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AIX - Wikipedia

AIXAdvanced Interactive Executive、エーアイエックス[1])は、IBMUNIXオペレーティングシステムのブランドめいである。

AIX
開発かいはつしゃ IBM
OSの系統けいとう UNIX System V
開発かいはつじょうきょう 現在げんざい進行しんこう
ソースモデル クローズドソース
初版しょはん 1986ねん
最新さいしん安定あんていばん 7.3.1 / 2022ねん12月2にち
対象たいしょう市場いちば ワークステーションサーバ
プラットフォーム POWER 8以降いこう
カーネル種別しゅべつ モノリシックカーネル
既定きていUI Common Desktop Environment,
(オプションとしてKDEGNOME
ライセンス プロプライエタリソフトウェア
ウェブサイト [1]
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概要がいよう

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AIXはUNIX System V Release 3 (SVR3) ベースのIBMオペレーティングシステム (OS) で、The Open GroupのUNIX認証にんしょうけている[2]。AIXは、IBMのRT-PCRS/6000pSeriesSystem pPower SystemsシリーズのほかフランスBullや、日立製作所ひたちせいさくしょEP8000シリーズやSR16000などでも採用さいようされている。

最新さいしんばんのAIX 7.3.1では、カーネル64ビット で、POWERけいCPU (POWER8, POWER9, POWER10) をサポートする[3]

特徴とくちょう

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コマンド体系たいけい

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AIXはSystem V Release 3 (SVR3) をベースに、さらBSDSystem V Release 4 (SVR4) などのコマンドとう追加ついかしたものである。このためSVR4ベースのほか商用しょうようUNIX(Solarisなど)や、UNIX互換ごかんOSである Linux OSなどとはコマンド体系たいけい多少たしょうことなる。AIX V3までは Bourne Shellをデフォルトのシェルとしていたが、AIX V4以降いこうXPG4POSIX準拠じゅんきょするためKornShell (ksh88) をデフォルトのシェルとするようになった[4]

なおLM (Loadable Module) のオブジェクトフォーマット形式けいしきは、Powerチップあいだ互換ごかん部分ぶぶん吸収きゅうしゅうはばのこすため、ELFではなく COFF拡張かくちょうであるXCOFF拡張かくちょう共通きょうつうオブジェクト・ファイル形式けいしき、XCOFF32およびXCOFF64)を使用しようしている。

論理ろんりボリュームマネージャ

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論理ろんりボリュームマネージャ (LVM) を比較的ひかくてきはや採用さいようしている。AIXではさらにディスク装置そうちのミラーリングやストライピングをサポートし、AIX 5L 5.2以降いこうでは稼働かどうちゅうのバックアップ機能きのう (split copy)、AIX 5L V5.3以降いこうではスケーラブル・ボリュームグループ、AIX V6.1ではログ収集しゅうしゅう機能きのう強化きょうかされた。

ジャーナルファイルシステム

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ジャーナルファイルシステムであるJFS/JFS2を実装じっそうしている。JFSは、ディスク障害しょうがい回復かいふく時間じかん短縮たんしゅくするファイルシステムである。JFSでは最大さいだい64GiBのファイル、最大さいだい1TiBのファイルシステムを作成さくせいできる。JFS2 では最大さいだい1TiB(AIX 5L V5.2以降いこうでは、最大さいだい16TiB)のファイルおよびファイルシステムを作成さくせいできる。またAIX 5L V5.2以降いこうのJFS2はsnapshotコマンドによるスナップショットバックアップ、AIX 5L V5.3以降いこうのJFS2ではファイルシステムサイズの動的どうてき縮小しゅくしょう、AIX V6.1のJFS2では暗号あんごうファイルシステムがサポートされた。

デスクトップ環境かんきょう

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標準ひょうじゅんデスクトップ環境かんきょうCDEである。COSE採用さいようされてから一貫いっかんして標準ひょうじゅん搭載とうさいしている。なおAIX Toolbox for Linux Applications(後述こうじゅつ)にはKDEGNOMEふくまれている。

管理かんりツール

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UNIXおよびUNIX互換ごかんOSと比較ひかくして特徴とくちょうてきてんとして、主要しゅようなシステム設定せってい階層かいそうがた管理かんり画面がめんであるSMITからおこなう(HP-UXのSAMに相当そうとうする)。また主要しゅようなシステム設定せってい情報じょうほうODMという /etc ディレクトリ配下はいかのデータベースにバイナリ形式けいしき格納かくのうされる。このためコマンドの知識ちしきすくないユーザーでも操作そうさおこな履歴りれきのこり、システム設定せっていファイルのあやま編集へんしゅうによる問題もんだい発生はっせいしにくいが、かりにデータベース情報じょうほう整合せいごうなどが発生はっせいした場合ばあい専用せんよう知識ちしき必要ひつようである。

