百 器 徒然 袋 ――風
『
出版 経緯
概要
「
2006
主 な登場 人物
榎 木津 礼 二郎 (えのきづ れいじろう)薔薇 十 字 探偵 社 の天衣無縫 で破天荒 な、美貌 の探偵 。人 の記憶 が見 えるという能力 を持 つ。本島 俊夫 (もとしま としお)本 作 の一連 の物語 の語 り部 。電気 会社 に勤務 する電気 工事 の図面 引 き。前作 の「鳴 釜 」で薔薇 十 字 探偵 社 に依頼 してから、事件 に巻 き込 まれては、榎木 津 に下僕 扱 いされている。常 にその場 しのぎの名 で呼 ばれており、本 作 の最後 で、ようやく姓名 が出揃 った。安和 寅吉 (やすかず とらきち)薔薇 十 字 探偵 社 の秘書 兼 榎木 津 の身 の回 りの世話 係 。呼 び名 は「和 寅 」(かずとら)。益田 龍一 (ますだ りゅういち)薔薇 十 字 探偵 社 の探偵 助手 。瑣末 で地味 な依頼 を担当 している。元 警官 。中 禅 寺 秋彦 (ちゅうぜんじ あきひこ)中野 の古本屋 「京極 堂 」店主 。神主 でもあり、また憑物 落 としも行 う。榎 木津 の友人 。近藤 有 嶽 (こんどう ゆうがく)本島 の友人 。売 れない紙芝居 画家 。本島 とは同 じアパートの別 の部屋 に住 んでいる。剛 い髭 に肥 え気味 の石川 五右衛門 か日本 駄 右 衛門 のような盗賊 、或 いは狸 か熊 か達磨 のような豪快 な姿 だが、その割 に嫌味 で絵 に描 いたような俗物 で、不精 な割 に妙 に神経質 。他人 の年齢 を値踏 みするのが得意 。凝 り性 で、作家 性 や独自 性 に拘泥 する質 。単 に痛快 な勧善懲悪 モノでは気 が済 まず、何事 もリアリズムが必要 だと構図 や設定 、筋立 てなどを異常 に複雑 にしてしまい、しばしば子供 が泣 くいて魘 される程 残虐 で悲惨 な作品 を描 きあげては打 ち切 りになる。変 梃 な資料 ばかりを無駄 に集 めて溜 め込 むので、押入 れの中 は異郷 と化 している。絵 元 から探偵 モノの活劇 を依頼 され、本島 を通 じて紙芝居 のネタとして榎 木津 の事件 に興味 を持 つ。本島 を振 り回 すことが多 く、それが結果 的 に本島 を薔薇 十 字 社 に関 わらせる事態 になっている。羽田 隆三 (はた りゅうぞう)羽田 製鐵 の会長 兼 取締役 顧問 。年齢 には似 付 かわしくない生臭 い趣味 嗜好 を持 つ俗物 であり、極悪 人 ではないが一筋縄 では行 かない好色 で脂 ぎった喰 えない老人 。『絡 新婦 の理 』で名前 が出 た織作 伊兵衛 の弟 。シリーズ本編 では『塗 仏 の宴 』に登場 している。自分 と繋 がりのあった銀 信 閣 や加々美 興業 、鳳凰 組 が榎 木津 によって潰 されたことに苛立 ち、八 つ当 たりで困 らせようと益田 と本島 を犯罪 者 に仕立 て上 げるべく策 を巡 らせる。
※
五徳 猫 薔薇 十 字 探偵 の慨然
登場 人物
梶野 美津子 (かじの みつこ)小池 宗 五郎 の家 の住 み込 みの下女 。下 代田 にある小池 家 の屋敷 で住 み込 みで奉公 している。29歳 だが十 人 並 みの地味 な面相 の所為 かもっと年上 に見 える。- 4
人 兄弟 の末 っ子 だが、大正 の震災 で長兄 を亡 くして、父 も大 火傷 を負 い昭和 4年 、5歳 の時 に死亡 、次兄 は7歳 の時 に勤 めていた工場 の事故 で大 怪我 を負 い、法外 な損害 賠償 の支払 いを要求 されて過労 死 、祖母 も亡 くなり土地 財産 の殆 どを処分 して、昭和 17年 には近隣 の養蚕 農家 へ嫁 いだ姉 が戦時 体制 への突入 の煽 りを受 けて一家 心中 している。 - 9
歳 で女衒 に買 われ、芸妓 としても娼婦 としても物 にならなかったので小池 家 の奉公人 になり、昭和 18年 に倒 れて危篤 になった母 の治療 費 を送金 して医者 を世話 して貰 う代 わりに一生 奉公 する契約 を結 ぶ。売 られる前 に交 わした約束 通 り20年 ぶりに会 いに行 った母 に追 い返 され、その直前 に不審 な猫 を見 かけたことから、母 に疑念 を抱 く。悩 んだ末 、セツの仲介 で薔薇 十 字 探偵 社 へ調査 を依頼 する。 奈美 木 セツ(なみき せつ)- 『
