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錠前 - Wikipedia

錠前じょうまえ

とびらなどを閉鎖へいさするためにとりつけてめる金属きんぞく機械きかいてきまたは電子でんしてき道具どうぐ

錠前じょうまえ(じょうまえ、えい: lock and key)とは、じょう(じょう、えい: lock ロック)とかぎ(かぎ、えい: key キー)をセットにしたものの総称そうしょう[1]じょうとびらなどに開閉かいへいさまたげる機器ききす。かぎはそれを操作そうさしてかいじょう施錠せじょう開閉かいへいするための道具どうぐ[1]

ドアのじょうかぎ
南京錠なんきんじょうとそのかぎ
カードキーしきのドアじょう(ホテルの客室きゃくしつのもの)

じょうまり機構きこうくさりじょう機構きこう構成こうせいされる[1]まり機構きこうとはかんぬき(かんぬき)のよこぼうのようにとびらなどの開閉かいへい阻止そしするための機構きこうをいう[1]。またくさりじょう機構きこうとはじょう操作そうさしてとびらなどを開閉かいへいする資格しかくをもつもの操作そうさしているか判断はんだんする機構きこうをいう[1]

諸説しょせつありはするが、錠前じょうまえ紀元前きげんぜんから存在そんざいする[1]財産ざいさんまもることはむかしから世界中せかいじゅう人々ひとびと関心事かんしんじだった。ものかくしたりつねかんしたりする以上いじょうもっともよくなされた対策たいさくは、道具どうぐ使つかってそれらをまもることだった。たとえばひもしば場合ばあい泥棒どろぼうむすのようにいてむすなおしたことを検知けんちしたり、ゴルディアスのむすのようにくのがむずかしいむすかたをした。最初さいしょ錠前じょうまえがどこで発明はつめいされたかはさだかではないが、エジプトギリシアローマなどでそれぞれ独自どくじ発達はったつしたとられている。木製もくせい錠前じょうまえかぎ4000ねんまえアッシリア使つかわれていた[2]かぎのある最初さいしょ錠前じょうまえとしてピンじょう(ピンロック)がある。とびらあなからぶらがったロープに錠前じょうまえとおされている。あなひらいた木製もくせい円筒えんとうじょうのものがかぎとなる。そのさい円筒えんとうながさが重要じゅうよう意味いみち、かぎんだときになかのボルトがただしいながさだけされる。施錠せじょうするさいはロープをって円筒えんとうかぎき、同時どうじにボルトをいてめる。このような錠前じょうまえいま使つかっている地域ちいきもある(たとえば、プエルトリコ)。この錠前じょうまえ欠点けってん破壊はかいしゃがロープをあな押込おしこむことができるてんで、古代こだいには錠前じょうまえやぶるためににかわ鍵穴かぎあなれた。

1900年代ねんだい、エジプトで木製もくせいのピンじょう木製もくせいかぎ発見はっけんされた。紀元前きげんぜん250ねんごろに使つかわれていたものとられている[3]

ピンじょうへの初期しょき改良かいりょうはピンのかずやすことだった。さらに、ピンの方向ほうこうえてロープを使つかわなくともかぎだけでひらけじょうするちからをかけられるようにした。それによって現代げんだいピンタンブラーじょう原理げんり確立かくりつされた。

一方いっぽう中国ちゅうごく大陸たいりくでは南京錠なんきんじょう一種いっしゅである海老錠えびじょう紀元前きげんぜんから存在そんざいした[1]

日本にっぽんかずじょう技術ぎじゅつももとは中国ちゅうごく大陸たいりくから伝来でんらいしたとかんがえられている[1]日本にっぽんでは江戸えど時代じだい仕事しごと激減げきげんした刀鍛冶かたなかじによって錠前じょうまえこう付加ふか価値かちおこなわれ、豪華ごうか装飾そうしょくと(当時とうじ日本にっぽんでは)高機能こうきのう防犯ぼうはんせいそなえた独特どくとく錠前じょうまえかずじょう)がつくされた。これはひらけじょう仕組しくみそのもの当時とうじ一般いっぱんてきいたバネしきだが、複数ふくすうかぎ使つかわないとひらかないもの(1つの、もしくは複数ふくすうある鍵穴かぎあな形状けいじょうちが複数ふくすうかぎ手順てじゅんどおりにむ)や、鍵穴かぎあな複雑ふくざつからくりかくしたもの、そのからくりをくとおと仕掛しかけになっているものなど、趣向しゅこうらしたつくりになっている。