だい規模きぼワークロードサポート

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AIX7の時点じてんで、最大さいだい256プロセッサ・コア、1024スレッドをサポートする。

仮想かそう

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ハードウェアの機能きのう連係れんけいし、商用しょうようUNIXとしてははや時期じきから各種かくしゅ仮想かそうをサポートしており実績じっせきおおい。物理ぶつり分割ぶんかつ (PPAR)よりも柔軟じゅうなんせいたか論理ろんり区画くかく (LPAR)、LPARへの動的どうてきなリソースの割当わりあて変更へんこう可能かのうDynamic Logical Partitioning、LPARへCPUを1/100単位たんい割当わりあて可能かのうMicro-Partitioning、1つのAIXインスタンスない複数ふくすうの AIX環境かんきょう作成さくせいできるWorkload Partition (WPAR) 、稼働かどうちゅうのLPARをべつ物理ぶつりマシン(べつ筐体きょうたい)へ移動いどうできるLive Partition Mobilityx86 32ビットLinuxアプリケーションのバイナリを修正しゅうせい実行じっこうできるLx86などである。これらはPowerVMとして総称そうしょうされている。

Linuxとの親和しんわせい

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AIX 4.3.3以降いこうから付属ふぞくするCD-ROMのAIX Toolbox for Linux Applicationsには、GNUプロジェクトおよびオープンソースのAIXようツールがふくまれている。またAIXバージョン5は「AIX 5L」とネーミングされたが、"L" はLinuxとの親和しんわせい (Linux Affinity) を意味いみし、Linuxのプログラムソースの移植いしょくせいたかめた。

累積るいせきフィックスであるフィックスパック (Fix Pack) は、IBMのサイト (Fix Central) よりダウンロードできる。従来じゅうらいはML (Maintenance Level)、SP (Service Pack)、CSP(Concluding Service Pack、かくMLレベルでの最終さいしゅうのSP)のわせだったが、2006ねん2がつより TL(Technology Level、とし2かい通常つうじょうは2月と8がつ)、SP、CSPのわせに変更へんこうされ、さら2007ねんにCSPは廃止はいしされた。MLは過去かこのMLおよびSPをふくむ。SPは過去かこのSPをふくむ。2月のTLは安定あんていせい重視じゅうし(フィックスおよびしんハードウェアのサポート中心ちゅうしん)だが、8がつのTLはさら機能きのう拡張かくちょうふくむ。

単体たんたいフィックス (PTF) は現在げんざい原則げんそくとして提供ていきょうされないが、緊急きんきゅうせい重要じゅうようたかいものは暫定ざんていフィックス(Interim fix、iFix、i-fix、IF。従来じゅうらい緊急きんきゅうフィックス、e-fix)として暫定ざんてい提供ていきょうされる。これらも最終さいしゅうてきにはTL、SPとうふくまれる。

現状げんじょう確認かくにんはAIX 4.3では instfix、AIX 5L以降いこうではさらoslevel -r または -s などでおこなう。暫定ざんていフィックスは fixmgr管理かんりする。

いくつかのことなるバージョンのAIXがかつて存在そんざいしていたが、不人気ふにんきなものはえていった。

1986ねん登場とうじょうしたAIX V1はIBM RT-PC動作どうさした。このバージョンはUNIX System V Release 3をベースにしていた。

1989ねん、AIXはRS/6000シリーズのワークステーションとサーバようOSとなった。AI は開発かいはつ過程かていで4.2BSDや4.3BSDの機能きのうをIBMとINTERACTIVE Systems Corporationがマージした。

UNIX戦争せんそうさいには、AIXはOSF陣営じんえいOSF/1のカーネルとして採用さいようされた。OSF/1は普及ふきゅうしなかったが、論理ろんりボリュームマネージャ (LVM) はこのさいHP-UXなどに移植いしょくされた。

