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社会思想 - Wikipedia

社会しゃかい思想しそう(しゃかいしそう、えい: Social thought)とは、社会しゃかいについての思想しそうてき考察こうさつす。

社会しゃかい思想しそうとは 編集へんしゅう

一般いっぱん社会しゃかい思想しそうろん 編集へんしゅう

森羅万象しんらばんしょう現象げんしょう自然しぜん社会しゃかい人間にんげんさんふんすれば、それぞれについてのかんがかた思想しそうというものは、「自然しぜんについての思想しそう」「社会しゃかいについての思想しそう」「人間にんげんについての思想しそう」のみっつになる。そのうちの「社会しゃかいについての思想しそう」が一般いっぱんに「社会しゃかい思想しそう」とわれるものである。その思想しそうなるものは、たんなるおもいつきや断片だんぺんてきなエッセイではなく、まとまりのあるひとつの主張しゅちょうとして、記述きじゅつされたものでなければならない。

河合かわい栄治郎えいじろう社会しゃかい思想しそうモデル 編集へんしゅう

古今ここん東西とうざい社会しゃかい思想しそうなかで、独自どくじ社会しゃかい思想しそう構築こうちくしたものおおいが、そのなか社会しゃかい思想しそうとはどういうもので、どういう要素ようそそなえたものでなければならないか、いわば社会しゃかい思想しそう類型るいけいろんとなえたものとしては、日本にっぽん河合かわい栄治郎えいじろう特筆とくひつである。河合かわいによると、広義こうぎ社会しゃかい思想しそうつぎよっつの要素ようそそなえている。そのうちの③社会しゃかい思想しそう狭義きょうぎ社会しゃかい思想しそうである[1]

河合かわいマルクス主義まるくすしゅぎ体系たいけいベンサム体系たいけいJ・S・ミル体系たいけいなどを調しらべて、すぐれた社会しゃかい思想しそう体系たいけい上記じょうきのような構造こうぞうになっていることをめた。ただ、かく社会しゃかい思想家しそうかによって、力点りきてんかたことなっていたりするのは事実じじつである。たとえば、②現存げんそん社会しゃかい分析ぶんせき解剖かいぼうや④政治せいじ思想しそうなしに③社会しゃかい思想しそうだけをとなえたのが空想くうそうてき社会しゃかい主義しゅぎであり、①、②、③、④がバランスよくすべての分野ぶんや理論りろんっているのが、マルクス主義まるくすしゅぎやベンサム、ミル思想しそうである。いまのところ、このよん要素ようそせつわるべきかんがかただれからもされていない[3]

マルクス主義まるくすしゅぎ社会しゃかい思想しそう体系たいけい 編集へんしゅう

河合かわいモデルによりマルクス主義まるくすしゅぎ社会しゃかい思想しそう体系たいけい分析ぶんせきすれば、つぎのようになる。

イギリス労働党ろうどうとう社会しゃかい思想しそう体系たいけい 編集へんしゅう

河合かわいモデルによりイギリス労働党ろうどうとう社会しゃかい思想しそう体系たいけい分析ぶんせきすれば、つぎのようになる。

社会しゃかい思想しそう用語ようごとの関係かんけい 編集へんしゅう

社会しゃかい思想しそう」と「政治せいじ思想しそう」のちがいは、河合かわいのモデルからえば、目的もくてき手段しゅだん関係かんけいにある。つまり社会しゃかい思想しそう目的もくてきであり、政治せいじ思想しそう目的もくてき達成たっせい手段しゅだん方法ほうほうである。現実げんじつ思想しそうでは目的もくてきべるとともに、手段しゅだんについてもべることがおおく、社会しゃかい思想しそうであるとともに、政治せいじ思想しそうであることがおおい。

現在げんざい問題もんだいとなっているのは哲学てつがく倫理りんりがくほう哲学てつがく政治せいじ哲学てつがく経済けいざい哲学てつがくなどで影響えいきょうしつつある「正義せいぎろん」と「社会しゃかい思想しそう」とのちがいである。どちらも理想りそう社会しゃかいとか状態じょうたいべるが、社会しゃかい思想しそうはその社会しゃかいぞうべるのにたいして、正義せいぎろん原理げんりべる。具体ぐたいてき著作ちょさく比較ひかくすれば、社会しゃかい思想しそうしょでは現存げんそん社会しゃかい分析ぶんせき政治せいじ思想しそう社会しゃかい運動うんどうをもくわえて叙述じょじゅつするのにたいして、正義せいぎろんしょではそういう叙述じょじゅつはなく、原理げんり可否かひ妥当だとうせいのみをろんずる。

