この女おんな

あらすじ

釜ヶ崎かまがさきでワケありの日雇ひやとい労働ろうどう者しゃとして働はたらく甲かぶと坂さか礼司れいじは、ある日ひホテルチェーンの社長しゃちょうから、自分じぶんの妻つまの小説しょうせつを書かいてほしいと頼たのまれる。

甲きのえ坂さか礼司れいじ: 大阪おおさか市し西成にしなり区くの釜ヶ崎かまがさきで日雇ひやとい労働ろうどう者しゃとして働はたらく24歳さいの青年せいねん。高校こうこう2年生ねんせいの頃ころに父ちちの会社かいしゃが倒産とうさん、高校こうこうを中退ちゅうたいしアルバイトに励はげむも、後述こうじゅつの障害しょうがいの影響えいきょうで思おもうように働はたらけず、最終さいしゅう的てきに釜ヶ崎かまがさきに流ながれ着つく。1年ねん前まえ、大学生だいがくせい・藤谷ふじたに大輔だいすけの代筆だいひつでプロレタリア小説しょうせつ『釜がまの花はな』を書かいたところ、大輔だいすけの担当たんとう教員きょういんの木之下きのした教授きょうじゅから高こう評価ひょうかを受うける。木之下きのした教授きょうじゅの推薦すいせんで二谷にたに啓あきら太ふとしの妻つま・結子ゆうこの小説しょうせつを400万まん円えんという破格はかくの金額きんがくで請うけ負おうことになる。; 頭頂とうちょう葉はと呼よばれる脳のうの一部いちぶに損傷そんしょうがあり、ゲルストマン症候群しょうこうぐん（左右さゆう盲めくら、識字しきじ障害しょうがい）^[1]を抱かかえている。

二谷にたに結子ゆうこ: 二谷にたに啓あきら太ふとしの妻つま。礼司れいじの小説しょうせつの主人公しゅじんこう。幼おさないころに父ちちを亡なくし、母親ははおやは桜川さくらがわ一郎いちろうと再婚さいこんした。しかし桜川さくらがわに襲おそわれる気配けはいを感かんじ、14歳さいで家出いえでしてホステスになる。; 最初さいしょの夫おっととの間あいだに8歳さいの伸太郎しんたろうがいる。二谷にたに啓あきら太ふとしは再婚さいこん相手あいて。ネイリストの店みせを開ひらくため礼司れいじと東京とうきょうへ向むかう。

二谷にたに啓あきら太ふとし: チープ・ルネッサンス（コストを削減さくげんしながら客きゃくを夢ゆめの世界せかいへ招待しょうたいする）を標榜ひょうぼうする株式会社かぶしきがいしゃウェストホテル代表だいひょう取締役とりしまりやく社長しゃちょう。イーストホテル社長しゃちょうの次男じなん。買収ばいしゅう戦略せんりゃくでのし上あがる。東京とうきょう出身しゅっしん。

松まつちゃん: 釜ヶ崎かまがさきで頼たよりになる男おとこ。元もと共産党きょうさんとう幹部かんぶ、元もと右翼うよく団体だんたい幹部かんぶ、元もと暴力団ぼうりょくだん幹部かんぶ。

藤谷ふじたに大輔だいすけ: 1年ねん前まえに社会しゃかい勉強べんきょうとして、夏休なつやすみの間あいだ釜ヶ崎かまがさきで日雇ひやとい労働ろうどう生活せいかつを体験たいけんしに来きた神戸大学こうべだいがく文学部ぶんがくぶ3回生かいせい。淡路島あわじしま出身しゅっしん。平成へいせいの小林こばやし多喜二たきじを夢見ゆめみ、釜ヶ崎かまがさきでの重労働じゅうろうどうを経験けいけんするも、逆ぎゃくに小説しょうせつを書かく気持きもちを失うしない、大学だいがくの作文さくぶん課題かだいを礼司れいじに投なげつける。; その後ご宗教しゅうきょう団体だんたいに入はいり出家しゅっけする。しばらく行方ゆくえ不明ふめいとなったが、阪神はんしん大震災だいしんさいをきっかけに神かみなくして起おき上あがる人間にんげんの底力そこぢからに触ふれ、現実げんじつに目覚めざめた模様もよう。

木之下きのした: 戦前せんぜん昭和しょうわ時代じだいの文学ぶんがく研究けんきゅうの第一人者だいいちにんしゃ。大輔だいすけの受講じゅこうした「プロレタリア文学ぶんがくを読よむ」の担当たんとう教授きょうじゅ。二谷にたに啓あきら太ふとしと古ふるくからの友人ゆうじん。大学だいがくの経済学部けいざいがくぶの学生がくせい時代じだいに「資本しほん主義しゅぎは50年ねんで末期まっきを迎むかえる」と主張しゅちょうし退学たいがく、その後ご文学ぶんがくの道みちを歩あゆむ。