車軸しゃじく配置はいち

車軸しゃじく配置はいち（しゃじくはいち）は、鉄道てつどう車両しゃりょうにおいて、動力どうりょくにより回転かいてんして車体しゃたいを前進ぜんしんさせる動輪どうりんと、車体しゃたいの重量じゅうりょうを支ささえてレールに沿そって案内あんないしている先さき輪わ、従したがえ輪わの、配置はいちを表あらわした言葉ことばである。軸じく配置はいち、車輪しゃりん配置はいちと呼よぶこともある。

概要がいよう

鉄道てつどう車両しゃりょうでは、動力どうりょく車しゃであっても全すべての車輪しゃりんが動力どうりょくによって駆動くどうされているわけではない。動輪どうりんと先さき従したがえ輪わの配置はいちの仕方しかたにより、車両しゃりょうの性能せいのうや使用しよう目的もくてきに大おおきな影響えいきょうが出でてくるため、車両しゃりょうの基本きほん的てきな性質せいしつを表現ひょうげんする要素ようそとして車軸しゃじく配置はいちが表記ひょうきされる。特とくに、他たの車両しゃりょうを牽引けんいんすることが目的もくてきである機関きかん車しゃにおいては、機関きかん車しゃの特徴とくちょうを決定けってい付つける重要じゅうような要素ようそである。

各種かくしゅの機関きかん車しゃの中なかでも、蒸気じょうき機関きかん車しゃにおいて車軸しゃじく配置はいちの影響えいきょうが大おおきい。蒸気じょうき機関きかん車しゃの車輪しゃりんでは、動輪どうりんが蒸気じょうき機関きかんから主しゅ連れん棒ぼう、連結れんけつ棒ぼうを介かいして駆動くどうされている。これに対たいして、動輪どうりんより前まえにある車輪しゃりんを先さき輪わ、または導しるべ輪わ、動輪どうりんより後のちにある車輪しゃりんを従したがえ輪わと呼よぶ。近代きんだい的てきな蒸気じょうき機関きかん車しゃでは、旅客りょかく牽引けんいん用ようのものでは動輪どうりんが3対つい、貨物かもつ牽引けんいん用ようのものでは動輪どうりんが4対ついのものが主流しゅりゅうであった。これは、旅客りょかく用ようでは高速こうそく性能せいのうを重視じゅうしして直径ちょっけいの大おおきな動輪どうりんを使つかうのに対たいして、貨物かもつ用ようでは牽引けんいん力りょくを重視じゅうしして直径ちょっけいの小ちいさな動輪どうりんを使つかうことの影響えいきょうである。電気でんき機関きかん車しゃやディーゼル機関きかん車しゃでは、動輪どうりんの大おおきさが性能せいのうに与あたえる影響えいきょうが蒸気じょうき機関きかん車しゃに比くらべて小ちいさいため、次第しだいに旅客りょかく用ようと貨物かもつ用ようの区別くべつが曖昧あいまいになっているが、車軸しゃじく配置はいちはなお機関きかん車しゃの性質せいしつを特徴付とくちょうづける要素ようそである。

日本にっぽんにおいては、車輪しゃりんの数かずよりも車軸しゃじくの数かずを数かぞえる方式ほうしきが主流しゅりゅうで、このため車軸しゃじく配置はいち、あるいは軸じく配置はいちという言葉ことばが使つかわれる。これに対たいしてアメリカでは車輪しゃりんの数かずを数かぞえる方式ほうしきが主流しゅりゅうで、このため車軸しゃじく配置はいちに対応たいおうする英語えいごはwheel arrangement（車輪しゃりんの配置はいち）という。動輪どうりんに対応たいおうした車軸しゃじくは動どう軸じく、（非ひ駆動くどう輪わという意味いみでの）従したがえ輪わに対応たいおうした車軸しゃじくは従したがえ軸じくである。

車軸しゃじく配置はいちが機関きかん車しゃの特性とくせいに与あたえる影響えいきょうが大おおきいため、個別こべつの車軸しゃじく配置はいちを区別くべつするための表記ひょうき法ほうが定さだめられている。よく用もちいられる表記ひょうき法ほうとしては、日本にっぽん国鉄こくてつ式しき、ホワイト式しき、アメリカ式しきが挙あげられる。またその他たに国際こくさい鉄道てつどう連合れんごうによる機関きかん車しゃの車軸しゃじく配置はいちの分類ぶんるい法ほう (en:UIC classification of locomotive axle arrangements) などがある。