社会しゃかい思想しそうとは 編集へんしゅう

社会しゃかい思想しそう類型るいけい 編集へんしゅう

以上いじょう社会しゃかい思想しそう人類じんるい最初さいしょから現代げんだいにまで一望いちぼうのもとにながるのが社会しゃかい思想しそうである。その社会しゃかい思想しそうをどのように叙述じょじゅつするべきか。河合かわい社会しゃかい思想しそうモデルによれば、かく思想家しそうかごと、あるいはかく流派りゅうはごとに、①世界せかいかん哲学てつがく、②現存げんそん社会しゃかい分析ぶんせき解剖かいぼう、③社会しゃかい思想しそう、④政治せいじ思想しそうべていくことになる[7]現実げんじつ社会しゃかい思想しそう史書ししょでは、そのようになっているものはすくない。現実げんじつ社会しゃかい思想しそう史書ししょ類型るいけいした研究けんきゅうしょ高島たかしま善哉ぜんざい水田みずたひろし平田ひらた清明きよあき社会しゃかい思想しそう概論がいろん』(1962ねん)があり、そこではつぎ類型るいけいしめされている[8]

現実げんじつてき分類ぶんるいほうとしては、Ⅰ上記じょうき①Bの変革へんかく思想しそうつまり社会しゃかい主義しゅぎ思想しそうのみをあつかうものと、Ⅱそれにプラスするに改良かいりょう保守ほしゅをも対象たいしょうとするもの、Ⅲそれ以外いがいのもののさんふんほうかりやすい。

日本にっぽんでの社会しゃかい思想しそう著作ちょさく 編集へんしゅう

日本にっぽん最初さいしょ著書ちょしょ名称めいしょうに「社会しゃかい思想しそう」を使用しようしたのは河合かわい栄治郎えいじろうである。河合かわいちょの『社会しゃかい思想しそう研究けんきゅうだいいち』(岩波書店いわなみしょてん、1923ねん)がそれである[11]

日本にっぽん刊行かんこうされた、社会しゃかい思想しそう銘打めいうった書物しょもつ大正たいしょう時代じだい以降いこう150さつえるが、そのうち西洋せいよういちこくではなく、西洋せいよう全体ぜんたいあつかったもので、へんしょではなく、著者ちょしゃ単独たんどくによるものとしては、つぎがある。そのうち、なに社会しゃかい思想しそう対象たいしょうとするかの説明せつめい記述きじゅつがあるのはすくないが、中身なかみによって判断はんだんするしかない。上記じょうきさんふんほうによって社会しゃかい思想しそう史書ししょ分類ぶんるい記述きじゅつすれば、つぎのようになる。

社会しゃかい主義しゅぎとしての社会しゃかい思想しそう 編集へんしゅう

  • 小泉こいずみ信三しんぞう近世きんせい社会しゃかい思想しそう大要たいよう岩波書店いわなみしょてん、1926ねん
  • 波多野はたのかなえ社会しゃかい思想しそう概説がいせつ春秋しゅんじゅうしゃ、1950ねん
  • じゅうたに悦治えつじ社会しゃかい思想しそうミネルみねるァ書房ぁしょぼう、1958ねん
  • 湯川ゆかわ和夫かずお社会しゃかい思想しそう現代げんだい哲学てつがく全書ぜんしょだい14かん青木あおき書店しょてん、1959ねん
  • 穂積ほづみ文雄ふみお近代きんだい社会しゃかい思想しそう現代げんだい経済けいざいがく全集ぜんしゅうだい7かんミネルみねるァ書房ぁしょぼう、1965ねん
  • 内海うつみ洋一よういち社会しゃかい思想しそう案内あんないしんゆうどう、1977ねん
  • 吉田よしだ忠雄ただお社会しゃかい思想しそう――民主みんしゅ主義しゅぎ議会ぎかい主義しゅぎ視座しざから』けいせいしゃ、1986ねん