ヨーロッパではウォードじょう開発かいはつされた[1]。ウォードじょうかぎのデザインが現代げんだいかぎもとになっている。たかいセキュリティが要求ようきゅうされる場合ばあいは、錠前じょうまえがある場所ばしょかくしたり、にせ錠前じょうまえ設置せっちして盗賊とうぞく時間じかん浪費ろうひさせるなどの対策たいさくほどこした。

錠前じょうまえ種類しゅるい

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錠前じょうまえには完全かんぜん機械きかいしきのものと電気でんき使つかったものがある。施錠せじょうひらきじょう操作そうさかぎ使つかうもの、ダイヤルをまわすなど機械きかいてき入力にゅうりょくするもの、電気でんき利用りようして暗証あんしょう番号ばんごうなどを入力にゅうりょくするもの、磁気じきやなんらかのカードを使つかうものなどがある。

おおもちいられている代表だいひょうてきなものに、タンブラーじょう電子でんしじょう電気でんきじょう)などがある。ほかにもウォードじょうやチューブラーじょうなど、さまざまな錠前じょうまえやそのバリエーションが存在そんざいする。たとえばディンプルじょうはエールのピンタンブラーじょうから派生はせいしたもので、ピンがかぎえんではなくひろめんのディンプル(くぼみ)と接触せっしょくする。

タンブラーじょう

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ピンタンブラーじょう
ピンタンブラーじょう

ピンタンブラーじょう西洋せいようではもっとひろ使つかわれている錠前じょうまえである[4]紀元前きげんぜん2000ねんごろから使つかわれている。エジプトで使つかわれたピンタンブラーじょうおおきくておもく、木製もくせいでピンだけが青銅せいどうなどの金属きんぞくでできていた。18世紀せいきなかごろ、アメリカの錠前じょうまえライナス・エール・シニアと息子むすこライナス・エール・ジュニアが改良かいりょうほどこして現在げんざいられるようなかたちにした。そういった初期しょきのピンタンブラーじょう製造せいぞうコストがたかく、大量たいりょう生産せいさん可能かのうになるまでひろ普及ふきゅうすることはなかった。1805ねん、イングランドで現代げんだいてきピンタンブラーじょう特許とっきょ取得しゅとくされた。この特許とっきょけん保持ほじしゃはアメリカじんのA・O・スタンベリーだった。

 
ウェハータンブラーじょう事務じむつくえのもの)
ウェハータンブラーじょうen:wafer tumbler lock

ウェハータンブラーじょうアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくでの最初さいしょ特許とっきょは、1868ねんにP・S・フェルターが取得しゅとくした[5]比較的ひかくてき安価あんか製造せいぞう可能かのうで、自動車じどうしゃ家具かぐ錠前じょうまえとしてよく使つかわれた。一般いっぱん亜鉛あえん合金ごうきんダイカストつくられた。

 
レバータンブラーじょう
レバータンブラーじょうen:lever tumbler lock

レバータンブラーじょうは17世紀せいきにヨーロッパで発明はつめいされた[6]つよ素材そざい製作せいさく可能かのうであるため、金庫きんこ北米ほくべい刑務所けいむしょなどでよくられる。くにによってはとびら錠前じょうまえとしてもよく使つかわれている。19世紀せいきにそれまでのウォードじょうってわった。イングランドのロバート・バロンが1778ねんにダブルアクションしきのレバータンブラーじょう特許とっきょ取得しゅとくした。1818ねん、ジェレミア・チャブがこれを発展はってんさせたenという錠前じょうまえ考案こうあんした。

電子でんしじょう (電気でんきじょう)

