(Translated by https://www.hiragana.jp/)
ASIC - Wikipedia

ASIC

特定とくてい用途ようとのため専用せんよう設計せっけいされた集積しゅうせき回路かいろ

ASICえい: application specific integrated circuit特定とくてい用途ようと集積しゅうせき回路かいろ)は電子でんし部品ぶひん種別しゅべつの1つで、特定とくてい用途ようとけに複数ふくすう機能きのう回路かいろを1つにまとめた集積しゅうせき回路かいろ総称そうしょうである。通常つうじょうは「エーシック」と発音はつおんされ、表記ひょうきする場合ばあい日本にっぽんでも「ASIC」である。

ASICチップをせたトレイ

概要がいよう

編集へんしゅう

ASICは機密きみつとなる回路かいろ構成こうせいかくし、故障こしょうしやすいデバイス同士どうし接続せつぞく箇所かしょ大幅おおはばらせ、実装じっそう面積めんせきおよ大量たいりょう生産せいさんのコストを低減ていげんするためにつくられた。たん機能きのうICと高性能こうせいのう演算えんざんようIC以外いがいのほとんどすべての半導体はんどうたい製品せいひんふくんでいるため、多種たしゅ多様たようなものが存在そんざいする。デジタル回路かいろ一般いっぱんてきであるが、アナログ回路かいろふくんだりアナログ回路かいろだけのASICもある。1990年代ねんだい後半こうはんよりDRAM内蔵ないぞう可能かのうとなりFlashメモリ搭載とうさいのASICなど各社かくしゃ得意とくい分野ぶんやかれるようになってきた。

長所ちょうしょ短所たんしょ

編集へんしゅう

ASICは単体たんたい半導体はんどうたいである標準ひょうじゅんロジックIC標準ひょうじゅんメモリーIC、回路かいろ設計せっけいえるプログラマブルロジックデバイスFPGAなどとくらべて以下いかてんすぐれている。

  • 実装じっそう面積めんせき縮小しゅくしょう
  • 消費しょうひ電力でんりょく低減ていげん
  • 動作どうさ速度そくど向上こうじょう
  • 単価たんかやす

以下いかてん短所たんしょである。

  • 開発かいはつたか
  • 開発かいはつ期間きかんなが
  • 回路かいろ設計せっけいあやまりの修正しゅうせい困難こんなん(メタル修正しゅうせいつくなおし)
  • 設計せっけいじょう失敗しっぱいフォトマスク製作せいさくからつくなお費用ひよう時間じかん非常ひじょうおおきい。設計せっけい変更へんこうおお機器ききには、本質ほんしつてき不向ふむきである
  • 高価こうか製造せいぞうようフォトマスクなどによって、少量しょうりょう生産せいさんでは単価たんか非常ひじょうたかくなる
  • 製造せいぞう工程こうてい時間じかんがかかり、納期のうきなが
  • すべてが個別こべつ設計せっけいのため設計せっけいかかわるひと人件じんけんがコストをたかめる
  • 製造せいぞう工程こうていがいくぶん複雑ふくざつになることによるコスト上昇じょうしょうがある

分類ぶんるい

編集へんしゅう
ゲートアレイ (えい: gate array)
基本きほんとなる論理ろんり回路かいろ(ゲート回路かいろ)をいちめんめた「下地したじ」をあらかじ製造せいぞうしておき、個別こべつ品種ひんしゅけの配線はいせんそうのみ注文ちゅうもんおうじてつくりこんで製品せいひんとする。配線はいせんそう製造せいぞう工程こうていだけでむため製造せいぞう期間きかんみじかく、下地したじ大量たいりょう製造せいぞうするためコストてき有利ゆうり反面はんめん標準ひょうじゅんゲートのわせで回路かいろ構成こうせいするため集積しゅうせき性能せいのうおとる。
セルベース (えい: cell base)
設計せっけいみの機能きのうブロックを配置はいちし、それ以外いがい個別こべつロジック回路かいろとこれらのあいだ配線はいせんそうつくりこんで製品せいひんとする。集積しゅうせき性能せいのうともゲートアレイより有利ゆうりだが、下地したじからつくぶん製造せいぞう期間きかん・コストは不利ふり
エンベデッドアレイ (えい: embedded array)
ゲートアレイの下地したじ一部いちぶわりに、設計せっけいみの機能きのうブロックをみ、のこりのロジックはゲートアレイ部分ぶぶん利用りようして配線はいせんするもの。ゲートアレイとセルベースの折衷せっちゅうがたである。
スタンダードセル (えい: standard cell)
上記じょうき3しゅ総称そうしょうする場合ばあい、セルベースICを場合ばあいなど集積しゅうせき回路かいろベンダによって使つかかたことなる。
ストラクチャードASIC(えい: structured ASIC
開発かいはつ期間きかん短縮たんしゅくするために、ゲートアレイの下地したじくわえSRAMやクロックようPLL、入出力にゅうしゅつりょくインターフェースなどの汎用はんよう機能きのうブロックをあらかじみ、最小限さいしょうげん個別こべつ設計せっけい対応たいおうできるようにしたもの。クロック分配ぶんぱい回路かいろなどは製造せいぞうしゃがわ専用せんよう配線はいせんそうもちいて配線はいせんするなど、ユーザの設計せっけい負担ふたんらす工夫くふうられる。かくベンダで提供ていきょうする機能きのうはかなりことなる。

