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DOTピクトグラム - Wikipedia
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DOTピクトグラム

DOTピクトグラムまたはAIGAピクトグラムは、言葉ことばを使用しようせずに旅行りょこう者しゃに有用ゆうような情報じょうほうを伝つたえるために、米国べいこく運輸省うんゆしょう (DOT) の依頼いらいでアメリカグラフィックアート協会きょうかい（英語えいご版ばん） (AIGA) が作成さくせいした50種類しゅるいのピクトグラムのセットである。

DOTピクトグラムの例れい。左ひだりから「エスカレーター（上のぼり）」「託児たくじ所しょ」「陸上りくじょう交通こうつう機関きかん」

これらは、空港くうこう、駅えき、ホテルなど、外国がいこく人じん観光かんこう客きゃくが多おおく利用りようする公共こうきょうの場所ばしょで有用ゆうようであり、文字もじよりも識別しきべつが容易よういである。DOTピクトグラムの中なかには、トイレや電話でんわを表あらわす、今いまではおなじみとなった物ものもある。その普遍ふへん的てきな受容じゅよう性せいから、「ピクトグラムのヘルベチカ」とも呼よばれており、人ひと（男性だんせい）を表あらわすピクトグラムは「ヘルベチカ・マン」と呼よばれている[1][2]。

DOTピクトグラムは米国べいこく政府せいふの著作ちょさく物ぶつとしてパブリックドメインに属ぞくしているため、ライセンスの問題もんだいなしに、誰だれでもどんな目的もくてきでも使用しようすることができる。

歴史れきし

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1974年ねん、米国べいこく運輸省うんゆしょうは、あまり検討けんとうをせずにその場ばしのぎで作成さくせいされた州しゅう間あいだ高速こうそく道路どうろで使用しようされていたピクトグラムの欠点けってんを認識にんしきし、AIGAにピクトグラムを作成さくせいするよう依頼いらいした。AIGAは、ロジャー・クック（英語えいご版ばん）、ドン・シャノスキーと協力きょうりょくして、東京とうきょう国際こくさい空港くうこうや1972年ねんミュンヘンオリンピックなどの世界中せかいじゅうで使用しようされているさまざまなピクトグラムを網羅もうら的てきに調査ちょうさした。彼かれらは、これらのピクトグラムを、見みやすさ、国際こくさい的てきな認識にんしき力りょく、破壊はかい行為こういに対たいする耐たい性せいなどの基準きじゅんに基もとづいて評価ひょうかした。どの特徴とくちょうが最もっとも成功せいこうし、適切てきせつであるかを決定けっていした後のち、彼かれらはDOTから要求ようきゅうされた34種類しゅるいのピクトグラムをデザインした[2]。

1979年ねんに16種類しゅるいのピクトグラムが追加ついかされ、合計ごうけいで50種類しゅるいになった[3]。

ピクトグラムの開発かいはつ

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事前じぜん調査ちょうさ

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以下いかに挙あげた24種類しゅるいの施設しせつ（鉄道てつどう、空港くうこう、政府せいふ機関きかん）やイベント（オリンピック、博覽はくらん会かい）で使用しようされたピクトグラムを収集しゅうしゅうし、種類しゅるいごとにカタログを作成さくせいして精査せいさされた。ゼロからのスタートではなく、可能かのうな限かぎり既存きそんのピクトグラムを基もとに強固きょうこなデザインを開発かいはつすることが重要じゅうような目標もくひょうとなった[2]。

評価ひょうか

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最初さいしょのステップは、このプロジェクトで作成さくせいするピクトグラムの種類しゅるいを特定とくていすることだった。これは「メッセージ・エリア」と称しょうされた。運輸省うんゆしょうの施設しせつ局きょくとAIGAの委員いいん会かいが、34種類しゅるいのメッセージからなる初期しょきリストを作成さくせいした。これらのメッセージは、大おおきく四よっつのカテゴリに分類ぶんるいされた。電話でんわ、トイレ、救護きゅうご所しょなどの施設しせつサービスと交通こうつう手段しゅだんからなる「公共こうきょう施設しせつ」、レンタカー、コーヒーショップ、売店ばいてんなどの「商業しょうぎょう施設しせつ」、チケット購入こうにゅう、税関ぜいかんなどの乗客じょうきゃく関連かんれんの処理しょりを意味いみする「行動こうどう処理しょり」、禁煙きんえん、立入禁止たちいりきんしなどの「規制きせい」の四よっつである[2]。

