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顔面神経 - Wikipedia

顔面がんめん神経しんけい(がんめんしんけい、facial nerve)は、12ある脳神経のうしんけいひとつでだいなな脳神経のうしんけい(CNVII)ともばれる。

顔面がんめん神経しんけい
脳神経のうしんけい
だいI脳神経のうしんけい神経しんけい
だいII脳神経のうしんけい視神経ししんけい
だいIII脳神経のうしんけいどう神経しんけい
だいIV脳神経のうしんけい滑車かっしゃ神経しんけい
だいV脳神経のうしんけい三叉みつまた神経しんけい
だいVI脳神経のうしんけいそとてん神経しんけい
だいVII脳神経のうしんけい顔面がんめん神経しんけい
だいVIII脳神経のうしんけい内耳ないじ神経しんけい
だいIX脳神経のうしんけいしたのど神経しんけい
だいX脳神経のうしんけい迷走めいそう神経しんけい
だいXI脳神経のうしんけいふく神経しんけい
だいXII脳神経のうしんけいした神経しんけい

概説がいせつ

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狭義きょうぎ顔面がんめん神経しんけいは、顔面がんめん分布ぶんぷぬしとして表情ひょうじょうすじ運動うんどう支配しはいする。この神経しんけい内耳ないじ神経しんけいあいだ中間ちゅうかん神経しんけいばれる神経しんけいがあり、広義こうぎにはこれをふくめて顔面がんめん神経しんけいぶ。内耳ないじ神経しんけい一緒いっしょがわ頭骨とうこつきりたいつらぬき、さらに単独たんどく顔面がんめん神経しんけいかんというゆみじょうほねかんとおり、くきちち突孔からてきて顔面がんめん全体ぜんたい分岐ぶんきする。顔面がんめん神経しんけいかんとお途中とちゅうから涙腺るいせん唾液腺だえきせん分泌ぶんぴつ味覚みかくした前部ぜんぶ3ぶんの2)などに関係かんけいするえだほね細管さいかんとお関連かんれんする神経しんけいぶしした神経しんけいなどにはいっていく。顔面がんめん神経しんけい神経しんけい線維せんいには4種類しゅるいあり、特殊とくしゅ内臓ないぞう遠心えんしんせい線維せんい(special visceral efferent fiber, SVE) 、一般いっぱん内臓ないぞう遠心えんしんせい線維せんい (general visceral efferent fiber, GVE) 、特殊とくしゅ内臓ないぞう求心きゅうしんせい線維せんい (special visceral afferent fiber, SVA) 、一般いっぱんからだせい求心きゅうしんせい線維せんい (general somatic afferent fiber, GSA) とばれる。

特殊とくしゅ内臓ないぞう遠心えんしんせい線維せんい

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運動うんどう神経しんけい線維せんいであり、表情ひょうじょうすじこう頸筋ほおすじアブミこつすじあご腹筋ふっきん後腹あとばらなどを支配しはいする。この神経しんけい線維せんい細胞さいぼうたいはしがわにある顔面がんめん神経しんけい運動うんどうかく存在そんざいする。顔面がんめん神経しんけい運動うんどうかくはさらに内側うちがわかくはら内側うちがわかく中間ちゅうかんかく外側そとがわかくけられ、それぞれことなるすじぐん支配しはいしている。内側うちがわかくからの線維せんいこうみみかい神経しんけいとなってみみかいすじこうあたますじ前頭まえがしらあたますじ一部いちぶ)を支配しはいする。はら内側うちがわかくから繊維せんい顔面がんめん神経しんけい頸枝としてこう頸筋支配しはいしている。内側うちがわかくなかにはアブミこつすじ支配しはいするものもあるとかんがえられている。顔面がんめん神経しんけいがわあたまえだ頬骨ほおぼねえだ中間ちゅうかんかくから前頭まえがしらすじ前頭まえがしらあたますじ一部いちぶ)とすじしわまゆすじおよび頬骨ほおぼねすじ支配しはいする。外側そとがわかくからの線維せんい顔面がんめん神経しんけいほおえだとなってほおすじほおくちびるすじ支配しはいしている。動物どうぶつ比較ひかくすると、ヒトの顔面がんめん神経しんけい運動うんどうかくではほおくちびるすじ支配しはいする外側そとがわかく顕著けんちょ発達はったつしており、一方いっぽう内側うちがわかくぐんはかなりちいさくなっている。

