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Pascal - Wikipedia

Pascal(パスカル)は、1970ねん発表はっぴょうされたプログラミング言語げんごニクラウス・ヴィルトにより構造こうぞうプログラミングとして設計せっけい・デザインされた。名称めいしょうは、ブレーズ・パスカルにちなむ。

Pascal
パラダイム 命令めいれいがたプログラミング構造こうぞうプログラミング ウィキデータを編集
登場とうじょう時期じき 1970ねん (54ねんまえ) (1970)
開発かいはつしゃ ニクラウス・ヴィルト ウィキデータを編集
型付かたつ つよ静的せいてき型付かたつ
おも処理しょりけい CDC 6000DelphiICL 1900Pascal-PPDP-11PDP-10IBM System/370HP PascalFree PascalGNU Pascal
方言ほうげん DelphiTurbo PascalUCSD Pascal
影響えいきょうけた言語げんご ALGOL、ALGOL 60、ALGOL W、Simula ウィキデータを編集
影響えいきょうあたえた言語げんご AdaComponent PascalGoJava[1]Modula / -2 / -3Oberon / -2Object PascalOxygeneSeed7
拡張子かくちょうし pp、p、pas ウィキデータを編集
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カテゴリ / テンプレート

ALGOLALGOL Wをベースとし、簡素かんそだがよくととのった言語げんご仕様しよう構文こうぶん意味いみ)をつ。プログラミング教育きょういく意識いしきしており、「判読はんどくせい」を重視じゅうししている反面はんめん、「最適さいてき」を犠牲ぎせいにしていると批判ひはんもされた。 言語げんごてきには、自身じしんコンパイラ自身じしんけるといった、言語げんご処理しょりけいブートストラップそなえ、おおくの#実用じつようプログラムれいっている。

言語げんご仕様しよう

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教育きょういくおも目的もくてきとしつつ、コンパイラが記述きじゅつできる程度ていど強力きょうりょく言語げんご目指めざし、当初とうしょ、ヴィルト自身じしんがPascalコンパイラをPascal自身じしんいてみせ、その能力のうりょくしめした(のModula-2では、オペレーティングシステムをModula-2でいてみせた)。当時とうじ FORTRAN 以外いがいのコンパイラは生成せいせいされる機械きかい冗長じょうちょう最適さいてきむずかしいとわれていたが、「言語げんご仕様しよう最適さいてき独立どくりつした問題もんだいである」ことを証明しょうめいするという目的もくてきもあったらしい。[よう出典しゅってん]

Pascalの単純たんじゅんさは、たとえば構文こうぶんLL(1)であることなどによくあらわれている[注釈ちゅうしゃく 1]すべての名札なふだ定数ていすう型名かためい変数へんすうサブルーチン[注釈ちゅうしゃく 2]使用しよう先立さきだって定義ていぎしておく必要ひつようがある。ポインタもちいたリストのようなかた定義ていぎや、交互こうごにサブルーチンがうためには、例外れいがいてき構文こうぶん使つかわねばならない。ポインタにかぎっては、参照さんしょうされるかた定義ていぎまえに、そのかた参照さんしょうするような定義ていぎができた。また、サブルーチンの定義ていぎ部分ぶぶんだけをさき記述きじゅつする方法ほうほう解決かいけつした。

その結果けっか、パーサはLL(1)パーサであり、バックエンドはいわゆるワンパスコンパイラであった[注釈ちゅうしゃく 3]。なお、言語げんごのコンパイラでは、2かい以上いじょう走査そうさおこなうマルチパス形式けいしきのものがおおかった。マルチパス形式けいしきでは、最初さいしょ走査そうさ識別子しきべつしとう情報じょうほう中心ちゅうしん情報じょうほう収集しゅうしゅうおこない、後続こうぞく走査そうさでそれらの情報じょうほう参照さんしょうしつつ実行じっこうファイルを生成せいせいするため、コンパイル速度そくどめんでは不利ふりだが、最適さいてきてん有利ゆうりとなる。絶望ぜつぼうてきおそフロッピーディスク作業さぎょうディスクとするユーザがおおかった初期しょきのパーソナルコンピュータでは、ワンパスコンパイラであることはおおいに利点りてんとなった。 なお、Turbo Pascalの高速こうそくせいは、アセンブラ記述きじゅつされていたことも一因いちいんであるが、Pascalの簡潔かんけつ仕様しようかしメモリを使つかえるかぎ使つかってファイルアクセスを最小限さいしょうげんめることで実現じつげんされた。