24の情報じょうほう源げんから委員いいん会かいが求もとめたメッセージを伝つたえるシンボルは、「コンセプトグループ」と呼よばれ、メッセージを伝つたえるために類似るいじした一般いっぱん的てきなデザインを使用しようしたシンボルの単純たんじゅんなグループに分わけられた。例たとえば「電話でんわ」のシンボルは「電話でんわの受話器じゅわき」、「電話でんわのダイヤル」、「正面しょうめんから見みたダイヤル式しき電話でんわ」、「受話器じゅわきとダイヤル」という四よっつのコンセプトグループに分わけられた[2]。

スコアリング

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シンボルは、「意味いみ的てき」「統語とうご的てき」「実用じつよう的てき」の三みっつの特性とくせいで評価ひょうかされた。

意味いみ的てき(semantic)次元じげんとは、視覚しかく的てきイメージと意味いみとの関係かんけいを指さす。

このシンボルはメッセージをどの程度ていど表あらわしているか?
人々ひとびとはシンボルが示しめすメッセージを理解りかいできているか?
さまざまな文化ぶんかの人々ひとびとがこのシンボルを誤解ごかいしないか?
さまざまな年齢ねんれい層そうの人々ひとびとがこのシンボルを理解りかいできるか?
このシンボルを学まなぶのは難むずかしいか?
このシンボルは、すでに広ひろく受うけ入いれられているか?
このシンボルに、メッセージとは関係かんけいのない要素ようそが含ふくまれていないか?

統語とうご的てき (syntactic) 次元じげんとは、一ひとつの視覚しかくイメージと他たのイメージとの関係かんけいを指さす。
このシンボルはどのように見みえるか?
このシンボルの各かく部分ぶぶんはどのように関連かんれんしているか。
このシンボルは、他たのシンボルとどのように関連かんれんしているか?
このシンボルの構造こうぞうは、図ず/地ち、ソリッド/アウトライン、オーバーラップ、透明とうめい性せい、方向ほうこう性せい、フォーマット、スケール、色いろ、テクスチャの使用しように一貫いっかん性せいがあるか? このシンボルは、認識にんしきの階層かいそうを使用しようしているか?
最もっとも重要じゅうような要素ようそが最初さいしょに認識にんしきされるか?
このシンボルは、既存きそんの規格きかくや慣習かんしゅうに著いちじるしく反はんしていないか?
このシンボルとその要素ようそは、相互そうごに関連かんれんする様々さまざまな概念がいねんに体系たいけい的てきに適用てきようできるか?

実用じつよう的てき(pragmatic)次元じげんとは、利用りよう者しゃに対たいする視覚しかくイメージの関係かんけいを指さす。
人ひとがこのシンボルを認識にんしきできるか?
このシンボルは、劣悪れつあくな照明しょうめい条件じょうけん、斜ななめからの視野しや角かく、その他たの視覚しかく的てきなノイズによって深刻しんこくな影響えいきょうを受うけないか?
このシンボルは、一般いっぱん的てきな視し距離きょりの範囲はんい内ないでずっと見みえるか?
このシンボルは、特とくに破壊はかい行為こういに弱よわくないか?
このシンボルは複製ふくせいが容易よういであるか?

このシンボルは、うまく拡大かくだい・縮小しゅくしょうできるか?
—Symbol Signs (1974)[2]

この三みっつのカテゴリについて、各かく委員いいんが1（悪わるい）から5（良よい）の得点とくてんをつけて評価ひょうかした。各かくシンボルの合計ごうけいスコアに加くわえて、コンセプトグループごとに三みっつのカテゴリにどれだけ合致がっちしているかに基もとづいて総合そうごうスコアが与あたえられた[2]。