絡 新婦 の理 』で、織作 家 の家政 婦 として登場 していた快活 な娘 。早口 で善 く喋 り、最後 まで話 を聞 かない癖 に頭 から信 じてしまう粗忽 者 。池尻 にある信濃 家 の屋敷 で下働 きの家政 婦 をし、住込 だった織作 邸 での事件 のトラウマから、下 代田 にある叔母 の家 に下宿 して通 いで仕事 をしている。仕事 を通 じて交流 を持 った美津子 の心配 をして労 を取 る。 梶野 ろく(かじの ろく)美津子 の老母 。旧 品川 県 弥彦 村 (現 八王子 )で代々 細々 と生糸 作 りをしている。久 しぶりに会 った美津子 を、自分 の娘 ではないと追 い返 した。小池 宗 五郎 (こいけ そうごろう)花 町 の渋谷 円山 町 で遊郭 「金池 郭 」を経営 している。美津子 の雇 い主 。小池 英恵 の父 。大和田 の本家 が空襲 で焼 け、下 代田 の別邸 に移 った。不器用 で芸妓 としても娼婦 としても役 にたなかった美津子 を奉公 人 として雇 い、彼女 の母 が倒 れた際 には資金 援助 を行 った。一方 で美津子 が20年 ぶりに実家 に帰 りたいと頼 んだ際 には、母親 の方 で情 が沸 くからと申 し出 を拒 む。信濃 銑 次郎 (しなの せんじろう)渋谷 円山 町 で「銀 信 閣 」を経営 している。宗 五郎 の商売敵 でセツの雇 い主 。信濃 カヲルの父 。阿漕 な商売 で儲 けた成 り金 の守銭奴 で、娘 が小池 英恵 を殺害 したことで一時 商売 に打撃 を受 けていたが、諦 めずにしぶとく起死回生 を図 り、羽田 製鐵 傘下 となり軍需 や鉄鋼 産業 に乗 っかって持 ち直 す。空襲 で自分 の店 だけが焼 けたため、4階 建 てのビルヂングを新築 してキャバレーと個室 付 き浴場 に変 えた。娘 が消 えた所為 で事件 の真相 が知 れないことに苛立 ち、以来 夫婦 仲 は冷 え切 り、金池 郭 を目 の敵 にして、店 を潰 すためだけに銀 信 閣 に物凄 い大金 をかけている。小池 英恵 (こいけ はなえ)宗 五郎 の娘 。10年 ほど前 に、上田 健吉 を巡 る恋愛 トラブルで、信濃 カヲルによって健吉 と共 に殺害 された。信濃 カヲル(しなの かおる)銑 次 郎 の娘 。三角 関係 の果 てに、上田 健吉 と小池 英恵 を殺害 したあと行方 不明 になっている。沼上 蓮 次 (ぬまがみ れんじ)中 禅 寺 の友人 で、各地 の伝承 や伝説 を蒐集 している好事 家 。「綺 譚 月報 」に掲載 が決 まった記事 について相談 するため京極 堂 を訪 れており、居合 わせた所為 で事件 に首 を突 っ込 み坊主 役 で仕掛 けに協力 することになる。片桐 (かたぎり)- かつて
美津子 を引 き取 った女衒 。有楽町 で美津子 に滅多 刺 しにされ息 を引 き取 ったと云 う。 加藤 (かとう)不動産 屋 。物凄 く普通 の雰囲気 なので、榎木 津 や益田 と居 ると浮 いて見 える。北九州 から上京 する小早川 家 の息子 の別邸 探 しをしている。上田 健吉 (うえだ けんきち)某 大手 銀行 の頭取 の息子 で、憲兵 隊 所属 の青年 将校 。故人 。10年 前 に英恵 と交際 していたが、三角 関係 の恋 の縺 れでカヲルに殺 されたとされる。
雲 外 鏡 薔薇 十 字 探偵 の然 疑
登場 人物
