かすみあみ

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かすみあみかすみあみ霞網かすみあみとも)とは視認しにんせいひくもう一種いっしゅ

概要がいよう[編集へんしゅう]

かすみあみ捕獲ほかくされたとり(→鳥類ちょうるい標識ひょうしき調査ちょうさ)

かすみあみは、たにきりもう、雉網、うさぎもうなどとならもう一種いっしゅである[1]日本にっぽん鳥獣ちょうじゅう保護ほごおよ管理かんりならびに狩猟しゅりょう適正てきせいかんする法律ほうりつ施行しこう規則きそく平成へいせい14ねん環境省かんきょうしょうれいだい28ごうだい6じょうでは「かすみあみ」の定義ていぎについて「はりもうのうちたないとゆうするものをいう」としており、この「たないと」とは、あみよこ方向ほうこうとおし、あみたるませてとりつかまりやすいようにしたものである[1]

ほそいと近年きんねんではテグスひとし)でつくられたあみ空中くうちゅうわたし、そこにんできた野鳥やちょうらえる。 岐阜ぎふけん飛騨ひだ地方ちほうひがし地方ちほう本場ほんばで、北濃ほくのう地方ちほう富山とやまけん福井ふくいけんにわずかにつたわる古式こしき狩猟しゅりょうほうひとつである。わたどり仲間なかまさそわせて行動こうどうする習性しゅうせい利用りようし、おとり使つかって集団しゅうだんあみったやまへおびきせる。そこにタカふえやタカの羽音はおとしたおとてると、わたどりかくそうとして地表ちひょう付近ふきんめぐらされたあみにかかる仕組しくみとなっている[2]

あみ衝突しょうとつしたとり反射はんしゃてきあしいとつかむ。とりはそのからだ構造こうぞう本能ほんのうにより、あしつかんでいるものって空中くうちゅうしてからばたきはじめるが、ほそいとつくられたあみとりからだ空中くうちゅうすのに充分じゅうぶん反動はんどうられず、いつまでもあみつかんでは動作どうさかえし、衰弱すいじゃくしていく。偶然ぐうぜんふうなどでばされたり、力尽ちからつきてんだりしないかぎり、ひとはなすまであみからのがれることはない。もがくうちにあみからまり、羽根はねいためる個体こたいもある。さらに、長時間ちょうじかんわたってさかりのような不自然ふしぜん体勢たいせい拘束こうそくされるため、疲労ひろうによる衰弱すいじゃく以外いがいにも重力じゅうりょくによって血行けっこう阻害そがいされ、喀血かっけつしながらいたれいられる。

かすみあみ比較的ひかくてき簡易かんいかつ効率こうりつてき野鳥やちょう捕獲ほかくおこなえる反面はんめん貴重きちょうわたどりなどの乱獲らんかくつながり、たね存続そんぞくすらおびやかすおそれがあることから、1947ねんより特別とくべつ許可きょかもの以外いがい使用しようかたきんじられている。

密猟みつりょう実態じったい[編集へんしゅう]

1970年代ねんだいまでは、事実じじつじょう使用しよう野放のばな状態じょうたいであり、岐阜ぎふけんだけでもやく1000にん密猟みつりょう業者ぎょうしゃがいた。あみる「トヤじょう」(密猟みつりょうじょう)のなかには番小屋ばんごやこしらえられ、野鳥やちょう料理りょうりやビールを提供ていきょうするところもあった[3]。1970ねん日本にっぽん野鳥やちょうかい航空こうくう写真しゃしん岐阜ぎふ県内けんないのトヤじょう調査ちょうさしたところ、多治見たじみうちで45ヶ所かしょ恵那えなうちで137ヶ所かしょ土岐ときうちで89ヶ所かしょなどけい1000ヶ所かしょ確認かくにんしている[4]

日本にっぽんでのほう規制きせい[編集へんしゅう]

