痔じ

痔じ
	痔じの過程かていを示しめした解剖かいぼう図ず
概要がいよう
診療しんりょう科か	一般いっぱん外科げか学がく
分類ぶんるいおよび外部がいぶ参照さんしょう情報じょうほう
ICD-10	I84
ICD-9-CM	455
DiseasesDB	10036
MedlinePlus	000292
eMedicine	med/2821 emerg/242
Patient UK	痔じ
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痔じ（じ）は、肛門こうもん周辺しゅうへんに生しょうじた疾患しっかんの総称そうしょう。痔疾じしつ（じしつ）ともいう。

語彙ごい

漢字かんじの「痔じ」は肛門こうもん周囲しゅういに生しょうじた疾患しっかんの総称そうしょうとして用もちいられてきた経緯けいいがあり、医学いがく的まとには正確せいかくには以下いかの通とおりに表記ひょうきされる。また「ぢ」と表現ひょうげんするのは「歴史れきし的てき仮名遣かなづかい」である。

痔核じかく（俗称ぞくしょう：いぼ痔じ）：hemorrhoids・piles
裂きれ肛（俗称ぞくしょう：きれ痔じ）：anal fissure
痔瘻じろう（俗称ぞくしょう：あな痔じ）：anal fistula

分類ぶんるい

上記じょうきのうち、痔核じかく（じかく、英えい: hemorrhoid, piles）とは、過度かどのいきみ、血行けっこう障害しょうがいなどにより生しょうじる肛門こうもん部ぶの腫はれであり、一般いっぱんに「いぼ痔じ」とよばれるものである。肛門こうもんの歯は状じょう線せんの中なかにあるか外そとにあるかによって、内うち痔核じかく、外そと痔核じかくに分わけられる。歯は状じょう線せんより上方かみがたの上うえ直腸ちょくちょう静脈じょうみゃく叢くさむらに発生はっせいしたものを内うち痔核じかく、歯は状じょう線せんより下方かほうの下しも直腸ちょくちょう静脈じょうみゃく叢くさむらに発生はっせいしたものを外そと痔核じかくという。

内うち痔核じかく

内うち痔核じかくは、歯は状じょう線せんよりも内側うちがわにあり、この場所ばしょには知覚ちかく神経しんけいがないため基本きほん的てきに痛いたみはないものの、排便はいべん時じに出血しゅっけつが生しょうじやすい。しかも血液けつえきが垂たれるくらいの量りょうの出血しゅっけつをすることもある。大おおきくなると、肛門こうもん外がいに脱出だっしゅつすることもある。

肛門こうもん外がいに痔核じかくが脱出だっしゅつした場合ばあい、軽度けいどならば、脱出だっしゅつした痔核じかくを肛門こうもん内ないに戻もどすことが可能かのうであり、薬くすりで治療ちりょうできる場合ばあいがある。しかし、戻もどしても排便はいべんに関係かんけいなく脱出だっしゅつが起おこるようになると、少量しょうりょうながら便びん失禁しっきんがおこることもあり、この場合ばあいは手術しゅじゅつが行おこなわれることもある。さらに進行しんこうすると脱肛だっこうした痔核じかくが指ゆびなどで肛門こうもん内ないに戻もどそうとしても戻もどらなくなり、体液たいえきが鬱うつ滞とどこおし激烈げきれつな痛いたみを生しょうじ、排便はいべんに関係かんけいなく出血しゅっけつすることもある。この状態じょうたいを嵌はま頓ひたすら痔核じかく（かんとんじかく）と言いい、緊急きんきゅう処置しょちが必要ひつような病態びょうたいである。

