粕谷あらや一希かずき

粕谷あらや 一希かずき（かすや かずき、1930年ねん2月がつ4日にち - 2014年ねん5月30日にち）は、日本にっぽんの編集へんしゅう者しゃ・出版しゅっぱん事業じぎょう家か・文筆ぶんぴつ家か。都市とし出版しゅっぱん株式会社かぶしきがいしゃ社長しゃちょう・相談役そうだんやく。

保守ほしゅ派はの編集へんしゅう者しゃとして多おおくの書かき手てを送おくり出だし、戦後せんご日本にっぽんの論壇ろんだんに保守ほしゅ主義しゅぎ、現実げんじつ主義しゅぎの潮流ちょうりゅうを築きずいた。東京とうきょう府ふ出身しゅっしん。

来歴らいれき・人物じんぶつ

東京とうきょう雑司ぞうしが谷やに生うまれる。東京とうきょう府立ふりつ第だい五ご中学校ちゅうがっこう、一いち高だかを経へて、東京大学とうきょうだいがく法学部ほうがくぶを卒業そつぎょう。学生がくせい時代じだいには河合かわい栄治郎えいじろう、和かず辻つじ哲郎てつろう、波多野はたの精一せいいち、猪木いのき正道せいどう、蠟山政道せいどう、丸山まるやま眞男まさおの著作ちょさくを読よみ、高坂こうさか正ただし顕あきら、鈴木すずき成しげる高だか、西谷にしたに啓あきら治ち、高山たかやま岩男いわおなど敗戦はいせん後ご否定ひていされていた京都きょうと学派がくはの戦中せんちゅう期きの著作ちょさくにも影響えいきょうを受うけた。

1955年ねん、中央公論社ちゅうおうこうろんしゃに入社にゅうしゃ。「中央公論ちゅうおうこうろん」編集へんしゅう部ぶを振ふり出だしに社内しゃないを転々てんてんと移うつる。その保守ほしゅの思想しそう信条しんじょうを社長しゃちょうの嶋中しまなか鵬ほう二にに見込みこまれ、嶋中しまなか事件じけんが起おこった1961年ねんに「中央公論ちゅうおうこうろん」編集へんしゅう部ぶ次長じちょうに抜擢ばってきされた。

1967年ねんより「中央公論ちゅうおうこうろん」編集へんしゅう長ちょう。永井ながい陽之助ようのすけ、高坂こうさか正ただし堯、萩原はぎはら延寿えんじゅ、山崎やまざき正和まさかず、塩野しおの七生しちしょう、庄司しょうじ薫かおる、高橋たかはし英夫ひでお、白川しらかわ静しずなどを世よに送おくり出だす。

『思想しそうの科学かがく』天皇てんのう制せい特集とくしゅう号ごう廃棄はいき事件じけんで執筆しっぴつ者しゃ陣じんや労働ろうどう組合くみあいの抗議こうぎを受うけ、『中央公論ちゅうおうこうろん』編集へんしゅう長ちょうを解任かいにんされ同誌どうしから派生はせいした月刊げっかん誌し『歴史れきしと人物じんぶつ』編集へんしゅう長ちょうに就任しゅうにん。3年ねんで『中央公論ちゅうおうこうろん』編集へんしゅう長ちょうに再任さいにん。しかし1976年ねんに、山口やまぐち昌男まさおが担当たんとうしていた連載れんさい時評じひょうの最終さいしゅうの二に回分かいぶんで、天皇てんのう制せいを文化ぶんか人類じんるい学がく的てきに論ろんじ（のち『知ちの遠近えんきん法ほう』、岩波書店いわなみしょてんに収録しゅうろく）、部下ぶかがこれを掲載けいさい差さし止どめする事件じけんが起おき、再度さいど編集へんしゅう長ちょうを解任かいにんされた。後のちに粕谷あらや自身じしんは未読みどくだったが、自分じぶんが読よんでも書かき直なおしをお願ねがいしたかもしれないと回想かいそうしている。

1978年ねん、労働ろうどう争議そうぎに関連かんれんして辞表じひょうを提出ていしゅつ退社たいしゃ。1980年ねん、最初さいしょの著書ちょしょ『二十歳はたちにして心こころ朽くちたり』を上梓じょうし。1982年ねん、江藤えとう淳あつしは「ユダの季き節ぶし」を書かき、粕谷あらや、中嶋なかじま嶺みね雄つよし、山崎やまざき正和まさかずが徒党ととうを組くんで仲間なかま褒ほめをしていると批判ひはんした。

1986年ねん、「東京とうきょう人じん」誌しを創刊そうかん。1987年ねん4月がつ、都市とし出版しゅっぱん株式会社かぶしきがいしゃを創業そうぎょう、代表だいひょう取締役とりしまりやく社長しゃちょうを長ながく務つとめた（そのときの部下ぶかの一人ひとりが坪内つぼうち祐三ゆうぞう）。翌よく88年ねん10月がつに「外交がいこうフォーラム」も創刊そうかんした。同社どうしゃの退任たいにん後ごは相談役そうだんやくとなった。