1994ねんにはSMP対応たいおうおこなっていたが、SMPによるスケールアップがた性能せいのう向上こうじょうよりも、RS6000-SP (Scallable parallel) に代表だいひょうされるスケールアウトがたによる並列へいれつ処理しょり性能せいのう拡充かくじゅう目指めざしていた。世界せかいのチェス王者おうじゃやぶったシステムも、AIXが稼動かどうするRS/6000-SPであった。2001ねん、AIX 5Lの登場とうじょうともに、1チップでSMP構成こうせい可能かのうなPOWER4プロセッサを複数ふくすう接続せつぞくしただい規模きぼSMP構成こうせいのサーバを発表はっぴょうし、しん意味いみでエンタープライズ領域りょういきでの必要ひつよう可用性かようせいと、Linuxとの先端せんたんてき親和しんわせいなどをくわえ、基幹きかんけいUNIXベンダーとして疾走しっそうはじめた。

この2001ねんのAIX 5Lの登場とうじょう以降いこう可用性かようせい圧倒的あっとうてき向上こうじょうとスケーラビリティの向上こうじょう、CPU性能せいのう強化きょうかによる性能せいのう大幅おおはば向上こうじょう武器ぶきに IBMによる強力きょうりょくなセールスによりライセンスすうばし、基幹きかんけいシステムにおける商用しょうようUNIXとしてはHP-UXならんで主流しゅりゅうであり、基幹きかんけい適用てきようさいして必須ひっすとされる高信頼こうしんらいせいこう可用性かようせいがある。

さらにIBMせいUNIXおよびLinux OSの基幹きかんけいへの圧倒的あっとうてき傾注けいちゅうと、やっと基幹きかんけいけとして認知にんちされたItaniumけいへの不人気ふにんきもあり、現状げんじょうとして基幹きかんけいではトップのりつほこる。

AIX 5L 5.3でのスケーラビリティは以下いかとおりである。

サポートするアーキテクチャ

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  • AIX v1…IBM PS/2 Micro Channel Architecture PCとIBM RT
  • AIX v2…6150-シリーズIBM RT。
  • AIX v3…POWERアーキテクチャサポート開始かいし
  • AIX v4…PowerPC アーキテクチャと PCI バスサポート開始かいし
  • AIX v5…IA64アーキテクチャサポート(ただし、ベータばんのまま商用しょうようされていない[5][6])。
    • AIX v5.1…POWER4 での論理ろんりパーティショニングサポート。Micro Channel Architectureサポートはこのバージョンまで。
    • AIX v5.2…PowerPC 970ベースのブレードサーバBladeCenter JS20, JS21[7] サポート。途中とちゅうよりDynamic LPARのサポート。
    • AIX v5.3…POWER5でのMicro-Partitioningサポート。
  • AIX v6.1…POWER6でのLive Partition Mobilityサポート。
  • AIX v7.1
  • AIX v7.2…暫定ざんてい修正しゅうせい (i-fix) ようのAIX Live Update、CAA自動じどう、SRIOVでのVNICなど。

メインフレームでのAIX

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1988ねん、IBMはAIX/370を発表はっぴょうした。System/370で UNIXふう機能きのう提供ていきょうするものである。AIX/370は1990ねんにリリースされ、System V Release 2と4.3BSDの機能きのうにIBM独自どくじ機能きのう拡張かくちょうがされたものとなっていた。System/390のアーキテクチャ (ESA/390) が登場とうじょうすると、1991ねんにはAIX/370をAIX/ESAとし、OSF/1 のコードをベースとしたカーネルでSystem/390じょう動作どうささせた。AIX/ESAはネイティブOSとしてもVMじょうのゲストOSとしても動作どうさする。しかし、商業しょうぎょうてきには成功せいこうとはがたく、現在げんざいではLinux on System zにそのゆずっている。

アップルせいハードでのAIX

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1996ねんApple Computerはサーバのさい上位じょういシリーズとして、AIXが標準ひょうじゅんOSでPowerPC 604ベースのApple Network Server開発かいはつし、にはない様々さまざま拡張かくちょうほどこした。このシリーズ以外いがいにAppleでAIXを採用さいようしたれいはなく、翌年よくねんには販売はんばい終了しゅうりょう短命たんめいおわっている。

日立ひたちせいハードでのAIX

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日立ひたちのエンタープライズサーバ[8]EP8000シリーズはPower Systemsと互換ごかんせいたかいハードウェア(ファームウェアも提携ていけい)であり、OSは AIXである。同社どうしゃのスーパコンピュータ(同社どうしゃ呼称こしょうではスーパーテクニカルサーバ)SRシリーズのOSも、プロセッサがPA-RISCベースだったSR8000シリーズまではHP-UXベースであったが、POWERベースに変更へんこうしたSR11000シリーズ以降いこうではAIXベースである。

