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アプレピタント

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
アプレピタント
Structural formula of aprepitant
Ball-and-stick model of the aprepitant molecule
IUPAC命名めいめいほうによる物質ぶっしつめい
臨床りんしょうデータ
販売はんばいめい Emend
Drugs.com monograph
MedlinePlus a604003
ライセンス EMA:リンクUS Daily Med:リンク
胎児たいじ危険きけん分類ぶんるい
  • AUえーゆー: B1
  • US: B
法的ほうてき規制きせい
投与とうよ経路けいろ By mouth (capsules)
薬物やくぶつ動態どうたいデータ
生物せいぶつがくてき利用りようのう60–65%
血漿けっしょうタンパク結合けつごう>95%
代謝たいしゃLiver (mostly CYP3A4- mediated; some contributions by CYP2C19 & CYP1A2)
半減はんげん9–13 hours
排泄はいせつUrine (5%), faeces (86%)
識別しきべつ
CAS番号ばんごう
170729-80-3 チェック
ATCコード A04AD12 (WHO)
PubChem CID: 6918365
IUPHAR/BPS 3490
DrugBank DB00673 チェック
ChemSpider 5293568 チェック
UNII 1NF15YR6UY チェック
ChEBI CHEBI:499361 チェック
ChEMBL CHEMBL1471 チェック
化学かがくてきデータ
化学かがくしきC23H21F7N4O3
分子ぶんしりょう534.43 g·mol−1
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アプレピタント(Aprepitant)は、イメンド(Emend)などの商品しょうひんめい販売はんばいされている、化学かがく療法りょうほう誘発ゆうはつせい悪心あくしん嘔吐おうと(CINV)や術後じゅつご悪心あくしん嘔吐おうと(PONV)の予防よぼうもちいられる医薬品いやくひんである[1]オンダンセトロンデキサメタゾン併用へいようすることができる[1]投与とうよほう経口けいこうである[1]日本にっぽんでは術後じゅつご悪心あくしん嘔吐おうとには保険ほけん承認しょうにんされていない。

一般いっぱんてき副作用ふくさようには、倦怠けんたいかん食欲しょくよく不振ふしん下痢げり腹痛はらいた、しゃっくり、かゆみ、肺炎はいえん血圧けつあつ変化へんか、などがあげられる[1]。その重度じゅうど副作用ふくさようには、アナフィラキシーがあげられる[1]妊娠にんしんなかひとへの投与とうよ有害ゆうがいではないようであるが、十分じゅうぶん研究けんきゅうはされていない[2]。アプレピタントは、ニューロキニン-1受容じゅようたい拮抗きっこうやく分類ぶんるいされる医薬品いやくひんである[1]。アプレピタントの作用さようじょP物質ぶっしつNK1受容じゅようたい結合けつごうするのを阻害そがいすることによるものである[3]

アプレピタントは、2003ねんにヨーロッパと米国べいこく医薬品いやくひんとして承認しょうにんされた[1][3]メルク・アンド・カンパニーによって製造せいぞうされている[1]世界せかい保健ほけん機関きかん必須ひっす医薬品いやくひんリスト収載しゅうさいされている[4]投与とうよ形態けいたい静脈じょうみゃく注射ちゅうしゃによる、ホスアプレピタント存在そんざいする[1]

効能こうのう効果こうか

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こう悪性あくせい腫瘍しゅようざい(シスプラチンなど)投与とうよともな消化しょうか症状しょうじょう悪心あくしん嘔吐おうと)(おそはつふくむ)[5]

副作用ふくさよう

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重大じゅうだい副作用ふくさようは、皮膚ひふ粘膜ねんまく症候群しょうこうぐん穿孔せんこうせい十二指腸じゅうにしちょう潰瘍かいよう、ショック、アナフィラキシー がられている[5]

作用さようじょ

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アプレピタントはNK1受容じゅようたい英語えいごばんからの信号しんごう遮断しゃだんするため、NK1拮抗きっこうやく分類ぶんるいされる。そのため、患者かんじゃ嘔吐おうと可能かのうせい減少げんしょうさせることができる。

NK1は、中枢ちゅうすうおよび末梢まっしょう神経しんけいけい存在そんざいするGタンパク質たんぱくしつ共役きょうやくがた受容じゅようたいである。この受容じゅようたいには、P物質ぶっしつ(SP)とばれる主要しゅようリガンド存在そんざいする。P物質ぶっしつは11個いっこアミノ酸あみのさんからなる神経しんけいペプチドで、のうからの刺激しげき情報じょうほう伝達でんたつする。のう嘔吐おうと中枢ちゅうすうこう濃度のうど存在そんざいし、活性かっせいされると嘔吐おうと反射はんしゃ惹起じゃっきされる。このほか末梢まっしょう受容じゅようたいから中枢ちゅうすうへの痛覚つうかく刺激しげき伝達でんたつにも重要じゅうよう役割やくわりたしている。

アプレピタントは、のう神経しんけい細胞さいぼう受容じゅようたい結合けつごうするP物質ぶっしつ遮断しゃだんすることにより、細胞さいぼう毒性どくせいのある化学かがく療法りょうほうざいによってこされる急性きゅうせいおよびおそはつせい嘔吐おうと抑制よくせいすることがしめされている。また、アプレピタントが血液けつえきのう関門かんもん通過つうかし、ヒトのうないのNK1受容じゅようたい結合けつごうすることが、陽電子ようでんし放出ほうしゅつ断層だんそう撮影さつえい(PET)をもちいた研究けんきゅうあきらかにされている[6]。さらに、化学かがく療法りょうほうによる悪心あくしん嘔吐おうと予防よぼうにももちいられる5-HT3受容じゅようたい拮抗きっこうやくオンダンセトロン副腎ふくじん皮質ひしつホルモンであるデキサメタゾン活性かっせいたかめることもあきらかにされている[7]

