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領海侵犯 - Wikipedia

領海りょうかい侵犯しんぱん(りょうかいしんぱん、intrusion into territorial waters)とは、マスメディアにおける報道ほうどうなどで使用しようされるメディア用語ようごであり、沿岸えんがんこく領海りょうかいうちにおいて、沿岸えんがんこく政府せいふによる同意どういのないまま、外国がいこくおおやけせん[1]かんせん[2]外国がいこくせき商船しょうせん[3]無害むがい通航つうこうけん範囲はんいえてなんらかの活動かつどうおこなうことをして使用しようされる。

国際こくさいほう規定きていされている「領空りょうくう侵犯しんぱん」とはことなり、法用ほうようではない。防衛ぼうえい大臣だいじんでは無害むがい通航つうこうみとめられないケース、無害むがい通航つうこうけんりたない場合ばあいでも「領海りょうかい侵入しんにゅう」という言葉ことば使つかっている[4]

無害むがい通航つうこうけん

編集へんしゅう

原則げんそくとして、沿岸えんがんこく領海りょうかいうち外国がいこく軍艦ぐんかん哨戒しょうかい艦艇かんていそのおおやけせんかんせんたん通航つうこうしたとしてもただちに国際こくさいほう違反いはんせず、沿岸えんがんこく平和へいわ秩序ちつじょ安全あんぜんがいさないことを条件じょうけんに、沿岸えんがんこく事前じぜん通告つうこくすることなく、外国がいこく船舶せんぱく沿岸えんがんこく領海りょうかいない通航つうこうすることが出来でき権利けんりゆうし、その権利けんり無害むがい通航つうこうけんという[ちゅう 1]

これは、歴史れきしてき海洋かいようかいしてしょ国民こくみん交易こうえき活発かっぱつっていたことから、海洋かいようしょ国民こくみん共有きょうゆう財産ざいさんかんがえる思想しそう背景はいけいにあり、「領海りょうかい」は、許可きょかのない「進入しんにゅう」をもってただちに「侵犯しんぱん」と解釈かいしゃくされる「領土りょうど」や「領空りょうくう」とは、国際こくさいほううえでの定義ていぎおおきくことなるものであり、いかなる場合ばあい無害むがい通航つうこう該当がいとうしないかについては、具体ぐたいてき要件ようけん海洋かいようほうかんする国際こくさい連合れんごう条約じょうやくだい19じょうさだめられている[5]

無害むがい通航つうこうでない活動かつどうたいする国際こくさいほう規定きてい

編集へんしゅう

海洋かいようほうかんする国際こくさい連合れんごう条約じょうやくは、沿岸えんがんこく自国じこく領海りょうかいないでの外国がいこく船舶せんぱくによる無害むがい通航つうこうでない通航つうこう防止ぼうしするために必要ひつよう措置そちをとることができるとし(だい25じょう)、また、外国がいこく軍艦ぐんかん哨戒しょうかい艦艇かんていなどおおやけせんたいしては、沿岸えんがんこく領海りょうかい通航つうこうかか法令ほうれい遵守じゅんしゅ要請ようせいするとともに、その要請ようせい無視むしされた場合ばあい領海りょうかいからただちに退去たいきょすることを要求ようきゅうできるとさだめている(だい30じょう)。

りうる措置そち

編集へんしゅう

なお、海洋かいようほうかんする国際こくさい連合れんごう条約じょうやくは、沿岸えんがんこく自国じこく領海りょうかいでの外国がいこく船舶せんぱくによる無害むがい通航つうこうでない通航つうこう防止ぼうしするためにりうる措置そちや、外国がいこく軍艦ぐんかん哨戒しょうかい艦艇かんていなどおおやけせん領海りょうかいからの退去たいきょ要求ようきゅうしたがわない場合ばあいりうる措置そちなどの内容ないようについては、具体ぐたいてき規定きていしておらず、国際こくさい慣習かんしゅうほうによるものとされ、具体ぐたいてきには、以下いかのように理解りかいされている。

  1. 自国じこく領海りょうかいない無害むがい通航つうこうでない通航つうこうその活動かつどうおこな商船しょうせんたいしては、質問しつもん強制きょうせい停船ていせん臨検りんけん拿捕だほ強制きょうせい退去たいきょなどの措置そちおこなうことが出来できる。
  2. 自国じこく領海りょうかいない無害むがい通航つうこうでない通航つうこうその活動かつどうおこな軍艦ぐんかんたいしては、その活動かつどう中止ちゅうし領海りょうかいがいへの退去たいきょ要求ようきゅうできるが、商船しょうせんたいするような臨検りんけん拿捕だほ警告けいこく射撃しゃげきその強制きょうせいてき手段しゅだん選択せんたくは、困難こんなんほぐされている。
  3. 自国じこく領海りょうかいないにおける外国がいこく軍艦ぐんかんによる無害むがい通航つうこうでない通航つうこうその活動かつどう沿岸えんがんこくたいする武力ぶりょく攻撃こうげきみとめられる場合ばあいには、国際こくさい連合れんごう憲章けんしょうだい7しょうもとづく自衛じえいけん行使こうしその対応たいおう可能かのうだが、平時へいじにおける国連こくれん海洋かいようほう条約じょうやくその国際こくさいほうもとづく対応たいおうとは、明確めいかくことなることに注意ちゅうい必要ひつようである。

