軍人ぐんじん

軍人ぐんじん（ぐんじん、英えい: Military Personnel、羅ら: miles、ミーレス）は、軍隊ぐんたいの構成こうせい員いん。

大日本帝国だいにっぽんていこく陸軍りくぐんの軍人ぐんじんと軍旗ぐんき。1931年ねん（昭和しょうわ6年ねん）撮影さつえい。

定義ていぎ

当該とうがい国家こっかの正規せいきの軍事ぐんじ組織そしきに所属しょぞくし、正規せいきの軍事ぐんじ訓練くんれんを受うけ、国家こっかにより認みとめられた階級かいきゅうを与あたえられた者ものを指さす。軍人ぐんじんは国際こくさい法ほう上うえ、敵対てきたい勢力せいりょくを破壊はかいする権利けんり（交戦こうせん権けん。但ただし交戦こうせん権けんなる用語ようごは主おもに日本にっぽんでのみ使用しようされる）を持もつ。また、敵対てきたい勢力せいりょくに投降とうこうした場合ばあいには、捕虜ほりょとして基本きほん的てき人権じんけんが保障ほしょうされる。

文民ぶんみん（シビリアン、文官ぶんかんとは異ことなる）や民間みんかん人じんの対義語たいぎごとして用もちいられる。軍属ぐんぞくは原則げんそくとして、文官ぶんかん（雇員こいん・傭人ようにん等ひとしを含ふくむ）であり軍人ぐんじんとは異ことなる。

軍人ぐんじんとしての籍せきを兵籍へいせき、軍籍ぐんせきなどといい、軍人ぐんじんとしての履歴りれきを軍ぐん歴れきという。

また、武官ぶかんは軍人ぐんじんのうち、官吏かんりでもある職業しょくぎょう軍人ぐんじんを指さし、徴兵ちょうへいされた者ものは含ふくまない。なお、自衛隊じえいたいは、「陸海空りくかいくう軍ぐんその他たの戦力せんりょくは、これを保持ほじしない」と定さだめた日本国にっぽんこく憲法けんぽう第だい九きゅう条じょうに従したがい、自衛じえいのための必要ひつよう最低限さいていげんの実力じつりょく組織そしきと定義ていぎされているが、中山なかやま太郎たろう外相がいしょうが国会こっかい答弁とうべんで「自衛隊じえいたいは、憲法けんぽう上じょう必要ひつよう最小さいしょう限度げんどを超こえる実力じつりょくを保持ほじし得えない等ひとしの厳きびしい制約せいやくを課かせられております。通常つうじょうの観念かんねんで考かんがえられます軍隊ぐんたいではありませんが、国際こくさい法ほう上じょうは軍隊ぐんたいとして取とり扱あつかわれておりまして、自衛じえい官かんは軍隊ぐんたいの構成こうせい員いんに該当がいとういたします」と述のべているように、国際こくさい法ほう上じょうは自衛じえい官かんは軍人ぐんじんとして扱あつかわれる。

歴史れきし

西洋せいよう

ナポレオン・ボナパルト。国民こくみん軍ぐん創設そうせつの先駆さきがけ。

西洋せいよう史し上うえ、近代きんだい以前いぜんにおいては（たとえば日本にっぽんでは「軍人ぐんじん」を「いくさびと」と訓くんじるように）ミーレスは戦闘せんとうを行おこなう者ものを幅広はばひろく指さしていた。封建ほうけん制せいの下したでは、兵へいと住民じゅうみんの区別くべつ、また士官しかんと騎士きし・貴族きぞく・官僚かんりょうの区別くべつは基本きほん的てきに存在そんざいしなかった。

絶対ぜったい王政おうせい成立せいりつ以降いこう、国家こっかの権力けんりょくが中央ちゅうおうに集あつめられてゆき、貴族きぞくと土地とち、住民じゅうみんの関係かんけいが分断ぶんだんされることによって、軍事ぐんじのみに関かかわる貴族きぞく（軍事ぐんじ貴族きぞく）等とうが出現しゅつげんし、王おうの軍隊ぐんたいとして編成へんせいされていった。

その後ご、国民こくみん国家こっかの成立せいりつや市民しみん革命かくめいを経へて、軍隊ぐんたいの性質せいしつが国民こくみん軍ぐんに変化へんかし、近代きんだい的てき軍人ぐんじんが成立せいりつした。その代表だいひょう格かくがグランダルメ（大陸たいりく軍ぐん）を率ひきいたナポレオンであり、プロイセン陸軍りくぐんを改革かいかくしたシャルンホルストである。ただし、現在げんざいでも少すくなくとも名目めいもく上じょうは「王おうの軍隊ぐんたい」としての性質せいしつが色濃いろこい近代きんだい軍ぐんも存在そんざいする。例たとえば、英軍えいぐんは「国王こくおう陛下へいか/女王じょおう陛下へいかの軍隊ぐんたい」（英えい: His/Her Majesty's Armed Forces）、「王冠おうかんの軍隊ぐんたい」（英えい: Armed Forces of the Crown）である。