ASICの設計せっけい方法ほうほう

編集へんしゅう

デジタル回路かいろ設計せっけいでは、論理ろんり回路かいろえがいて設計せっけいしていたが、Verilog または、VHDLばれるハードウェア記述きじゅつ言語げんご登場とうじょうによって、入出力にゅうしゅつりょく条件じょうけん中心ちゅうしんにソフトウェア・プログラミングのように文字もじてき記述きじゅつおこなうことで、最終さいしゅうてき内部ないぶ回路かいろまで設計せっけいすることが主流しゅりゅうとなった。 これらの言語げんごは、回路かいろ情報じょうほう論理ろんりつらなりとしてあつかい、LSI開発かいはつ効率こうりつ向上こうじょうするために開発かいはつされた言語げんごである。 旧来きゅうらいのASIC開発かいはつでは、ANDORNOT、FFとう論理ろんり回路かいろ記号きごう回路かいろベースでわせて設計せっけいしていた。(スケマティック/ゲートレベル) しかし、現在げんざいVerilog HDL によるRTL記述きじゅつでは、わせ回路かいろ論理ろんり順序じゅんじょ回路かいろのタイミング条件じょうけん記述きじゅつするだけでよく、ゲートレベルにくら抽象ちゅうしょうたか記述きじゅつ可能かのうになって設計せっけい開発かいはつ効率こうりつ向上こうじょうした。RTL記述きじゅつ回路かいろはそのままでは実際じっさいのLSIの回路かいろ適用てきようできないため、ゲートレベルに変換へんかんする論理ろんり合成ごうせいプログラム(れいシノプシスしゃせい DesignCompiler ひとし)を使用しようする。詳細しょうさいEDA参照さんしょう

FPGAとASICは同一どういつ論理ろんり記述きじゅつ言語げんご使つかう。そのため、プロトタイピングや試験しけん量産りょうさん段階だんかいではFPGAを使つかい、可能かのうかぎりNREコストをおさえ、ASICが得意とくいとする大量たいりょう生産せいさんてきした時点じてんでFPGAからASICへのえをおこな手法しゅほう提案ていあんされている。このため、ピンアサインがFPGAとASICで共通きょうつうされた下地したじや、みブロックの共有きょうゆうとうすすめられている。しかし、依然いぜんとして顧客こきゃくとどいたのち設計せっけい変更へんこうおこなうリワークには対応たいおうできないのでFPGAをASICに完全かんぜんえることはできない(これはとくに、デジタル放送ほうそうよう大型おおがたテレビに顕著けんちょである)。今日きょう製品せいひんサイクルの短縮たんしゅくから生産せいさん予測よそく困難こんなんさをしているため、このハイブリッドソリューションはASICにたいする転機てんきとして現在げんざい市場いちばひろげている。

ASICの用途ようと非常ひじょう多岐たきわたり、一部いちぶれい以下いかしめす。家庭かていよう産業さんぎょうよう事務じむようといった多様たよう電気でんき製品せいひん使用しようされている。

通信つうしん分野ぶんや

編集へんしゅう

通信つうしん帯域たいいき増加ぞうか通信つうしんりょう増加ぞうかから、高速こうそく処理しょり要求ようきゅうされるネットワーク通信つうしん機器ききなどにとく利用りようされている。ルータ、L3~L7スイッチファイアウォール負荷ふか分散ぶんさんSLB/NLB装置そうちパケット処理しょり装置そうちなどで、ASICが利用りようされている。

画像がぞう処理しょり

編集へんしゅう

コンピュータよう3DグラフィックスレンダリングエンジンとなるLSIなどにも利用りようされている。また、デジタルスチルカメラデジタルビデオカメラなどでの画像がぞう補正ほせい画像がぞう圧縮あっしゅく処理しょり専用せんようASICを開発かいはつしているメーカー(れいキヤノンDIGICなど)もある。