ALGOL由来ゆらい制御せいぎょ構造こうぞう、サブルーチンのなかに、そのサブルーチンないからのみえるローカルな変数へんすう、そのサブルーチンないからのみせるサブルーチンとう定義ていぎできるといった、スコープの概念がいねん再帰さいきてき構文こうぶん構造こうぞうブロック構造こうぞうぶ)、静的せいてきスコープによる参照さんしょう局所きょくしょ機能きのうつ。さらに、豊富ほうふデータがたと、COBOLられた構造こうぞうたいふくあたらしいデータがた定義ていぎできるという特徴とくちょうっている。レコードがたとポインタをもちいてリストといったデータ構造こうぞう自由じゆう構築こうちくすることができる(分木ぶんぎ#データの分木ぶんぎへの格納かくのうほうれい参照さんしょう)。なお由来ゆらい不明ふめいだが、最後さいごにピリオドをけるという、微妙びみょうにALGOLの構文こうぶんちがてんがある。

Pascalの注目ちゅうもくすべきは、変数へんすう宣言せんげんを「変数へんすうめい型名かためい」の順序じゅんじょとした記法きほうであろう。ALGOLを源流げんりゅうとするC言語げんごなどでは、変数へんすうなどの定義ていぎint xといったような「型名かためい 変数へんすうめい」という順序じゅんじょ記述きじゅつされる。一方いっぽう、Pascalでは「var x : int」というような、「変数へんすうめい 型名かためい」の順序じゅんじょ記述きじゅつする。この記法きほう数学すうがくなどと類似るいじ記法きほうであるため、ヴィルトの完全かんぜんなオリジナルだとはいにくいが、最初さいしょべたALGOL WではALGOLと同様どうようであるので、プログラミング言語げんごへの導入どうにゅうとしてはオリジナリティがたかいものとかんがえられる。このてんについて、JavaなどはC言語げんご構文こうぶんしょう改良かいりょうにとどまっているが、LimboGo言語げんごなどC言語げんご使つかづくした設計せっけいしゃらによるしん言語げんごが、Pascalに記法きほうとしていることは特筆とくひつ事項じこうであろう。なお、ALGOLけいではAda変数へんすうなどのかた記述きじゅつを、これに類似るいじした構文こうぶんとしている。ScalaKotlinといったJava VM環境かんきょう動作どうさする後発こうはつ言語げんごも、かたこうおけする記法きほう採用さいようしている。この表記ひょうきほうかた推論すいろん普及ふきゅうともなって方向ほうこうはたらいた。型名かためいまえおけする言語げんごでは、「=」の左辺さへんにおいて、型名かためいがあれば変数へんすう宣言せんげん初期しょき変数へんすうめいだけなら代入だいにゅうとして区別くべつできるが、かた推論すいろんでは型名かためい省略しょうりゃくされてしまうため区別くべつできなくなる。その結果けっかC++Dでは「auto」などの接頭せっとう必要ひつようで、はつ学者がくしゃにとってはautoのようなかたがあるかのようにみえてしまう。型名かためいこうおけする言語げんごではそのような問題もんだいはない。

