鼓こ(つづみ)は、漢字かんじ文化ぶんか圏けん特有とくゆうの伝統でんとう的てきな楽器がっきのひとつで、もっとも狭義きょうぎには小鼓こつづみを指さす。砂時計すなどけい型かた、または木製もくせい、ドラム缶どらむかん型がたの胴どうの両面りょうめんに革かわを張はってこれを緒いとぐちで強つよく張はる。緒いとぐちは、能楽のうがくの世界せかいでは調しらべ緒いとぐち(しらべお)または「調しらべ」という。この緒いとぐちを締しめたり緩ゆるめたりすることで音色ねいろを調節ちょうせつしながら、一方いっぽうもしくは両方りょうほうの革かわを手てまたは桴で打うって演奏えんそうする。その形態けいたいによって小鼓こつづみ、大だい鼓こ、太鼓たいこ、羯鼓かっこなどがある。発音はつおんについては、古代こだいインドの打楽器だがっき dudubhi または dundubhi から出でたという説せつと、中国ちゅうごくの都と曇くもり鼓こ(つどんこ)の音おとから出でたという説せつがある。
鼓つづみはインドで発生はっせいし、その後ご、中国ちゅうごくで腰こし鼓こ(ようこ)、一いち鼓こ(壱いち鼓こ)(いっこ)、二に鼓こ、三さん鼓こ(三さんノ鼓こ)(さんのつづみ)、四よん鼓こ、杖つえ鼓こ(じようこ)等とうと多数たすうの種類しゅるいが発生はっせいした。これらは総そうじて細腰さいよう鼓こ(さいようこ)と呼よばれる。腰こし鼓こは腰こしに下さげる細腰さいよう鼓こで、日本にっぽんには7世紀せいき初はじめに伝つたわり、呉ご鼓こ(くれのつづみ)として伎楽ぎがくに用もちいられた。一いち鼓こ、二に鼓こ、三さん鼓こ、四よん鼓こは奈良なら時代じだいの日本にっぽんに、唐楽とうがく(とうがく)用ようとして伝つたわった。後のちに腰こし鼓こ、二に鼓こ、四よん鼓こは絶たえたが、壱いち鼓こは舞楽ぶがくに残のこり、三さんノ鼓こは高麗こうらい楽らく(こまがく)で使つかわれている。また中国ちゅうごくから日本にっぽんに伝つたわった民間みんかん芸能げいのうである散楽さるがく(さんがく)にも鼓こが使つかわれており、正せい倉くら院いん蔵くらの「弾たま弓ゆみ散楽さるがく図ず」には、鼓つづみを桴や手てで打うつ様子ようすが描えがかれている。こうしたさまざまな鼓こが中国ちゅうごくから伝来でんらいし、やがて小鼓こつづみ、大だい鼓こ(おおつづみ)が日本にっぽんで成立せいりつした。
杖つえ(桴)を使つかって演奏えんそうする杖つえ鼓こは、両面りょうめんの革かわに異種いしゅの材ざいを用もちいるのが特徴とくちょうで、胴どう端はしの径みちと革かわ面めん径みちともに大小だいしょうがある。後のちに朝鮮半島ちょうせんはんとうに伝つたわってからは大型おおがたとなった。
本来ほんらいはリズム楽器がっきであるが、手てで打うつ奏法そうほうと緒いとぐちを自由じゆうに操作そうさすることによって数種類すうしゅるいの音色ねいろを打うち分わけることが可能かのうとなり、中世ちゅうせい・近世きんせい以降いこうの邦楽ほうがくに大おおきな影響えいきょうを与あたえている。演奏えんそうの際さいに掛声かけごえを掛かけるのが特徴とくちょう。