勧告かんこく

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最後さいごに、各かくシンボルの得点とくてんやそれまでの議論ぎろんに基もとづいて、提言ていげんや見解けんかいがまとめられた。「電話でんわ」のシンボルについては、受話器じゅわきのアイコンは一般いっぱん的てきだが、レンチなどの他ほかのアイテムと混同こんどうされる可能かのう性せいのある奇妙きみょうな形かたちであること、ダイヤルのシンボルはわかりやすいが、プッシュボタン電話でんわの使用しようが増ふえているため、すでに時代遅じだいおくれになっていることなどが指摘してきされた[2]。

これらの提言ていげんは、コンセプトに沿そったシンボルをデザインするための最終さいしゅう的てきな行動こうどう指針ししんとしてまとめられた。「電話でんわ」については、「グループ1[注釈ちゅうしゃく 3]のコンセプトを修正しゅうせいし、現代げんだいの電話機でんわきの正面しょうめん図ずを実験じっけん的てきに採用さいようする」ことが決定けっていされた[2]。

ピクトグラム

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オリジナル版ばん（1974年ねん）

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当初とうしょ開発かいはつされたピクトグラムのセットは、主おもに交通こうつう機関きかんを想定そうていした34種類しゅるいで構成こうせいされていた。「救護きゅうご所しょ」「禁煙きんえん」「駐車ちゅうしゃ禁止きんし」「立入禁止たちいりきんし」は、赤色あかいろにオストワルト表ひょう色しょく系けいの"6 1/2 pa"を使用しようしている[注釈ちゅうしゃく 4]。

  • 公共こうきょう施設しせつ
  •  
    電話でんわ
  •  
    郵便ゆうびん
  •  
    両替りょうがえ
  •  
    救護きゅうご所しょ
  •  
    遺失いしつ物ぶつ預あずかり
  •  
    コインロッカー
  •  
    エレベーター
  •  
    男子だんしトイレ
  •  
    女子じょしトイレ
  •  
    トイレ
  •  
    案内あんない
  •  
    ホテル案内あんない
  •  
    タクシー
  •  
    バス
  •  
    陸上りくじょう交通こうつう
  •  
    鉄道てつどう
  •  
    航空こうくう
  •  
    ヘリポート
  •  
    船ふね
  • 商業しょうぎょう施設しせつ
  •  
    レンタカー
  •  
    レストラン
  •  
    カフェ
  •  
    バー
  •  
    店舗てんぽ
  • 行動こうどう処理しょり
  •  
    切符きっぷ売うり場ば
  •  
    手荷物てにもつ預あずかり
  •  
    手荷物てにもつ受うけ取とり
  •  
    税関ぜいかん
  •  
    出入国しゅつにゅうこく審査しんさ
  • 規制きせい
  •  
    禁煙きんえん
  •  
    喫煙きつえん
  •  
    駐車ちゅうしゃ禁止きんし
  •  
    駐車ちゅうしゃ場じょう
  •  
    立入禁止たちいりきんし

1979年ねん追加ついか

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1979年ねん、DOTはオリジナルのセットに欠かけていた部分ぶぶんを補おぎなうため、16種類しゅるいの追加ついかのピクトグラムの作成さくせいをAIGAに要求ようきゅうした。「救護きゅうご所しょ」「禁煙きんえん」「駐車ちゅうしゃ禁止きんし」「ペット持込もちこみ禁止きんし」「立入禁止たちいりきんし」にはパントンレッド032C、「出口でぐち」にはパントングリーン340Cが使用しようされた[3]。

  • 公共こうきょう施設しせつ
  •  
    会計かいけい
  •  
    クローク
  •  
    エスカレーター
  •  
    上のぼりエスカレーター
  •  
    下くだりエスカレーター
  •  
    階段かいだん
  •  
    授乳じゅにゅう室しつ
  •  
    水飲みずのみ場じょう
  •  
    待合室まちあいしつ
  • 商業しょうぎょう施設しせつ
  •  
    理髪りはつ店てん・美容びよう室しつ
  •  
    理髪りはつ店てん
  •  
    美容びよう室しつ
  • 行動こうどう処理しょり
  •  
    出発しゅっぱつ便びん
  •  
    到着とうちゃく便びん
  • 規制きせい
  •  
    ペット持もち込こみ禁止きんし
  •  
    出口いでぐち
  •  
    消火しょうか器き
  •  
    ゴミ箱ごみばこ

