(Translated by https://www.hiragana.jp/)
ポール・ハルモス - Wikipedia

ポール・リチャード・ハルモス英語えいご: Paul Richard Halmosハンガリー: Halmos Pál1916ねん3月3にち - 2006ねん10月2にち)はユダヤけいハンガリーじんとしてうまれたアメリカの数学すうがくしゃ数理すうりろん理学りがく確率かくりつろん統計とうけいがく作用素さようそろんエルゴード理論りろん関数かんすう解析かいせきがくとくヒルベルト空間くうかんろん)に基礎きそてき貢献こうけんをした。 また数学すうがく見事みごとつたえることのできる数学すうがくしゃ(great mathematical expositor)としてひろみとめられている。

ポール・ハルモス
生誕せいたん (1916-03-03) 1916ねん3月3にち
オーストリア=ハンガリー帝国の旗 オーストリア=ハンガリー帝国ていこく
ハンガリー王国おうこくブダペスト
死没しぼつ 2006ねん10月2にち(2006-10-02)(90さいぼつ
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく
カリフォルニアしゅうロスガトス
国籍こくせき ハンガリーけいアメリカじん
研究けんきゅう分野ぶんや 数学すうがく
研究けんきゅう機関きかん

シラキュース大学だいがく
シカゴ大学だいがく
ミシガン大学だいがく
インディアナ大学だいがく

サンタクララ大学だいがく
出身しゅっしんこう

プリンストン高等こうとう研究所けんきゅうじょ

イリノイ大学だいがく
博士はかせ課程かてい
指導しどう教員きょういん
ジョゼフ・L・ドゥーブ
博士はかせ課程かてい
指導しどう学生がくせい
Errett Bishop
H. Arlen Brown
Bernard Galler
Don Hadwin
Eric Nordgren
Herman Rubin
Donald Sarason
V. S. Sunder
おも受賞じゅしょうれき

ショーヴネしょう (1947)
Lester R. Ford Award (1971, 1977)

スティールしょう (1983)
プロジェクト:人物じんぶつでん
テンプレートを表示ひょうじ

ちと教育きょういく

編集へんしゅう

13さいのときにアメリカに移民いみんしたが、生涯しょうがいハンガリーのアクセントがあった。学士がくし(B.A.)をイリノイ大学だいがくアーバナ・シャンペーンこうからる。数学すうがく専攻せんこうであったが数学すうがく哲学てつがく双方そうほう学位がくい取得しゅとく条件じょうけんみたしていた。わずか3ねん学位がくいたため、卒業そつぎょうしたときはまだ19さいであった。そのどう大学だいがくまり哲学てつがく博士はかせ課程かていすすんだ。しかし、修士しゅうし課程かてい口頭こうとう試験しけん合格ごうかくになり[1]専攻せんこう数学すうがくえ1938ねん卒業そつぎょうした。指導しどう教官きょうかんジョゼフ・L・ドゥーブ博士はかせ論文ろんぶんだいは"Invariants of certain stochastic transformations: The mathematical theory of gambling systems"(あるしゅかくりつてき変換へんかん変量へんりょう:ギャンブルのシステムの数学すうがくてき理論りろん)であった[2]

経歴けいれき

編集へんしゅう

卒業そつぎょうすぐにしょく助成じょせいきんられないままプリンストン高等こうとう研究所けんきゅうじょ異動いどうする。半年はんとしジョン・フォン・ノイマンしたはたらくことになるが、これはハルモスにとって決定的けっていてき経験けいけんとなった。高等こうとう研究所けんきゅうじょ所属しょぞくしているあいだにハルモスははつ著書ちょしょ"Finite-Dimensional Vector Spaces"をあらわす。これによりすぐにかれ数学すうがくすぐれた解説かいせつしゃとしての評判ひょうばん確固かっこたるものとした[3]

