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鼈甲 - Wikipedia

鼈甲べっこう

タイマイの甲羅こうら加工かこうひん

鼈甲べっこう(べっこう、べっこう)は、熱帯ねったいウミガメ一種いっしゅタイマイ甲羅こうら加工かこうひんで、はらかぶと構成こうせいするさい外層がいそう角質かくしつからなるうろこばんを10まい程度ていどがしてられる。いろはん透明とうめいで、あかみをびた黄色きいろ褐色かっしょく斑点はんてんがある。日本にっぽんでは黄色おうしょく部分ぶぶんおおいほど価値かちたかく、西洋せいようでは褐色かっしょく部分ぶぶんおおいほど価値かちたかい(後述こうじゅつ)。

南洋なんよう諸島しょとう鼈甲べっこう祭器さいき

工芸こうげいひん素材そざい使つかわれる。希少きしょう価値かちのほか、プラスチックとはことなるかる質感しつかんもとめて鼈甲べっこう製品せいひん購入こうにゅうする客層きゃくそうあつい。

鼈甲べっこう

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すっぽん」とはスッポンのことである。「鼈甲べっこう」も本来ほんらいはスッポンのかぶとのことで、タイマイのかぶと意味いみ国訓こっくんである[1]

本来ほんらい鼈甲べっこうすなわちスッポンのかぶとは、「鼈甲べっこう」(どべっこう)ともいい、漢方薬かんぽうやく使つかわれる。スッポンのかぶと上層じょうそううろこばん下層かそう甲板かんぱんのみからなるため、じつは(タイマイの)鼈甲べっこうあいどう部分ぶぶんではない。

英語えいごtortoiseshellは、字義じぎどおりには「りくひさし(tortoise)のかぶと(shell)」でありタイマイを意味いみするかたりもとふくまない(カメ#英語えいご参照さんしょう)が、鼈甲べっこう特定とくていてき意味いみする[2]。また、ねこ意味いみもある。

鼈甲べっこう細工ざいく

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フランスの家具かぐ職人しょくにんアンドレ・シャルル・ブール英語えいごばんしたブールワーク英語えいごばん

鼈甲べっこう加工かこうしてつく鼈甲べっこう細工ざいく歴史れきしはかなりふるく、中国ちゅうごくされた技術ぎじゅつで6世紀せいきまつごろから製作せいさくされている。日本にっぽんには飛鳥あすか時代ときよころ伝来でんらいせいくらいんにもおさめられている。 17世紀せいき以降いこう長崎ながさき貿易ぼうえき唐船とうせんやオランダせんから鼈甲べっこう材料ざいりょう加工かこう技術ぎじゅつ伝来でんらいしたことで国内こくない生産せいさんはじまり、「長崎ながさきべっこう」がまれた。大阪おおさかから江戸えどにもつたわり、今日きょうではさんだい産地さんちとして「長崎ながさきべっこう」「なにわべっこう」「江戸えどべっこう」がある。

鼈甲べっこう細工ざいくは、鼈甲べっこう素地そじねつもちいて圧着あっちゃくすることで、まずいたじょう加工かこうベースをつくり、さらにそこから細工ざいくすることでかく製品せいひんへと仕上しあげられる。ベースには圧着あっちゃく部位ぶいによって白甲はっこう(しろこう)、くろかぶと(くろこう)、オレンジかぶとバラフかぶと(ばらふ:はん)、トロかぶと、などとばれる色目いろめ種別しゅべつがあるが、これは古来こらいより繊細せんさい加工かこうけた日本にっぽん顕著けんちょなもので、海外かいがい加工かこうではここまでおお明確めいかく色目いろめ種別しゅべつはあまりみられない。それらかく色目いろめをさらに様々さまざまわせて圧着あっちゃく図柄ずがらしたり、ときには象嵌ぞうがん蒔絵まきえほどこされることもある(実例じつれい画像がぞう参照さんしょう)。単色たんしょく製品せいひん場合ばあい日本にっぽんでは黄色きいろとお白甲はっこうおも珍重ちんちょうされている。なお、一般いっぱんてきばれるさいのいわゆる鼈甲べっこうがら後述こうじゅつ)は、バラフおよびトロかぶとにイメージされることがおおい。

江戸えど時代じだいには眼鏡めがねのフレーム(徳川とくがわ家康いえやす眼鏡めがね有名ゆうめい)、くしかんざしおびめ、ブローチボタンなどに加工かこうされて普及ふきゅうした。現代げんだいではこうした装飾そうしょくひん大半たいはんはプラスチック素材そざいわっているが、むかしながらの「鼈甲べっこうがら」がされていることもおおい。

