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ブラック–ショールズ方程式ほうていしき

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

ブラック–ショールズ方程式ほうていしき(ブラック–ショールズほうていしき、えい: Black–Scholes equation)とは、デリバティブあたいかくづけにあらわれるへん微分びぶん方程式ほうていしき(およびその境界きょうかい問題もんだい)のことである。

様々さまざまなデリバティブに応用おうようできるが、とくオプションたいしての適用てきよう著名ちょめいである。ブラック-ショールズ方程式ほうていしきはヨーロピアンオプション[ちゅう 1]のオプション・プレミアム[ちゅう 2]解析かいせきてき計算けいさんできるが、アメリカンタイプのプット・オプション[ちゅう 3]については(解析かいせきてきには)計算けいさんできない。ただし、ブラック-ショールズモデルにおけるアメリカンコールオプションの理論りろん価格かかくはヨーロピアンコールオプションの理論りろん価格かかく一致いっちする[2]

ブラック–ショールズ方程式ほうていしき1973ねんフィッシャー・ブラックマイロン・ショールズによりオプションの価格かかく問題もんだいについての研究けんきゅう一環いっかんとして発表はっぴょうされた[3]のちロバート・マートンかれらの方法ほうほう厳密げんみつ証明しょうめいあたえた[4]これらの理論りろん現代げんだい金融きんゆう工学こうがくさきがけとなったともわれる。[だれによって?]

歴史れきしてき背景はいけい

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オプション価格かかく評価ひょうかについての研究けんきゅうなが歴史れきしがある。ファイナンス研究けんきゅうにおいて先駆せんくてき業績ぎょうせきのこしたことでられるルイ・バシュリエ1900ねん発表はっぴょうされた博士はかせ論文ろんぶん[5]なかでオプションの評価ひょうかしき考察こうさつしていた。しかし、かれ評価ひょうかしき価格かかくまけになることもありうるために現実げんじつてきであった。その1961ねんにCase Sprenkle[6]が、1965ねんポール・サミュエルソン[7]株価かぶか変動へんどう幾何きかブラウン運動うんどうもちいたオプション価格かかくしき導出みちびきだした。しかしながら、かれらの評価ひょうかしきはオプションの価格かかく評価ひょうかにおいて、今日きょうところのリスクの市場いちば価格かかく明示めいじてき表現ひょうげんできなかったために、実用じつようせいとぼしいものであった[8]

1965ねんアーサー・D・リトルしょくフィッシャー・ブラック同社どうしゃ在籍ざいせきしていたCAPMについての研究けんきゅうられるジャック・トレイナー英語えいごばん影響えいきょうしたワラント評価ひょうかしきについての研究けんきゅうおこなっていた。そのなか1969ねんころに、ブラック–ショールズ方程式ほうていしきぜん段階だんかいとなるようなワラントについての評価ひょうかしき導出どうしゅつ成功せいこうしていた。これにはサミュエルソン[9]ロバート・マートン[10]による期間きかんにおいての株式かぶしき債券さいけん最適さいてき投資とうし比率ひりつ決定けっていする問題もんだいマートンのポートフォリオ問題もんだい)についての研究けんきゅうおおきく影響えいきょうされたとブラックはべている[11]。しかし、ブラックはこの方程式ほうていしきねつ伝導でんどう方程式ほうていしき一種いっしゅであることには気付きづかず、かい導出どうしゅつできずにいた。ただ、ブラックはこの方程式ほうていしきについて考察こうさつふかめるなかで、株式かぶしき期待きたいリターンにワラントの価値かち依存いぞんしないこと、つまりワラントの価値かち決定けっていするじょう重要じゅうようなのは株式かぶしき全体ぜんたいのリスク(ボラティリティ[ちゅう 4])であることに気付きづいている[11]

また、ときおなじくして1969ねんごろにマサチュまさちゅセッツ工科大学せっつこうかだいがく(MIT)に所属しょぞくしていたマイロン・ショールズとブラックはい、ショールズの紹介しょうかいによりブラックはMITに職場しょくばうつした。そこからブラックとショールズの共同きょうどう研究けんきゅうはじまり、ワラントの研究けんきゅうからてんじたオプションの評価ひょうかしきについての研究けんきゅう急速きゅうそく進展しんてんした[11]