2000年代ねんだい

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「救護きゅうご所しょ」のピクトグラムには赤十字せきじゅうじが使用しようされていたが、アメリカ赤十字せきじゅうじ社しゃが応急おうきゅう処置しょちや医療いりょうサービスの一般いっぱん的てきなシンボルとしての「赤十字せきじゅうじ」シンボルの使用しようを排除はいじょするための努力どりょくを重かさねた結果けっか、「救護きゅうご所しょ」のピクトグラムが非公式ひこうしきに変更へんこうされている。

アメリカ赤十字せきじゅうじ社しゃは1999年ねんに、DOTピクトグラムを含ふくむピクトグラム集しゅうを出版しゅっぱんしていたUltimate Symbol社しゃに、1996年版ねんばんの赤十字せきじゅうじのシンボルがジュネーブ条約じょうやくや米国べいこくの商標しょうひょう法ほうに違反いはんしていることを伝つたえ、AIGAのDOTピクトグラムセットを含ふくむ今後こんごの版はんからの削除さくじょを要請ようせいした。第だい2版はんの"Official Signs & Icons"では、ISO 3864で「安全あんぜん色しょく」と規定きていされた緑色みどりいろの十字じゅうじに変更へんこうされた[4]。

緑みどりの背景はいけいに白しろの十字じゅうじ、または緑みどりの背景はいけいに白しろの十字じゅうじは、元もとの赤十字せきじゅうじと視覚しかく的てきに類似るいじしていることと、広ひろく使用しようされていることから、一般いっぱん的てきな置おき換かえとなっている。ISO 7010では、救護きゅうご所しょのピクトグラムは緑みどりの背景はいけいに白しろの十字じゅうじとなっている。

関連かんれん項目こうもく

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脚注きゃくちゅう

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[脚注きゃくちゅうの使つかい方かた]

注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ Sweden, Claes Tottie. Designed for Kooperative Fobundet, Sektor D.[2]
  2. ^ Paul Arthur & Associates. A collection of symbols for sign fabrication.[2]
  3. ^ グループ1は「電話でんわの受話器じゅわき」
  4. ^ オストワルト表ひょう色しょく系けいは、1970年代ねんだいに廃止はいしされた古ふるい表ひょう色しょく系けいである。これを最新さいしんの表ひょう色しょく系けいに変換へんかんするのは困難こんなんであるため、以下いかの例示れいじでは、1982年ねんの改訂かいていで指定していされたパントンレッド032 Cを代かわりに使用しようしている[5]。
  5. ^ AIGAは、シンボルやその色いろを公式こうしきには変更へんこうしていない。このシンボルには、1979年ねんのシンボル追加ついかの際さいに「出口でぐち」のシンボルで指定していされた緑色みどりいろであるパントン340 Cが使用しようされている。

出典しゅってん

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  1. ^ Ellen Lupton and J. Abbott Miller. Design Writing Research: Writing About Graphic Design. New York: Kiosk, 1996.
  2. ^ a b c d e f g h i j k “Symbol Signs. The Development of Passenger/Pedestrian Oriented Symbols for Use in Transportation-Related Facilities.” (英語えいご). National Technical Reports Library (1974年ねん11月). 2020年ねん7月がつ12日にち閲覧えつらん。 A PDF copy of this report is for download.
  3. ^ a b American Institute of Graphic Arts (December 1982) (英語えいご). Symbol signs : The system of passenger/pedestrian oriented symbols developed for the U.S. Department of Transportation (2nd ed.). Hastings House. ISBN 0-8038-6777-8 
  4. ^ Hora, Miles (2005). Official signs & icons 2 by Ultimate Symbol (2nd ed.). Ultimate Symbol. p. 71. ISBN 0-9769513-0-4 
  5. ^ American Institute of Graphic Arts (December 1982) (英語えいご). Symbol signs : The system of passenger/pedestrian oriented symbols developed for the U.S. Department of Transportation (2nd ed.). Hastings House. p. 193. ISBN 0-8038-6777-8. "Standardized red and Green paint chips for certain symbol signs are included..." "If an offset printing ink is being used...the closest colors in the Pantone Matching System are 032 (red) and 340 (green)." 

外部がいぶリンク

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