領空りょうくう侵犯しんぱんとのちが

編集へんしゅう

領空りょうくう侵犯しんぱん」が国際こくさいほう規定きていされる法用ほうようであるのにたいして「領海りょうかい侵犯しんぱん」は、そのような国際こくさいほう規定きていされる法用ほうようでなく、マスメディアにおける報道ほうどうなどで使用しようされるメディア用語ようごである。

国内こくないほうにおいても、「領空りょうくう侵犯しんぱん」が自衛隊じえいたいほうさだめる自衛隊じえいたい活動かつどうたる「たい領空りょうくう侵犯しんぱん措置そち」(自衛隊じえいたいほうだい84じょう)など法用ほうようとしてももちいられるのにたいして「領海りょうかい侵犯しんぱん」は、海上保安庁かいじょうほあんちょうほう自衛隊じえいたいほうその法用ほうようとしてもちいられておらず、また、後述こうじゅつ能登半島のとはんとうおき不審ふしんせん事件じけんかんきゅう原子力げんしりょく潜水せんすいかん領海りょうかい侵犯しんぱん事件じけんなどにかんする防衛ぼうえい白書はくしょにおいてももちいられていない。

日本にっぽん領海りょうかいにおける事例じれい

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対応たいおう

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日本にっぽん領海りょうかいにおいては、たとえば、外国がいこく漁船ぎょせんなどが違法いほう操業そうぎょうおこなった場合ばあいは「外国がいこくじん漁業ぎょぎょう規制きせいかんする法律ほうりつ違反いはん外国がいこく民間みんかん船舶せんぱく日本にっぽん当局とうきょく指示しじしたがわず正当せいとう理由りゆうなく領海りょうかいない徘徊はいかいつづけた場合ばあいは「領海りょうかいとうにおける外国がいこく船舶せんぱく航行こうこうかんする法律ほうりつ違反いはんとなり、無害むがい通行つうこう成立せいりつせず領海りょうかい侵犯しんぱん解釈かいしゃくされる。また領有りょうゆうけん主張しゅちょうしたり情報じょうほう収集しゅうしゅう活動かつどうをするために外国がいこくおおやけせん領海りょうかいない徘徊はいかいすることも、国連こくれん海洋かいようほう条約じょうやくだい19じょうの「沿岸えんがんこく防衛ぼうえいまた安全あんぜん影響えいきょうあたえることを目的もくてきとする宣伝せんでん行為こうい」「沿岸えんがんこく防衛ぼうえいまた安全あんぜんがいすることとなるような情報じょうほう収集しゅうしゅう目的もくてきとする行為こうい」「調査ちょうさ活動かつどうまた測量そくりょう活動かつどう実施じっし」にあたり、無害むがいでない通行つうこうにあたり主権しゅけん侵害しんがいとなる[5][6]

これらの領海りょうかい侵犯しんぱんさいして、外国がいこくおおやけせん民間みんかん船舶せんぱく場合ばあい海上保安庁かいじょうほあんちょう水産庁すいさんちょう対処たいしょしており、外国がいこく軍艦ぐんかんたいしては海上かいじょう自衛隊じえいたい対応たいおうすることになっている。領海りょうかい警備けいびおも海上保安庁かいじょうほあんちょうおこなっているが、広大こうだい周辺しゅうへん海域かいいき哨戒しょうかい(パトロール)にかんしてはP-3C哨戒しょうかいなどで海上かいじょう自衛隊じえいたいが24あいだ態勢たいせいおこなっており、不審ふしんせんひとし情報じょうほう海上保安庁かいじょうほあんちょう通報つうほうする体制たいせいととのえられている。