ハルモスはシラキュース大学だいがくシカゴ大学だいがく(1946–60)、ミシガン大学だいがく(〜1961–67)、カリフォルニア大学だいがくサンタバーバラこう (1976–78)、ハワイ大学はわいだいがくシステムインディアナ大学だいがく数学すうがくおしえた。 1985ねんインディアナ大学だいがくから引退いんたいのち死去しきょまで所属しょぞくサンタクララ大学だいがく数学すうがくにあった。

業績ぎょうせき

編集へんしゅう

1962ねん著書ちょしょ"Algebraic Logic"にリプリントされている一連いちれん論文ろんぶんでハルモスはpolyadic algebra提案ていあんした。polyadic algebraはいちかい述語じゅつご論理ろんり代数だいすうばんであり、よりよくられているアルフレト・タルスキとその弟子でしたちによるCylindric algebraとはことなる。polyadic algebraの初等しょとうてきなものは記事きじmonadic Boolean algebra説明せつめいされている。

研究けんきゅうによるオリジナルな貢献こうけんくわえ、ハルモスは説明せつめい非常ひじょう明快めいかいひとをひきつける大学だいがくレベルの数学すうがく教科書きょうかしょいたことでられる。レスター・R・フォードしょう英語えいごばん[注釈ちゅうしゃく 1]を1971ねん[4]さらにふたたび1977ねん(W. P. Ziemer, W. H. Wheeler, S. H. Moolgavkar, J. H. Ewing, W. H. Gustafsonと共同きょうどうで)受賞じゅしょうしている[5]。1973ねん出版しゅっぱんされた学術がくじゅつレベルでの数学すうがくかんするAMSスタイルガイドをあらわしたアメリカすう学会がっかい(AMS)委員いいんかいでハルモスは議長ぎちょうをつとめた。1983ねんには数学すうがくすぐれた解説かいせつ説明せつめいてき著述ちょじゅつたいしあたえられるAMSのSteele Prize for Mathematical Expositionを受賞じゅしょうしている。

アメリカン・サイエンティスト』56(4): 375–389でハルモスは数学すうがく創造そうぞうてき芸術げいじゅつであり、数学すうがくしゃかずをいじる職業しょくぎょう(number cruncher)ではなく芸術げいじゅつとらえられるべきだと議論ぎろんしている。かれ数学すうがくをmathologyとmathophysicsにけてかんがえるべきだと主張しゅちょうし、さら数学すうがくしゃ画家がかかんがかた仕事しごと仕方しかたはよく似通にかよっていると議論ぎろんしている。

1985ねん著書ちょしょである"automathography"(数学すうがくてき自伝じでん数学すうがくmath自伝じでんautobiographyをもとにした造語ぞうご)"I Want to Be a Mathematician"では20世紀せいき数学すうがくしゃとしてきるとはどういうことであるかについてかれている。ハルモスがこのほん自伝じでんautobiographyでなくautomathographyんだのは、ほん中心ちゅうしん私的してき生活せいかつではなく数学すうがくしゃとしての人生じんせいであるからである。このほんにはハルモスにとって数学すうがくをするとはどういうことであったかをしめつぎ言葉ことばがある[6]

ただ漫然まんぜんむだけではいけない;たたかうのだ!みずかいをはっし、みずかれいさがし、みずか証明しょうめい発見はっけんせよ。仮定かてい必要ひつようか?ぎゃくしんか?古典こてんてき特別とくべつ場合ばあいはどうか?縮退しゅくたいしている場合ばあいはどうか?証明しょうめいのどこに仮定かてい使つかわれているだろうか?
(原文げんぶん: Don't just read it; fight it! Ask your own questions, look for your own examples, discover your own proofs. Is the hypothesis necessary? Is the converse true? What happens in the classical special case? What about the degenerate cases? Where does the proof use the hypothesis?)
数学すうがくしゃになるには)なに必要ひつようだろうか? わたしこたえをっているようにおもう。生来せいらい資質ししつ必要ひつようだ。つね完璧かんぺき目指めざすよう心掛こころがけなければならない。数学すうがくをそれ以外いがいなににもましてあいさねばならない。やすむことなく努力どりょくし、そしてけっしてあきらめてはならない。
原文げんぶん:What does it take to be [a mathematician]? I think I know the answer: you have to be born right, you must continually strive to become perfect, you must love mathematics more than anything else, you must work at it hard and without stop, and you must never give up.
Paul Halmos, 1985
これらの自伝じでんでハルモスは必要ひつようじゅうふん条件じょうけんをあらわす言葉ことば"if and only if"を短縮たんしゅくした記号きごう"iff"を発明はつめい[7]、また 墓石はかいし記号きごう証明しょうめい最後さいごしめすものとしてはじめて使つかった[8]としている。この主張しゅちょうひろれられている。墓石はかいし記号きごう ∎ (Unicode U+220E) はときにhalmosばれる[9]

