記者きしゃクラブ

記者きしゃクラブ（きしゃクラブ）は、公的こうてき機関きかんや業界ぎょうかい団体だんたいなどの各かく組織そしきの継続けいぞく取材しゅざいを目的もくてきとするために大手おおてメディアが中心ちゅうしんとなって構成こうせいされている任意にんい組織そしき（記者きしゃクラブ一覧いちらん）。英語えいごでは「Kisha club」ないしは「kisha kurabu」と表記ひょうきされる。大手おおてメディア以外いがいの記者きしゃ・ジャーナリストも加盟かめいできる「プレスクラブ」（日本にっぽんでは、社団しゃだん法人ほうじんである日本にっぽん記者きしゃクラブや、日本外国特派員協会にほんがいこくとくはいんきょうかいなどが該当がいとう）とは全まったく性格せいかくを異ことにし、日本にっぽん、ガボン、ムガベ政権せいけん下かのジンバブエ独特どくとくのシステムと言いわれ、フリーランスなどに対たいし排他はいた的てきであるとして近年きんねん、批判ひはんを受うけている。

組織そしき

記者きしゃクラブは法人ほうじんとしての登記とうきがなされていない私的してきな組織そしきで、主おもに大手おおてメディアが構成こうせいする。日本にっぽんには約やく800の記者きしゃクラブがあり、中央ちゅうおう省庁しょうちょう・国会こっかい・政党せいとうを初はじめ、企業きぎょう・業界ぎょうかい団体だんたい、地方自治体ちほうじちたいの役場やくばなどに置おかれている（詳細しょうさいは記者きしゃクラブ一覧いちらんを参照さんしょう）。ほとんどの記者きしゃクラブは庁舎ちょうしゃ内ないに専用せんようの記者きしゃ室しつを取材しゅざい対象たいしょう側がわから無償むしょうもしくは低額ていがくで割わり当あてられ、情報じょうほう提供ていきょうなどを独占どくせん的てきに受うけている。光熱こうねつ費ひなどの運営うんえい費ひも負担ふたんしないケースも多おおい。年間ねんかん110億おく円えん、全国ぜんこく紙し1社しゃあたり数すう億おく円えんの負担ふたんを免まぬかれているという（詳細しょうさいは記者きしゃ室しつを参照さんしょう）。

記者きしゃはほとんどがクラブに常駐じょうちゅうする。加盟かめい報道ほうどう機関きかんが複数ふくすう当番制とうばんせいで「幹事かんじ」社しゃとなってクラブの運営うんえいにあたる事ことが多おおい。情報じょうほうは情報じょうほう源げんの広報こうほう担当たんとうから幹事かんじ社しゃに伝つたえられ調整ちょうせいされ、幹事かんじが件名けんめいや発表はっぴょう日時にちじなどその報道ほうどうに関かんする約束事やくそくごとを記者きしゃ室しつの「ボード」（黒板こくばん）に書かく。黒板こくばんに書かかれた約束事やくそくごとは「黒板こくばん協定きょうてい」「クラブ協定きょうてい」「しばり（縛しばり）」などと呼よばれ、加盟かめい社しゃが順守じゅんしゅするべき約束事やくそくごととみなされる（報道ほうどう協定きょうてい参照さんしょう）。

記者きしゃ会見かいけんは、ほとんどがクラブ主催しゅさいとなっており参加さんか者しゃも加盟かめい社しゃに限かぎられ、仮かりに加盟かめい社しゃでない記者きしゃが参加さんかできても質問しつもんは出来できないことが批判ひはんを受うけていたため、民主党みんしゅとう政権せいけん下かでは開放かいほうの動うごきが進すすんでいたが、今いまは異ことなる。中央ちゅうおう官庁かんちょうの大臣だいじん会見かいけんは省庁しょうちょうが主催しゅさいするケースも多おおいが、記者きしゃクラブ主催しゅさいの方ほうが、記者きしゃクラブ外がいからの参加さんかに柔軟じゅうなんな場合ばあいもある（詳細しょうさいは記者きしゃ会見かいけんを参照さんしょう）。外務省がいむしょうなどは広報こうほう対象たいしょうが広範こうはん（海外かいがいメディアも含ふくむ）なため、もともと省しょうが主催しゅさいしている。

省庁しょうちょうなどの側がわは記者きしゃ懇談こんだん会かいやぶら下さがり取材しゅざい、国会こっかい記者きしゃ証しょう（入館にゅうかん許可きょか証しょう）の交付こうふなどの対象たいしょうを、記者きしゃクラブのメンバーに限かぎって認みとめることが多おおい。

機能きのう

日本にっぽん新聞しんぶん協会きょうかいは記者きしゃクラブの機能きのうを「公的こうてき情報じょうほうの迅速じんそく・的確てきかくな報道ほうどう」、「公権力こうけんりょくの監かん視しと情報じょうほう公開こうかいの促進そくしん」、「誘拐ゆうかい報道ほうどう協定きょうていなど人命じんめい・人権じんけんにかかわる取材しゅざい・報道ほうどう上じょうの調整ちょうせい」、「市民しみんからの情報じょうほう提供ていきょうの共同きょうどうの窓口まどぐち」と定義ていぎしている。

構成こうせい員いん

記者きしゃクラブの構成こうせい員いんは主しゅとして大手おおてメディアの記者きしゃである。日本にっぽん新聞しんぶん協会きょうかいは「日本にっぽん新聞しんぶん協会きょうかい加盟かめい社しゃとこれに準じゅんずる報道ほうどう機関きかんから派遣はけんされた記者きしゃなどで構成こうせい」されていると説明せつめいする。しかし地方ちほうの月刊げっかん誌しやコミュニティFM、ケーブルテレビ局てれびきょくなどの加入かにゅうは、地元じもとの市政しせい記者きしゃ会かい（市役所しやくしょ記者きしゃクラブ）などで認みとめられているだけである。また外国がいこく報道ほうどう機関きかんが加盟かめいするクラブは少数しょうすうにとどまる（新聞しんぶん協会きょうかいは「増ふえつつある」としている）。

加盟かめい社しゃの記者きしゃは新聞しんぶん社しゃやテレビ局てれびきょくであっても、ストレートニュース（主観しゅかんや分析ぶんせきを交まじえず事実じじつのみを記しるす記事きじ）を中心ちゅうしんとする通信つうしん社しゃ的てき仕事しごとを行おこなう。そのため、担当たんとうする対象たいしょうに常駐じょうちゅうして取材しゅざいを行おこなっており、日本にっぽん新聞しんぶん協会きょうかいも構成こうせい員いんの「継続けいぞく的てきに取材しゅざい」にこだわっている。これは「ストレートは通信つうしん社しゃ、批評ひひょう・解説かいせつはジャーナリスト」という世界せかいの潮流ちょうりゅうとは、ずれており、効率こうりつの面めんからも賢かしこくないほか、記者きしゃの分析ぶんせき眼めが養やしないにくくなるなどの弊害へいがいもある。

閉鎖へいさ性せい

記者きしゃクラブは前述ぜんじゅつの通とおり、大手おおてメディアが組織そしきしている。したがって会員かいいん制せいと言いえるが、大手おおて以外いがいのジャーナリストなどの入会にゅうかいは難むずかしい。日本にっぽん新聞しんぶん協会きょうかいは入会にゅうかい資格しかくを「公権力こうけんりょくの行使こうしを監視かんしするとともに、公的こうてき機関きかんに真しんの情報じょうほう公開こうかいを求もとめていく社会しゃかい的てき責務せきむ」「報道ほうどうという公共こうきょう的てきな目的もくてきを共有きょうゆう」「記者きしゃクラブの運営うんえいに、一定いっていの責任せきにん」「最もっとも重要じゅうようなのは、報道ほうどう倫理りんりの厳守げんしゅ」と説明せつめいしている。

実際じっさいに入会にゅうかい審査しんさするのは各かく記者きしゃクラブだが、審査しんさ過程かていは不透明ふとうめいで、加盟かめい社しゃが1社しゃでも反対はんたいすれば入会にゅうかいは認みとめられず、新規しんき参入さんにゅうが事実じじつ上じょう阻害そがいされている。外国がいこくメディアへの対応たいおうもこれと同おなじで、入会にゅうかいを巡めぐって激はげしい交渉こうしょうが行おこなわれた（詳細しょうさいは外国がいこく人じん記者きしゃを参照さんしょう）。クラブのその排他はいた性せいから「情報じょうほうカルテル」「談合だんごう」「護送ごそう船団せんだん方式ほうしき」と表現ひょうげんされることもある。取材しゅざい源げん側がわが親睦しんぼく団体だんたいの建前たてまえを利用りようし、「官報かんぽう接待せったい」などを行おこなうことも多々たたある。