車軸しゃじくに注目ちゅうもくした表記ひょうき法ほう

UIC式しき

国際こくさい鉄道てつどう連合れんごうの定さだめた表現ひょうげん法ほうで、組織そしきの略称りゃくしょうからUIC式しきという。連続れんぞくした動どう軸じく数すうをラテン文字もじアルファベットの大文字おおもじで、連続れんぞくした非ひ動どう軸じく数すうをアラビア数字すうじで表あらわす。転向てんこう可能かのうな台車だいしゃの軸じくにはプライム「'」を付与ふよし、同一どういつの台車だいしゃにある軸じくは括弧かっこ「()」で囲かこむ。動どう軸じくが独立どくりつに駆動くどうされる場合ばあいにはラテン文字もじアルファベットの小文字こもじ「o」を付与ふよする。複数ふくすう車体しゃたいが永久えいきゅう連結れんけつされている場合ばあい、あるいはガーラットの様ように機械きかい的てきに分離ぶんりされた複数ふくすうのユニットがある場合ばあいにはそれぞれをの軸じく配置はいちをプラス「+」で結むすぶ。この他ほか、軸じく配置はいちには直接ちょくせつ関係かんけいないが、過熱かねつ式しき蒸気じょうき機関きかん車しゃには「h」、飽和ほうわ式しき蒸気じょうき機関きかん車しゃには「n」、複式ふくしき蒸気じょうき機関きかん車しゃには「v」、タンク機関きかん車しゃには「t」、タービン機関きかん車しゃには「Turb.」を用もちいる。更さらに、気筒きとう数すうを表あらわす数字すうじを付与ふよすることもある。たとえば、ユニオン・パシフィック鉄道てつどう4000形かたち蒸気じょうき機関きかん車しゃのUIC式しき表記ひょうきは (2'D)D2' となる。

AAR式しき

アメリカ鉄道てつどう協会きょうかい (AAR) が制定せいていした方式ほうしきで、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくとカナダのディーゼル機関きかん車しゃ・電気でんき機関きかん車しゃにおいて広ひろく使用しようされている。UIC式しきと同様どうように動どう軸じくの数かずはラテン文字もじのアルファベットで、非ひ動どう軸じくの数かずはアラビア数字すうじで表あらわす。離はなれた台車だいしゃの間あいだはハイフン「-」で、関節かんせつ式しきの台車だいしゃは関節かんせつ部ぶをプラス「+」で結むすぶ。蒸気じょうき機関きかん車しゃでは使用しようされない。

日本にっぽん国鉄こくてつ式しき

日本にっぽんの国鉄こくてつが制定せいていした方式ほうしきで、日本にっぽんで最もっとも標準ひょうじゅん的てきな表記ひょうき法ほうである。先さき輪わの軸じく数すう、動輪どうりんの軸じく数すう、従したがえ輪わの軸じく数すうの順じゅんに表記ひょうきする。UIC式しき同様どうよう、先さき従したがえ輪わの軸じく数すうはアラビア数字すうじで、動輪どうりんの軸じく数すうは数字すうじではなくその数字すうじの順番じゅんばんに対応たいおうするラテン文字もじのアルファベットを用もちいる（例たとえば動輪どうりん軸じく3軸じくはC、動輪どうりん軸じく4軸じくはD）。先さき従したがえ輪わがない場合ばあい、先さき従したがえ輪わの位置いちには何なにも表記ひょうきしない。

フランス式しき

フランスで用もちいられた方式ほうしきで、先さき輪わの軸じく数すう、動輪どうりんの軸じく数すう、従したがえ輪わの軸じく数すうの順じゅんに、いずれもアラビア数字すうじで表記ひょうきする。複数ふくすうのユニットで分割ぶんかつされている場合ばあいはユニット間あいだを+で結むすぶ。たとえば、フランス国鉄こくてつ141R形かたち蒸気じょうき機関きかん車しゃのフランス式しき表記ひょうきは 141 となる（形式けいしき名めいもこれに由来ゆらいしている）。なお、蒸気じょうき機関きかん車しゃ以外いがいの機関きかん車しゃでは上記じょうきUIC式しきに準じゅんじた表記ひょうきである。

車輪しゃりんに注目ちゅうもくした表記ひょうき法ほう

ホワイト式しき

世界せかいで最もっとも標準ひょうじゅん的てきな表記ひょうき法ほうで、先さき輪わの車輪しゃりん数すう、動輪どうりんの車輪しゃりん数すう、従したがえ輪わの車輪しゃりん数すうの順じゅんに、すべてアラビア数字すうじを使つかって表記ひょうきする。軸じく数すうではなく、1軸じくにつき車輪しゃりん2つと数かぞえる。数字すうじの間あいだにはハイフンを入いれる。従したがえ輪わがない場合ばあいは「0」と表記ひょうきする。軸じく配置はいちではないが、タンク機関きかん車しゃの場合ばあいにラテン文字もじアルファベットの大文字おおもじ「T」を付与ふよすることがある。