 
くきちち突孔のち特殊とくしゅ内臓ないぞう遠心えんしんせい線維せんい運動うんどう線維せんい)の分布ぶんぷ

これらの遠心えんしんせい線維せんい顔面がんめん神経しんけい運動うんどうかくからてまずだいよんのうしつ底面ていめんのある内側うちがわかう。正中せいちゅうはし内側うちがわたてたばとやや外側そとがわにあるそとてん神経しんけいかくあいだとおり、そとてん神経しんけいかくめぐるように鋭角えいかくがる(ここがだいよんのうしつそこ顔面がんめん神経しんけいおか直下ちょっかである)。ここからはら外側そとがわかい、三叉みつまた神経しんけい脊髄せきずい内側うちがわうえオリーブかく外側そとがわとおり、はしさいがわ小脳しょうのうきょうかくばれる)で脳幹のうかんからそとる。そとてん神経しんけいめぐるループのこと運動うんどう神経しんけいないひざ (internal genu of facial nerve) という。末梢まっしょう繊維せんい顔面がんめん神経しんけいかんはいって顔面がんめん神経しんけいがいひざがり、はじめ外側そとがわ走行そうこうしたのちしたぎょうする。顔面がんめん神経しんけいかんなかでアブミこつすじへのえだぶんえだし、くきちち突孔から顔面がんめんてそれぞれの支配しはいすじへとぶんえだする。

顔面がんめん神経しんけい運動うんどうかくへの投射とうしゃには以下いかのようなものがある。三叉みつまた神経しんけい脊髄せきずいかくからのせいニューロン、これは角膜かくまく反射はんしゃなどの三叉みつまた神経しんけい顔面がんめん反射はんしゃにかかわる。皮質ひしつ延髄えんずいからの直接ちょくせつ投射とうしゃ、これは左右さゆう両側りょうがわせい投射とうしゃする。皮質ひしつ延髄えんずいからあみさまたい経由けいゆした間接かんせつ投射とうしゃ存在そんざいする。交叉こうさせいあかかく延髄えんずいからの投射とうしゃ内側うちがわかく中間なかまかく(すなわち上部じょうぶ顔面がんめんすじ支配しはいする部位ぶい)にのみ投射とうしゃしている。ちゅうのうあみさまたいからもどうがわせい投射とうしゃがある。聴神経ちょうしんけいあるいはさんニューロン顔面がんめん神経しんけいかく投射とうしゃするとかんがえられている。これは聴性顔面がんめん神経しんけい反射はんしゃ突然とつぜんおおきなおといたときにをつぶったり、アブミこつすじ収縮しゅうしゅくしてみみ小骨こぼね振動しんどう抑制よくせいする反射はんしゃ)に関係かんけいしている。

 
中耳ちゅうじ内耳ないじ構造こうぞう運動うんどう神経しんけい内耳ないじ神経しんけい
1.前庭ぜんてい神経しんけい
2.蝸牛かぎゅう神経しんけい
3.顔面がんめん神経しんけい
4.ひざ神経しんけいぶし顔面がんめん神経しんけいがいひざ
5.つづみさく神経しんけい
6.蝸牛かぎゅうかん
7.はんぶんまわしかん
8.つちこつ
9.鼓膜こまく
10.みみかんユースタキーかん

中間ちゅうかん神経しんけい

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小脳しょうのうきょうかくから狭義きょうぎ顔面がんめん神経しんけい内耳ないじ神経しんけい(より正確せいかくには前庭ぜんてい神経しんけい)のあいだ走行そうこうして末梢まっしょうてくる。この神経しんけいはSVA、GSA、GVEのかく繊維せんいふくんでいる。SVA・GSAのかく求心きゅうしんせい神経しんけい線維せんいひざ神経しんけいぶし (geniculate ganglion) に神経しんけい細胞さいぼうたいつ。

特殊とくしゅ内臓ないぞう求心きゅうしんせい線維せんい (SVA)