入会にゅうかいを希望きぼうするジャーナリストの中なかには、クラブの一員いちいんになりたいのではなく、記者きしゃ会見かいけんで取材しゅざいがしたいだけという者ものもおり、記者きしゃクラブに代かわる認定にんてい制度せいど・会見かいけん制度せいどを求もとめる意見いけんがある。

これまでOECDや欧州おうしゅう議会ぎかい、ニューヨーク・タイムズが記者きしゃクラブの閉鎖へいさ性せいを指摘してきしているが、一貫いっかんして大手おおてメディアは記者きしゃクラブに関かんする事柄ことがらを報道ほうどうしないため、日本にっぽん国民こくみんが記者きしゃクラブの持もつ閉鎖へいさ性せいを知しる機会きかいが限かぎられてしまっている。

また、張はり込こみ中ちゅうは部外ぶがい者しゃからの質問しつもんに答こたえないなどの問題もんだいも多おおい。

世界せかいの「プレスクラブ」

プレスクラブとは記者きしゃ同士どうしの親睦しんぼくを深ふかめるための私的してきな団体だんたいである。よく知しられたものにアメリカのナショナル・プレスクラブや日本にっぽんの日本にっぽん記者きしゃクラブ、日本外国特派員協会にほんがいこくとくはいんきょうかいなどがあり、そのほかの多おおくの国くににも存在そんざいする。プレスクラブは自前じまえの建物たてものに娯楽ごらく設備せつびなどを用意よういし、勉強べんきょう会かいや、ピクニックなどのイベントで国籍こくせきなどにかかわらず記者きしゃとしての交友こうゆうを深ふかめるのが目的もくてきである。ただし、日本にっぽん、ガボン、ムガベ政権せいけん下かのジンバブエに特有とくゆうなのは、加入かにゅう対象たいしょうとなるメディアが限定げんていされていること、記者きしゃ室しつの提供ていきょうなど、政府せいふ機関きかんから記者きしゃクラブに便宜べんぎが供与きょうよされることである。

取材しゅざい活動かつどう

記者きしゃクラブに詰つめている記者きしゃが普段ふだん、出勤しゅっきんするのは取材しゅざい機関きかんの記者きしゃ室しつである。日にち中ちゅうは常駐じょうちゅうし、プレスリリースを待まったり記者きしゃ会見かいけんや記者きしゃ懇談こんだん会かいで話はなしを聞きき、必要ひつようがあれば現場げんばに取材しゅざいに行いく。夜よるになると「夜討ようち・朝あさ駆か」（ようち・あさがけ）と呼よばれる、関係かんけい者しゃへの取材しゅざい（対象たいしょう者しゃの自宅じたくや訪問ほうもん先さきが多おおい）を行おこなう。政治せいじ報道ほうどうの場合ばあい、番ばん記者きしゃが取材しゅざい対象たいしょうに一いち日にち中ちゅう張はり付つく。移動いどう中ちゅうに取とり囲かこんで、「ぶら下さがり」という非公式ひこうしきな会見かいけんを行おこなうという手法しゅほうも取とられる。

事件じけんなどのその性質せいしつによっては記者きしゃクラブの内部ないぶでも報道ほうどう協定きょうていで取材しゅざいを制限せいげんすることもある。

特とくに制度せいどとして確立かくりつしているのは身代金みのしろきん目的もくてき誘拐ゆうかい事件じけんが発生はっせいした場合ばあいの誘拐ゆうかい報道ほうどう協定きょうていである。犯人はんにんが「警察けいさつに通報つうほうすれば人質ひとじちを殺害さつがいする」などと脅迫きょうはくし、事件じけんが報道ほうどうされれば警察けいさつが捜査そうさしていることが犯人はんにんに露見ろけんし人質ひとじちに危険きけんが及およぶことから、報道ほうどうを各社かくしゃ間あいだの協定きょうていで控ひかえる。また大おおきな事件じけん、事故じこの関係かんけい者しゃのところに多数たすうの記者きしゃが集あつまる「集団しゅうだん的てき過熱かねつ取材しゅざい」（メディアスクラム）が起おきた場合ばあいに、地元じもとの記者きしゃクラブなどが中心ちゅうしんとなって取材しゅざいの自粛じしゅくや制限せいげんを申もうし合あわせることもある。

上杉うえすぎ隆たかしは著書ちょしょで、それが顕著けんちょに表あらわれているのが「メモ合あわせ」であり、クラブに加盟かめいしている記者きしゃは別べつ会社かいしゃの記者きしゃ同士どうしであるにもかかわらず、取材しゅざいメモを見みせ合あっていると主張しゅちょうしている。ただし同書どうしょは、「メモ合あわせ」は政治せいじ家かの声こえがよくき取きとれなかったときにその場ばにいた記者きしゃ同士どうしで語句ごくを確認かくにんするためだともしている。2012年ねん7月がつには読売新聞よみうりしんぶん記者きしゃが取材しゅざいメモを同おなじ記者きしゃクラブ所属しょぞくの他社たしゃ記者きしゃに誤あやまってメールで送信そうしんし、メモ内容ないようを社外しゃがいに流出りゅうしゅつさせたために諭旨ゆし解雇かいこ処分しょぶんとなっており、取材しゅざいメモは記者きしゃクラブ記者きしゃにとっても普通ふつうは厳秘げんぴである。この件けんでは担当たんとう記者きしゃの他ほか、編集へんしゅう局長きょくちょうが更迭こうてつ、社会しゃかい部長ぶちょうが降格こうかくなどの処分しょぶんを受うける事態じたいになった。

横並よこならび意識いしきは報道ほうどう機関きかんにとっても都合つごうがよい。特とくに新聞しんぶんは戸別こべつ配達はいたつ制度せいどで部数ぶすうが安定あんていしており、取材しゅざいコストを掛かけて良よい記事きじを書かいても部数ぶすうが伸のびる見込みこみはない。よって取材しゅざいは程々ほどほどで良よく、特とくオチを避さけて無難ぶなんに過すごせば、いわゆるエリートサラリーマンとしては安泰あんたいであるとするキャリアモデルとしての説明せつめいもなされている。 一方いっぽうで、記者きしゃクラブの特権とっけんを利用りようして他社たしゃを出だし抜ぬく、横並よこならびを壊こわす行為こういは問題もんだい視しされることがあり、状況じょうきょうによっては記者きしゃクラブから追放ついほうされるケースもある。

公的こうてき機関きかんでは、記者きしゃクラブ以外いがいに広報こうほうなど便宜べんぎを積極せっきょく的てきに図はからないケースが多おおく、加盟かめい社しゃでないと十分じゅうぶんに取材しゅざいが行おこなえない場合ばあいがある。日本にっぽん新聞しんぶん協会きょうかいは「記者きしゃクラブは公権力こうけんりょくに情報じょうほう公開こうかいを迫せまる組織そしきとして誕生たんじょうした歴史れきしがある」とするが、十分じゅうぶんな根拠こんきょを基もとにした対応たいおうではないと言いえる。

歴史れきし

取材しゅざい互助ごじょ組織そしきとして発足ほっそく

日本にっぽんの記者きしゃクラブの歴史れきしは明治めいじ時代じだいにはじまった。1890年ねん（明治めいじ23年ねん）、第だい1回かい帝国ていこく議会ぎかいが開催かいさいされたが、議会ぎかい側がわが示しめした新聞しんぶん記者きしゃ取材しゅざい禁止きんしの方針ほうしんに対たいして、『時事新報じじしんぽう』の記者きしゃが在京ざいきょう各社かくしゃの議会ぎかい担当たんとうに呼よびかけ「議会ぎかい出入でいり記者きしゃ団だん」を結成けっせいし、取材しゅざい用よう傍聴ぼうちょう席せきの確保かくほや議事ぎじ筆記ひっきの作成さくせいで協力きょうりょくを図はかった。10月にはこれに全国ぜんこくの新聞しんぶん社しゃが合流ごうりゅうし、名称めいしょうを「共同新聞きょうどうしんぶん記者きしゃ倶楽部くらぶ」と改あらためた。しかし、実態じったいは数すう人にんの記者きしゃのたまり場ばにすぎず、中級ちゅうきゅう官僚かんりょうに面会めんかいできる程度ていどであった。大正たいしょう時代じだいに入はいると本格ほんかく的てきな記者きしゃクラブがつくられた。昭和しょうわ初期しょきまでに、取材しゅざいの自由じゆうを勝かち取とっていった。この時期じきの記者きしゃクラブのほとんどは記者きしゃが個人こじん個人こじんで直接ちょくせつ加入かにゅうするものだった。