コンパイルにできるだけおおくの注意ちゅういによるあやまりを発見はっけんできる、つよ型付かたつけされた(strongly typed)言語げんごであり、またハードウェアを隠蔽いんぺいする思想しそう徹底てっていしている。たとえば集合しゅうごうかた、ポインタがたはそれぞれビットマップアドレス抽象ちゅうしょうしたものとかんがえられる。また Pascal は教育きょういくようということもあり、最初さいしょ仕様しようでは分割ぶんかつコンパイル外部がいぶライブラリ利用りよう考慮こうりょされていなかった。これはだい規模きぼなプログラムを記述きじゅつしたり、ハードウェアを直接ちょくせつ操作そうさするプログラムを記述きじゅつするには不便ふべん仕様しようであり、入出力にゅうしゅつりょくあつかいなど処理しょりけい依存いぞんしなければならない部分ぶぶん言語げんごなかかかえる結果けっかつながった。たとえばファイルがた変数へんすう特定とくていのファイルを関連付かんれんづける標準ひょうじゅんてき方法ほうほうはない。ヴィルト自身じしんは Modula-2 でこれらの要請ようせいこたえる一方いっぽうで、Pascalでは実装じっそうのベンダがそれぞれ独自どくじ拡張かくちょうほどこして、分割ぶんかつコンパイルやハードウェアの直接ちょくせつ操作そうさ可能かのうとしたが、この部分ぶぶん互換ごかんせいとぼしい。

配列はいれつについても問題もんだいてん発覚はっかくした。Pascalでは静的せいてき配列はいれつのみをサポートする。これはコンパイルにサイズが決定けっていされ、実行じっこうちゅうはサイズを変更へんこうできない。しかし実際じっさいのプログラムは実行じっこうするまでサイズがめられないことがおおく、後発こうはつ言語げんご実行じっこうちゅうにサイズを変更へんこうできる動的どうてき配列はいれつをサポートしている。

実用じつようプログラムれい

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著名ちょめいなものに、TeX[注釈ちゅうしゃく 4]初期しょきMacintoshオペレーティングシステムおよびアプリケーションなどがある。

処理しょりけいかんしても、2019ねん現在げんざいおおくのプラットフォームにおおくの実装じっそうがある。

  • AVRco[2] - マイクロプロセッサようの Pascal。
  • Delphi - 現在げんざいもっともメジャーな Pascal。
  • DWScript[3] - Delphiようのスクリプトエンジン。
  • Free Pascal - オープンソースの Pascal。
  • GNU Pascal - オープンソースの Pascal。
  • IP Pascal [4]- 標準ひょうじゅん Pascal をベースに拡張かくちょうされた Pascal。
  • mikropascal[5] - マイクロプロセッサようの Pascal。
  • Modern Pascal[6] - Free PascalでかれたマルチプラットフォームのインタプリタおよびP-Codeコンパイラ。
  • NewPascal[7] - Lazarus / Free Pascal のフォーク。
  • Open Sibyl[8] - Speedsoft Sibyl のオープンソース実装じっそう
  • Oxygene - .NET ようの Object Pascal。
  • PascalABC.NET[9] - .NET ようの Object Pascal。
  • Pascal Script[10] - DelphiまたはFree Pascalプロジェクトない使つかえるスクリプトエンジン。
  • Pascal-P5[11] - 標準ひょうじゅん Pascal に準拠じゅんきょしたフルセットの Pascal-P。
  • PICco[12] - マイクロプロセッサようの Pascal。
  • THINK Pascal[13] - Classic MacOS ようの 4.5d4 が無償むしょう公開こうかいされている。
  • Turbo Rascal[14] - Commodore 64/128、VIC-20、Nintendo ファミリーコンピュータけのクロスコンパイラ。
  • Turbo51[15] - 8051 マイクロプロセッサようの Pascal。
  • Ultibo[16] - Raspberry Pi ベアメタルプログラミングよう環境かんきょう(Lazarus / Free Pascal のカスタマイズ)。
  • Vector Pascal[17] - MMXやAMD 3d NowなどのSIMD命令めいれいセットようのPascal。
  • Virtual Pascal[18] - DOS、Windows、OS/2よう
  • WDSibyl[19] - Speedsoft Sibyl のオープンソース実装じっそう