それから全ぜん周しゅう性せいに生しょうじた内うち痔核じかくが、肛門こうもん外がいに脱出だっしゅつした場合ばあいを肛門こうもん脱だっ（こうもんだつ）と呼よぶ。

ちなみに直腸ちょくちょうが全ぜん周しゅう性せいに脱出だっしゅつする直腸ちょくちょう脱だっ（ちょくちょうだつ）も「脱肛だっこう」と呼よばれるが、直腸ちょくちょう脱だっは、直腸ちょくちょう粘膜ねんまくが脱出だっしゅつしたもので、痔核じかくとは違ちがう病態びょうたいである。

外そと痔核じかく

外そと痔核じかくは、内うち痔核じかくと違ちがい問題もんだいになることは少すくない。ただし肛門こうもん外がいに血豆ちまめが出来できた状態じょうたい（これを血栓けっせん性せい外がい痔核じかくと言いう）になると、歯は状じょう線せんより外側そとがわにあるために、しばしば痛いたみ（場合ばあいによっては激痛げきつう）を起おこすことがある。

病態びょうたい

ヒト固有こゆうの病気びょうき: 直立ちょくりつ二に足そく歩行ほこうするヒトの場合ばあい、直腸ちょくちょうや肛門こうもん付近ふきんの血管けっかんは、頭あたまの方向ほうこうに血液けつえきを送おくっているため、普段ふだんから非常ひじょうに大おおきい圧力あつりょくがかかっている。そこに、長時間ちょうじかんの立たて仕事しごとや座すわり仕事しごとなどによる肛門こうもん付近ふきんでの体液たいえきの鬱うつ滞とどこお、便秘べんぴまたは下痢げりを繰くり返かえすことなどで肛門こうもん部ぶに強つよい力ちからが幾度いくどもかかること、などの要因よういんが加くわわって痔じを発症はっしょうする。痔じは、排便はいべんの障害しょうがいとなることがある。
生活せいかつ習慣しゅうかん病びょう: 「寒さむさ」の要因よういんを別べつにすれば、おおむね「生活せいかつ習慣しゅうかん病びょう」であると言いえる。よって、「室温しつおん・衣服いふく・食事しょくじ」などを温あたたかいものにして身体しんたいを暖あたため、適度てきどな「運動うんどう・栄養えいよう・休息きゅうそく」をとり健康けんこう的てきな生活せいかつ習慣しゅうかんになるよう改善かいぜんすることで、ある程度ていどの予防よぼう・治癒ちゆすることが可能かのうである。
排便はいべん時じなどの出血しゅっけつ: なお、排便はいべん時じなどの出血しゅっけつを痔じによるものだと誤解ごかいし、直腸ちょくちょう癌がんなど致死ちし的てきとなる病気びょうきを放置ほうちしている事例じれいがある。; また、一口ひとくちに痔じと言いっても種類しゅるいによって対処たいしょ法ほうが違ちがうので、痔じになってしまった場合ばあいは、どの種たねの痔じなのかも知しる必要ひつようがある。したがって痔じになった場合ばあいには、病院びょういん（肛門こうもん科か）で検査けんさを受うけることが望のぞましい。

注意ちゅうい事項じこう

上記じょうきにある通とおり、痔核じかくは出血しゅっけつを伴ともなうこともあり、しかも出血しゅっけつ量りょうが多おおいこともある。そのため、痔核じかくを患わずらった（もしくは患わずらったが完かん治なおした）後ご、大腸だいちょうなどに異常いじょうが生しょうじて出血しゅっけつした場合ばあいに、全まったく驚おどろかずそれも痔核じかくによるものと思おもい込こみ、大腸だいちょう癌がんなどの病気びょうきに気きづくのが遅おくれる可能かのう性せいも指摘してきされている。

