(Translated by https://www.hiragana.jp/)
イールドカーブ - Wikipedia コンテンツにスキップ

イールドカーブ

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
2018ねん5がつ13にち米国べいこくさいのイールドカーブ

イールドカーブえい: yield curve)あるいは利回りまわ曲線きょくせんとは、《金利きんり期間きかん構造こうぞう》をグラフにしたもの[1]

概要がいよう

[編集へんしゅう]

英語えいごのイールド(えい: yield)は金利きんり利回りまわ)のことであり、《金利きんり期間きかん構造こうぞう》(えい: term structure of interest rates)とは、債券さいけん残存ざんそん期間きかん(つまり満期まんきまでの期間きかん)と利回りまわあいだ関係かんけいのこと[2][3]である。その《イールド》(金利きんり)と《残存ざんそん期間きかん》の関係かんけいをグラフすると、そのグラフが曲線きょくせんになるので、「イールドカーブ」や「利回りまわ曲線きょくせん」とばれている。

よこじく債券さいけん残存ざんそん期間きかんたてじく利回りまわり(投資とうし金額きんがくたいする利息りそく割合わりあい:1年間ねんかん)をとる。左側ひだりがわ残存ざんそん期間きかんがゼロで、みぎくほど残存ざんそん期間きかんながい。

通常つうじょう利回りまわりは残存ざんそん期間きかんながいほどたかくなるので、イールドカーブはみぎがりの曲線きょくせんとなる。 その理由りゆうは、残存ざんそん期間きかんながいほど現金げんきんするのに時間じかんがかかり金利きんり変動へんどうリスクがたかまることなどから、そのリスクのおおきさに見合みあったおおめの利子りしをつけないと債券さいけんけてもらえなくなるので、残存ざんそん期間きかんながいほど利子りしたかくなる傾向けいこうにあるからである。たとえば、一般いっぱんに、1ねん満期まんきのものより2ねん満期まんきのもののほうが、1ねんあたりの利率りりつたかい。

イールドカーブとはおも金融きんゆう商品しょうひん使つかわれる用語ようごであるが、金融きんゆう商品しょうひんふくおおくの役務えきむ少量しょうりょうですぐに調達ちょうたつでき顧客こきゃくのリスクがひくいものほど高価こうか割引わりびきりつひくい)であるが、予約よやく長期ちょうき契約けいやく大量たいりょう購入こうにゅうなど顧客こきゃくのリスクがたかものほど安価あんか割引わりびきりつたかい)傾向けいこうにある。

リスクプレミアム

[編集へんしゅう]

リスクプレミアムとは、リスクのおおきさにおうじたプレミアム、つまり普通ふつう上乗うわのせされるである。

金利きんりリスク

[編集へんしゅう]

残存ざんそん期間きかんながいほど、金利きんり変動へんどう影響えいきょうおおきくけることになる。つまり、翌日よくじつ償還しょうかん債券さいけん金利きんり変化へんか影響えいきょうをほとんどけないだろうが、残存ざんそん期間きかんが10ねん程度ていどあれば、そのあいだ金利きんりがどのようにうごくかによってその債券さいけんへの投資とうし優劣ゆうれつおおきく影響えいきょうける。たとえば市場いちば金利きんり上昇じょうしょうした場合ばあいひく利回りまわりのままの債券さいけん投資とうししたことは失敗しっぱいとなる。

残存ざんそん期間きかんながいほど、その金利きんり変動へんどうリスクのプレミアムがおおきくなることから、利回りまわりがたかくなる。この場合ばあい、Xじく償還しょうかん期間きかん、Yじく利率りりつとしてグラフをつくると、みぎがりの曲線きょくせんになる。

将来しょうらいリスク

[編集へんしゅう]

債券さいけん発行はっこうたい信頼しんらいせいは、とお将来しょうらいほど低下ていかする。「明日あした倒産とうさんしないだろうし、1ねん大丈夫だいじょうぶそうだが、5ねんではすこしあやしく、10ねんとなるとよくからない」といった具合ぐあいである。この場合ばあい、1ねん満期まんきと10ねん満期まんきおな金利きんりであれば、「安全あんぜんだとおもえるあいだは1ねん満期まんきえらび、満期まんきいなおし、債券さいけん発行はっこうたい倒産とうさんのリスクがたかまってきたらいなおすことをめる」という行動こうどうで、人々ひとびとはリスクを低下ていかさせるであろう。そのため、償還しょうかん期間きかんなが債券さいけん発行はっこうする場合ばあい金利きんり上乗うわのせしなくては発行はっこう困難こんなんとなる。この将来しょうらいたいするリスクプレミアムのため、イールドカーブはみぎがりの曲線きょくせんになる。

用語ようご

[編集へんしゅう]

グラフの形状けいじょうかんする用語ようご

[編集へんしゅう]
じゅんイールド(normal yield)[4]
おおくの場合ばあい短期たんき金利きんりよりも長期ちょうき金利きんりほうたかいので、イールドカーブはみぎがりになる。
スティープ(steepening)[5]
短期たんき債券さいけん長期ちょうき債券さいけん金利きんりおおきくなると、傾斜けいしゃきゅうになる。これをスティープぶ。
フラット(flattening)[6]
短期たんき債券さいけん長期ちょうき債券さいけん金利きんりちいさくなると、イールドカーブの傾斜けいしゃゆるやかになる。これをフラットぶ。
ぎゃくイールド(inverted yield)[7]
フラットさらすすんで、短期たんき債券さいけんより長期ちょうき債券さいけん金利きんりひくくなること(長短ちょうたん金利きんり逆転ぎゃくてん)がある。この場合ばあいのイールドカーブは、みぎがりの曲線きょくせんになる。これをぎゃくイールドとぶ。ぎゃくイールドは景気けいき後退こうたい予兆よちょうとされており、その発生はっせい金融きんゆうかい産業さんぎょうかい警戒けいかいする。