初期しょき処理しょりけい実装じっそう

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最初さいしょのPascalコンパイラは、CDC 6000 シリーズように1970ねんかれた1パスコンパイラで、それ自身じしんが Pascal でかれていた[20]。CDC 6000 シリーズは 1ワードが 60ビットのマシンであった。Pascal には、メモリを節約せつやくするためのわせ機能きのう(pack/unpack)や、10文字もじ(1文字もじは6ビット)のわせ文字もじれつである alfa がた存在そんざい[21]ながいワードをビットごとにあつかうための集合しゅうごうがたなど、CDC のアーキテクチャの影響えいきょうけた箇所かしょがある。CDC ようのコンパイラは、extern 宣言せんげんによって外部がいぶライブラリをむことができた[22]

1972ねんから1974ねんにかけてチューリッヒ工科こうか大学だいがくかれたPascal-P[23]は、Pascal からP コードへのコンパイラと、Pコードインタプリタからなるなかあいだ言語げんごコンパイラで、やはり Pascal 自身じしんかれていた。このことにより、の Java がことなるアーキテクチャの計算けいさんへの移植いしょくすすんだのと同様どうようおおくの計算けいさんへの移植いしょくすすんだ。中間なかま言語げんごコンパイラを移植いしょくするためには、仮想かそうスタックマシンであるPコードマシンのエミュレータを移植いしょくもと機械きかい開発かいはつし、コンパイラを移植いしょくさき機械きかいでコンパイルするだけでい。1970 - 80年代ねんだい低速ていそく計算けいさんでは、このようななかあいだ言語げんご方式ほうしきでは性能せいのう不十分ふじゅうぶんだった。Pascal-PにはPascal-P1・Pascal-P2・Pascal-P3・Pascal-P4の4つのバージョンがあるが、いずれもPascalのサブセット実装じっそうとなっている。

1975ねんニクラウス・ヴィルトがインタプリタであるPascal-S[24]いた。サブセットであるとはいえ、このPascalのソースコードは2,000ぎょうほどしかない。

おなじく1975ねんカリフォルニア工科こうか大学だいがくで Pascal を並列へいれつ動作どうさよう拡張かくちょうしたConcurrent Pascal開発かいはつされ、それを使つかってシングルユーザのオペレーティングシステムを開発かいはつし、Pascal がシステムプログラミングにもすぐれていることをあきらかにした[25]

1978ねんカリフォルニア大学だいがくサンディエゴこう(UCSD)でPascal-P2をベースにしたUCSD Pascal開発かいはつされた。これは、ことなるプラットフォームに移植いしょくできるカスタムオペレーティングシステム(UCSD p-Systemじょう実行じっこう可能かのうなバージョンである。Appleもライセンスを取得しゅとくし、Apple IIApple III移植いしょくされている。

日本にっぽんでは、1979ねんシャープせいMZシリーズけに「Tiny PASCAL PALL」として発売はつばいされている[26]

標準ひょうじゅん

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ISOではPascalを1983ねんISO 7185として標準ひょうじゅん現在げんざいは1990年版ねんばんである。対応たいおうする日本にっぽん規格きかくはJIS X 3008-1990で、改訂かいていばんは1994である。標準ひょうじゅん Pascal には水準すいじゅん0と水準すいじゅん1があり、後者こうしゃながさのことなる配列はいれつ引数ひきすうるための整合せいごう配列はいれつ使つかえる[27]。また、拡張かくちょう規格きかくとしてISO/IEC 10206が1991ねん策定さくていされた。1993ねんのオブジェクト指向しこう拡張かくちょう規格きかくはドラフトでわっている。

アルゴリズムの記述きじゅつ

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以前いぜんならばALGOLが使つかわれていたであろう、論文ろんぶん学会がっかいとうにおけるアルゴリズムの記述きじゅつに、ALGOLにわってPascalは使つかわれるようになった。

アルゴリズムの教科書きょうかしょ

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Pascal は、アルゴリズムの教科書きょうかしょにしばしば使つかわれた。ヴィルト自身じしんによる『アルゴリズム+データ構造こうぞう=プログラム』をはじめ、エイホホップクロフトウルマン『データ構造こうぞうとアルゴリズム』などは Pascal を使用しようしている。