社会しゃかい主義しゅぎ自由じゆう主義しゅぎなどもくわえた社会しゃかい思想しそう 編集へんしゅう

  • 佐野さのまなぶ西洋せいよう社会しゃかい思想しそう九州きゅうしゅう書院しょいん、1947ねん
  • 大河内おおこうち一男かずお社会しゃかい思想しそうせいつづけ有斐閣ゆうひかくせい1951ねんぞく1954ねん
  • あわ安太郞やすたろう社会しゃかい思想しそう』勁草書房しょぼう、1952ねん
  • 城塚じょうつかとう近代きんだい社会しゃかい思想しそう東京大学とうきょうだいがく出版しゅっぱんかい、1960ねん
  • 出口いでぐち勇蔵ゆうぞう近代きんだい社会しゃかい思想しそう経済けいざいがく全集ぜんしゅうだい2かん筑摩書房ちくましょぼう、1967ねん
  • 北村きたむら豊作とよさく社会しゃかい思想しそう史論しろん酒井さかい書店しょてん、1968ねん
  • せき嘉彦よしひこ社会しゃかい思想しそうじゅうこう――自由じゆう主義しゅぎ民主みんしゅ主義しゅぎ社会しゃかい主義しゅぎ有信ありのぶどう、1970ねん
  • 山本やまもとまことさく西洋せいよう社会しゃかい思想しそう松籟しょうらいしゃ、1983ねん
  • 山脇やまわき直司なおじ『ヨーロッパ社会しゃかい思想しそう東京大学とうきょうだいがく出版しゅっぱんかい、1992ねん
  • 多田ただしんすき『ヨーロッパ近代きんだい政治せいじ社会しゃかい思想しそう慶応義塾大学けいおうぎじゅくだいがく出版しゅっぱんかい、1996ねん

Ⅲその社会しゃかい思想しそう 編集へんしゅう

  • 本田ほんだ喜代治きよじ社会しゃかい思想しそう――あるいは思想しそう社会しゃかい東京とうきょうばいふうかん、1951ねん[12]
  • 平井ひらいしん社会しゃかい思想しそう研究けんきゅうはなわ書房しょぼう、1960ねん[13]
  • なままつ敬三けいぞう社会しゃかい思想しそう歴史れきし――ヘーゲル・マルクス・ウェーバー』NHK市民しみん大学だいがく叢書そうしょ日本にっぽん放送ほうそう出版しゅっぱん協会きょうかい、1969ねん[14]
  • 藤川ふじかわ吉美よしみ社会しゃかい思想しそう――価値かち基準きじゅん進化しんか正義せいぎ研究けんきゅう成文せいぶんどう、1997ねん[15]
  • 野尻のじり武敏たけとし経済けいざい社会しゃかい思想しそう地平ちへいあきらよう書房しょぼう、2011ねん[16]

社会しゃかい思想しそうげるべき事項じこう 編集へんしゅう

社会しゃかい思想しそうげるべき事項じこうとしては、なに社会しゃかい思想しそうなのかのかんがえによってわってくるが、一般いっぱんてきにはつぎ事項じこう指摘してきできよう。

