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管理通貨制度 - Wikipedia

管理かんり通貨つうか制度せいど

通貨つうか発行はっこうりょう通貨つうか当局とうきょく調節ちょうせつする制度せいど

管理かんり通貨つうか制度せいど(かんりつうかせいど、えい: Fiat System)とは、通貨つうか発行はっこうりょう通貨つうか当局とうきょく調節ちょうせつすることで、物価ぶっか安定あんてい経済けいざい成長せいちょう雇用こよう改善かいぜん国際こくさい収支しゅうし安定あんていなどをはか制度せいど日本にっぽんこく通貨つうか当局とうきょくである日本銀行にっぽんぎんこうは、日本銀行にっぽんぎんこう負債ふさい計上けいじょうされている通貨つうか日本銀行にっぽんぎんこうけん日銀にちぎん当座とうざ預金よきん)の発行はっこうりょうを、日本銀行にっぽんぎんこう資産しさん計上けいじょうされているしゅとして国債こくさいとバランスさせて[1]調整ちょうせいしており、この状態じょうたい金本位きんほんいせい銀本位ぎんほんいせいたいして、国債こくさい本位ほんいせいであるとえる。

アメリカのマネーサプライの推移すいい

管理かんり通貨つうか制度せいどのもとでは通貨つうか当局とうきょくかねぎんなどの保有ほゆうりょうとは無関係むかんけい通貨つうか供給きょうきゅうりょう増減ぞうげんさせることが出来できるので、だい世界せかい大戦たいせんから情報じょうほう革命かくめい背景はいけい電子でんし記録きろくとしての預金よきん通貨つうかところなくやしている。みぎのような通貨つうか供給きょうきゅうりょう増加ぞうか世界せかいてき傾向けいこうである。また、この預金よきん通貨つうかまれるはたらきを「信用しんよう創造そうぞう」とい、銀行ぎんこう借入金かりいれきんもうまれたさい相手あいて返済へんさい能力のうりょく現在げんざいかかえているべつ借入金かりいれきんがくなど勘案かんあん算段さんだんし、それをって「返済へんさい能力のうりょく欠如けつじょする場合ばあいしをことわったり、たか金利きんりけてしを了承りょうしょうする」場合ばあいもある。与信よしん行動こうどう問題もんだいがなくしが成立せいりつした場合ばあい銀行ぎんこうもう相手あいて口座こうざ開設かいせつさせ、その通帳つうちょう額面がくめん借入金かりいれきんがくことで「貸借たいしゃく関係かんけい成立せいりつ」となる。この貸借たいしゃく関係かんけい成立せいりつによってまれる預金よきん通貨つうかは「万年筆まんねんひつマネー」や「キーストロークマネー」とばれる「いわば架空かくう通貨つうか」ともえるもので、直接的ちょくせつてき現金げんきん紙幣しへい硬貨こうか用意よういされるものではない。しかしながら一度いちど通帳つうちょうまれた預金よきん通貨つうかがあれば、企業きぎょうであれば設備せつび投資とうしのための支払しはらいが出来できたり、個人こじん場合ばあいであれば住宅じゅうたく建築けんちく費用ひようなどの大口おおぐち購入こうにゅう決済けっさい手段しゅだんとしてもちいること可能かのうとなる。これは現金げんきん紙幣しへい硬貨こうか直接ちょくせつしゅれられるかたちとして存在そんざいするのと同義どうぎである。そのためおおくのひと銀行ぎんこうすおかね現金げんきんであるとおも勘違かんちがいが存在そんざいする。しかしながら「現金げんきん紙幣しへいおよ硬貨こうか預金よきん通貨つうかまったちがうもの」であること理解りかいするのが経済けいざい知識ちしきとしては必須ひっすである。またこのような「ことまれる預金よきん通貨つうか権限けんげん担保たんぽ(裏付うらづけともえる)」にあるのが中央ちゅうおう銀行ぎんこう発行はっこうする当座とうざ預金よきんであり、日本にっぽん場合ばあいは「日銀にちぎん当座とうざ預金よきん」とばれるもので、これも日本にっぽん場合ばあい中央ちゅうおう銀行ぎんこうにあたる日本銀行にっぽんぎんこうかく銀行ぎんこうてて付与ふよしているもので、その当座とうざ預金よきん保有ほゆうがく法律ほうりつによってさだめられており、その法令ほうれいを「銀行ぎんこう準備じゅんびりつ」とぶ。

特徴とくちょう

編集へんしゅう

管理かんり通貨つうか制度せいどしたでは、自国じこく通貨つうか原則げんそくてきにいくらでも発行はっこうできる[2]きむ貨幣かへい価値かち裏付うらづけとする金本位きんほんいせいにおいては、銀行ぎんこうけん発行はっこうりょう正貨せいか準備じゅんびだか拘束こうそくされるのにたいし、管理かんり通貨つうか制度せいどでは行政府ぎょうせいふ通貨つうか政策せいさく次第しだいであり、貨幣かへい価値かち政府せいふまたは中央ちゅうおう銀行ぎんこう政策せいさくによって裏付うらづけされるためその価値かち不安定ふあんていとなりやすい。よって通貨つうか当局とうきょく金融きんゆう政策せいさくにより貨幣かへい価値かち安定あんていはかることを重視じゅうしする。