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SVAはしたぜん3ぶんの2からの味覚みかくつづみさく神経しんけい (chorda tympani nerve) をとおって伝達でんたつする(うしろ3ぶんの1についてはしたのど神経しんけい支配しはい)。中枢ちゅうすうでこの線維せんい延髄えんずいたばかく (solitary nucleus、味覚みかく中枢ちゅうすうともばれる) に投射とうしゃする。

一般いっぱんからだせい求心きゅうしんせい線維せんい (GSA)

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GSAは外耳がいじどうみみかいみみうし部分ぶぶんおもてざい感覚かんかく伝達でんたつする。中枢ちゅうすうでは三叉みつまた神経しんけい脊髄せきずいかく投射とうしゃする。

一般いっぱん内臓ないぞう遠心えんしんせい線維せんい (GVE)

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ふく交感こうかん線維せんいである。はし外側そとがわあみさまたい散在さんざいするアセチルコリン作動さどうせいニューロンからなるうえ唾液だえきかくからる。このニューロンぐんはしから延髄えんずいまでつづいており、延髄えんずいではしも唾液だえきかくしたのど神経しんけいかく)や迷走めいそう神経しんけいがわ運動うんどうかくにつながっている。ふく交感こうかんぶしぜん線維せんい末梢まっしょうると顔面がんめん神経しんけいがいひざ近傍きんぼうふたつに分岐ぶんきする。一方いっぽうだいきりたい神経しんけいとなってつばさ口蓋こうがい神経しんけいぶしたっする。他方たほう顔面がんめん神経しんけい管内かんない顔面がんめん神経しんけいから分岐ぶんきしてつづみさく神経しんけいとなり、した神経しんけい三叉みつまた神経しんけいだいIIIえだしもあご神経しんけいのさらにえだ神経しんけい)のえだとしてあご神経しんけいぶしたっする。かく神経しんけいぶしふし線維せんいシナプス形成けいせいし、ふし線維せんいつばさ口蓋こうがい神経しんけいぶしから涙腺るいせんはな粘膜ねんまく口腔こうくう粘膜ねんまく分泌ぶんぴつおよび血管けっかん作動さどう線維せんいになる。またあご神経しんけいぶしからのふし線維せんいは、あごせんおよびしたせんたっする(よりくわしい機能きのうについては自律じりつ神経しんけいけい参照さんしょう)。

 
顔面がんめん神経しんけい走行そうこう

顔面がんめん神経しんけい障害しょうがい

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別名べつめい顔面がんめん神経しんけい麻痺まひがんめんしんけいまひ)。末梢まっしょうせい顔面がんめん神経しんけい麻痺まひ病変びょうへん部位ぶいによって顔面がんめんすじ運動うんどう麻痺まひ知覚ちかく障害しょうがい自律じりつ神経しんけい障害しょうがいなどをこす。

  1. つづみさく神経しんけい分岐ぶんきより末梢まっしょうくきちち突孔付近ふきんでの病変びょうへんでは顔面がんめん神経しんけい運動うんどうえだ完全かんぜん麻痺まひきる。病変びょうへんのあるがわで、がくのしわせができない、をつぶれない、をむけない、くちがすぼめない、またきれがひろがる、はなくちびるみぞくちびるほおあいだにあるみぞ)があさくなる、口角こうかくがるなどの症状しょうじょうられる。患側では角膜かくまく反射はんしゃ消失しょうしつするが、角膜かくまく感覚かんかくたもたれる(感覚かんかく三叉みつまた神経しんけい支配しはいのため)。
  2. ひざ神経しんけいぶしよりも末梢まっしょうつづみさく神経しんけい分岐ぶんきよりも中枢ちゅうすうがわ病変びょうへんがあると、上記じょうき症状しょうじょうくわえてしたぜん3ぶんの2の味覚みかく障害しょうがいされ、あごせんおよびしたせん分泌ぶんぴつ障害しょうがい聴覚ちょうかく過敏かびんこる。聴覚ちょうかく過敏かびんは、アブミこつすじ麻痺まひによってみみ小骨こぼね振動しんどう抑制よくせいできなくなり、患側で異常いじょうおおきなおとこえる。
  3. ひざ神経しんけいぶしよりも中枢ちゅうすうがわ病変びょうへんがあると上記じょうきのすべての症状しょうじょうくわえ、涙腺るいせん分泌ぶんぴつ障害しょうがいこる。この部分ぶぶん完全かんぜん麻痺まひこると、したぜん3ぶんの2の味覚みかく永久えいきゅううしなわれることがある。SVA線維せんい再生さいせいできないためである。一方いっぽうふく交感こうかんぶしぜん線維せんい再生さいせいするが、そのさいしばしばあやまった再生さいせいをすることがある。障害しょうがいまえあご神経しんけいぶしかっていた線維せんいつばさ口蓋こうがい神経しんけいぶしかって再生さいせいすることがある。この結果けっか食事しょくじなどの唾液腺だえきせん刺激しげきたいしてなみだてしまう現象げんしょうがある(ワニのなみだ症候群しょうこうぐん)。ひざ神経しんけいぶし水痘すいとう帯状疱疹たいじょうほうしんウイルスによっておかされるラムゼイ・ハント症候群しょうこうぐんでは、みみつう外耳がいじどうみみかい水疱すいほう形成けいせいつづいて上記じょうきのような症状しょうじょうあらわれる。