2005ねんにはつまのヴァージニアとともにオイラー書籍しょせきしょう英語えいごばん創設そうせつした。このしょうは1ねんに1かいアメリカ数学すうがく協会きょうかい英語えいごばんにより一般いっぱんひと数学すうがくたいする見方みかた向上こうじょうさせるであろうようなほんあたえられる。このしょうはじめて授与じゅよされたのは レオンハルト・オイラー生誕せいたん300周年しゅうねんである2007ねんジョン・ダービーシャー英語えいごばんによるベルンハルト・リーマンリーマン予想よそうについての著書ちょしょ"Prime Obsession"にたいしてであった[10]

著書ちょしょ

編集へんしゅう
  • 1942. Finite-Dimensional Vector Spaces. Springer-Verlag.[11]
  • 1950. Measure Theory. Springer Verlag.[12]
  • 1951. Introduction to Hilbert Space and the Theory of Spectral Multiplicity. Chelsea.[13]
  • 1956. Lectures on Ergodic Theory. Chelsea.[14]
  • 1960. Naive Set Theory. Springer Verlag.
    • 富川とみかわ しげる やく素朴そぼく集合しゅうごうろんミネルみねるァ書房ぁしょぼう、1975ねんISBN 4623009866 
  • 1962. Algebraic Logic. Chelsea.
  • 1963. Lectures on Boolean Algebras. Van Nostrand.
  • 1967. A Hilbert Space Problem Book. Springer-Verlag.
  • 1973. (with Norman E. Steenrod, Menahem M. Schiffer, and Jean A. Dieudonné). How to Write Mathematics. American Mathematical Society. [注釈ちゅうしゃく 2]
  • 1978 (with V. S. Sunder). Bounded Integral Operators on L² Spaces. Springer Verlag.[15]
  • 1985. I Want to Be a Mathematician. Springer-Verlag.
  • 1987. I Have a Photographic Memory. Mathematical Association of America.
  • 1991. Problems for Mathematicians, Young and Old, Dolciani Mathematical Expositions, Mathematical Association of America.
  • 1996. Linear Algebra Problem Book, Dolciani Mathematical Expositions, Mathematical Association of America.
  • 1998 (with Steven Givant). Logic as Algebra, Dolciani Mathematical Expositions No. 21, Mathematical Association of America.
  • 2009 (posthumous, with Steven Givant). Introduction to Boolean Algebras, Springer.

脚注きゃくちゅう 

編集へんしゅう

注釈ちゅうしゃく

編集へんしゅう
  1. ^ このしょうは、2012ねんに「ポール・R・ハルモス=レスター・R・フォードしょう」に改称かいしょうされた。
  2. ^ ハルモスの論文ろんぶん“How to write mathematics”. L'Enseignement Mathématique 16: 123–152. (1970). doi:10.5169/seals-43857. さいろくである。邦訳ほうやくスティーンロッドほか ちょ一松いちまつしん わけ数学すうがくかた共立きょうりつ出版しゅっぱん数学すうがくワンポイント双書そうしょ19〉、1978ねんNDLJP:12608195 