どう時期じきにオプション評価ひょうかしき研究けんきゅうんでいたマートンとの議論ぎろんはブラックとショールズの研究けんきゅうおおきな影響えいきょうあたえている。両者りょうしゃ関係かんけい共同きょうどう関係かんけいであり、またライバル関係かんけいであったとブラックはべている。そのようななかでブラックとショールズは伊藤いとうきよしらにより創始そうしされたかくりつ微分びぶん方程式ほうていしき理論りろんとマートンとの議論ぎろんによってもたらされた複製ふくせいポートフォリオ概念がいねんもちいて導出みちびきだされたブラック–ショールズ方程式ほうていしきかい見出みいだすことに成功せいこうした。ブラックとショールズは1970ねんなつひらかれたカンファレンスでコーポレートファイナンスにおいてのブラック–ショールズ方程式ほうていしき応用おうようについての研究けんきゅう成果せいか発表はっぴょうしたが、マートンは寝坊ねぼうしてしまい、ブラックとショールズの発表はっぴょうくことが出来できなかった[11]

1970ねんの10がつにブラックとショールズはオプション評価ひょうかしきとしてのブラック–ショールズ方程式ほうていしき利用りようについての研究けんきゅうをまとめた論文ろんぶんシカゴ大学だいがく発行はっこうしている学術がくじゅつ雑誌ざっしであるJournal of Political Economy英語えいごばん投稿とうこうしたが、かれらの論文ろんぶんアメリカファイナンス学会がっかい英語えいごばん発行はっこうしているThe Journal of Finance英語えいごばん投稿とうこうするほうがふさわしいということで掲載けいさい拒否きょひとなってしまった。その、しばらく論文ろんぶん学術がくじゅつ雑誌ざっし発表はっぴょうできずにいたが、シカゴ大学だいがくマートン・ミラーユージン・ファーマまり、かれらのアドバイスをけて修正しゅうせいされた論文ろんぶん1973ねんにJournal of Political Economyで投稿とうこう受理じゅりされ発表はっぴょうされた。これがひろられる"The Pricing of Options and Corporate Liabilities"[3]論文ろんぶんである[11]

その、マートンは裁定さいてい価格かかく理論りろん厳密げんみつ理論りろん展開てんかいした論文ろんぶん[4]発表はっぴょうし、さらにブラックとショールズ自身じしんによってブラック–ショールズ方程式ほうていしき実用じつようせい、データにたいするてはまりのさが検証けんしょうされたことで、ブラック–ショールズ方程式ほうていしき不動ふどう地位ちい確立かくりつした[11]今日きょうでは"The Pricing of Options and Corporate Liabilities"はJournal of Political Economyでもっと引用いんようされる論文ろんぶんひとつとなっている[12]

これらの功績こうせきとなえ、1997ねんノーベル経済けいざいがくしょうはショールズとマートンに授与じゅよされた。ブラックは1995ねんくなっていたために、この栄誉えいよにあずかることはできなかった。

ブラック–ショールズモデル

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ブラック–ショールズモデルとは、1種類しゅるい配当はいとうのないかぶと1種類しゅるい債券さいけんの2つが存在そんざいする証券しょうけん市場いちばのモデルである。さらに連続れんぞくてき取引とりひき可能かのうで、市場いちば完全かんぜん市場いちばであることを仮定かていしている。

そして、時刻じこく t における株価かぶかSt債券さいけん価格かかくBt とする。株価かぶか以下いかかくりつ微分びぶん方程式ほうていしきしたがうとする。

ここで、Wt標準ひょうじゅんウィーナー過程かていであり、σしぐま, μみゅー定数ていすうで、σしぐまボラティリティμみゅードリフト英語えいごばん[ちゅう 5]である。よって株価かぶか幾何きかブラウン運動うんどうあらわされる。

また、債券さいけん価格かかくつぎあらわされるとする。

ここで、r定数ていすうリスク利子りしりつである。

さらに、0 ≤ tT発展はってんてきはか(えい: progressively measurable)なかくりつ過程かていくみ (at(ωおめが), bt(ωおめが)) をる。att 時点じてん状態じょうたいωおめが場合ばあい株式かぶしき保有ほゆうりょうbt(ωおめが) はどう債券さいけん保有ほゆうりょうである。このようなくみ (a, b) を、株式かぶしき債券さいけん取引とりひき戦略せんりゃくという。区間くかん [0, T] における取引とりひき戦略せんりゃく (a, b) が自己じこ資本しほん充足じゅうそくてき(えい: self-financing)であるとは、0 ≤ tTかく時点じてん tたいし、つぎしきたされることである。

