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発送電分離 - Wikipedia

発送はっそうでん分離ぶんり

電力でんりょく会社かいしゃ発電はつでん事業じぎょう送電そうでん事業じぎょう分離ぶんりすること

発送はっそうでん分離ぶんり(はっそうでんぶんり)とは、電力でんりょく会社かいしゃ発電はつでん事業じぎょう送電そうでん配電はいでんふく広義こうぎ送電そうでん事業じぎょう分離ぶんりすることである。

解説かいせつ

編集へんしゅう

発送はっそうでん分離ぶんりのメリットとしては新規しんき事業じぎょうしゃ参入さんにゅう市場いちば競争きょうそうまれ、電気でんき料金りょうきん値下ねさげにつながることとされているが、発送はっそうでん分離ぶんりがなされたくに地域ちいき電気でんき料金りょうきんがった事例じれい存在そんざいせず、現実げんじつには電気でんき料金りょうきん値上ねあがりしている[1][2][3]

デメリットとしては、電力でんりょく会社かいしゃ効率こうりつ重視じゅうししすぎるため投資とうしおさえ、結果けっかてきくに全体ぜんたい発電はつでん能力のうりょく低下ていか設備せつび老朽ろうきゅうまねき、電力でんりょく供給きょうきゅう不安定ふあんていすることである[4]。また、海外かいがい企業きぎょう参入さんにゅうすることで、有事ゆうじさいには自国じこくない送電そうでんシステムに対立たいりつこく介入かいにゅうする危険きけんせいがある[5]

このため、日本にっぽん電力でんりょく会社かいしゃ専門せんもんは「電力でんりょく安定あんてい供給きょうきゅうおびやかされる」として発送はっそうでん分離ぶんり反対はんたいしていた[6]

欧米おうべいでは1990年代ねんだいなかばに、発送はっそうでん分離ぶんりもとづき電力でんりょく自由じゆう法律ほうりつができ、送電そうでんせん開放かいほうされたが、日本にっぽんでは発送はっそうでん分離ぶんりおこなわずに電力でんりょく自由じゆうがなされた。

2013ねん平成へいせい25ねん)2がつ2にち経済けいざい産業さんぎょうしょうは2017ねんから2019年度ねんど実施じっしする方向ほうこう調整ちょうせいはいった[7]。また、与党よとう自由民主党じゆうみんしゅとうは2013ねん平成へいせい25ねん)3がつ29にち総務そうむかいで、2020ねん4がつ1にちに、電力でんりょく会社かいしゃから送配そうはいでん部門ぶもんはなす「発送はっそうでん分離ぶんり」と電気でんき料金りょうきん全面ぜんめん自由じゆう実施じっしする、電力でんりょく改革かいかく日本にっぽん政府せいふ方針ほうしんあん了承りょうしょうした[8]

なお屋久島やくしまにおいては、先行せんこうして発送はっそうでん分離ぶんりが1960ねん昭和しょうわ35ねん)よりおこなわれている(「屋久島やくしま電工でんこう#水力すいりょく発電はつでん参照さんしょう)。

2016ねん平成へいせい28ねん)4がつ1にち東京電力とうきょうでんりょく発送はっそうでん分離ぶんり送配そうはいでん一般いっぱん送配そうはいでん事業じぎょうしゃ東京電力とうきょうでんりょくパワーグリッド移管いかんされ、わせて東京電力とうきょうでんりょく東京電力とうきょうでんりょくホールディングス社名しゃめい変更へんこうした。それ以外いがい発送はっそうでん企業きぎょう沖縄電力おきなわでんりょくのぞき2020ねんれい2ねん)4がつ1にち一般いっぱん送配そうはいでん事業じぎょうしゃ北海道電力ほっかいどうでんりょくネットワーク東北電力とうほくでんりょくネットワーク中部電力ちゅうぶでんりょくパワーグリッド北陸電力ほくりくでんりょく送配そうはいでん関西電力かんさいでんりょく送配そうはいでん中国電力ちゅうごくでんりょくネットワーク四国電力しこくでんりょく送配そうはいでん九州電力きゅうしゅうでんりょく送配そうはいでん電源でんげん開発かいはつおく変電へんでんネットワーク(J-POWERおく変電へんでん)にそれぞれ移管いかんした。

経済けいざい学者がくしゃ円居まどい総一そういちは「発送はっそうでん分離ぶんり自由じゆうすすめば、発電はつでん体系たいけい送配そうはいでん体系たいけいわり、電力でんりょく効率こうりつせい供給きょうきゅう基盤きばん強化きょうか促進そくしんされる」と指摘してきしている[9]円居まどいは「発電はつでん送配そうはいでん分離ぶんり中心ちゅうしん電力でんりょく自由じゆうすすめれば、価格かかく機能きのうはたらくようになり、市場いちばメカニズムをつうじて原子力げんしりょく発電はつでんへの依存いぞん加速かそくてき低下ていかしていく」と指摘してきしている[10]

経済けいざい学者がくしゃ八田はった達夫たつおは「発電はつでん事業じぎょうしゃあいだ競争きょうそううながすためには、給電きゅうでん指令しれいしょ公平こうへいにすべての発電はつでん事業じぎょうしゃあつか必要ひつようがある。それによって実力じつりょくのある新規しんき参入さんにゅうしゃ公平こうへい参入さんにゅうできるようになる。発電はつでん送電そうでんとをおな会社かいしゃっていると、公平こうへいあつかうことはむずかしくなる。したがって、発送はっそうでん分離ぶんり必要ひつようとなる」と指摘してきしている[11]