出典しゅってん

編集へんしゅう
  1. ^ The Legend of John Von Neumann. P. R. Halmos. The American Mathematical Monthly, Vol. 80, No. 4. (Apr., 1973), pp. 382–394.
  2. ^ Halmos, Paul R. "Invariants of certain stochastic transformations: The mathematical theory of gambling systems."
  3. ^ Albers, Donald J. (1982). “Paul Halmos: Maverick Mathologist”. Two-Year College Mathematics Journal (Mathematical Association of America) 13 (4): 226-242. doi:10.2307/3027125. http://www.jstor.org/stable/3027125. 
  4. ^ Halmos, Paul R. (1970). “Finite-dimensional Hilbert spaces”. Amer. Math. Monthly 77: 457–464. doi:10.2307/2317378. http://www.maa.org/programs/maa-awards/writing-awards/finite-dimensional-hilbert-spaces. 
  5. ^ Ziemer, William P.; Wheeler, William H.; Moolgavkar; Halmos, Paul R.; Ewing, John H.; Gustafson, William H. (1976). “American mathematics from 1940 to the day before yesterday”. Amer. Math. Monthly 83: 503–516. http://www.maa.org/programs/maa-awards/writing-awards/american-mathematics-from-1940-to-the-day-before-yesterday. 
  6. ^ Halmos 1985, p. 69.
  7. ^ Halmos 1985, p. 403.
  8. ^ Halmos, Paul (1950). Measure Theory. New York: Van Nostrand. pp. vi. "The symbol ∎ is used throughout the entire book in place of such phrases as "Q.E.D." or "This completes the proof of the theorem" to signal the end of a proof." 
  9. ^ "The symbol is definitely not my invention — it appeared in popular magazines (not mathematical ones) before I adopted it, but, once again, I seem to have introduced it into mathematics. It is the symbol that sometimes looks like ▯, and is used to indicate an end, usually the end of a proof. It is most frequently called the 'tombstone', but at least one generous author referred to it as the 'halmos'.", Halmos 1985, p. 403.
  10. ^ The Mathematical Association of America's Euler Book Prize, retrieved 2011-02-01.
  11. ^ Kac, Mark (1943). “Review: Finite-dimensional vector spaces, by P. R. Halmos”. Bull. Amer. Math. Soc. 49 (5): 349–350. doi:10.1090/s0002-9904-1943-07899-8. http://www.ams.org/journals/bull/1943-49-05/S0002-9904-1943-07899-8/S0002-9904-1943-07899-8.pdf. 
  12. ^ Oxtoby, J. C. (1953). “Review: Measure theory, by P. R. Halmos”. Bull. Amer. Math. Soc. 59 (1): 89–91. doi:10.1090/s0002-9904-1953-09662-8. http://www.ams.org/journals/bull/1953-59-01/S0002-9904-1953-09662-8/S0002-9904-1953-09662-8.pdf. 
  13. ^ Lorch, E. R. (1952). “Review: Introduction to Hilbert space and the theory of spectral multiplicity, by P. R. Halmos”. Bull. Amer. Math. Soc. 58 (3): 412–415. doi:10.1090/s0002-9904-1952-09595-1. http://www.ams.org/journals/bull/1952-58-03/S0002-9904-1952-09595-1/S0002-9904-1952-09595-1.pdf. 
  14. ^ Dowker, Yael N. (1959). “Review: Lectures on ergodic theory, by P. R. Halmos”. Bull. Amer. Math. Soc. 65 (4): 253–254. doi:10.1090/s0002-9904-1959-10331-1. http://www.ams.org/journals/bull/1959-65-04/S0002-9904-1959-10331-1/S0002-9904-1959-10331-1.pdf. 
  15. ^ Zaanen, Adriaan (1979). “Review: Bounded integral operators on L² spaces, by P. R. Halmos and V. S. Sunder”. Bull. Amer. Math. Soc. (N.S.) 1 (6): 953–960. doi:10.1090/s0273-0979-1979-14699-8. http://www.ams.org/journals/bull/1979-01-06/S0273-0979-1979-14699-8/S0273-0979-1979-14699-8.pdf. 

参考さんこう文献ぶんけん

編集へんしゅう

関連かんれん項目こうもく

編集へんしゅう

外部がいぶリンク

編集へんしゅう