  • AIX v1, 1986ねん
  • AIX v2, 1987ねん
  • AIX v3, 1990ねん
  • AIX v3.1
  • AIX 4.1, 1994ねん
    • SMP をサポート
  • AIX 4.2.1, 1997ねん4がつ
    • NFS Version 3をサポート
  • AIX 4.3, 1997ねん10がつ
    • 64ビットCPUをサポート
    • UNIX98 認証にんしょう
    • IPv6
  • AIX 4.3.3, 1999ねん9月
    • オンラインバックアップ機能きのう追加ついか
    • ワークロード管理かんり (WLM)
  • AIX 5L 5.1, 2001ねん5月("5L" のLはLinuxとの相互そうご運用うんようせいたかめたことをしめす。)
    • カーネルの64ビット
    • POWER4 をサポート
    • ロジカルパーティション(LPAR。マルチプロセッサシステムを論理ろんりてき複数ふくすう分割ぶんかつして、CPU・メモリ・I/O などのリソースを割当わりあてできる。物理ぶつり分割ぶんかつ[PPAR] とことなり、CPUは1プロセッサを0.1単位たんいで、I/OならばPCI スロット単位たんいで、配分はいぶんできる。)
    • JFS2
  • AIX 5L 5.2, 2002ねん10月
    • POWER4+をサポート
    • マルチパス I/Oファイバーチャネルディスクをサポート
    • iSCSI
    • ダイナミック・ロジカルパーティション(D-LPAR。LPARの拡張かくちょう。パーティションないでAIXが稼動かどうちゅうに、CPUなどのリソース割当わりあて自動じどうまたは手動しゅどう変更へんこうできる。)
  • AIX 5L 5.3, 2004ねん8がつ
    • POWER5をサポート
    • マイクロパーティションをサポート(LPAR・D-LPARよりさらこまかいリソース配分はいぶん可能かのう。CPUは1プロセッサを100ぶんの1単位たんい配分はいぶんできる。)
    • 仮想かそうI/Oサーバ(VIOS。仮想かそうSCSI仮想かそうイーサネットなど。)
    • NFS Version 4をサポート
    • 拡張かくちょうアカウンティング
    • 同時どうじマルチスレッディング (SMT) をサポート
    • JFS2クォータサポート
    • JFS2ファイルシステム縮小しゅくしょうをサポート
  • AIX 6.1 2007ねん11月[9]
  • AIX 7.1 2010ねん8がつ発表はっぴょう[10]
    • Express、Standard、Enterpriseの3エディション
  • AIX 7.2 2015ねん10がつ発表はっぴょう
  • AIX 7.3 2021ねん12月発表はっぴょう[11]
  • AIX 7.3.1 2022ねん12月発表はっぴょう

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ Unix Pronounciation
  2. ^ The Open Brand Register of Certified Products”. The Open Group (2011ねん2がつ9にち). 2011ねん2がつ9にち閲覧えつらん
  3. ^ AIX 7.3.1 リリース・ノート”. www.ibm.com. 2023ねん6がつ30にち閲覧えつらん
  4. ^ Casey Cannon; Scott Trent; Carolyn Jones (1999). Simply AIX 4.3. Prentice Hall PTR. p. 21. ISBN 9780130213440 
  5. ^ Unigroup's April 2004 Meeting Announcement
  6. ^ Jones, Pamela (2005ねん8がつ25にち). “2002 IBM Internal Email on Project Monterey - "No One Wants It"”. Groklaw. 2007ねん5がつ20日はつか閲覧えつらん
  7. ^ Overview - IBM BladeCenter JS21” (英語えいご). www.ibm.com (2011ねん2がつ25にち). 2023ねん6がつ30にち閲覧えつらん
  8. ^ ほぼメインフレームであるが、同社どうしゃはUnixをOSとするメインフレームを「エンタープライズサーバ」と呼称こしょうしている。
  9. ^ IBM AIX Version 6.1 operating system: Overview”. IBM.com. 2010ねん12月27にち閲覧えつらん
  10. ^ IBM AIX V7およびPowerVM V2機能きのう拡張かくちょう発表はっぴょう
  11. ^ AIX 7.3 のしん機能きのう” (2022ねん2がつ17にち). 2022ねん6がつ27にち閲覧えつらん

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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