日本にっぽん

日本にっぽんでは明治維新めいじいしん以降いこう、既存きそんの武士ぶし（侍さむらい）とは異ことなる位置いちづけの近代きんだい的てき軍人ぐんじんが成立せいりつし、今日きょうの自衛じえい官かんまで引ひき継つがれている。

ただし、草創そうそう期きの帝国ていこく陸海りくかい軍ぐんの高級こうきゅう軍人ぐんじんの殆ほとんどは旧きゅう武士ぶし層そうの出身しゅっしんであり、例たとえば陸軍りくぐんの山県やまがた有朋ありともは長州ちょうしゅう藩士はんし、海軍かいぐんの東郷とうごう平八郎へいはちろうは薩摩さつま藩士はんしである。

また、幕府ばくふ陸軍りくぐん、幕府ばくふ海軍かいぐんは近代きんだい軍ぐんと見み做される。

分類ぶんるい

軍ぐん種しゅによる分類ぶんるい

陸海空りくかいくう軍ぐんの三軍さんぐん種しゅ（英えい: tri-service）の他ほか、海兵かいへい隊たい（海軍かいぐん陸戦りくせん隊たい）、国家こっか憲兵けんぺい隊たい、沿岸えんがん警備けいび隊たい、宇宙うちゅう軍ぐん等ひとしが存在そんざいする。

• 陸軍りくぐん軍人ぐんじん（英えい: soldier）
• 海軍かいぐん軍人ぐんじん（英えい: sailor/seaman）
• 空軍くうぐん軍人ぐんじん（英えい: airman）
• 海兵かいへい隊員たいいん/海軍かいぐん陸戦りくせん隊員たいいん（英えい: marine）
• 国家こっか憲兵けんぺい隊員たいいん（英えい: gendarmerie）
• 沿岸えんがん警備けいび隊員たいいん（英えい: coast guard）

なお、沿岸えんがん警備けいび隊員たいいんは、米国べいこく等とうでは軍人ぐんじん（武官ぶかん組織そしき）扱あつかいだが、例たとえば日本にっぽんの海上かいじょう保安ほあん官かんは警察官けいさつかん扱あつかいである。また、そもそも十分じゅうぶんな装備そうびを有ゆうする独立どくりつした沿岸えんがん警備けいび隊たいを持もつ国くには日本にっぽん（海上保安庁かいじょうほあんちょう）、韓国かんこく（海洋かいよう警察庁けいさつちょう）、中国ちゅうごく（海うみ警局）、米国べいこくなど少数しょうすうである。英国えいこくのように海軍かいぐんがその業務ぎょうむを担になう国くにやブラジルの様ように沿岸えんがん警備けいび隊たいが海軍かいぐんの一部いちぶ隊たいに過すぎない国くにも多おおい。

役やく種しゅによる分類ぶんるい

詳細しょうさいは「役やく種しゅ」を参照さんしょう

• 現役げんえき（英えい: active duty）
• 予備よび役やく（英えい: reserve）
• 退役たいえき（英えい: veteran）

階級かいきゅうによる分類ぶんるい

軍人ぐんじんはその軍隊ぐんたいにおける階級かいきゅうによって大おおきく以下いかのように大別たいべつされる。

• 士官しかん/将校しょうこう（英えい: (commissioned officer）
  • 将官しょうかん（英えい: general officer, flag officer）
    • 将軍しょうぐん（英えい: general） - 陸軍りくぐん等とうの将官しょうかん、狭義きょうぎには大将たいしょう（英えい: full general）。
    • 提督ていとく（英えい: admiral） - 海軍かいぐん等とうの将官しょうかん、狭義きょうぎには大将たいしょう（英えい: full admiral）。
  • 佐官さかん（英えい: senior officer）
  • 尉官いかん（英えい: junior officer）
• 准じゅん士官しかん（英えい: warrant officer、WO）
• 下士官かしかん（英えい: non-commissioned officer、NCO）
• 兵へい（英えい: enlisted） - 下士官かしかんの下したに位置いちし、比較ひかく的てきに若わかい人材じんざいが2年ねん程度ていどの任期にんき制せいで採用さいようされることが多おおい。軍隊ぐんたいの末端まったんにあたる。

責任せきにん

軍人ぐんじんは戦争せんそうという国家こっかの緊急きんきゅう事態じたいにおいて、場合ばあいによっては負傷ふしょう、死しの危険きけんもある最前線さいぜんせんに出でて職務しょくむを遂行すいこうすることが求もとめられる。その業務ぎょうむの性質せいしつ上じょう、「無む制限せいげんの責任せきにん」を負おうことが求もとめられる。ゆえに軍人ぐんじんは緊急きんきゅう事態じたいにおいて生命せいめいの危機ききを賭としてでも職務しょくむに当あたることが必要ひつようである。交戦こうせんにおいても、その行動こうどうには交戦こうせん規定きていによって制約せいやくされる。また、平時へいじにおいても、緊急きんきゅう事態じたいに速すみやかに対応たいおう出来できるように居住きょじゅう可能かのうな地域ちいきを限定げんていされ、秘密ひみつ保守ほしゅや品位ひんいの維持いじなども、その職業しょくぎょうの性質せいしつ上じょう求もとめられる重要じゅうような責任せきにんである。

