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角質 - Wikipedia

角質かくしつ(かくしつ)とは、かたタンパク質たんぱくしつ一種いっしゅであるケラチン別称べっしょう皮膚ひふバリア機能きのうにな角質かくしつからなる構造こうぞうは、かくそう、または角質かくしつそう、または角質かくしつ細胞さいぼうそうばれる。

  角質かくしつそう(Stratum corneum)
つづいてしたへ、顆粒かりゅう細胞さいぼうそうゆうとげ細胞さいぼうそう基底きてい細胞さいぼうそうなど。
  真皮しんぴ(Dermis)

ケラチン自体じたい上皮じょうひ細胞さいぼう中間ちゅうかんみちフィラメント構成こうせいするタンパク質たんぱくしつであるため、動物どうぶつそと胚葉はいよううち胚葉はいようわず上皮じょうひ細胞さいぼう普遍ふへんてきられる。脊椎動物せきついどうぶつ四足しそくるい、つまり両生類りょうせいるい爬虫類はちゅうるい鳥類ちょうるい哺乳類ほにゅうるいでは表皮ひょうひ細胞さいぼう内部ないぶにこれを蓄積ちくせきして死滅しめつし、角質かくしつという現象げんしょうこすことで、強靭きょうじん集合しゅうごうたい形成けいせいする。これらの動物どうぶつでは皮膚ひふ表皮ひょうひ角質かくしつとくいちじるしくなって形成けいせいされた強固きょうこ器官きかんつことがおおい。たとえば鳥類ちょうるいカメなどのくちばし、爬虫類はちゅうるい魚類ぎょるいなどの表皮ひょうひ由来ゆらいうろこ哺乳類ほにゅうるいかくなかでもウシにみられるようなほらかくかくさや部分ぶぶんや、サイかく全体ぜんたい角質かくしつからなる。そもそもケラチンとは「かく物質ぶっしつ」を意味いみし、角質かくしつはその訳語やくごである。ただし、ケラチンは上述じょうじゅつのように角質かくしつしない上皮じょうひ組織そしきにもふくまれて細胞さいぼう骨格こっかくとして機能きのうしており、こうした角質かくしつしていない組織そしきにおけるケラチンを日本語にほんご角質かくしつぶことはまずない。

皮膚ひふとく表皮ひょうひ皮膚ひふバリア機能きのうたしており、とく表皮ひょうひがバリアとなり、表皮ひょうひもっと外側そとがわでは角質かくしつ細胞さいぼうそう角質かくしつそうかくそうとも)をつよ構成こうせいしている[1]角質かくしつそうは、レンガにたとえられる角質かくしつ細胞さいぼうと、セメントにたとえられる細胞さいぼうあいだ脂質ししつでできたかべのようなものでラメラ構造こうぞうとなっており、皮膚ひふバリア機能きのう角質かくしつそう完全かんぜんせいによってたもたれている[2]

角質かくしつそう構成こうせいは、角質かくしつ細胞さいぼう脂質ししつ角質かくしつ細胞さいぼうあいだ脂質ししつ)、天然てんねん保湿ほしつ因子いんしがれた角質かくしつへんである[3]角質かくしつ細胞さいぼうない天然てんねん保湿ほしつ因子いんしは、半分はんぶんかく細胞さいぼうからのフィラグリン由来ゆらいするアミノ酸あみのさんであり、乳酸にゅうさん尿素にょうそ塩化えんかしたもので、角質かくしつ細胞さいぼうみずすると弾性だんせい[3]角質かくしつへんとなりがれるさいに、接着せっちゃくまだら加水かすい分解ぶんかいされるため、水分すいぶんすくなければ効果こうかてきがれなくなる[3]保湿ほしつざいは、水分すいぶん保持ほじしたり、水分すいぶん損失そんしつ減少げんしょうさせるためにもちいられ、そのことで接着せっちゃくまだら分解ぶんかいうながされ角質かくしつ細胞さいぼう蓄積ちくせき防止ぼうしする[3]

角質かくしつ細胞さいぼうあいだ脂質ししつはセラミドやく46%、遊離ゆうりコレステロールやく26%、遊離ゆうり脂肪酸しぼうさんやく13%、コレステロール硫酸りゅうさんやく4%[1]おも遊離ゆうり脂肪酸しぼうさん内訳うちわけは、リグノセリンさん25%、ベヘンさん15%、パルミチンさん10%、ステアリンさん10%、ヘキサコサンさん10%[2]。セラミドや細胞さいぼうあいだ脂質ししつ水分すいぶんがラメラ構造こうぞうをとって水分すいぶん保持ほじしており、さらに皮脂ひし表面ひょうめんおおうことで、水分すいぶん蒸散じょうさんふせいでいる[4]アトピーせい皮膚ひふえんでは、以前いぜんはアレルギーだとかんがえられたが、セラミドの減少げんしょうによって皮膚ひふバリア機能きのう異常いじょうしょうじているとかんがえられ、保湿ほしつざい使用しよう重要じゅうようだと認識にんしきされるようになった[5]

