フリーランス

フリーランス（英えい: freelance）は、特定とくていの企業きぎょうや団体だんたいに所属しょぞくしたり、特定とくていの組織そしきの活動かつどうに専従せんじゅうしたりしておらず、したがって雇用こよう契約けいやくや労働ろうどう契約けいやくの関係かんけいを結むすんで労働ろうどう力りょくを提供ていきょうするのではなく、業務ぎょうむ委託いたくなどにより自みずからの技能ぎのうをサービスや成果せいか物ぶつを通つうじて提供ていきょうすることによって生活せいかつする、社会しゃかい的てきに独立どくりつしたライフスタイルの個人こじん事業じぎょう主ぬしを指さす総称そうしょうである^[1]。日本にっぽんでは法令ほうれい上じょうの用語ようごではないが、自由じゆう業ぎょうまたは自由じゆう職業しょくぎょう^[2]とも呼よばれる。この形態けいたいにより請うけ負おった業務ぎょうむを遂行すいこうする人ひとをフリーランサーまたはフリーエージェントとも呼よぶ。

概要がいよう

日本にっぽんでは法令ほうれい上じょうの用語ようごではない^[3]が、経済けいざい産業さんぎょう省しょうが2021年ねんに公表こうひょうしたガイドライン内ないでは「実じつ店舗てんぽがなく、雇人やといにんもいない自営じえい業主ぎょうしゅや一人ひとり社長しゃちょうであって、自身じしんの経験けいけんや知識ちしき、スキルを活用かつようして収入しゅうにゅうを得える者ものを指さす」と定義ていぎされている^[4]。

単発たんぱつの仕事しごととして様々さまざまな仕事しごとはするものの、その仕事しごとを引ひき受うける都度つど契約けいやくを結むすぶという形態けいたいをとる請負うけおいであり、小説しょうせつ家かや芸能人げいのうじんなど個人こじんの能力のうりょくによって成果せいかと報酬ほうしゅうが決きまる芸術げいじゅつ分野ぶんやに多おおいが、大工だいくやプログラマなどの技術ぎじゅつ者しゃ、漁師りょうしのような第だい一いち次じ産業さんぎょうも存在そんざいする。

派遣はけん会社かいしゃと契約けいやくしている派遣はけん社員しゃいんは、派遣はけん会社かいしゃに属ぞくする従業じゅうぎょう員いんと見みなされるため、フリーランサーではない。フリーランスという言葉ことばには、自営業じえいぎょう・自由じゆう業ぎょう・個人こじん企業きぎょう（合同ごうどう会社かいしゃ、パパママ法人ほうじんなどと呼称こしょうされる小規模しょうきぼ事業じぎょう者しゃ）等とうの複数ふくすうの法ほう制度せいどが混在こんざいしているため、福利ふくり厚生こうせいや税ぜい制度せいどが一律いちりつに提供ていきょうできず、また実態じったいを把握はあくしにくいという社会しゃかい的てきな課題かだいがある。

収入しゅうにゅうは、本人ほんにんの営業えいぎょう力りょくと業務ぎょうむ遂行すいこう能力のうりょくによって決定けっていされ、同業どうぎょうの会社かいしゃ員いんよりも高こう収入しゅうにゅうを得える者ものがいる一方いっぽうで全まったく仕事しごとが無ないという状況じょうきょうもあり、収入しゅうにゅうが不安定ふあんていなためローンやクレジットカードの契約けいやくでは不利ふりになりがちである。このため公務員こうむいんや会社かいしゃ員いんよりも不安定ふあんていな働はたらき方かたとされている。

インターネットが浸透しんとうしてきたことで、フリーランスの増加ぞうかや社会しゃかいの構造こうぞう変化へんかにより、フリーランス化かや社会しゃかい回帰かいきが取とり上あげられるようになった。

2000年ねん、アメリカの政策せいさく評議ひょうぎ会かいにおいて公式こうしきレポートが提出ていしゅつされた。アメリカのフリーランスの実態じったいを調査ちょうさしたそのレポートは「全ぜん米国べいこく内ないの就業しゅうぎょう人口じんこう4200万まん人にんのうち、1300万まん人にん・就業しゅうぎょう人口じんこうの4人にんに1人ひとりが、何なんらかの形態けいたいでフリーランサーとして就労しゅうろうしている」^[5]という内容ないようであった。

