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リスクプレミアム

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

リスクプレミアムえい: risk premium)とは、リスク資産しさん期待きたい収益しゅうえきりつにおいて価格かかく変動へんどうリスク対価たいかとみなされる部分ぶぶんのことである。

概要がいよう

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リスクプレミアムは以下いかしき定義ていぎされる。

リスクプレミアム = 確実かくじつ価格かかく変動へんどうともなリスク資産しさん期待きたい収益しゅうえきりつ - リスク金利きんり短期たんき国債こくさいなどのリスク資産しさん金利きんり

リスクプレミアムは通常つうじょうせいであり、金融きんゆう商品しょうひん確実かくじつ価格かかく変動へんどうれるために必要ひつよう平均へいきんてき収益しゅうえきなすことが出来できる。もし、ある金融きんゆう商品しょうひんのリスクプレミアムが0またはまけであれば、おおくのひとはリスクをけようとする傾向けいこうがあるため(リスク回避かいひてき)、そのような金融きんゆう商品しょうひん購入こうにゅうせず、国債こくさいなどの安全あんぜん資産しさん投資とうしするであろう[1]。ある金融きんゆう商品しょうひんのリスクプレミアムを計算けいさんするにたって、国債こくさいなどのリスク資産しさん金利きんりはデータからかるものの、その金融きんゆう商品しょうひん未来みらいしょうじる収益しゅうえきりつ事前じぜんにはわからない。よってリスクプレミアムをもとめるためには金融きんゆう商品しょうひん期待きたい収益しゅうえきりつなんらかのモデルで仮定かていする必要ひつようがある。

リスク中立ちゅうりつかくりつとリスクプレミアム

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リスク中立ちゅうりつかくりつとは金融きんゆう商品しょうひん価格かかく金利きんりいたものがマルチンゲールとなるような仮想かそうじょうかくりつのことである。よってリスク中立ちゅうりつかくりつ金融きんゆう商品しょうひん収益しゅうえきりつ期待きたいれば金利きんりひとしくなる。つまりある金融きんゆう商品しょうひん収益しゅうえきりつ金利きんり とすると、

つ。ただしはリスク中立ちゅうりつかくりつでの期待きたいである。ここでこの金融きんゆう商品しょうひんのリスクプレミアムをあらわすと

となる。ただし実際じっさいかくりつでの期待きたいである。つまりリスクプレミアムは金融きんゆう商品しょうひん実際じっさいかくりつでの期待きたい収益しゅうえきりつからリスク中立ちゅうりつかくりつでの期待きたい収益しゅうえきりついたものとして表現ひょうげんすることが出来できる。

エクイティリスクプレミアム

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株式かぶしきのリスクプレミアムをエクイティリスクプレミアム(えい: equity risk premium)とう。

資本しほん資産しさん価格かかくモデル(CAPM)は適正てきせいなリスクプレミアムのおおきさをはか指標しひょうになるモデルのひとつである。 CAPMにおいては株式かぶしき 期待きたい収益しゅうえきりつ つぎしき決定けっていされる。

ここで 市場いちばポートフォリオとよばれるポートフォリオ期待きたい収益しゅうえきりつであり、リスク資産しさん金利きんりである。 はベータとばれるかく株式かぶしき固有こゆう係数けいすうである。すると株式かぶしき のリスクプレミアムは定義ていぎから

となる。市場いちばポートフォリオには通常つうじょう、その代理だいりとしてS&P500などの時価じか総額そうがく加重かじゅう平均へいきんがた株価かぶか指数しすうもちいられる。CAPMは株式かぶしきかぎらずあらゆる金融きんゆう資産しさんについて成立せいりつするので、CAPMをもちいたリスクプレミアムの評価ひょうか株式かぶしきかぎらず可能かのうである。またCAPMと類似るいじのリスクプレミアム計算けいさん方法ほうほうとしてファーマ=フレンチ3ファクターモデルもちいられることもある。

リスクの市場いちば価格かかく(market price of risk)

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リスクの市場いちば価格かかくとはリスクプレミアムをボラティリティじょしたものである。とく数理すうりファイナンス文脈ぶんみゃく言及げんきゅうされる。

以下いかブラック・ショールズモデルにおけるれい記述きじゅつする。ある金融きんゆう商品しょうひん価格かかく つぎ幾何きかブラウン運動うんどうしたがうとする。

ただし 定数ていすう国債こくさいなどのリスク資産しさん金利きんりであり、ブラウン運動うんどうである。このとき、リスクの市場いちば価格かかく つぎのように定義ていぎされる。

ギルサノフの定理ていり英語えいごばんからつぎあたらしいかくりつ過程かてい

リスク中立ちゅうりつかくりつ測度そくどしたでブラウン運動うんどうしたがい、さら

あらわされることから、たしかにこの金融きんゆう商品しょうひん金利きんりいたものはリスク中立ちゅうりつかくりつ測度そくどしたでマルチンゲールとなることがえる。このれいではリスク資産しさん単一たんいつ価格かかく変動へんどうリスクが存在そんざいする金融きんゆう資産しさんのみが存在そんざいする場合ばあいかんがえたが、複数ふくすう金融きんゆう資産しさん存在そんざいする場合ばあいのブラック・ショールズモデルでは、リスクの市場いちば価格かかく金融きんゆう商品しょうひんごとにさだまるのではなくリスクの源泉げんせんとなるブラウン運動うんどうごとにさだまる[2]