翼賛よくさんクラブ化か

1931年ねんに満州まんしゅう事変じへんが起おきてから新聞しんぶんが飛とぶように売うれ、各社かくしゃは自発じはつ的てきに親おや軍ぐん化かしていった。日米にちべい開戦かいせん前まえの 1941年ねん5月、新聞しんぶん統制とうせい機関きかん「日本にっぽん新聞しんぶん連盟れんめい」が発足ほっそく。11月28日にち、「新聞しんぶんの戦時せんじ体制たいせい化か」が決定けっていされ、日米にちべい開戦かいせん後ごに新聞しんぶん連盟れんめいの設もうけた「記者きしゃ会かい規約きやく」により加盟かめいは記者きしゃ個人こじんから会社かいしゃ単位たんいとなり、役所やくしょの発表はっぴょうを取材しゅざいして右みぎから左ひだりへ発表はっぴょう報道ほうどうをおこなう翼賛よくさんクラブが1官公庁かんこうちょう1クラブだけ認みとめられた。取材しゅざい組織そしきとして公認こうにんされ、国家こっか体制たいせいに組くみ込こまれた記者きしゃクラブ制度せいどが始はじまった。記者きしゃクラブはだんだんと政府せいふ発表はっぴょうを政府せいふの意向いこう通どおりに報ほうじる「御用ごようクラブ」と化かしていき、東條とうじょう内閣ないかくが倒たおれ、朝日新聞あさひしんぶん出身しゅっしんの緒方おがた竹虎たけとらが国務大臣こくむだいじん兼けん情報じょうほう局きょく総裁そうさいとして小磯こいそ内閣ないかくに入閣にゅうかくし、新聞しんぶんへの検閲けんえつを緩ゆるめようとしたころには、検閲けんえつと自己じこ規制きせいで委縮いしゅくした新聞しんぶんには統制とうせい緩和かんわを生いかす力ちからはもはや残のこっていなかった。戦時せんじ中ちゅうの記者きしゃクラブに「黒潮くろしお会かい」があったが、日米にちべい開戦かいせん直後ちょくごの1941年ねん12月には当時とうじは物資ぶっし難なんにもかかわらず寿司すしや酒さけがふんだんにふるまわれ、また1942年ねん2月がつのシンガポールの戦たたかいの際さいは結果けっかが出でていないにも関かかわらず、既すでに「勝利しょうり」原稿げんこうが出来上できあがっていたという。

GHQの圧力あつりょく

戦後せんご、GHQは記者きしゃクラブの解体かいたいを執拗しつようにせまった。報道ほうどうの自由じゆうや取材しゅざいの自由じゆうを踏ふみにじる組織そしきであるとして取材しゅざい組織そしきから世界せかい一般いっぱんの親睦しんぼく団体だんたいへの転換てんかんをせまった。これを受うけて、1949年ねん10月26日にち、 日本にっぽん新聞しんぶん協会きょうかいは『記者きしゃクラブに関かんする方針ほうしん』を作成さくせいした。記者きしゃクラブを「親睦しんぼく社交しゃこうを目的もくてきとして組織そしきするものとし取材しゅざい上じょうの問題もんだいにはいっさい関与かんよせぬこと」と規定きていした。ジャパン・ロビーの圧力あつりょくを受うけてGHQは態度たいどを軟化なんかさせ、公共こうきょう機関きかんに対たいしては記者きしゃ室しつなどの便宜べんぎ供与きょうよをおこなうべきとする方針ほうしんを取とり、記者きしゃクラブは超ちょう法規ほうき的てきな措置そちとして受うけ入いれられた。1958年ねん（昭和しょうわ33年ねん）には、記者きしゃ室しつの使用しようを許可きょかする大蔵省おおくらしょう管財かんざい局長きょくちょうの通達つうたつが出でた。

建前たてまえと実態じったいの乖離かいり

記者きしゃクラブは親睦しんぼく団体だんたいの建前たてまえのもと、戦争せんそう中ちゅうと同おなじように取材しゅざい組織そしきとしての活動かつどうを続つづけていたが、報道ほうどう協定きょうていを巡めぐって建前たてまえと実態じったいの乖離かいりが表面ひょうめん化かした。役所やくしょは報道ほうどう協定きょうていなどによって報道ほうどう制限せいげんや取材しゅざい制限せいげんをもとめた。対たいして親睦しんぼく団体だんたいは報道ほうどうの自由じゆうや取材しゅざいの自由じゆうを旨むねとした。1960年代ねんだいまでは報道ほうどう協定きょうていが発覚はっかくすると除名じょめい処分しょぶんをおこなっていたが、こういった対立たいりつの末すえ1970年ねん以降いこう、記者きしゃクラブの指揮しき権けんを公然こうぜんと認みとめるようになった。このころからテレビやラジオも記者きしゃクラブ制度せいどに加くわわっていった。 1978年ねん、日本にっぽん新聞しんぶん協会きょうかいは記者きしゃクラブの目的もくてきについて「親睦しんぼく」に加くわえて「相互そうごの啓発けいはつ」を挙あげた（78年ねん見解けんかい）。

外国がいこく人じん記者きしゃからの批判ひはん

詳細しょうさいは「外国がいこく人じん記者きしゃ#外国がいこく人じん記者きしゃの排除はいじょと外圧がいあつ」を参照さんしょう

しかし、平成へいせい時代じだいに入はいると記者きしゃクラブ体制たいせいは見直みなおしをせまられた。1990年代ねんだい、バブル景気けいきにより日本にっぽん経済けいざいの国際こくさい的てき影響えいきょう力りょくが増大ぞうだいし、外国がいこく人じん記者きしゃの活動かつどうが活発かっぱつ化かしてくると日本にっぽん国内こくないでも記者きしゃクラブに対たいする疑問ぎもんの声こえが強つよまった。 1992年ねん、外務省がいむしょうの「霞かすみクラブ」が外国がいこく人じん記者きしゃを正式せいしき会員かいいんとして受うけ入いれ、1993年ねんに日本にっぽん新聞しんぶん協会きょうかいは、外国がいこく報道ほうどう機関きかんの記者きしゃについて「原則げんそくとして正会員せいかいいんの資格しかくでクラブへの加入かにゅうを認みとめるべきである」との見解けんかいを発表はっぴょうした。 1995年ねんには江藤えとう隆美たかみ総務庁そうむちょう長官ちょうかんのオフレコ発言はつげんのリークが問題もんだいとなり、翌よく1996年ねん、新聞しんぶん協会きょうかいはオフレコ取材しゅざいは重要じゅうような手段しゅだんだが乱用らんようすべきではなく「安易あんいなオフレコ取材しゅざいは厳げんに慎つつしむべき」との見解けんかいを発表はっぴょうした。

特権とっけん廃止はいしと開放かいほうの動うごき

1996年ねん、鎌倉かまくら市しは記者きしゃクラブに属ぞくさない報道ほうどう機関きかんにも記者きしゃ室しつと記者きしゃ会見かいけんを開放かいほうした（ただし企業きぎょうの広報こうほう誌し、宗教しゅうきょう団体だんたいの機関きかん誌し、政党せいとう機関きかん誌しは対象たいしょう外がい）。

こういった流ながれのなかで、記者きしゃクラブの既得きとく権益けんえきは、親睦しんぼく団体だんたいという建前たてまえでは維持いじしにくくなった。1997年ねん、日本にっぽん新聞しんぶん協会きょうかいは記者きしゃクラブを「公的こうてき機関きかんが保有ほゆうする情報じょうほうへのアクセスを容易よういにする『取材しゅざいのための拠点きょてん』」と改あらためた（97年ねん見解けんかい）。

2001年ねん、長野ながの県けんが田中たなか康夫やすお知事ちじ（当時とうじ）のもと、脱だつ・記者きしゃクラブ宣言せんげんを行おこない特権とっけん廃止はいしの動うごきは県けんレベルまで拡大かくだいした。

2002年ねん、新聞しんぶん協会きょうかいは、記者きしゃクラブは「取材しゅざい・報道ほうどうのための自主じしゅ的てきな組織そしき」であるとの見解けんかいを出だした。日本にっぽん新聞しんぶん協会きょうかいは2003年ねん12月がつ10日とおかにも「記者きしゃクラブ制度せいど廃止はいしにかかわるEU優先ゆうせん提案ていあんに対たいする見解けんかい」を出だして抵抗ていこうしていた。記者きしゃクラブの閉鎖へいさ性せい・排他はいた性せい・便宜べんぎ供与きょうよは揺ゆるがなかった。2009年ねん、政権せいけん交代こうたいが起おきて以降いこう、記者きしゃ会見かいけんオープン化かが徐々じょじょに行おこなわれた。