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電気でんきじょう
 
コードキーしきのドアじょう

電子でんしじょう(でんしじょう)あるいは電気でんきじょう(でんきじょう)[7]とは、電気でんきかいして開閉かいへい操作そうさ制御せいぎょする錠前じょうまえ電子でんしロック(でんしロック)[8]とも呼称こしょうされるほか、電磁石でんじしゃくもちいるものは電磁でんじじょう(でんじじょう)[9]電磁でんじロック(でんじロック)[10]マグネットじょう(マグネットじょう)[11]とも呼称こしょうされる。

電源でんげん直接ちょくせつ配線はいせんから機種きしゅ電池でんちから機種きしゅの2つにおおきくけられ、おおくは防犯ぼうはんようとして導入どうにゅうされる[12]通常つうじょう錠前じょうまえのようなかぎあな必要ひつようとせず、リモコンなどによる遠隔えんかく操作そうさ可能かのうであり、ひらきじょうには暗証あんしょう番号ばんごう指紋しもん認証にんしょう電話でんわなどをもちいるため、錠前じょうまえ物理ぶつりてき破壊はかいしないピッキング犯罪はんざい被害ひがいわないとされる[12]

ただし、電子でんし機器きき一種いっしゅでもあるゆえにみず侵入しんにゅうにはよわく、屋外おくがいへの設置せっちにはかないとされる[7]。また、電磁石でんじしゃくもちいるものは連続れんぞく通電つうでんによる一定いってい発熱はつねつともなうため、人体じんたい長時間ちょうじかんつづけると低温ていおん熱傷ねっしょう可能かのうせいがある[13]


さまざまな種類しゅるい

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チューブラじょう
 
ダイヤルじょう
 
とびら種類しゅるい対応たいおうした錠前じょうまえ配置はいち

おもなものをげるだけでも以下いかのようなものがあり、こまかくればこれ以外いがいにも特殊とくしゅじょうがある。

錠前じょうまえ関連かんれん職業しょくぎょう

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錠前じょうまえかぎ

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錠前じょうまえじょうとこれをひらかぎ)を製作せいさくするもの錠前じょうまえ(じょうまえし)、また各種かくしゅ錠前じょうまえ機構きこう理解りかいしたうえで、これに対応たいおうするかぎもちいずに器具きぐとうひらけじょうするための専門せんもん技能ぎのう職能しょくのうしゃかぎ(かぎし、lock-smith[14]しょうする。

また、これらをひっくるめた専門せんもんしょくおもにはメーカーの出張所しゅっちょうしょ市井しせい店舗てんぽ)を言葉ことばとして鍵屋かぎや(かぎや)という呼称こしょう使つかわれることもあるが、これは現在げんざいでは地名ちめい[15]花火はなび屋号やごう由来ゆらいする花火はなびときのかけごえ[16]流用りゅうようされることおおくなったため、現在げんざいでは職業しょくぎょうして使つかわれることはまれである。

錠前じょうまえおよびかぎは、ほとんどのくにではせんもん養成ようせい過程かてい学校がっこう専門せんもん学校がっこう工業こうぎょうけい大学だいがくなど)ないしは、錠前じょうまえメーカーにおける職業しょくぎょう研修けんしゅうけたうえでなるものとされている。

日本にっぽん場合ばあいにおいてはかく錠前じょうまえメーカーのほか日本にっぽんかぎ協会きょうかいにおいて専門せんもん技能ぎのうしゃ養成ようせいされており、技能ぎのう保持ほじしゃけに検定けんてい試験しけん資格しかく試験しけん)が実施じっしされている。また日本にっぽんでは「錠前じょうまえ」「かぎ」のりょうかたり日本にっぽんかぎ協会きょうかい登録とうろく商標しょうひょうとされている。[14]

アメリカではかぎ資格しかくせいであり業務ぎょうむさいはジャケットを着用ちゃくようすることになっている[1]