よって

となる。

ブラック–ショールズ方程式ほうていしき

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ブラック–ショールズ方程式ほうていしき導出どうしゅつ

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ブラック–ショールズモデルのもとで、満期まんき T において行使こうし価格かかくK であるヨーロピアン・コールのオプションプレミアム C = C(St, t) が裁定さいていとなるように適正てきせい価格かかくとなる条件じょうけんもとめる。区間くかん [0, T] で自己じこ資本しほん充足じゅうそくてき取引とりひき戦略せんりゃく (a, b) を、かく t 時点じてんつぎのようにさだめる。これを複製ふくせいポートフォリオ (replicating portfolio) という。

うえしき右辺うへん複製ふくせいポートフォリオの自己じこ資金しきん充足じゅうそくせいにより、つぎしきみちびかれる。

他方たほう伊藤いとう公式こうしきによりつぎしきつ。

係数けいすう比較ひかくしてやると、つぎしきられる。

これらのしき から at, bt消去しょうきょすると、つぎへん微分びぶん方程式ほうていしきられる。

このへん微分びぶん方程式ほうていしきブラック–ショールズ方程式ほうていしき(えい: Black–Scholes equation)、またはブラック–ショールズへん微分びぶん方程式ほうていしき(えい: Black–Scholes partial differential equation)とう。この方程式ほうていしき境界きょうかい条件じょうけん以下いかの3つである。

  • C(0, t) = 0 (t (≤ T) は任意にんい)
  • C(St, t) ∼ St as St → ∞ (t (≤ T) は任意にんい)
  • C(ST, T) = max{STK, 0}

ブラック–ショールズ方程式ほうていしきかい

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どう方程式ほうていしきにおいて、つぎのように変数へんすう変換へんかんする。

これは、つぎのような1次元じげんねつ伝導でんどう方程式ほうていしき拡散かくさん方程式ほうていしき)の初期しょき問題もんだいとなる。

これをいてもと変数へんすうもどすと、ブラック–ショールズ方程式ほうていしきかいつぎかたちあたえられる。

ただし、下記かき条件じょうけんにおいてである。

これが「適正てきせい価格かかく」とばれる背景はいけいとしては、上述じょうじゅつのとおりかぶ債券さいけん使つかってヨーロピアン・コールオプションを複製ふくせいすることができるという事実じじつからている。もし、コールオプション価格かかく複製ふくせいポートフォリオの組成そせい費用ひようことなれば、無限むげん資金しきんやすことが可能かのうになる[13]。それは現実げんじつてきであるのでコールオプション価格かかく複製ふくせいポートフォリオの組成そせい費用ひようは、理論りろんてきには、一致いっちしなくてはならないのである。またここでは St株価かぶかであるとしたが、実際じっさい株式かぶしきだけにかぎらず、為替かわせレート投資とうし信託しんたく株価かぶか指数しすうなどの市場いちばせいのある投資とうし商品しょうひん指標しひょうであればすべ上述じょうじゅつ議論ぎろん成立せいりつする。

配当はいとうみのブラック–ショールズ方程式ほうていしき

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もし株式かぶしき配当はいとうふくまれたとしても、ブラック–ショールズ方程式ほうていしき細部さいぶ変更へんこうのみで成立せいりつする。ここで Stあらわされる株式かぶしきには配当はいとう存在そんざいし、その配当はいとう連続れんぞくてき支払しはらわれるものとする。単位たんい時間じかんたりの配当はいとう利回りまわq とする。このとき株価かぶかしたがかくりつ微分びぶん方程式ほうていしき

となる[ちゅう 6]。ただし、この株式かぶしき保有ほゆうしていると配当はいとうられるので、自己じこ資金しきん充足じゅうそくてきなポートフォリオはつぎかくりつ積分せきぶん方程式ほうていしきたす。

あとはまった同様どうよう議論ぎろんかえすことでつぎへん微分びぶん方程式ほうていしきられる。

境界きょうかい条件じょうけん配当はいとうなしの場合ばあい同一どういつである。このへん微分びぶん方程式ほうていしきかい以下いかのようになる[14]