海上保安庁かいじょうほあんちょうでは、領海りょうかい侵犯しんぱんおこなっている、しくは領海りょうかい侵犯しんぱんうたがいのある外国がいこく船舶せんぱく発見はっけんした場合ばあいや、海上かいじょう自衛隊じえいたいとうから通報つうほうけて現場げんば急行きゅうこうした場合ばあいは、「漁業ぎょぎょうほう」や「外国がいこくじん漁業ぎょぎょう規制きせいかんする法律ほうりつ」や「出入国しゅつにゅうこく管理かんりおよ難民なんみん認定にんていほう」や「領海りょうかいとうにおける外国がいこく船舶せんぱく航行こうこうかんする法律ほうりつとう根拠こんきょに、国際こくさいてきさだめられた手順てじゅんのっとり、はたりゅう信号しんごう発光はっこう信号しんごう音声おんせい信号しんごう汽笛きてき無線むせん、スピーカーなど)により停船ていせんしくは退去たいきょ命令めいれいす。停船ていせん命令めいれいにより停船ていせんした場合ばあい海上かいじょう保安ほあんかん外国がいこく船舶せんぱくうつって臨検りんけんおこない、船籍せんせき目的もくてき航行こうこう目的もくてき積荷つみに通報つうほう理由りゆうなどを聴取ちょうしゅし、場合ばあいによっては逮捕たいほする。船舶せんぱく停船ていせん命令めいれいしたがわず逃走とうそうする場合ばあいは、警告けいこくだん投擲とうてきおこなうほか、強行きょうこうせっふなばたにより海上かいじょう保安ほあんかん移乗いじょうおこな臨検りんけんし、立入検査たちいりけんさ忌避きひざいとう容疑ようぎ逮捕たいほする。

該当がいとう船舶せんぱく武装ぶそう可能かのうせいがあるなど、強行きょうこうせっふなばた危険きけんがある場合ばあいは、「警察官けいさつかん職務しょくむ執行しっこうほう」を準用じゅんようした「海上保安庁かいじょうほあんちょうほうだい20じょうもとづき、まずは攻撃こうげき意思いしあらわ射撃しゃげき警告けいこくつぎ上空じょうくう海面かいめんけて威嚇いかく射撃しゃげきおこなう。それでも停船ていせんしたがわず逃走とうそうする場合ばあい船体せんたい射撃しゃげきおこない、状況じょうきょう強行きょうこうせっふなばたおこなう。このさい海上保安庁かいじょうほあんちょうほうだい20じょうさだめられた条件じょうけんたさないかぎ相手あいて危害きがいくわえてはならず[7]日本にっぽん政府せいふ周辺しゅうへん諸国しょこくへの配慮はいりょもあるため、実際じっさい領海りょうかい警備けいびにおいて海上保安庁かいじょうほあんちょう船体せんたい射撃しゃげきをすることはきわめてまれである。海上保安庁かいじょうほあんちょう船舶せんぱく威嚇いかく射撃しゃげきにまでいたったのは、1953ねんの「ラズエズノイごう事件じけん」(海保かいほ船体せんたい射撃しゃげき実施じっし)、1999ねんの「能登半島のとはんとうおき不審ふしんせん事件じけん」(海上かいじょう警備けいび行動こうどうによる海上かいじょう自衛隊じえいたい交戦こうせん規定きてい適用てきよう警告けいこくばくげき実施じっし))、2001ねんの「九州きゅうしゅう南西なんせい海域かいいき工作こうさくせん事件じけん」(海保かいほ船体せんたい射撃しゃげき実施じっしこう自爆じばく自沈じちん)の3けんのみである。

強力きょうりょく武器ぶき携行けいこうしている・高速こうそく逃亡とうぼうする・潜水せんすいかんであるなど海上保安庁かいじょうほあんちょう能力のうりょくえていると判断はんだんされたときは、国土こくど交通省こうつうしょうから防衛ぼうえいしょう連絡れんらくがあり防衛ぼうえい大臣だいじんによって海上かいじょう警備けいび行動こうどうめいぜられる。発令はつれいには閣議かくぎによる合意ごういもとづく内閣ないかく総理そうり大臣だいじんによる承認しょうにん必要ひつようである。海上かいじょう警備けいび行動こうどう発令はつれいされたのは、1999ねんの「能登半島のとはんとうおき不審ふしんせん事件じけん」と2004ねんの「かんきゅう原子力げんしりょく潜水せんすいかん領海りょうかい侵犯しんぱん事件じけん」、2009ねんの「ソマリアおき海賊かいぞく対策たいさく部隊ぶたい派遣はけん」(海賊かいぞく対処たいしょほう成立せいりつまえ)の3けんについてのみである。

また、中国ちゅうごく漁船ぎょせん尖閣諸島せんかくしょとう海域かいいき領海りょうかい侵犯しんぱんして違法いほう操業そうぎょうをしている場合ばあいかぎっては、日本にっぽん政府せいふ中国ちゅうごく反発はんぱつおそれて逮捕たいほ停船ていせん命令めいれいさずに退去たいきょ命令めいれいめる方針ほうしんとなっており[よう出典しゅってん]唯一ゆいいつ例外れいがいが、中国ちゅうごく漁船ぎょせんが2巡視じゅんしせん衝突しょうとつしてきたことにより停船ていせん命令めいれいして公務こうむ執行しっこう妨害ぼうがい逮捕たいほした2010ねん尖閣諸島せんかくしょとう中国ちゅうごく漁船ぎょせん衝突しょうとつ事件じけんである。