2005年ねん3月24日にち、ライブドアがインターネットメディアとして初はじめて気象庁きしょうちょう記者きしゃクラブに加盟かめいを申請しんせい。しかし、2006年ねん3月15日にち、前ぜん社長しゃちょう・堀江ほりえ貴文たかふみが証券しょうけん取引とりひき法ほう違反いはんで起訴きそされたことを理由りゆうに申請しんせいを出席しゅっせき者しゃの全会ぜんかい一致いっちで却下きゃっか。

2005年ねん7月がつ9日にち、フリージャーナリスト（ルポライター）寺澤てらさわ有ゆうと船川ふなかわ輝樹てるき週刊しゅうかん現代げんだい副ふく編集へんしゅう長ちょうが、警察庁けいさつちょうとその記者きしゃクラブ加盟かめい社しゃ15社しゃを相手あいてどり、警察庁けいさつちょう庁舎ちょうしゃ内ないで行おこなわれる記者きしゃ会見かいけんなどに出席しゅっせきし質問しつもんすることを妨害ぼうがいしてはならないとの仮処分かりしょぶん申請しんせいを東京とうきょう地方裁判所ちほうさいばんしょ、東京とうきょう高等こうとう裁判所さいばんしょに申もうし立たてるが棄却ききゃく。最高裁判所さいこうさいばんしょに特別とくべつ抗告こうこくしている。

2010年ねん3月がつ4日にち、日本にっぽん新聞しんぶん労働ろうどう組合くみあい連合れんごう（新聞労連しんぶんろうれん）が記者きしゃクラブの全面ぜんめん開放かいほうをもとめる声明せいめいを発表はっぴょう。

性格せいかく規定きていの変遷へんせん

• 大正たいしょうから昭和しょうわ10年代ねんだい、「取材しゅざいの自由じゆうを獲得かくとくする戦たたかいの前線ぜんせん基地きち」
• 1949年ねん9月がつ、GHQの警告けいこく
• 1949年ねん10月がつ28日にち、親睦しんぼく機関きかん - 「記者きしゃクラブに関かんする編集へんしゅう委員いいん会かいの方針ほうしん」（49年ねん方針ほうしん）
• 1978年ねん、親睦しんぼく機関きかんかつ若干じゃっかんの調整ちょうせい的てき役割やくわり - 「記者きしゃクラブに関かんする日本にっぽん新聞しんぶん協会きょうかい編集へんしゅう委員いいん会かいの見解けんかい」（78年ねん見解けんかい）

記者きしゃクラブの利点りてんと弊害へいがい

ここでは日本にっぽんにおける記者きしゃクラブに対たいして挙あげられている利点りてんと弊害へいがいを記述きじゅつし、あるものについては事例じれいを示しめす。

利点りてん

記者きしゃクラブの弊害へいがいが指摘してきされて久ひさしいが、それでも記者きしゃクラブが廃止はいしされないのは、記者きしゃクラブにはメディア側がわおよびニュースソース側がわにとって一定いっていの利点りてんがあるからである。以下いかにあげる「利点りてん」はそれぞれの立場たちばにとっての利点りてんであり、それがすなわち情報じょうほうの受うけ手てである国民こくみんにとっての利点りてんとなりうるかについては、別途べっと考慮こうりょを要ようする。

加盟かめいニュース・メディアにとって

• 情報じょうほう発表はっぴょうに消極しょうきょく的てきな公的こうてき機関きかんに記者きしゃクラブが記者きしゃ会見かいけんを求もとめて実現じつげんさせてきたという歴史れきしがある。
• 「言論げんろん・報道ほうどうの自由じゆう」と、国民こくみんの知しる権利けんりのために培つちかわれてきたシステムである。
• 公権力こうけんりょくや政治せいじ家かの取材しゅざい拒否きょひや差別さべつに、個人こじんではなく団体だんたいとして当あたれる。
• 情報じょうほう公開こうかいの推進すいしん拠点きょてん。
• 公的こうてき機関きかんがもつ第だい一いち次じ情報じょうほうに密着みっちゃく取材しゅざいして報道ほうどうできる。
• 組織そしきとして取材しゅざい機能きのうを備そなえ、情報じょうほう源げんからのレクチャーや資料しりょう配布はいふの窓口まどぐちとなり、ニュース・メディアにとって効率こうりつ的てきな情報じょうほうシステムである。公的こうてき情報じょうほうを迅速じんそくに報道ほうどうできる。
• 記者きしゃクラブ主催しゅさいの記者きしゃ会見かいけんは、クラブのペースで取材しゅざいできる。
• 無駄むだな競争きょうそうが省はぶける。取材しゅざい活動かつどうがスムーズにできる。
• 研究けんきゅう会かい、見学けんがく会かい、勉強べんきょう会かいなど、単独たんどくではむずかしい活動かつどうが可能かのうになる。
• 日本にっぽん・ガボン・ムガベ政権せいけん下かのジンバブエにおける記者きしゃクラブ制度せいどは、例たとえばルワンダ・ブルンジのようなアフリカの中なか進しん国こくと比較ひかくすればはるかに立たち遅おくれた制度せいどであるが、エリトリア・北朝鮮きたちょうせんに比くらべると先進せんしん的てきな制度せいどである。

ニュース・ソースにとって

• 国民こくみんへの積極せっきょく的てきな情報じょうほう開示かいじと説明せつめい責任せきにんを果はたす上うえで役立やくだつ。
• 効率こうりつ的てきな広報こうほう推進すいしんシステムである。広報こうほうすべき情報じょうほうを迅速じんそくに発表はっぴょうできる。
• 効率こうりつ的てきな発表はっぴょうができ、手間てまが省はぶける。記者きしゃ会見かいけんもスムーズに運営うんえいできる。
• 公的こうてき組織そしきと国民こくみんをつなぐ「コミュニケーションの回路かいろ」「情報じょうほうネットワーク」「国家こっかの情報じょうほうをプールするダム」としての役割やくわりを担になっており、膨大ぼうだいな情報じょうほうを蓄積ちくせき、整理せいり、報道ほうどうする。記者きしゃクラブを廃止はいしすれば、日本にっぽんの情報じょうほうシステムが麻痺まひするだろう。すなわちこれは、日本にっぽんの記者きしゃクラブメディアの記者きしゃに小学校しょうがっこう３年ねん程度ていどの科学かがくの知識ちしきという、極きわめて高度こうどな知識ちしきが求もとめられることを意味いみし、彼かれらの大だい部分ぶぶんを占しめる最さい重度じゅうど知的ちてき障害しょうがい者しゃに対たいする合理ごうり的てき配慮はいりょを欠かく恐おそれがある。
• 記者きしゃクラブが廃止はいしされれば、記者きしゃ会見かいけんが開放かいほうされなかった場合ばあい、情報じょうほうを出だし渋しぶる権力けんりょく側がわを牽制けんせいする存在そんざいが失うしなわれ、国民こくみんの知しる権利けんりが損そこなわれる恐おそれがある［例たとえば、記者きしゃクラブがない労働ろうどう基準きじゅん監督かんとく署しょでは、情報じょうほう発信はっしんがほとんどない（労働ろうどう基準きじゅん監督かんとく署しょが、厚生こうせい労働省ろうどうしょう〈記者きしゃクラブが存在そんざいする〉の下位かい組織そしきであることは、日本にっぽんでは報道ほうどうのタブーとされている）］

弊害へいがい

• 情報じょうほうカルテルとして、加盟かめい報道ほうどう機関きかんが非ひ加盟かめいの組織そしきやジャーナリストを排除はいじょする。
• 閉鎖へいさ性せいと排他はいた性せい。加盟かめい報道ほうどう機関きかんにとっての利点りてんは、そのまま、加盟かめいしたくてもできないメディアやジャーナリストにとっては不当ふとうな差別さべつと受うけ止とめられる。排他はいた性せいはニュース・ソースの独占どくせん取材しゅざいを助長じょちょうする可能かのう性せいがある。
• 常駐じょうちゅう、常時じょうじ取材しゅざいが前提ぜんていとなっており、これが可能かのうな報道ほうどう機関きかんは限かぎられる。
• 首相しゅしょうや外相がいしょうの外遊がいゆうの際さいでも、記者きしゃクラブ主催しゅさいの記者きしゃ会見かいけんが開ひらかれ、現地げんちや海外かいがいのメディア、ジャーナリストは参加さんかが制限せいげんされる。結果けっか、外遊がいゆうでの情報じょうほう発信はっしんは、国内こくない向むけに制限せいげんされる。
• 報道ほうどう協定きょうていが国民こくみんの「知しる権利けんり」を結果けっか的てきに規制きせいする可能かのう性せいがある。
• 記者きしゃクラブに頼たよるうちに、独自どくじ取材しゅざいする力ちからが低下ていかする可能かのう性せいがある。
• 独自どくじの取材しゅざい活動かつどうが阻害そがいされる可能かのう性せいがある。
• 取材しゅざい対象たいしょうと癒着ゆちゃく、一体化いったいかして、場合ばあいによっては「番ばん記者きしゃ」「ご注進ちゅうしん」などの現象げんしょうも起おきている。
• 情報じょうほう源げんに近ちかすぎるために、公的こうてき機関きかんの動向どうこう監視かんしというニュース・メディアの機能きのうが失うしなわれる可能かのう性せいがある。
• クラブの配置はいちが固定こてい化かしてしまい、時代じだいのニーズにあわせた報道ほうどうがしにくくなる。たとえば、労働ろうどう事件じけんが増ふえているのに労働ろうどう基準きじゅん監督かんとく署しょに記者きしゃクラブを置おく動うごきが見みられない。

