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等方二次形式 - Wikipedia

数学すうがくにおけるひとしかた形式けいしき(とうほうにじけいしき、えい: isotropic quadratic form)は、ヌルベクトル(それに代入だいにゅうしてれいになるようなれいベクトル)をつような形式けいしきう。ひとしかたてきでない形式けいしきひとしかたてき (anisotropic) とう。

具体ぐたいてきに、qからだ F うえベクトル空間くうかん V定義ていぎされた形式けいしきとする。れいベクトル vV が(qかんして)ひとしかたてきあるいはひとしかたベクトルであるとは、q(v) = 0 なるときにう(れいベクトルも自明じめいひとしかたベクトルとなすこともある)。形式けいしき qひとしかたてきなるための必要ひつようじゅうふん条件じょうけんは、qかんするひとしかたベクトルがすくなくともひと存在そんざいすることである。

空間くうかん (V, q) とその部分ぶぶん線型せんけい空間くうかん Wたいして、WVひとしかた部分ぶぶん空間くうかん (isotropic subspace) とは Wぞくするあるベクトルが(qかんして)ひとしかたてきとなるときにい、完全かんぜんひとしかた部分ぶぶん空間くうかん (totally isotropic subspace) とは Wぞくする任意にんいのベクトルがひとしかたてきとなるときにう。また、ひとしかた部分ぶぶん空間くうかん (anisotropic subspace) は(れいな)ひとしかたベクトルをまったくふくまないときにう。空間くうかんひとしかたせい指数しすう (isotropy index) は、その完全かんぜんひとしかた部分ぶぶんぐん次元じげん最大さいだいである[1]

有限ゆうげん次元じげんベクトル空間くうかん V うえ形式けいしき qひとしかたてきとなるための必要ひつようじゅうふん条件じょうけんは、qてい符号ふごう形式けいしき、つまり

  • せい定値ていちせい: q(v) > 0 (∀v(≠ 0) ∈ V),
  • 定値ていちせい: q(v) < 0 (∀v(≠ 0) ∈ V)

いずれかをたすことである。より一般いっぱんに、形式けいしき q退化たいかかつ符号ふごうすう (a, b)つならば、そのひとしかたせい指数しすうmin(a, b)ひとしい。

そうきょくがた平面へいめん

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ちゅう
そうきょく幾何きかがくにおける平面へいめん混同こんどうしてはならない。

F-平面へいめん V = F2任意にんいどうてん(x, y) とすれば、形式けいしき q = xyr = x2y2同値どうちである(すなわち、V うえ線型せんけい変換へんかんqr に、また rqうつすものがそれぞれ存在そんざいする)。しかるに (V, q) および (V, r) はともにひとしかた空間くうかんであり、これらをそうきょくがた平面へいめんあるいはそうきょく平面へいめん (hyperbolic plane) とぶ。よくられる実例じつれいとして、F = R実数じっすう直線ちょくせん)において、部分ぶぶん空間くうかん {xV : q(x) = (れい定数ていすう)} および {xV : r(x) = (れい定数ていすう)}双曲線そうきょくせんである。とく{xV : r(x) = 1}単位たんい双曲線そうきょくせん英語えいごばんう。Milnor & Husemoller (1973, p. 9) がそうきょくがた平面へいめんたいしてもちいた記法きほう 1−1変数へんすう多項式たこうしき r各項かくこう符号ふごうしめすものであった。

分解ぶんかいがた空間くうかん

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空間くうかん (V, q)分解ぶんかいがた (split) または metabolic[注釈ちゅうしゃく 1] であるとは、その部分ぶぶん空間くうかん WW の(qかんする)直交ちょっこう空間くうかんW 自身じしん (W = W i.e. q(W, W) = 0) となるものが存在そんざいするときにう。これは Vひとしかたせい指数しすう次元じげん dim V半分はんぶんひとしいとってもおなじことである[1]そうきょくがた平面へいめん分解ぶんかいがた空間くうかんひとつのれいであり、またしるべすう ≠ 2任意にんいからだじょう分解ぶんかいがた空間くうかんそうきょくがた平面へいめん直和なおかず分解ぶんかいされる[2]

形式けいしき分類ぶんるいかんして

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形式けいしき分類ぶんるい観点かんてんからは、ひとしかた空間くうかん任意にんい次元じげん空間くうかんつくるための基本きほん構成こうせい要素ようそである。一般いっぱんからだ Fたいしてひとしかた形式けいしき分類ぶんるいすることは自明じめい問題もんだいではない。対照たいしょうてきに、ひとしかた形式けいしきはよりあつかいが簡単かんたんであるのが普通ふつうである。ヴィットの分解ぶんかい定理ていり英語えいごばんによれば、あたえられたからだじょう任意にんい内積ないせき空間くうかんひとつの分解ぶんかいがた空間くうかんひとつのひとしかた空間くうかんとの直交ちょっこう直和なおかず分解ぶんかいできる[3]

いくつかのからだにおける結果けっか

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  • F代数だいすう閉体たとえば複素数ふくそすうからだ C)ならば、そのうえ次元じげん2 以上いじょう空間くうかん (V, q)ひとしかたてきである。
  • F有限ゆうげんたいのとき、空間くうかん (V, q)次元じげん3 以上いじょうならば、それはひとしかたてきである。
  • Fp-進数しんすうたい Qp空間くうかん (V, q)5 次元じげん以上いじょうならばひとしかたてきである。

関連かんれん項目こうもく

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ meta- + [hyper-]bolic

出典しゅってん

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参考さんこう文献ぶんけん

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  • Pete L. Clark, Quadratic forms chapter I: Witts theory from University of Miami in Coral Gables, Florida.
  • Tsit Yuen Lam (1973) Algebraic Theory of Quadratic Forms, §1.3 Hyperbolic plane and hyperbolic spaces, W. A. Benjamin.
  • Tsit Yuen Lam (2005) Introduction to Quadratic Forms over Fields, American Mathematical Society ISBN 0-8218-1095-2 .
  • Milnor, J.; Husemoller, D. (1973). Symmetric Bilinear Forms. Ergebnisse der Mathematik und ihrer Grenzgebiete. 73. Springer-Verlag. ISBN 3-540-06009-X. Zbl 0292.10016 
  • O'Meara, O.T (1963). Introduction to Quadratic Forms. Springer-Verlag. p. 94 §42D Isotropy. ISBN 3-540-66564-1 
  • Serre, Jean-Pierre (2000) [1973]. A Course in Arithmetic. Graduate Texts in Mathematics: Classics in mathematics. 7 (reprint of 3rd ed.). Springer-Verlag. ISBN 0-387-90040-3. Zbl 1034.11003