日本にっぽん国内こくないにおけるフリーランス人口じんこうの公的こうてき調査ちょうさは、1990年代ねんだい後半こうはん以降いこう、明確めいかくなフリーランスへの職業しょくぎょう分類ぶんるいとしての再さい定義ていぎが行おこなわれておらず、正確せいかくな現状げんじょうを把握はあくすることは難むずかしい。当時とうじの調査ちょうさでは「自由じゆう業者ぎょうしゃの数かずが 200万まん人にんから230万まん人にん・事業じぎょう所しょの登録とうろく数すう600万まんヶ所かしょ以上いじょう」との数字すうじがあるが、これは、当時とうじの日本にっぽん国内こくないの就業しゅうぎょう人口じんこうの40分ぶんの1程度ていどである。2020年ねん時点じてんの推計すいけいでは325万まん人にんいるとされる^[1]。

民営みんえい会社かいしゃに依よる調査ちょうさとして、独自どくじの「フリーランス実態じったい調査ちょうさ^[6]」が2010年代ねんだい後半こうはんから実施じっしされているが、「全国ぜんこくの20-69歳さい男女だんじょ（3,096人にん）を対象たいしょう」^[6]としており、統計とうけい調査ちょうさとしての母体ぼたい数すうは少すくない。内容ないようは「広義こうぎのフリーランスの推計すいけい経済けいざい規模きぼが初はつの20兆ちょう円えんを超こえ、日本にっぽんの総そう給与きゅうよ支払しはらい額がくの10％を占しめる^[6]」という経済けいざい規模きぼの提示ていじに対たいして「広義こうぎのフリーランス個人こじんの平均へいきん報酬ほうしゅうは186万まん円えんとなり、昨年さくねん比ひ12%増加ぞうか傾向けいこう^[6]」と続つづき、フリーランス人口じんこうひとりへの所得しょとく配分はいぶん率りつと総そう経済けいざい規模きぼが矛盾むじゅんしており、生活せいかつ水準すいじゅんとしての国内こくない最低さいてい給与きゅうよ水準すいじゅんには達たっしていない事実じじつが社会しゃかい課題かだい、クラウドソーシング等とうのインターネット事業じぎょう者しゃを経由けいゆした単価たんか下降かこうの傾向けいこう、所得しょとく配分はいぶん比率ひりつの手数料てすうりょうが阻害そがい原因げんいん等とうとして伺うかがわれる結果けっかとなっている。

「日本にっぽんにおける広義こうぎのフリーランス人口じんこうは前年ぜんねんに比くらべ横よこばい、日本にっぽんの労働ろうどう力りょく人口じんこうに対たいして17%を占しめるという割合わりあい^[6]」となっているが、日本にっぽん国内こくないの現在げんざい労働ろうどう力りょく人口じんこうの「5人にんに1人ひとり以上いじょう」という設定せってい値ちには、クラウドソーシングサイトへのアカウント開設かいせつ者しゃを主体しゅたい対象たいしょうとした調査ちょうさ母体ぼたいである背景はいけいが予測よそくされるため、「副業ふくぎょう（本業ほんぎょう・副業ふくぎょうを区別くべつしていない労働ろうどう者しゃを含ふくむ）フリーランスの人口じんこうは744万まん人にん、経済けいざい規模きぼは7兆ちょう8,280億おく円えんと8兆ちょう円えん近ちかい規模きぼになり、報酬ほうしゅうは堅調けんちょうに増加ぞうかし、業務ぎょうむ委託いたくベースのパラレルワーカー数すうが伸長しんちょうしている傾向けいこうにあります。^[6]」という最終さいしゅう記述きじゅつへの、公的こうてきな中立ちゅうりつ体たいによる調査ちょうさによる精緻せいち化かを行おこなうことで、副業ふくぎょう解禁かいきんへの政策せいさく、同どう一いち労働ろうどう同どう一いち賃金ちんぎん制度せいどの改定かいていによる労働ろうどう人口じんこうの流動りゅうどう化かについて、正まさしく実態じったいと社会しゃかい福祉ふくし費用ひようを把握はあくしていく必要ひつようがある。