発表はっぴょう報道ほうどうと情報じょうほう操作そうさ

• 情報じょうほう操作そうさを目的もくてきとした金銭きんせん授受じゅじゅ
  • 1921年ねんにガス会社かいしゃがガスの値上ねあげの承認しょうにんのために、当時とうじの東京とうきょう市し会かいの市議しぎに贈賄ぞうわい工作こうさくを行おこなったが、その際さい、市役所しやくしょや警視庁けいしちょうの記者きしゃクラブに詰つめていた新聞しんぶん記者きしゃにも贈賄ぞうわい工作こうさくが行おこなわれていたことが発覚はっかくし、世論せろんから糾弾きゅうだんされた（東京とうきょうガス疑獄ぎごく事件じけん）。
• 発表はっぴょう報道ほうどうの横行おうこう
  • メディアが政府せいふの政策せいさくを代弁だいべんし、政府せいふの広報こうほうとなっている。
  • 警察けいさつ及および検察けんさつが自みずからの捜査そうさに有利ゆうりな方向ほうこうに情報じょうほう操作そうさを行おこない、メディアも調査ちょうさ報道ほうどうに消極しょうきょく的てきなため、冤罪えんざいを生うみ易やすい（例れい：松本まつもとサリン事件じけん、志布志しぶし事件じけん、香川かがわ・坂出さかいで3人にん殺害さつがい事件じけん、足利あしかが事件じけん）。
  • 池田いけだ信夫しのぶによると、警察けいさつ記者きしゃクラブに多数たすうの記者きしゃを常駐じょうちゅうさせることが日本にっぽんの報道ほうどうを犯罪はんざい報道ほうどう中心ちゅうしんにしているのではないかという。ちなみに池田いけだは元もとNHK報道局ほうどうきょく職員しょくいんで、番組ばんぐみ制作せいさくにも携たずさわった。
  • フリージャーナリストの魚住うおずみ昭あきらは「官庁かんちょうの集あつめた二に次じ、三さん次じ情報じょうほうをいかに早はやく取とるかが仕事しごとの7、8割わりを占しめてしまうと、実際じっさいに世よの中なかで起おきていることを察知さっちする感覚かんかくが鈍なまる。役人やくにんの論理ろんりが知しらず知しらず自分じぶんの中なかに入はいり込こみ『統治とうちされる側がわからの発想はっそう』がしにくくなる。自分じぶんはそうではないと思おもっていたが、フリーとなって5年ねん、徐々じょじょに実感じっかんするようになった」と述のべている。
  • 衆議院しゅうぎいん議員ぎいんの河野こうの太郎たろうは（日本にっぽんでは）記者きしゃが政治せいじ家かから食事しょくじをご馳走ちそうになるのは当あたり前まえ、政治せいじ家かが外遊がいゆうする際さいには同おなじホテルに泊とまり「政治せいじ家かと記者きしゃはよいお友達ともだち」になることがメディアでは「良よい記者きしゃ」とされている現状げんじょうを指摘してきしている。
  • ニューヨーク・タイムズ東京とうきょう支局しきょく長ちょうのファクラーは、「記者きしゃクラブは官僚かんりょう機構きこうと一体いったいとなり、その意向いこうを無む批判ひはんに伝つたえ、国民こくみんをコントロールする役割やくわりを担になってきた。記者きしゃクラブと権力けんりょくとの馴なれ合あいが生うまれており、その最大さいだいの被害ひがい者しゃは日本にっぽんの民主みんしゅ主義しゅぎと日本にっぽん国民こくみんである。」と述のべている。
  • 主要しゅようメディアが報ほうじる捜査そうさ情報じょうほうについて、「検察けんさつが記者きしゃクラブを通つうじておこなう『リーク』に依存いぞんしている」と指摘してきされることがある。また、検察けんさつ側がわは自己じこに不都合ふつごうと考かんがえられる報道ほうどうをおこなった加盟かめい報道ほうどう機関きかんに対たいしては検察けんさつ関連かんれん施設しせつへの「出入でいり禁止きんし」措置そちを取とることがある。西松建設にしまつけんせつ事件じけんに際さいしては、一部いちぶの加盟かめい報道ほうどう機関きかんが西松建設にしまつけんせつから献金けんきんを受うけ取とった政治せいじ家かの1人ひとりである二に階かい俊博としひろの件けんについての記事きじを掲載けいさいしたことに対たいし、取材しゅざい拒否きょひおよび東京とうきょう地方ちほう検察庁けんさつちょうへの3週間しゅうかんの出入でいり禁止きんし措置そちを取とった。この一いち件けん以後いご、加盟かめい報道ほうどう機関きかんは検察けんさつおよび自民党じみんとうに有利ゆうりな報道ほうどうをおこなうようになったといわれる。また、検察けんさつは記者きしゃクラブに加盟かめいしていない報道ほうどう機関きかんによる取材しゅざいを拒否きょひしている。

自主じしゅ規制きせい

• 記者きしゃ自身じしんによる自主じしゅ規制きせい
  • 1974年ねんに『文藝春秋ぶんげいしゅんじゅう』が報ほうじた「田中たなか金脈きんみゃく問題もんだい」の場合ばあい、当時とうじ、この疑惑ぎわくは以前いぜんから記者きしゃクラブ内ないでは知しられていた話はなしにもかかわらず、ほとんどのマスコミが文藝春秋ぶんげいしゅんじゅうが記事きじ化かするまでこれを黙殺もくさつしていた。
  • 1999年ねん、東京とうきょう高等こうとう検察庁けんさつちょう検事けんじ長ちょうである則定のりさだ衛まもるの女性じょせい問題もんだいを調査ちょうさしていた最高さいこう検察庁けんさつちょう次長じちょう検事けんじが、法務省ほうむしょう内うちで複数ふくすうの記者きしゃに対たいし「確たしかに浮気うわきはあったかもしれないが、みんなそういうことを活力かつりょくにしているんだ。この建物たてもの（法務省ほうむしょう）の中なかの半分はんぶん以上いじょうの検事けんじはそう思おもっている」と発言はつげん。しかしこの発言はつげんはすぐには報道ほうどうされず、2日にち後ごの紙面しめんで『朝日新聞あさひしんぶん』と『西日本にしにほん新聞しんぶん』が記事きじにした。これを受うけて他たの新聞しんぶんやテレビが報道ほうどうした。朝日新聞あさひしんぶん、西日本にしにほん新聞しんぶんとも司法しほう記者きしゃクラブに加盟かめいしている。
  • 記者きしゃクラブに加盟かめいしている記者きしゃは、別べつ会社かいしゃの記者きしゃ同士どうしであるにもかかわらず、取材しゅざいメモを見みせ合あう「メモ合あわせ」を行おこなっているといわれる。
  • 2011年ねん、2012年ねんに首都しゅと圏けんで多発たはつした原子力げんしりょく発電はつでん所しょ反対はんたいデモのうち、いくつかは国会こっかい議事堂ぎじどう前まえ、首相しゅしょう官邸かんてい前まえで行おこなわれ、参加さんか者しゃが数すう万まん人にんに達たっしたこともあったが、議事堂ぎじどうや官邸かんていに常駐じょうちゅうしていた記者きしゃクラブの記者きしゃたちは横並よこならびに黙殺もくさつして報道ほうどうしなかった。また、フリージャーナリストが取材しゅざいのために記者きしゃクラブが利用りようしている国会こっかい記者きしゃ会館かいかんの利用りようを申請しんせいしたところ、既得きとく権けんを理由りゆうに拒否きょひされ、フリージャーナリストという「身分みぶん」を蔑視べっしさえされた。
  • 上記じょうきの上杉うえすぎ隆たかしは、「記者きしゃクラブの記者きしゃたちは2011年ねんの福島ふくしま第だい一いち原子力げんしりょく発電はつでん所しょ事故じこに際さいし、公式こうしき発表はっぴょうを書かき写うつすだけでろくに質問しつもんもしないだけではなく、（当局とうきょくに都合つごうが悪わるい）質問しつもんをしようとしたフリージャーナリストたちを野次やじって黙だまらせようとさえした」逸話いつわを紹介しょうかいしている。さらに「既存きそんのテレビ・新聞しんぶんは、全まったく質問しつもんもしません。東京電力とうきょうでんりょくという、電事連でんじれんのいわゆるスポンサーに気きを遣やって何なに一ひとつ質問しつもんしないで、結果けっかとして半なかば大本営だいほんえい発表はっぴょうのように、情報じょうほうを出でてくるのを止とめる、防衛ぼうえいするような状況じょうきょうです」「なんと2週間しゅうかん、私わたしが質問しつもんするまで「プルトニウム」と言いう単語たんごを記者きしゃ会見かいけんで訊きいた記者きしゃは一人ひとりもいませんでした」と指摘してきした。しかし朝日新聞あさひしんぶん記者きしゃの奥山おくやま俊宏としひろは、プルトニウムについて上杉うえすぎが質問しつもんするより先さきに、朝日新聞あさひしんぶん経済けいざい部ぶの記者きしゃが3月22日にち深夜しんやの記者きしゃ会見かいけんで「プルトニウムの測定そくていはする必要ひつようはないんですか？」「定量ていりょう的てきにデータを測定そくていして説明せつめいするべきではないんですか？」と執拗しつように質問しつもんしたと指摘してきしている。東電とうでんの会見かいけんでは大手おおてメディアも含ふくめ、記者きしゃの厳きびしい質問しつもんややりとりが続つづいていたことを、会見かいけんに自みずから連日れんじつ出でていた奥山おくやまが書籍しょせきにまとめ出版しゅっぱんしている（しかし、野次やじって黙だまらせようとしたことに関かんする記述きじゅつはない）。