リノールさん皮膚ひふバリア機能きのう形成けいせい修復しゅうふくするが、オレインさんえると角質かくしつそう脂質ししつ構造こうぞうみだしバリア構造こうぞう悪化あっかさせうる[3]。オレインさん皮膚ひふバリア機能きのう破壊はかい連続れんぞくてき皮膚ひふることで皮膚ひふえんをおこし、オレインさんおおほう皮膚ひふ透過とうかせい増加ぞうかさせるため皮膚ひふ透過とうかせいおおきいじゅんオリおりブ油ぶゆヤシグレープシードオイルアボカドとなった[2]

高齢こうれいでは角質かくしつそう水分すいぶんりょう若年じゃくねんしゃ半分はんぶんであり、皮脂ひし角質かくしつ細胞さいぼうあいだ脂質ししつ減少げんしょうしており、天然てんねん保湿ほしつ因子いんし減少げんしょうし、かくそうそうすう若年じゃくねんしゃより4わり増加ぞうかあつ堆積たいせきしている[6]

冬場ふゆば角質かくしつ水分すいぶんりょう低下ていかするが、pH9のアルカリ性あるかりせい界面かいめん活性かっせいざい洗浄せんじょうざい)は水分すいぶんりょう減少げんしょうさせ、細胞さいぼうあいだ脂質ししつおおのぞかれ、pH5の弱酸じゃくさんせいではそうした影響えいきょうすくない[6]皮膚ひふ乾燥かんそうしやすいひとが、なつおなじようにふゆからだあらうと乾燥かんそう助長じょちょうするため、あぶらぎっていない部位ぶい連日れんじつあらわないようにすることで調整ちょうせいすることができる[6]

美容びよううえ顔面がんめんはだ過剰かじょう角質かくしつのぞくことによってうるおいのあるはだになるとわれており、角質かくしつケアのための化粧けしょうひんおお販売はんばいされている。ひじひざかかと角質かくしつケア商品しょうひんおお存在そんざいする。

けいがわ吸収きゅうしゅうされやすい薬剤やくざい特徴とくちょう

編集へんしゅう

角質かくしつそうがバリアとなっているため[7]かくそうした細胞さいぼう生体せいたい内部ないぶ薬剤やくざい吸収きゅうしゅうさせるにはこれを突破とっぱしなければならない。

角質かくしつそう透過とうかしやすい薬剤やくざい特徴とくちょうとしてつぎのものがげられる。

  1. てい分子ぶんしりょう(〜500以下いかけいがわからの吸収きゅうしゅうてきしているのは分子ぶんしりょう500以下いか物質ぶっしつである[8]分子ぶんしりょう1000にもなると角質かくしつをほとんど通過つうかできない[8]
  2. 適度てきどあぶら溶性ようせいあぶらすい分配ぶんぱい係数けいすうが1~4(理想りそうは2~3))[9]ː角質かくしつそうあぶら溶性ようせいたか物質ぶっしつおおいため[8]外部がいぶから角質かくしつそうはいるにはあぶら溶性ようせい必要ひつようだが、さらにその下層かそうあぶら溶性ようせいひくいため、あまりにもあぶら溶性ようせいたかすぎると角質かくしつそうにとどまりそのした細胞さいぼうそうとどかない。ほどほどが重要じゅうよう物質ぶっしつ分子ぶんしりょうちいさい場合ばあい化学かがくてき修飾しゅうしょくおや油性ゆせいあぶら溶性ようせい)にすることで通過つうかできる[10]水溶すいようせい物質ぶっしつまった透過とうかしないわけではない。れいとしてこう濃度のうど水溶すいようせいビタミンC(アスコルビンさんナトリウム)をけいがわてき吸収きゅうしゅうさせた研究けんきゅうがある。[11]
  3. 融点ゆうてんひくい(200℃以下いか融点ゆうてんひくいほど溶解ようかいたか透過とうかしやすい。[9]

このバリアを突破とっぱして薬剤やくざい浸透しんとうさせる技術ぎじゅつに、マイクロニードル[7]てい電流でんりゅうもちいるイオン導入どうにゅう(イオントフォレシス)、ちょう音波おんぱもちいるちょう音波おんぱ導入どうにゅう(ソノフォレシス)がある[12]。また皮膚ひふ剥離はくりうながケミカルピーリングでは、サリチル酸さりちるさんマクロゴールが角質かくしつのみに作用さようするとされ、ざかさ(ニキビ)のかわ疹、しょうまだら日光にっこう黒子ぼくろじわを緩和かんわするための選択肢せんたくしである[13]尿素にょうそは10%まで皮膚ひふ保湿ほしつざいとして、それ以上いじょう皮膚ひふ角質かくしつ融解ゆうかい作用さようしめ[14]