竹山たけやま道雄みちお著作ちょさく集しゅう、猪木いのき正道せいどう著作ちょさく集しゅう、高坂こうさか正ただし堯著作ちょさく集しゅうの出版しゅっぱんにも携たずさわった。

2014年ねん5月がつ30日にち午後ごご6時じ、心不全しんふぜんのため東京とうきょう都と豊島としま区くの病院びょういんで死去しきょ。84歳さい没ぼつ。6月6日にちに護国寺ごこくじ桂かつら昌あきら殿どので葬儀そうぎが行おこなわれた。

著書ちょしょ

• 『二十歳はたちにして心こころ朽くちたり』新潮社しんちょうしゃ 1980。洋よう泉いずみ社しゃMC新書しんしょ 2007　
• 『戦後せんご思潮しちょう 知識ちしき人じんたちの肖像しょうぞう』日本経済新聞社にほんけいざいしんぶんしゃ 1981。藤原ふじわら書店しょてん 2008（増ぞう訂てい版ばん）
• 『対比たいひ列伝れつでん 戦後せんご人物じんぶつ像ぞうを再さい構築こうちくする』新潮社しんちょうしゃ 1982
• 『河合かわい栄治郎えいじろう 闘たたかう自由じゆう主義しゅぎ者しゃとその系譜けいふ』日本経済新聞にほんけいざいしんぶん社しゃ 1983
• 『都会とかいのアングル』TBSブリタニカ 1983
• 『面白おもしろきこともなき世よを面白おもしろく 高杉たかすぎ晋作しんさく遊ゆう記き』新潮社しんちょうしゃ 1984
• 『東京とうきょうあんとろぽろじい 人間にんげん・時間じかん・風景ふうけい』筑摩書房ちくましょぼう 1985
• 『中央公論社ちゅうおうこうろんしゃと私わたし』文藝春秋ぶんげいしゅんじゅう 1999
• 『鎮魂ちんこん 吉田よしだ満みつるとその時代じだい』文春ぶんしゅん新書しんしょ 2005
• 『反はん時代じだい的てき思索しさく者しゃ 唐木からき順三じゅんぞうとその周辺しゅうへん』藤原ふじわら書店しょてん 2005
• 『作家さっかが死しぬと時代じだいが変かわる 戦後せんご日本にっぽんと雑誌ざっしジャーナリズム』日本経済新聞にほんけいざいしんぶん出版しゅっぱん社しゃ 2006。水木みずき楊解説かいせつ
• 『内藤ないとう湖南こなんへの旅たび』藤原ふじわら書店しょてん 2011
• 『歴史れきしをどう見みるか　名めい編集へんしゅう者しゃが語かたる日本にっぽん近きん現代げんだい史し』藤原ふじわら書店しょてん 2012。きき
• 『生いきる言葉ことば　名めい編集へんしゅう者しゃの書棚しょだなから』藤原ふじわら書店しょてん 2014
• 『粕谷あらや一希かずき随想ずいそう集しゅう』（全ぜん3巻かん）藤原ふじわら書店しょてん 2014。刊行かんこう中ちゅうに没ぼっす
  • I 忘わすれえぬ人ひとびと、II 歴史れきし散策さんさく、III 編集へんしゅう者しゃとして

編著へんちょ・共著きょうちょほか

• 『言論げんろんは日本にっぽんを動うごかす（7） 言論げんろんを演出えんしゅつする』講談社こうだんしゃ 1985
• 『言論げんろんは日本にっぽんを動うごかす（6） 体制たいせいに反逆はんぎゃくする』講談社こうだんしゃ 1986
• 『歴史れきしの読よみ方かた 対談たいだん書評しょひょう』筑摩書房ちくましょぼう 1992。歴史れきし・政治せいじ学者がくしゃ10名めいとの対話たいわ
• 『メディアの迷走めいそう　誇ほこりなき報道ほうどうが国くにを亡ほろぼす』PHP研究所けんきゅうじょ 1994
• 『編集へんしゅうとは何なにか』藤原ふじわら書店しょてん編集へんしゅう部ぶ編へん 2004。寺田てらだ博ひろし・松居まつい直ただし・鷲尾わしお賢也けんやと共著きょうちょ
• 『〈座談ざだん〉書物しょもつへの愛あい』藤原ふじわら書店しょてん 2011。作家さっか・編集へんしゅう者しゃ8名めいとの対話たいわ
• 『名めい伯楽ばくろう　粕谷あらや一希かずきの世界せかい』藤原ふじわら書店しょてん編集へんしゅう部ぶ編へん 2015。知人ちじん67名めいによる追想ついそう