鼈甲べっこう製品せいひんあせ整髪せいはつりょうよわいため、とく人体じんたいれてもちいる小物こものるい使用しようは、こまめにそらきする手間てまようする。しかし鼈甲べっこう天然てんねんタンパク質たんぱくしつであり、ひと体温たいおんによって微妙びみょう変形へんけいする性質せいしつがあるため、たとえば眼鏡めがねフレームの場合ばあいはな部分ぶぶんけたひとかたちにフィットし、あせれてもずりちにくいという特性とくせいから、高価こうかながらも鼈甲べっこうせい眼鏡めがね重宝ちょうほうするひとおおい。鼈甲べっこうのかんざしがいとされているのも同様どうように、かみしたさいずりちにくいためである。

鼈甲べっこう男性だんせい女性じょせいしたせい所謂いわゆるちょうかたち」)の材料ざいりょうとしても利用りようされた(鼈甲べっこうせいはりがた画像がぞう)。鼈甲べっこう非常ひじょう高価こうか素材そざいだったが、ひろし1741ねん)のころ水牛すいぎゅうかくなどによる精巧せいこう廉価れんか模造もぞうひん登場とうじょうし、「たりのカンザシ」などとばれた[3][4]

タイマイの取引とりひき制限せいげんによる影響えいきょう

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絶滅ぜつめつのおそれのある野生やせい動植物どうしょくぶつたね国際こくさい取引とりひきかんする条約じょうやく(ワシントン条約じょうやく)によって、タイマイの商業しょうぎょう取引とりひき禁止きんしされている[5]

日本にっぽんは、1980ねん昭和しょうわ55ねん11月4にちにワシントン条約じょうやく締約ていやくこくとなったが、国内こくない産業さんぎょう保護ほご理由りゆうから、タイマイなどについては留保りゅうほしていた[5]。その業界ぎょうかい努力どりょくにより受諾じゅだく準備じゅんびすすめられ、1994ねん平成へいせい6ねん)7がつ31にちにタイマイの留保りゅうほ撤回てっかいおこなわれた[5]

加工かこう業者ぎょうしゃは、禁止きんしまえ原料げんりょう在庫ざいこ確保かくほしていたり、はしざい有効ゆうこう利用りようすることで対応たいおうしている。

一方いっぽうキューバでは、タイマイを食用しょくようとして捕獲ほかくしており、国家こっか管理かんりすうトンの鼈甲べっこう原料げんりょう保管ほかんしており、一定いってい管理かんりきながら甲羅こうら輸出ゆしゅつみとめる提案ていあんおこなったことがある。キューバがタイマイ取引とりひき再開さいかいあんはじめて提出ていしゅつしたのは、1997ねんのワシントン条約じょうやくだい10かい締結ていけつこく会議かいぎである[6]2000ねんのワシントン条約じょうやくだい11かい締結ていけつこく会議かいぎでは提案ていあん否決ひけつされたものの4ひょう僅差きんさであった[6]2002ねんのワシントン条約じょうやくだい12かい締結ていけつこく会議かいぎでも、キューバはタイマイ取引とりひき再開さいかいあん提案ていあんしたが、提案ていあん撤回てっかいしている[6]2005ねん会議かいぎでは、キューバは方針ほうしん転換てんかん議案ぎあんげたため貿易ぼうえき再開さいかいみちざされた。

偽物にせもの

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高価こうかなものであったため、江戸えど時代じだいには奢侈しゃし禁止きんしれいにて禁止きんしれいされた[7]江戸えど時代じだいも、上記じょうき説明せつめいがあるように絶滅ぜつめつのおそれのある野生やせい動植物どうしょくぶつたね国際こくさい取引とりひきかんする条約じょうやく(ワシントン条約じょうやく)によって商業しょうぎょう取引とりひき禁止きんしされている。そのため、それにわる製品せいひんつくられることとなったが、それと同時どうじ偽物にせもの本物ほんもの識別しきべつする方法ほうほう開発かいはつされた[8]

べっこう樹脂じゅし忠実ちゅうじつ再現さいげんできる[8]。また、プラスティックなどの樹脂じゅしができるまえは、うしかくうまの蹄、タイマイ以外いがいの(スッポンなどの)甲羅こうらからつくられたかぶとなどが安価あんかだい用品ようひんとされた[9][7]

脚注きゃくちゅう

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関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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