バリアせい低下ていか

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健常けんじょう皮膚ひふかくそうにより保護ほごされているため、食物しょくもつタンパク質たんぱくしつ容易ようい皮膚ひふない侵入しんにゅうすることはない。しかし、内因ないいんせいとしてはフィラグリンなどの遺伝子いでんし異常いじょう外因がいいんせいとしては化粧けしょうひん石鹸せっけんふくまれる界面かいめん活性かっせいざい皮膚ひふバリアせい低下ていか影響えいきょうするとかんがえられる。

アレルギーの発症はっしょう

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通常つうじょう高分子こうぶんしりょう蛋白質たんぱくしつ角質かくしつ突破とっぱすることは容易よういではないが、ちゃのしずく石鹸せっけん事件じけんにおいてはアレルゲンとなる加水かすい分解ぶんかいコムギと界面かいめん活性かっせいざいである石鹸せっけん同時どうじ暴露ばくろされたことで角質かくしつ浸透しんとうアレルギー誘発ゆうはつしたとかんがえられる。[15]

けいがわてき摂取せっしゅによるアレルギー発症はっしょうふせぐためには、皮膚ひふ健全けんぜん状態じょうたいたもつことが重要じゅうようであるとかんがえられる。[16]

すでにアレルギーを発症はっしょうしている患者かんじゃでも湿疹しっしん皮膚ひふをコントロールすることでアレルギー症状しょうじょう軽減けいげんさせることができうるとかんがえられる。[16]

美容びよう目的もくてき角質かくしつ除去じょきょ皮膚ひふ刺激しげき炎症えんしょうこす可能かのうせいがあり、実施じっしする場合ばあい物理ぶつりてき角質かくしつ除去じょきょよりも化学かがくてき角質かくしつ除去じょきょのぞましい[17]

出典しゅってん

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  1. ^ a b 北島きたじま康雄やすお皮膚ひふバリア機能きのうとその制御せいぎょ : 表皮ひょうひ構造こうぞう観点かんてんから」『Drug delivery system』だい22かんだい4ごう、2007ねん7がつ10日とおか、424-432ぺーじdoi:10.2745/dds.22.424NAID 10019731335 
  2. ^ a b c Lin TK, Zhong L, Santiago JL (December 2017). “Anti-Inflammatory and Skin Barrier Repair Effects of Topical Application of Some Plant Oils”. Int J Mol Sci (1). doi:10.3390/ijms19010070. PMC 5796020. PMID 29280987. http://www.mdpi.com/1422-0067/19/1/70/htm. 
  3. ^ a b c d e Purnamawati S, Indrastuti N, Danarti R, Saefudin T (December 2017). “The Role of Moisturizers in Addressing Various Kinds of Dermatitis: A Review”. Clin Med Res (3-4): 75–87. doi:10.3121/cmr.2017.1363. PMC 5849435. PMID 29229630. http://www.clinmedres.org/content/15/3-4/75.full. 
  4. ^ 佐野さの友彦ともひこ岡田おかだ譲二じょうじ福田ふくだ啓一けいいち細胞さいぼうあいだ脂質ししつ構造こうぞう着目ちゃくもくした化粧けしょうひん開発かいはつ」『まくだい31かんだい5ごう、2006ねん9がつ1にち、284-286ぺーじdoi:10.5360/membrane.31.284 
  5. ^ 海老原えびはらあきら皮膚ひふバリア機能きのうからみたアトピーせい皮膚ひふえん治療ちりょう」『アレルギー』だい63かんだい6ごう、2014ねん、758-763ぺーじdoi:10.15036/arerugi.63.758NAID 110009818440 
  6. ^ a b c 向井むかい秀樹ひでき新山にいやま史朗しろう吉野よしのたかしぶしわりにおける皮膚ひふバリア機能きのう低下ていかのメカニズム」『Cosmetic stage』だい9かんだい6ごう、2015ねん8がつ、50-55ぺーじNAID 40020566930 
  7. ^ a b こう祥子さちこ岡田おかだただしたか「マイクロニードルをもちいた皮膚ひふ疾患しっかん治療ちりょう」『Drug delivery system』だい33かんだい4ごう、2018ねん9がつ、293-302ぺーじNAID 40021688591 
  8. ^ a b c 河合かわい敬一けいいちイオントフォレシスとエレクトロポレーションを併用へいようした薬物やくぶつけいがわデリバリーほう(メソポレーションほう)とその皮膚ひふてき応用おうよう」『Drug Delivery System』だい27かんだい3ごう、2012ねん、164-175ぺーじdoi:10.2745/dds.27.164NAID 130003340125 
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