銀行ぎんこう学派がくはかんがかたによれば、中央ちゅうおう銀行ぎんこうはプライマリバンク(中央ちゅうおう銀行ぎんこう直接ちょくせつ取引とりひき口座こうざ開設かいせつしている市中しちゅう銀行ぎんこう)の担保たんぽ差出さしで対等たいとうぶつとして通貨つうか発行はっこうするのが原則げんそくであり[3]、この場合ばあい通貨つうか価値かち市中しちゅう信用しんようりょく依存いぞんしている。一方いっぽう議会ぎかい行政府ぎょうせいふ国債こくさい発行はっこうして中央ちゅうおう銀行ぎんこうけさせている場合ばあい、その通貨つうか価値かち行政府ぎょうせいふ信用しんよう徴税ちょうぜいけん国庫こっこ財産ざいさんなど)を担保たんぽとしている。

管理かんり通貨つうか制度せいどでは、発行はっこうりょう本位ほんい備蓄びちくりょう拘束こうそくされることがないので、景気けいき物価ぶっか調整ちょうせいのために柔軟じゅうなん通貨つうかりょう調整ちょうせいをすることができるメリットがある。一方いっぽう通貨つうか当局とうきょく行政府ぎょうせいふ関係かんけい独立どくりつせい協調きょうちょうせい)がつねにわれ、通貨つうか当局とうきょく行政府ぎょうせいふ影響えいきょうにある場合ばあい景気けいき対策たいさくのための恒常こうじょうてき金融きんゆう緩和かんわインフレまね場合ばあいがある。また独立どくりつせい極端きょくたん保護ほごされている場合ばあい通貨つうか当局とうきょく失策しっさく国家こっか破滅はめつてき混乱こんらんをもたらす場合ばあいがある(ライヒスバンクの事例じれい)。

管理かんり通貨つうか制度せいどにおいても通貨つうか市中しちゅうあるいは政府せいふ信用しんよう対等たいとうぶつとしてあつかわれるのが原則げんそくであり[よう出典しゅってん]、この原則げんそく政策せいさくじょう事情じじょうあるいは恣意しいせいくわわるとインフレーションデフレーション原因げんいんとなる。

 
金本位きんほんい制度せいどの1ドル兌換だかん紙幣しへい1928ねん)。

20世紀せいき管理かんり通貨つうか制度せいど採用さいようされる以前いぜんにおいて、欧米おうべい諸国しょこく中心ちゅうしんとした国際こくさい決済けっさい市場いちばでは金本位きんほんい利用りようすることが一般いっぱんてきであった。これは銀行ぎんこう金貨きんか金地きんじきん預託よたくしそのあずかりけん紙幣しへい)をもちいて取引とりひきおこない、最終さいしゅうてき決済けっさい指定していする銀行ぎんこうあいだかね現送げんそうすることによって精算せいさんする制度せいどである。

金本位きんほんいによる国際こくさい決済けっさい戦争せんそうによりしばしば中断ちゅうだんされることがあり、とりわけ19世紀せいきにはロンドン主要しゅようこくにとって国際こくさい決済けっさい中心ちゅうしんであったことから、だいいち世界せかい大戦たいせん発生はっせいにより金本位きんほんい中断ちゅうだん余儀よぎなくされた。たとえば日本にっぽん1913ねん12月まつ時点じてん日銀にちぎん正貨せいか準備じゅんびは1おく3000まんえん在外ざいがい正貨せいか2おく4,600まんえんであり、在外ざいがい正貨せいかはすべてロンドンにあった。また外貨がいか決済けっさいの8 - 9わりをロンドンでおこなっていたが、だいいち世界せかい大戦たいせんはじまる1914ねんの8がつには手形てがた輸送ゆそう途絶とぜつし(当時とうじシベリア鉄道てつどう輸送ゆそうしていた)、ロンドンの金融きんゆう機関きかん活動かつどう停止ていしするなど混乱こんらんした。大戦たいせん終結しゅうけつにともない1919ねんにアメリカが、1925ねんにはイギリスが金本位きんほんいせい復帰ふっきした。

金本位きんほんいせい問題もんだい資本しほんとなる金塊きんかい国際こくさい市場いちばである都市とし集中しゅうちゅうさせざるをえないてんにもあった。とくに19世紀せいきにおける国際こくさい金融きんゆう中心ちゅうしんであったイギリス・ロンドンや20世紀せいきにかけてその地位ちい継承けいしょうしたアメリカ・ニューヨークには世界せかい各国かっこく中央ちゅうおう銀行ぎんこう支店してんや、各国かっこく政府せいふ出先でさき機関きかん集中しゅうちゅうしており、各国かっこく国際こくさい収支しゅうし調整ちょうせいはその都市とし設置せっちされた支店してんあいだでの金塊きんかい現送げんそうにより調整ちょうせいされるシステムであった。