詳細しょうさいは「ホワイト式しき車輪しゃりん配置はいち」を参照さんしょう

個別こべつの名称めいしょうを与あたえる表記ひょうき法ほう

アメリカ式しき

主おもにアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくで使つかわれている表現ひょうげん法ほうで、各かく車輪しゃりん配置はいちパターンごとに固有こゆうの名称めいしょうを与あたえる。名称めいしょうを覚おぼえるのが難むずかしいが、覚おぼえれば親したしみやすいので日本にっぽんでも主おもに鉄道てつどうファンの間あいだでよく用もちいられている。太平洋戦争たいへいようせんそう前まえの南みなみ満まん洲しゅう鉄道てつどうや朝鮮ちょうせん総督そうとく府ふ鉄道てつどうでは、蒸気じょうき機関きかん車しゃの形式けいしきにこの方式ほうしきの略称りゃくしょうを取とり込こんで使用しよう（パシナ（車軸しゃじく配置はいちパシフィックの第だい7形式けいしき）、ミカイ（車軸しゃじく配置はいちミカドの第だい1形式けいしき）など）していた。

なお、関節かんせつ式しき機関きかん車しゃの車軸しゃじく配置はいちの場合ばあい、マレー式しき（単式たんしきマレー含ふくむ）の場合ばあいは独自どくじに名前なまえがついている（例れい：ビッグボーイ）が、ガーラット式しきの場合ばあいは前後ぜんごの走はしり装置そうち単独たんどく配置はいちの名前なまえ（○○）を取とり、その前まえに「ダブル（double）」をつけ「ダブル○○」という呼よび方かたをする。例れいを挙あげるとジンバブエの旧きゅうローデシア鉄道てつどう（Rhodesia Railway）の15形がた（15th class）と20形がた（20th class）はそれぞれハドソンとマウンテンを背中合せなかあわせにつないだ形かたち（ホワイト式しきで言いうと「4-6-4+4-6-4」と「4-8-2+2-8-4」）なので「ダブルハドソン」、「ダブルマウンテン」と呼よばれている^[1]。

実際じっさいの配置はいちパターン別べつの表記ひょうき

ホワイト式しきで表あらわした蒸気じょうき機関きかん車しゃの車軸しゃじく配置はいち

配置はいちパターンは小文字こもじのoで先さき輪わ・従したがえ輪わを、大文字おおもじのOで動輪どうりんを示しめす。左ひだりが機関きかん車しゃの先頭せんとうで先さき輪わ、動輪どうりん、従したがえ輪わの順じゅんとなる。