著名ちょめい錠前じょうまえ

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  • ロバート・バロン - 1778ねん、ダブルアクションしきタンブラーじょう特許とっきょ取得しゅとく近代きんだいてき錠前じょうまえ改良かいりょうがここからはじまった。
  • ジョゼフ・ブラマ - 1784ねん、safety lock の特許とっきょ取得しゅとく。しばらくやぶれない錠前じょうまえとされていたが、67ねんA.C. Hobbs が50時間じかん以上いじょうかけてやぶった。
  • ジェレミア・チャブ - 1818ねん改良かいりょうばんレバータンブラーじょう (en) の特許とっきょ取得しゅとく対応たいおうするかぎでしかけられない錠前じょうまえ発明はつめいしたということで、政府せいふから賞金しょうきん授与じゅよされた。
  • ライナス・エール・シニア - 1848ねんピンタンブラーじょう発明はつめい
  • ジェームズ・サージェント - 1857ねん番号ばんごう変更へんこう可能かのうダイヤルじょうについてはじめて記述きじゅつした。金庫きんこでよく使つかわれるようになり、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく財務省ざいむしょうもこれを採用さいようした。1873ねん時限じげんじょう特許とっきょ取得しゅとく試作しさくひん当時とうじ銀行ぎんこう金庫きんこしつ使つかわれた。
  • ライナス・エール・ジュニア - 1861ねんちち錠前じょうまえ改良かいりょう。ピンタンブラーじょう現在げんざいられるようなかたちにした。また1862ねんにはダイヤルじょう改良かいりょうしている。
  • サミュエル・シーゲル - 1916ねんバールでこじけられない錠前じょうまえ発明はつめい
  • ハリー・ゾレフ - 1921ねんMaster Lock しゃ創業そうぎょう。1924ねん改良かいりょうばん南京錠なんきんじょう特許とっきょ取得しゅとく。ゾレフは日本にっぽんきで、錠前じょうまえを "joumae" とんでいた。

脚注きゃくちゅう出典しゅってん

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  1. ^ a b c d e f g h i j 精密せいみつこう学会がっかい学生がくせい編集へんしゅう委員いいんWG0「かぎじょう技術ぎじゅつかいじょう精密せいみつこう学会がっかい2007ねん1がつごう (PDF) 精密せいみつこう学会がっかい学生がくせい編集へんしゅう委員いいんWG0、2020ねん8がつ26にち閲覧えつらん
  2. ^ Schlage's History of Locks!
  3. ^ "Old Locks Show Skill Of Craftsmen" Popular Science, September 1937
  4. ^ Pulford 2007, p. 33
  5. ^ Pulford 2007, p. 173
  6. ^ Pulford 2007, p. 317
  7. ^ a b 電気でんきじょう - 美和みわロック
  8. ^ スマホでひらけじょうできる電子でんしロック「danalock」 - ケータイ Watch
  9. ^ 電磁でんじしき電気でんきじょう - ロックマンジャパン
  10. ^ 電磁でんじロック (PDF) - 美和みわロック
  11. ^ マグネットじょう - 竹中たけなかエンジニアリング
  12. ^ a b 電子でんしじょう種類しゅるい特徴とくちょう防犯ぼうはん効果こうか - トップマイスター
  13. ^ 電気でんきじょうかんする注意ちゅうい事項じこう - 美和みわロック
  14. ^ a b かぎとは(日本にっぽんかぎ協会きょうかい)より
  15. ^ 鍵屋かぎやえき鍵屋かぎやつじ決闘けっとうなどを参照さんしょう
  16. ^ 玉屋たまや花火はなびなどを参照さんしょう

参考さんこう文献ぶんけん

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  • Phillips, Bill. (2005). The Complete Book of Locks and Locksmithing. McGraw-Hill. ISBN 0-07-144829-2.
  • Pulford, Graham W. (2007), High-Security Mechanical Locks : An Encyclopedic Reference, Elsevier, ISBN 0-7506-8437-2 
  • Alth, Max (1972). All About Locks and Locksmithing. Penguin. ISBN 0-8015-0151-2
  • Robinson, Robert L. (1973). Complete Course in Professional Locksmithing Nelson-Hall. ISBN 0-911012-15-X

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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