フリーランス向むけに企業きぎょうとの商談しょうだんや単価たんか交渉こうしょう、契約けいやく手続てつづきなどをサポートするフリーランスエージェントのようなビジネスも存在そんざいする。市場いちばのデータを活いかしITエンジニアの案件あんけん獲得かくとくをサポートするフリーランスエンジニア向むけエージェント^[7]や、フリーランスの作家さっかと出版しゅっぱん社しゃとの間あいだで権利けんり関係かんけいの交渉こうしょうを仲介ちゅうかいする著作ちょさく権けんエージェントなど、様々さまざまな種類しゅるいのエージェントがある。

語源ごげん

英語えいご「freelance」の語源ごげんは、中世ちゅうせいに遡さかのぼる。中世ちゅうせいは王おうや貴族きぞくは主力しゅりょくとなる騎士きしを中心ちゅうしんとした封建ほうけん軍ぐんの補強ほきょうとして、戦争せんそうの度たびに傭兵ようへい団だん（フリーカンパニー）と契約けいやくして戦争せんそうに臨のぞんだ。この中なかには正式せいしきに叙勲じょくんされていない騎士きし（黒くろ騎士きし）や傭兵ようへい団だんを離はなれ戦場せんじょうに臨のぞむ兵士へいしがいた。当時とうじは槍やり騎兵きへい（lancer）が自分じぶんの従卒じゅうそつとして歩兵ほへいや弓ゆみ兵へいを連つれている形態けいたいが多おおかったため、契約けいやくの際さいには槍やりの本数ほんすう＝1戦闘せんとう単位たんいとしてカウントされた。まだ敵てき勢力せいりょくと契約けいやくを交かわしていない（英えい: free）戦闘せんとう単位たんい（英えい: lance）を指さす言葉ことばとして「freelance」が用もちいられるようになった。当時とうじは兵士へいしを指さしていた「free lancer」が、近世きんせい以降いこう組織そしきを離はなれて働はたらく状態じょうたいを指さす言葉ことばに変化へんかした。フリーランスのフリー（英えい: free）は、拘束こうそくされてない（未み契約けいやく）という意味いみで、無償むしょうの労働ろうどう者しゃ（ボランティア）という意味いみではない。英語えいごでこの表現ひょうげんが初はじめて用もちいられたのはスコットの『アイヴァンホー』である^[8]。

日本にっぽんでは略りゃくしてフリーと呼よばれることもある。

税ぜい

日本にっぽんの税制ぜいせい上じょうにおけるフリーランス業ぎょうの収入しゅうにゅうは営業えいぎょう等とう所得しょとくとして、経費けいひを差さし引ひいた分わから決算けっさんして確定かくてい申告しんこく（年間ねんかん48万まん円えん以上いじょう）する必要ひつようがある。また、その収入しゅうにゅうが所得しょとく税法ぜいほう第だい204条じょうに掲かかげる報酬ほうしゅう等とうに該当がいとうする場合ばあいは所定しょていの金額きんがく（原則げんそくとして100万まん円えん以下いかであれば支払しはらい額がくの10%）が源泉げんせん徴収ちょうしゅうされる。

芸能げいのう事務所じむしょに所属しょぞくする芸能人げいのうじんなど、ほぼ全員ぜんいんが自身じしんのマネジメントを所属しょぞく事務所じむしょに委託いたくしている立場たちばにあるため所属しょぞく事務所じむしょから支払しはらわれるギャラは「事業じぎょう所得しょとく」となり、専属せんぞく芸能人げいのうじんであってもフリーランサー同様どうよう自分じぶんで確定かくてい申告しんこくを行おこなう必要ひつようが生しょうじる契約けいやくとなっていることもある。ただし自身じしんを代表だいひょうとする法人ほうじんを設立せつりつし、法人ほうじんと芸能げいのう事務所じむしょの間あいだで契約けいやくする形かたちを取とっている場合ばあい、タレント業ごう収入しゅうにゅうは法人ほうじんのものとなり、自身じしんはその法人ほうじんから役員やくいん報酬ほうしゅうという形かたちの給与きゅうよ所得しょとくを受うけ取とることとなる。