だいいち世界せかい大戦たいせん前後ぜんごからきむ本位ほんいきん)は経済けいざいりょく格差かくさからアメリカにあつまり、アメリカでは国内こくない正貨せいか過剰かじょうとなってインフレ昂進こうしんしたことから、通貨つうか準備じゅんびからかね一部いちぶをはずす胎化政策せいさくをとった結果けっか金本位きんほんいせい国際こくさい収支しゅうし調整ちょうせいのメカニズムはうしなわれきん偏在へんざい進行しんこうした。フランスではだいいち世界せかい大戦たいせん賠償金ばいしょうきんとしてドイツから1320おくマルク獲得かくとくする請求せいきゅうけんたが現物げんぶつ給付きゅうふなどにより十分じゅうぶん支払しはらいがなされなかったこともありインフレ(リーブル相場そうば下落げらく)が発生はっせいし、極端きょくたん金塊きんかい主義しゅぎ政策せいさく採用さいよう本位ほんいきん備蓄びちくをおこなった。

これらの背景はいけいのもとに1929ねんからの世界せかい恐慌きょうこう拡大かくだいし、イギリスは1931ねん金本位きんほんいせい離脱りだつ、アメリカをのぞ各国かっこくもこれに追随ついずいし、以後いご金本位きんほんいせいわる管理かんり通貨つうか制度せいど時代じだいになった。イギリスの経済けいざい学者がくしゃジョン・メイナード・ケインズ1920年代ねんだいなかばから、為替かわせ安定あんてい主眼しゅがん金本位きんほんいせいわって、国内こくない経済けいざいしょ目的もくてき物価ぶっか景気けいき雇用こよう)を優先ゆうせんさせる管理かんり通貨つうか制度せいど採用さいよう主張しゅちょうしていた。

だい世界せかい大戦たいせんこうIMF体制たいせいのもと、かねと1オンス=35ドルの平価へいか交換こうかん可能かのうアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくドル基軸きじく通貨つうかとし、各国かっこく通貨つうかあめりかドルとの固定こてい相場そうばせい採用さいようした(ブレトン・ウッズ体制たいせい)。この体制たいせいでも加盟かめい各国かっこく国内こくないにおいては管理かんり通貨つうか制度せいどっており、通貨つうか当局とうきょく為替かわせ介入かいにゅう金融きんゆう政策せいさくによりたいドル固定こてい相場そうば上下じょうげはば1%以内いない維持いじしつづけた。この制度せいどは「きむドル本位ほんいせい」「きむ為替かわせ本位ほんいせい」などといわれる。1971ねん、アメリカの財政ざいせい赤字あかじ経常けいじょう収支しゅうし赤字あかじ増大ぞうだいしてインフレが進行しんこう、アメリカはドルとかね兌換だかん停止ていしり(ニクソン・ショック)、これをもってかね通貨つうか関係かんけい完全かんぜんはなされ、国際こくさいてきにも管理かんり通貨つうか制度せいど移行いこうした。

文献ぶんけん情報じょうほう

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  • 松岡まつおか和人かずと自由じゆう銀行ぎんこう制度せいどさい評価ひょうかについて」『愛知教育大学あいちきょういくだいがく研究けんきゅう報告ほうこく. 人文じんぶん社会しゃかい科学かがくへんだい59かん愛知教育大学あいちきょういくだいがく、2010ねん3がつ、101-107ぺーじhdl:10424/2882ISSN 1884-5177CRID 1050282813411464704 
  • はんさわじゅんふとしにちはな事変じへんをめぐる日本にっぽん金融きんゆうの「広義こうぎ国防こくぼう変換へんかん過程かていと、「華北かほくぶん工作こうさく」の「高度こうど国防こくぼう」『新潟工科大学にいがたこうかだいがく研究けんきゅう紀要きようだい9かん新潟工科大学にいがたこうかだいがく、2004ねん12月、83-106ぺーじISSN 1342-792XCRID 1050565162986994560 

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ だい135かい事業じぎょう年度ねんど 行政ぎょうせいコスト計算けいさん財務ざいむ書類しょるい”. 日本にっぽん銀行ぎんこう. p. 3. 2022ねん2がつ21にち閲覧えつらん
  2. ^ 田中たなか秀臣ひでおみ野口のぐちあさひ若田部わかたべあきらきよしへん 『エコノミスト・ミシュラン』 太田出版おおたしゅっぱん、2003ねん、229ぺーじ
  3. ^ バジョット原理げんり、「公衆こうしゅう要求ようきゅうするかぎりどこまでも信用しんよう供与きょうよすべきであり、またそれを可能かのうにするために平時へいじにおいては十分じゅうぶん準備じゅんび維持いじしておくようにしなければならない」とする銀行ぎんこう学派がくは命題めいだい。「インドネシアにおける通貨つうか金融きんゆう危機きき再考さいこうした)」内野うちの好郎よしろう立教りっきょう経済けいざいがく研究けんきゅうだい61かんだい4ごう2008ねん[1]

関連かんれん項目こうもく

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