エクイティプレミアムパズル

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エクイティプレミアムパズル(えい: equity premium puzzle)とは実際じっさい市場いちば観測かんそくされるエクイティリスクプレミアムがしん古典こてん経済けいざいがく標準ひょうじゅんてきなモデルにおけるリスクへの対価たいか正当せいとうされ範囲はんいよりおおきいという問題もんだいのことである。

Rajnish Mehra英語えいごばんエドワード・プレスコット1985ねん発表はっぴょうした論文ろんぶん[3]によりひろられるようになった。

エクイティプレミアムパズルはしん古典こてん経済けいざいがくひろもちいられる相対そうたいてきリスク回避かいひ一定いってい(CRRA)がた効用こうよう関数かんすうもちいたさいこる。CRRAがた効用こうよう関数かんすうもちいた経済けいざいモデルにおいて、実際じっさい観測かんそくされるエクイティリスクプレミアムにたいしてモデルのパラメータを推定すいていすると、投資とうしのリスクへの相対そうたいてき忌避きひあらわ相対そうたいてきリスク回避かいひばれるパラメータがたかくなる。これは株式かぶしき以外いがいのデータから推定すいていされる相対そうたいてきリスク回避かいひ実験じっけん経済けいざいがくにおける経済けいざい実験じっけんたしかめられる相対そうたいてきリスク回避かいひくらべるといちじるしくたかいことがられている。

そうきょく割引わりびきなどの行動こうどうファイナンス理論りろん習慣しゅうかん形成けいせいなどの伝統でんとうてき手法しゅほうとうおおくの代替だいたいモデルによってエクイティプレミアムパズルを説明せつめいしようとするこころみがなされてきたが、統一とういつてき説明せつめいられていない。

クレジットスプレッド

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クレジットスプレッド(えい: credit spread)またはクレジットリスクプレミアム(えい: credit risk premium)とは、ほぼ安全あんぜんなせる経済けいざい大国たいこく国債こくさいなどとくらべた場合ばあいデフォルト危険きけんせいたか社債しゃさいなどの債券さいけんについてのリスクプレミアムである。クレジットスプレッドについての理論りろんモデルのれいとしてDarrell Duffie英語えいごばんKenneth Singleton英語えいごばんによる価格かかくモデルがある[4]

バリアンスリスクプレミアム

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バリアンスリスクプレミアム(えい: variance risk premium)とは金融きんゆう商品しょうひん収益しゅうえきりつ分散ぶんさんたいするリスクプレミアムである。満期まんき としたバリアンスリスクプレミアム以下いかしき定義ていぎされる。

ここではそれぞれ現実げんじつかくりつ測度そくどとリスク中立ちゅうりつかくりつ測度そくどによる期待きたいであり、金融きんゆう資産しさんボラティリティである。実用じつようじょう右辺うへんだい1こう金融きんゆう商品しょうひんとき系列けいれつデータから計算けいさんされるヒストリカルボラティリティで代理だいりされ、だい2こう店頭てんとうデリバティブのひとつであるバリアンススワップ英語えいごばんにおけるバリアンススワップレートの裁定さいてい価格かかくおなじであることからバリアンススワップレート、もしくはVIX代理だいりされる。その意味いみでバリアンスリスクプレミアムはバリアンススワップにおけるから期待きたい収益しゅうえきりつなせる。バリアンスリスクプレミアムはそののリスクプレミアムとことなりまけとなる場合ばあいおお[5]。また実際じっさい観測かんそくされるバリアンスリスクプレミアムはCAPMファーマ=フレンチの3ファクターモデルなどの既存きそん資産しさん価格かかくモデルで説明せつめいできないほどにまけ方向ほうこうおおきいことが確認かくにんされている[6]

脚注きゃくちゅう

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参考さんこう文献ぶんけん

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  • Shreve, Steven E. (2004), Stochastic calculus for finance II: Continuous-time models, New York: Springer, ISBN 9780387401010 
  • Mehra, Rajnish; Prescott, Edward C. (1985), “The equity premium: A puzzle”, Journal of Monetory Economics 15 (2): 145-161, doi:10.1016/0304-3932(85)90061-3 
  • Duffie, Darrell; Singleton, Kenneth J. (1999), “Modeling term structures of defaultable bonds”, The Review of Financial Studies 12 (4): 687-720, doi:10.1093/rfs/12.4.687 
  • Carr, Peter; Wu, Liuren (2006), “A tale of two indices”, The Journal of Derivatives 13 (3): 13-29, doi:10.3905/jod.2006.616865 
  • Carr, Peter; Wu, Liuren (2009), “Variance risk premiums”, The Review of Financial Studies 22 (3): 1311-1341, doi:10.1093/rfs/hhn038 

関連かんれん項目こうもく

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