矢追やおい秀しゅう武たけし

矢追やおい 秀しゅう武たけし（やおい ひでたけ、1894年ねん10月11日にち - 1970年ねん9月23日にち）は、大正たいしょうから昭和しょうわにかけて活躍かつやくした日本にっぽんの細菌さいきん・ウイルス学者がくしゃ。東京とうきょう帝国ていこく大学だいがく教授きょうじゅ、国立こくりつ予防よぼう衛生えいせい研究所けんきゅうじょ部長ぶちょう、横浜よこはま医科いか大学だいがく（現げん：横浜市立大学よこはましりつだいがく）細菌さいきん学がく教授きょうじゅ（1951年ねん-1961年ねん）、神奈川歯科大学かながわしかだいがく教授きょうじゅを歴任れきにん。精製せいせい痘苗とうびょうの精製せいせい（矢追やおい抗原こうげん、PVL, Purified vaccine lymph）、溶連菌ようれんきん毒素どくそのトキソイド化かの研究けんきゅうで知しられる。

略歴りゃくれきと業績ぎょうせき

1894年ねん（明治めいじ27年ねん）、奈良なら県けん高畑たかはた町まち番外ばんがい1番地ばんち（菩提ぼだい町まち1番地ばんち）で生うまれた。1920年ねん12月、東京とうきょう帝国ていこく大学だいがく医学部いがくぶを卒業そつぎょう。

同どう大学だいがく衛生えいせい学がく教室きょうしつに研究けんきゅう生せいとして入室にゅうしつ。翌年よくねん、副手ふくしゅ、助手じょしゅになった。酸類さんるいの細菌さいきんに及およぼす影響えいきょうを研究けんきゅうした。1923年ねん（大正たいしょう12年ねん）5月がつから東京とうきょう帝国ていこく大学だいがく付属ふぞく伝染でんせん病びょう研究所けんきゅうじょの技手ぎしゅとなった。入所にゅうしょして3年ねん後ご医学いがく博士はかせ号ごうを取得しゅとく。論文ろんぶんの題だいは「腸ちょう内ない細菌さいきんの生物せいぶつ学がく的てき研究けんきゅう」。1929年ねん（昭和しょうわ4年ねん)、獣医じゅうい学がく専せん門もんの笠井かさい久雄ひさおの協力きょうりょくを得えて、早はやくも精製せいせい痘苗とうびょうを創成そうせいした。しかしこの時期じきではいまだ不完全ふかんぜんなものであった。

1930年ねん（昭和しょうわ5年ねん）11月国際こくさい連盟れんめいのスカラーシップを得えて、イギリス、ドイツ、オーストリア、フランス、スウェーデン、ノルウェー、デンマーク、オランダ、チェコスロバキアに2年ねん以上いじょう歴訪れきほうした。天然痘てんねんとう、牛痘ぎゅうとう、一般いっぱんのウイルス病びょうの研究けんきゅうを行おこない、1933年ねん1月がつ帰国きこくした。同年どうねん12月がつ、東京とうきょう帝国ていこく大学だいがく助教授じょきょうじゅに任命にんめいされ、伝染でんせん病びょう研究所けんきゅうじょに復帰ふっき。牛痘ぎゅうとうウイルスの研究けんきゅうに没頭ぼっとうする。日本にっぽんの種痘しゅとう法ほうは天然痘てんねんとうの撲滅ぼくめつに寄与きよしたが、まれに「種痘しゅとう後ご脳炎のうえん」を発生はっせいさせた。矢追やおいは精製せいせい痘苗とうびょう（矢追やおい抗原こうげん）を注射ちゅうしゃすれば、100%安全あんぜんな種痘しゅとうができることを発見はっけんした。第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん中なか、1943年ねん9月がつに陸軍りくぐん省しょう臨時りんじ嘱託しょくたくになり、マレー、ジャワでデング熱でんぐねつの研究けんきゅうを行おこなった。

1946年ねん8月がつ、東京とうきょう帝国ていこく大学だいがく教授きょうじゅに就任しゅうにん。翌年よくねん7月がつ、国立こくりつ予防よぼう衛生えいせい研究所けんきゅうじょに移動いどう。試験しけん製造せいぞう部長ぶちょうになったが、百日咳ひゃくにちぜきワクチンの製造せいぞう販売はんばいに関かんしてGHQのクロフォード・F・サムス公衆こうしゅう衛生えいせい福祉ふくし局長きょくちょうから糾弾きゅうだんされ、予よ研けんを追放ついほうされた。1951年ねんから横浜よこはま医科いか大学だいがく教授きょうじゅになり、その後ご、神奈川歯科大学かながわしかだいがくでも教おしえた。厚生省こうせいしょうの薬事やくじ委員いいん会かい委員いいん、生物せいぶつ学がく的てき製剤せいざい等とう基準きじゅん調査ちょうさ会かい専門せんもん委員いいんも歴任れきにんした。1948年ねん、東京大学とうきょうだいがく皮膚ひふ科かにおいて、矢追やおい抗原こうげんの臨床りんしょう的てき使用しようが開始かいしされた。また矢追やおいは、溶蓮菌きん毒素どくそのトキソイド化かを研究けんきゅうした。1960年ねん野口のぐち英世ひでよ記念きねん医学いがく賞しょう受賞じゅしょう。

東京帝大とうきょうていだい交響こうきょう楽団がくだんの創始そうし者しゃでもある。二木ふたき式しき健康けんこう法ほう（玄米げんまい食しょくの利用りよう）普及ふきゅう者しゃとしても知しられる。「結婚けっこんすると研究けんきゅうのために一人ひとりの女性じょせいを不幸ふこうにするかもしれない」との心配しんぱいのために、独身どくしんで過すごし、1970年ねん9月がつ23日にち、死去しきょした。

著書ちょしょ

• 『種痘しゅとう』1947年ねん
• 『栄養えいようと伝染でんせん病びょう』1948年ねん
• 『総合そうごう医学いがく新書しんしょ No.24 ウイルス学がく入門にゅうもん』1952年ねん　

文献ぶんけん

• 村上むらかみ陽一郎よういちろう編へん『日本にっぽんの科学かがく者しゃ101』 2010年ねん 新書しんしょ館かん ISBN 978-4-403-25106-1
• 泉いずみ孝英たかひで『日本にっぽん近きん現代げんだい 医学いがく人名じんめい事典じてん』 2012年ねん 医学書院いがくしょいん ISBN 978-4-260-00589-0