金利きんり期間きかん構造こうぞうしょうじる理由りゆう用語ようご

[編集へんしゅう]

金利きんり期間きかん構造こうぞうしょうじる理由りゆうかんしては以下いか名称めいしょうけられている。

特定とくてい期間きかん選好せんこう仮説かせつ(preferred habitat theory)[8][3]
純粋じゅんすい期待きたい仮説かせつ流動りゅうどうせいプレミアム仮説かせつ市場いちば分断ぶんだん仮説かせつわせて、金利きんり期間きかん構造こうぞうしょうじるという仮説かせつ。Franco ModiglianiとRichard Sutchが1966ねん提唱ていしょうした[9]
純粋じゅんすい期待きたい仮説かせつ(pure expectations hypothesis)[10][3]
将来しょうらい短期たんき金利きんり予測よそくにより、より長期ちょうき金利きんりまるという仮説かせつ
流動りゅうどうせいプレミアム仮説かせつ(liquidity premium hypothesis)[11][3]
短期たんき債券さいけんほう長期ちょうき債券さいけんよりもこのまれるため、長期ちょうき債券さいけんほう金利きんりたかくなり、じゅんイールドがしょうじるという仮説かせつ
市場いちば分断ぶんだん仮説かせつ(market segmentation hypothesis)[12][3]
金融きんゆう機関きかん業務ぎょうむ投資とうしにより必要ひつようとする債券さいけん償還しょうかん期間きかんことなるので、長期ちょうき債券さいけん短期たんき債券さいけん需給じゅきゅうことなる理由りゆうによりしょうじるという仮説かせつ

イールドカーブ・コントロール

[編集へんしゅう]

中央ちゅうおう銀行ぎんこう公開こうかい市場いちば操作そうさつうじて金利きんり操作そうさする場合ばあい対象たいしょう短期たんき金利きんり限定げんていされ、長期ちょうき金利きんりうごきは市場いちばゆだねるのが通例つうれいである。しかし、政策せいさく目標もくひょう達成たっせいのために長期ちょうき金利きんり操作そうさ対象たいしょうにして、イールドカーブのかたむきをコントロールすることをイールドカーブ・コントロール(YCC)という。

日本銀行にっぽんぎんこうは、2016ねん9がつ、「長短ちょうたん金利きんり操作そうさ量的りょうてきしつてき金融きんゆう緩和かんわ」を開始かいしし、10ねん日本にっぽん国債こくさい金利きんり操作そうさ対象たいしょうくわえた[13]長期ちょうき金利きんり誘導ゆうどう目標もくひょう変遷へんせん政策せいさく金利きんり参照さんしょう

関連かんれん項目こうもく

[編集へんしゅう]

脚注きゃくちゅう

[編集へんしゅう]

出典しゅってん

[編集へんしゅう]
  1. ^ イールド・カーブ | みずほ証券しょうけん ファイナンス用語ようごしゅう
  2. ^ 金利きんり期間きかん構造こうぞう | みずほ証券しょうけん ファイナンス用語ようごしゅう
  3. ^ a b c d e イールドカーブ(金利きんり期間きかん構造こうぞう)の決定けってい要因よういんについて―日本にっぽん国債こくさい中心ちゅうしんとした学術がくじゅつ論文ろんぶんのサーベイ― - 財務ざいむ総合そうごう政策せいさく研究所けんきゅうじょ - 財務省ざいむしょう
  4. ^ じゅんイールド | みずほ証券しょうけん ファイナンス用語ようごしゅう
  5. ^ スティープニング | みずほ証券しょうけん ファイナンス用語ようごしゅう
  6. ^ フラットニング | みずほ証券しょうけん ファイナンス用語ようごしゅう
  7. ^ ぎゃくイールド | みずほ証券しょうけん ファイナンス用語ようごしゅう
  8. ^ 特定とくてい期間きかん選好せんこう仮説かせつ | みずほ証券しょうけん ファイナンス用語ようごしゅう
  9. ^ Modigliani, Franco; Sutch, Richard (1966-03-01). “Innovations in interest rate policy”. The American Economic Review 56: 178-197. https://www.jstor.org/stable/1821281. 
  10. ^ 純粋じゅんすい期待きたい仮説かせつ | みずほ証券しょうけん ファイナンス用語ようごしゅう
  11. ^ 流動りゅうどうせいプレミアム仮説かせつ | みずほ証券しょうけん ファイナンス用語ようごしゅう
  12. ^ 市場いちば分断ぶんだん仮説かせつ | みずほ証券しょうけん ファイナンス用語ようごしゅう
  13. ^ 2%の「物価ぶっか安定あんてい目標もくひょう」と「長短ちょうたん金利きんり操作そうさ量的りょうてきしつてき金融きんゆう緩和かんわ」 : 日本銀行にっぽんぎんこう Bank of Japan

外部がいぶリンク

[編集へんしゅう]