血液けつえきは出血しゅっけつ後ご時間じかんが経過けいかすると、ヘモグロビンの色素しきそ変化へんかが起おきて徐々じょじょに赤あか→紫むらさき→黒くろへと変化へんかするため、黒くろい血ちが出でた場合ばあいは大腸だいちょうの疾病しっぺい、赤あかい血ちが出でた場合ばあいは肛門こうもんから直腸ちょくちょうにかけての疾病しっぺいと断定だんていできる。が、仮かりに赤あかい血ちであったとしても、単たんなるいぼ痔じだった場合ばあいと肛門こうもんのポリープ・癌がんの場合ばあいとでは治療ちりょう法ほうが異ことなる上うえ、前述ぜんじゅつのように同おなじ痔じにもいろいろな段階だんかいがありその段階だんかいに応おうじて治療ちりょう法ほうも異ことなってくるため、血便けつべんを認みとめた場合ばあいは自分じぶんの勝手かってな判断はんだんで動うごかず、直ただちに外科げか、肛門こうもん科か、胃腸いちょう科かの医師いしに診みてもらうべきである。

リスク因子いんしとしては、アルコールや刺激しげき物ぶつの大量たいりょう摂取せっしゅ、下痢げり・便秘べんぴなどの排便はいべん異常いじょう、また長時間ちょうじかんの座ざ位い(静脈じょうみゃく叢くさむらが圧迫あっぱくされ静脈じょうみゃく瘤こぶが生しょうじる)などが挙あげられる。

麻酔ますい

痔核じかくを含ふくめた肛門こうもん周囲しゅういの手術しゅじゅつは脊髄せきずいくも膜まく下か麻酔ますいで行おこなわれるが、その際さいに用もちいられる局所きょくしょ麻酔ますい薬やくブピバカインの用量ようりょうは0.5%等とう比重ひじゅう液えき1-2mLで十分じゅうぶんな鎮痛ちんつうが得えられる^[1]。

予防よぼう方法ほうほう

食事しょくじ
- 食物しょくもつ繊維せんいの多おおい、バランスのとれた食事しょくじを心こころがける。
- 必要ひつよう以上いじょうの食事しょくじ制限せいげんによるダイエットを避さける。
- 水分すいぶんをこまめに補給ほきゅうし、アルコールや刺激しげき物ぶつを控ひかえる^[2]^[3]。
運動うんどう
- 同おなじ姿勢しせいを長時間ちょうじかん続つづけない。（立たちっぱなし、座すわりっぱなしの状態じょうたいを避さける）
- 適度てきどな運動うんどうを心こころがける。（運動うんどう不足ふそくだった場合ばあいには、突然とつぜんに過度かどな運動うんどうを避さける）
トイレ
- トイレでの長居ながい、いきみ過すぎを避さける。
- 排便はいべん後ごに肛門こうもんを清潔せいけつに保たもつ。
入浴にゅうよく
- 毎日まいにち入浴にゅうよくして、長ながめにお風呂ふろに入はいる。（体温たいおんを上あげて、全身ぜんしんの血ち流りゅうを良よくする）
- 身体しんたいを冷ひやさない。（座布団ざぶとん・靴下くつした・カイロなどを利用りようして、腰こしや足あし先さきを暖あたたかくする）
その他た
- ストレスをためないようにする。
- 働はたらきすぎを避さけて、充分じゅうぶんに睡眠すいみん時間じかんを取とり、心身しんしん共どもに休息きゅうそくを取とるようにする。