ただし、

である。この配当はいとうみのブラック–ショールズ方程式ほうていしき通貨つうかオプションについても重要じゅうよう意味いみつ。自国じこくとある外国がいこくあいだの(自国じこく通貨つうかて)為替かわせレートを Qt として、Qt以下いかかくりつ微分びぶん方程式ほうていしきしたがうとする。

γがんま定数ていすうであるとする。また自国じこく債券さいけん価格かかくBt外国がいこく債券さいけん価格かかくBft として、それぞれ

あらわされるとする。ただし、rrf はそれぞれ自国じこく金利きんり外国がいこく金利きんりあらわし、とも定数ていすうであるとする。ここで自国じこく通貨つうか通貨つうかオプションを自国じこく債券さいけん外国がいこく債券さいけんからなる自己じこ資金しきん充足じゅうそくてきなポートフォリオで複製ふくせいすることをかんがえる。つまり

である自己じこ資金しきん充足じゅうそくてきなポートフォリオ (a, b) をかんがえる[ちゅう 7]。すると、前節ぜんせつ同様どうよう議論ぎろんから裁定さいていならばつぎへん微分びぶん方程式ほうていしき成立せいりつしなくてはならない。

このしき配当はいとうみの株式かぶしき原資げんしさんとしたブラック-ショールズ方程式ほうていしきにおける配当はいとう利回りまわりを外国がいこく金利きんりえただけのしきなので、そのかい配当はいとう利回りまわりを外国がいこく金利きんりえるだけでよいことがかる。つまり通貨つうかオプションの理論りろん価格かかく配当はいとうみの株式かぶしきオプションの理論りろん価格かかくおながたをすることがかる。

プットコールパリティ

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ヨーロピアンタイプのプットオプションについてもコールオプションの場合ばあいまった同様どうよう議論ぎろんからつぎへん微分びぶん方程式ほうていしきつ。

ただし、P はプットオプションの現在げんざい価格かかくである。つまり、はら資産しさん価格かかく変動へんどう幾何きかブラウン運動うんどうで、債券さいけん利子りしりつ一定いっていならば、どのようなデリバティブについてもへん微分びぶん方程式ほうていしきかたちおなじとなる。ことなるのは境界きょうかい条件じょうけんで、プットオプションの場合ばあい境界きょうかい条件じょうけん

  • P(0, t) = Ke-r(T-t) (t (≤ T) は任意にんい)
  • P(St, t) → 0 as St → ∞ (t (≤ T) は任意にんい)
  • P(ST, T) = max{KST, 0}

となる。かい

となる[15]関数かんすう変数へんすう定義ていぎはコールオプションの場合ばあい同様どうようである。ここで同一どういつ原資げんしさん満期まんき行使こうし価格かかくであるヨーロピアンコールオプションとプットオプションをコールオプションについては1単位たんいい、プットオプションについては1単位たんいることをかんがえる。そのようなポートフォリオの価値かちがく

となる。つまり0時点じてんにおいて株式かぶしきを1単位たんいい、債券さいけんKe-rT / B0 単位たんい空売からうりし、満期まんきまでそれを保有ほゆうつづけるポートフォリオの価値かちがくつね一致いっちする。この関係かんけいプットコールパリティ(えい: put-call parity)と[16]。より一般いっぱんてきには、T 満期まんきとした額面がくめんが1えん債券さいけんt 時点じてんでの価格かかくB ( t, T ) = e-r ( T-t )あらわされることから

ける。このポートフォリオの満期まんきでのペイオフは

となる。このポートフォリオでの満期まんきでのペイオフはどういち残存ざんそん期間きかんさきわたり価格かかく Kさきわたり契約けいやく満期まんきでのペイオフとおなじである。よって満期まんきT とする t 時点じてん締結ていけつされたさきわたり契約けいやくさきわたり価格かかくF ( t, T ) とすると、裁定さいてい条件じょうけんから

つ。ヨーロピアンプットオプションの理論りろん価格かかくについてはブラック-ショールズ方程式ほうていしきかずにプットコールパリティから計算けいさんしたほう簡単かんたんである。

グリークス(The Greeks)