高速こうそくコピーなどのふくごうでも、高速こうそく画像がぞう処理しょり必要ひつよう装置そうちでは、画像がぞう処理しょり専用せんようASICを搭載とうさいしているものもある。DVDレコーダー代表だいひょうされる動画どうが圧縮あっしゅく/再生さいせい処理しょりも、専用せんようMPEGエンコーダ/デコーダようASICが開発かいはつされている。デジタル放送ほうそう対応たいおう大型おおがたFPDテレビには、上記じょうきMPEGデコーダASICが搭載とうさいされることもあるが、将来しょうらいてき圧縮あっしゅく方式ほうしき規格きかく変更へんこう対応たいおう可能かのうなように、FPGA構成こうせいされているものもある。

コンピュータシステム全般ぜんぱん

編集へんしゅう

CPUマイクロコントローラなどのプロセッサも、専用せんようマスクを作成さくせいして生産せいさんするというてんでは広義こうぎのASICの定義ていぎ該当がいとうするが、これらはつねべつ分類ぶんるいとしてあつかわれる。各種かくしゅCPUようチップセットや、汎用はんよう標準ひょうじゅんバス制御せいぎょPCIバスブリッジなど)のLSIはASICといえる。

仮想かそう通貨つうかマイニング

編集へんしゅう

仮想かそう通貨つうかだい規模きぼなマイニングには専用せんようASICを利用りようしたマイニング装置そうち利用りようされている[1]一方いっぽう個人こじんレベルでは効率こうりつひくいが、市販しはんCPUGPU利用りようしたマイニングがおこなわれている[1]

プロセス技術ぎじゅつ

編集へんしゅう

ASICは半導体はんどうたい種別しゅべつとして多様たようであるばかりでなく、半導体はんどうたいプロセス技術ぎじゅつ世代せだいにおいてもはばひろ世代せだい使用しようしている。たとえば、台湾たいわん Taiwan Semiconductor Manufacturing Co. Ltd.は2008ねんまつから40nmプロセスでの生産せいさん開始かいししており、台湾たいわん United Microelectronics Corp.(UMC)は45nmプロセスでの試作しさく製造せいぞう成功せいこうし、中国ちゅうごく Semiconductor Manufacturing International Corp.(SMIC)は2009ねんから45nmプロセスでの生産せいさん準備じゅんびちゅうといった具合ぐあいで、ASICをがける世界せかいてきなファンウンドリーのおおくが、べいインテルしゃべいAMDしゃべいNVIDIAしゃなどが使用しようする最新さいしんのプロセス技術ぎじゅつからは1世代せだいほどおくれながらもしっかり追随ついずいしているが、その一方いっぽうではたとえば、台湾たいわんUMCでも、2008ねんだい3四半期しはんきでのぜん売上うりあげだかめるプロセス世代せだいでの割合わりあいは、65nm世代せだいでは7%しかなく、90nm世代せだいで31%、130nm世代せだいで20%、150nmで21%、250-350nm世代せだいで16%、500nm以上いじょう世代せだいでも5%もあった。これは、よくわれるように最新さいしんのプロセス技術ぎじゅつはマスクだいだけでも高価こうかであり、たとえば65nmでは1セットで100まんあめりかドルじゃくであるのに、130nmではマスクだい設計せっけい試験しけん検証けんしょうのコストをくわえファウンドリーへ支払しはら開発かいはつコストまでふくめても40まんあめりかドルでむため、最先端さいせんたんのプロセス技術ぎじゅつによる高性能こうせいのうもとめられず、従来じゅうらい製品せいひんこまかな修正しゅうせいむASIC製品せいひんにはふるくは7世代せだいまえのプロセスを使用しようしているのが現状げんじょうである[2]

脚注きゃくちゅう

編集へんしゅう

出典しゅってん

編集へんしゅう
  1. ^ a b ASIC、マイニングとは?詳細しょうさい解説かいせつ - 【DMMビットコイン】暗号あんごう資産しさん仮想かそう通貨つうか)ならDMM Bitcoin”. DMM Bitcoin. 2022ねん1がつ19にち閲覧えつらん
  2. ^ 木村きむら雅秀まさひでちょ 『ASICの微細びさいきゅうブレーキ 45nm世代せだいかべ直面ちょくめん』 「日経にっけいエレクトロニクス 2009ねん3がつ9にちごう」 p.94-98

関連かんれん項目こうもく

編集へんしゅう

  ウィキメディア・コモンズには、ASICかんするメディアがあります。