情報じょうほう源げんへの肩入かたいれ

• 積極せっきょく的てき加担かたん
• 2000年ねん6月25日にち、首相しゅしょう官邸かんてい敷地しきち内ないにある記者きしゃクラブ「内閣ないかく記者きしゃ会かい」で『明日あしたの記者きしゃ会見かいけんについての私見しけん』と題だいするメモが落おちているのが見みつかった。このメモは2000年ねん5月26日にちに行おこなわれた当時とうじの首相しゅしょう・森もり喜朗よしろうの神かみの国くに発言はつげんの釈明しゃくめい会見かいけんで、記者きしゃ側がわの追及ついきゅうをかわす方策ほうさくを記しるした首相しゅしょう宛あての「指南しなん書しょ」とみられた。またこの問題もんだいをめぐっては主要しゅよう週刊しゅうかん誌しがその指南しなん書しょを書かいたメディア（NHK）を実名じつめいで取とり上あげたにもかかわらず内閣ないかく記者きしゃ会かい側がわはこの問題もんだいの真相しんそう究明きゅうめいには消極しょうきょく的てきだった。この指南しなん書しょはNHKが記事きじ出稿しゅっこうに使用しようする「5300」と呼よばれる端末たんまつ内ないにある「連絡れんらくメール」の印刷いんさつ様式ようしきと同おなじであった。また、NHKでしか使つかわない「民放みんぽう」という表記ひょうきがあった。
• 2005年ねん11月8日にち、放火ほうか事件じけんで逮捕たいほされたNHK大だい津放送局つほうそうきょくの記者きしゃが所属しょぞくしていた滋賀しが県警けんけい記者きしゃクラブを滋賀しが県警けんけいが家宅かたく捜索そうさくした。しかし、情報じょうほう源げんの秘匿ひとくが脅おびやかされるとして危惧きぐする意見いけんも出でた。

憲法けんぽうとの関連かんれん

記者きしゃクラブ制度せいどは憲法けんぽうで保障ほしょうされているとされる「国民こくみんの知しる権利けんり」を確保かくほするために必要ひつようだとする意見いけんがある。一方いっぽう、政府せいふや公共こうきょう機関きかんが記者きしゃクラブという特定とくていの組織そしきのみに情報じょうほうを提供ていきょうする事ことこそが「国民こくみんの知しる権利けんり」を侵害しんがいするもの（憲法けんぽうに違反いはんした行為こうい）だとする意見いけんがある。

国民こくみんの「知しる権利けんり」は憲法けんぽうが保障ほしょうしているとする憲法けんぽう解釈かいしゃくにはほぼ異論いろんはない。そのためこの問題もんだいは単たんに記者きしゃクラブ制度せいどの良よし悪あしにとどまらない憲法けんぽうに関かかわる問題もんだいでもある。記者きしゃクラブに加盟かめいしていないために取材しゅざいが出来できない個人こじんや組織そしきが、権利けんり侵害しんがいだとして国くにや公共こうきょう機関きかんを憲法けんぽう違反いはんで訴うったえる可能かのう性せいもある。

記者きしゃクラブ制度せいど見直みなおしの動うごき

多おおくの批判ひはんを受うけ1990年代ねんだいから記者きしゃクラブの見直みなおしが始はじまり、以降いこう30年間ねんかんにわたりその進展しんてんの是非ぜひについての検討けんとうの場ばの設置せっちの有無うむの是非ぜひを論点ろんてんとして開示かいじすべきかの議論ぎろんの開始かいし時期じきの検討けんとうがなされ続つづけている。

首相しゅしょう官邸かんてい

「記者きしゃ会見かいけんオープン化か」も参照さんしょう

2010年ねん3月26日にち、内閣ないかく総理そうり大臣だいじんの鳩山はとやま由紀夫ゆきおは、記者きしゃクラブに属ぞくさない記者きしゃを記者きしゃ会見かいけんに参加さんかさせた。

政党せいとう

新生党しんせいとう

1994年ねん、新生党しんせいとう代表だいひょう幹事かんじの小沢おざわ一郎いちろうが記者きしゃクラブ以外いがいの雑誌ざっし社しゃ記者きしゃも会見かいけんに参加さんかできるという当時とうじでは画期的かっきてきな試こころみを行おこなったが、小沢おざわとメディアとの対立たいりつなどもあって途中とちゅうで挫折ざせつに追おい込こまれた。

民主党みんしゅとう

2002年ねん、民主党みんしゅとう幹事かんじ長ちょうの岡田おかだ克也かつやがスポーツ紙しや週刊しゅうかん誌しや日本にっぽん国外こくがい報道ほうどう機関きかんなどのあらゆるメディアが会見かいけんに参加さんかできる方式ほうしきを導入どうにゅうした。それまでは野党やとうクラブ以外いがいのメディアが会見かいけんに参加さんかすることができなかった。

自由民主党じゆうみんしゅとう

2009年ねん10月14日にち、自由民主党じゆうみんしゅとう総裁そうさい・谷垣たにがき禎一ていいちは定例ていれい記者きしゃ会見かいけんを、自民党じみんとうの記者きしゃクラブである平河ひらかわクラブ以外いがいの日本にっぽん国内外こくないがいのあらゆるメディアやフリーランスの記者きしゃ・カメラマンにも開放かいほうした。ただし、最初さいしょの質問しつもん権けんは平河ひらかわクラブのみで、平河ひらかわクラブの質問しつもんが一いち通とおりした後のちに、平河ひらかわクラブ加盟かめい社しゃ以外いがいのフリーランスの記者きしゃも含ふくめて質問しつもん出来できる様ようになっている。会見かいけん所しょ開放かいほう当初とうしょは熟慮じゅくりょしたものではなかった。

中央ちゅうおう官庁かんちょう

「記者きしゃ会見かいけんオープン化か」も参照さんしょう

2004年ねん3月30日にち、外務省がいむしょうは中央ちゅうおう官庁かんちょう・都道府県とどうふけん庁ちょう・警察けいさつなどに対たいし、日本にっぽん国外こくがいメディアの記者きしゃを会見かいけんに参加さんかさせるよう依頼いらいする文書ぶんしょを発送はっそうした。

2009年ねん9月16日にち、鳩山はとやま由紀夫ゆきお内閣ないかくが成立せいりつした。外務省がいむしょうを皮切かわきりに記者きしゃ会見かいけんのオープン化かが行おこなわれた。ネットメディアやフリーランス記者きしゃなどが記者きしゃ会見かいけんに出席しゅっせきし、質問しつもんできるようになった。