神無月 鏡 太郎 (かんなづき きょうたろう)神無月 流 陰陽 道 宗家 を名乗 り、浄玻璃 の鏡 を使 った霊感 調査 を行 うという探偵 。細 くて切 れ長 の眼 の怪 しげで胡散臭 い男 。服装 のセンスは派手 で悪 趣味 で品 がなく、恰好 をつけようと芝居 掛 かった仕草 しているのが恰好 悪 く滑稽 に見 える。関西 弁 を妙 に矯正 したような喋 り方 をする。化粧 品 商 殺 しと窃盗 3件 、旧 日本 軍 の闇 物資 横流 し事件 などの解決 に貢献 した実績 を持 つ。心眼 探偵 との評判 の立 っている榎木 津 に勝負 を挑 む。各務 次郎 (かがみじろう)加々美 興行 社長 。創業 者 の息子 。前 社長 の叔父 の存命 中 から全国 進出 を計画 していた野心 家 で、堅実 な叔父 とは経営 方針 で意見 が分 かれていた。亡父 である前 社長 派 との社内 抗 争 を抱 えている。関東 進出 の足掛 かりとして店 造 りや設計 、女給 の斡旋 まで何 かと銀 信 閣 に出資 していたため、大 暴 れして銀 信 閣 を倒産 させた榎木 津 に肚を立 て、意趣 返 しで一味 の中 で最 も凡人 な本島 を拉致 監禁 させる。駿東 三郎 (しゅんとう さぶろう)加々美 興行 の専務 取締役 。白髪 で短 く揃 えた口髭 を生 やす、金持 ち然 とした身 態 の初老 の紳士 。平穏 を愛 し、何事 につけ波風 が立 つのを嫌 うと自称 する。前 社長 派 で、新 社長 の悪 呶い遣 り口 に猛 反発 している。神田 小川 町 のビルに拉致 監禁 された本島 を助 けるために一 芝居 打 って刺殺 される振 りをするが、振 りのはずが社内 抗 争 のさなか本当 に殺害 される。権田 信三 (ごんだ しんぞう)浅草 や恵比寿 辺 りで露店 商 をしている香具師 。半分 ほどが白髪 の髪 の毛 を短 く刈 り、右 眉 の上 に古疵 のある、脂 ぎった肉 厚 の顔 で不逞 不 逞 しい顔 つきの中 年男 。本島 と間違 えられて拉致 され、逆上 して護身 用 ナイフで駿東 を刺 し、窓 から脱出 したと警察 に証言 する。
面 霊気 薔薇 十 字 探偵 の疑惑
登場 人物
鯨岡 勲 (くじらおか いさお)中目黒 に住 む金属 加工 会社 役員 。47歳 。重役 なので忙 しく、あまり家 に帰 らない。薔薇 十 字 探偵 社 に妻 の奈美 の浮気 調査 を依頼 する。鯨岡 奈美 (くじらおか なみ)鯨岡 勲 の妻 。29歳 で夫 よりも20歳 近 く若 い。菊岡 範子 (きくおか のりこ)羽田 隆三 の別邸 の管理人 。羽田 製鐵 の元 社長 秘書 。山倉 是 通 (やまくら これみち)山倉 家 当主 で山倉 元 男爵 の息子 。54歳 。息子 は戦死 し、妻 と母 の3人 暮 らし。一品 ドロの空 き巣 に家宝 の香炉 を盗 まれ被害 届 を出 す。大村 (おおむら)、高田 (たかだ)、土居 (どい)同 じく一品 ドロの被害 者 。高田 家 は刀剣 屋 、土居 家 は茶道具 屋 。大村 家 からは毘沙門天 像 、高田 家 からは刀 1振 り、土居 家 からは桃山 時代 の手鏡 が盗難 される。今川 雅 澄 (いまがわ まさすみ)榎 木津 の軍隊 時代 の部下 であった古物商 。「待 古 庵 (まちこあん)」店主 。榎 木津 幹 麿 (えのきづ みきまろ)榎 木津 礼二 郎 の父 。元 子爵 。貿易 会社 を経営 している。
出典
京極 夏彦 『百 器 徒然 袋 ――風 』講談社 (講談社 ノベルス)、2004年 7月 5日 第 1刷
漫画
書誌 情報
- 「
鳴 釜 薔薇 十 字 探偵 の憂鬱 」 2011年 2月 24日 発行 ISBN 978-4-04-854597-6 - 「
瓶 長 薔薇 十 字 探偵 の鬱憤 」 2011年 10月 24日 発行 ISBN 978-4-04-854700-0 - 「
山颪 薔薇 十 字 探偵 の憤慨 」 2012年 10月 24日 発行 ISBN 978-4-04-120476-4 - 「
五徳 猫 薔薇 十 字 探偵 の慨然 」 2013年 10月 24日 発行 ISBN 978-4-04-120867-0 - 「
雲 外 鏡 薔薇 十 字 探偵 の然 疑 」 2014年 12月26日 発行 ISBN 978-4-04-102295-5 - 「
面 霊気 薔薇 十 字 探偵 の疑惑 」 2015年 6月 26日 発行 ISBN 978-4-04-103413-2
参考 文献
小畑 健 「京極 夏彦 を語 る」『IN★POCKET』2007年 10月 号 講談社 (講談社 文庫 )ISBN 4060605077