制度せいど

軍人ぐんじんの制度せいどとして、国民こくみんにある一定いってい期間きかん軍隊ぐんたいに入はいることを義務ぎむ化かする徴兵ちょうへい制せいと、募集ぼしゅうを行おこない志願しがん者しゃを募つのる志願しがん制せいがある。

国民こくみん国家こっかの成立せいりつ期きや総そう力戦りきせんである世界せかい大戦たいせんの時代じだいにおいては徴兵ちょうへい制せいが広ひろく採用さいようされていた。安全あんぜん保障ほしょう上うえ、また軍事ぐんじ地理ちり的てきに危険きけん度どの高たかい地理ちりに位置いちする国家こっかでは現在げんざいでも徴兵ちょうへい制せいが行おこなわれている場合ばあいが多おおい。ただし、徴兵ちょうへい制せいといえどもその内容ないようは国くにによって千差万別せんさばんべつであり、兵員へいいん削減さくげん中ちゅうで志願しがん者しゃのみで定員ていいんを充足じゅうそくしていたり（中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこくなど）、良心りょうしん的てき兵役へいえき拒否きょひが認みとめられて合法ごうほう的てきな代替だいたい役務えきむ制度せいどが確立かくりつされて、実質じっしつ的てきに志願しがん兵制へいせいと変かわらない国くにが多おおい（北欧ほくおう諸国しょこくなど）。一方いっぽう、国民こくみん皆兵かいへいに近ちかい厳格げんかくな制度せいどを採とる国くには現在げんざいでは北朝鮮きたちょうせん、韓国かんこく、イスラエル、トルコなど少数しょうすうに留とまる。また比較ひかく的てきに安全あんぜんな地理ちり的てき環境かんきょうにあり、また軍事ぐんじ的てきな緊張きんちょうが高たかまっていない国家こっかでは志願しがん制せいが採とられる傾向けいこうが認みとめられる。志願しがん者しゃの多おおくは職業しょくぎょう軍人ぐんじんとも呼よばれ、安定あんていした雇用こようや高給こうきゅう取とりを目指めざす若者わかものにとっては人生じんせいの跳躍ちょうやく台だいとしての希望きぼうも多おおい。

徴兵ちょうへい・志願しがんいずれも、基準きじゅんに満みたない者ものは不ふ採用さいようとなる。義務ぎむである徴兵ちょうへい制せいの場合ばあいは不平ふへい感かんの原因げんいんとなり、しばしば免除めんじょ者しゃへの非難ひなんにつながる。

教育きょういく訓練くんれん

軍人ぐんじんが受うける教育きょういく訓練くんれん（軍事ぐんじ教育きょういく、軍事ぐんじ訓練くんれん）は、個人こじん及および部隊ぶたいの軍事ぐんじ的てきな能力のうりょくを向上こうじょうさせるためのものであり、その内容ないようは階級かいきゅうによって大おおきく異ことなる。現場げんばで行動こうどうする兵卒へいそつや下士官かしかんが学まなぶべき事項じこうとしては基本きほん教練きょうれん、銃器じゅうきの分解ぶんかい結合けつごう、格闘かくとうや射撃しゃげきなどの戦闘せんとう技術ぎじゅつ、通信つうしん技術ぎじゅつや野外やがい衛生えいせいなどが挙あげられる。

また部隊ぶたいを指揮しきする士官しかんの学まなぶべき事項じこうとしては前述ぜんじゅつした基本きほん教練きょうれんなどに加くわえて、戦術せんじゅつ学がくや戦史せんしなどの軍事ぐんじ学がくがある。軍事ぐんじ学がく以外いがいの学科がっかは普通ふつう学がくと呼よばれ、重要じゅうようなものとして物理ぶつり学がくや数学すうがくなど理科りか系けいの自然しぜん科学かがくが挙あげられる。

脚注きゃくちゅう

関連かんれん項目こうもく

• 軍事ぐんじ指揮しき官かんの一覧いちらん
• 世界せかい各国かっこくの国防こくぼう大臣だいじん一覧いちらん
• 軍事ぐんじ的てきリーダーシップ
• 自衛じえい官かん
• 傷痍軍人しょういぐんじん - 退役たいえき軍人ぐんじん
• 職業しょくぎょう軍人ぐんじん
• 軍人ぐんじん皇帝こうてい
• Category:軍人ぐんじん - 個別こべつの人物じんぶつ記事きじ、国くに別べつの軍人ぐんじんなどについては左記さきカテゴリを参照さんしょうのこと。
• 民間みんかん人じん

外部がいぶリンク

• 『軍人ぐんじん』 - コトバンク