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ブラック–ショールズモデルにおけるコールオプション価値かち。call option's value long before expiry dateでしめされる曲線きょくせん満期まんきまでの期間きかん比較的ひかくてきながいヨーロピアンコールオプション価値かちでcall option's value before expiry dateでしめされる曲線きょくせん満期まんきまでの期間きかん比較的ひかくてきみじかいヨーロピアンコールオプション価値かちである。call option's payoff at expiry dateは満期まんき時点じてんでのペイオフをあらわしている。オプション価値かちみぎがりのとつじょう曲線きょくせんであり、時間じかん経過けいかにしたがって下方かほう異動いどうし、満期まんき時点じてんでのペイオフにちかづいていくことがかる。

ブラック–ショールズ方程式ほうていしきによるオプション価格かかく決定けっていするのは株価かぶか満期まんきまでの残存ざんそん期間きかんもしくは経過けいか時間じかん行使こうし価格かかく金利きんり、ボラティリティの5つとなる。よってオプション価格かかくをこの5つの変数へんすう関数かんすうなし、それぞれのへん微分びぶんってかく変数へんすうについてのオプション価格かかく感応かんおうとしてあらわしたものをグリークス(えい: The Greeks)と[17]代表だいひょうてきなものとして、株価かぶかについての1かいへん微分びぶんをデルタ(えい: delta)、2かいへん微分びぶんをガンマ(えい: gamma)、経過けいか時間じかんの1かいへん微分びぶんをセータ(えい: theta)、金利きんりの1かいへん微分びぶんをロー(えい: rho)、ボラティリティの1かいへん微分びぶんをベガ(えい: vega)またはカッパ(えい: kappa)とう。それぞれの配当はいとうしヨーロピアンコールオプションにおける具体ぐたいがた以下いかとおりとなる。ただし記号きごうとう前節ぜんせつのものとおなじである。

デルタ
ガンマ
セータ
ロー
ベガ

デルタとガンマがともつねせいであることから、Yじくをオプション価値かちとしXじく原資げんしさん価格かかくとした座標ざひょう平面へいめんでのオプション価値かち曲線きょくせんみぎがりのとつじょう曲線きょくせんになる。さらにセータがまけであることからこの曲線きょくせん時間じかん経過けいかとも下方かほう移動いどうしていく。プットオプションや配当はいとうみオプションの場合ばあいのグリークスは英語えいごばんwikipedia のen:Greeks (finance)#Formulas for European option Greeks参照さんしょうのこと。

インプライド・ボラティリティ

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ブラック-ショールズ方程式ほうていしきによるオプション価格かかくにおいて、株価かぶか満期まんきまでの残存ざんそん期間きかん行使こうし価格かかく金利きんりすべ市場いちば観測かんそく可能かのうであるが、ボラティリティのみが直接ちょくせつ観測かんそく不可能ふかのうなんらかの方法ほうほう推定すいていしなくてはならない。そこでブラック-ショールズ方程式ほうていしきによる理論りろんじょうのオプション価格かかく現実げんじつ価格かかくひとしいと仮定かていして実際じっさいのオプションの市場いちば価格かかくから逆算ぎゃくさんされたボラティリティのことをインプライド・ボラティリティ(えい: implied volatility)とう。ブラック-ショールズ方程式ほうていしきただしければ、あらゆる水準すいじゅん株価かぶか満期まんきまでの残存ざんそん期間きかん行使こうし価格かかく金利きんりにおいてインプライド・ボラティリティはひとしいはずだが、実際じっさい計算けいさんされるインプライド・ボラティリティはそうではないことがられている。

実務じつむへの応用おうよう

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オプションの理論りろん価格かかく算定さんてい方式ほうしき数学すうがくじょう非常ひじょう明晰めいせきかたち提供ていきょうされたことはSPAN証拠しょうこきん英語えいごばん[ちゅう 8]決定的けっていてき示唆しさあたえている。

オプション価格かかく理論りろんられることから、適正てきせいプレミアムの獲得かくとく現実げんじつ取引とりひき価格かかくとの乖離かいり投資とうし戦略せんりゃくとして裁定さいてい取引とりひきじょう利益りえき目標もくひょうとなりるとかんがえられた。このてん実際じっさいにはテイルリスク[ちゅう 9]たいする脆弱ぜいじゃくせいなどが指摘してきされている。そしてショールズが参加さんかしたロングターム・キャピタル・マネジメント破綻はたんにより現実げんじつてき妥当だとうせいまで疑問ぎもんされた。しかし、投資とうしちゅう発生はっせいするイベントの定性ていせい情報じょうほう[ちゅう 10]無視むししたポートフォリオ戦略せんりゃく[ちゅう 11]としては依然いぜんとして強力きょうりょくであり、それまでアナロジーアフォリズムアノマリーテクニカル分析ぶんせきなどといった従来じゅうらいの「投資とうし慣行かんこう」をえた学術がくじゅつてきバックグラウンドをつものとして、現代げんだいポートフォリオ理論りろん資本しほん資産しさん価格かかくモデルなどと同様どうようおおきな影響えいきょうをもたらしている。