パーソナルコンピュータとPascal

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1970年代ねんだいまつのパソコンじょうのシステムでは、Apple IIZ80 システムで動作どうさする UCSD Pascalうごいていた[28]UCSD Pascal はPコードを使つかったなかあいだコードコンパイラで、文字もじれつがた・caseぶん拡張かくちょう・ユニットを使つかった Modula-2 ふう分割ぶんかつコンパイルなどをサポートしており、言語げんご以外いがいにメニューを使つかったユーザーインターフェースもすぐれていた。

ほかに、デジタルリサーチの Pascal/MT+ やJRTシステムズしゃの JRT pascal(日本にっぽんではライフボートαあるふぁPascal として販売はんばいした)などが販売はんばいされていた。

Turbo Pascalとその後継こうけい

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1983ねんボーランド発売はつばいしたTurbo Pascalは(当初とうしょはZ80マシンのCP/M動作どうさする)、大変たいへん高速こうそくな1パスコンパイラけん開発かいはつ環境かんきょうである。つづいて8086マシンようCP/M-86, MS-DOS)がリリースされ、1980年代ねんだい後半こうはん〜1990年代ねんだい前半ぜんはん一般いっぱん個人こじん所有しょゆうするパーソナルコンピュータの環境かんきょうとしてもっとかずおおかったMS-DOSにおいておおきな人気にんきた。ビルドの高速こうそくさは、「コンパイラは、コンパイル時間じかんがあるので不便ふべんだ」という意識いしきを、十分じゅうぶんはや環境かんきょうであればたいしてにならないのだ、という事実じじつしめしてえた。さらにWordStarふうのキー操作そうさった、当時とうじとしては高機能こうきのうフルスクリーンエディタそなえていながらてい価格かかくであったため、日本にっぽんでは「フルスクリーンエディタをうと、おまけに高速こうそくな Pascal コンパイラがいてくる」とまでわれたほどである。[よう出典しゅってん]

「Turbo Pascal」は、はんかさねるにつれてモジュール機能きのうオブジェクト指向しこう拡張かくちょうくわえ、「Pascal処理しょりけい実装じっそうとしての名前なまえ」というよりも「Pascal を拡張かくちょうした言語げんご名前なまえ」となった。オブジェクト指向しこう拡張かくちょうはやがてObject Pascalという言語げんごとして認知にんちされるようになった。ボーランドはObject Pascalの開発かいはつ環境かんきょうをより充実じゅうじつさせたWindowsけの製品せいひんとしてDelphiをリリースした。

Turbo Pascal と Delphi の成功せいこうによって、互換ごかんうたった実装じっそう開発かいはつされている。商用しょうようのものとしては Speed Pascal、Virtual Pascal、マイクロソフトQuickPascalがあり、フリーソフトとしては Free Pascalもと FPK Pascal)がひろ範囲はんいのプラットフォームで動作どうさする。ISO 標準ひょうじゅん Pascal を意識いしきしたものでは、GNU Pascal がある。また、ボーランド自身じしんがDelphiをベースにしてつくったGNU/Linux開発かいはつ環境かんきょうKylixもある。

MacintoshとPascal

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当初とうしょ、Macintoshにはセルフ開発かいはつ環境かんきょうはなく、システムの開発かいはつおよびアプリケーションのクロス開発かいはつようプラットフォームとして、もっぱらLisaうえIDEのLisa Workshopを使用しようした。Lisaの公式こうしき開発かいはつ言語げんごはPascalだったためMacintosh ToolboxとぶAPIにおいても、その手法しゅほうがPascalに準拠じゅんきょしていたのはこうした理由りゆうによる。Lisa PascalはSilicon Valley Softwareしゃの68000ようネイティブコードコンパイラをライセンス取得しゅとくしたもので、のちにオブジェクト指向しこうれたClascalに進化しんかする。