配置はいちパターン	日本にっぽん国鉄こくてつ式しき	ホワイト式しき	通称つうしょう
oOo	1A1	2-2-2
OO	B	0-4-0
oOO	1B	2-4-0	ポーター
oOOo	1B1	2-4-2	コロンビア
ooOO	2B	4-4-0	アメリカン、エイトホイラー
ooOOo	2B1	4-4-2	アトランティック
ooOOoo	2B2	4-4-4	ダブルエンダー^{[注釈ちゅうしゃく 1]}。
OOO	C	0-6-0	シックスホイールカップルド
oOOO	1C	2-6-0	モーガル
oOOOo	1C1	2-6-2	プレーリー
oOOOoo	1C2	2-6-4	アドリアティック、アンチ・パシフィック
ooOOO	2C	4-6-0	テンホイラー^{[注釈ちゅうしゃく 2]}
ooOOOo	2C1	4-6-2	パシフィック^{[注釈ちゅうしゃく 3]}
ooOOOoo	2C2	4-6-4	ハドソン（テンダー機関きかん車しゃ）、バルチック（タンク機関きかん車しゃ）
OOOO	D	0-8-0	エイトホイールカップルド
oOOOO	1D	2-8-0	コンソリデーション
OOOOo	D1	0-8-2	トランスファー
oOOOOo	1D1	2-8-2	ミカド^{[注釈ちゅうしゃく 4]}、マイク、マッカーサー
oOOOOoo	1D2	2-8-4	バークシャー、カナワ
ooOOOO	2D	4-8-0	マストドン、トウェルヴ・ホイラー
ooOOOOo	2D1	4-8-2	マウンテン
ooOOOOoo	2D2	4-8-4	FEF、ノーザン、ポコノ、グリーンブライアー、ゴールデンステート、ナイアガラ、ポトマック、デキシー、ワイオミング、コンフェデレーション
oooOOOOooo	3D3	6-8-6
OOOOO	E	0-10-0	テン・ホイール・スイッチャー、デカポッド（イギリスなど^{[注釈ちゅうしゃく 5]})
OOOOOo	E1	0-10-2	ユニオン
oOOOOO	1E	2-10-0	デカポッド（アメリカなど）
oOOOOOo	1E1	2-10-2	サンタ・フェ
oOOOOOoo	1E2	2-10-4	テキサス、コロラド（シカゴ・バーリントン・クインシー鉄道てつどう）、セルカーク（カナダ）
ooOOOOO	2E	4-10-0
ooOOOOOo	2E1	4-10-2	オーヴァーランド、サザン・パシフィック
oOOOOOO	1F	2-12-0	センチピード
oOOOOOOo	1F1	2-12-2	ジャヴァニック
oOOOOOOoo	1F2	2-12-4
ooOOOOOOo	2F1	4-12-2	ユニオン・パシフィック
ooOOOOOOOoo	2G2	4-14-4
OO OO	BB	0-4-4-0
ooOO OOOoo	2BC2	4-4-6-4	デュープレックス^{[注釈ちゅうしゃく 6]} [*ペンシルバニア鉄道てつどうQ2形かたち]
ooOOO OOoo	2CB2	4-6-4-4	デュープレックス [*ペンシルバニア鉄道てつどうQ1形かたち]
ooOO OOoo	2BB2	4-4-4-4	デュープレックス [*ペンシルバニア鉄道てつどうT1形かたち]
oooOO OOooo	3BB3	6-4-4-6	デュープレックス [*ペンシルバニア鉄道てつどうS1形かたち]
OOO OOO	CC	0-6-6-0	エリー
oOOO OOO	1CC	2-6-6-0
oOOO OOOo	1CC1	2-6-6-2	マレー・モーガル、プレーリー・マレー
oOOO OOOoo	1CC2	2-6-6-4
oOOO OOOooo	1CC3	2-6-6-6	アレゲニー
ooOOO OOOo	2CC1	4-6-6-2
ooOOO OOOoo	2CC2	4-6-6-4	チャレンジャー
oOOO OOOO	1CD	2-6-8-0
OOOO OOOO	DD	0-8-8-0	アンガス
oOOOO OOOO	1DD	2-8-8-0	ブル・ムース
oOOOO OOOOo	1DD1	2-8-8-2	チェサピーク、マレー・コンソリデーション
oOOOO OOOOoo	1DD2	2-8-8-4	イエロー・ストーン
ooOOOO OOOOo	2DD1	4-8-8-2	アーティキュレーテッド・コンソリデーション
ooOOOO OOOOoo	2DD2	4-8-8-4	ビッグボーイ
oOOOOO OOOOOo	1EE1	2-10-10-2	ヴァージニアン
oOOOO OOOO OOOOo	1DDD1	2-8-8-8-2	トリプレックス
oOOOO OOOO OOOOoo	1DDD2	2-8-8-8-4	トリプレックス

脚注きゃくちゅう

注釈ちゅうしゃく

^ ダブルエンダーは先さき従したがえ輪わのあるタンク機関きかん車しゃの総称そうしょうとしても使つかわれる、この場合ばあいは2-6-2や2-6-4など他たの車輪しゃりん配置はいちでもダブルエンダーと呼よぶ。（高木たかぎ宏之ひろゆき『満まん洲しゅう鉄道てつどう発達はったつ史し』株式会社かぶしきがいしゃ潮しお書房しょぼう光人みつひと社しゃ、2012年ねん、ISBN 978-4-7698-1524-2、P151）
^ 10個この車輪しゃりんを有ゆうすることから。
^ 軸じく配置はいち自体じたいは1886年ねんにアメリカのレハイバレー鉄道てつどう向むけに採用さいようされていたが、1901年ねんにニュージーランド国鉄こくてつがボールドウィンからこの形式けいしきを購入こうにゅうしたことから、太平洋たいへいよう (Pacific Ocean) を渡わたった機関きかん車しゃ、ということでパシフィックと名なづけられた。^{[要よう出典しゅってん]}
^ ボールドウィンがこの軸じく配置はいちで初はじめて製造せいぞうした機関きかん車しゃが、日本にっぽん鉄道てつどう向むけの9700形かたちであったために、天皇てんのうの別称べっしょうから命名めいめいされた。太平洋戦争たいへいようせんそう中なか、アメリカでは「マッカーサー」とい換いかえられることもあった。^{[要よう出典しゅってん]}
^ 詳くわしくは英語えいご版ばん0-10-0と2-10-0を参照さんしょう。
^ デュープレックス（Duplex）自体じたいはシリンダーが前後ぜんごに二に重じゅうにある固定こてい台だい枠わくの機関きかん車しゃを指さす。

出典しゅってん

^ 齋藤さいとう晃あきら「ガーラット型がた機関きかん車しゃ」『鉄道てつどう画が報ほう』No.8、株式会社かぶしきがいしゃ誠まこと文ぶん堂どう新光しんこう社しゃ、2007年ねん、ISBN 978-4-416-80710-1、P108。