治療ちりょう薬やくの種類しゅるい

酸化さんか亜鉛あえん (Zinc oxide) - 粘膜ねんまくの保護ほご作用さよう、炎症えんしょう抑制よくせい作用さよう - 止血しけつ、収斂しゅうれん、皮膚ひふ保護ほご成分せいぶん
酸化さんかビスマス (Bismuth Oxide) - 粘膜ねんまくの保護ほご作用さよう、炎症えんしょう抑制よくせい作用さよう - 止血しけつ、収斂しゅうれん、皮膚ひふ保護ほご成分せいぶん
次じ没食子もっしょくし酸さんビスマス (Bismuth subgallate) - 粘膜ねんまくの保護ほご作用さよう、炎症えんしょう抑制よくせい作用さよう - 止血しけつ、収斂しゅうれん、皮膚ひふ保護ほご成分せいぶん
バルサムペルー (Balsam Peru) - 傷きずの治療ちりょうを促進そくしん - 鎮痒（かゆみ止とめ）、抗こう炎症えんしょう、殺菌さっきん消毒しょうどく成分せいぶん
アラントイン (Allantoin) - 傷きずの回復かいふくを促進そくしん - 組織そしき修復しゅうふく成分せいぶん
塩酸えんさんリドカイン (Lidocaine hydrochloride) - 局所きょくしょ麻酔ますい剤ざい - 局所きょくしょ麻酔ますい成分せいぶん
ベンゾカイン (Benzocaine) - 局所きょくしょ麻酔ますい薬やく - 局所きょくしょ麻酔ますい成分せいぶん
シンコカイン (Cinchocaine) - 局所きょくしょ麻酔ますい剤ざい - 局所きょくしょ麻酔ますい成分せいぶん
ヒドロコルチゾン酢酸さくさんエステル (Hydrocortisone acetate) - ステロイド系けい抗こう炎症えんしょう薬やく - 抗こう炎症えんしょう成分せいぶん
酢酸さくさんトコフェロール (Tocopheryl acetate) - 血行けっこう促進そくしん成分せいぶん
グリチルレチン酸さん (Glycyrrhetinic acid) - 抗こう炎症えんしょう成分せいぶん
アルミニウムクロルヒドロキシアラントイネート (Aluminum chlorohydroxy allantoinate) - 組織そしき修復しゅうふく成分せいぶん
塩酸えんさんクロルヘキシジン (Chlorhexidine hydrochloride) - 殺菌さっきん消毒しょうどく成分せいぶん
当とう帰き建けん中ちゅう湯ゆ - 内服ないふくの漢方薬かんぽうやく
乙字おつじ湯ゆ - 内服ないふくの漢方薬かんぽうやく
紫雲しうん膏あぶら - 外用がいようの漢方薬かんぽうやく

脚注きゃくちゅう

[脚注きゃくちゅうの使つかい方かた]

注釈ちゅうしゃく

出典しゅってん

^ Department of Anaesthesia and Intensive Care Unit, Baquba Teaching Hospital, Diyala Health Directorate, Iraq.; Abdulwadood Yousif Ghafoori, Dr; Fwaz Hazim Ahmed, Dr; Department of Anaesthesia and Intensive Care Unit, Baquba Teaching Hospital, Diyala Health Directorate, Iraq. (2017-12-30). “The lower effective dose of isobaric bupivacaine spinal anesthesia with least level motor block for perianal surgery”. International Journal of Advanced Research in Biological Sciences (IJARBS) 4 (12): 68–74. doi:10.22192/ijarbs.2017.04.12.007.
^ 痔じの予防よぼう法ほう症状しょうじょう別べつ対策たいさくBOOK - タケダ健康けんこうサイト
^ 日常にちじょうでできる痔じの予防よぼう

外部がいぶリンク

痔核じかく - MSDマニュアル家庭かてい版ばん
痔核じかく - MSDマニュアルプロフェッショナル版ばん

[1] Department of Anaesthesia and Intensive Care Unit, Baquba Teaching Hospital, Diyala Health Directorate, Iraq.; Abdulwadood Yousif Ghafoori, Dr; Fwaz Hazim Ahmed, Dr; Department of Anaesthesia and Intensive Care Unit, Baquba Teaching Hospital, Diyala Health Directorate, Iraq. (2017-12-30). “The lower effective dose of isobaric bupivacaine spinal anesthesia with least level motor block for perianal surgery”. International Journal of Advanced Research in Biological Sciences (IJARBS) 4 (12): 68–74. doi:10.22192/ijarbs.2017.04.12.007.

[2] 痔じの予防よぼう法ほう症状しょうじょう別べつ対策たいさくBOOK - タケダ健康けんこうサイト

[3] 日常にちじょうでできる痔じの予防よぼう

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