2010年ねん（平成へいせい22年ねん）4月がつ現在げんざい、外務省がいむしょうや金融きんゆう庁ちょう、法務省ほうむしょう、総務そうむ省しょう、内閣ないかく府ふの一部いちぶ（行政ぎょうせい刷新さっしん会議かいぎなど）、環境省かんきょうしょう、首相しゅしょう官邸かんていなど14府ふ省しょうで行おこなわれている。ただし、依然いぜん記者きしゃクラブが主催しゅさい権けんを持もち、大臣だいじんがオープン化かを記者きしゃクラブに申もうし出でる、記者きしゃクラブ主催しゅさいの記者きしゃ会見かいけんとは別べつにオープンな記者きしゃ会見かいけんを始はじめるなど、オープン化かの方法ほうほうや程度ていどはさまざまで、大臣だいじんが主催しゅさい権けんを持もつフルオープン化かはまだ少すくない。

鳩山はとやま内閣ないかくの閣僚かくりょうによる閣議かくぎ後ご記者きしゃ会見かいけんのオープン化か度合どあいを調しらべるため、大学だいがくのウェブマガジン（早稲田大学わせだだいがく大学院だいがくいんジャーナリズム研究けんきゅう科かの「Spork!」）の記者きしゃ（大学院生だいがくいんせい）が参加さんか出来できるかを調しらべた記事きじによると、閣僚かくりょう18人にんのうち7人にんの記者きしゃ会見かいけんについて、だれが主催しゅさい者しゃなのか、省庁しょうちょうと記者きしゃクラブで見解けんかいが一致いっちしていなかった。学生がくせい記者きしゃの参加さんかは、18閣僚かくりょうのうち13人にんについて「報道ほうどうの対価たいかとして収入しゅうにゅうを得えている職業しょくぎょう報道ほうどう人じんにあたらない」などの理由りゆうで拒否きょひされた。認みとめられた5閣僚かくりょうについては、いずれも記者きしゃクラブが主催しゅさいを主張しゅちょうする記者きしゃ会見かいけんだった。

地方ちほう公共こうきょう団体だんたい

1996年ねん4月がつ、神奈川かながわ県けん鎌倉かまくら市しは全国ぜんこく紙しや地元じもと紙しの神奈川かながわ新聞しんぶんなど6社しゃでつくる「鎌倉かまくら記者きしゃ会かい」に市役所しやくしょ内ないの記者きしゃ室しつを使つかわせるのを止とめ、その場所ばしょを市しに登録とうろくした全すべての報道ほうどう機関きかんが利用りようできる「広報こうほうメディアセンター」として開放かいほうした。当時とうじの市長しちょう・竹内たけうち謙けん（元もと朝日新聞あさひしんぶん編集へんしゅう委員いいん、元もとインターネット新聞しんぶんJANJAN代表だいひょう）の「一部いちぶの報道ほうどう機関きかんでつくる記者きしゃクラブが、税金ぜいきんで賄まかなう市しの施設しせつを独占どくせんするのはおかしい」という考かんがえによるものであった。

2001年ねん5月15日にち、長野ながの県知事けんちじの田中たなか康夫やすおは「脱だつ・記者きしゃクラブ宣言せんげん」を発表はっぴょうし、記者きしゃクラブから記者きしゃ室しつと記者きしゃ会見かいけんの主催しゅさい権けんを返上へんじょうさせた。

2001年ねん6月8日にち、東京とうきょう都とは、都庁とちょう内うちの鍛冶たんや橋きょう・有楽うらく記者きしゃクラブに対たいし、同年どうねん10月がつからクラブ及およびスペースの使用しよう料りょうを支払しはらうよう申もうし入いれたが、後のちにこれを撤回てっかいし、光熱こうねつ・水みず費ひと内線ないせん電話でんわ代だいに限かぎって徴収ちょうしゅうすることになった。また、石原いしはら慎太郎しんたろう東京とうきょう都知事とちじは週刊しゅうかん誌しや外国がいこく報道ほうどう機関きかんが会見かいけんに参加さんかできないことについて疑問ぎもんを呈ていしている。

2006年ねん3月14日にち、北海道ほっかいどうは厳きびしい財政ざいせい状況じょうきょう等とうを踏ふまえ新しん年度ねんどから「道みち政せい記者きしゃクラブ」に対たいし、光熱こうねつ費ひ・水道すいどう料金りょうきん等とう約やく250万まん円えんの支払しはらいを求もとめることを決きめた。

2007年ねん5月11日にち、東国原ひがしこくばる英夫ひでお宮崎みやざき県知事けんちじは定例ていれい記者きしゃ会見かいけんで、「記者きしゃクラブという存在そんざいは、先進せんしん国こくでは日本にっぽんだけ」であると述のべた上うえで、現行げんこうの県政けんせい記者きしゃクラブの在あり方かたを見直みなおすべきとの問題もんだい提起ていきを行おこなった。この直後ちょくご、読売新聞よみうりしんぶんなど一部いちぶメディアでは否定ひてい的てき見解けんかいを表明ひょうめいした。

業界ぎょうかい・経済けいざい団体だんたい

1993年ねん6月がつ、東京とうきょう証券しょうけん取引とりひき所しょ記者きしゃクラブである「兜かぶと倶楽部くらぶ」はこれまで加盟かめい資格しかくは日本にっぽんの報道ほうどう機関きかんに限かぎられていた規約きやくを改正かいせいして、新あらたに「日本にっぽん新聞しんぶん協会きょうかい加盟かめい社しゃに準じゅんずる報道ほうどう業務ぎょうむを営いとなむ外国がいこく報道ほうどう機関きかん」と付記ふきし、事実じじつ上じょう、日本にっぽん国外こくがい報道ほうどう機関きかんにも門戸もんこを開放かいほうした。

1999年ねん3月がつ、経団連けいだんれん機械きかいクラブが廃止はいし。この記者きしゃクラブは電機でんき、造船ぞうせん、半導体はんどうたい、自動車じどうしゃなど取材しゅざい拠点きょてんとして運営うんえいされていたが、家主やぬしの経団連けいだんれん側がわが退去たいきょを要求ようきゅう。報道ほうどう側がわと発表はっぴょう主体しゅたい企業きぎょう側がわとでクラブ存続そんぞくの方策ほうさくが議論ぎろんされたが、打開だかい策さくが見みつからないままクラブは消滅しょうめつした。

この背景はいけいには、電機でんきメーカー側がわはオープンな記者きしゃ会見かいけんを行おこない、ニュースリリースもメールを利用りようしていたので、クラブを使つかうメリットが少すくなかったからと言いわれている。一方いっぽう、自動車じどうしゃ業界ぎょうかいはクラブを存続そんぞくさせるため、日本にっぽん自動車じどうしゃ工業こうぎょう会かいの中なかに「自動車じどうしゃ産業さんぎょう記者きしゃ会かい」を設置せっちしたが、朝日あさひ、読売よみうり、毎日まいにち、日経にっけいが参加さんかを拒否きょひし、事実じじつ上じょう、記者きしゃクラブとして機能きのうしていない。

1999年ねん7月がつ、日本電信電話にほんでんしんでんわ (NTT) の記者きしゃクラブ「葵あおいクラブ」がNTTの再編さいへんに伴ともなって廃止はいし。葵あおいクラブについてはかねてから一いち民間みんかん企業きぎょうに記者きしゃクラブがあったことについての問題もんだいが指摘してきされていたが、NTT再編さいへんを機きに報道ほうどう各社かくしゃで作つくる経済けいざい部長ぶちょう会かいが葵あおいクラブを記者きしゃクラブとして認みとめないことで一致いっち。一方いっぽう、NTT側がわもクラブ加盟かめい社しゃ以外いがいの雑誌ざっしや日本にっぽん国外こくがいメディアに記者きしゃ室しつを開放かいほうする狙ねらいからクラブの廃止はいしを受うけ入いれた。

記者きしゃ証しょう制度せいど

日本にっぽん以外いがいの国くにでもジャーナリストを名乗なのれば誰だれもが自由じゆうに取材しゅざいできる訳わけではない。これは特とくに保安ほあん上じょうの理由りゆうである。例たとえば、事前じぜん審査しんさを行おこない、記者きしゃ証しょうを発行はっこうするなどの手続てつづきが必要ひつようである。ただし、審査しんさによって報道ほうどう機関きかんに所属しょぞくしていることが確認かくにんされ、保安ほあん上じょうの問題もんだいなしとされた場合ばあいは記者きしゃ証しょうが自動的じどうてきに発行はっこうされるのが原則げんそくである。記者きしゃ証しょうを持もっていれば、少すくなくとも公的こうてき機関きかんの記者きしゃ会見かいけんには出席しゅっせきできる。上杉うえすぎ隆たかしは政府せいふ自みずからが記者きしゃの身分みぶんを確認かくにんしない現状げんじょうの方ほうが危険きけんだと指摘してきしている。

