私的してき独占どくせん

私的してき独占どくせんとは、独占どくせんの一いち形態けいたいであり、一いち事業じぎょう者しゃがあらゆる手段しゅだんを講こうじて経済けいざい力りょくを集中しゅうちゅうし、市場いちばに対たいする優位ゆういを持もち、その優位ゆうい性せいを駆使くしして他たの事業じぎょう者しゃの事業じぎょう活動かつどうを支配しはい又または妨害ぼうがいするなどしてその市場いちばの支配しはいを行おこなう行為こういを指さす。

私的してき独占どくせんは、私的してき独占どくせんの禁止きんし及および公正こうせい取引とりひきの確保かくほに関かんする法律ほうりつ（独占どくせん禁止きんし法ほう）により規制きせいされている。同どう法ほうにおいて「私的してき独占どくせん」とは、事業じぎょう者しゃが、単独たんどくに、又または他たの事業じぎょう者しゃと結合けつごうし、若もしくは通牒つうちょうし、その他たいかなる方法ほうほうを以ってするかを問とわず、他たの事業じぎょう者しゃの事業じぎょう活動かつどうを排除はいじょし、又または支配しはいすることにより、公共こうきょうの利益りえきに反はんして、一定いっていの取引とりひき分野ぶんやにおける競争きょうそうを実質じっしつ的てきに制限せいげんすることをいう（2条じょう5項こう）。

私的してき独占どくせんと見みなすためには、単純たんじゅんに市場いちば支配しはい力りょくが高たかいだけではなく、市場いちばを支配しはいするための何なんらかの違法いほう行為こういを行おこなっていることを裏付うらづける必要ひつようがある。

市場いちば支配しはい的てき行為こうい

排除はいじょ行為こうい

他たの事業じぎょう者しゃの事業じぎょう活動かつどうの継続けいぞくを困難こんなんにさせる行為こうい。主おもに以下いかの3つが挙あげられる。

不当ふとう廉売れんばい: 詳細しょうさいは不当ふとう廉売れんばいを参照さんしょう。
地域ちいき的てき差別さべつ対価たいか: ある市場いちばにおいて優位ゆういを持もつ事業じぎょう者しゃが、新規しんき参入さんにゅう事業じぎょう者しゃが進出しんしゅつを予定よていしている地域ちいきに対たいしてのみ価格かかくの引ひき下さげなどを行おこなう行為こうい。予あらかじめ参入さんにゅう事業じぎょう者しゃを排除はいじょ又または参入さんにゅう事業じぎょう者しゃに対たいして優位ゆうい性せいを持もたせておく意味合いみあいがある。
排他はいた条件じょうけん付づけ取引とりひき: ある市場いちばにおいて優位ゆういを持もつ事業じぎょう者しゃが、他たの事業じぎょう者しゃが取引とりひき相手あいてとしている取引とりひき先さきに対たいしてのみ価格かかくの引ひき下さげなどを行おこなう行為こうい。他たの事業じぎょう者しゃの得意とくい先さきを奪うばう「不ふ公正こうせいな取引とりひき方法ほうほう」の典型てんけい的てき行為こういである。

排除はいじょ行為こういはそれ自体じたい不ふ公正こうせいな取引とりひき方法ほうほうに該当がいとうするケースが多おおいが、それに限かぎられない。例たとえば、濫用らんよう的てきな商標しょうひょう出願しゅつがんが排除はいじょ行為こういとされた例れいもある。

支配しはい行為こうい

他たの事業じぎょう者しゃの自由じゆうな意思いしでの事業じぎょう活動かつどうを困難こんなんにさせる行為こうい。主おもに以下いかの3つが挙あげられる。

優位ゆういを持もつ事業じぎょう者しゃが他たの事業じぎょう者しゃの株式かぶしきを取得しゅとくする行為こうい
優位ゆういを持もつ事業じぎょう者しゃの役員やくいんが、他たの事業じぎょう者しゃの役員やくいんを兼任けんにんする行為こうい
優位ゆういを持もつ事業じぎょう者しゃがその優越ゆうえつ的てきな地位ちいを利用りようして、他たの事業じぎょう者しゃとの取引とりひきで有利ゆうりな条件じょうけんを引ひき出だす行為こうい。詳細しょうさいは優越ゆうえつ的てき地位ちいの濫用らんようを参照さんしょう。

支配しはい行為こういは、必かならずしも相手方あいてがたの意思いしに反はんしていることを要ようしない。株式かぶしき取得しゅとくや役員やくいん派遣はけんが支配しはいとされるのは、それにより事実じじつ上じょう意思いし決定けっていを左右さゆうできる立場たちばを獲得かくとくするからである。

対たい市場いちば効果こうか

私的してき独占どくせんが成立せいりつするためには「一定いっていの取引とりひき分野ぶんやにおける競争きょうそうを実質じっしつ的てきに制限せいげんすること」が必要ひつようである。

一定いっていの取引とりひき分野ぶんや

対たい市場いちば効果こうかの認定にんていの前提ぜんていとして、まず、どの範囲はんいにおける「競争きょうそうを実質じっしつ的てきに制限せいげんする」のか、市場いちばの画定かくていが必要ひつようである。一般いっぱんには、地理ちり的てき市場いちばと商品しょうひん市場いちばの両りょう側面そくめんから画定かくていされる。地理ちり的てき市場いちばの範囲はんいは、広ひろくは日本にっぽん全国ぜんこくから、狭せまいものでは特定とくていの自治体じちたいの指名しめい競争きょうそう入札にゅうさつを取引とりひき分野ぶんやとしたものまで様々さまざまである。

競争きょうそうの実質じっしつ的てき制限せいげん

競争きょうそうの実質じっしつ的てき制限せいげんとは、市場いちば支配しはい力りょくの形成けいせい・維持いじ・強化きょうかをいう。

市場いちば支配しはい力りょくの定義ていぎは一様いちようではないが、例たとえば「競争きょうそう自体じたいが減少げんしょうして、特定とくていの事業じぎょう者しゃまたは事業じぎょう者しゃ団体だんたいがその意思いしで、ある程度ていど自由じゆうに、価格かかく、品質ひんしつ、数量すうりょう、その他た各般かくはんの条件じょうけんを左右さゆうすること」ができる力ちから（東京とうきょう高だか判ばん昭あきら28･12･7）と定義ていぎされる。

審決しんけつ例れいや裁判さいばん例れいにおいては、排除はいじょ行為こうい又または支配しはい行為こういによって市場いちばシェアが上昇じょうしょうしたことを認定にんていする場合ばあいが「競争きょうそうの実質じっしつ的てき制限せいげん」の認定にんていの典型てんけいであるが、必かならずしも具体ぐたい的てきな数字すうじを挙あげる場合ばあいばかりではない。