のち登場とうじょうしたMacintoshようセルフ開発かいはつ環境かんきょうMacintosh Programmer's Workshop英語えいごばん(MPW)にはヴィルトと Apple のラリー・テスラーひきいるチームが開発かいはつしたObject Pascalふくまれていた。これはClascalの言語げんご仕様しよう整理せいり発展はってんさせたものである。この環境かんきょうかれていたアプリケーションとしてAdobe Photoshopがある。

後継こうけい派生はせい

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ニクラス・ヴィルト自身じしんによって、Pascalや言語げんご経験けいけんにもとづき、後継こうけいえる言語げんご設計せっけいされている。Pascalとの互換ごかんせいのこした拡張かくちょうといったようなスタイルではなく、そのため名前なまえにもPascalをふくめていない。

  • Modula - モジュールなどを指向しこうした。Modula-2のほううつったため実質じっしつ完成かんせい途上とじょうばんのコンパイラだけがリリースされたらしい[よう出典しゅってん]
  • Modula-2 - モジュールなどの機能きのう追加ついかした。ヴィルトは、Modula-2だけでオペレーティングシステムをふくむシステムをつくってせた。
  • Modula-3 - オブジェクト指向しこうなど。
  • Oberon, Oberon-2 - 言語げんご拡張かくちょうして強力きょうりょくにするのではなく、拡張かくちょう可能かのうにしてコア部分ぶぶんちいさくする、という方向ほうこうせい設計せっけいされている。

その言語げんごないし実装じっそう

本物ほんもののプログラマはPascalを使つかわない」というエッセイは、そのタイトルだけは有名ゆうめいだが、Pascalについてはのところ、構造こうぞうプログラミング代名詞だいめいしのようなかんじでいにされているだけであり、その内容ないようについても、とうのハッカーたちからも否定ひてい肯定こうてい半々はんはんといったところである(たとえばジャーゴンファイルでは、用語ようごしゅう本体ほんたいでは否定ひていてきに、附録ふろくでは肯定こうていてき言及げんきゅうしている)。本格ほんかくてき批判ひはん文章ぶんしょうとしては、カーニハンによるWhy Pascal is Not My Favorite Programming Language[30]がある。

初期しょき批判ひはんにもかかわらずPascalは進化しんかつづけた。そしてカーニハン批判ひはんポイントのほとんどは商用しょうようバージョンのPascalにてはまらなくなった。たとえば論文ろんぶんThe Pascal Programming Language[31]のMyth 6せつ拡張かくちょうPascalの言語げんご仕様しようもとづき、論文ろんぶんThe Macintosh Programmer's Workshop[32]では、Object Pascal(MPW Pascal)の言語げんご仕様しようもとづき、批判ひはんポイントのほとんどは克服こくふくしているとかたられている。

関連かんれん項目こうもく

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脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ これは、プログラマにたいして不親切ふしんせつなほどである。実際じっさいにはおおくの処理しょりけい拡張かくちょうしているが、本来ほんらいの(構文こうぶんがLL(1)の)Pascalでは、ラベルに普通ふつう名前なまえ使つかえず、数字すうじによる番号ばんごうしか使つかえない。[よう出典しゅってん]
  2. ^ Pascalにおいては手続てつづprocedure)または関数かんすうfunction)とび、かえしきなかもちいうるものをとく関数かんすうんで区別くべつする。
  3. ^ たような長所ちょうしょ主張しゅちょうされた処理しょりけい言語げんごダートマスBASICがある。
  4. ^ TeXはとくにそのだい規模きぼさから、どんな実装じっそうでもすくなくともひとつのバグがTeXによってあぶりされた、などとわれている。
  5. ^ 並列へいれつ(パラレル)ではない