現行げんこうほうでは、海上かいじょう警備けいび行動こうどう発令はつれいされないかぎ海上かいじょう自衛隊じえいたい領海りょうかい警備けいびおこなうことは法的ほうてき不可能ふかのうであるため、尖閣諸島せんかくしょとう中国ちゅうごく漁船ぎょせん衝突しょうとつ事件じけん契機けいきとして、超党派ちょうとうは国会こっかい議員ぎいんあいだで、あらたに自衛隊じえいたい領海りょうかい警備けいびおこなうことを可能かのうとする「領域りょういき警備けいびほう」の制定せいていもとめるうごきがつよまっている[8][9]

おも事件じけん一覧いちらん

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中国ちゅうごく領海りょうかいにおける事例じれい

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すずつき中国ちゅうごく領海りょうかいあやま侵入しんにゅう事件じけん

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2024ねん7がつ4にち中国ちゅうごくぐん訓練くんれん監視かんし任務にんむたっていた海上かいじょう自衛隊じえいたい護衛ごえいかんすずつきが、海自かいじかんとしては自衛隊じえいたい創設そうせつされた1954ねん以降いこうはじめて事前じぜん通告つうこくなしで中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく領海りょうかい一時いちじ航行こうこうした[11]中国ちゅうごくがわから退去たいきょ勧告かんこく領海りょうかいそとた。中国ちゅうごくがわ日本にっぽんがわに「厳正げんせい抗議こうぎ」をおこない、日本にっぽんがわは「技術ぎじゅつてきなミス」と返答へんとうした[12]

2024ねん9がつ22にち海自かいじ中国ちゅうごく領海りょうかいへの「あやま侵入しんにゅう」をおこなった艦長かんちょう事実じじつじょう更迭こうてつした[11]

脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ 例外れいがいとして、外国がいこく潜水せんすいかん潜航せんこうしたまま沿岸えんがんこく領海りょうかいない通航つうこうすることは、この無害むがい通航つうこう該当がいとうせず、ただちに国際こくさいほう違反いはんする。

出典しゅってん

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  1. ^ おおやけせん』 - コトバンク
  2. ^ かんせん』 - コトバンク
  3. ^ 商船しょうせん』 - コトバンク
  4. ^ 防衛ぼうえい大臣だいじん記者きしゃ会見かいけん”. 防衛ぼうえいしょう (2021ねん7がつ13にち). 2024ねん9がつ23にち閲覧えつらん
  5. ^ a b 海洋かいようほうかんする国際こくさい連合れんごう条約じょうやく”. データベース「世界せかい日本にっぽん. 東京大学とうきょうだいがく東洋とうよう文化ぶんか研究所けんきゅうじょ田中たなか明彦あきひこ研究けんきゅうしつ. 2015ねん3がつ29にち閲覧えつらん
  6. ^ 海洋かいよう安全あんぜん保障ほしょう問題もんだい必要ひつよう措置そちほう整備せいびふくむ)”. 拓殖大学たくしょくだいがく大学院だいがくいん教授きょうじゅ 安保あんぽ公人こうじん. 2016ねん6がつ27にち閲覧えつらん
  7. ^ 海上保安庁かいじょうほあんちょうほう参照さんしょう
  8. ^ 自衛隊じえいたい領域りょういき警備けいびを…野党やとう各党かくとう検討けんとう活発かっぱつ読売新聞よみうりしんぶん 2010ねん10がつ6にち
  9. ^ 安保あんぽ超党派ちょうとうはかい領域りょういき警備けいび検討けんとう方針ほうしん読売新聞よみうりしんぶん 2010ねん10がつ7にち
  10. ^ https://mobile.twitter.com/ModJapan_jp/status/1549968995402797057
  11. ^ a b 中国ちゅうごく領海りょうかいへのあやま侵入しんにゅう艦長かんちょう更迭こうてつ 海自かいじかん位置いち把握はあくせず”. 高知新聞こうちしんぶん (2024ねん9がつ23にち). 2024ねん9がつ23にち閲覧えつらん
  12. ^ 海自かいじ護衛ごえいかん いち 中国ちゅうごく領海りょうかい航行こうこう 防衛ぼうえいしょうがいきさつを調査ちょうさ”. NHK NEWS WEB (2024ねん7がつ11にち). 2024ねん7がつ11にち閲覧えつらん

関連かんれん項目こうもく

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