日本にっぽん以外いがいの国くにでは審査しんさや登録とうろくの制度せいどは窓口まどぐちが1つで、いったん、記者きしゃと認みとめられれば自由じゆうに取材しゅざいすることができる。日本にっぽんのように、全国ぜんこく津々浦々つつうらうらに私的してきなクラブが乱立らんりつし、1つの記者きしゃクラブで記者きしゃと認みとめられても、他たの記者きしゃクラブでは認みとめられないということはない。また、審査しんさや登録とうろくには公的こうてき機関きかんが関かかわっていることが多おおく、法律ほうりつの枠わく内ないで運用うんようされている。

アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくでは、最近さいきんではインターネットのブログでニュース報道ほうどうを配信はいしんしているブロガーに記者きしゃ証しょうを発行はっこうし、話題わだいになった。ウェブ上じょうでニュース報道ほうどうを配信はいしんしホワイトハウスから記者きしゃ証しょうを発行はっこうされていた保守ほしゅ系けいニュースサイトの記者きしゃが違法いほうポルノサイトを運営うんえい、違法いほう取引とりひきを行おこなっていたことが発覚はっかくしセキュリティーチェックの不十分ふじゅうぶんさが指摘してきされた。

フランスでは、ジャーナリストであれば「プレスカード」が発行はっこうされるが、この発行はっこうを受うける場合ばあいはメディアの関係かんけい者しゃとジャーナリストで作つくられている「プレスカード委員いいん会かい」の審査しんさを受うけなければならない。また、この「プレスカード」によって大統領だいとうりょう府ふ（エリゼ宮えりぜきゅう殿どの）や各かく省庁しょうちょうの記者きしゃ会見かいけんに参加さんかすることができる。

政府せいふ首脳しゅのうの取材しゅざいは保安ほあん上じょうの理由りゆうで身元みもとや身辺しんぺんの調査ちょうさなどがある。ホワイトハウスでは「記者きしゃ証しょう」を発行はっこうしてもらうためには厳重げんじゅうなセキュリティーチェックを受うけなければならず、また発行はっこうされるまでに数ヶ月すうかげつ程度ていど時間じかんがかかることもある。政府せいふ首脳しゅのうとメディアの距離きょりが非常ひじょうに近ちかいといわれていた北欧ほくおう諸国しょこくでも、2001年ねん9月11日にちのアメリカ同時どうじ多発たはつテロ事件じけん以降いこうは制限せいげんされるようになった。

日本にっぽん新聞しんぶん協会きょうかいは2004年ねんから、外国がいこく人じん記者きしゃに限かぎって「記者きしゃ証しょう」制度せいどを認みとめつつある。しかし、末端まったんの記者きしゃクラブがそれを認みとめるかどうか保証ほしょうはない。

日本にっぽん以外いがいの例れい

記者きしゃ団だん

上杉うえすぎ隆たかしはその著書ちょしょ『記者きしゃクラブ崩壊ほうかい』で、現在げんざい、記者きしゃクラブは日本にっぽんとガボン、ジンバブエにしか存在そんざいしないとしているが、アメリカのホワイトハウスや連邦れんぽう政府せいふの官庁かんちょうにも記者きしゃクラブのようなものがあるという担当たんとう記者きしゃの指摘してきがある。ジンバブエでは政府せいふの情報じょうほうメディア委員いいん会かいへの登録とうろくが義務ぎむ化かされているという報道ほうどうがあった。

記者きしゃ室しつ

詳細しょうさいは「記者きしゃ室しつ#日本にっぽん以外いがい」を参照さんしょう

アメリカの「記者きしゃクラブ」

アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくにもホワイトハウス 、連邦れんぽう政府せいふの官庁かんちょう、国連こくれん本部ほんぶなどに大手おおてメディア記者きしゃからなる記者きしゃ団体だんたいがある。大手おおてメディア記者きしゃは記者きしゃ室しつの提供ていきょうや優先ゆうせん的てきな取材しゅざい機会きかいなどの便宜べんぎ供与きょうよを受うけている。

アメリカのホワイトハウス、国務省こくむしょう、ペンタゴン、連邦れんぽう議会ぎかい詰づめの記者きしゃの団体だんたいの間あいだでは、ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストなど有力ゆうりょくメディア記者きしゃが当局とうきょく者しゃから特別とくべつな便宜べんぎを受うけ、独占どくせんインタビューや特とくダネを与あたえられている。ホワイトハウスのブリーフィング・ルームの60ある椅子いすは会社かいしゃの名前なまえが貼はり付づけてあり、最さい前列ぜんれつは通信つうしん社しゃと大手おおてテレビ、後方こうほうになるほど影響えいきょう力りょくの小ちいさいメディアに割わり振ふられる。大統領だいとうりょうや国務こくむ長官ちょうかんの同行どうこう取材しゅざいの飛行機ひこうき内ないの席順せきじゅんも同様どうようである。

アメリカの記者きしゃクラブは常駐じょうちゅうメディア各社かくしゃのブースや机つくえはあるが、日本にっぽんの記者きしゃクラブのような休憩きゅうけい用ようのソファや冷蔵庫れいぞうこはなく、記者きしゃクラブに所属しょぞくしていないフリーランス記者きしゃを日本にっぽんのような風習ふうしゅうで排除はいじょするということはない。代表だいひょう取材しゅざいのやり方かたなどを調整ちょうせいすることはあるが、取材しゅざい上じょうの取とり決きめや各社かくしゃの協定きょうていを結むすぶことはない。

脚注きゃくちゅう

参考さんこう文献ぶんけん

• 稲葉いなば三千男みちおほか『新聞しんぶん学がく 第だい三さん版はん』1995年ねん ISBN 978-4535581883
• 天野あまの勝文かつふみほか『岐路きろに立たつ日本にっぽんのジャーナリズム』1996年ねん ISBN 978-4535582156
• 岩瀬いわせ達哉たつや『新聞しんぶんが面白おもしろくない理由りゆう』講談社こうだんしゃ〈講談社こうだんしゃ文庫ぶんこ〉（原著げんちょ2001年ねん9月がつ）。ISBN 9784062732857。 
• 田村たむら紀雄としお、林はやし利隆としたか(編へん) 『新版しんぱん ジャーナリズムを学まなぶ人ひとのために』世界せかい思想しそう社しゃ 新版しんぱん 1999年ねん ISBN 4790707881
• 村上むらかみ玄げん一いち『記者きしゃクラブって何なにだ!?』同朋どうほう舎しゃ（原著げんちょ2001年ねん11月）。ISBN 9784810427271。 
• 筑紫哲也ちくしてつや『ニュースキャスター』集英社しゅうえいしゃ〈集英社しゅうえいしゃ新書しんしょ〉（原著げんちょ2002年ねん6月がつ）。ISBN 9784087201451。 
• 筑紫哲也ちくしてつや他た 『職業しょくぎょうとしてのジャーナリスト―ジャーナリズムの条件じょうけん〈1〉』 岩波書店いわなみしょてん、2005年ねん2月がつ。ISBN 978-4000263979
• 田中たなか良りょう紹『メディア裏うら支配しはい--語かたられざる巨きょ大だいマスコミの暗闘あんとう史し』講談社こうだんしゃ（原著げんちょ2005年ねん3月がつ）。ISBN 9784062128346。 
• 柴山しばやま哲也てつや『日本にっぽん型がたメディアシステムの興亡こうぼう--瓦版かわらばんからブログまで』ミネルみねるヴァ書房ぁしょぼう〈叢書そうしょ・現代げんだい社会しゃかいのフロンティア〉（原著げんちょ2006年ねん6月がつ）。ISBN 9784623046089。 
• 山田やまだ直樹なおき他た 『追跡ついせき!平成へいせい日本にっぽんタブー大全たいぜん 2』 宝島社たからじましゃ、2006年ねん10月がつ。ISBN 978-4796650250
• 青木あおき理さとし『国策こくさく捜査そうさ―暴走ぼうそうする特捜とくそう検察けんさつと餌食えじきにされた人ひとたち』金曜日きんようび（原著げんちょ2008年ねん5月がつ）。ISBN 9784906605408。 
• 天野あまの勝文かつふみ、橋場はしば義之よしゆき『新しん現場げんばから見みた新聞しんぶん学がく』2008年ねん ISBN 978-4762018770
• 上杉うえすぎ隆たかし『ジャーナリズム崩壊ほうかい』幻冬舎げんとうしゃ〈幻冬舎げんとうしゃ新書しんしょ〉（原著げんちょ2008年ねん7月がつ30日にち）。ISBN 9784344980884。 
• ローリー・アン フリーマン(著ちょ), 橋場はしば 義之よしゆき(訳わけ)『記者きしゃクラブ―情報じょうほうカルテル』緑風りょくふう出版しゅっぱん 2011年ねん
• マーティン・ファクラー『「本当ほんとうのこと」を伝つたえない日本にっぽんの新聞しんぶん 』2012年ねん ISBN 978-4575153941

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