出典しゅってん

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  1. ^ A Conversation with James Gosling - ACM Queue”. 11 August 2015閲覧えつらん
  2. ^ https://www.e-lab.de/AVRco/index_en.html
  3. ^ https://www.delphitools.info/dwscript/
  4. ^ http://www.moorecad.com/ippas/
  5. ^ https://www.mikroe.com/mikropascal
  6. ^ http://www.modernpascal.com/
  7. ^ http://newpascal.org/
  8. ^ http://sibyl.netlabs.org/en/site/index.xml
  9. ^ http://pascalabc.net/en/
  10. ^ https://www.remobjects.com/ps.aspx
  11. ^ http://www.standardpascal.org/p5.html
  12. ^ https://www.e-lab.de/PICco/
  13. ^ http://www.think-pascal.org/
  14. ^ http://www.lemonspawn.com/turbo-rascal-syntax-error-expected-but-begin/
  15. ^ http://turbo51.com/
  16. ^ https://ultibo.org/
  17. ^ https://sourceforge.net/projects/vectorpascalcom/
  18. ^ http://vpascal.ning.com/
  19. ^ https://www.wdsibyl.org/
  20. ^ Wirth, Niklaus 1986, pp. 318–319.
  21. ^ 『Pascal』だいはん イェンゼン & ヴィルト 1981, p. 106
  22. ^ 『Pascal』だいはん イェンゼン & ヴィルト 1981, p. 99
  23. ^ The PASCAL "P" compiler - implementation notes”. 2019ねん3がつ19にち閲覧えつらん
  24. ^ PASCAL-S - a subset and its implementation”. 2019ねん3がつ19にち閲覧えつらん
  25. ^ Per Brinch Hansen 1980.
  26. ^ 工学こうがくしゃ 月刊げっかんI/O 1979ねん12がつごう PASCAL時代じだいがやってきた! mz-80kようTiny PASCAL「PALL」ぜんリスト公開こうかい
  27. ^ JIS X 3008:1994「プログラム言語げんごPascal」日本にっぽん産業さんぎょう標準ひょうじゅん調査ちょうさかい経済けいざい産業さんぎょうしょう
  28. ^ THE UCSD P-SYSTEM MUSEUM”. THE JEFFERSON COMPUTER MUSEUM (2004ねん). 2015ねん8がつ28にち閲覧えつらん
  29. ^ ホーアThe Emperor's Old Clothes doi:10.1145/358549.358561参照さんしょう
  30. ^ https://www.lysator.liu.se/c/bwk-on-pascal.html
  31. ^ http://pascal-central.com/ppl/index.html
  32. ^ http://collaboration.cmc.ec.gc.ca/science/rpn/biblio/ddj/Website/articles/DDJ/1988/8814/8814b/8814b.htm

文献ぶんけん

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  • Per Brinch Hansen ちょ田中たなか英彦ひでひこ やく並行へいこう動作どうさプログラムの構造こうぞう日本にっぽんコンピュータ協会きょうかい〈コンピュータ・サイエンス研究けんきゅうしょシリーズ〉、1980ねんNCID BN01967499 
  • Charles Antony Richard Hoare (1981-02). “The emperor's old clothes”. Magazine Communications of the ACM (New York: ACM) 24 (2): 75-83. doi:10.1145/358549.358561. 
  • K・イェンゼン、N・ヴィルト ちょ原田はらだ賢一けんいち やく『PASCAL』(原書げんしょだいはん培風館ばいふうかん情報処理じょうほうしょりシリーズ, 2〉、1981ねんISBN 456300782X 
  • Wirth, Niklaus ちょ宇井うい康隆やすたか やく「プログラミング言語げんご要求ようきゅう項目こうもく評価ひょうか方法ほうほう」、アラン・フォイヤー; ナレイン・ゲハーニ へん『Ada, C, Pascal』工学こうがくしゃ、1986ねん、305-325ぺーじISBN 4875930844 
  • K・イェンゼン、N・ヴィルト、A.B. ミケル、J.F. マイナー ちょ原田はらだ賢一けんいち やく『PASCAL』(原書げんしょだい4はん培風館ばいふうかん情報処理じょうほうしょりシリーズ, 2〉、1993ねん10がつISBN 4-563-01466-4 
  • 川合かわい 彗『PASCAL入門にゅうもん共立きょうりつ出版しゅっぱん株式会社かぶしきがいしゃ、1981,1983。ISBN 4-320-02150-9 

外部がいぶリンク

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