保険ほけん・年金ねんきん

日本にっぽんでは国民こくみん皆みな保険ほけんにより、全すべての人ひとがいずれかの公的こうてき医療いりょう保険ほけんと公的こうてき年金ねんきんに加入かにゅうしなければならない。どの団体だんたいにも属ぞくしていない完全かんぜんなフリーランスであれば、医療いりょう保険ほけんは居住きょじゅう地ちの国民こくみん健康けんこう保険ほけん、年金ねんきんは国民こくみん年金ねんきん第だい1号ごう被ひ保険ほけん者しゃとなる。業種ぎょうしゅによっては国民こくみん健康けんこう保険ほけん組合くみあいのような職業しょくぎょう団体だんたいが結成けっせいした国保こくほに加入かにゅうすることもある。

ただし個人こじん企業きぎょう法人ほうじん（代表だいひょう者しゃのみで従業じゅうぎょう員いんがいない、純粋じゅんすい親族しんぞく企業きぎょう、など）として法人ほうじんを設立せつりつしている、いわゆる「法人ほうじん成なり」をしている自営業じえいぎょう者しゃは、業種ぎょうしゅや従業じゅうぎょう員いんの人数にんずうに関かかわらず社会しゃかい保険ほけん制度せいどに強制きょうせい加入かにゅうとなる（医療いりょう保険ほけんは健康けんこう保険ほけん、年金ねんきんは厚生こうせい年金ねんきん（国民こくみん年金ねんきん第だい2号ごう被ひ保険ほけん者しゃ））。社会しゃかい構造こうぞうとして、法人ほうじんと個人こじん間あいだの異ことなる制度せいどあるいは一方いっぽうの理解りかいにおいてフリーランスの実態じったいを捉とらえる議論ぎろんには注意ちゅういが必要ひつようとされる。

労働ろうどう法制ほうせい

日本にっぽんにおいては、フリーランスは個人こじん事業じぎょう主ぬしもしくは個人こじん企業きぎょう法人ほうじんであることから、労働ろうどう基準きじゅん法ほうでいう「労働ろうどう者しゃ」には該当がいとうせず、同どう法ほうの定さだめる様々さまざまな規制きせい（労働ろうどう時間じかん、年少ねんしょう者しゃや妊産婦にんさんぷの就業しゅうぎょう制限せいげん等ひとし）の適用てきよう対象たいしょうとはされない。労働ろうどう安全あんぜん衛生えいせい法ほうや最低さいてい賃金ちんぎん法ほう等ひとしの法令ほうれいについても同様どうようである。

こうした労働ろうどう条件じょうけんはフリーランスの場合ばあい、相手方あいてがたとの交渉こうしょうで決けっすべきものであるが、労働ろうどう基準きじゅん法ほう等とうの保護ほごが及およばないことを逆手さかてに取とって、実際じっさいにはフリーランスの側がわにとって不利ふりな条件じょうけんを結むすばされる場合ばあいもみられる。こうした契約けいやくは、態様たいようによっては事業じぎょう者しゃ間あいだの適切てきせつな取引とりひきを守まもる独占どくせん禁止きんし法ほうの適用てきよう対象たいしょうとみなされる^[9]。そのため、企業きぎょうによるフリーランスの囲かこい込こみは優越ゆうえつ的てき地位ちいの濫用らんようとして、同どう業者ぎょうしゃ間あいだでの引ひき抜ぬき防止ぼうし協定きょうていはカルテルとして独禁法どっきんほう違反いはんとなる^[10]。

フリーランスが労働ろうどう組合くみあいを結成けっせいして、相手方あいてがたとの交渉こうしょうに組合くみあいとして臨のぞむというケースもみられる（個々ここの事例じれいにもよるが、労働ろうどう組合くみあい法ほうは基本きほん的てきにフリーランスであっても対象たいしょうとなりうる）。

日本にっぽんでは正社員せいしゃいんの解雇かいこには様々さまざまな制約せいやくが伴ともなうが、正社員せいしゃいんに対たいし年収ねんしゅう減少げんしょうを受うけ入いれて正社員せいしゃいんを維持いじするか、業務ぎょうむ委託いたくへ切きり替かえることを強要きょうようし、切きり替かえた者ものを数ヶ月すうかげつで契約けいやく解除かいじょすることで整理せいり解雇かいこする違法いほうな手段しゅだんも横行おうこうしている^[1]。

2023年ねん4月がつ28日にち、「フリーランス新法しんぽう」が成立せいりつした。公布こうふから1年ねん6か月げつ以内いないに公布こうふされる^[11]。

この法律ほうりつは2024年ねん11月1日にちに施行しこうされる。 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/zaitaku/index_00002.html