アプレピタントは、カプセルのかたち経口けいこう投与とうよされる。あたらしいクラスの治療ちりょうやくは、臨床りんしょう試験しけんおこなまえに、ぜん臨床りんしょうでの代謝たいしゃ排泄はいせつ研究けんきゅうという観点かんてんから特性とくせいあきらかにする必要ひつようがある。平均へいきんてきバイオアベイラビリティやく60~65%であることがわかっている。アプレピタントはおもCYP3A4代謝たいしゃされ、CYP1A2CYP2C19ではわずかに代謝たいしゃされる。ヒトの血漿けっしょうちゅうには、よわ活性かっせいしかたないアプレピタントの7つの代謝たいしゃぶつ確認かくにんされている。アプレピタントはCYP3A4の中等ちゅうとう阻害そがいざいであるため、CYP3A4で代謝たいしゃされる併用へいようやく血漿けっしょうちゅう濃度のうど上昇じょうしょうさせる可能かのうせいがある。とくオキシコドンとの相互そうご作用さようしめされており、アプレピタントはオキシコドンの有効ゆうこうせいたかめ、副作用ふくさよう悪化あっかさせたが、これがCPY3A4阻害そがいによるものか、NK1アンタゴニスト作用さようによるものかは不明ふめいである[8]14C標識ひょうしきしたアプレピタントのプロドラッグ(L-758298)を静脈じょうみゃくない投与とうよしたところ、迅速じんそくかつ完全かんぜんにアプレピタントに変換へんかんされ、ぜん放射能ほうしゃのうやく57%が尿にょうちゅうに、やく45%がくそちゅう排泄はいせつされた。変化へんかたい尿にょうちゅう排泄はいせつされない[9]

化学かがくてき特徴とくちょう

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アプレピタントは、モルホリンかくとして、隣接りんせつするたまき炭素たんそに2つの置換ちかんもと結合けつごうしている。これらの置換ちかんもとは、トリフルオロメチルされた1-フェニルエタノールとフルオロフェニルもとである。またアプレピタントは、モルホリンたまき窒素ちっそ結合けつごうした3つ置換ちかんもとトリアゾリノン)をつ。また、3つのキラル中心ちゅうしん非常ひじょうちかくにあり、それらが結合けつごうしてアミノアセタール配列はいれつ形成けいせいしている。

アプレピタントのみずへの溶解ようかいせい非常ひじょうひくい。しかし、あぶらのような極性きょくせい分子ぶんしにはかなりたか溶解ようかいせいしめす。このことから、アプレピタントは極性きょくせいのある置換ちかんもとふくんでいるにもかかわらず、全体ぜんたいとしては極性きょくせい物質ぶっしつであるとかんがえられる。

出典しゅってん

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  1. ^ a b c d e f g h i Aprepitant/Fosaprepitant Dimeglumine Monograph for Professionals” (英語えいご). Drugs.com. 2019ねん10がつ13にち閲覧えつらん
  2. ^ Aprepitant Use During Pregnancy” (英語えいご). Drugs.com. 2019ねん10がつ13にち閲覧えつらん
  3. ^ a b Emend” (英語えいご). European Medicines Agency (2018ねん9がつ17にち). 2019ねん10がつ13にち閲覧えつらん
  4. ^ World Health Organization model list of essential medicines: 21st list 2019. Geneva: World Health Organization. (2019). hdl:10665/325771. WHO/MVP/EMP/IAU/2019.06. License: CC BY-NC-SA 3.0 IGO 
  5. ^ a b イメンドカプセル125mg/イメンドカプセル80mg/イメンドカプセルセット 添付てんぷ文書ぶんしょ”. www.info.pmda.go.jp. PMDA. 2021ねん5がつ16にち閲覧えつらん
  6. ^ Bergström, Mats; Hargreaves, Richard J; Burns, H.Donald; Goldberg, Michael R; Sciberras, David; Reines, Scott A; Petty, Kevin J; Ögren, Mattias et al. (2004-05). “Human positron emission tomography studies of brain neurokinin 1 receptor occupancy by aprepitant” (英語えいご). Biological Psychiatry 55 (10): 1007–1012. doi:10.1016/j.biopsych.2004.02.007. https://linkinghub.elsevier.com/retrieve/pii/S0006322304001854. 
  7. ^ “Antiemetic efficacy of the neurokinin-1 antagonist, aprepitant, plus a 5HT3 antagonist and a corticosteroid in patients receiving anthracyclines or cyclophosphamide in addition to high-dose cisplatin: analysis of combined data from two Phase III randomized clinical trials”. Cancer 104 (4): 864–8. (2005). doi:10.1002/cncr.21222. PMID 15973669. 
  8. ^ Walsh, S. L.; Heilig, M.; Nuzzo, P. A.; Henderson, P.; Lofwall, M. R. (2012). “Effects of the NK1 antagonist, aprepitant, on response to oral and intranasal oxycodone in prescription opioid abusers”. Addiction Biology 18 (2): 332–43. doi:10.1111/j.1369-1600.2011.00419.x. PMC 4354863. PMID 22260216. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4354863/. 
  9. ^ FDA Advisory Committee Background Package