有事ゆうじ

有事ゆうじ（ゆうじ）とは、国家こっかや企業きぎょうの危機きき管理かんりにおいて戦争せんそうや事変じへん、武力ぶりょく衝突しょうとつ、大だい規模きぼな自然しぜん災害さいがいなどの非常ひじょう事態じたいを指さす概念がいねん。対義語たいぎごは平時へいじあるいは日常にちじょう時ときである。

危機きき管理かんりにおける有事ゆうじ対応たいおう

「有事ゆうじ」は軍事ぐんじ的てき危機ききだけでなく経済けいざい危機きき、人為じんい的てき大だい事故じこ、自然しぜん災害さいがい、社会しゃかい的てき大だい事件じけんなどの緊急きんきゅう事態じたいを総そうじて「有事ゆうじ」と呼よぶ。国家こっかの安全あんぜん保障ほしょうだけでなく企業きぎょうのリスクマネジメントなどでも「有事ゆうじ対応たいおう」や「有事ゆうじ業務ぎょうむ」などの概念がいねんが用もちいられる。

リスクマネジメントは日常にちじょうの予防よぼう業務ぎょうむ、事件じけん事故じこ発生はっせい時じの緊急きんきゅう時じの業務ぎょうむ、通常つうじょうの状態じょうたいへ復帰ふっきするための復帰ふっき時じの業務ぎょうむに分わけられるが、有事ゆうじ対応たいおうは緊急きんきゅう時じの対応たいおうにあたる。

緊急きんきゅう時じのリスクマネジメントで特とくに重要じゅうようなのが責任せきにんの明確めいかく化かと意思いし系統けいとう・命令めいれい系統けいとうの明確めいかく化かである。方針ほうしんの決定けっていをトップダウンで行おこないつつ現場げんばへの権限けんげん移譲いじょうなど迅速じんそくな対応たいおうを図はかる必要ひつようがある。

日米にちべい安全あんぜん保障ほしょう体制たいせい等とうにおける有事ゆうじ概念がいねん

詳細しょうさいは「有事ゆうじ法制ほうせい」を参照さんしょう

「有事ゆうじ」は法律ほうりつ用語ようごではなく軍事ぐんじ用語ようごであり、防衛ぼうえい省しょうでは便宜べんぎ的てきに有事ゆうじに関かんする法制ほうせいを有事ゆうじ法制ほうせいといっている。防衛ぼうえい省しょうが用もちいる有事ゆうじの概念がいねんは、必かならずしも画一かくいつ的てきな概念がいねんとして捉とらえられているものではないが、一般いっぱん的てきに「自衛隊じえいたいが防衛ぼうえい出動しゅつどうする事態じたい」を指さしていると言いわれている。 有事ゆうじ法制ほうせいをめぐる有事ゆうじの定義ていぎについては、1999年ねん11月18日にちの第だい146回かい国会こっかい安全あんぜん保障ほしょう委員いいん会かいにおいて、時ときの防衛庁ぼうえいちょう長官ちょうかん・瓦かわら力りょくが「有事ゆうじという言葉ことばは法令ほうれい上じょうの用語ようごではございませんで、その意味いみは必かならずしも一義的いちぎてきであるわけではございませんが、有事ゆうじ法制ほうせい研究けんきゅうという有事ゆうじにつきましては、同どう研究けんきゅうは、自衛隊じえいたい法ほう第だい76条じょうによりまして防衛ぼうえい出動しゅつどう命令めいれいが下した令れいされました時点じてん以降いこうにおける自衛隊じえいたいの円滑えんかつな任務にんむ遂行すいこうに係かかる法制ほうせい上じょうの問題もんだい点てんの整理せいりを目的もくてきとしておりまして、その意味いみで、ここで言いう有事ゆうじといいますのは、防衛ぼうえい出動しゅつどう命令めいれい下か令れい事態じたいということになるわけでございます。」と答弁とうべんしている。

但ただし、近年きんねんでは軍事ぐんじ的てき脅威きょういよりもテロリズムの危機ききの方ほうが懸念けねんされ、有事ゆうじ法制ほうせいにおいても土台どだい人じんに手引てびきされた工作こうさく員いんによるテロ攻撃こうげきへの対応たいおうを重視じゅうししていることから、防衛庁ぼうえいちょうが用もちいる有事ゆうじの概念がいねんも、防衛ぼうえい上じょうの概念がいねんに留とまるものではなくなってきたといえる。

日本にっぽんは第だい二に次じ世界せかい大戦たいせんの敗戦はいせん後ご、戦争せんそう放棄ほうきと平和へいわ主義しゅぎを謳うたった日本国にっぽんこく憲法けんぽう第だい9条じょうとの関係かんけいなどから、戦争せんそうに関連かんれんする日本にっぽん有事ゆうじについて議論ぎろんすること自体じたいがこれまでタブー視しされてきた。