中野なかの剛志たけし発送はっそうでん分離ぶんりしても技術ぎじゅつてき経済けいざいてき問題もんだいがあることから再生さいせい可能かのうエネルギーひとししんエネルギー普及ふきゅうすすまないとしている[12]

経済けいざい学者がくしゃ高橋たかはし洋一よういちは「電力でんりょく自由じゆうをやれば、エネルギーの最適さいてきわせは達成たっせいできる」[13]発送はっそうでん分離ぶんりなどを実行じっこうすれば、長期ちょうきてきにコストがたか原発げんぱつを、電力でんりょく業者ぎょうしゃ漸次ぜんじフェードアウトしていくことが可能かのうである」[14]指摘してきしている。

電力でんりょく改革かいかく研究けんきゅうかいは、発送はっそうでん分離ぶんりがなされたドイツでは、政府せいふによる補助ほじょきん規制きせい無理むりやり電力でんりょくシステムを維持いじしているのが実態じったいであるとしている[15]

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ 米国べいこくにおける発送はっそうでん分離ぶんり電気でんき事業じぎょうあたえた影響えいきょう (PDF) (Report). 電力でんりょく中央ちゅうおう研究所けんきゅうじょ.
  2. ^ 筒井つつい美樹みき澤部さわべまどか (28 April 2014). 電気でんき料金りょうきん国際こくさい比較ひかく -2013ねんまでのアップデート- (PDF) (Report). 電力でんりょく中央ちゅうおう研究所けんきゅうじょ.
  3. ^ 平成へいせい24年度ねんど電源でんげん立地りっち推進すいしん調整ちょうせいとう事業じぎょうしょ外国がいこくにおける電力でんりょく自由じゆうとうによる電気でんき料金りょうきんへの影響えいきょう調査ちょうさ (PDF) (Report). 日本にっぽんエネルギー経済けいざい研究所けんきゅうじょ. March 2013.
  4. ^ 発送はっそうでん分離ぶんり 利点りてん欠点けってんふか議論ぎろんを”. 佐賀さが新聞しんぶん論説ろんせつ. (2011ねん6がつ17にち). http://www.saga-s.co.jp/news/ronsetu.0.1949574.article.html 2013ねん1がつ16にち閲覧えつらん 
  5. ^ フィリピンの電力でんりょくもう中国ちゅうごくが「いつでも遮断しゃだん可能かのう」 内部ないぶ報告ほうこくしょ警告けいこく”. CNN (2019ねん11月26にち). 2019ねん11月27にち閲覧えつらん
  6. ^ 高橋たかはしひろし (2012ねん3がつ13にち). “3.11電力でんりょく自由じゆう -- いまなぜ発送はっそうでん分離ぶんり必要ひつようなのか”. 朝日新聞社あさひしんぶんしゃ. 2012ねん7がつ12にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2013ねん1がつ16にち閲覧えつらん
  7. ^ 電力でんりょく会社かいしゃ発送はっそうでん分離ぶんり最短さいたんで4ねん けいさんしょう方針ほうしん. 毎日新聞社まいにちしんぶんしゃ. (2013ねん2がつ2にち). オリジナルの2013ねん2がつ12にち時点じてんにおけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20130212070241/http://mainichi.jp/select/news/20130203k0000m020071000c.html 2013ねん2がつ5にち閲覧えつらん 
  8. ^ 政府せいふ電力でんりょく改革かいかくあん了承りょうしょう=18〜20ねん発送はっそうでん分離ぶんり-自民じみん. ウォール・ストリート・ジャーナル. (2013ねん3がつ29にち). http://jp.wsj.com/article/JJ12690515065441453279518470494552382392429.html 2013ねん3がつ29にち閲覧えつらん 
  9. ^ 円居まどい総一そういち原発げんぱつたよらなくても日本にっぽん成長せいちょうできる』 ダイヤモンド社だいやもんどしゃ、2011ねん、100ぺーじ
  10. ^ 円居まどい総一そういち原発げんぱつたよらなくても日本にっぽん成長せいちょうできる』 ダイヤモンド社だいやもんどしゃ、2011ねん、104ぺーじ
  11. ^ 「リアルタイム精算せいさん」が電力でんりょく市場いちば開放かいほうみちび原発げんぱつ緊急きんきゅう電源でんげんとして位置いちづけるべき--八田はった達夫たつお大阪大学おおさかだいがく招聘しょうへい教授きょうじゅ/学習院大学がくしゅういんだいがく客員きゃくいん研究けんきゅういん ダイヤモンド・オンライン 2012ねん3がつ16にち
  12. ^ 『TPP亡国ぼうこくろん著者ちょしゃ中野なかの剛志たけし緊急きんきゅう提言ていげん!【後編こうへん発送はっそうでん分離ぶんりはありえない”. ダイヤモンド・オンライン (2011ねん5がつ31にち). 2011ねん12月16にち閲覧えつらん
  13. ^ 日本にっぽんかた小泉こいずみ原発げんぱつゼロ」発言はつげん安倍あべ政権せいけんはどう対応たいおうするか こたえは電力でんりょく自由じゆう(1/2ページ) ZAKZAK 2013ねん11月17にち
  14. ^ 高橋たかはし洋一よういち「ニュースの深層しんそう東京とうきょうだけで「だつ原発げんぱつ」は実現じつげんできない!電力でんりょく自由じゆう原発げんぱつ国有こくゆう道筋みちすじをつけるべきだ 現代げんだいビジネス 2014ねん1がつ20日はつか
  15. ^ 二兎にとった悲劇ひげき - ドイツの電力でんりょく自由じゆう再生さいせい可能かのうエネ促進そくしん Global Energy Policy Research 2013ねん3がつ4にち

関連かんれん項目こうもく

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