特発とくはつせい末梢まっしょうせい顔面がんめん神経しんけい麻痺まひベル麻痺まひ運動うんどう成分せいぶんのみが麻痺まひする疾患しっかん)の病因びょういんはほとんどわかっていないが、顔面がんめん神経しんけい管内かんないでのなんらかの原因げんいんによる神経しんけい腫脹しゅちょうによるものとかんがえられている。

中枢ちゅうすうせい顔面がんめん神経しんけい麻痺まひは、皮質ひしつ延髄えんずい皮質ひしつもうさまたいなど上位じょうい運動うんどうニューロン病変びょうへんこる。中枢ちゅうすうせい末梢まっしょうせい顔面がんめん神経しんけい麻痺まひ最大さいだい鑑別かんべつてんは、中枢ちゅうすうせい場合ばあいがくのしわせが保持ほじでき、すじ麻痺まひ程度ていどかるいことである。これは顔面がんめん神経しんけいのうち顔面がんめんうえ半分はんぶん表情ひょうじょうすじだけは両側りょうがわ大脳皮質だいのうひしつ支配しはいされているため、いちがわ中枢ちゅうすう病変びょうへんがあっても麻痺まひこらないのである。そのため、顔面がんめん神経しんけい麻痺まひがある場合ばあいがくのしわせができなければ、鑑別かんべつ診断しんだんなかから、大脳だいのうおよびちゅうのうにおけるのう梗塞こうそくなどののう血管けっかん障害しょうがいはまず除外じょがいしてよいことになるが、小脳しょうのうきょうかくから顔面がんめん神経しんけい運動うんどうかくいたるまでのあいだのう血管けっかん障害しょうがいきた場合ばあいは、小脳しょうのうきょうかくひざ神経しんけいぶしよりも中枢ちゅうすうがわ位置いちするため、がくのしわせができなくなるうえに、前述ぜんじゅつしたような末梢まっしょうせい顔面がんめん神経しんけい麻痺まひ種々しゅじゅ症状しょうじょう発現はつげんる。ただし、この場合ばあいはウイルス感染かんせんではないため、ラムゼイ・ハント症候群しょうこうぐんにみられる外耳がいじどうみみかい水疱すいほう形成けいせいしょうじない。また顔面がんめん神経しんけいには情動じょうどうせい支配しはいというものがあり、経路けいろ未知みちであるが運動うんどうとはべつ中枢ちゅうすうにも支配しはいされているため、皮質ひしつ延髄えんずい途中とちゅう病変びょうへんがある場合ばあいでも感情かんじょうてき刺激しげきには反応はんのうしてけんがわおなじように表情ひょうじょうすじうごかせることがある。

関連かんれん項目こうもく

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参考さんこう文献ぶんけん

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  • Parent, André, Carpenter's human neuroanatomy, 9th ed. Media: Williams & Wilkins, 1996, pp.495-498. ISBN 0683067524
  • 田崎たさき斎藤さいとうちょ坂井さかい改訂かいてい『ベッドサイドの神経しんけいかた』改訂かいてい16はん南山みなみやまどう、2004ねん ISBN 9784525247164

外部がいぶリンク

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