古代こだいギリシア 編集へんしゅう

ぜん近代きんだい中国ちゅうごく 編集へんしゅう

ぜん近代きんだい日本にっぽん 編集へんしゅう

近代きんだいヨーロッパ 編集へんしゅう

脚注きゃくちゅう 編集へんしゅう

  1. ^ 河合かわい栄治郎えいじろう社会しゃかい政策せいさく原理げんり」『河合かわい栄治郎えいじろう全集ぜんしゅうだいかん、302-303ぺーじ
  2. ^ 青木あおきいくこころざし河合かわいのモデルを修正しゅうせいし、発展はってんさせている。その要点ようてんは③社会しゃかい思想しそうを③A国家こっか経済けいざい政策せいさくと③B個人こじん行動こうどうとのふたつにけることである。こうすることにより、ソ連それん社会しゃかい主義しゅぎとイギリス労働党ろうどうとう政権せいけんとのちがいが鮮明せんめいになるからである。前者ぜんしゃは③A=社会しゃかい主義しゅぎ、③B=従属じゅうぞく主義しゅぎであり、後者こうしゃは③A=社会しゃかい主義しゅぎ、③B=個人こじん自由じゆう主義しゅぎである。青木あおきいくこころざし河合かわい栄治郎えいじろう社会しゃかい思想しそう体系たいけい春風しゅんぷうしゃ、2011ねん、61-62ぺーじ
  3. ^ マルクス主義まるくすしゅぎやそれにちかすじ大筋おおすじよん要素ようそみとめている。ただし、①「世界せかいかん哲学てつがく」は社会しゃかい思想しそうとは別個べっこであり、広義こうぎ社会しゃかい思想しそうは②「現存げんそん社会しゃかい分析ぶんせき解剖かいぼう」、③「社会しゃかい思想しそう」、④「政治せいじ思想しそう」のさん要素ようそとするかんがえがつよい。穂積ほづみ文雄ふみお河合かわい用語ようごの「現存げんそん社会しゃかい分析ぶんせき解剖かいぼう」を「現実げんじつ社会しゃかい存在そんざいする欠陥けっかん認識にんしき」に、「社会しゃかい思想しそう」を「現実げんじつ社会しゃかいえた理想りそう社会しゃかいのビジョン」に、「政治せいじ思想しそう」を「ぜんしゃをつなぐはし」「理想りそうビジョン実現じつげんみち」にいいかえている。穂積ほづみ文雄ふみお近代きんだい社会しゃかい思想しそうミネルみねるァ書房ぁしょぼう、1965ねん、26-27ぺーじ
  4. ^ 日本にっぽんマルクス主義まるくすしゅぎ政党せいとうじゅう世紀せいきさい後半こうはんにおいて、用語ようご変更へんこうし、しゅとして政治せいじ思想しそう変更へんこうしているかにえるが、マルクスエンゲルスがどうかんがえていたかの立場たちばから分析ぶんせきすれば、こうならざるをえない。河合かわい栄治郎えいじろう社会しゃかい政策せいさく原理げんり」『河合かわい栄治郎えいじろう全集ぜんしゅうだいかん、339-404ぺーじ青木あおきいくこころざし河合かわい栄治郎えいじろう社会しゃかい思想しそう体系たいけい春風しゅんぷうしゃ、2011ねん、164-166ぺーじ
  5. ^ 河合かわいはイギリス労働党ろうどうとう思想しそうトーマス・ヒル・グリーンながれをんで、ほとんどが理想りそう主義しゅぎてき原理げんりつとしたが、現実げんじつにはハロルド・ラスキバートランド・ラッセルなど現実げんじつ主義しゅぎてき原理げんりものもいる。このことを指摘してきしたのは何人なんにんかいるが、最近さいきんでは青木あおきいくこころざしである。青木あおきいくこころざし河合かわい栄治郎えいじろう社会しゃかい思想しそう体系たいけい春風しゅんぷうしゃ、2011ねん、126-127ぺーじ
  6. ^ 河合かわい栄治郎えいじろう社会しゃかい政策せいさく原理げんり」『河合かわい栄治郎えいじろう全集ぜんしゅうだいかん、423-439ぺーじ
  7. ^ 河合かわい社会しゃかい思想しそうとしての著作ちょさくとしては、つぎがある。『社会しゃかい思想しそう研究けんきゅうだいいち』(1923ねん)『トーマス・ヒル・グリーンの思想しそう体系たいけい』(1930ねん)『社会しゃかい思想家しそうか評伝ひょうでん』(1936ねん)『英国えいこく社会しゃかい主義しゅぎ研究けんきゅう』(1938ねん)などがある。それぞれ『河合かわい栄治郎えいじろう全集ぜんしゅうだい3かんだい1-2かんだい7かんだい5かん収録しゅうろく
  8. ^ 高島たかしま善哉ぜんざい水田みずたひろし平田ひらた清明きよあき社会しゃかい思想しそう概論がいろん岩波書店いわなみしょてん、1962ねん、4-7ぺーじ
  9. ^ この立場たちばでは、社会しゃかい科学かがくしゃかんがえる社会しゃかいぞう歴史れきしということになりかねない。極端きょくたんえば、社会しゃかい科学かがくである。社会しゃかい科学かがくしゃでないもの社会しゃかいについてかんがえたことは考察こうさつ対象たいしょうがいになる。ちなみに新明しんめい正道せいどう社会しゃかい学者がくしゃである。
  10. ^ この立場たちばでは、哲学てつがくろんずべきもののうち、社会しゃかいについての部分ぶぶんのみをあつめた、哲学てつがくいち分野ぶんやとなる。ちなみにあわ安太郎やすたろう哲学てつがくしゃである。
  11. ^ だいいちとしたのはのちだい著作ちょさく予定よていしていたからである。このしょ内容ないようはイギリスの一定いってい社会しゃかい思想しそうである。つまりアダム・スミスからJ・S・ミルいた時期じきのみをあつかっている。
  12. ^ 本書ほんしょ副題ふくだいにもあるとおり思想しそう社会しゃかいである。
  13. ^ 本書ほんしょ自由じゆう主義しゅぎマルクス主義まるくすしゅぎにまったくれていない。
  14. ^ 本書ほんしょ副題ふくだいにもあるとおり、有名ゆうめい哲学てつがくしゃ社会しゃかい科学かがくしゃ社会しゃかいかん社会しゃかいぞう史的してき展開てんかいしている。一種いっしゅ社会しゃかい科学かがくとなっている。
  15. ^ 本書ほんしょ副題ふくだいにあるとおり正義せいぎろん歴史れきしとなっている。
  16. ^ 本書ほんしょ類書るいしょにはなくキリスト教きりすときょう観点かんてんからえがいている。

参考さんこう文献ぶんけん 編集へんしゅう

関連かんれん項目こうもく 編集へんしゅう