故じこの起因きいん源げん

事故じこの起因きいん源げんは大おおきく分わけて

自然しぜん要因よういん：気象きしょうや動物どうぶつ、病原びょうげん体たいなどが自然しぜんが原因げんいんとなるもの。それ自体じたいを制御せいぎょすることは困難こんなんであるが、防災ぼうさいや衛生えいせい管理かんりなどの事前じぜんの対策たいさくが行おこなわれないと人災じんさいとして扱あつかわれることがある。
社会しゃかい要因よういん：犯罪はんざい行為こういなどによって意図いと的てきになされた行為こういが原因げんいんとなるもの。セキュリティや防犯ぼうはんにより対策たいさくしていく必要ひつようがある。
技術ぎじゅつ要因よういん：業務ぎょうむ上じょうで扱あつかう危険きけん因子いんし（毒物どくぶつや高こう電圧でんあつなど）、または道具どうぐやシステムの欠陥けっかんや故障こしょう・運用うんよう変更へんこうなど技術ぎじゅつ面めんが原因げんいんとなるもの。
対象たいしょう要因よういん：サービスの供給きょうきゅう能力のうりょくに対たいして需要じゅようがオーバーすることが原因げんいんとなるもの。対策たいさくとして需給じゅきゅうのバランスを考かんがえて運用うんよう・制御せいぎょする必要ひつようがある。
人的じんてき要因よういん：ヒューマンエラーのこと。

に分わけられる^[6]。

事故じこ調査ちょうさ

事故じこ調査ちょうさとは文字通もじどおり、事故じこがなぜ発生はっせいしたのか原因げんいんを究明きゅうめいする活動かつどうである。

日本にっぽんにおいては、事故じこが発生はっせいすると、当事とうじ者しゃの刑事けいじ責任せきにんを求もとめる捜査そうさ活動かつどうばかりが優先ゆうせんされ、何なにが原因げんいんで事件じけんや事故じこなどが発生はっせいしたのか究明きゅうめいする調査ちょうさ活動かつどうがおろそかになっているのではないかと被害ひがい者しゃや被害ひがい者しゃ遺族いぞくなどから批判ひはんがあり、独立どくりつした事故じこ調査ちょうさ機関きかんのあり方かたについて、消費しょうひ者しゃ庁ちょうや国土こくど交通省こうつうしょうなどが検討けんとうを始はじめた^[いつ?]。

具体ぐたい的てきな、大おおきな事故じこ一覧いちらん

「事故じこの一覧いちらん」を参照さんしょう

日本にっぽんの行政ぎょうせい用語ようご

内閣ないかく法ほうでの用法ようほう

内閣ないかく法ほうでの「事故じこ」とは、業務ぎょうむの執行しっこうの支障ししょうとなるような出来事できごとのことである。（内閣ないかく法ほう9条じょう）

自衛隊じえいたい用語ようご

自衛隊じえいたいの組織そしき内ないでは、規則きそく違反いはん事案じあん全般ぜんぱん、もしくは人員じんいんの欠員けついんを「事故じこ」と表現ひょうげんすることがある。種類しゅるい

服務ふくむ事故じこ
人員じんいん事故じこ

その他た

脚注きゃくちゅう

[脚注きゃくちゅうの使つかい方かた]

^ 広辞苑こうじえん
^ デジタル大辞泉だいじせん
^ An unfortunate incident that happens unexpectedly and unintentionally, typically resulting in damage or injury.Oxford Lexico, "Accident".
^ ^a ^b ^c ^d 小松原こまつばら明哲めいてつ 2019, p. 1.
^ ^a ^b 神尾かみお陽子ようこほか（編へん）『子こどもの健康けんこうを育はぐくむために：医療いりょうと教育きょういくのギャップを克服こくふくする』日本にっぽん学術がくじゅつ協力きょうりょく財団ざいだん <学術がくじゅつ会議かいぎ叢書そうしょ>23 2017年ねん（平成へいせい29年ねん） pp.130 - 131.
^ 小松原こまつばら明哲めいてつ 2019, pp. 2–4.

参考さんこう文献ぶんけん

小松原こまつばら明哲めいてつ『ヒューマンエラー』（第だい3版はん）丸善まるぜん、2019年ねん10月がつ30日にち。ISBN 978-4-621-30435-8。