発展はってん

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ブラック–ショールズ方程式ほうていしきは、価格かかく変化へんかりつ分布ぶんぷ正規せいき分布ぶんぷしたがうという仮定かていいている。しかし現実げんじつ金融きんゆう商品しょうひんではかならずしも正規せいき分布ぶんぷ成立せいりつしない[18]。そのような批判ひはんにこたえるかたちでブラック–ショールズモデルが仮定かていゆるめたものとして、ボラティリティが時間じかん経過けいかにしたがってかくりつてき変動へんどうするかくりつてきボラティリティモデル[19]原資げんしさん(株式かぶしきなど)の価格かかく不連続ふれんぞく変動へんどう許容きょようするマートンモデル[20]などが考案こうあんされている。

脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ 満期まんきのみ行使こうし可能かのうなオプション。
  2. ^ コール・オプションとプット・オプションの両方りょうほうについて。オプション取引とりひき参照さんしょう
  3. ^ 購入こうにゅうからまん期日きじつまでのいつでも権利けんり行使こうしすることのできるオプション。そのぶん、アメリカンプットオプションのプレミアムは割高わりだかになっている。
    行使こうしからないため価格かかくけがむずかしい(※)。計算けいさん方法ほうほう理論りろんできていない。しかし格子こうしモデルブレネン英語えいごばん-シヴァルツ英語えいごばんアルゴリズムなどがよくもちいられている[1]
  4. ^ 株価かぶか変動へんどうはげしさ。
  5. ^ 株価かぶか平均へいきん増加ぞうかりつ
  6. ^ よって はトータルリターンをあらわしている
  7. ^ C自国じこく通貨つうか単位たんいでの価値かちがくである。
  8. ^ 1988ねんシカゴ・マしかごまカンタイル取引所かんたいるとりひきしょ開発かいはつしたリスクベースの証拠しょうこきん計算けいさん方法ほうほう
  9. ^ 過去かこ相場そうば遭遇そうぐうしたり、とりわけ統計とうけいてき検定けんてい除外じょがいされてしまうほどめったに発生はっせいしない局面きょくめんでのリスク
  10. ^ 文章ぶんしょう画像がぞう音声おんせいといった、数値すうちのむずかしい情報じょうほう対義語たいぎご定量ていりょう情報じょうほう
  11. ^ 将来しょうらいなにきるかはりえないことを前提ぜんていとした投資とうし戦略せんりゃく

出典しゅってん

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  1. ^ S.M.ロス ちょ西村にしむら優子ゆうこ, 高見たかみ茂雄しげお, 西村にしむら陽一郎よういちろう やく『ファイナンス~PVとオプション~』同友どうゆうかん、2002ねんISBN 9784496034749 
  2. ^ Shreve & (2004), section 8.5
  3. ^ a b Black and Scholes & (1973)
  4. ^ a b Merton & (1973)
  5. ^ Bachelier & (1900)
  6. ^ Sprenkle & (1961)
  7. ^ Samuelson & (1965)
  8. ^ Whaley & (2003), pp.1148-1149.
  9. ^ Samuelson & (1969)
  10. ^ Merton & (1969)
  11. ^ a b c d e f Black & (1989)
  12. ^ Journal of Political Economy: Home
  13. ^ 裁定さいてい価格かかく理論りろん項目こうもく参照さんしょう
  14. ^ Shreve & (2004), pp. 237–238
  15. ^ Shreve & (2004), p. 164
  16. ^ Shreve & (2004), p. 163
  17. ^ Shreve & (2004), p. 159
  18. ^ 野村證券のむらしょうけん|ファットテール(証券しょうけん用語ようご解説かいせつしゅう
  19. ^ Heston & (1993)
  20. ^ Merton & (1976)

参考さんこう文献ぶんけん

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関連かんれん項目こうもく

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