日本にっぽんでは鳥獣ちょうじゅう保護ほごおよ狩猟しゅりょう適正てきせいかんする法律ほうりつ使用しよう禁止きんし猟具りょうぐ指定していされており、鳥獣ちょうじゅう捕獲ほかくとう目的もくてきでの所持しょじ販売はんばい頒布はんぷ原則げんそくとしてきんじられている(鳥獣ちょうじゅう保護ほごおよ狩猟しゅりょう適正てきせいかんする法律ほうりつだい16じょうどうほう施行しこう規則きそくだい17じょう)。違反いはんしゃ六月ろくがつ以下いか懲役ちょうえきまたじゅうまんえん以下いか罰金ばっきんしょされる(鳥獣ちょうじゅう保護ほごおよ狩猟しゅりょう適正てきせいかんする法律ほうりつだい84じょう)。また、どうほうの「鳥獣ちょうじゅう保護ほご繁殖はんしょく重大じゅうだい支障ししょうがあるあみ」に指定していされており、学術がくじゅつ研究けんきゅう目的もくてき鳥獣ちょうじゅうによる生活せいかつ環境かんきょう農林のうりんすい産業さんぎょうまた生態せいたいけいかか被害ひがい防止ぼうし目的もくてきだいななじょうだいこうだいごうかかげる特定とくてい鳥獣ちょうじゅうかず調整ちょうせい目的もくてきその環境省かんきょうしょうれいさだめる目的もくてき鳥獣ちょうじゅう捕獲ほかくでの使用しようには環境かんきょう大臣だいじん許可きょかようする(鳥獣ちょうじゅう保護ほごおよ狩猟しゅりょう適正てきせいかんする法律ほうりつだい9じょうどうほう施行しこう規則きそくだい6じょう)。この規定きてい違反いはんしゃにも罰則ばっそくがあり懲役ちょうえきけいまたは罰金ばっきんけいしょされる(鳥獣ちょうじゅう保護ほごおよ狩猟しゅりょう適正てきせいかんする法律ほうりつだい84じょうとう)。

現在げんざいでも観賞かんしょうようメジロなど)や食用しょくようツグミスズメなど)といった野鳥やちょう需要じゅようたかく、かすみあみもちいた密猟みつりょうたない。とく種類しゅるいわずつかまえてしまうため今日きょうでは狩猟しゅりょう行為こうい自体じたいきんじられているツグミまでもをらえてしまうことわけだがぎゃくにそれらを目的もくてきにした密猟みつりょう報告ほうこくされているなど関係かんけいしゃ意識いしき問題もんだいにまで言及げんきゅうされることもあり、登山とざんしゃやハイカーからの通報つうほうもとめるためにも環境省かんきょうしょう全国ぜんこく野鳥やちょう団体だんたいでは様々さまざま啓蒙けいもう活動かつどうおこなつづけている。

その一方いっぽう野鳥やちょう生態せいたい調査ちょうさ鳥類ちょうるい標識ひょうしき調査ちょうさ)の一環いっかんとして、このかすみあみ使用しようすることもある。これはとり直接ちょくせつきずつけないための措置そちであり観測かんそくしゃ研究けんきゅうしゃ一定いってい時間じかんごとに巡回じゅんかいするか、付近ふきんにひそんでいてわなかったとり識別しきべつひょう電波でんぱ発信はっしんけるなどしてふたたはなっている。とくにこれら調査ちょうさ狩猟しゅりょうでは、それとわかはたてられているのが通例つうれいである。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ a b 鳥獣ちょうじゅう保護ほご管理かんり研究けんきゅうかい鳥獣ちょうじゅう保護ほごほう解説かいせつ 改訂かいてい4はん大成たいせい出版しゅっぱんしゃ、2008ねん、26ぺーじ、86-87ぺーじ
  2. ^ 知事ちじがカスミもうりょう賛美さんび わたどりコースの岐阜ぎふ 広報こうほう堂々どうどうと『朝日新聞あさひしんぶん』1970ねん昭和しょうわ45ねん)12がつ10日とおか朝刊ちょうかん 12はん 22めん
  3. ^ カスミもうらせるな あくどい密猟みつりょう焼鳥やきとり番小屋ばんごや 野鳥やちょうかい国会こっかい請願せいがんへ『朝日新聞あさひしんぶん』1970ねん昭和しょうわ45ねん)11月4にち朝刊ちょうかん 12はん 22めん
  4. ^ てんおそれぬカスミもう 密猟みつりょう王国おうこく岐阜ぎふけんひがし農地のうちかた番小屋ばんごやはねやま罰金ばっきんはらえば」居直いなお老人ろうじん朝日新聞あさひしんぶん』1970ねん昭和しょうわ45ねん)11月23にち朝刊ちょうかん 12はん 22めん

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]