自衛隊じえいたいの内部ないぶで1963年ねんに有名ゆうめいな三矢みつや研究けんきゅうが国民こくみんの知しれるところとなり世間せけんを騒さわがせたが、昨今さっこんの日本にっぽんを取とり巻まく中国ちゅうごくとのパワーバランスの関連かんれんや（55年ねん体制たいせい以降いこう1990年代ねんだいまで脅威きょうい論ろんの対象たいしょうはソビエト連邦れんぽうだった）、朝鮮民主主義人民共和国ちょうせんみんしゅしゅぎじんみんきょうわこく（北朝鮮きたちょうせん）の核かく問題もんだい等ひとしから近年きんねん真剣しんけんに最悪さいあくの場合ばあいを想定そうていした議論ぎろんがなされはじめている。すでに、国民こくみん保護ほご法ほうに基もとづき、全国ぜんこく瞬時しゅんじ警報けいほうシステムを通つうじて国民こくみんを屋内おくない退避たいひさせる計画けいかく等とうや、有事ゆうじの際さいに被災ひさい者しゃを救援きゅうえんするための生活せいかつ関連かんれん物資ぶっしを、企業きぎょう等ひとしから強制きょうせい収用しゅうようする権限けんげんを都道府県とどうふけん知事ちじに付与ふよすることが決きまっている。また、農林水産省のうりんすいさんしょうでは、食糧しょくりょう法ほう、国民こくみん生活せいかつ安定あんてい緊急きんきゅう措置そち法ほう、物価ぶっか統制とうせい令れいを法的ほうてき根拠こんきょとするマニュアルを整備せいびして国民こくみん保護ほごに努つとめている。

日本にっぽんの主おもな国内こくない法ほう

• 災害さいがい対策たいさく基本きほん法ほう
• 災害さいがい救助きゅうじょ法ほうと災害さいがい救助きゅうじょ法ほう施行しこう令れい
• 大だい規模きぼ地震じしん対策たいさく特別とくべつ措置そち法ほう
• 原子力げんしりょく災害さいがい対策たいさく特別とくべつ措置そち法ほう
• 国民こくみん生活せいかつ安定あんてい緊急きんきゅう措置そち法ほう
• 駐留ちゅうりゅう軍ぐん用地ようち特措法とくそほう
• 破壊はかい活動かつどう防止ぼうし法ほう
• 組織そしき的てきな犯罪はんざいの処罰しょばつ及および犯罪はんざい収益しゅうえきの規制きせい等とうに関かんする法律ほうりつ（組織そしき的てき犯罪はんざい処罰しょばつ法ほう）の第だい六ろく条じょうの二に（テロ等とう準備じゅんび罪ざい）
• 爆発ばくはつ物ぶつ取締とりしまり罰則ばっそく
• 放射線ほうしゃせんを発散はっさんさせて人ひとの生命せいめい等とうに危険きけんを生しょうじさせる行為こうい等とうの処罰しょばつに関かんする法律ほうりつ（放射線ほうしゃせん発散はっさん処罰しょばつ法ほう）
• 刑事けいじ特別とくべつ法ほう
• 警察けいさつ法ほう
• 自衛隊じえいたい法ほう（特とくに自衛隊じえいたい法ほう第だい103条じょう）
• 国家こっか安全あんぜん保障ほしょう会議かいぎ設置せっち法ほう
• 重要じゅうよう影響えいきょう事態じたいに際さいして我わが国くにの平和へいわ及および安全あんぜんを確保かくほするための措置そちに関かんする法律ほうりつ（重要じゅうよう影響えいきょう事態じたい法ほう）
• 武力ぶりょく攻撃こうげき事態じたい等ひとし及および存立そんりつ危機きき事態じたいにおける我わが国くにの平和へいわと独立どくりつ並ならびに国くに及および国民こくみんの安全あんぜんの確保かくほに関かんする法律ほうりつ（事態じたい対処たいしょ法ほう）
• 武力ぶりょく攻撃こうげき事態じたい等とうにおける国民こくみんの保護ほごのための措置そちに関かんする法律ほうりつ（国民こくみん保護ほご法ほう）
• 重要じゅうよう影響えいきょう事態じたいに際さいして実施じっしする船舶せんぱく検査けんさ活動かつどうに関かんする法律ほうりつ（船舶せんぱく検査けんさ活動かつどう法ほう）
• 武力ぶりょく攻撃こうげき事態じたい及および存立そんりつ危機きき事態じたいにおける捕虜ほりょ等とうの取扱とりあつかいに関かんする法律ほうりつ（捕虜ほりょ取扱とりあつかい法ほう）
• 特定とくてい船舶せんぱくの入港にゅうこうの禁止きんしに関かんする特別とくべつ措置そち法ほう（特定とくてい船舶せんぱく入港にゅうこう禁止きんし法ほう）
• 海上かいじょう輸送ゆそう規正きせい法ほう
• 特定とくてい公共こうきょう施設しせつ利用りよう法ほう
• 国際こくさい人道じんどう法ほう違反いはん処罰しょばつ法ほう
• 米べい軍ぐん等とう行動こうどう関連かんれん措置そち法ほう

日米にちべい間あいだの条約じょうやく

• 日米にちべい相互そうご防衛ぼうえい援助えんじょ協定きょうてい
  • 日米にちべい相互そうご防衛ぼうえい援助えんじょ協定きょうてい等とうに伴ともなう秘密ひみつ保護ほご法ほう
• 日米にちべい安全あんぜん保障ほしょう条約じょうやく（新しん安保あんぽ）
• ACSA物品ぶっぴん役務えきむ相互そうご提供ていきょう協定きょうてい

想定そうていされている有事ゆうじ

• 朝鮮半島ちょうせんはんとう有事ゆうじ
• 台湾たいわん有事ゆうじ

関連かんれん項目こうもく

• 緊急きんきゅう事態じたい
• 非常ひじょう事態じたい宣言せんげん